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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】救急出動支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20240712BHJP
   G16H 40/00 20180101ALI20240712BHJP
【FI】
G06Q50/26
G16H40/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022148822
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2021047794の分割
【原出願日】2017-07-20
(65)【公開番号】P2022171873
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2022-10-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業、「早く正しい救急医療実現のためのスマートな患者情報収集・処理・共有システムの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】319004663
【氏名又は名称】株式会社Smart119
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中田 孝明
(72)【発明者】
【氏名】夏井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山尾 恭生
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-039978(JP,A)
【文献】特開2007-128245(JP,A)
【文献】特開2010-277383(JP,A)
【文献】国際公開第2012/098613(WO,A1)
【文献】特開2016-167120(JP,A)
【文献】特開2004-171394(JP,A)
【文献】特開2015-197885(JP,A)
【文献】特開2016-194764(JP,A)
【文献】特開平01-319861(JP,A)
【文献】特開2006-260362(JP,A)
【文献】特開2012-053537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
救急出動の支援を行う救急出動支援システムであって、
前記救急出動支援システムは、
医療機関ごとに、連絡先と受入要請の回数と、受入可能の回答の回数または受入不能の回答の回数を含む医療機関情報を記憶する医療機関情報記憶部と、
前記医療機関情報記憶部に記憶する医療機関の受入要請の回数と、受入可能の回答の回数または受入不能の回答の回数とを用いて、医療機関の受入可能性に関する情報を算出して、救急隊が利用する救急隊端末において搬送先の候補となる医療機関とその医療機関の受入可能性に関する情報とを表示させる医療機関候補選定処理部と、
医療機関に対して受入要請の連絡を行う搬送先医療機関選定処理部と、を備えており、
前記搬送先医療機関選定処理部は、
前記救急隊端末において表示された搬送先の候補の医療機関のうち、選択された医療機関の情報を前記救急隊端末から受け取ると、前記医療機関情報記憶部に記憶する前記医療機関の連絡先に基づいて受入要請の連絡を行い、
前記受入要請の連絡を行った医療機関について、前記医療機関情報記憶部に記憶するその医療機関に対する受入要請の回数を更新し、
前記医療機関から前記受入要請に対する受入可否を受け取ると、前記救急隊端末においてその情報を表示させ、
前記受入可否の回答を行った医療機関について、前記医療機関情報記憶部に記憶するその医療機関からの受入可能または受入不能の回答の回数を更新する、
ことを特徴とする救急出動支援システム。
【請求項2】
前記搬送先医療機関選定処理部は、
前記選択された医療機関が複数あった場合には、それぞれの医療機関に対して同報による連絡を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の救急出動支援システム。
【請求項3】
前記救急出動支援システムは、さらに、
応急処置の情報を記憶する応急処置情報記憶部と、
通報者が利用する通報者端末に対して、前記応急処置情報記憶部に記憶する応急処置の情報を送信する指令センター処理部と、を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の救急出動支援システム。
【請求項4】
前記救急出動支援システムにおける救急隊端末は、傷病者のバイタルサインを計測する計測装置と近距離無線通信が可能であって、
前記救急隊端末は、
前記計測装置と前記近距離無線通信を行うことで、前記傷病者のバイタルサインを取得する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の救急出動支援システム。
【請求項5】
前記救急出動支援システムにおける救急隊端末は、位置情報を取得するGPS装置を備えており、
前記救急隊端末では、
前記救急出動における位置情報を前記GPS装置により取得しており、
救急出動において記録することが定められているタイミングの時刻情報の入力を、救急隊員から受け付ける、または前記GPS装置で取得した位置情報とその日時情報を用いて特定する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の救急出動支援システム。
【請求項6】
前記救急出動支援システムは、さらに、
救急搬送される者の医療関連情報を取得し、前記救急隊端末または指令センターの指令センター端末において前記取得した医療関連情報を表示させる、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の救急出動支援システム。
【請求項7】
コンピュータを、
医療機関ごとに、連絡先と受入要請の回数と、受入可能の回答の回数または受入不能の回答の回数を含む医療機関情報を記憶する医療機関情報記憶部に記憶する医療機関の受入要請の回数と、受入可能の回答の回数または受入不能の回答の回数とを用いて、医療機関の受入可能性に関する情報を算出して、救急隊が利用する救急隊端末において搬送先の候補となる医療機関とその医療機関の受入可能性に関する情報とを表示させる医療機関候補選定処理部、
