(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】ペロブスカイト層の高速製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20240712BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20240712BHJP
H10K 85/50 20230101ALI20240712BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K50/11
H10K85/50
(21)【出願番号】P 2021570823
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 US2020034901
(87)【国際公開番号】W WO2020243287
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-29
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521518448
【氏名又は名称】エナジー マテリアルズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】ENERGY MATERIALS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,スコット ケネス
(72)【発明者】
【氏名】リー,チー
(72)【発明者】
【氏名】トゥームズ,トーマス ナサニエル
(72)【発明者】
【氏名】デルーカ,ステファン ジェイ
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535047(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0075979(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0005547(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0010039(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0115549(US,A1)
【文献】国際公開第2018/139607(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/194908(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 10/00-99/00
H01L 31/04-31/078
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト層を製造する方法において、
フレキシブル基板を供給する工程と、
初期量の溶媒およびペロブスカイト前駆体材料を含むペロブスカイト溶液であり、所定の溶液温度、および該所定の溶液温度における固形分の飽和濃度の30~70質量%の範囲で全固形分濃度を有するペロブスカイト溶液を供給する工程と、
前記ペロブスカイト溶液を、前記フレキシブル基板に、第1の位置で堆積させる工程と、
堆積された前記ペロブスカイト溶液から前記溶媒の初期量の第1の分量を、第2の位置で、第1の乾燥滞留時間が設定された第1の乾燥処理により除去する工程であって、該第1の乾燥処理は、該堆積されたペロブスカイト溶液を被覆された層の温度まで加熱し、該ペロブスカイト溶液の前記全固形分濃度を該被覆された層の温度における固形分の飽和濃度の少なくとも75%に増加させる、工程と、
前記堆積されたペロブスカイト溶液から前記溶媒の初期量の第2の分量を、第3の位置で、第2の乾燥滞留時間中に、溶媒の蒸発速度が前記第1の乾燥処理よりも速く設定された第2の乾燥処理により除去して、該堆積されたペロブスカイト溶液中に飽和および変換反応を引き起こしてペロブスカイト結晶の形成またはペロブスカイト中間相の形成をもたらす工程と、
を含み、
前記第1の乾燥滞留時間が前記第2の乾燥滞留時間よりも少なくとも5倍長く、前記フレキシブル基板は、前記第1の位置から前記第2の位置まで一定の速度で移動し、該フレキシブル基板は、該第2の位置から前記第3の位置まで該一定の速度で移動し、該一定の速度は、5m/分を超え、前記ペロブスカイト溶液は、150℃未満の沸点を有する前記溶媒の全初期量を少なくとも50質量%有する、ペロブスカイト層を製造する方法。
【請求項2】
前記第1の乾燥処理は、前記溶媒の初期量の40%~75%を除去し、前記第2の乾燥処理における前記第2の分量の溶媒の除去により、前記溶媒の初期量の10%未満が残留する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変換反応により、前記ペロブスカイト溶液の色または光学密度が変化し、前記第2の乾燥処理により、前記ペロブスカイト溶液を通過する可視光の透過率が、少なくとも2倍、減少し、前記第2の乾燥処理は、前記ペロブスカイト溶液に対して作用を開始してから0.5秒未満で可視光の透過率の変化を生じさせる乾燥デバイスを用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥デバイスは、前記ペロブスカイト溶液に気体を吹き付けるエアーナイフまたはプレナムである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ペロブスカイト溶液を前記フレキシブル基板上に堆積させる前に、該ペロブスカイト溶液、または該フレキシブル基板の周囲の領域を30~100℃の範囲の温度に加熱する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ペロブスカイト溶液を堆積する前に、基板加熱デバイスを用いて前記フレキシブル基板を30~100℃の範囲の温度に加熱する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フレキシブル基板は、フレキシブル多層基板であり、前記フレキシブル多層基板は、フレキシブル支持体、第1の導電層、およびキャリア輸送層を含み、前記フレキシブル支持体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン、金属箔、およびガラスからなる群より選択される材料を含み、前記キャリア輸送層は、ポリ(トリアリールアミン)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、PEDOT複合体、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、スピロ-MeOTAD、フラーレン、グラフェン、還元型酸化グラフェン、チオシアン酸銅(I)、ヨウ化第一銅、金属酸化物、およびそれらの誘導体からなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第4の位置で、焼なましデバイスを用いて前記ペロブスカイト溶液に焼なましを行う工程をさらに含み、該焼なましデバイスは、対流式オーブン、高速熱処理器、フォトニックデバイス、加熱ローラー、および加熱される固定曲面からなる群より選択され、
(i)前記焼なましデバイスは、前記焼なまし工程を行っている間、前記フレキシブル基板の周囲の領域を90~125℃の範囲の温度に加熱し、該フレキシブル基板は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリカーボネートからなる群より選択される材料を含む、または
(ii)前記焼なましデバイスは、前記焼なまし工程を行っている間、前記フレキシブル基板の周囲の領域を120~300℃の範囲の温度に加熱し、該フレキシブル基板は、ポリイミド、ポリスルホン、金属箔、およびガラスからなる群より選択される材料を含む、のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フレキシブル基板および前記ペロブスカイト溶液の周囲の領域は、前記第2の乾燥処理を行っている間、30℃を超える温度に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ペロブスカイト溶液を堆積する前に、表面処理デバイスを用いて前記フレキシブル基板を処理する工程をさらに含み、該表面処理デバイスは、コロナ放電、オゾン、およびプラズマからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ペロブスカイト溶液は、135℃未満の沸点を有する溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記フレキシブル基板をロールから搬送する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒は、2-メトキシエタノール、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ブタノール、メタノール、エタノール、尿素、γ-ブチロラクトン、2-ブトキシエタノール、2-エトキシエタノール、イソプロポキシエタノール、およびフェノキシエタノールからなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ペロブスカイト溶
液は、スロットダイ、グラビア、スプレー、フレキソ印刷、ディップ、インクジェット、ロッド、およびブレードからなる群より選択される堆積デバイスを用いて、前記フレキシブル基板上に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ペロブスカイト溶液は、25~60質量%の全固形分濃度で前駆体材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記フレキシブ
ル基板上に堆積される前記ペロブスカイト溶液の厚さが10マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ペロブスカイト溶液が、溶媒、有機ペロブスカイト前駆体材料、および無機ペロブスカイト前駆体材料を含み、前記溶媒は、135℃未満の沸点を有するアルコールを含み、前記溶媒の量は30質量%を超え、前記ペロブスカイト溶液の全有機および無機ペロブスカイト前駆体材料の固形分濃度は、少なくとも30質量%であり、溶液温度が20~25℃の範囲における前記ペロブスカイト溶液の前記全有機および無機ペロブスカイト前駆体材料の飽和濃度の30%~70%の範囲である、
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペロブスカイト溶液をフレキシブル基板上に高速で堆積させ、溶液を乾燥させることに関し、より詳細には、ペロブスカイト層およびペロブスカイト系光起電力デバイスを製造するための新規の方法に関する。本開示はさらに、ペロブスカイト溶液を用いて基板上に光起電力デバイスを高速で製造する方法に関する。本開示はさらに、ペロブスカイト層およびペロブスカイト系光起電力デバイスを高速で製造するために使用するペロブスカイト溶液の組成に関する。
【0002】
本発明は、米国エネルギー省の太陽エネルギー技術局(Solar Energy Technologies Office, Department of Energy)により授与された助成金番号DE-EE0008128に基づく米国政府の支援を受けてなされたものであり、米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
2009年に最初に報告されて以降、急速な改良により、ハロゲン化ペロブスカイト系の太陽電池PSC(perovskite solar cell)が光電子デバイスの一種として光を電気に変換するための有望な技術となることが可能となっている。現在までに、溶液処理で製造されたPSCの電力変換効率PCE(power conversion efficiency)は23%超であることが実証されており、これは多結晶シリコンに基づく現在の主流な光起電技術よりも高い(非特許文献1を参照)。結晶シリコンは剛性が高く、脆く、高価、エネルギー集約的な製造工程を必要とするが、ペロブスカイトは柔軟性があり、低温で容易に処理でき、1,000倍程度まで薄くできる。さらに、ペロブスカイトは溶液処理が可能であるので、スケーラブルで低コストの方法での製造が可能となる。このような特徴は、電気自動車や建造物のような以前は参入できなかった市場に、創造的かつ安価に太陽エネルギーを取り込む新たな機会を導く。また、典型的な動作環境において電力が著しく損失するシリコン系太陽電池とは異なり、PSCは温度上昇に伴うPCEへの影響が最小限であるという重要な利点を有する。PSCの優位性とPCEの高さは、PSCが電力事業用、商用、住宅用の太陽光発電のための次世代技術への道であることを示している。
【0004】
