(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】フットカバーおよびフットカバー製造方法
(51)【国際特許分類】
A41B 11/10 20060101AFI20240712BHJP
A41B 11/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
A41B11/10 B
A41B11/10 Z
A41B11/00 H
A41B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020149856
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】592154411
【氏名又は名称】岡本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】原 進
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-205935(JP,A)
【文献】特公昭41-002381(JP,B1)
【文献】独国特許出願公開第10052825(DE,A1)
【文献】実公昭28-011136(JP,Y1)
【文献】特開2019-052404(JP,A)
【文献】特開2018-100463(JP,A)
【文献】韓国特許第10-1080592(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/10
A41B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の足裏を覆う足底生地と、
前記足底生地の周縁に
縫製または縫製を除く接合方法によって接合され、前記足底生地とは反対側に履き口が形成された、前記足の側周面を覆う側面生地とを含み、
前記足の踵に対応する前記側面生地の踵部に、前記側面生地の一部を切り欠いた切欠部、または、前記側面生地の一部を該側面生地の内側へ折り込んだ折込部を接合して、前記踵部を前記足の踵の形状に沿った立体的な曲面形状にする踵接合部が形成され、
前記踵接合部は、前記足底生地の周縁に接合される前記側面生地の足底側端部から前記履き口へ向かって前記側面生地を縦断しないように形成される、フットカバー。
【請求項2】
前記切欠部は、曲線状に切り欠かれている、請求項1に記載のフットカバー。
【請求項3】
前記踵接合部は、前記踵部の中央部に形成される、請求項1または2に記載のフットカバー。
【請求項4】
前記踵接合部は、前記踵部の両側部の少なくとも一方に形成される、請求項1から3のいずれか1項に記載のフットカバー。
【請求項5】
前記踵接合部を覆う接着テープが前記側面生地の内側に貼付される、請求項1から4のいずれか1項に記載のフットカバー。
【請求項6】
足の足裏を覆う足底生地を形成する足底形成工程と、
前記足底生地とは反対側に履き口が形成された、前記足の側周面を覆う側面生地を形成する側面形成工程と、
前記足底生地の周縁に側面生地を
縫製または縫製を除く接合方法によって接合する接合工程とを含み、
前記側面形成工程にて、前記足の踵に対応する前記側面生地の踵部に、前記側面生地の一部を切り欠いた切欠部、または、前記側面生地の一部を該側面生地の内側へ折り込んだ折込部を接合して、前記踵部を前記足の踵の形状に沿った立体的な曲面形状にする踵接合部を、前記足底生地の周縁に接合される前記側面生地の足底側端部から前記履き口へ向かって前記側面生地を縦断しないように形成する、フットカバー製造方法。
【請求項7】
前記足の踵の形状を模して立体的に形成された治具に前記踵部を装着し、前記踵接合部を覆う接着テープを前記側面生地の内側から貼付するテープ貼付工程をさらに含む、請求項6に記載のフットカバー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足に着用するフットカバーに関し、特に、踵部を足の踵の形状に沿った曲面状に形成したフットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚の生地を接合して形成されるフットカバーについて、脱げを防止する構造を備えた種々のフットカバーが開発されている。この種のフットカバーに関し、特許文献1には、開口部(履き口部)の周縁に沿って平ゴムを設けたフットカバーが開示されている。このフットカバーは、平ゴムで足を締め付けることによって脱げを防止している。また、特許文献2には、踵関節部(踵部)に使用した熱硬化性繊維または熱接着性繊維をヒートセットして、踵部を硬化成型した靴下が開示されている。この靴下は、足の踵の形状に踵部を硬化成型して靴下を足にフィットさせることによって脱げを防止している。さらに、特許文献3には、U字型の平面生地からなる被覆部(側辺生地)の両端部を踵の位置で縫合したフットカバーが開示されている。このフットカバーは、被覆部の湾曲した各両端部を踵の位置で互いに縫合して踵部の形状を足の踵に沿わせることによって脱げを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3165733号公報