医療機関に対して受入要請の連絡を行う搬送先医療機関選定処理部、として機能させる救急出動支援プログラムであって、
前記搬送先医療機関選定処理部は、
前記救急隊端末において表示された搬送先の候補の医療機関のうち、選択された医療機関の情報を前記救急隊端末から受け取ると、前記医療機関情報記憶部に記憶する前記医療機関の連絡先に基づいて受入要請の連絡を行い、
前記受入要請の連絡を行った医療機関について、前記医療機関情報記憶部に記憶するその医療機関に対する受入要請の回数を更新し、
前記医療機関から前記受入要請に対する受入可否を受け取ると、前記救急隊端末においてその情報を表示させ、
前記受入可否の回答を行った医療機関について、前記医療機関情報記憶部に記憶するその医療機関からの受入可能または受入不能の回答の回数を更新する、
ことを特徴とする救急出動支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、119番通報を受けたことによる救急出動を支援するための救急出動支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
傷病者が発生した場合、本人またはその近隣にいる人によって119番通報(救急車を呼ぶための通報)がなされることがある。そして、その通報は消防指令センターが受け付け、通報者から傷病者の所在場所、傷病者の状態などを聴取するとともに、救急隊に出動要請を行う。
【0003】
救急出動において、従来は、消防指令センターの指令官が通報者から聴取した救急通報の内容を音声などによって救急隊員に伝達をしている。そして、救急隊員は、指令官から伝達された救急通報の内容に基づいて現場に出動し、そこで傷病者を搬送する医療機関を探す。搬送先の医療機関が見つかると、傷病者をその医療機関に搬送する。また、救急隊員の現場への到着から医療機関への搬送までの間、救急隊員は、傷病者や通報者、またはその近隣にいる人から、傷病者の状態などを聞き取るとともに、傷病者に対して応急処置を行っている。救急隊員は、聴取した内容や行った応急処置について、救急車の中などで所定の書式の用紙に記入を行い、消防署に帰署後、所定の報告書を作成している。このような一般的な救急出動の一例は非特許文献1に開示されている。
【0004】
また、近年では救急出動の業務の一部を電子化する試みも行われており、たとえば下記特許文献1では、消防指令センターで受け付けた傷病者の情報を救急サーバから通信回線を介して、救急隊員の利用する端末に送信する救急業務総合支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-130516号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】東京消防庁、”東京消防庁<安全・安心情報><トピックス>119番通報のしくみ”、[online]、インターネット<URL:http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/119/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に開示の従来の救急出動においては、消防指令センターと救急隊員との間の情報伝達が主に口頭であるので、伝達の誤りが発生する可能性がある。とくに救急出動では情報の伝達の誤りは生命にかかわる場合もあり、その抑止が求められる。
【0008】
特許文献1に記載の救急業務総合支援システムでは、消防指令センターの指令官が通報者から聴取した情報を救急隊員の端末に電子的にテキスト情報として伝達をし、また救急車内などにおける応急処置の情報、傷病者のバイタルサインなどを、先ほどのテキスト情報に併せて救急隊員が入力をすることで、救急出動情報として所定のサーバに記憶させることができる。しかし、救急隊員は救急車の車内で応急処置の情報やバイタルサインのテキスト入力を行わなければならず、その作業負担は軽いとはいえない。
【0009】
このように、非特許文献1の従来の救急出動では情報の伝達の誤りがある可能性がある。また、その点を改善した特許文献1においても、救急隊員への業務の負担が大きい。そのため、実効性が高いとはいえない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明者は上記課題に鑑み、実効性がより高い救急出動支援システムを発明した。
【0011】
第1の発明は、救急出動の支援を行う救急出動支援システムであって、前記救急出動支援システムは、医療機関ごとに、連絡先と受入要請の回数と、受入可能の回答の回数または受入不能の回答の回数を含む医療機関情報を記憶する医療機関情報記憶部と、前記医療機関情報記憶部に記憶する医療機関の受入要請の回数と、受入可能の回答の回数または受入不能の回答の回数とを用いて、医療機関の受入可能性に関する情報を算出して、救急隊が利用する救急隊端末において搬送先の候補となる医療機関とその医療機関の受入可能性に関する情報とを表示させる医療機関候補選定処理部と、医療機関に対して受入要請の連絡を行う搬送先医療機関選定処理部と、を備えており、前記搬送先医療機関選定処理部は、前記救急隊端末において表示された搬送先の候補の医療機関のうち、選択された医療機関の情報を前記救急隊端末から受け取ると、前記医療機関情報記憶部に記憶する前記医療機関の連絡先に基づいて受入要請の連絡を行い、前記受入要請の連絡を行った医療機関について、前記医療機関情報記憶部に記憶するその医療機関に対する受入要請の回数を更新し、前記医療機関から前記受入要請に対する受入可否を受け取ると、前記救急隊端末においてその情報を表示させ、前記受入可否の回答を行った医療機関について、前記医療機関情報記憶部に記憶するその医療機関からの受入可能または受入不能の回答の回数を更新する、救急出動支援システムである。
【0012】
従来の救急出動においては、救急隊員が傷病者への応急処置をしながら、医療機関に対して、受け入れが可能かを電話などによって一つずつ確認をしなければならない。そのため、搬送先の医療機関が決定されるまでに時間を要する。そこで本発明のように、救急隊員は受入要請を行う医療機関を選択するだけで、医療機関に対する受入要請が行われ、その受入要請に対する受入可否の回答を救急隊端末で表示させることで、救急隊は、受入要請に対する回答状況を速やかに把握することができ、搬送する医療機関を迅速に選択できる。そのため、救急隊員の作業負担を軽減することができる。