最も高性能なPSCは、スピンコーティング法によって製造されているが、高スループットおよびスケーラブルなモジュール製造には適していない。しかしながら、いくつかのスケーラブルな薄膜堆積技術が開発されており、例えば、ドクターブレード法、スプレー堆積法、スロットダイコーティング法、グラビアコーティング法、インクジェット印刷法、ディップコーティング法、化学浴堆積法、フレキソ印刷法および電着法などが挙げられ、その内容が依拠され、ここに全て引用される、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、および非特許文献9を参照されたい。PSCのスケーラブルな製造に向けた次の段階は、大量生産に適した高速装置を用いてペロブスカイト層を製造する方法を開発することである。PSCが既存の太陽電池市場で市場シェアを獲得するためには、設備投資コストが生産スケールアップする能力に過度な制約にならないようし、PSCの最終コストがシリコン系太陽電池のすでに成熟した製造工程と競合するようにしなければならないので、生産速度が十分に速くなければならない。前述の方法は原理的にはスケーラブルであるが、現在のシリコン技術と競合できるほどの低コストPSCを製造するために必要な堆積速度をいまだに実現していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】National Renewable Energy Laboratories Efficiency Chart, https://www.nrel.gov/pv/assets/pdfs/pv-efficiency-chart.20181217.pdf(2018年12月17日にアクセス)
【文献】Stranks, S. D. and Snaith, H. J., Metal-halide perovskites for photovoltaic and light-emitting devices. Nat. Nanotechnol. 10, 391-402 (2015)
【文献】Deng, Y. et al., Scalable fabrication of efficient organolead trihalide perovskite solar cells with doctor-bladed active layers, Energy Environ. Sci. 8, 1544-1550 (2015)
【文献】Yang, M. et al., perovskite ink with wide processing window for scalable high-efficiency solar cells, Nat. Energy 2, 17038 (2017)
【文献】Barrows, A. T. et al., Efficient planar heterojunction mixed-halide perovskite solar cells deposited via spray-deposition, Energy Environ. Sci. 7, 2944-2950 (2014)
【文献】Hwang, K. et al., Toward large scale roll-to-roll production of fully printed perovskite solar cells, Adv. Mater. 27, 1241-1247 (2015)
【文献】He, M. et al. Meniscus-assisted solution printing of large-grained perovskite films for high-efficiency solar cells, Nat. Commun. 8, 16045 (2017)
【文献】Chen, H., et al. A scalable electrodeposition route to the low-cost, versatile and controllable fabrication of perovskite solar cells, Nano Energy 15, 216-226 (2015)
【文献】Kim, Y. Y. et al., Gravure-Printed Flexible perovskite Solar Cells: Toward Roll-to-Roll Manufacturing, Adv. Sci. 2019; and Deng, Y., et al., Vividly colorful hybrid perovskite solar cells by doctor-blade coating with perovskite photonic nanostructures, Mater. Horiz. 2, 578-583 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高速生産装置を用いてペロブスカイト溶液を堆積および乾燥することは複雑であるため、フレキシブル多層基板上に均一で欠陥のないペロブスカイト層を形成し、費用対効果の高い方法でPSCを製造することは、依然として大きな課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される実施形態においては、ペロブスカイト層を製造する方法が記載されており、その方法は、フレキシブル基板を供給する工程と、初期量の溶媒およびペロブスカイト前駆体材料を含むペロブスカイト溶液であり、所定の溶液温度、および該所定の溶液温度における固形分の飽和濃度の30~70質量%の範囲で全固形分濃度を有するペロブスカイト溶液を供給する工程と、ペロブスカイト溶液を、フレキシブル基板に、第1の位置で堆積させる工程と、堆積されたペロブスカイト溶液から溶媒の初期量の第1の分量を、第2の位置で、第1の乾燥滞留時間が設定された第1の乾燥処理により除去する工程であって、第1の乾燥処理は、堆積されたペロブスカイト溶液を被覆された層の温度まで加熱し、ペロブスカイト溶液の全固形分濃度を被覆された層の温度における固形分の飽和濃度の少なくとも75%に増加させる、工程と、堆積されたペロブスカイト溶液から溶媒の初期量の第2の分量を、第3の位置で、第2の乾燥滞留時間が設定され、溶媒の蒸発速度が第1の乾燥処理よりも速く設定された第2の乾燥処理により除去して、堆積されたペロブスカイト溶液中に飽和および変換反応を引き起こしてペロブスカイト結晶の形成またはペロブスカイト中間相の形成をもたらす工程とを含み、第1の乾燥滞留時間が第2の乾燥滞留時間よりも少なくとも5倍長い。
【0008】
本明細書に開示されるほかの実施形態において、光起電力デバイスを製造する方法は、基板を供給する工程と、基板上に第1のキャリア輸送層を形成するために、第1のキャリア輸送層堆積デバイスを用いて、第1のキャリア輸送溶液を基板上に堆積する工程と、ペロブスカイト溶液堆積デバイスを用いて、溶媒およびペロブスカイト前駆体材料を含むペロブスカイト溶液を第1のキャリア輸送層上に堆積する工程と、堆積されたペロブスカイト溶液を乾燥させてペロブスカイト系吸収体層を形成する工程と、ペロブスカイト系吸収体層上に第2のキャリア輸送層を形成するために、第2のキャリア輸送層堆積デバイスを用いて、第2のキャリア輸送溶液をペロブスカイト系吸収体層上に堆積する工程とを含み、堆積されたペロブスカイト溶液は、急速乾燥デバイスを用いて少なくとも半乾燥状態にされて、変換反応を引き起こし、急速乾燥デバイスが該ペロブスカイト溶液に対して作用を開始してから0.5秒未満で、該ペロブスカイト溶液の光学密度が少なくとも2倍変化する。
【0009】
本明細書に開示されるほかの実施形態おいて、ペロブスカイト層を製造するためのペロブスカイト溶液が記載される。ペロブスカイト溶液は、溶媒、有機ペロブスカイト前駆体材料、および無機ペロブスカイト前駆体材料を含み、溶媒の量は30質量%を超え、ペロブスカイト溶液の全固形分濃度は、溶液温度が20~25℃の範囲におけるペロブスカイト溶液での飽和濃度の30%~70質量%の範囲である。
【0010】
本明細書に開示される様々な実施形態は、均一なペロブスカイト層を、フレキシブル基板上に、特定の実施形態では、フレキシブル多層基板上に、高速で製造できるという利点を有するので、例えば、少ない設備投資で高効率の太陽電池の低コスト生産を可能にする。本明細書に開示されるさらに様々な実施形態は、ペロブスカイト系光起電力デバイスを高速で製造できるという利点を有するので、例えば、高効率の太陽電池などの新しいクラスのフォトニックデバイスの低コスト生産を可能にする。本明細書に開示されるさらに様々な実施形態は、取り扱いが簡易であり、保管温度で安定しているペロブスカイト溶液を供給するという利点を有し、均一なペロブスカイト層を高速で製造するために使用できるので、少ない設備投資で高効率の太陽電池の低コスト生産が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】複数の機能層がフレキシブル支持体の上に堆積されているペロブスカイト系デバイスの一部分を示す断面図
【
図2a】本明細書に開示される様々な実施形態における重要な工程後のフレキシブル多層基板の一部分の上でのペロブスカイト層の形成を示す断面図であり、ペロブスカイト溶液を堆積した後のフレキシブル多層基板上でのペロブスカイト溶液を示す図
【
図2b】本明細書に開示される様々な実施形態における重要な工程後のフレキシブル多層基板の一部分の上でのペロブスカイト層の形成を示す断面図であり、第1の乾燥処理の終了時の半乾燥状態のペロブスカイト溶液層を示す図
【
図2c】本明細書に開示される様々な実施形態における重要な工程後のフレキシブル多層基板の一部分の上でのペロブスカイト層の形成を示す断面図であり、第2の乾燥処理の終了時のフレキシブル多層基板上のペロブスカイト結晶または中間相の不動層を示す図
【
図2d】本明細書に開示される様々な実施形態における重要な工程後のフレキシブル多層基板の一部分の上でのペロブスカイト層の形成を示す断面図であり、焼なまし工程の終了時のフレキシブル多層基板上の完成されたペロブスカイト層を示す図
【
図3】フレキシブル多層基板上にロール・ツー・ロール印刷するための例示的な印刷システムの概略的な側面図
【
図4】フレキシブル多層基板上に光起電力デバイスをロール・ツー・ロール印刷するための例示的なマルチステーション堆積乾燥装置の概略的な側面図
【0012】
添付の図面は、本明細書に開示される概念を説明する目的のためのものであり、実際の縮尺を示すものではないことを理解されたい。可能な場合には、各図面に共通する同一の特徴を示すために、同一の参照符号が使用される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書の開示内容は、本明細書に記載される複数の実施形態の組合せを含む。「特定の実施形態」という言及は、本開示の少なくとも1つの実施形態に存在する特徴を指す。「一つの実施形態」または「特定の実施形態」などの個別的な言及は、必ずしも同一の実施形態または複数の実施形態を示すものではないが、そのような実施形態は、相互に排他的であることが明示されない限り、または当業者に容易に明らかであるとされない限り、相互に排他的ではない。文脈により明示的に言及されるか、または必要とされる場合を除き、「または(or)」という用語は、本明細書の開示において、非排他的な意味で使用されることに留意されたい。
【0014】
本明細書に開示される例示的な実施形態は、分かりやすくするために概略的に図示されており、必ずしも正確な縮尺が示されているわけではない。当業者は、本明細書に開示される例示的な実施形態の要素の特定のサイズおよび相互接続を容易に決定することができるであろう。具体的に図示されていない、明示されていない、または記載されていない要素は、当業者には周知の様々な形態をとり得ることが理解されるべきである。要素および構成部位は、本明細書に開示される範囲を限定することなく、適宜、単数形または複数形にて言及され得ることを理解されたい。
【0015】
図1は、ペロブスカイト系デバイス67の一部分の断面を示す。ペロブスカイト系デバイス67の構造は、比較的厚いフレキシブル支持体61(例えば、5~200マイクロメートル)、およびいくつかのより薄い機能層を含む。フレキシブル支持体61の上には、第1の導電層62、第1のキャリア輸送層63、完成されたペロブスカイト層64d、第2のキャリア輸送層65、および第2の導電層66がある。
図2a~
図2dにさらに示されるように、支持体61は、層62および層63とともに、ペロブスカイト層64のための多層基板60を形成する。いくつかの用途では、第1の導電層62および第1のキャリア輸送層63は、ペロブスカイト層64dが光子を電子・正孔対に変換する周波数の範囲、典型的には、可視光の周波数の範囲、において、光学的に透明である。その他のいくつかの用途では、第2の導電層66および第2のキャリア輸送層65は、ペロブスカイト層64dが光子を電子・正孔対に変換する周波数の範囲において、光学的に透明である。PIN型の光起電力デバイスでは、光学的に透明なキャリア輸送層は正孔を輸送し、電子をブロックする。NIP型の光起電力デバイスでは、光学的に透明なキャリア輸送層は電子を輸送し、正孔をブロックする。本明細書の開示において記載される完成されたペロブスカイト層64dを均一に堆積する方法は、NIP構造およびPIN構造の両方に適用される。
