(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
F24F 8/80 20210101AFI20240712BHJP
【FI】
F24F8/80 254
F24F8/80 236
F24F8/80 238
(21)【出願番号】P 2021022065
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591269712
【氏名又は名称】アンデス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】是川 天一
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-242109(JP,A)
【文献】特開2019-143856(JP,A)
【文献】特開2000-025949(JP,A)
【文献】実開昭59-026529(JP,U)
【文献】国際公開第2009/069525(WO,A1)
【文献】特開2017-009243(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03385625(EP,A1)
【文献】特開2010-243068(JP,A)
【文献】実開昭58-133735(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 8/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部に吸い込んだ空気を浄化して外部に吹き出す空気清浄装置において、
前記ケーシングの上面部に上方吹出口が設けられ、前記ケーシングの側面部に側方吹出口が設けられ、
前記ケーシングの内部にて、前記上方吹出口および前記側方吹出口からそれぞれ空気を吹き出す風量割合を調整可能な吹出調整手段を備え、
前記吹出調整手段は、前記上方吹出口および前記側方吹出口にそれぞれ向かう各通風路の一方を閉じると共に他方を開く状態に開閉するルーバーを備え、
前記側方吹出口は、前記ケーシングの周方向に亘って区画された四方の側面部ごとに配置され、
前記ルーバーは、前記各側面部の側方吹出口に対応して4つ設けられ、
前記各ルーバーは、それぞれ対応する前記各側方吹出口ごとに、一方向に傾いて前記側方吹出口に向かう通風路を閉じると共に隣接する前記上方吹出口に向かう通風路を開く一方、他方向に傾いて前記側方吹出口に向かう通風路を開くと共に隣接する前記上方吹出口に向かう通風路を閉じるように回動可能に設けられたことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
前記各ルーバーを、それぞれ同時に回動させる開閉機構を備えることを特徴とする請求項
1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記各ルーバーは、それぞれ両端が軸支され下端側が内外方向へ回動し、
前記開閉機構は、正逆方向に回転するピニオンと、前記各ルーバーに対応した複数のラックと、を備え、
前記各ラックは、それぞれ前記ピニオンに噛み合い、該ピニオンの外周に亘って等間隔に並び接線方向に延びる状態に配置され、
前記各ラックに、それぞれの外側に位置する前記各ルーバーに向かうアームが設けられ、
前記各アームの先端側は、前記ピニオンの回転による前記ラックの直線移動に伴って、それぞれ対応する前記ルーバーの上端側に押し引き可能に連結されたことを特徴とする請求項
2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記開閉機構は、前記ピニオンを手動で回転させる操作部を備え、
前記操作部は、前記ピニオンの回転軸上に固定されたツマミからなり、
前記ツマミは、前記ケーシングの上面部の中央を貫通して配置され、
前記ツマミを、正方向へ回転させると前記ピニオンも正方向へ回転する一方、逆方向へ回転させると前記ピニオンも逆方向へ回転することを特徴とする請求項
3に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記ルーバーのうち少なくとも前記上方吹出口に向かう通風路を臨む面に、整流用のリブが設けられ、
前記リブは、前記ルーバーの面に対してアール断面に連なることを特徴とする請求項
1,2,3または4に記載の空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングの内部に吸い込んだ空気を浄化して外部に吹き出す空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気を浄化するための空気清浄機において、ケーシングにある吹出口より空気を吹き出す方向を変更できるものが知られている。例えば、特許文献1に記載の技術では、吹出口に設けた平板状の風向板を、その軸部を中心に回動させることにより、吹出口からの空気の吹き出し方向を変更するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の技術では、風向板を含む吹出口自体の向きを直接変更するものであった。従って、空気を吹き出す方向を変更可能な範囲は、吹出口から広がる比較的狭い角度に限定されてしまう。ここで、空気を吹き出す方向を変更可能な範囲を広げるためには、吹出口自体が大がかりな構成となるばかりでなく、かかる構成は外部に露出するため、構造的に脆弱となる虞があるばかりでなく、装置の外観品質を損なう虞もあった。
【0005】
また、吹出口は、あくまで一カ所にまとめて設けられている。そのため、空気を複数の方向へ異なる箇所から別々に吹き出すことはできず、ましてや、複数の方向へ吹き出す風量を任意に調整するような使用は不可能であった。従って、例えば、装置本体を机の下に設置するなど上方に気流を遮るものがあったり、あるいは部屋の片隅に設置するなど側方に気流を遮るものがある場合、これらの設置場所の状況に合わせて、空気の最適な吹き出し方向を調整する使用はできず不便であった。
【0006】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題点に着目してなされたものであり、設置場所の状況に合わせて最適な空気の循環を実現することができ、しかも、吹出口自体の構造的な強度や外観品質を高めることができる空気清浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明の一態様は、