候補として表示された医療機関のうち、受入可能性が高い医療機関に連絡をした方が速やかに搬送先が見つけられやすい。そのため、本発明のように受入可能性を救急隊端末に表示させることで、救急隊員が受入要請を行う医療機関の選択の際の便宜に資することとなる。
【0015】
上述の発明において、前記搬送先医療機関選定処理部は、前記選択された医療機関が複数あった場合には、それぞれの医療機関に対して同報による連絡を行う、救急出動支援システムである。
【0016】
救急搬送の受入要請を行う医療機関が複数あった場合には、同報により連絡を行うことで、時間を節約することができる。救急搬送においては時間の遅れは生命にかかわる場合もあることから、一秒でも早く搬送先となる医療機関を見つけることが重要である。そのため、順番に連絡を行うのではなく、同報によって連絡を行うことで、搬送先となる医療機関を選定する時間を大幅に減らすことができる。
【0017】
上述の発明において、前記救急出動支援システムは、さらに、応急処置の情報を記憶する応急処置情報記憶部と、通報者が利用する通報者端末に対して、前記応急処置情報記憶部に記憶する応急処置の情報を送信する指令センター処理部と、を備える救急出動支援システムのように構成することができる。
【0018】
傷病者を発見した通報者は、必ずしも応急処置に詳しいとは限らず、どのような応急処置を行ったらよいか分からないことも多い。一方、適切に応急処置が行われれば、救命確率は向上する。そこで、本発明のように、通報者に対して応急処置の情報を送信することで、それを閲覧した通報者は、応急処置を適切に行うことができる。そのため、救命確率を向上させることにつながる。
【0019】
上述の発明において、前記救急出動支援システムにおける救急隊端末は、前記傷病者のバイタルサインを計測する計測装置と近距離無線通信が可能であって、前記救急隊端末は、前記計測装置と前記近距離無線通信を行うことで、前記傷病者のバイタルサインを取得する、救急出動支援システムのように構成することができる。
【0020】
本発明のように構成することで、計測装置からバイタルサインを自動的に取得することができるので、救急隊員の負担を軽減することができる。
【0021】
上述の発明において、前記救急出動支援システムにおける救急隊端末は、位置情報を取得するGPS装置を備えており、前記救急隊端末では、前記救急出動における位置情報を前記GPS装置により取得しており、救急出動において記録することが定められているタイミングの時刻情報の入力を、前記救急隊員から受け付ける、または前記GPS装置で取得した位置情報とその日時情報を用いて特定する、救急出動支援システムのように構成することができる。
【0022】
従来の救急出動においては、救急隊員は、消防署に帰署後に救急出動の報告書を作成している。その場合、事後的に報告書を作成することから、現場に到着した時刻、行った応急処置の内容、搬送を開始した時刻、搬送先の医療機関に到着した時刻などの情報は、記憶に基づくこととなり、必ずしも正確なものとはいえない。そこで本発明のように構成することで、出動に要した時間など、記録が求められている時刻の情報を、自己の記憶に基づいてではなく、より正確に入力することができる。
【0023】
上述の発明において、前記救急出動支援システムは、さらに、救急搬送される者の医療関連情報を取得し、前記救急隊端末または指令センターの指令センター端末において前記取得した医療関連情報を表示させる、救急出動支援システムのように構成することができる。
【0024】
救急出動の場合、搬送される者の情報がないことが多く、どのような処置をしたらよいのか、判断が難しい場合もある。そこで本発明のように構成することで、救急搬送される者の既往歴や服薬歴、アレルギーなどの医療関連情報を救急隊員、指令官が認識をすることができるので、救急出動における適切な処置につなげることができる。とくに、既往歴、服薬歴、アレルギーなどの情報は症状の判断に迅速につながる。また、かかりつけ医療機関が判明する場合には、その医療機関に搬送することが好ましい場合もあるので、救急出動における迅速な対応につなげることができる。
【0025】
第1の発明の救急出動支援システムは、本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち、コンピュータを、医療機関ごとに、連絡先と受入要請の回数と、受入可能の回答の回数または受入不能の回答の回数を含む医療機関情報を記憶する医療機関情報記憶部に記憶する医療機関の受入要請の回数と、受入可能の回答の回数または受入不能の回答の回数とを用いて、医療機関の受入可能性に関する情報を算出して、救急隊が利用する救急隊端末において搬送先の候補となる医療機関とその医療機関の受入可能性に関する情報とを表示させる医療機関候補選定処理部、医療機関に対して受入要請の連絡を行う搬送先医療機関選定処理部、として機能させる救急出動支援プログラムであって、前記搬送先医療機関選定処理部は、前記救急隊端末において表示された搬送先の候補の医療機関のうち、選択された医療機関の情報を前記救急隊端末から受け取ると、前記医療機関情報記憶部に記憶する前記医療機関の連絡先に基づいて受入要請の連絡を行い、前記受入要請の連絡を行った医療機関について、前記医療機関情報記憶部に記憶するその医療機関に対する受入要請の回数を更新し、前記医療機関から前記受入要請に対する受入可否を受け取ると、前記救急隊端末においてその情報を表示させ、前記受入可否の回答を行った医療機関について、前記医療機関情報記憶部に記憶するその医療機関からの受入可能または受入不能の回答の回数を更新する、救急出動支援プログラムである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の救急出動支援システムを用いることで、実効性がより高い救急出動の支援が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の救急出動支援システムの全体の構成の一例を模式的に示す概念図である。
図2】本発明の救急出動支援システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す図である。