【0016】
「ペロブスカイト溶液」という用語は、ABX3結晶格子を有する有機-無機ハイブリッドのペロブスカイト材料の連続層(ここではペロブスカイト層と称する)を形成するために用いられる溶液またはコロイド懸濁液として定義され、「A」および「B」は非常に異なるサイズの2つのカチオンであり、「X」は両方のカチオンに配位するアニオンである。ペロブスカイト溶液は、ペロブスカイト前駆体材料および溶媒を含み、さらに、結晶成長を促進する、または結晶特性を改質するための添加剤をも含んでもよい。ペロブスカイト前駆体材料は、その構成成分の少なくとも1つの成分が最終のペロブスカイト層ABX3結晶格子に組み込まれるイオン種として規定される。有機ペロブスカイト前駆体材料は、カチオンに炭素原子を含む材料であり、無機ペロブスカイト前駆体材料は、カチオンに金属を含むが炭素を含まない材料である。
【0017】
実験室規模で高性能な被膜を作製するときには、前駆体材料を高濃度で含む少量のペロブスカイト溶液を用いることができる。しかし、パイロット規模または大量生産規模の製造設備を用いてペロブスカイト溶液を高速で堆積させる場合、高濃度の溶液は、均一被膜を実現するために必要とされる時間にわたって不安定であることがわかっている。不安定な溶液は、塗布される前に溶液中で非コロイド固形分を形成して、堆積および乾燥工程を阻害し、機能不全の光起電力デバイスが製造される。したがって、高速コーティング法では、前駆体の濃度を、より低くする必要がある。低濃度溶液を用いてペロブスカイト乾燥層を適切な厚さで形成するためには、より厚い湿潤被膜が必要とされる。より厚い湿潤被膜の場合、単純な乾燥方法では、光起電力デバイスの機能に適する均一被膜が形成されないことがわかっている。不均一性が発生する1つの理由は、湿潤被膜の内部での対流によるもので、これにより、被膜層の内部で液体の移動が起こり、非常に不均一な乾燥層となる。対流は、湿潤層の表面での蒸発冷却によって発生し、湿潤被膜の内部に顕著な温度勾配をもたらす。対流は、湿潤被膜の厚さが増加するにつれ、また湿潤被膜の粘度が減少するにつれて、増加する。高速製造を可能とするために、粘度が非常に低いペロブスカイト溶液を用い、前述のように湿潤被膜を厚くすると、均一なペロブスカイト乾燥層を高速で製造することが非常に困難となる。
【0018】
ペロブスカイト乾燥層におけるばらつきの第2の理由は、湿潤被膜の上方に蒸発する溶媒の蒸気濃度のばらつきである。湿潤被膜の上方で空気流量がわずかにでも違うと、湿潤被膜の上方の蒸気濃度が顕著に変化し、その結果、基板に沿った蒸発速度の空間的変動に起因して、乾燥層の内部に不均一が生じる。当業者にとって公知の塗布薄膜の急速乾燥に関する1つの方法では、気体を湿潤薄膜の表面を横切って吹き付けて、蒸発溶媒を連続的に除去することで湿潤被膜の上方の蒸気濃度のばらつきを低減させ得る。しかしながら、典型的には、溶解固形分の性質、および選択可能な有用な溶媒および添加剤が限定されているため、ペロブスカイト溶液の粘度は、例えば、10センチポアズ未満のような非常に低い粘度(負荷された剪断により粘度が変化)となる。ペロブスカイト溶液の粘度が低い場合、気体が湿潤溶液の表面を横切って吹き付けられると、乾燥層に吹付け跡を引き起こす。吹付け跡に起因する乾燥層の不均一性により光起電力デバイスにおいて不連続性が電気的短絡を発生させるため、機能不全の層となる。より薄い湿潤層では、薄膜を横切って空気を吹き付けることに起因する不均一性は低減されるが、前述のように、ペロブスカイト溶液を高速で堆積するには、比較的厚い湿潤層が必要である。
【0019】
ペロブスカイト乾燥層におけるばらつきの第3の理由は、フレキシブル多層基板60からのペロブスカイト溶液の破裂(de-wetting)によるもので、製造されたペロブスカイト系デバイスの性能を著しく劣化させる穴をペロブスカイト層に発生させる。ペロブスカイト系デバイスに使用されるキャリア輸送層は、デバイス性能を改善するために疎水性であり、ほとんどのペロブスカイト溶液は、疎水性のキャリア輸送層を濡らさない傾向がある。ペロブスカイト溶液の破裂は、より薄いペロブスカイト溶液層を堆積させること、および乾燥時間を長くすることによって、悪化する。
【0020】
均一なペロブスカイト層の高速製造を可能にするために、低沸点(例えば、150℃未満、好ましくは135℃未満)の溶媒の比率を高くした(例えば、全溶媒の少なくとも50質量%、好ましくは全溶媒の少なくとも75質量%、より好ましくは全溶媒の少なくとも90質量%)新規のペロブスカイト溶液が配合されている。本明細書に開示される新規の乾燥方法を使用すると、基板上への堆積後に、低沸点の溶媒をペロブスカイト溶液から急速に蒸発させることが可能となり、よって、ペロブスカイト溶液が乾燥する際に形成される結晶の移動を抑制することができる。ペロブスカイト前駆体と強く配位しない溶媒の場合は、焼なまし時間を短くすることができる。短い焼なまし時間は、製造速度をより速くできるので、望ましい。アルコール系溶媒は、ペロブスカイト前駆体と強く配位せず、無機前駆体に適切な溶解性を提供し、ペロブスカイト層および光起電力デバイスの大量生産で使用するための安定したペロブスカイト溶液を生成することがわかっている。ペロブスカイト溶液中で高い比率で使用するのに適したアルコール系溶媒の例としては、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-イソプロポキシエタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、およびエタノールが挙げられる。乾燥工程をさらに最適化するために、蒸発プロファイルを調整するために混合溶媒をペロブスカイト溶液に用いることが想定される。溶媒の蒸発速度を調整するのに有用な適切な溶媒添加剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、フェノキシエタノール、酢酸、および尿素が挙げられる。
【0021】
ペロブスカイト溶液は、好ましくは、30質量%を超える溶媒(例えば、30~82質量%)、および少なくとも18質量%の固形分(例えば、18~70質量%、好ましくは25~60質量%または30~45質量%)を用いて配合され、ペロブスカイト溶液の全固形分濃度は、所定の溶液温度における固形分の飽和濃度の30~70質量%の範囲である。好ましい所定の溶液温度は、20~50℃の範囲である。好ましい溶媒は、アルコール系で、沸点は135℃未満である。好ましい溶媒は、2-メトキシエタノールで、沸点は125℃である。開示されたペロブスカイト溶液の配合物は、取り扱いが簡易であり、保管温度で安定している、例えば、20~50℃の範囲、特に20~25℃の範囲の典型的な室温で安定しているペロブスカイト溶液を供給するという利点を有し、また、均一なペロブスカイト層を高速で製造するために使用できるため、少ない設備投資で高効率の太陽電池の低コスト生産が可能になる。
【0022】
均一なペロブスカイト層は、この新規の乾燥法およびペロブスカイト溶液を用いて、高い生産速度で製造されている。しかしながら、ペロブスカイト溶液で均質な核を形成し成長させるために必要な時間は、ペロブスカイト層が均一に形成されるように低沸点溶媒を蒸発させるために必要な時間よりも長いことがわかっている。光起電エネルギーが高出力となるペロブスカイト系デバイスを製造するためには、最適な結晶サイズに相当する均一なペロブスカイト層が必要とされる。ペロブスカイト系光起電力デバイスの性能を最適化するため、低沸点溶媒とともにペロブスカイト溶液に添加される結晶成長調整剤が発見されている。結晶成長調整剤は、ペロブスカイト溶液が乾燥する際に、結晶が均質に成長するための時間の長さを変化させる、または結晶が均質に成長するための速度を変化させる添加剤として規定される。高性能ペロブスカイト層を製造するためのペロブスカイト溶液における特に有用な結晶成長調整剤の例としては、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、1,8-ジヨードオクタン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、水、ジメチルアセトアミド、酢酸、シクロヘキサノン、アルキルジアミン、およびヨウ化水素が挙げられる。結晶成長調整剤の好ましい濃度は、塗布溶液の約10質量%未満(例えば、0.01~10質量%)である。結晶成長調整剤のより好ましい濃度は、塗布溶液の約2質量%未満(例えば、0.01~2質量%)である。
【0023】
ペロブスカイト層を改質してペロブスカイト系デバイスの性能を改善するペロブスカイト溶液のためのほかの添加剤としては、結晶粒界改質剤がある。結晶粒界改質剤は、粒界の質を改善する添加剤として規定され、例えば、ペロブスカイト結晶粒界の電気特性を改質する、またはペロブスカイト結晶粒界の界面におけるトラップ準位を低減する。高性能ペロブスカイト層を製造するためのペロブスカイト溶液において特に有用な結晶粒界改質剤の例としては、塩化コリン、フェネチルアミン、ヘキシルアミン、l-α-ホスファチジルコリン、ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレート、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレングリコール、ピリジン、チオフェン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フラーレン、ポリ(プロピレンカーボネート)、およびジドデシルジメチルアンモニウムブロミドが挙げられる。結晶粒界改質剤の好ましい濃度は、塗布溶液の約2質量%未満(例えば、0.01~2質量%)である。結晶粒界改質剤のより好ましい濃度は、塗布溶液の約0.2質量%未満(例えば、0.01~0.2質量%)である。
【0024】
ペロブスカイト溶液を作製するための無機ペロブスカイト前駆体の例としては、ヨウ化鉛(II)、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(II)三水和物、塩化鉛(II)、臭化鉛(II)、硝酸鉛、チオシアン酸鉛、ヨウ化スズ(II)、ハロゲン化ルビジウム、ハロゲン化カリウム、およびハロゲン化セシウムが挙げられる。ペロブスカイト溶液を作製するための有機ペロブスカイト前駆体の例としては、ヨウ化メチルアンモニウム、臭化メチルアンモニウム、塩化メチルアンモニウム、酢酸メチルアンモニウム、臭化ホルムアミジニウム、およびヨウ化ホルムアミジニウムが挙げられる。高性能ペロブスカイト系デバイスを製造するためには、有機ペロブスカイト前駆体材料の純度が99質量%を超え、無機ペロブスカイト前駆体の純度が99.9質量%を超えることが好ましい。無機ペロブスカイト前駆体は金属カチオンを含み、好ましい金属カチオンは鉛である。好ましい実施形態では、有機ペロブスカイト前駆体材料と無機ペロブスカイト前駆体材料とのモル比は1~3の範囲である。
【0025】
本明細書に開示される1つの実施形態において、ペロブスカイト溶液は、有機ペロブスカイト前駆体材料、無機ペロブスカイト前駆体材料、および溶媒を含み、溶媒の量は30質量%を超え、所定の溶液温度(すなわち、溶液がフレキシブル基板上に堆積する前に維持される温度)において、ペロブスカイト溶液の全固形分濃度は、ペロブスカイト溶液の飽和濃度の30~70質量%の範囲である。好ましい実施形態では、溶媒は1つ以上のアルコールを含み、好ましい所定の溶液温度は、20~50℃の範囲である。さらに好ましい実施形態では、アルコールの量が50質量%未満、全固形分濃度が35質量%を超えることが好ましい。ほかの好ましい実施形態では、ペロブスカイト溶液は、アルコールの量が50質量%を超え、全固形分濃度が40質量%未満である。ほかの好ましい実施形態では、ペロブスカイト溶液は、全固形分濃度が30~45質量%の範囲で、2-メトキシエタノールの量が55質量%を超える。
【0026】
ペロブスカイト溶液が乾燥すると、ペロブスカイト結晶またはハイブリッドペロブスカイト結晶の中間前駆体相(中間相)が形成される。中間相は、所望の最終結晶格子ABX
3ではない結晶、付加物またはメソフェーズである。中間相が存在する場合は、焼なましを行うことで所望の最終結晶格子に変換される。この形成プロセスは、ペロブスカイト溶液の湿潤層の上方の溶媒の蒸気濃度の変動、および湿潤層の内部の対流に非常に敏感であることがわかっている。均一で機能的なペロブスカイト層を高速で製造するための新しい多段階工程の方法が開発されている。
図2a、
図2b、
図2c、および
図2dは、本明細書に開示される実施形態における重要な工程後のフレキシブル多層基板60の一部分の上でのペロブスカイト層の形成を示す断面図である。
図2aは、ペロブスカイト溶液を堆積した直後のフレキシブル多層基板60上のペロブスカイト溶液層64aを示す。