【文献】実公昭60-32308号公報
【文献】特開2014-205935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、締め付けによる不快感および履き心地の悪化のため、着用感が低下するという問題がある。また、特許文献2の技術は、ヒートセットにより靴下の踵部を硬化成型することで生地の伸縮性が低下するため、着用感が低下するという問題がある。さらに、特許文献3の技術は、踵部の後部中央で生地を上端部から下端部にわたって踵部を縦断して縫合しているため、着用時の負荷により踵部の縫合が解れ易いという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、上記の従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、着用感および踵部の強度低下を抑えつつ足の踵の形状に沿った立体的な曲面形状に踵部を形成して、脱げまたはずれを抑制可能なフットカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフットカバーは、足の足裏を覆う足底生地と、前記足底生地の周縁に接合され、前記足底生地とは反対側に履き口が形成された、前記足の側周面を覆う側面生地とを含み、前記足の踵に対応する前記側面生地の踵部に、前記側面生地の一部を切り欠いた切欠部、または、前記側面生地の一部を該側面生地の内側へ折り込んだ折込部を接合して、前記踵部を前記足の踵の形状に沿った立体的な曲面形状にする踵接合部が形成される。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフットカバー製造方法は、足の足裏を覆う足底生地を形成する足底形成工程と、前記足底生地とは反対側に履き口が形成された、前記足の側周面を覆う側面生地を形成する側面形成工程と、前記足底生地の周縁に側面生地を接合する接合工程とを含み、前記側面形成工程にて、前記足の踵に対応する前記側面生地の踵部に、前記側面生地の一部を切り欠いた切欠部、または、前記側面生地の一部を該側面生地の内側へ折り込んだ折込部を接合して、前記踵部を前記足の踵の形状に沿った立体的な曲面形状にする踵接合部を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、着用感および踵部の強度低下を抑えつつ足の踵の形状に沿った立体的な曲面形状に踵部を形成して、脱げまたはずれを抑制可能なフットカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係るフットカバーを足に着用した状態の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されるフットカバーを踵側から見た斜視図である。
【
図3】
図1に示される足底生地を平置きした状態の一例を示す平面図である。
【
図4】
図1に示される爪先側生地を平置きした状態の一例を示す平面図である。
【
図5】
図1に示される踵側生地を平置きした状態の一例を示す平面図である。
【
図6】
図1に示される接着テープの貼付方法の一例を説明する図である。
【
図7】
図5に示される踵側生地の変形例を示す図である。
【
図8】変形例であるフットカバーの足底生地を平置きした状態の一例を示す平面図である。
【
図9】変形例であるフットカバーの爪先側生地を平置きした状態の一例を示す平面図である。
【
図10】変形例であるフットカバーの側辺生地を平置きした状態の一例を示す平面図である。
【
図11】変形例であるフットカバーの踵側生地を平置きした状態の一例を示す平面図である。
【
図12】
図9~
図11に示されるフットカバーの側面生地の接合方法を説明する図である。
【
図13】実施形態2に係る側面生地を平置きした状態の一例を示す平面図である。
【
図14】