ケーシングの内部に吸い込んだ空気を浄化して外部に吹き出す空気清浄装置において、
前記ケーシングの上面部に上方吹出口が設けられ、前記ケーシングの側面部に側方吹出口が設けられ、
前記ケーシングの内部にて、前記上方吹出口および前記側方吹出口からそれぞれ空気を吹き出す風量割合を調整可能な吹出調整手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る空気清浄装置によれば、設置場所の状況に合わせて最適な空気の循環を実現することができ、しかも、吹出口自体の構造的な強度や外観品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の内部構造を示す縦断面図(
図3中のI-I線断面図)である。
【
図2】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の上面部を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の内部で上方に向かう空気の流れを示す縦断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の内部で側方に向かう空気の流れを示す縦断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のファンおよび吹出調整手段のユニットを示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のルーバーの開閉機構を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のルーバーの開閉を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のルーバーを内面から見た斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のルーバーを外面から見た斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のルーバーを内面から見た正面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のルーバーを左側から見た側面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のルーバーを下側から見た底面図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のルーバーを各部位で切断した端面図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の吹出調整手段においてルーバーが最外側角度にあるときの状態を示す平面図、横断面図、底面図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の吹出調整手段においてルーバーが最外側と最内側の間の回動角度にあるときの状態を示す平面図、横断面図、底面図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の吹出調整手段においてルーバーが最内側角度にあるときの状態を示す平面図、横断面図、底面図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のルーバーの回動角度と、上方吹出口および側方吹出口の風量割合との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
本実施形態に係る空気清浄装置10は、ケーシング11の内部に吸い込んだ空気を浄化して外部に吹き出す装置である。以下、空気清浄装置10を、例えば一般家庭やホテルの客室等、比較的限られた空間に設置する場合を想定して、全体的にコンパクトな大きさに構成したものを例に説明する。
【0011】
<空気清浄装置10の概要>
図1は、空気清浄装置10の内部構造を示す縦断面図(
図3中のI-I線断面図)である。
図2は、空気清浄装置10の外観を示す斜視図である。
図3は、空気清浄装置10の上面部16を示す平面図である。
図1から
図3に示すように、空気清浄装置10は、例えば四角柱状に形成されたケーシング11の内部に、フィルター20やファン30等の関連部品を収納して構成されている。
【0012】
<ケーシング11について>
図2示すように、ケーシング11は、全体的に内部が空洞の四角柱状であるが、底面より上面にかけて、水平方向の正方形横断面が緩やかに大きくなっている。ケーシング11の底面側は、台座12上に支持されている。ここでケーシング11の底面側は、台座12によって設置場所の床面より上方に離隔する。台座12上に被らない底面側の周囲は、そのまま開口しており、外部から空気を吸い込む吸込口13となっている。なお、ケーシング11および台座12、それに後述する上面部16は、例えば合成樹脂により形成されている。
【0013】
ケーシング11は、本実施形態では四角柱状であるため、その周方向に亘って平面状に区画された4つの側面部14を備えている。各側面部14の下端側にも、それぞれ外部から空気を吸い込む吸込口15が設けられている。吸込口15は、各側面部14の下端側の一定幅の領域に、例えば数多の小孔を密に配置して形成されている。なお、吸込口15は、前記吸込口13と内部で連通している。
【0014】
ケーシング11の上面部16は、正方形の蓋状に形成されて後付けされている。
図3に示すように、上面部16の中央には、後述する操作パネル47が配置され、操作パネル47の周囲には、浄化した空気を外部に吹き出す上方吹出口17が設けられている。上方吹出口17は、上面部16のうち操作パネル47を除く全域に、例えば直角三角形の区画を格子状に並べて、この区画ごとに数多のスリットを密に配置したグリルとして形成されている。
【0015】
上方吹出口17は、浄化した空気を上方に向けて吹き出すものである。ここで上方吹出口17は、必ずしも鉛直方向における上方へ空気を吹き出す構成に限定されるものではない。例えば上方吹出口17をなす前記スリットは、上方への吹き出しにある程度の方向性を与える羽根間の隙間として形成しても良い。なお、上面部16において、上方吹出口17が設けられる領域の大きさや位置は、適宜変更し得る設計事項である。
【0016】