図3】本発明の救急出動支援システムにおける処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図4】現場情報入力画面の一例を示す図である。
図5】応急処置の選択画面の一例を示す図である。
図6】指令情報画面の一例を示す図である。
図7】バイタルサイン画面の一例を示す図である。
図8】傷病者情報画面の一例を示す図である。
図9】応急処置画面の一例を示す図である。
図10】ノート画面の一例を示す図である。
図11】医療機関選定画面の一例を示す図である。
図12】受入要請画面の一例を示す図である。
図13】受入要請の可否の情報が表示された医療機関選定画面の一例を示す図である。
図14】医療機関詳細画面の一例を示す図である。
図15】打刻画面の一例を示す図である。
図16】受入状況分析画面の一例を示す図である。
図17】受入実績分析画面の一例を示す図である。
図18】報告書画面の一例を示す図である。
図19】実施例7における救急出動支援システムの全体の構成の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の救急出動支援システム1の全体の構成の一例を図1に示す。また、本発明の救急出動支援システム1で用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を図2に示す。
【0029】
救急出動支援システム1は、管理システム2と音声認識サーバ3と通報者端末4と指令センター端末5と救急隊端末6と医療機関端末7とを用いる。
【0030】
管理システム2、音声認識サーバ3、指令センター端末5、救急隊端末6、医療機関端末7は、サーバやパーソナルコンピュータ、可搬型通信端末などのコンピュータによって実現される。コンピュータは、プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置90と、情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置91と、ディスプレイなどの表示装置92と、情報の入力を行う入力装置93と、演算装置90の処理結果や記憶装置91に記憶する情報の通信を行う通信装置94とを有している。なお、コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には、入力装置93と表示装置92とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは、たとえば指令センターの指令官、救急隊員、医療機関の医師や看護師などの医療従事者、それらの支援者が利用するタブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが、それに限定するものではない。
【0031】
タッチパネルディスプレイは、そのディスプレイ上で、直接、所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力が行える点で、表示装置92と入力装置93の機能が一体化した装置である。
【0032】
各コンピュータは一台でその機能が実現されていてもよいし、その機能が複数台によって実現されていてもよい。その場合のコンピュータとして、たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0033】
さらに、本発明の救急出動支援システム1における各手段は、その機能が論理的に区別されているのみであって、物理上あるいは事実上は同一の領域を為していてもよい。
【0034】
管理システム2は、音声処理部20と救急出動情報記憶部21と指令センター処理部22と応急処置情報記憶部23と救急隊処理部24と傷病候補推定処理部25と医療機関情報記憶部26と医療機関候補選定処理部27と搬送先医療機関選定処理部28と診断情報受付処理部29とを有する。
【0035】
音声処理部20は、音声データをテキスト化させる処理を行う。指令センター端末5、救急隊端末6から管理システム2で受け付けた音声データの一部または全部を、後述する音声認識サーバ3に送信することでテキスト化させ、そのテキストデータを音声認識サーバ3から受け取る。テキスト化した音声データは、救急出動情報に対応づけて救急出動情報記憶部21に記憶させるとともに、後述する救急隊処理部24が救急隊端末6に送信をする。
【0036】
音声データのテキスト化の処理については、管理システム2で受け付けた音声データを、後述する音声認識を行うAPIを備えた音声認識サーバ3(クラウドサーバなど)に送る。そして音声認識サーバ3から認識結果をテキストデータとして受け取ればよい。
【0037】
APIを用いてテキストデータに変換した場合、複数の候補が結果として返される場合がある。そのような場合に備えて、管理システム2において、医療辞書情報を記憶する記憶部(医療辞書情報記憶部(図示せず))を設けておき、音声認識サーバ3から返された結果のうち、医療辞書情報記憶部を参照して、医療辞書情報記憶部に記憶されている結果を優先的にテキスト変換の対象とする。なお、医療辞書情報記憶部は各コンピュータに備えていてもよい。この場合、各入力を受け付ける処理部において、入力された情報のうち、テキストデータについて医療辞書情報記憶部を参照することで、医療辞書情報記憶部に記憶する医療用語などに該当する単語などを変換してもよい。
【0038】
このような構成を備えることで、音声入力を用いることが可能となる。
【0039】
また、本発明の救急出動支援システム1を用いる状況として、必ずしも通信状況がよい環境とは限らない。たとえば、通信状況がよくない地方や山岳地域なども想定される。そこで、各コンピュータがAPIを備えた音声認識サーバ3と通信ができない、または通信が困難である場合、各コンピュータに音声入力による情報を一時記憶させておき、通信が接続または改善した場合に、音声入力による音声データを、音声認識サーバ3に送るように構成してもよい。
【0040】
なお、音声処理部20による音声データのテキストデータへの変換処理は、管理システム2を介して音声認識サーバ3で行うほか、後述する指令センター端末5、救急隊端末6などで行ってもよい。この場合、指令センター端末5、救急隊端末6に音声処理部20を備えておき、音声認識サーバ3との間で処理を実行してもよい。また、音声認識サーバ3を用いずに、音声処理部20が音声認識を行うアプリケーションプログラムとして機能し、それぞれのコンピュータで変換処理を実行してもよい。
【0041】