図13に示される側面生地に接合される足底生地を平置きした状態の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図12に基づいて説明する。本実施形態では、左足用および右足用で形状が異なるフットカバー1の一例について説明する。ただし、フットカバー1は、左右共用で使用できるように左右の形状が同じものであってもよい。また、フットカバー1は、例えば、足袋形状または5本指形状等であってもよい。
【0011】
[フットカバーの概要]
図1は、本発明の実施形態1に係るフットカバー1を足Fに着用した状態の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示されるフットカバー1を踵側から見た斜視図である。
図1および
図2に示すフットカバー1は、足Fの足裏を覆う足底生地2と、足Fの爪先から踵にわたる足Fの側周面を覆う側面生地3とを備える。側面生地3は、足Fの爪先を覆う爪先部34、足Fの踵を覆う踵部35、および足Fの両側を覆う2つの側辺部36を含む。
【0012】
本実施形態に係るフットカバー1では、踵部35に、踵側生地32の一部を切り欠いた切欠部41(
図5参照)を接合して形成される踵接合線(踵接合部)4が設けられる。切欠部41を踵接合線4によって接合することにより、切欠部41の形状に応じて、所望の立体的な曲面状(球面状)に踵部35を形成することができる。フットカバー1は、着用感および踵部35の強度低下を抑えつつ足Fの踵の形状に沿った立体的な曲面形状に踵部35を形成して、脱げまたはずれを抑制するものである。
【0013】
なお、本明細書において、接合とは、縫製による接合であってもよく、縫製を除く接合方法(無縫製接合方法)であってもよい。例えば、生地の接合面に摩擦熱を発生させ瞬時に溶融・接合する超音波溶着、または生地を重ね合させた部分に熱を加えて融着させる熱融着、接着剤や接着テープによる接合等の方法で接合してもよい。
【0014】
また、縫製で接合する場合、例えば、二枚の生地を一枚の生地のように縫い合わせるフラットシーム、同じ縫い目の上を2度縫う二度縫い、または千鳥縫い等、段差の少ない縫製方法で接合してもよい。この場合、段差が少なく、縫製部分(例えば、踵接合線4等)が足Fに直接当たることによる不快感を低減することができる。また、段差が少ないため、縫製部分の上に接合テープ、またはすべり止め部材を容易に貼付することもできる。さらに、縫製で接合する場合、引っ張り強度に優れ伸縮性の高い生地の縫製に適したオーバーロックによって接合してもよい。この場合、縫製部分を解れ難くすることができる。なお、以後、特に具体例を挙げて説明する場合を除き、接合方法は特に限定されないものとする。
【0015】
[フットカバーの構成]
次に、フットカバー1の具体的な構成例を、
図1および
図2に加えて、
図3~
図5をさらに参照して説明する。フットカバー1は、足Fの甲および足首が露出するように履き口33が大きく開口して形成される。このため、靴を履いたときに、フットカバー1全体が靴の中に隠れ、目立たないようにフットカバー1を履くことができる。また、履き口33の形状を変更することによって足Fの甲を覆う面積を調整することが可能である。例えば履き口33の長手方向の長さを長くすると、いわゆる「浅履き」のフットカバー1にすることができる。一方、履き口33の長手方向の長さを短くすることにより、いわゆる深履きタイプのフットカバー1にすることができる。
【0016】
図1および
図2に示すように、フットカバー1は、足Fの足底を覆う足底生地2、足Fの側周面を覆う側面生地3(爪先側生地31・踵側生地32)、側面生地3の踵部35に形成された踵接合線4、および踵接合線4を覆う接着テープ43を含む。
【0017】
(足底生地)
図3は、
図1に示される足底生地2を平置きした状態の一例を示す平面図である。
図3に示すように、足底生地2は、略平面的な生地からなり、足Fの足裏の形状に沿って左右非対称に形成される。ただし、足底生地2の形状は特に限定されず、足Fの形状およびフットカバー1の用途等に合わせて他の形状に変更可能である。足底生地2の外周縁部(周縁)2dは、側面生地3(爪先側生地31および踵側生地32)の外周縁部37と接合される。
【0018】
足底生地2は、歩行のしやすさ、およびずれ防止の観点から、足裏との適度な摩擦が生じると共に、肌に優しく適度な伸縮性を有するものであればよい。例えば、綿混紡または綿素材を編成したニット生地で足底生地2を構成してもよい。
【0019】
(側面生地)
側面生地3は伸縮性生地からなり、その略中央部分に、足Fを出し入れするための履き口33が足底生地2とは反対側に形成される。側面生地3は、爪先部34および側辺部36を含む爪先側生地31と、踵部35を含む踵側生地32とが、足Fの踵の左右両側で互いに接合されて、環状に形成される。
【0020】
(爪先側生地)
図4は、