また、各側面部14の上端側にも、それぞれ浄化した空気を外部に吹き出す側方吹出口18が設けられている。側方吹出口18は、ケーシング11の周方向に亘り区画された四方の側面部14ごとに配置されている。側方吹出口18は、各側面部14の上端側の一定幅の領域に、例えば数多の小孔を密に配置して形成されている。なお、側方吹出口18は、前記上方吹出口17に近接して直角に隣接しているが、上方吹出口17とは内部では連通しないように仕切られている。これについて詳しくは後述する。
【0017】
側方吹出口18は、浄化した空気を側方に向けて吹き出すものである。ここで側方吹出口18は、必ずしも水平方向における側方へ空気を吹き出す構成に限定されるものではない。例えば側方吹出口18をなす前記数多の小孔の内側に、側方への吹き出しにある程度の方向性を与える何らかの構造を付加しても良い。なお、各側面部14において、それぞれ側方吹出口18が設けられる領域の大きさや位置は、適宜変更し得る設計事項である。
【0018】
<フィルター20について>
図1に示すように、ケーシング11の内部の底面側には、フィルター20が収納されている。フィルター20は、例えば不織布や樹脂製の網目状のシート等から円筒形に形成されている。フィルター20は、吸込口13,15から吸い込まれた空気が、外周側より内周側に向けて通過するときに空気中の塵埃を捕集するものである。ここで塵挨とは、綿ゴミ、糸屑、その他、除去されるべき粒子を広く含むものである。
【0019】
フィルター20は、目詰まりを防ぐために、定期的に清掃ないし交換されるものである。フィルター20は、ケーシング11を逆さにして底面側開口より台座12を取り外した状態で、ケーシング11の内部に出し入れ可能に収納されている。ケーシング11の内部には、フィルター20の収納空間を仕切るための仕切板21が設けられている。
【0020】
フィルター20は、ケーシング11の内部で仕切板21の下側に収納されている。フィルター20の中空部の上端開口は、次述の連通部材23を介してファン30と連通している。一方、フィルター20の中空部の下端開口は、台座12によって塞がれた状態となる。なお、空気清浄装置10における集塵手段は、フィルター20だけに限らず、他に電気集塵機や脱臭フィルター、光触媒ユニット、マイナスイオン発生機、オゾン発生器等を適宜組み合わせても良い。
【0021】
図1に示すように、ケーシング11の内部において、フィルター20の仕切板21の上側には略筒状の連通部材23が配設されている。連通部材23の下端開口は、仕切板21にある穴を間にしてフィルター20の中空部の上端開口と連通している。また、連通部材23の上側にはファン30が配設され、連通部材23の上端開口は、ファン30と連通している。
【0022】
<ファン30について>
ファン30は、モーター40によって回転駆動され、吸込口13,15から外部の空気が吸い込まれ、上方吹出口17ないし側方吹出口18から浄化された空気を吹き出す空気の流れを発生させるものである。ファン30は、例えば互いに対向する主壁31と副壁32と間に、複数の羽根33を円周方向に一定間隔で並べて支持した遠心式ファンである。なお、ファン30の材質は、例えば合成樹脂である。
【0023】
本実施形態のファン30は、特に遠心式ファンのうち、複数の羽根33がそれぞれ回転方向と逆方向を向くように構成され、静圧が高く大風量のターボファンに相当する。主壁31は、その中心部に向かって内側に凹むように傾斜した略漏斗状に形成されている。主壁31の中心部には、例えば特別な軸受部材42を介して、モーター40の回転軸41が軸支されている。副壁32は、その中心部が大きく開口しており、開口に向かって下方に傾斜する略漏斗状に形成されている。副壁32の開口は空気の送入口となり、前記連通部材23の上端開口と連通接続されている。
【0024】
ファン30の外周、すなわち主壁31および副壁32の外周の間で、かつ各羽根33の間が、空気の送出口となっている。よって、ファン30が回転すると、副壁32の開口(送入口)より空気が吸い込まれ、ファン30の外周(送出口)より空気は遠心方向に送り出される。ファン30から送り出された空気は、ケーシング11の内部を通って上方に流れるように設計されている。
【0025】
<モーター40について>
図1に示すように、モーター40は、給電された電力によって回転駆動する電動式であり、その回転軸41に固定されたファン30を回転させるものである。モーター40は、筒状のケース43に収納された状態で、ファン30の主壁31の上側に取り付けられている。ここでモーター40およびケース43は、ファン30と一体に組み合わせてユニット化しても良い。また、ケース43の上側には、
図6に示すように、平面視で略正方形のハウジング44が配設されている。ここでハウジング44は、上下方向に開口している。
【0026】
<通風路50,51,52について>
図1に示すように、ケーシング11の内部にて、各側面部14の内壁と、ファン30の外周(送出口)およびケース43の外周との間は、上下に連通してファン30から送り出された空気が上方に向かう通風路50となっている。ファン30の外周(送出口)が対向する位置の各側面部14の内壁に沿って、例えば周方向に仕切ることで空気の流れを円滑にするガイド部材34を設けても良い。
【0027】
ケーシング11の内部にて、ハウジング44は、その四方の側壁外面が各側面部14の内壁との間に隙間を空けて配設され、この隙間が、通風路50の上側より側方吹出口18に向かう側方通風路52をなしている。さらに、ハウジング44の内部には、その中央に一回り小さい略正方形の支持部材45が配設されている。ここで支持部材45は、その四方の側壁外面がハウジング44の四方の側壁内面との間に隙間を空けて配設され、この隙間が、通風路50の上側より上方吹出口17に向かう上方通風路51をなしている。
【0028】
また、支持部材45は、その底面側開口がケース43の上面側開口に合致し、モーター40の上半側に被さるように配設され、ケース43と共にモーター40を収納するものとなる。支持部材45の上面側には、後述する開閉機構が配設され、さらに、操作パネル47を上面とするボックス46が上から被さるように配設されている。
【0029】
操作パネル47は、ケーシング11の上面部16の中央開口を貫通して外部に表出している。操作パネル47には、空気清浄装置10を操作するスイッチや表示部、それに後述するツマミ80が設けられている。なお、モーター40のケース43、ハウジング44、支持部材45、それにボックス46は、それぞれ例えば合成樹脂により一体成形すると良い。