【0027】
フレキシブル多層基板60は、フレキシブル支持体61、第1の導電層62、および第1のキャリア輸送層63を含む。しかしながら、いくつかの実施態様において、フレキシブル支持体は、第1の導電層である。例えば、フレキシブル支持体61に金属箔が使用される場合、第1の導電層62の機能性を提供することができる。
図2bは、第1の乾燥処理の終了時のフレキシブル多層基板60上の半乾燥状態のペロブスカイト溶液層64bを示し、半乾燥状態のペロブスカイト溶液層64bの厚さは、
図2aに示されるペロブスカイト溶液層64aの厚さよりも薄い。
図2cは、第2の乾燥処理の終了時のフレキシブル多層基板60上のペロブスカイト結晶または中間相64cの不動層を示し、ペロブスカイト結晶または中間相64cの不動層の厚さは、
図2bに示されるペロブスカイト溶液層64bの厚さよりも薄い。
図2dは、焼なまし工程の終了時のフレキシブル多層基板60上の完成されたペロブスカイト層64dを示す。
【0028】
フレキシブル支持体61を構成する材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、Corning(登録商標)Willow(登録商標)Glassなどの薄いフレキシブルガラス、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、金属箔(例えば、銅、ニッケル、チタン、鋼、アルミニウムおよびスズ)、およびポリイミドが挙げられる。金属箔を用いる場合を除いて、フレキシブル支持体61の好ましい厚さは、25~200マイクロメートルの範囲である。金属箔を用いる場合、金属箔の好ましい厚さは、5~50マイクロメートルである。
【0029】
光起電力デバイスの光の入射側として使用される場合、第1の導電層62を構成する材料の例としては、金属ナノワイヤおよび金属薄膜に基づく透明電極および半透明電極(その内容が依拠され、ここに全て引用されるJ. Mater. Chem. A, 2016, 4, 14481-14508を参照)、金属ナノ粒子、金属粒子ペースト、および/または電気メッキから作られた金属メッシュおよび金属グリッド電極、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)などのポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)錯体、および(インジウムまたはフッ素をドープした)酸化スズ、酸化モリブデン、(アルミニウムをドープした)酸化亜鉛などのドープおよび非ドープ金属酸化物が挙げられる。第1の導電層62が光の入射側として使用されない場合には、金属箔が好ましい。金属箔は、広範囲の金属で製造することができるが、好ましくは、銅、ニッケル、およびステンレス鋼からなる群より選択される。金属箔は、ニッケルまたはスズで被覆された銅などの、2つ以上の金属層を含むことができる。金属箔は、積層構造の一部であってもよく、PETまたはポリイミドなどのプラスチック層、および接着剤中間層を含む。
【0030】
第1のキャリア輸送層63および第2のキャリア輸送層65を構成する材料の例としては、ポリ(トリアリールアミン)(ポリ[ビス(4-フェニル)(2、4、6-トリメチルフェニル)アミン]としても知られる)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、PEDOT複合体、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、スピロ-MeOTAD(N2、N2、N2´、N2´、N7、N7、N7´、N7´-オクタキス(4-メトキシフェニル)-9,9´-スピロビ[9H-フルオレン]-2,2´,7,7´-テトラミンとしても知られる)、フラーレン(例えばフラーレン-C60およびフェニル-C61-酪酸メチルエステルとしても知られる)、グラフェン、還元型酸化グラフェン、チオシアン酸銅(I)、ヨウ化第一銅、金属酸化物(例えば、酸化スズ、酸化ニッケル、酸化セリウム、酸化モリブデン、および酸化亜鉛)、およびそれらの誘導体が挙げられる。キャリア輸送層は、太陽電池の所望の構造、例えばNIP構造またはPIN構造に応じて、正孔輸送層または電子輸送層とすることができる。他の多くのキャリア輸送材料が当業者に公知であり、本明細書の開示において適用可能な材料として想定される。
【0031】
多種類の堆積乾燥装置が当業者には公知であり、多種類のデバイスが、本明細書に開示される実施形態に記載された方法を使用するように構成されることが想定される。フレキシブル基板をロールから装置を通して搬送する高速ロール・ツー・ロール(R2R)堆積乾燥装置は、ペロブスカイト層を低コストで製造することを可能にする。
図3は、本明細書に開示される好ましい実施形態を説明するために使用される例示的なR2R堆積乾燥装置100の概略図を示す。当業者により、本明細書に開示される多段階工程の方法が可能とされるように、追加的な構成を適用してもよい。フレキシブル多層基板60が送出ロール10から送り出され、堆積(および第1の乾燥処理)区間20、急速乾燥(第2の乾燥処理)区間30、長時間加熱区間40、および短時間加熱区間50を通過した後に、巻取ロール12に巻き取られる。当該業界で公知のR2R堆積乾燥装置における他の構成要素は、本明細書の開示において有用であると考えられるが、
図3には図示されていない。例えば、冷却区間(図示せず)は、巻取ロール12の手前にあると有利であり得る。R2R堆積乾燥装置100を通過するフレキシブル多層基板60の移動方向は、送出ロール10および巻取ロール12内の矢印によって示される。ペロブスカイト溶液を堆積する前に、表面処理デバイス14がフレキシブル多層基板60の表面を処理する。表面処理デバイスとしては、コロナ放電、オゾン(例えば、紫外線によって生成)、およびプラズマを含む。表面処理デバイスは、周囲空気、制御空気(温度および相対湿度を制御)、酸素、または窒素またはアルゴンなどの不活性ガス中で作動することができる。
【0032】
R2R堆積乾燥装置100の堆積(および第1の乾燥処理)区間20は、フレキシブル多層基板60が堆積デバイス21に対して正確に位置が決定され、かつ堆積区間20内を正確に搬送されるように、フレキシブル多層基板60の経路の方向を規定する1つ以上の搬送ローラー24を含む。搬送ローラー、テンションローラーおよびウェブ誘導ローラーは、フレキシブル基板を搬送し、張力および位置の制御を支援するために、通常、堆積乾燥装置の全体にわたって使用される。巻取ロール12の手前には搬送ローラー13が示され、長時間加熱区間40には搬送ローラー41a~41eが示されている。
図3を簡略化するために、追加のローラーは示されていない。搬送ローラーは、フレキシブル多層基板60との接触を最小限にする、またはなくすためにエアーベアリング(静圧空気軸受)を含むことができる。また、搬送ローラーとフレキシブル多層基板60との間の接触を最小限にする、またはなくすために、当業者に公知のエアー浮上式(図示せず)も使用され得る。
【0033】
溶媒およびペロブスカイト前駆体材料を含むペロブスカイト溶液の層をフレキシブル多層基板60に堆積させる堆積デバイス21は、任意の数の公知の堆積デバイスであり得るが、スロットダイまたはグラビアシステム(直接、逆、またはオフセット)の堆積デバイスに基づくことが好ましい。本明細書の開示において用いることが想定される他の堆積デバイスには、スプレー、ディップコート、インクジェット、フレキソ印刷、ロッド、およびブレードが含まれる。ペロブスカイト溶液は、当業者に公知の方法および装置(図示せず)によって堆積デバイス21に供給される。堆積された溶液を被覆された層の温度まで加熱しながら、第1の乾燥処理において、堆積された溶液から第1の分量の溶媒を除去することによって、堆積されたペロブスカイト溶液層は、区間20において半乾燥状態にされる。フレキシブル多層基板60上での堆積されたペロブスカイト溶液層64aの乾燥条件を最適化し、フレキシブル多層基板60上での濡れ性を改善するために、ペロブスカイト溶液および塗布デバイスの温度は、好ましくは、温度コントローラ(図示せず)によって制御される。多層基板60上に堆積されたペロブスカイト溶液64aの温度の設定値は、ペロブスカイト溶液の配合物に依存する。第1の乾燥処理において加熱される、堆積されたペロブスカイト溶液64aの好ましい温度範囲は、30~100℃であり、より好ましい温度範囲は、35~60℃である。フレキシブル多層基板60上に最初に堆積されるペロブスカイト溶液64aの厚さは、被膜層の内部の対流によって生じる不均一性を最小限にするためには、10マイクロメートル未満、そしてフレキシブル多層基板60上でペロブスカイト溶液64aの十分な濡れ性を可能にするためには、2マイクロメートルより大きいことが好ましい。バッキングローラー22またはローラー対が堆積デバイス21との動作、間隔、または荷重圧を設定するために使用される。
【0034】
第1の乾燥処理における乾燥条件を最適化するために、多層基板60上の湿潤被膜の周囲の空気の流量は、スクリーン、バッフル、またはプレナムのような気流制御デバイス27で湿潤被膜の上方の空気の移動を制限することにより、必要に応じて制御することができる。堆積区間20の温度および湿度は、堆積区間20における塗布条件および乾燥条件を最適化するために、環境コントローラ25aによって制御されてもよい。プレナム23aおよび23bによって示されるような堆積デバイス21の前後のフレキシブル多層基板の温度の制御と同様に、バッキングローラー22の温度の任意の制御が想定されるが、伝導性加熱によってフレキシブル多層基板の温度を制御する、加熱ローラーまたは加熱される固定曲面も想定される。バッキングローラー22は、フレキシブル多層基板を加熱する基板加熱デバイスとして機能することもできる。バッキングローラー22は、その内部に流れる流体を含むことにより、予め設定された温度を維持することができる。この種類のローラーは、ジャケット付ローラーと称されることもある。ペロブスカイト溶液層を堆積する前に、基板加熱デバイスがフレキシブル多層基板を加熱する際の好ましい温度範囲は、30~100℃である。
【0035】
フレキシブル多層基板60は、堆積デバイス21によってフレキシブル多層基板60上に塗布されたペロブスカイト溶液の湿潤被膜とともに急速乾燥区間30に進入する。第1の乾燥処理は、堆積デバイス21と急速乾燥区間30との間の領域における、ペロブスカイト溶液の第1の分量の除去として規定される。第1の乾燥処理において除去される溶媒の量は、均一な被膜を形成するための重要な要素である。第1の乾燥処理に影響する要因としては、堆積位置26と急速乾燥区間30の入口との間の距離である第1の乾燥処理領域の長さ、堆積区間20の温度、フレキシブル多層基板60の温度、速度、表面エネルギーおよび表面積、第1の乾燥処理領域に存在するフレキシブル多層基板60上のペロブスカイト溶液の湿潤被膜の周囲の空気の流量、およびペロブスカイト溶液の配合物などが挙げられる。第1の乾燥処理を行っている間でのフレキシブル多層基板60およびペロブスカイト溶液の周囲の領域の好ましい温度範囲は、30~100℃である。
【0036】
急速乾燥区間30は、ペロブスカイト溶液から溶媒の第2の分量が除去される第2の乾燥処理を規定し、第1の乾燥処理と比べて、第2の乾燥処理は、溶媒の蒸発速度が速い。湿潤被膜からの急速な溶媒除去を引き起こす任意の適切なデバイスを使用することが可能であり、非接触式の乾燥デバイス31、または接触式の乾燥デバイス32を含むことができ、接触とは、フレキシブル多層基板に物理的に接触することと規定される。非接触式の乾燥デバイスには、エアーナイフ、赤外線加熱器、マイクロ波加熱器、対流式オーブン、高速熱処理器(Rapid Thermal Processor)、およびキセノンランプなどの高エネルギーフォトニックデバイスが含まれる。接触式の乾燥デバイスには、ウェブの湿潤被膜の反対側に接触する加熱ローラーまたは固定型の曲面プレートなどの伝導加熱器が含まれる。本明細書に開示される好ましい実施形態で用いられる非接触式の乾燥デバイス31は、空気または窒素などの気体を被膜の表面に吹き付けて、溶媒の蒸気圧力を低下させ、蒸発溶媒を急速に除去するエアーナイフである。気体の温度は、必要に応じて制御される(図示せず)。いくつかの非接触式の乾燥デバイスでは、非接触式の乾燥デバイス31との間隔の制御、またはペロブスカイト溶液の乾燥処理の支援のために、近接のバッキングローラーまたはローラーの使用が有益となり得る。また、急速乾燥区間30の温度および湿度は、第2の乾燥処理の条件を最適化するために、環境コントローラ25bによって制御されてもよい。
【0037】