図1に示される爪先側生地31を平置きした状態の一例を示す平面図である。爪先側生地31は、踵側生地32と共に側面生地3を構成する。
図4に示すように、爪先側生地31は略平面的な生地からなり、左右対称な略U字型に形成される。爪先側生地31は、伸縮性を有する生地から構成される。例えば、爪先側生地31は、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維を用い、長繊維で編成されたニット生地であってもよい。
【0021】
爪先側生地31は、踵側生地32が接合される側に、踵側生地32と接合される2つの踵側生地接合端部31a・31bを有する。また、爪先側生地31は、その内縁側に、履き口33の一部を構成する履き口側端部31cを有する。さらに、爪先側生地31は、その外縁側に、側面生地3の外周縁部37の一部を構成する足底側端部31dを有する。
【0022】
爪先側生地31は、爪先部34の中心付近から左右両側部31e・31f近傍に向かって生地の幅(すなわち、履き口側端部31cと足底側端部31dとの間隔)がやや狭くなるように形成される。また、爪先部34の左右両側部31e・31f近傍から踵側生地接合端部31a・31bに向かって、左右それぞれの生地の幅が連続的に広くなるように形成される。
【0023】
(踵側生地)
図5は、
図1に示される踵側生地32を平置きした状態の一例を示す平面図である。踵側生地32は、爪先側生地31と共に側面生地3を構成する。なお、
図5では、踵側生地32に踵接合線4を形成する前の状態、すなわち、踵側生地32の切欠部41を踵接合線4によって接合する前の状態を示している。
【0024】
図5に示すように、踵側生地32は、略平面的な生地からなり、略左右対称になるように形成される。踵側生地32は、伸縮性を有する生地から構成される。例えば、踵側生地32は、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維を用い、長繊維で編成されたニット生地であってもよい。また、踵側生地32は、爪先側生地31と同じ素材であってもよく、異なる素材であってもよい。
【0025】
踵側生地32は、その左右両側に、爪先側生地31と接合される2つの爪先側生地接合端部32a・32bを有する。また、踵側生地32は、履き口33の一部を構成する履き口側端部32cを有する。爪先側生地31の履き口側端部31cと踵側生地32の履き口側端部32cとが連なるように爪先側生地31と踵側生地32とが接合されることにより、履き口33が形成される。さらに、踵側生地32は、側面生地3の外周縁部37の一部を構成し、足底生地2の外周縁部2dと接合される足底側端部32dを有する。爪先側生地31の足底側端部31dと踵側生地32の足底側端部32dとが連なるように爪先側生地31と踵側生地32とが接合され、側面生地3の外周縁部37が形成される。
【0026】
(切欠部)
踵側生地32には、踵部35の中央部に、踵側生地32の一部を切り欠いた切欠部41が形成される。この切欠部41は、履き口33(履き口側端部32c)へ達しないように、踵側生地32の足底側端部32dから履き口33へ向かって形成される。すなわち、切欠部41は、踵側生地32を縦断しないように、踵側生地32の高さ方向の幅(すなわち、履き口側端部32cと足底側端部32dとの間隔)の略中間位置まで形成される。これにより、踵側生地32は、左右に分断されず、履き口33側で繋がった形状となる。
【0027】
本実施形態では、切欠部41は、踵側生地32の足底側端部32d側から履き口33へ向かって略V字型に形成される。具体的には、切欠部41の幅、すなわち切欠部41を規定する2つの切欠端部41a・41bの間隔が、履き口33へ向かって徐々に減じるように切欠部41が形成される。このため、切欠部41を接合することにより、足Fの踵の形状に沿った立体的な曲面状に踵部35を形成することができる。
【0028】
なお、切欠部41の切欠端部41a・41bの形状は、直線状であってもよいが、曲線状であることが好ましい。例えば、切欠部41の切欠端部41a・41bを、切欠部41の内側に反った曲線状(円弧状)とすることにより、足Fの踵の形状に沿った立体的な曲面状に踵部35を好適に形成することができる。なお、切欠部41の高さ、幅、形状等は、フットカバー1の用途、サイズ、または生地の材質等によって適宜変更され得る。
【0029】
(踵接合線)
踵接合線4は、切欠部41を接合する接合部である。踵接合線4は、切欠部41の切欠端部41a・41b同士を互いに接合することにより、切欠部41の隙間を閉じる。切欠部41を接合することにより、切欠部41の形状に応じて、踵部35の形状が立体的な曲面状に形成される。このため、足Fの踵の形状に沿って湾曲するように切欠部41を形成し、この切欠部41を接合することにより、足Fの踵の形状に沿った立体的な曲面状に踵部35を形成することができる。