救急出動情報記憶部21は、救急隊の救急出動に関連する情報である救急出動情報を記憶する。救急出動情報としては、たとえば救急出動を識別する救急出動識別情報、傷病者の情報(氏名、年齢、性別、連絡先などの属性情報のほか、傷病者の既往歴などの傷病の情報)(背景因子)、通報者の情報(氏名、連絡先などの属性情報)、救急出動する救急隊を識別する救急隊識別情報、出動先、指令センターと通報者との間、救急隊員と傷病者、通報者、医療機関との間での会話の音声データおよびそのテキストデータ、救急隊員による救急出動に関する情報などがある。
【0042】
救急出動に関する情報としては、主に、救急出動する際のあらかじめ定められたタイミングの日時情報、出動現場付近の外的要因(時間、気象情報(気温、湿度、気圧、天候など)、位置情報(緯度、経度、標高、自治体名など)の環境因子)、傷病者の所見、症状、バイタルサインなどの現在の情報、搬送先の候補として選択された医療機関、候補として選定された医療機関からの受入可否、搬送先となった医療機関、搬送先の医療機関で傷病者が診断された傷病の識別情報(傷病の名称や種別など)、重症度などがある。これらは一つのデータベース、データテーブルで管理されていてもよいし、直接的または間接的に関連づけられて複数のデータベース、データテーブルで管理されていてもよい。また、救急出動情報記憶部21に記憶する各種の情報は、そのすべてが用いられていなくてもよく、一部のみを用いてもよい。
【0043】
このように救急出動情報には、傷病者が医療機関へ搬送させる前の情報(たとえば、外的要因、傷病者の背景因子、傷病者の現在の情報など)と、医療機関へ搬送された後の情報(たとえば搬送先の医療機関名、診断名(診断された傷病の識別情報)、重症度など)が含まれている。
【0044】
指令センター処理部22は、指令センターの指令官が利用する指令センター端末5との間で情報の送受信を行う。指令センターの指令官と通報者との会話の音声データを受け付け、また指令センターの指令官による通報者に対して送信すべき応急処置の情報の送信指示を受け付け、後述する応急処置情報記憶部23に記憶する、対応する応急処置の情報を通報者端末4に送信する。応急処置情報としては、通報者が行うことが可能な応急処置、たとえば人工呼吸、心臓マッサージ、AED使用方法などの内容を示すテキスト情報、静止画像または動画像情報、あるいはそれらへのアクセスが可能なURLがある。
【0045】
応急処置情報記憶部23は、応急処置情報を記憶する。応急処置情報記憶部23は、管理システム2に記憶されていてもよいし、異なるデータサーバとして記憶されていてもよい。
【0046】
救急隊処理部24は、救急隊の救急隊員が利用する救急隊端末6との間で情報の送受信を行う。通報者と指令センターの指令官による通報者との間の会話の音声データがテキスト化されたテキストデータを救急隊端末6に送信する。また、救急隊員が装着する音声入力装置により救急隊端末6に入力がされた音声データを受け付け、音声認識サーバ3に送信することで、それをテキスト化させる。そして音声認識サーバ3からテキストデータを受け取り、救急隊端末6に送信する。また、救急隊端末6で音声入力またはテキスト入力を受け付けた各種情報を受け付け、救急隊員の救急出動に関する情報として救急出動情報記憶部21に記憶させる。
【0047】
傷病候補推定処理部25は、傷病者の情報、今回の救急出動における傷病者の所見、バイタルサイン、通報者または傷病者から指令センターの司令官や救急隊員が聴取した会話の音声データに基づくテキストデータ、位置情報や気象情報、日時情報などの外的要因情報などに基づいて、類似する救急出動情報があるかを、救急出動情報記憶部21に記憶した、過去の救急出動情報と比較して特定する。そして特定した救急出動情報における診断された傷病の情報を、今回の傷病者の傷病として推定する。類似の判定としては、各種の情報の一致率などに基づいて判定を行う方法があるが、これに限定されない。このように、傷病候補推定処理部25は、過去の救急出動情報における医療機関への搬送前の救急出動情報と医療機関への搬送後の救急出動との関係に基づいて、今回の救急出動で搬送している傷病者の救急出動情報(医療機関への搬送前の救急出動情報)から、医療機関への搬送後の情報、すなわち、診断名(傷病名)の候補を推定する。このような推定方法を用いることで推定の精度の向上を図ることができる。
【0048】
なお、傷病候補推定処理部25は、同一の傷病者について過去に救急出動があった場合には、その救急出動における傷病の優先度を、ほかの傷病よりも優先度を上げて推定処理を行ってもよい。優先度を上げるとは、たとえば当該傷病者の過去の傷病の情報を表示させる、あるいは一致率の基準を下げるなどがあるが、これらに限定されない。また、同一の傷病者ではなくても、傷病者の症状(状況)やバイタルサインなどの優先度を上げてもよい。
【0049】
また、傷病候補推定処理部25は、推定した傷病の情報を救急隊端末6に送信することで、それを参照する救急隊員に追加の質問を行わせ、その回答の音声データを受け付けて、それがテキスト化されたテキストデータ、または追加質問に対する回答の選択肢の入力を受け付けることで、推定した傷病についてさらに推定の修正を行う。なお、推定の修正処理は行わなくてもよい。
【0050】
医療機関情報記憶部26は医療機関に関する情報を記憶する。医療機関に関する情報としては、医療機関の名称、住所、電話番号、連絡先となる電子メールアドレスなどのほか、医療機関が対応可能な傷病や診療科目の情報などの情報を記憶する。さらい、その医療機関に対する受入要請の回数、受入可能の回答回数、受入拒否の回答の回数、それらを行った日時情報などを記憶していてもよい。
【0051】
医療機関候補選定処理部27は、傷病候補推定処理部25で推定した傷病者の傷病の推定結果に基づいて、医療機関情報記憶部26を参照することで、傷病者の搬送先となる医療機関の候補を選定する。そして選定した搬送先の候補となる医療機関の一覧を救急隊端末6に送信する。
【0052】
搬送先医療機関選定処理部28は、救急隊端末6において選択された、受入要請先となる医療機関の情報を受け付け、それらの医療機関に対して自動的に、好ましくは同報で架電を行う。この架電は好ましくは自動音声により行われ、受入が可能か、などの入力を促すと好ましい。また、医療機関から受入可否の情報を医療機関から受け付けると、その結果を救急隊端末6に送信する。
【0053】