第2の乾燥処理は、溶液からの溶媒の急速な蒸発によって誘起されるペロブスカイト溶液中での変換反応を引き起こし、固形分の飽和および結晶形成、または中間相の形成を引き起こす。変換反応は、典型的には、ペロブスカイト溶液の色または光学密度を変化させるので、視覚的に容易に明らかとなる。ペロブスカイト溶液の色の変化と光学密度の変化の程度は、堆積されたペロブスカイト溶液に存在するペロブスカイト前駆体の種類と量に依存する。均一なペロブスカイト層を製造するには、結晶が形成されるときに結晶の動きが最小限に抑えられるように、第2の乾燥処理での変換反応を速くする必要がある。第2の乾燥処理で起こる変換反応は、ペロブスカイト溶液の可視光の透過率を大きく低下させる。好ましくは、第2の乾燥処理での変換反応により、ペロブスカイト溶液の可視光の透過率は、少なくとも2分の1、低下する。可視光の透過率は、試料から出た可視光の光量を試料に入った可視光の光量で割った値であり、第2の乾燥位置に入る前と出た後の両方で、堆積されたペロブスカイト溶液に白色光を投光するなどの公知の方法によって測定することができる。可視光の透過率は、2つの位置でフレキシブル多層基板について入射される可視光と出射される可視光の両方の強度を測定することによって決定される。フレキシブル多層基板が不透明な場合は、反射測定法を用いて、ペロブスカイト溶液を通過する可視光の透過率を決定できる。
【0038】
第2の乾燥処理において乾燥デバイスとしては、エアーナイフ、ペロブスカイト前駆体としては、ヨウ化鉛(II)およびヨウ化メチルアンモニウムの両方を用いて、第2の乾燥処理において被膜層の色が黄色から黒褐色に変化し、ペロブスカイトへの変換が成功したことが観察された。高速で均一な被膜を達成するためには、色の変化および可視光の透過率の変化によって確認されるように、第2の乾燥デバイスがペロブスカイト溶液に対して作用を開始してから、好ましくは、第2の乾燥滞留時間において0.5秒未満で、変換反応が急速に起こらなければならないことが判明した。エアーナイフが乾燥デバイスとして使用される場合、エアーナイフは、最初に、多層基板上に存在するペロブスカイト溶液に向けられる気流の焦点でペロブスカイト溶液に作用し、この焦点は、気流の発生源から延びる仮想ラインとフレキシブル多層基板の交点によって規定され、仮想ラインの角度は、エアーナイフからの空気の流れに沿う角度である。光学的乾燥デバイス、例えば、赤外線加熱器の場合、乾燥デバイスがペロブスカイトに作用する位置は、光放射のかなりの部分が最初にペロブスカイト溶液に投光される位置によって規定される。すなわち、光学的乾燥デバイスからペロブスカイト溶液に当たる全光量のうち、光エネルギーの5%超がペロブスカイト溶液に投光される位置である。第2の乾燥処理における蒸発速度を速くするために、ペロブスカイト溶液層64bの温度を上げることができる。フレキシブル多層基板およびペロブスカイト溶液の周囲の領域の好ましい温度は、第2の乾燥処理中では30℃よりも高い。
【0039】
また、第1の乾燥滞留時間も均一な被膜を高速で形成するために重要である。第1の乾燥処理が速すぎる場合、ペロブスカイト溶液層64a内の対流は、完成されたペロブスカイト層64d内に斑点などの夾雑物を発生させる。さらに、第2の乾燥処理においてペロブスカイト溶液層を急速に乾燥できるように、第1の乾燥処理においては、十分な量の溶媒を除去しなければならない。第2の乾燥処理の前に、第1の乾燥処理において溶媒が十分に除去されない場合、第2の乾燥処理の最中にペロブスカイト層内の吹付け跡など、不均一性が被膜に発生する。さらに、第1の乾燥処理において除去される溶媒が多すぎる場合、ペロブスカイト層の内部に固形分が形成され、これにより、完成されたペロブスカイト層の内部に夾雑物および不均一性が発生する。好ましい実施形態では、第1の乾燥滞留時間は、第2の乾燥滞留時間よりも少なくとも5倍長く、好ましくは少なくとも10倍長い。
【0040】
フレキシブル多層基板上に均一なペロブスカイト層を形成するためには、第1の乾燥処理において、ペロブスカイト溶液から溶媒を初期量の40%~75%の範囲で除去して、半乾燥状態のペロブスカイト溶液層64bを形成することが好ましいことがわかっている。この範囲を制約する条件としては、製造環境における使用時に安定で、かつ均一に乾燥できるインクという条件がある。例えば、全固形分濃度が33質量%であるヨウ化鉛メチルアンモニウム前駆体に溶媒として2-メトキシエタノールを用いる場合、第1の乾燥処理において、溶媒の初期量の43%~70%を除去して、ペロブスカイト溶液における固形分を46~62質量%の範囲に濃縮しなければならない。第1の乾燥処理の終了時での溶媒の量および全固形分濃度は、第1の乾燥処理工程の終端に取り付けられた低コヒーレンス干渉計を用いて湿潤層の厚さを監視し、ペロブスカイト溶液の既知の最初の厚さおよび全固形分濃度を用いて、ペロブスカイト溶液の全固形分濃度および溶媒の量を計算することで、計測可能となる。さらに、第2の乾燥工程の終了時に残留している溶媒の量は、溶媒の初期量の10%未満、好ましくは溶媒の初期量の5%未満でなければならない。さらに、第1の乾燥処理は、その後、第2の乾燥処理において、溶液が不動化された結晶の薄膜へ変換することが急速に起こり得るように、ペロブスカイト溶液の全固形分濃度(固形分を質量%で測定)を固形分の飽和濃度の少なくとも75%に、より好ましくは、固形分の飽和濃度の少なくとも90%に増加させることが好ましい。
【0041】
第2の乾燥処理の実行により、ペロブスカイト溶液は、溶液またはコロイド懸濁液から、不動化されたペロブスカイト結晶または中間相からなる層に変化する。しかしながら、高性能な光起電力デバイスを製造するためには、典型的には、焼なまし工程が追加的に必要とされる。焼なまし工程の機能には、残留溶媒の除去、ペロブスカイト溶液の過剰な揮発性成分の除去、ペロブスカイト結晶の成長、ペロブスカイト結晶の溶解再結晶プロセス(オストワルド熟成効果)、中間相のペロブスカイト結晶への変換、およびペロブスカイト結晶境界の変化を含むことができる。
図3の長時間加熱区間40において、フレキシブル多層基板は、一連の搬送ローラー41a~41eを介して搬送される。長時間加熱区間40の全体構造は、環境コントローラ25cによって保たれる一定の温度および気流を維持するために閉鎖構造とされる。本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、長時間加熱区間40内に2つ以上の区間(図示せず)があり、個別に温度および気流が制御される。
【0042】
不動化されたペロブスカイト結晶または中間相64c(
図2c)の層の焼なまし処理の時間は、高性能な光起電力デバイスを製造するために重要である。様々な実施形態では、例えば、焼なまし工程は、90℃を超える温度に少なくとも30秒間、ペロブスカイト層を加熱することを含む。薄いフレキシブルガラス、金属箔、ポリスルホン、およびポリイミドなど、歪むことなく高温に耐え得るフレキシブル支持体61の場合、
図3の長時間加熱区間40の温度を上昇させることにより、高性能ペロブスカイト層を形成するのに必要な時間を短くすることができる。高温に耐え得るフレキシブル支持体の場合、焼なまし工程でのフレキシブル多層基板およびペロブスカイト層の周囲の好ましい温度は、120~300℃の範囲である。PET、PC、およびPENなどの高温に耐えられないフレキシブル支持体61の場合、フレキシブル多層基板およびペロブスカイト層の周囲は、フレキシブル支持体61の歪みを最小にするため、焼なまし工程は、90~125℃の範囲であることが好ましい。
【0043】
ある種のペロブスカイト配合物を使用する場合、加熱区間の距離を短くするため、または製造速度を速くするために、急速焼なましデバイスを使用することができる。長時間の加熱時間を短くする1つの方法としては、フレキシブル多層基板60の1つ以上の薄い被膜62、63、および64cを短時間で高温に加熱することがある(
図2c)。フレキシブル支持体61を著しく加熱することなく、薄い被膜が直接加熱される場合、非常に長いオーブンを必要とすることなく、低温のフレキシブル支持体61上に高性能デバイスを製造することが可能となる。薄い被膜から低温のフレキシブル支持体61への熱の伝導は、これらの層の厚さに大きな違いがあるため、薄い被膜62、63、および64cのいずれかを短時間、高温で加熱しても、低温のフレキシブル支持体61を歪めることがない。低温のフレキシブル支持体61は、通常、薄い被膜62、63、および64cよりも150倍を超えて厚い。
【0044】
図3は、フレキシブル多層基板が長時間加熱区間40から短時間加熱区間50に搬送されることを示している。短時間加熱区間50は、急速熱処理(Rapid ThermalProcessing)ユニットまたは高エネルギーフォトニックデバイス(例えば、キセノンランプ)などの短時間加熱器51を含む。バックアップローラー52またはローラー対を必要に応じて使用して、短時間加熱器51との間隔を設定することができる。また、短時間加熱区間50の温度および湿度は、環境コントローラ25dによって制御されることで、短時間加熱区間50の条件を最適化することができる。
【0045】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、長時間加熱区間40が省かれ、短時間加熱区間50のみが使用される。本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、長時間加熱区間40と短時間加熱区間50の両方が使用される。本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、長時間加熱区間40のみが使用される。
【0046】
フレキシブル多層基板60は、R2R堆積乾燥装置100(
図3)を通過する際に、ほぼ一定の速度で移動する。R2R堆積乾燥装置100におけるいくつかの重要な位置を明示すると、第1の位置は、堆積デバイス21によってフレキシブル多層基板60上にペロブスカイト溶液が堆積される領域として規定される。第2の位置は、堆積デバイス21と急速乾燥区間30との間の領域として規定される。第3の位置は、急速乾燥区間30として規定される。第4の位置は、焼なましデバイスを用いる焼なまし工程でペロブスカイト層が加熱される領域として規定される。
図3における第4の位置は、長時間加熱区間40であり、必要に応じて短時間加熱区間50内の領域を含むことができる。R2R堆積乾燥装置100におけるフレキシブル多層基板60は、第1の位置から第2の位置へ、および第2の位置から第3の位置へ移動するにつれて、5m/分を超える速度で移動することが好ましく、10m/分を超える速度で移動することがより好ましい。本明細書に開示される好ましい実施形態において、ペロブスカイト層は、第4の位置での焼なまし工程において、焼なましデバイスを用いて加熱される。フレキシブル多層基板は、第3の位置から第4の位置へ、5m/分を超える速度で移動することが好ましく、10m/分を超える速度で移動することがより好ましい。焼なまし工程で使用される焼なましデバイスの例としては、対流式オーブン、高速熱処理器(Rapid Thermal Processor)、フォトニックデバイス(例えば、赤外線放射源またはキセノンランプ)、加熱ローラー、および加熱される固定曲面が挙げられる。
【0047】
本明細書に開示される好ましい実施形態では、フレキシブル多層基板は、第1の位置から第2の位置まで一定速度で移動し、第2の位置から第3の位置まで同じ一定速度で移動しており、第2の乾燥処理は、ペロブスカイト溶液中で、ペロブスカイト溶液の色を変化させる変換反応を引き起こす。
【0048】
R2R堆積乾燥装置100の全体に対して、または区間20、30、40、および50のうちの1つ以上に対して、粒子状の汚染物質を抑制し、制御する方法およびデバイス(
図3には示さず)が想定される。フレキシブル多層基板から粒子を除去するためのデバイスおよび方法には、強制気流、粘着性ローラー、および放電デバイスが挙げられる。空気を浄化し、指定されたクリーンルーム条件を維持するためのデバイスおよび方法には、HEPAフィルターを通した強制気流、および筐体内部の陽圧が挙げられる。溶剤の蒸気を除去して調整するための方法およびデバイスも想定されるが、
図3には示されておらず、またオゾンおよび窒素酸化物のような望ましくないガスまたは副産物を除去するためのデバイスも示されていない。固定的な制御デバイスは、フレキシブルウェブを搬送する装置において一般的に使用されるが、
図3には示されていない。
【0049】
図4は、本明細書に開示される好ましい実施形態を説明するために使用される、フレキシブル基板上に光起電力デバイスをロール・ツー・ロール印刷するための例示的なマルチステーションR2R堆積乾燥装置200の概略図を示す。マルチステーションR2R堆積乾燥装置200のステーションは、堆積区間を含むものとして規定されるが、他の区間およびデバイスも、ステーションの一部であってもよい。本明細書に開示される多段階工程の方法を当業者により可能にするために、追加的な構成を適用可能で、ペロブスカイト系デバイス、特にペロブスカイト系太陽電池の一部分またはすべての層を製造することを可能にする。