【0030】
踵接合線4は、例えば縫製等によって切欠端部41a・41b同士を互いに接合する。このため、踵接合線4は、踵部35の中央部に、足底側端部32dから履き口33へ向かって、踵側生地32を縦断しないように、踵側生地32の高さ方向の幅の略中間位置まで形成される。
【0031】
このように、踵接合線4が踵部35を縦断しないため、踵接合線4が踵部35を縦断する場合に比べて、着用時の負荷により踵接合線4が解れ難く、踵部35の強度を向上させることができる。特に、足底側端部32dから履き口33へ向かって踵接合線4を形成することにより、フットカバーの着用時において、最も負荷がかかる履き口33に踵接合線4が形成されていない。このため、着用時の負荷により踵接合線4がより解れ難くなり、踵部35の強度をさらに向上させることができる。
【0032】
(接着テープ)
接着テープ43は、踵接合線4を覆うように、踵側生地32の内側(肌に接する側)に貼付される。接着テープ43は、アクリル系、シリコン系等の樹脂、または合成ゴム等の粘着性の材料を含む接着層を含む。踵側生地32の内側に、踵接合線4上に接着テープ43を貼付することにより、踵接合線4が解れ難くなり、踵接合線4の接合強度を増加させることができると共に、踵接合線4が足に直接当たることによる不快感を低減することができる。また、踵部35の曲面状の形状を、接着テープ43によって保持することができる。
【0033】
なお、接着テープ43は、踵接合線4を覆うように、踵側生地32の外側(靴の内側に接する側)に貼付されてもよい。これにより、踵接合線4の接合強度を増加させることができると共に、踵接合線4上に接着テープ43を容易に貼付することができる。
【0034】
上述した構成のフットカバー1では、踵部35(踵側生地32)が立体的な曲面状に形成される。また、側面生地3が爪先側生地31と踵側生地32とを接合することにより、踵側生地32が立ち上がるように側面生地3を形成することができる。このため、足底生地2と側面生地3とが接合された状態で、踵側生地32が足底生地2から立ち上がり、踵側生地32に追随して、爪先側生地31の踵側生地接合端部31a・31b側も立ち上がる。これにより、フットカバー1は、足Fにフィットするように立体的に構成される。したがって、足Fとフットカバー1との密着性を高め、フットカバー1の脱げまたはずれを好適に抑制することができる。
【0035】
なお、踵部35を立体的な曲面状にすることが可能であれば、踵接合線4の位置および数は特に限定されない。例えば複数の踵接合線4が、踵部35に形成されていてもよい。また、上述した例では、踵側生地32の足底側端部32d側に踵接合線4を形成したが、踵側生地32の履き口側端部32c側、または履き口側端部32c側および足底側端部32dの双方に踵接合線4を形成してもよい。これにより、足Fの踵の形状によりフィットした立体的な曲面状に踵部35を形成することができる。
【0036】
また、上述した例では、側面生地3が爪先側生地31と踵側生地32とを接合することによって構成される例について説明したが、この例に限らず、例えば、側面生地3は1枚の生地のみによって構成されてもよいし、3枚以上の生地から構成されてもよい。
【0037】
また、上述した例では、爪先側生地31および踵側生地32は、それぞれ略左右対称である例について説明したが、左右非対称であってもよい。人の足Fの形状は左右非対称であるため、爪先側生地31および踵側生地32を左右非対称に形成することにより、より人の足Fの形状にフィットさせることができる。例えば、足Fの親指側の方が小指側と比較して足甲の厚みは大きいが、厚みの立ち上がりの角度が小指側よりも急であるため、親指側から履き口33までの長さが短い。逆に、小指側は親指側と比較して、足Fの甲の厚みが薄いが、厚みの立ち上がりの角度が親指側よりも緩いため、小指側から履き口33までの長さが長くなる。そのため、小指側の爪先側生地31の幅(高さ)を親指側より大きくすることにより、足Fの親指側と小指側とをバランスよくフットカバー1で覆うことができる。
【0038】
[フットカバーの製造方法]
次に、
図6を参照して、フットカバー1の製造方法について説明する。フットカバー1の製造方法は、足底生地2を形成する足底形成工程と、側面生地3を形成する側面形成工程と、足底生地2の外周縁部2d(周縁)に側面生地3を接合する接合工程とを含む。
【0039】