【0030】
図1に示すように、ハウジング44の側壁上端は、上面部16の内側に当接している。上面部16において、ハウジング44の側壁上端に囲まれた内側に、上方吹出口17は位置している。また、ハウジング44の側壁外面が対向する側面部14の上端側に、側方吹出口18は位置している。ハウジング44の側壁は、その内側の上方通風路51と、外側の側方通風路52との仕切りとなっている。よって、ハウジング44の側壁下端が、通風路50から上方通風路51と側方通風路52とが分岐する箇所となる。
【0031】
<吹出調整手段について>
図1に示すように、ケーシング11の内部には、上方吹出口17および側方吹出口18からそれぞれ空気を吹き出す風量割合を調整可能な吹出調整手段が設けられている。吹出調整手段は、ケーシング11の各側面部14の側方吹出口18に対応して設けられた4つのルーバー60を備えている。各ルーバー60は、ハウジング44に設けられており、それぞれ上方吹出口17および側方吹出口18の一方を閉じると共に他方を開く状態に開閉する。
【0032】
<<ルーバー60について>>
図6に示すように、ルーバー60は、例えば合成樹脂により両側方向に長い板状に形成されている。各ルーバー60は、それぞれ上端縁の両端が略水平な回転軸(ネジ)61を介して、ケーシング11の内部で上方通風路51と側方通風路52とが分岐する箇所、すなわちハウジング44の四方の側壁下端に回動可能に軸支されている。各ルーバー60は、ハウジング44の側壁下端より垂下し、それぞれ下端縁がケーシング11の内方向(一方向)および外方向(他方向)に回動するように設定されている。
【0033】
各ルーバー60は、それぞれ下端縁が側面部14の内面に当接し、上方通風路51を全開状態とする一方、側方通風路52を全閉状態とする最外側角度(
図4参照)と、それぞれ下端縁がケース43と支持部材45の合わせ目の段部に当接し、上方通風路51を全閉状態とする一方、側方通風路52を全開状態とする最内側角度(
図5参照)との間で回動する。各ルーバー60が最内側角度のとき、それぞれの両側端同士は周方向に当接し、四方の上方通風路51は周方向に亘って閉鎖される。
【0034】
各ルーバー60は、後述する開閉機構によって同時に回動可能であり、最外側角度と最内側角度との間で任意の回動角度に無段階に変更して保持することができる。各ルーバー60の回動角度の変更により、上方通風路51と側方通風路52の開口面積の比率を任意に変えることができる。すなわち、各ルーバー60の回動角度を変更することで、上方吹出口17および側方吹出口18からそれぞれ空気を吹き出す風量割合を無段階に調整することができる。この風量割合の調整について、詳しくは後述する。
【0035】
ルーバー60の内外のうち、内面が上方通風路51を臨む面となり、外面が側方通風路52を臨む面となる。
図9から
図11に示すように、ルーバー60の内外両面には、補強用のリブ62,63がそれぞれの基準面より図示した凹凸をなすように設けられている。リブ62,63は、ルーバー60の内外両面において、通風路50を流れてきた空気のファン30による旋回流と同一方向に沿って延びている。
【0036】
図11から
図13に示すように、ルーバー60の内面のリブ62は、ルーバー60の両側方向と斜めに交差する空気の旋回流と同一方向に延びる凸条が、両側方向に等間隔で並んでおり、隣り合う凸条間に、凸条と同一方向へ延びるアール断面の凹みが連なる凹凸をなしている。リブ62は、上方通風路51を流れる空気を、その旋回流と同一方向に沿わせて上方に導くものである。
【0037】
ルーバー60の外面のリブ63は、前述した内面のリブ62の凹凸に応じて成形時に厚みを一定に保つ結果として形成され、側方通風路52を流れる空気を、その旋回流と同一方向に沿わせて上方に導くものある。このリブ63も、ルーバー60の外面の基準面に対してアール断面に連なっている。なお、本実施形態では、ルーバー60の内外両面にリブ62,63を設けているが、ルーバー60の内外の何れか一方の面だけに、その基準面より突出するリブを設けるようにしても良い。
【0038】
<<開閉機構について>>
各ルーバー60は、開閉機構によって同時に回動可能に構成されている。各ルーバー60は、その上端側が開閉機構のアーム74に押し引き可能に連結されている。
図9、
図10に示すように、ルーバー60の上端縁の略中央には、開閉機構のアーム74と連結するための連結部64が上方に突設されている。連結部64は、ルーバー60の内面側に若干湾曲しており、その上端に横向きのピン65が突設されている。
【0039】
図7に示すように、開閉機構は、支持部材45の上面の中心に回転軸70を介して軸支され正逆方向に回転するピニオン71と、各ルーバー60に対応した4つのラック72と、を備えている。各ラック72は、それぞれ一端からピニオン71に噛み合い、該ピニオン71の外周に亘って等間隔に並び接線方向に延びる状態で、支持部材45の上面に配設されている。ピニオン71の正逆回転に伴って、各ラック72は、それぞれピニオン71の接線方向に沿って、回転軸70より離隔ないし近接するように同期して直線移動する。
【0040】
支持部材45の上面には、各ラック72を、それぞれが直線移動する軌跡上に案内する各種ガイド等が設けられている。例えば、支持部材45の上面には、各ラック72の軌跡に沿った凹部やレール、各ラック72にあるガイド溝73(
図7参照)に相対的に移動可能に嵌合し、各ラック72が直線移動する範囲を規制するピン65等が設けられている。なお、支持部材45は、その四隅がアーム状のリブを介して、ハウジング44の内側に固定されている。ここで支持部材45は、前述したようにハウジング44の側壁内面との間に上方通風路51を空けて配設されている。
【0041】
各ラック72の他端には、それぞれの延長線上に延びて、外側に位置する各ルーバー60に向かうアーム74が一体に設けられている。アーム74は、例えば合成樹脂によりラック72と共に一体成形すると良い。アーム74は、ラック72の一端に連なる箇所で外側に凹みをなすように屈曲してから、その先端側がラック72の直線移動する方向と平行になり、かつ回転軸70の放射方向になるべく平行に近寄るように延びる細幅の形状に設けられている。ここでアーム74の途中の凹みは、隣接するアーム74の一端との干渉を回避するための部位となっている(