図4は、5つのステーションを示すが、本明細書に開示される好ましい実施形態の変形として、5つより多い、または少ないステーションが想定される。例えば、3つのステーション(図示せず)を有するマルチステーションR2R堆積乾燥装置を用いて、第1の電極層および支持層を有するフレキシブル基板の上に、第1のキャリア輸送層、ペロブスカイト系吸収体層、および第2のキャリア輸送層を順次、塗布することができる。ほかの変形例では、4つのステーション(図示せず)を有するマルチステーションR2R堆積乾燥装置であって、第1のキャリア輸送層を堆積する前に、第1の電極層が、マルチステーションR2R堆積乾燥装置の第1のステーションにおいて、フレキシブル基板上に形成される。この例では、装置には、支持層のみを有するフレキシブル基板が供給される。あるいは、マルチステーションR2R堆積乾燥装置に、支持層および第1の電極層を有するフレキシブル基板が供給される場合、第4のステーションを用いて、第2のキャリア輸送層上に第2の電極層を塗布することができる。光起電力デバイスの性能または機能を改善する追加の層を必要とする光起電力デバイスを製造するために、5つを超えるステーションを備えたマルチステーションR2R堆積乾燥装置が想定される。
【0050】
図4に示されるように、連続インライン式プロセスにおいては、フレキシブル支持体61が送出ロール10から送り出され、5つの堆積区間20a~20eおよび5つの長時間加熱区間40a~40eに通されて、ペロブスカイト系デバイス67が製造される。マルチステーションR2R堆積乾燥装置200を通過するフレキシブル基板61の移動方向は、送出ロール10および巻取ロール12に隣接して付された矢印によって示される。各堆積区間または各長時間加熱区間の後に、追加されるデバイスが想定され、いくつかが
図4に示され、以下に説明される。各堆積区間20a~20eは、対応する堆積位置26a~26eにおいて、堆積デバイス21a~21eを用いて機能性溶液をフレキシブル支持体61上に堆積する。各長時間加熱区間40a~40eは、対応する堆積デバイスを用いて堆積された機能性溶液を加熱して、機能性溶液を乾燥、硬化、焼なまし、および/または焼結する。典型的には、各長時間加熱区間40a~40eのプロセス設定値は、対応する堆積デバイスを用いて堆積された溶液に対して最適化されるので、異なる。同様に、各堆積区間20a~20eのプロセス設定値も互いに異なることがある。
【0051】
マルチステーションR2R堆積乾燥装置200の好ましい実施形態を、より詳細に説明する。堆積区間20aは、第1の電極堆積デバイス21aを用いてフレキシブル支持体61上に第1の電極溶液を堆積する。長時間加熱区間40aは、第1の電極溶液を乾燥および焼結して第1の電極層を形成する。次いで、第1の電極層を有するフレキシブル基板は、堆積区間20bに移動し、第1のキャリア輸送層堆積デバイス21bを用いて第1のキャリア輸送溶液を第1の電極層上に堆積する。長時間加熱区間40bは、第1のキャリア輸送溶液を乾燥および焼結して、第1のキャリア輸送層を形成する。次いで、第1の電極層および第1のキャリア輸送層を有するフレキシブル基板は、堆積区間20cに移動し、ここで、ペロブスカイト溶液堆積デバイス21cを用いて、ペロブスカイト溶液が第1のキャリア輸送層上に堆積される。
図3の区間20での説明と同様に、堆積区間20cでは、第1の乾燥処理において、堆積されたペロブスカイト溶液中の溶媒の初期量の第1の分量が除去される。堆積区間20cの後、フレキシブル基板は、急速乾燥区間30に移動し、第2の乾燥処理において、堆積されたペロブスカイト溶液中の溶媒の初期量の第2の分量が除去される。急速乾燥区間は前述の
図3で説明した通りであり、第2の乾燥処理は、溶液からの溶媒の急速な蒸発によって誘発されるペロブスカイト溶液中での変換反応を引き起こし、固形分の飽和および結晶形成、または中間相の形成を引き起こす。急速乾燥区間30の後、長時間加熱区間40cは、塗布されたペロブスカイト溶液に、さらに乾燥および焼なましを行って、ペロブスカイト層を形成する。次に、第1の電極層、第1のキャリア輸送層、およびペロブスカイト層を有するフレキシブル基板は、堆積区間20dに移動し、そこで、第2のキャリア輸送層堆積デバイス21dを用いて第2のキャリア輸送溶液がペロブスカイト層上に堆積される。長時間加熱区間40dは、第2のキャリア輸送溶液を乾燥させて、第2のキャリア輸送層を形成する。次に、第1の電極層、第1のキャリア輸送層、ペロブスカイト層、および第2のキャリア輸送層を有するフレキシブル基板は、堆積区間20eに移動し、そこで、第2の電極堆積デバイス21eにより第2の電極溶液が第2のキャリア輸送層上に堆積される。長時間加熱区間40eは、第2の電極溶液を乾燥させて、第2の電極層を形成する。そして、5つの機能層を有するフレキシブル基板が巻取ロール12に巻き取られる。
【0052】
薄膜のレーザーエッチングは当該技術分野では公知であり、連続インライン式の製造プロセスの一部分として、モノリシック光起電力デバイスを製造するために、実施形態で使用される。長時間加熱区間40aと堆積区間20bとの間で、フレキシブル基板はレーザーエッチングユニット70aを通過して移動する。長時間加熱区間40dと堆積区間20eとの間では、フレキシブル基板はレーザーエッチングユニット70dを通過して移動する。長時間加熱区間40eと巻取ロール12との間では、フレキシブル基板はレーザーエッチングユニット70eを通過して移動する。各レーザーエッチングユニットは、レーザーデバイス71a、71d、71e、およびレーザーエッチング・バッキングローラー72a、72d、72eを含む。レーザーエッチング・バッキングローラー72a、72d、72eは、フレキシブル支持体61が所定の位置にあることを確実にするために使用される。画像処理システム(図示せず)をレーザーエッチングユニット70a、70d、70eの1つ以上に組み込んで、レーザーがエッチングする位置の精度を高めることができる。制御システム(図示せず)をレーザーエッチングユニット70a、70d、70eの1つ以上に組み込んで、収集されたデータに基づいてレーザースポットを位置決めすることができる。フィードフォワード制御およびフィードバック制御が制御システムで使用されてもよい。レーザーエッチングユニット70aは、第1の電極層の一部分を除去する。レーザーエッチングユニット70dは、第2のキャリア輸送層の一部分、ペロブスカイト層の一部分、および第1のキャリア輸送層の一部分を除去する。レーザーエッチングユニット70eは、第2の電極層の一部分、第2のキャリア輸送層の一部分、ペロブスカイト層の一部分、および第1のキャリア輸送層の一部分を除去する。
【0053】
図3に示された、前述のさらなる区間および要素の全ては、ペロブスカイト層を製造するための好ましいマルチステーションR2R堆積乾燥装置に含まれることが想定されるが、見やすくするために、
図4には示されていない。
図3に示された区間および要素のいくつかは、マルチステーションR2R堆積乾燥装置における他の層を製造する際に用いることも想定されるが、見やすくするために、
図4には示されていない。例えば、表面処理デバイス14を用いて、各堆積区間20a~20eに進入する前に、フレキシブル支持体61またはフレキシブル支持体61上に形成された1つ以上の層を調整してもよく、環境コントローラを、堆積区間20a~20eおよび長時間加熱区間40a~40eの一部または全部に使用してもよい。
【0054】
R2R装置に搬送ローラーおよびバッキングローラーが使用されることを前述したが、
図4では、少数の搬送ローラー13a~13eおよびバッキングローラー22a~22eしか特定されていない。R2R堆積乾燥装置における他の従来の構成要素は、当該業界で公知であり、本明細書に開示される方法で用いることが想定されているが、
図4には示されていない。
【実施例】
【0055】
実施例1
幅25.4cmのフレキシブル多層基板を、ポリタイプ・コンバーティング社(Polytype Converting)製のR2R堆積乾燥装置を用いて、30、32、および35m/分の一定速度で搬送する3回の実証試験を行った。ポリタイプ・コンバーティング装置は、本明細書に開示される多段階工程の乾燥方法を可能にするために、以下に記載されるように改変された。R2R堆積乾燥装置は、フレキシブル基板を送出ロール以降で、以下の区間を通して連続的に搬送するためのインライン式配置を備えていた:表面処理デバイス、堆積と第1の乾燥処理の区間、第2の乾燥処理を行う急速乾燥区間、および長時間加熱区間。ペロブスカイト層を含むフレキシブル多層基板は、巻取ロールに巻き取られた。フレキシブル多層基板は、フレキシブル支持体としてのポリエステル薄膜、第1の導電層としての酸化インジウムスズの薄層、および第1のキャリア輸送層としてのポリ(トリアリールアミン)を備えていた。表面処理デバイスは、堆積区間の前に、フレキシブル多層基板の被覆される表面をオゾン処理するコロナ放電デバイスであった。堆積区間では、堆積デバイスとして、直接モードのグラビアシリンダーを用いて、ペロブスカイト溶液の厚さ4.5マイクロメートルの湿潤層がフレキシブル多層基板上に堆積された。グラビアシリンダーは、40℃の温度に加熱され、ペロブスカイト溶液が堆積されている間、その温度に維持された。ペロブスカイト溶液は、ヨウ化鉛(II)とヨウ化メチルアンモニウムの等モル混合物を含む33質量%の固形分、および99.25体積%の2-メトキシエタノールと0.75体積%のジメチルスルホキシドとを含む溶媒で構成された。ペロブスカイト溶液の飽和濃度は、20℃で固形分62質量%である。堆積位置から急速乾燥区間までの距離は、1.4mであり、第1の乾燥処理の領域を規定する。第1の乾燥処理は、移動するフレキシブル多層基板の背面にその全幅にわたって接触する長さ0.4メートルの固定曲面で基板を加熱する工程を含んでいた。固定曲面は、73.6℃に維持された。急速乾燥区間で行う第2の乾燥処理にはエアーナイフが含まれ、75マイクロメートル幅のスロットからペロブスカイト溶液に窒素を吹き付け、第1の乾燥処理と比べて、堆積したペロブスカイト溶液から溶媒が蒸発する速度を増加させた。スロットは、移動する基板から1.5cmの位置に配置され、移動する基板の幅を横断していた。エアーナイフの焦点は、固定曲面の下流端に、ウェブに対して20度の角度で配置され、堆積位置から離れる方向に向かせていた。窒素ガスは、毎分40標準立方フィート(毎分1.133m3)の流量でエアーナイフに供給された。長時間加熱区間は、120℃の温度に設定された長さ18メートルの対流式オーブンで構成された。
【0056】
3回行った実証試験での第1の乾燥処理では、溶媒の初期量の70%まで除去し、ペロブスカイト溶液を固形分62質量%まで濃縮した。実証試験のための急速乾燥工程では、ペロブスカイト溶液の変換反応が、エアーナイフの焦点から下流0~8cmの範囲で起こることが観察された。変換反応によって、透明な黄色のペロブスカイト溶液が黒褐色に変化して不透明になり、ペロブスカイト溶液を通過する可視光の透過率が2倍を超えて減少することを確認した。厚さ約0.5マイクロメートルの均一なペロブスカイト層が、フレキシブル多層基板上に形成された。さらなる実証試験では、第1の乾燥処理において除去される溶媒が少なすぎると(例えば、溶媒の初期量の40%未満)、急速乾燥処理の最中のペロブスカイト結晶の不均一核の形成により引き起こされる、斑点を著しく有する不連続なペロブスカイト層が生じた。これらのペロブスカイト層には、急速乾燥処理の最中の結晶の動きによって引き起こされる明らかな欠陥があることも観察された。第1の乾燥処理において除去される溶媒が多すぎると(例えば、溶媒の初期量の75%を超える)と、急速乾燥処理の最中のペロブスカイト結晶の不均一な核形成により引き起こされる、斑点を著しく有する不連続なペロブスカイト層が生じる。最も均一なペロブスカイト層を形成した実証試験は、速度が32m/分の場合であった。この実証試験では、第2の輸送層と第2の導電層をペロブスカイト層に順次、堆積させて、機能する光起電力デバイスを製造した。
【0057】
実施例2