フットカバー1の製造方法では、側面形成工程にて、足Fの踵に対応する側面生地3の踵部35に、側面生地3の一部を切り欠いた切欠部41を縫製等により接合して踵接合線4を形成する。これにより、足Fの踵の形状に沿った立体的な曲面状に踵部35を形成して、脱げまたはずれを抑制することができる。
【0040】
次に、また、切欠部41を接合後、接合工程にて、側面生地3の外周縁部37と、足底生地2の外周縁部2dとを接合する。これにより、フットカバー1が立体的に形成される。
【0041】
次に、テープ貼付工程にて、踵接合線4を覆う接着テープ43を側面生地3の内側から貼付する。このテープ貼付工程では、足Fの踵の形状を模して立体的に形成された治具5に踵部35を装着し、踵接合線4を覆う接着テープ43を側面生地3の内側から貼付する。
【0042】
図6は、接着テープ43を貼付するテープ貼付工程の一例を説明する図である。
図6に示すように、接着テープ43の貼付は、例えば、足Fの踵の形状を模して立体的に形成された治具5を用いて行う。治具5の上部には、右側に下方へ凹んだ曲面5aが形成されており、左側に上方へ膨出した曲面5bが形成されている。右側の曲面5aは、足首から踵に至るまでの人の足Fの形状に形成され、左側の曲面5bは、踵から足裏に至るまでの人の足Fの形状に形成されている。
【0043】
フットカバー1を裏返して踵接合線4を露出させ、踵部35が治具5の曲面5b上に位置するように、裏返したフットカバー1を治具5に装着する。そして、曲面5b上に配置された踵接合線4を覆うように、接着テープ43を側面生地3の内側(肌に接する側)に載せて、接着テープ43を熱融着する。
【0044】
なお、テープ貼付工程にて、接着テープ43は側面生地3の外側(靴の内側に接する側)から貼付してもよい。この場合、フットカバー1を裏返さずに、踵部35が治具5の曲面5b上に位置するように、フットカバー1を治具5に装着する。そして、曲面5b上に配置された踵接合線4を覆うように、接着テープ43を側面生地3の外側に載せて、接着テープ43を熱融着する。これにより、踵接合線4上に接着テープ43を容易に貼り付けることができる。
【0045】
このように、踵接合線4上に接着テープ43を貼付することにより、踵接合線4の接合強度を増加させると共に、踵接合線4が足Fに直接当たることによる不快感を低減することができる。また、足Fの踵の形状を模して立体的に形成された治具5を用いて接着テープ43の貼付を行うため、接着テープ43を足Fの踵の形状に沿って貼着することができる。これにより、切欠部41を接合して形成された踵部35の曲面状の形状を、接着テープ43によって保持することができる。
【0046】
[変形例1]
次に、
図7~
図12に基づいて、フットカバー1の変形例について説明する。
図7は、
図5に示される踵側生地32の変形例を示す図である。
図7に示すように、踵側生地32(側面生地3)に、切欠部41に替えて、折込部42を形成してもよい。折込部42は、踵側生地32の一部を踵側生地32の内側へ折り込んで形成される。
【0047】
折込部42は、例えば曲線で形成される折込端部42aおよび折込端部42bにおいて、踵側生地32の一部を踵側生地32の内側へ折り込んで形成される。また、折込端部42aと折込端部42bの間には、谷折部42cが形成される。谷折部42cの位置で踵側生地32を谷折りした状態で、折込端部42aと折込端部42bとを接合することにより、足Fの踵の形状に沿った曲面状に踵部35を形成することができる。
【0048】
[変形例2]
図8~
図12は、フットカバー1の変形例を構成する各生地を示す模式図である。具体的には、
図8は、足底生地2を平置きした状態の一例を示す平面図であり、
図9は、爪先側生地31を平置きした状態の一例を示す平面図であり、
図10は、側辺生地38、39を平置きした状態の一例を示す平面図であり、
図11は、踵側生地32を平置きした状態の一例を示す平面図である。また、
図12は、
図8~
図11に示される各生地の接合方法を示す平面図である。変形例に係るフットカバーは、例えば紳士用のフットカバーとして利用されるものである。
【0049】
図8~12に示すように、側面生地3は、爪先側生地31および踵側生地32に加えて、2つの側辺生地38、39をさらに含む。側辺生地38は足Fの親指側(内側)の爪先と踵の間の側面を覆い、側辺生地39は小指側(外側)の爪先と踵の間の側面を覆う。側面生地3は、足Fの爪先側から踵側に向かって、爪先側生地31、側辺生地38・39および踵側生地32がこの順で接合されることによって構成される。
【0050】