図15(b)参照)。
【0042】
各アーム74の先端側は、ピニオン71の回転によるラック72の直線移動に伴って、それぞれ対応するルーバー60の上端側に押し引き可能に連結されている。各アーム74の先端側は、支持部材45の上面の周囲に延出して下方に屈曲しており、この屈曲部位に上下方向に延びるカム溝75が設けられている。アーム74のカム溝75には、ルーバー60の連結部64にあるピン65が相対的に移動可能に嵌合している。このような構成により、ピニオン71を回転させると、ラック72に連なるアーム74がルーバー60の上端側を押し引きし、ルーバー60の回動角度を変更することができる。
【0043】
<<ツマミ80について>>
図1、
図6に示すように、開閉機構は、ピニオン71を手動で回転させる操作部として、ピニオン71の回転軸70上に固定されたツマミ80を備えている。ツマミ80は、例えば合成樹脂により円筒状に形成されている。ツマミ80の下半部81は、大径で有底の円柱状であり、その底面にピニオン71が一体に固定されている。また、ツマミ80の上半部82は、下半側より小径であり、操作パネル47の中央にある円孔を貫通して外部に表出する上端には指で摘まめるリブが設けられている。
【0044】
ツマミ80を、正方向(例えば時計回り方向)へ回転させると、ピニオン71も正方向へ回転する一方、逆方向(例えば反時計回り方向)へ回転させると、ピニオン71も逆方向へ回転するように構成されている。これにより、ツマミ80を手動で回転させることによって、ピニオン71に噛み合っている各ラック72が直線移動し、これに伴い各ルーバー60の回動角度が調整される。
【0045】
ツマミ80の上端にあるリブの形状は、
図6に示した直径方向の延びる板状に限定されることなく、指で摘まめる形状であれば適宜変更し得る設計事項である。なお、操作パネル47には、開閉機構の操作部をなすツマミ80のほか、本空気清浄装置10の各種操作を行うスイッチ48a~48d、それに各種情報を表示する表示部49等が設けられている。
【0046】
<空気清浄装置10の作用>
次に、本実施形態に係る空気清浄装置10の作用について説明する。
図1に示すように、空気清浄装置10において、モーター40の駆動によりファン30が回転すると、ケーシング11の内部で、空気はファン30の外周(送出口)より遠心方向に送り出される。ファン30から送り出された空気は、ケーシング11の内部の通風路50を通って上方に流れる。
【0047】
このとき、ケーシング11の内部は負圧となり、底面側にある吸込口13,15から外部の空気が吸い込まれる。ケーシング11の内部に吸い込まれた空気は、フィルター20を通過して粉塵が除去され浄化される。浄化された空気は、フィルター20の内側から連通部材23を通って、再びファン30に引き込まれ、ファン30の外周より吹き出される。なお、空気清浄装置10の具体的な運転は、ケーシング11の上面部16にある操作パネル47のスイッチ48a~48d(
図3参照)を操作することで適宜設定することができる。
【0048】
ケーシング11の内部で、ファン30に連通した通風路50の上方(上流側)は、ハウジング44の側壁によって、内側の上方通風路51と、外側の側方通風路52とに区画されている。通風路50より上方に向かう空気は、吹出調整手段の各ルーバー60の回動角度(開閉)に応じて、上方通風路51と側方通風路52とに分配される。各ルーバー60の回動角度は、開閉機構のツマミ80の手動操作により、任意の角度に無段階に調整することができる。
【0049】
<<ルーバー60の回動(開閉)>>
図4に示すように、ルーバー60が、上方通風路51を全開状態とし、かつ側方通風路52を全閉状態とする最外側角度にあるとき、
図4中の白抜矢印のように、ファンから送出された空気は、通風路50を通って上方通風路51に導かれる。そして、上方通風路51に導かれた空気は、上方吹出口17に到達してケーシング11の上方に吹き出される。
【0050】
一方、
図5に示すように、ルーバー60が、上方通風路51を全閉状態とし、かつ側方通風路52を全開状態とする最内側角度にあるのとき、
図5中の白抜矢印のように、ファンから送出された空気は、通風路50を通って側方通風路52に導かれる。そして、側方通風路52に導かれた空気は、側方吹出口18に到達してケーシング11の周囲の側方に吹き出される。
【0051】
図15は、ファン30とケース43およびハウジング44のユニットにおいて、各ルーバー60が最外側角度の状態を示す(a)正面図、(b)D-D線断面図、(c)底面図である。
図15(b),(c)において、薄墨色で示す部分が、平面視で上方吹出口17が開口している部分であり、この部分を通って空気は上方通風路51に導かれる。なお、各図において、ユニットついての多少の形状の違いは、単に設計変更にすぎない。
【0052】
図16は、
図15と同じくユニットにおいて、各ルーバー60が最外側角度から内側に向かい最内側角度寄りの角度まで回動した状態を示す(a)正面図、(b)E-E線断面図、(c)底面図である。
図16(b),(c)において、薄墨色で示す部分が、平面視で上方吹出口17が開口している部分であり、
図15に示した開口部分と比べて狭まっている。
【0053】
図17も、
図15と同じくユニットにおいて、各ルーバー60が最内側角度の状態を示す(a)正面図、(b)F-F線断面図、(c)底面図である。
図17(b),(c)に示すように、平面視で上方吹出口17が開口している部分はなく、上方吹出口17は
図5に示す全閉状態となっている。このとき、各ルーバー60の両側端は、互いに周方向に当接している。
【0054】
<<開閉機構の操作>>
各ルーバー60は、開閉機構のツマミ80の回転操作よって同時に回動可能であり、最外側角度と最内側角度との間で任意の回動角度に無段階に変更して保持することができる。ここでツマミ80は、操作パネル47の中央の操作しやすい位置にあり、ツマミ80の上端にあるリブを摘まんで容易に回すことができる。
【0055】
使用者がツマミ80を正方向(例えば時計回り)に回転させると、同じ回転軸70上にあるピニオン71も正方向へ回転する。ピニオン71が回転すると、ピニオン71と噛み合う各ラック72に動力が伝達されて、各ラック72は、回転軸70を中心に互いに近接するように同期して直線移動する。このとき、各ラック72は、支持部材45上の各種ガイドによって案内される。また、各ラック72が直線移動する範囲は、ラック72のガイド溝73に移動可能に嵌合したピン65によって規制される。