幅15.2cmのフレキシブル多層基板を、イーストマン・コダック社(Eastman Kodak Company)製のR2R堆積乾燥装置を用いて、11.9、12.2、12.5、12.8、13.1、および13.4m/分の一定速度で搬送する6回の実証試験を行った。R2R装置は、本明細書に開示される多段階工程の乾燥方法を可能にするために、以下に記載されるように改変された。R2R堆積乾燥装置は、フレキシブル基板の送出ロール以降で、以下の区間を通して連続的に搬送するためのインライン式配置を備えていた:堆積と第1の乾燥処理の区間、第2の乾燥処理を行う急速乾燥区間、および長時間加熱区間。ペロブスカイト層を含むフレキシブル多層基板は、巻取ロールに巻き取られた。フレキシブル多層基板は、フレキシブル支持体としてのポリエステル薄膜、第1の導電層としての酸化インジウムスズの薄層、および第1のキャリア輸送層としてのポリ(トリアリールアミン)を備えていた。堆積区間では、ペロブスカイト溶液の厚さ4.5マイクロメートルの湿潤層が、堆積デバイスとしてスロットダイを用いて、フレキシブル多層基板上に堆積された。スロットダイは、50℃の温度に加熱され、ペロブスカイト溶液が堆積される間、その温度に維持された。フレキシブル支持体の背面も、温度制御されたローラーを用いて堆積区間で50℃の温度に加熱され、ペロブスカイト溶液が堆積される間、その温度に維持された。ペロブスカイト溶液は、ヨウ化鉛(II)とヨウ化メチルアンモニウムの等モル混合物を含む33質量%の固形分および、99.25体積%の2-メトキシエタノール、0.75体積%のN-メチル-2-ピロリドン、および添加剤として0.4mg/mlの1-α-ホスファチジルコリンを含む溶媒で構成された。ペロブスカイト溶液の飽和濃度は、20℃で固形分62質量%である。堆積位置から急速乾燥区間までの距離は1mであり、第1の乾燥処理の領域を規定する第1の乾燥処理は、オーブンの0.7m区間で基板と堆積されたペロブスカイト溶液を加熱する工程を含み、第1の乾燥処理における空気の乱流を制限するために、移動するウェブの3cm上方にスクリーンが配置された。オーブンは、約35℃に制御された。急速乾燥区間で行う第2の乾燥処理では、エアーナイフが含まれ、75マイクロメートル幅のスロットからペロブスカイト溶液に窒素を吹き付け、第1の乾燥処理と比べて、堆積したペロブスカイト溶液から溶媒が蒸発する速度を増加させた。スロットは、移動する基板から1.5cmの位置に配置され、移動する基板の幅を横断していた。エアーナイフの焦点は、第1の乾燥処理の直後の下流に、ウェブに対して25度の角度で配置され、堆積位置から離れる方向に向かせていた。窒素ガスは、毎分40標準立方フィート(毎分1.133m3)の流量でエアーナイフに供給された。長時間加熱区間は、長さ11.88メートルの対流式オーブンで構成され、温度は120℃に設定された。
【0058】
6回行った実証試験での第1の乾燥処理では、溶媒の初期量の70%まで除去し、ペロブスカイト溶液を固形分62質量%まで濃縮した。実証試験のための急速乾燥工程では、ペロブスカイト溶液の変換反応が、エアーナイフの焦点から下流0~5cmの範囲で起こることが観察された。変換反応によって、透明な黄色のペロブスカイト溶液が黒褐色に変化して不透明になり、ペロブスカイト溶液を通過する可視光の透過率が2倍を超えて減少することを確認した。厚さ約0.5マイクロメートルの均一なペロブスカイト層が、フレキシブル多層基板上に形成された。さらなる実証試験では、第1の乾燥処理において除去される溶媒が少なすぎると(例えば、溶媒の初期量の40%未満)、急速乾燥処理の最中のペロブスカイト結晶の不均一核の形成により引き起こされる、斑点を著しく有する不連続なペロブスカイト層が生じた。これらのペロブスカイト層には、急速乾燥処理の最中の結晶の動きによって引き起こされる明らかな欠陥があることも観察された。第1の乾燥処理において除去される溶媒が多すぎると(例えば、溶媒の初期量の75%を超える)、急速乾燥処理の最中のペロブスカイト結晶の不均一な核形成により引き起こされる、斑点を著しく有する不連続なペロブスカイト層が生じた。最も均一なペロブスカイト層を形成した実証試験は、速度が12.8m/分の場合であった。この実証試験では、第2の輸送層と第2の導電層をペロブスカイト層の上に順次、堆積させて、電力変換効率が10%を超える、機能する光起電力デバイスを製造した。
【0059】
本明細書に記載される多段階工程の乾燥法は、非常に均一なペロブスカイト層を形成することが確認され、低コストで高効率なペロブスカイト系デバイスを信頼性の高い高速で製造可能にする。本明細書に記載される方法は、ロール・ツー・ロール搬送を使用しているが、基板がシートの形態で区間およびデバイスに提供されるいくつかの実施形態については、シート供給システムが想定される。ペロブスカイト系デバイスは、電磁放射センサ、光起電力デバイス、および発光デバイスを含む。本発明は、特定の好ましい実施形態を特に参照して詳細に説明されてきたが、本発明の精神および範囲内で変形および改変を行うことができることが理解され得るであろう。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
ペロブスカイト層を製造する方法において、
フレキシブル基板を供給する工程と、
初期量の溶媒およびペロブスカイト前駆体材料を含むペロブスカイト溶液であり、所定の溶液温度、および該所定の溶液温度における固形分の飽和濃度の30~70質量%の範囲で全固形分濃度を有するペロブスカイト溶液を供給する工程と、
前記ペロブスカイト溶液を、前記フレキシブル基板に、第1の位置で堆積させる工程と、
堆積された前記ペロブスカイト溶液から前記溶媒の初期量の第1の分量を、第2の位置で、第1の乾燥滞留時間が設定された第1の乾燥処理により除去する工程であって、該第1の乾燥処理は、該堆積されたペロブスカイト溶液を被覆された層の温度まで加熱し、該ペロブスカイト溶液の前記全固形分濃度を該被覆された層の温度における固形分の飽和濃度の少なくとも75%に増加させる、工程と、
前記堆積されたペロブスカイト溶液から前記溶媒の初期量の第2の分量を、第3の位置で、第2の乾燥滞留時間中に、溶媒の蒸発速度が前記第1の乾燥処理よりも速く設定された第2の乾燥処理により除去して、該堆積されたペロブスカイト溶液中に飽和および変換反応を引き起こしてペロブスカイト結晶の形成またはペロブスカイト中間相の形成をもたらす工程と、
を含み、
前記第1の乾燥滞留時間が前記第2の乾燥滞留時間よりも少なくとも5倍長い、ペロブスカイト層を製造する方法。
実施形態2
前記第1の乾燥処理は、前記溶媒の初期量の40%~75%を除去する、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記第2の乾燥処理における前記第2の分量の溶媒の除去により、前記溶媒の初期量の10%未満が残留する、実施形態2に記載の方法。
実施形態4
前記変換反応により、前記ペロブスカイト溶液の色または光学密度が変化する、実施形態1に記載の方法。
実施形態5
前記第2の乾燥処理により、前記ペロブスカイト溶液を通過する可視光の透過率が、少なくとも2倍、減少する、実施形態4に記載の方法。
実施形態6
前記第2の乾燥処理は、前記ペロブスカイト溶液に対して作用を開始してから0.5秒未満で可視光の透過率の変化を生じさせる乾燥デバイスを用いて行われる、実施形態5に記載の方法。
実施形態7
前記乾燥デバイスは、前記ペロブスカイト溶液に気体を吹き付けるエアーナイフまたはプレナムである、実施形態6に記載の方法。
実施形態8
前記ペロブスカイト溶液を前記フレキシブル基板上に堆積させる前に、該ペロブスカイト溶液、または該フレキシブル基板の周囲の領域を30~100℃の範囲の温度に加熱する工程をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態9
前記ペロブスカイト溶液を堆積する前に、基板加熱デバイスを用いて前記フレキシブル基板を30~100℃の範囲の温度に加熱する工程をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態10
前記フレキシブル基板は、フレキシブル多層基板である、実施形態1に記載の方法。
実施形態11
前記フレキシブル多層基板は、フレキシブル支持体、第1の導電層、およびキャリア輸送層を含む、実施形態10に記載の方法。
実施形態12
前記フレキシブル支持体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン、金属箔、およびガラスからなる群より選択される材料を含む、実施形態11に記載の方法。
実施形態13
前記キャリア輸送層は、ポリ(トリアリールアミン)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、PEDOT複合体、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、スピロ-MeOTAD、フラーレン、グラフェン、還元型酸化グラフェン、チオシアン酸銅(I)、ヨウ化第一銅、金属酸化物、およびそれらの誘導体からなる群より選択される材料を含む、実施形態11に記載の方法。
実施形態14
第4の位置で、焼なましデバイスを用いて前記ペロブスカイト溶液に焼なましを行う工程をさらに含み、該焼なましデバイスは、対流式オーブン、高速熱処理器、フォトニックデバイス、加熱ローラー、および加熱される固定曲面からなる群より選択される、実施形態1に記載の方法。
実施形態15
前記焼なましデバイスは、前記焼なまし工程を行っている間、前記フレキシブル基板の周囲の領域を90~125℃の範囲の温度に加熱し、該フレキシブル基板は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリカーボネートからなる群より選択される材料を含む、実施形態14に記載の方法。
実施形態16
前記焼なましデバイスは、前記焼なまし工程を行っている間、前記フレキシブル基板の周囲の領域を120~300℃の範囲の温度に加熱し、該フレキシブル基板は、ポリイミド、ポリスルホン、金属箔、およびガラスからなる群より選択される材料を含む、実施形態14に記載の方法。
実施形態17
前記フレキシブル基板および前記ペロブスカイト溶液の周囲の領域は、前記第2の乾燥処理を行っている間、30℃を超える温度に加熱される、実施形態1に記載の方法。
実施形態18
前記ペロブスカイト溶液を堆積する前に、表面処理デバイスを用いて前記フレキシブル基板を処理する工程をさらに含み、該表面処理デバイスは、コロナ放電、オゾン、およびプラズマからなる群より選択される、実施形態1に記載の方法。
実施形態19
前記フレキシブル多層基板は、前記第1の位置から前記第2の位置まで一定の速度で移動し、該フレキシブル多層基板は、該第2の位置から前記第3の位置まで該一定の速度で移動し、該一定の速度は、5m/分を超える、実施形態1に記載の方法。
実施形態20
前記ペロブスカイト溶液は、135℃未満の沸点を有する溶媒を含む、実施形態19に記載の方法。
実施形態21
前記フレキシブル基板をロールから搬送する手段をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態22
前記溶媒は、2-メトキシエタノール、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ブタノール、メタノール、エタノール、尿素、γ-ブチロラクトン、2-ブトキシエタノール、2-エトキシエタノール、イソプロポキシエタノール、およびフェノキシエタノールからなる群より選択される材料を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態23
前記ペロブスカイト溶液層は、スロットダイ、グラビア、スプレー、フレキソ印刷、ディップ、インクジェット、ロッド、およびブレードからなる群より選択される堆積デバイスを用いて、前記フレキシブル基板上に堆積される、実施形態1に記載の方法。
実施形態24
前記ペロブスカイト溶液は、25~60質量%の全固形分濃度で前駆体材料を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態25
前記フレキシブル多層基板上に堆積される前記ペロブスカイト溶液の厚さが10マイクロメートル未満である、実施形態1に記載の方法。
実施形態26
ペロブスカイト層を製造する方法において、
フレキシブル多層基板をロールから供給する工程と、
初期量の溶媒およびペロブスカイト前駆体材料を含むペロブスカイト溶液の層を前記フレキシブル多層基板上に堆積させる工程と、
前記溶媒の初期量の40%~75%の範囲に相当する第1の分量を第1の乾燥滞留時間が設定された第1の乾燥処理により除去する工程と、
前記溶媒の初期量の10%未満が残留するように、該溶媒の初期量の第2の分量を第2の乾燥滞留時間が設定された第2の乾燥処理により除去する工程と、
を含み、
前記第1の乾燥滞留時間が前記第2の乾燥滞留時間よりも少なくとも5倍長い、
ペロブスカイト層を製造する方法。
実施形態27
ペロブスカイト層を製造する方法において、
フレキシブル多層基板を供給する工程と、
溶媒およびペロブスカイト前駆体材料を含むペロブスカイト溶液の層を、前記フレキシブル多層基板に、第1の位置で堆積させる工程と、
第2の位置での乾燥処理により前記ペロブスカイト溶液から前記溶媒の一部分を除去する工程と、
を含み、
前記フレキシブル多層基板は、前記第1の位置から該第2の位置まで5m/分を超える速度で移動し、前記ペロブスカイト溶液は、135℃未満の沸点を有する溶媒を含む、
ペロブスカイト層を製造する方法。
実施形態28
ペロブスカイト層を製造する方法において、
基板を供給する工程と、
第1のキャリア輸送層堆積デバイスを用いて、第1のキャリア輸送溶液を前記基板上に堆積して、該基板上に第1のキャリア輸送層を形成する工程と、
ペロブスカイト溶液堆積デバイスを用いて、溶媒およびペロブスカイト前駆体材料を含むペロブスカイト溶液を前記第1のキャリア輸送層上に堆積する工程と、
堆積された前記ペロブスカイト溶液を乾燥させてペロブスカイト系吸収体層を形成する工程と、
第2のキャリア輸送層堆積デバイスを用いて、第2のキャリア輸送溶液を前記ペロブスカイト系吸収体層上に堆積して、該ペロブスカイト系吸収体層上に第2のキャリア輸送層を形成する工程と、を含み、