爪先側生地31は、足Fの爪先を覆う生地であり、側面生地3の外周縁部37の一部を構成する足底側端部31dと、履き口33の一部を構成する履き口側端部31cとを有する。また、爪先側生地31は、側辺生地38の爪先側生地接合端部38aに接合される側辺生地接合端部31aと、側辺生地39の爪先側生地接合端部39aに接合される側辺生地接合端部31bとを有する。
【0051】
側辺生地38は、親指側の爪先側生地31と踵側生地32との間に接合される。側辺生地38は、側面生地3の外周縁部37の一部を構成する足底側端部38dと、履き口33の一部を構成する履き口側端部38cとを有する。また、側辺生地38は、爪先側生地31の側辺生地接合端部31aに接合される爪先側生地接合端部38aと、踵側生地32の側辺生地接合端部32aに接合される踵側生地接合端部38bとを有する。
【0052】
側辺生地39は、小指側の爪先側生地31と踵側生地32との間に接合される。側辺生地39は、側面生地3の外周縁部37の一部を構成する足底側端部39dと、履き口33の一部を構成する履き口側端部39cとを有する。また、側辺生地39は、爪先側生地31の側辺生地接合端部31bに接合される爪先側生地接合端部39aと、踵側生地32の側辺生地接合端部32bに接合される踵側生地接合端部39bとを有する。
【0053】
踵側生地32は、側面生地3の外周縁部37の一部を構成する足底側端部32dと、履き口33の一部を構成する履き口側端部32cとを有する。また、踵側生地32は、側辺生地38の踵側生地接合端部38bに接合される側辺生地接合端部32aと、側辺生地39の踵側生地接合端部38bに接合される側辺生地接合端部32bとを有する。
【0054】
踵側生地32の中央部には、足底側端部32d側に切欠部41が形成される。この切欠部41を接合することにより、足Fの踵の形状に沿った曲面状に踵部35を形成することができる。
【0055】
爪先側生地31、側辺生地38・39と、踵側生地32とを接合することにより、爪先側生地31の履き口側端部31cと、側辺生地38・39の履き口側端部38c、39cと、踵側生地32の履き口側端部32cとが略楕円状に連なる。これにより、足Fを出し入れするための履き口33が形成される。
【0056】
また、爪先側生地31の足底側端部31dと、側辺生地38・39の足底側端部38d・39dと、踵側生地32の足底側端部32dとが連なり、足底生地2の外周縁部2dと接合される側面生地3の外周縁部37が形成される。
【0057】
本変形例の側面生地3では、足長方向における側辺生地38・39の長さを調整することにより、側面生地3のサイズを容易に変更することができる。このため、例えば紳士用のフットカバーのように大きいサイズにも対応した側面生地3を容易に形成することができる。
【0058】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図13および
図14に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0059】
図13は、本発明の実施形態2に係る側面生地3を平置きした状態の一例を示す平面図である。
図14は、
図13に示される側面生地3に接合される足底生地2を平置きした状態の一例を示す平面図である。
【0060】
図13に示すように、本実施形態に係る側面生地3は、2つの切欠部41が踵部35に形成される点、および側面生地3が1枚の略U字型の生地で構成される点で、実施形態1と相違する。
【0061】
側面生地3は、踵側接合端部3aと踵側接合端部3bとが円弧状に形成される。踵側接合端部3aと踵側接合端部3bとが互いに接合されることにより、環状の側面生地3が形成される。
【0062】
2つの切欠部41は、踵部35の両側部に、側面生地3の外周縁部37側から形成される。複数の切欠部41をそれぞれ接合して踵接合線4を形成することによって、踵部35の強度低下を抑えつつ、足Fの踵の形状によりフィットした曲面状に踵部35を形成することができる。
【0063】
なお、側面生地3は、踵部35の両側部の少なくとも一方に切欠部41が形成されていればよい。また、側面生地3は、踵部35の両側部の少なくとも一方に加えて、踵部の中央部にも切欠部41が形成されていてもよい。
【0064】
[まとめ]
本発明の一態様に係るフットカバーは、足の足裏を覆う足底生地と、前記足底生地の周縁に接合され、前記足底生地とは反対側に履き口が形成された、前記足の側周面を覆う側面生地とを含み、前記足の踵に対応する前記側面生地の踵部に、前記側面生地の一部を切り欠いた切欠部、または、前記側面生地の一部を該側面生地の内側へ折り込んだ折込部を接合して、前記踵部を前記足の踵の形状に沿った立体的な曲面形状にする踵接合部が形成される。
【0065】