【0056】
各ラック72の直線移動に伴って、各ラック72に連なるアーム74も直線移動し、アーム74の先端は、回転軸70に対して放射方向に近づく。すると、
図8において、ルーバー60の連結部64にあるピン65が、アーム74の移動に伴いカム溝75内を移動しつつ内側に引かれる。これにより、ルーバー60は、その回転軸61を中心として、
図8(b)から
図8(a)に示すように、側面視でケーシング11の外側に傾き(時計周り)、最外側角度(
図4参照)に向かうように調整される。
【0057】
一方、使用者がツマミ80を逆方向(例えば反時計回り)に回転させると、同じ回転軸70上にあるピニオン71も逆方向へ回転する。ピニオン71が回転すると、ピニオン71と噛み合う各ラック72に動力が伝達されて、各ラック72は、回転軸70を中心に互いに離隔するように同期して直線移動する。このとき、前述したように各ラック72は、支持部材45の上面にて移動方向や移動範囲が規制される。
【0058】
各ラック72の直線移動に伴って、各ラック72に連なるアーム74も直線移動し、アーム74の先端は、回転軸70に対して放射方向に遠ざかる。すると、
図8において、ルーバー60の連結部64にあるピン65が、アーム74の移動に伴いカム溝75内を移動しつつ外側に押される。これにより、ルーバー60は、その回転軸61を中心として、
図8(a)から
図8(b)に示すように、側面視でケーシング11の内側に傾き(反時計周り)、最内側角度(
図5参照)に向かうように調整される。
【0059】
<<風量割合の調整>>
以上のように、手動によるツマミ80の回転操作によって、各ルーバー60の回動角度を変更することにより、上方通風路51と側方通風路52の開口面積の比率を任意に変えることができる。これにより、上方吹出口17および側方吹出口18からそれぞれ空気を吹き出す風量割合を、無段階に調整することができる。
【0060】
図18は、各ルーバー60の回動角度と、上方吹出口17および側方吹出口18の風量割合との相関関係の一例をグラフ化したものである。
図18中の下段は、ケーシング11の内部において各ルーバー60の回動角度を少しずつ変えて示した縦断面図である。
図18中の上段は、下段の各ルーバー60の回動角度に対応した風量割合を示す棒グラフである。棒グラフでは、下側の濃い色の部分が上方吹出口17の風量割合(図中「上方」)であり、上側の薄い色の部分が側方吹出口18の風量割合(図中「側方」)である。
【0061】
詳しく言えば、
図18(a)に示すように、各ルーバー60が最内側角度(
図5参照)にあるとき、上方通風路51は全閉状態となり、側方通風路52は全開状態となる。これにより、通風路50からの空気は、側方通風路52だけを通り、側方吹出口18から吹き出される。この場合の風量割合は、側方吹出口18の風量割合が97.1%であるのに対して、上方吹出口17の風量割合は僅か2.9%となる。なお、上方通風路51が全閉状態であるにも関わらず、上方吹出口17の風量割合が0%にならないのは、多少の隙間が生じるためである。
【0062】
図18(b)に示すように、各ルーバー60を最内側角度よりも少し外側に所定角度だけ回動させると、上方通風路51は少しだけ開いた状態となり、側方通風路52は未だ大きく開いた状態が維持されている。これにより、通風路50からの空気は、ほとんど側方通風路52に導かれて、主に側方吹出口18から吹き出される。この場合の風量割合は、側方吹出口18の風量割合が85.0%であるのに対して、上方吹出口17の風量割合は15.0%となり、上方吹出口17からも空気が吹き出されていることが分かる。
【0063】
図18(c)に示すように、各ルーバー60をさらに外側に所定角度だけ回動させると、その分だけ上方通風路51の開度は上がる一方、逆に側方通風路52の開度は下がった状態となる。従って、通風路50からの空気は、未だ側方通風路52の方に多く導かれて、側方吹出口18から多く吹き出されるが、上方通風路51に導かれて、上方吹出口17から吹き出される風量も増えてくる。この場合の風量割合は、側方吹出口18の風量割合が62.9%と未だ5割以上であるが、上方吹出口17の風量割合も37.1%と増えている。
【0064】
図18(d)に示すように、各ルーバー60を下方へ垂下する角度まで大きく回動させると、今度は上方通風路51の開度の方が、側方通風路52の開度よりも大きくなり、上方通風路51と側方通風路52との開度が逆転する。従って、通風路50からの空気は、側方通風路52よりも上方通風路51により多く分配されることになる、この場合の風量割合は、側方吹出口18の風量割合が23.8%であるのに対して、上方吹出口17の風量割合は76.2%となり、側方吹出口18よりも上方吹出口17からの風量割合の方が大きくなっていることが分かる。
【0065】
図18(e)に示すように、各ルーバー60をさらに外側に回動させて最外側角度(
図4参照)にすると、上方通風路51は全開状態となり、側方通風路52は全閉状態となる。これにより、通風路50からの空気は、上方通風路51だけを通り、上方吹出口17から吹き出される。この場合の風量割合は、上方吹出口17の風量割合が98.9%であるのに対して、側方吹出口18の風量割合は僅か1.1%となる。なお、側方通風路52が全閉状態であるにも関わらず、側方吹出口18の風量割合が0%にならないのは、多少の隙間が生じるためである。
【0066】
以上のように、各ルーバー60の回動角度を変更することにより、上方吹出口17および側方吹出口18からそれぞれ空気を吹き出す風量割合を、無段階に調整することができる。すなわち、各ルーバー60が、最内側角度に近い回動角度であるほど、側方吹出口18から吹き出される風量が多くなり、上方吹出口17から吹き出される風量は少なくなる。逆に、各ルーバー60が、最外側角度に近い回動角度であるほど、上方吹出口17から吹き出される風量が多くなり、側方吹出口18から吹き出される風量は少なくなる。
【0067】
<<設置場所に応じた使用>>
上方吹出口17と側方吹出口18との具体的な風量割合は、空気を浄化したい空間における設置場所の状況に応じて適宜調整すれば良い。例えば、空気清浄装置10の設置場所において、直ぐ上方に遮る物がある場合(例えば机の下)、主に側方吹出口18から側方に向けて空気を吹き出すように調整する。これにより、遮蔽物のある上方への無駄な空気に流れを抑えことができ、側方吹出口18から吹き出された空気により、設置場所の空間の水平方向に広範囲に亘る気流を発生させることができる。