前記堆積されたペロブスカイト溶液は、急速乾燥デバイスを用いて少なくとも半乾燥状態にされて、変換反応を引き起こし、該急速乾燥デバイスが該ペロブスカイト溶液に対して作用を開始してから0.5秒未満で、該ペロブスカイト溶液の光学密度が少なくとも2倍変化する、
ペロブスカイト層を製造する方法。
実施形態29
前記基板の速度は、該基板が前記第1のキャリア輸送層堆積デバイスから前記ペロブスカイト溶液堆積デバイスに移動するときに、5m/分を超え、該基板の速度は、該基板が該ペロブスカイト溶液堆積デバイスから前記第2のキャリア輸送層堆積デバイスに移動するときに、5m/分を超える、実施形態28に記載の方法。
実施形態30
前記急速乾燥デバイスに進入するときの前記堆積されたペロブスカイト溶液の全固形分濃度は、固形分の飽和濃度の少なくとも75%である、実施形態28に記載の方法。
実施形態31
前記基板は、フレキシブルである、実施形態28に記載の方法。
実施形態32
前記基板は、ロールから供給される、実施形態31に記載の方法。
実施形態33
前記基板が前記ロールから前記第1のキャリア輸送層堆積デバイスに移動するとき、該基板の速度が5m/分を超える、実施形態32に記載の方法。
実施形態34
前記基板は、シートの形態で提供される、実施形態28に記載の方法。
実施形態35
前記基板は、支持層および電極層を含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態36
前記電極層は、透明である、実施形態35に記載の方法。
実施形態37
電極堆積デバイスを用いて前記基板上に電極層を堆積する工程をさらに含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態38
前記電極層は、透明である、実施形態37に記載の方法。
実施形態39
電極堆積デバイスを用いて前記第2のキャリア輸送層上に電極層を堆積する工程をさらに含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態40
前記基板は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン、金属箔、およびガラスからなる群より選択される材料を含む支持体を含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態41
前記ペロブスカイト系吸収体層は、90℃を超える温度で少なくとも30秒間加熱される、実施形態28に記載の方法。
実施形態42
前記ペロブスカイト溶液の溶媒は、135℃未満の沸点を有する、実施形態28に記載の方法。
実施形態43
前記ペロブスカイト溶液堆積デバイスは、スロットダイ、グラビア、スプレー、フレキソ印刷、ディップ、インクジェット、ロッド、およびブレードからなる群より選択される要素を含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態44
レーザーデバイスを用いて、前記第1のキャリア輸送層、前記ペロブスカイト系吸収体層、または前記第2のキャリア輸送層の一部分を除去する工程をさらに含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態45
連続インライン式プロセスを用いてペロブスカイト系吸収体層を含む光起電力デバイスを製造する方法において、
フレキシブル基板をロールから供給する工程と、
前記フレキシブル基板上に第1のキャリア輸送層を堆積する工程と、
前記第1のキャリア輸送層上にペロブスカイト溶液を堆積する工程と、
前記堆積されたペロブスカイト溶液を乾燥して、ペロブスカイト系吸収体層を形成する工程と、
第2のキャリア輸送層を前記ペロブスカイト系吸収体層上に堆積する工程と、
電極層を堆積する工程と、
を含み、
前記堆積されたペロブスカイト溶液は、乾燥デバイスを用いて少なくとも半乾燥状態にされ、該乾燥デバイスが該堆積されたペロブスカイト溶液に対して作用を開始してから0.5秒未満で、該堆積されたペロブスカイト溶液の光学密度を少なくとも2倍増加させる、
連続インライン式プロセスを用いてペロブスカイト系収体層を含む光起電力デバイスを製造する方法。
実施形態46
レーザーデバイスを用いて、前記第1のキャリア輸送層、前記ペロブスカイト系吸収体層、前記第2のキャリア輸送層、または前記電極層の一部分を前記フレキシブル基板から除去する工程をさらに含む、実施形態45に記載の方法。
実施形態47
前記フレキシブル基板上に透明電極層を堆積する工程をさらに含む、実施形態45に記載の方法。
実施形態48
溶媒、有機ペロブスカイト前駆体材料、および無機ペロブスカイト前駆体材料を含むペロブスカイト溶液であって、
該溶媒の量は30質量%を超え、ペロブスカイト溶液の全固形分濃度は、溶液温度が20~25℃の範囲におけるペロブスカイト溶液での飽和濃度の30%~70%の範囲である、
ペロブスカイト溶液。
実施形態49
前記溶媒の量は、30~82質量%の範囲であり、前記全固形分濃度は、18~70質量%の範囲である、実施形態48に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態50
前記溶媒は、135℃未満の沸点を有する、実施形態48に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態51
前記溶媒は、アルコールである、実施形態48に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態52
前記溶媒は、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-イソプロポキシエタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、およびエタノールからなる群より選択される、実施形態51に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態53
前記アルコールの量は、50質量%未満で、前記全固形分濃度は、35質量%を超える、実施形態51に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態54
前記アルコールの量は、50質量%を超え、前記全固形分濃度は、40質量%未満である、実施形態51に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態55
前記無機ペロブスカイト前駆体材料は、ヨウ化鉛(II)、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(II)三水和物、塩化鉛(II)、臭化鉛(II)、硝酸鉛、チオシアン酸鉛、ヨウ化スズ(II)、ハロゲン化ルビジウム、ハロゲン化カリウム、およびハロゲン化セシウムからなる群より選択される材料を含む、実施形態48に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態56
前記有機ペロブスカイト前駆体材料は、ヨウ化メチルアンモニウム、臭化メチルアンモニウム、塩化メチルアンモニウム、酢酸メチルアンモニウム、臭化ホルムアミジニウム、およびヨウ化ホルムアミジニウムからなる群より選択される材料を含む、実施形態48に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態57
前記有機ペロブスカイト前駆体材料は、純度が99質量%を超える、実施形態48に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態58
前記無機ペロブスカイト前駆体材料は、金属カチオンを含み、純度が99.9質量%を超える、実施形態48に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態59
ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、1,8-ジヨードオクタン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、シクロヘキサノン、水、アルキルジアミン、ジメチルアセトアミド、酢酸、およびヨウ化水素からなる群より選択される結晶成長調整剤をさらに含む、実施形態48に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態60
前記結晶成長調整剤は、0.01~10質量%の濃度を有する、実施形態59に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態61
前記結晶成長調整剤は、0.01~2質量%の濃度を有する、実施形態60に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態62
塩化コリン、フェネチルアミン、ヘキシルアミン、l-α-ホスファチジルコリン、ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレート、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレングリコール、ピリジン、チオフェン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フラーレン、ポリ(プロピレンカーボネート)、およびジドデシルジメチルアンモニウムブロミドからなる群より選択される、結晶粒界改質剤をさらに含む、実施形態48に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態63
前記結晶粒界改質剤は、0.01~2質量%の濃度を有する、実施形態62に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態64
ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、尿素、およびγ-ブチロラクトンからなる群より選択される材料をさらに含む、実施形態48に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態65
2-メトキシエタノール、有機ペロブスカイト前駆体材料、無機ペロブスカイト前駆体材料、および30~45質量%の範囲の固形分濃度を含むペロブスカイト溶液であって、該2-メトキシエタノールの量が55質量%を超える、ペロブスカイト溶液。
実施形態66
結晶成長調整剤をさらに含み、該結晶成長調整剤の濃度は、0.01~2質量%であり、前記無機ペロブスカイト前駆体は、鉛カチオンを含み、該無機ペロブスカイト前駆体材料の純度が99.9質量%を超える、実施形態65に記載のペロブスカイト溶液。
実施形態67
2-メトキシエタノール、有機ペロブスカイト前駆体材料、および無機ペロブスカイト前駆体材料を含むペロブスカイト溶液であって、該2-メトキシエタノールの量が30質量%を超え、該無機ペロブスカイト前駆体材料は、鉛カチオンを含み、該有機ペロブスカイト前駆体材料と該無機ペロブスカイト前駆体材料とのモル比が1~3の範囲である、ペロブスカイト溶液。
【符号の説明】
【0060】
10 送出ロール
12 巻取ロール
13 搬送ローラー
13a~13e 搬送ローラー
14 表面処理デバイス
20 堆積/第1の乾燥処理の区間
20a~20e マルチステーションR2R堆積乾燥装置の各ステーションの堆積区間
21 堆積デバイス
21a 第1の電極堆積デバイス
21b 第1のキャリア輸送層堆積デバイス
21c ペロブスカイト溶液堆積デバイス
21d 第2のキャリア輸送層堆積デバイス
21e 第2の電極堆積デバイス
22a~22e 各堆積区間のバッキングローラー
26a~26e 各堆積区間の堆積位置
22 バッキングローラー
23a、23b エアープレナム
24 搬送ローラー
25a~25d 環境コントローラ
26 堆積位置
27 気流制御デバイス
30 急速乾燥/第2の乾燥処理の区間
31 非接触式の乾燥デバイス
32 接触式の乾燥デバイス
40 長時間加熱区間
40a~40e マルチステーションR2R堆積乾燥装置の各ステーションの長時間加熱区間
41a~41e 搬送ローラー
50 短時間加熱区間
51 短時間加熱器
52 バッキングローラー
60 フレキシブル多層基板
61 フレキシブル支持体
62 第1の導電層
63 第1のキャリア輸送層
64a ペロブスカイト溶液層
64b 半乾燥状態のペロブスカイト溶液層
64c ペロブスカイト結晶または中間相の不動層
64d 完成されたペロブスカイト層
65 第2のキャリア輸送層
66 第2の導電層
67 ペロブスカイト系デバイス
70a、70d、70e マルチステーションR2R堆積乾燥装置の各ステーションのレーザーエッチングユニット
71a、71d、71e 各レーザーエッチングユニットのレーザーデバイス
72a、72d、72e 各レーザーエッチングユニットのエッチング・バッキングローラー
100 ロール・ツー・ロール(R2R)堆積乾燥装置
200 マルチステーションR2R堆積乾燥装置