診断情報受付処理部29は、傷病者を搬送した医療機関の医療機関端末7から、当該傷病者に対する傷病の診断の情報を受け付け、救急出動情報記憶部21の当該救急出動に対応付けて記憶させる。
【0054】
音声認識サーバ3は、音声認識を行うAPIを備えたサーバ(たとえばクラウドサーバなど)であって、管理システム2の音声処理部20から受け付けた音声データを、音声認識処理を行うAPIによってテキストデータに変換し、変換したテキストデータを管理システム2に返す。音声認識を行うAPIとしては、たとえばWeb speech API、Google Cloud Speech API、Microsoft Bing Speech API、Amazon Alexa、LINEなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
通報者端末4とは、119番通報を行った通報者が利用する通信端末であって、一般的には携帯電話、スマートフォンなどの可搬型通信端末が該当するが、それに限定されない。傷病者自らが通報者である場合も含む。
【0056】
指令センター端末5は、消防指令センターなど、119番通報を受け付け、救急隊員に対して出動指令を行うなどの救急出動の指令を行う指令センターで用いられるコンピュータである。また、指令センター端末5は、通報者との間の電話による会話の音声データを管理システム2に送信する、通報者に対して応急処置の情報を送信するための送信指示を管理システム2に送信する処理を行う。
【0057】
なお、指令センター端末5では、119番通報を受け付けることで、その現場に出動可能な救急隊に対して出動指令を行うなど、通常の救急出動に関連する処理を行っていてもよく、それらの処理は公知技術を用いることができる。
【0058】
救急隊端末6は、現場に出動する救急隊の救急隊員が利用する可搬型通信端末であり、管理システム2と情報の送受信を行う。救急隊端末6は音声入力装置と接続をしており、救急隊員と通報者または傷病者との会話を音声入力装置で受け付けて、その音声データを管理システム2に送信し、また各種情報の入力を受け付けて管理システム2に送信し、あるいは管理システム2から各種の情報を受け付ける。また、救急隊端末6にはGPS装置や撮像装置が備えられているとよい。
【0059】
医療機関端末7は、医療機関で利用されるコンピュータであって、管理システム2に記憶されている、救急搬送される傷病者の情報などを閲覧し、また救急搬送された傷病者に対する診断した傷病情報の入力を行う。
【実施例1】
【0060】
つぎに本発明の救急出動支援システム1の処理プロセスの一例を図3のフローチャートを用いて説明する。なお、図3のフローチャートにおける処理プロセスは一例であり、その処理の順序は、適宜、変更可能である。
【0061】
傷病者自身(傷病者自らが通報した場合には傷病者が通報者となる)または傷病者を発見した通報者は、救急出動の必要があると判断した場合には、通報者端末4で所定の操作を行うことで、救急出動の要請を行うための電話番号である119番に架電をし、通報をする(S100)。この際に、指令センター端末5では通報者の電話番号を取得する。
【0062】
通報者による架電は、消防の救急出動の指令センターで受電し、指令センターの指令官は、通報者と電話で会話をする。この会話による通報内容は指令センター端末5で音声データとして入力を受け付け(S110)、管理システム2にストリーミング送信をする(S120)。そして管理システム2の指令センター処理部22は、指令センター端末5から受け付けた音声データを、音声処理部20が音声認識サーバ3に送信することで、管理システム2が受け付けた音声データを逐次、テキスト化させる(S130)。そして音声データのテキストデータを音声処理部20で受け付け、指令センター処理部22が管理システム2の記憶装置91で一時的に記憶をさせる。なお、音声データのテキストデータを、指令センター端末5に通知し、その表示装置92で表示をさせてもよい。
【0063】
また、指令センターの指令官は、通報者と会話をすることによって、通報内容を適宜、指令センター端末5に入力をする。たとえば、現場住所、住人名、電話番号、事象(怪我なのか病気なのか、あるいは不明なのか)、意識の有無、呼吸の有無、傷病者の年齢、発生時期、傷病者の人数、傷病者の救急搬送歴の有無、傷病者の持病、傷病者の通院病院、救急車への同乗の有無、特記事項などの通報内容の入力を行う。これらの入力された通報内容は、音声データに基づいて適宜、入力されてもよいし、指令センター端末5の表示装置92がタップされるなどにより選択入力がされてもよい。この場合の現場情報入力画面の一例を図4に示す。
【0064】
図4の現場情報入力画面では、画面左側の領域に指令官と通報者の会話の音声データをテキスト化したテキストデータが表示されている。そしてそれ以外の領域で指令官が聴取する通報内容の入力インターフェイスがある。
【0065】
一方、上記各処理と並行して、指令センターの指令官は通報者から電話での聴取に基づいて現場を特定すると、その特定した現場に出動可能な救急隊が公知の方法によって決定され、決定された救急隊に対して出動指令が行われる。そして、指令センターの指令官が指令センター端末5に表示する現場情報入力画面における「現場情報を送る」をタップすると、指令センター端末5から管理システム2に対して、救急出動した救急隊を識別する救急隊識別情報と、現場入力画面で受け付けた通報内容の情報と、一時記憶する通報者と指令官との会話の音声データのテキストデータとを、管理システム2に送る(S140)。
【0066】
上記各処理と並行して、指令官が、通報者が傷病者に対して行える応急処置が必要であると判断した場合には、図4の現場情報入力画面における「初期処置」をタップ(選択)することで、図5に示す応急処置の選択画面が指令センター端末5で表示される。指令官はこの選択画面から必要な応急処置を選択をし、「送信する」がタップされると、指令センター端末5は、選択された応急処置情報の送信指示と、通報者の電話番号の情報とを、管理システム2に送信する(S150)。なお、通報者の電話番号の情報は、指令センターで通報者端末4から119番通報を受ける際に、通報者端末4の電話番号が通知されるので、それを取得して管理システム2に送信をすればよい。図5では、応急処置として、「人工呼吸」、「心臓マッサージ」、「AED使用方法」の場合を示している。
【0067】