【0068】
また、空気清浄装置10の設置場所において、直ぐ側方に遮る物がある場合(例えば部屋の角隅)、主に上方吹出口17から上方に向けて空気を吹き出すように調整する。これにより、側方吹出口18から吹き出された空気が、直ぐ遮蔽物によって気流が抑えられることもなく、上方吹出口17から吹き出された空気により、設置場所の空間の上方から空間全体における空気の循環を促すことができる。
【0069】
もちろん、空気清浄装置10の設置場所の細かな状況や広さ(空間容積)等に応じて、上方吹出口17と側方吹出口18との具体的な風量割合を無段階に適宜調整することができる。これにより、空気清浄装置10から吹き出される空気の無駄な流れを抑えつつ、設置場所の状況により合致した最適な空気の循環を実現することが可能となる。
【0070】
<<吹出調整手段をケーシング11の内部に設けた意義>>
各ルーバー60やその開閉機構を含む吹出調整手段は、全てケーシング11の内部に設けられている。従って、上方吹出口17や側方吹出口18自体の構成は、当該部分においては、従来技術のような風向きを調整する風向板等は一切備えず、単なるスリットや小孔だけで足り、これらの開口より外部に露出する構造は存在しない。よって、これらの吹出口17,18が構造的に脆弱となる虞もなく、装置の外観品質を損なう虞もない。
【0071】
また、上方吹出口17と側方吹出口18とが、異なる位置に別々に設けられているため、本空気清浄装置10では、空気を吹き出す方向が、従来技術のように一カ所だけにまとまった吹出口から広がる角度範囲に限定されることはない。なお、上方吹出口17と側方吹出口18をなすスリットや小孔に関して、単に空気を外部に吹き出す機能に限らず、それぞれの外観にデザイン的な模様を施しても良い。
【0072】
<<ルーバー60のリブ62,63の作用>>
吹出調整手段の主要部をなすルーバー60は、合成樹脂により両側方向に長い板状に形成した場合、強度的に問題があるが、ルーバー60の内外両面に補強用のリブ62,63を設けたことにより、剛性を高めることができる。ここでリブ62,63は、ルーバー60の基準面より凹凸をなすが、通風路50を流れてきた空気の旋回流と同一方向に沿って延びているため、空気の流れを損なうことなく整流も行うことができる。
【0073】
しかも、
図11から
図14に示すように、リブ62,63は、ルーバー60の基準面に対してアール断面に連なり、滑らかな曲面をなしている。ここで例えば、リブ62,63がルーバー60の基準面に対して直角に連なる場合、その直角の隅が死角となり、空気の渦流や乱流渦が生じやすく淀みとなる虞があるが、前述したアール断面に連なることにより、よりいっそう空気を効率よく導くことができる。
【0074】
<<その他の作用>>
また、本実施形態では、ケーシング11の四方の側面部14の全てに亘り側方吹出口18を設けたが、各側面部14の側方吹出口18のうち少なくとも何れか一つの側面部14の側方吹出口18を選択的に閉鎖可能に構成しても良い。例えば、四方ある各側面部14のうち特定の向きにある1つの側方吹出口18だけから空気を吹き出したい場合には、他の3つの側方吹出口18を予め閉鎖すると良い。ここで「閉鎖」とは、側方吹出口18を覆うことが可能な部材等で覆って、送風できない状態にすることを意味する。
【0075】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0076】
[1]先ず、本発明は、
ケーシング11の内部に吸い込んだ空気を浄化して外部に吹き出す空気清浄装置10において、
前記ケーシング11の上面部16に上方吹出口17が設けられ、前記ケーシング11の側面部14に側方吹出口18が設けられ、
前記ケーシング11の内部にて、前記上方吹出口17および前記側方吹出口18からそれぞれ空気を吹き出す風量割合を調整可能な吹出調整手段を備えることを特徴とする。
【0077】
このように、上方吹出口17と側方吹出口18とは、異なる面部16,14に別々に設けられており、空気を吹き出す方向が、従来技術のように一カ所だけにまとまった吹出口から広がる角度範囲に限定されることはない。これにより、より広い範囲に浄化した空気を循環させることが可能となる。
【0078】
また、吹出調整手段によって、上方吹出口17または側方吹出口18から選択的に浄化した空気を吹き出すことが可能となり、それぞれの風量割合を、設置場所の状況に応じて適宜調整することができる。これにより、設置場所の状況に合わせた最適な空気の循環を実現することができる。
【0079】
しかも、吹出調整手段は、ケーシング11の内部に設けられているから、上方吹出口17や側方吹出口18の構成は、これらの開口以外に従来技術のような風向き調整用の外部に露出した構造を一切備える必要はない。これにより、吹出口17,18自体の構造的な強度や外観品質を高めることができる。
【0080】
[2]また、本発明は、
前記吹出調整手段は、前記上方吹出口17および前記側方吹出口18にそれぞれ向かう各通風路51,52の一方を閉じると共に他方を開く状態に開閉するルーバー60を備えることを特徴とする。
【0081】
これにより、1つのルーバー60によって、上方吹出口17に向かう上方通風路51と、側方吹出口18に向かう側方通風路52とを、それぞれ同時に開いたり閉じたりすることが可能であり、吹出調整手段の構成を簡易化することができる。また、ルーバー60は、上方吹出口17や側方吹出口18の傍らではなく、これらに続くケーシング11の内部の通風路51,52に設けられるため、外部に露出することはなく、吹出口17,18自体の構成を簡易化することもできる。
【0082】
[3]また、本発明は、
前記側方吹出口18は、前記ケーシング11の周方向に亘って区画された複数の側面部14ごとに配置され、
前記ルーバー60は、前記各側面部14の側方吹出口18に対応して複数設けられたことを特徴とする。
【0083】
これにより、側方吹出口18は、ケーシング11の一側方(例えば前方のみ)からの局所的な吹き出しに限定されることはなく、周方向に亘る区画ごとに、略水平方向に関して広い範囲に空気を吹き出すことが可能となる。また、各側方吹出口18ごとにルーバー60があるため、各側方吹出口18を別々に開閉することも可能となる。
【0084】
[4]また、本発明は、