前記の構成によれば、側面生地の踵部に、切欠部または折込部を接合する踵接合部が形成されることによって、フットカバーの踵部を足の踵の形状に沿った曲面状に形成することができる。これにより、着用感および踵部の強度低下を抑えつつ足の踵の形状に沿った立体的な曲面形状に踵部を形成して、脱げまたはずれを抑制するフットカバーを実現することができる。
【0066】
また、本発明の一態様に係るフットカバーでは、前記踵接合部は、前記足底生地の周縁に接合される足底側端部から前記履き口へ向かって形成されてもよい。
【0067】
前記の構成によれば、踵接合部は、足底生地の周縁に接合される足底側端部から履き口へ向かって、つまり下側から上側へ向かって形成される。フットカバーの着用時において、最も負荷がかかる履き口に踵接合部が形成されていないため、履き口に形成された踵接合部が解れたり、生地が破れたりするのを防ぐことができる。
【0068】
また、本発明の一態様に係るフットカバーでは、前記切欠部は、曲線状に切り欠かれていてもよい。
【0069】
前記の構成によれば、切欠部は、曲線状に生地が切り欠かれており、曲線状の切欠部を立体的に接合することによって、フットカバーの踵部を、より足Fの踵の形状に沿った曲面状に形成することができる。
【0070】
また、本発明の一態様に係るフットカバーでは、前記踵接合部が、前記踵部の中央部に形成されてもよい。
【0071】
前記の構成によれば、踵接合部が踵部の中央部に形成されているため、フットカバーの踵部を、効果的に、足Fの踵の形状に沿った曲面状に形成することができる。
【0072】
また、本発明の一態様に係るフットカバーでは、前記踵接合部は、前記踵部の両側部の少なくとも一方に形成されてもよい。
【0073】
前記の構成によれば、踵接合部が踵部の両側部に複数形成されている構造とすることができるため、フットカバーの踵部を、より細かく足Fの踵の形状に沿った曲面状に形成することができる。
【0074】
また、本発明の一態様に係るフットカバーでは、前記踵接合部を覆う接着テープが前記側面生地の内側に貼付されてもよい。
【0075】
前記の構成によれば、フットカバーの内側(肌に接する側)において、踵接合部の上に接着テープをさらに貼付することにより、踵接合部の接合強度を増加させると共に、踵接合部が足に直接当たることによる不快感を低減することができる。また、踵部の曲面状の形状を、接着テープによって保持することができる。
【0076】
また、本発明の一態様に係るフットカバーでは、前記側面生地は、前記足の爪先に対応する爪先部を含む爪先側生地と、前記踵部を含む踵側生地とから構成されてもよい。
【0077】
前記の構成によれば、爪先側生地と踵側生地とを接合することにより、踵側生地が立ち上がるように前記側面生地を形成することができる。これにより、側面生地を足によりフィットさせることができる。
【0078】
また、本発明の一態様に係るフットカバー製造方法は、足の足裏を覆う足底生地を形成する足底形成工程と、前記足底生地とは反対側に履き口が形成された、前記足の側周面を覆う側面生地を形成する側面形成工程と、前記足底生地の周縁に側面生地を接合する接合工程とを含み、前記側面形成工程にて、前記足の踵に対応する前記側面生地の踵部に、前記側面生地の一部を切り欠いた切欠部、または、前記側面生地の一部を該側面生地の内側へ折り込んだ折込部を接合して、前記踵部を前記足の踵の形状に沿った立体的な曲面形状にする踵接合部を形成する。
【0079】
前記の方法によれば、着用感および踵部の強度低下を抑えつつ足の踵の形状に沿った立体的な曲面形状に踵部を形成して、脱げまたはずれを抑制するフットカバーを製造することができる。
【0080】
また、本発明の一態様に係るフットカバー製造方法では、前記足の踵の形状を模して立体的に形成された治具に前記踵部を装着し、前記踵接合部を覆う接着テープを前記側面生地の内側から貼付するテープ貼付工程をさらに含む。
【0081】
前記の方法によれば、フットカバーの内側(肌に接する側)において、踵接合部の上に接着テープをさらに貼付することにより、踵接合部の接合強度を増加させると共に、踵接合部が足に直接当たることによる不快感を低減することができる。また、踵部の曲面状の形状を、接着テープによって保持することができる。
【0082】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1 フットカバー
2 足底生地
2d 外周縁部(周縁)
3 側面生地
4 踵接合線(踵接合部)
5 治具
31 爪先側生地(側面生地)
32 踵側生地(側面生地)
33 履き口
34 爪先部
35 踵部
41 切欠部
42 折込部
43 接着テープ
F 足