指令センター端末5からの応急処置情報の送信指示と通報者の電話番号の情報とを受け付けた管理システム2の指令センター処理部22は、対応する応急処置情報にアクセスするためのURLを応急処置情報記憶部23から抽出し、ショートメッセージによって通報者端末4に送信をする(S160)。このショートメッセージを受信した通報者は、当該URLのリンクを選択することで、応急処置情報にアクセスしてそれを閲覧し、応急処置を傷病者に対して行う。これによって、応急処置の知識がない通報者であっても、傷病者に対して適切に応急処置を行うことができる。
【0068】
管理システム2における救急隊処理部24は、指令センター端末5から送信された上記各情報を受け付けると、救急出動を識別する救急出動識別情報を割り当て、救急出動識別情報と受信した各情報とを対応づけて救急出動情報として救急出動情報記憶部21に記憶させる。また救急隊識別情報に基づいて救急隊端末6を特定し、送信された通報内容の情報と、通報者と指令官との会話の音声データのテキストデータとを救急隊端末6に送信する(S170)。救急隊識別情報に基づく救急隊端末6の特定は、たとえば救急隊員が所属する救急隊(および救急隊識別情報)と、救急隊端末6とが対応付けられており、それに基づいて救急隊端末6の特定を行えばよい。なお、本明細書において、救急出動情報記憶部21に情報を記憶させる、情報を参照する場合には、明示の記載がなくても、管理システム2と救急隊端末6、医療機関端末7との間で救急出動識別情報が送受信されて、処理対象となる救急出動情報を特定する。
【0069】
指令センターからの出動指令を受けた救急隊は、S170で送信された通報内容の情報を救急隊端末6で受信し、救急隊員はそれを参照して、現場に出動をする(S180)。なお、管理システム2から救急隊端末6に対して通報内容の情報を送信し、通報者と指令官との会話の音声データのテキストデータを送信せずに、救急隊端末6において通報内容の情報のみを表示してもよい。また、管理システム2から救急隊端末6に対して通報内容の情報を送信せず、通報者と指令官との会話の音声データのテキストデータを送信し、救急隊端末6においてテキストデータのみを表示してもよい。なお、通報内容の情報に、通報者と指令官との会話の音声データのテキストデータが含まれていてもよい。
【0070】
図6に救急隊端末6で表示される指令情報画面の一例を示す。指令情報画面の左側の領域には、指令センターの指令官と通報者の会話の音声データのテキストデータが表示され、中央領域には、指令官が通報者から聴取した通報内容の情報が表示されている。さらに右側の領域には通報内容の情報を表示する「指令情報」ボタン、救急隊の救急出動の覚知から帰署までの時刻を記録する「打刻」ボタン、傷病者のバイタルサインや所見情報を入力する「バイタル」ボタン、傷病者の傷病状況の情報を入力するための「傷病者情報」ボタン、傷病者の傷病や現場の状況のメモを入力する「ノート」ボタン、搬送する病院を選定する「病院選定」ボタンが設けられている。また、現場に出動する救急隊員は、救急隊端末6と有線または無線で接続する音声入力装置(ヘッドセットやマイク)を装着しているとよい。
【0071】
救急隊員が現場に到着をすると、救急隊端末6で表示されている指令情報画面における「バイタル」ボタンを押下することで、救急隊端末6ではバイタルサインの入力を行うためのバイタルサイン画面が表示される。図7にバイタルサイン画面の一例を示す。
【0072】
救急隊員は、傷病者のバイタルサイン画面におけるバイタルサインの情報、たとえば呼吸数、SpO(経皮的動脈血酸素飽和度)、血圧、脈拍数、JCS(Japan Coma Scale、意識レベルの評価スケール)、GCS(Glasgow Coma Scale、意識レベルの評価スケール)、体温などを計測し、その値を、各入力欄にタップすることで入力を行う。もしくは、いずれかのマイクアイコンをタップすることで、音声入力により、バイタルサインの各項目の入力を行う。たとえば、救急隊員がいずれかのマイクアイコンをタップし、入力する項目を発話すると、それを音声入力装置を介して救急隊端末6において認識して当該項目に対応する入力欄にフォーカスをあてる。そして、つぎに数値を発話することでその数値が当該フォーカスされた入力欄に入力される。たとえば救急隊員が「呼吸数」と発話すると、それを音声入力装置を介して救急隊端末6が認識し、呼吸数に対応する入力欄にフォーカスがあたり、つぎに救急隊員が「12」と発話すると、それを音声入力装置を介して救急隊端末6が認識し、値として「12」が当該入力欄に入力される。なお、救急隊端末6で行われる音声入力については、上述のように管理システム2を介した音声認識サーバ3でテキスト化され、管理システム2からテキストデータを受け取ることで、当該入力欄に入力が行われてもよいが、救急隊端末6の各画面で入力される情報は、ある程度固定化されているので、救急隊端末6に備わっている音声入力の機能を起動し、それを用いて入力すると管理システム2の負荷を軽減できる。
【0073】
さらに救急隊員は、バイタルサイン画面に表示されている「所見」の項目に、所見の情報をテキストまたは音声で入力を行う。このようにバイタルサイン、所見の情報の入力が行われ、「保存」がタップされることで、救急隊端末6から管理システム2にバイタルサイン、所見の情報が送信され(S190)、管理システム2の救急隊処理部24は、救急隊端末6から受け付けたバイタルサイン、所見の情報を、救急出動情報記憶部21に記憶させる。
【0074】
また、救急隊員は上記と並行して、傷病者の状況を確認し、「傷病者情報」をタップすることで、図8に示す傷病者情報画面を救急隊端末6で表示させる。救急隊員は、傷病者を視認しながら、その状態、表情、顔色、出血、痙攣、失禁、嘔吐、四肢変形、麻痺、熱傷、死亡徴候などを、それぞれタップしながら逐次入力を行う。なお、入力された情報は救急隊端末6において一時的に記憶される。
【0075】
さらに、救急隊員は、上記と並行して、通報者、傷病者から可能な範囲で傷病の症状等を聴取する(S200)。この際に、救急隊員と、通報者、傷病者との会話の音声データは、音声入力装置で救急隊端末6に入力され、救急隊端末6は、管理システム2に会話の音声データを送信する(S210)。そして救急隊端末6からの音声データを救急隊処理部24は受け付け、その音声データを、音声処理部20は音声認識サーバ3に送信してテキスト化させる(S220)。音声認識サーバ3で音声データがテキスト化されたテキストデータを音声処理部20で受け付けると、救急出動情報に対応付けて救急出動情報記憶部21に記憶されるとともに、救急隊処理部24が当該救急隊端末6に送信する。なお救急隊端末6ではテキストデータの全部を表示せずとも一部を表示するのみであってもよい。