前記各ルーバー60は、それぞれ対応する前記側方吹出口18ごとに、一方向に傾いて側方吹出口18に向かう通風路52を閉じる一方、他方向に傾いて側方吹出口18に向かう通風路52を開くように回動可能に設けられ、
前記各ルーバー60を、それぞれ同時に回動させる開閉機構を備えることを特徴とする。
【0085】
このような各ルーバー60によれば、その一端を回動中心として他端が回動する簡易に構成により、側方吹出口18に向かう側方通風路52を開閉することが可能となり、これと同期して上方吹出口17に向かう上方通風路51も開閉することができる。しかも、開閉機構によって、各ルーバー60を同時に回動させることが可能であり、容易に操作することができる。
【0086】
[5]また、本発明は、
前記各ルーバー60は、それぞれ両端が軸支され下端側が内外方向へ回動し、
前記開閉機構は、正逆方向に回転するピニオン71と、前記各ルーバー60に対応した複数のラック72と、を備え、
前記各ラック72は、それぞれ前記ピニオン71に噛み合い、該ピニオン71の外周に亘って等間隔に並び接線方向に延びる状態に配置され、
前記各ラック72に、それぞれの外側に位置する前記各ルーバー60に向かうアーム74が設けられ、
前記各アーム74の先端側は、前記ピニオン71の回転による前記ラック72の直線移動に伴って、それぞれ対応する前記ルーバー60の上端側に押し引き可能に連結されたことを特徴とする。
【0087】
このような開閉機構では、ピニオン71を回転させると、ピニオン71と噛み合う各ラック72に動力が伝達されて、各ラック72は同期して直線移動する。このラック72の直線移動に伴って、ラック72に連なるアーム74がルーバー60を押し引きし、ルーバー60の回動角度を変更することができる。
【0088】
これにより、各ルーバー60を同時に回動させる動作を、極めて簡単な操作で実現することができる。しかも、ピニオン71とラック72とが噛み合う構成であるから、その動作を確実に行わせることができる。
【0089】
[6]また、本発明は、
前記開閉機構は、前記ピニオン71を手動で回転させる操作部を備え、
前記操作部は、前記ピニオン71の回転軸上に固定されたツマミ80からなり、
前記ツマミ80は、前記ケーシング11の上面部16の中央を貫通して配置され、
前記ツマミ80を、正方向へ回転させると前記ピニオン71も正方向へ回転する一方、逆方向へ回転させると前記ピニオン71も逆方向へ回転することを特徴とする。
【0090】
このように、各ルーバー60の開閉機構は、操作部によって手動で簡単に操作することができる。特に、操作部のツマミ80を、ピニオン71の回転軸上に固定したから、歯車等の他の伝達部材を介さずに、ツマミ80の回転を直接的にピニオン71に伝えることができる。
【0091】
また、ツマミ80は上面部16の中央の操作しやすい位置にあり、容易に回転させることができる。ここでツマミ80を正方向へ回転させるほど、結果としてルーバー60が一方向に大きく傾き、ツマミ80を逆方向へ回転させるほど、結果としてルーバー60が他方向に大きく傾くことになる。
【0092】
[7]また、本発明は、
前記ルーバー60の内外の少なくとも一方の面に、補強用のリブ62,63が設けられ、
前記リブ62,63は、前記通風路において空気が流れる方向に沿って延び、前記ルーバー60の面に対してアール断面に連なることを特徴とする。
【0093】
このようなリブ62,63により、ルーバー60自体の補強のみならず、空気の流れの整流も容易に実現することができる。また、リブ62,63は、ルーバー60の内外両量面の基準面に対して、アール断面に連なるため、リブ62,63の凹凸を原因とする空気の渦流や乱流渦の発生を防ぐことができ、空気の流れを損なう虞もない。
【0094】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、空気清浄装置10は、一般家庭で利用されるものに限らず、他の様々な屋内施設において使用できるものである。
【0095】
また、ケーシング11の形状は、四角柱状で4つの側面部14を備えたものとは限らず、他に例えば、三角柱状で3つ側面部を備えたもの、あるいは五角形以上の断面形状のものあっても良い。さらに、円筒状のケーシング11の外周を、その周方向に並ぶ円弧形断面の複数の側面部として区画したものでも構わない。
【0096】
また、前記吹出調整手段は、上方吹出口17および側方吹出口18の上流側の通風路を開閉するルーバー60から構成したが、別の構成として、上方吹出口17および側方吹出口18の開口面積を、それぞれ直接的に何らかの開閉手段によって調整できるように構成しても良い。また、各側方吹出口18の開口面積は、本実施形態では同一に設定したが、四方で異なるものであっても良い。
【0097】
また、前記吹出調整手段のルーバー60と、その開閉機構をなすラック72およびアーム74の数は、4つに限定されるものではない。また、操作部をなすツマミ80は、ピニオン71の回転軸に直結するものに限らず、例えば別々の軸上に並べて配置し、互いに歯車等の伝達手段を介して、ツマミ80の回転がピニオン71に伝達するように構成しても良い。また、ツマミ80の代わりに、モーターの電動力によりピニオン71を回転するように構成しても良い。
【0098】
さらに、フィルター20に加えて、脱臭フィルターや光触媒ユニット、マイナスイオン発生機を付加すれば、脱臭フィルターや光触媒ユニットによりさらなる脱臭処理や除菌処理を行うことができ、マイナスイオン発生機によりマイナスイオン付加処理を行うことができ、空気の脱臭・除菌効果を高めることができる。また、オゾン発生器を付加しても、同様に空気の脱臭・除菌効果を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る空気清浄装置は、一般家庭で用いられるものに限られず、例えばホテルの客室等の様々な施設で利用することができるものである。
【符号の説明】
【0100】
10…空気清浄装置
11…ケーシング
12…台座
13…吸込口
14…側面部
15…吸込口
16…上面部
17…上方吹出口
18…側方吹出口
20…フィルター
21…仕切板
23…連通部材
30…ファン
40…モーター
43…ケース
44…ハウジング
45…支持部材
46…ボックス
47…操作パネル
50…通風路
51…上方通風路
52…側方通風路
60…ルーバー
70…回転軸
71…ピニオン
72…ラック
73…ガイド溝
74…アーム
80…ツマミ