【0076】
加えて、救急隊員が傷病者に応急処置を行う場合には、救急隊端末6で「応急処置」の入力を行うための応急処置画面を表示させるため、「応急処置」をタップし、図9に示す応急処置画面を表示させる。応急処置を行う際には、救急隊員は自ら行う応急処置の内容とその結果とを逐次、発話しながら行い、それを音声入力装置を介して救急隊端末6が受け付け、救急隊端末6は、管理システム2に会話の音声データを送信する。そして救急隊端末6からの音声データを救急隊処理部24は受け付け、その音声データを、音声処理部20は音声認識サーバ3に送信してテキスト化させる。音声認識サーバ3で音声データがテキスト化されたテキストデータを音声処理部20で受け付けると、救急出動情報に対応付けて救急出動情報記憶部21に記憶されるとともに、救急隊処理部24が当該救急隊端末6に送信する。
【0077】
図9の応急処置画面の左側の領域には、救急隊員の発話のテキストデータが表示されるとともに、画面の中央の領域には、救急隊員が行った応急処置の内容がタップにより入力可能となっている。
【0078】
また、救急隊員が図などによって傷病の状況などのメモを残すことを所望した場合には、救急隊端末6において「ノート」ボタンをタップすることで、図10に示すノート画面を救急隊端末6で表示させる。この画面においては、「撮影」を選択することで救急隊端末6の撮像装置を起動して傷病者やその患部などを撮像したり、人体を模した図に指やデジタルペンなどにより描画をするなどが可能となる。これによって、より視覚的な情報の入力が可能となる。
【0079】
以上のように、バイタルサイン、所見情報の入力、通報者、傷病者からの傷病等の聴取、応急処置の内容、ノート画面に入力された情報は、救急隊員が救急隊端末6で所定の操作をすることによって、救急隊端末6から管理システム2に送信され、管理システム2の救急隊情報対応処理部は、救急出動情報として、救急出動情報記憶部21に記憶させる。この際に、救急隊端末6では、救急隊端末6のGPS装置で現在位置の情報(緯度、経度、高度の情報)を取得し、また所定の気象情報のウェブサイト(たとえば気象庁のウェブサイト)などから、現場地域の気温、湿度、気圧、天候などの気象情報を取得し、あわせて管理システム2に送信を行い、救急出動情報に対応付けて救急出動情報記憶部21に記憶させる(S230)。
【0080】
管理システム2の傷病候補推定処理部25は、通報内容の情報や、救急隊端末6から受け付けたバイタルサイン、所見情報の入力、通報者、傷病者からの傷病等の聴取、応急処置の内容、ノート画面に入力された情報、現在位置の情報、気象情報などに基づいて、救急出動情報記憶部21に記憶する過去の救急出動情報を参照し、それらとの一致度が高い過去の救急出動情報を特定する。なお一致度は完全一致であってもよいし、項目毎にあらかじめ定められた範囲にある場合にも一致として扱ってもよい。そしてその一致度が所定割合以上の過去の救急出動情報を特定し、特定した救急出動情報における、傷病の診断情報(医療機関が実際に傷病者を診断した結果の傷病の情報)を、候補となる傷病として推定する(S240)。すなわち、傷病候補推定処理部25は、過去の救急出動情報における医療機関への搬送前の救急出動情報と医療機関への搬送後の救急出動との関係に基づいて、今回の救急出動で搬送している傷病者の救急出動情報(医療機関への搬送前の救急出動情報)から、医療機関への搬送後の情報、すなわち、診断名(傷病名)の候補を推定する。なお、候補となる傷病の推定方法はこれに限られず、任意の方法を用いることができる。
【0081】
そして管理システム2の救急隊処理部24は、傷病候補推定処理部25で推定した候補となる傷病の情報を救急隊端末6に送信し(S250)、それを救急隊端末6で受け付けると、救急隊端末6では、候補となる傷病の情報の表示を行う。そして、救急隊員はその表示の確認後、その傷病に関する追加質問を必要に応じて傷病者に対して行う(S260)。傷病者は救急隊員による追加質問に対する回答を行う(S270)。そして、救急隊員と傷病者との間の会話の音声データは、救急隊員が装着する音声入力装置を介して救急隊端末6に入力され、救急隊端末6は、管理システム2に会話の音声データを送信する(S280)。そして救急隊端末6からの音声データを救急隊処理部24は受け付け、その音声データを、音声処理部20は音声認識サーバ3に送信してテキスト化させる(S290)。音声認識サーバ3で音声データがテキスト化されたテキストデータを音声処理部20で受け付けると、救急出動情報に対応付けて救急出動情報記憶部21に記憶されるとともに、救急隊処理部24が当該救急隊端末6に送信する。
【0082】
また、管理システム2における傷病候補推定処理部25は、S240で特定した候補として特定した救急出動情報の中から、さらに、傷病の候補の絞込を行う。なお、実際に候補となる傷病の数を減らさずともよいし、絞込の処理は行わずともよい。さらに、傷病候補推定処理部25の推定処理は行わなくてもよい。
【0083】
そして、医療機関候補選定処理部27は、上述で候補とした傷病に対応可能な医療機関の候補を、医療機関情報記憶部26を参照することで特定し(S300)、候補として特定した医療機関の情報を救急隊端末6に送信する(S310)。なお、候補とした傷病に対応可能な医療機関の候補の特定方法としては、対応可能な傷病が医療機関情報記憶部26に記憶されている場合にはそれに基づいて特定する。傷病ではなく診療科目が記憶されている場合には、傷病に対応付けられた診療科目を特定し、それにより医療機関を特定することができる。
【0084】
候補となる医療機関の情報を受け付けた救急隊端末6では、救急隊員が救急隊端末6で「病院選定」ボタンをタップすることで、受け付けた医療機関の情報を、図11に示す医療機関選定画面のように表示させ、その中から救急搬送の要請を行う医療機関をチェックボックスをタップすることで選択を行い、「一括要請」をタップすることでそれを送信する(S320)。この選択を救急隊端末6で受け付けると、救急隊端末6から管理システム2に対して、救急搬送の要請を行う医療機関の情報が送信される(S330)。
【0085】
管理システム2の搬送先医療機関選定処理部28では、選択された救急搬送の要請を行う医療機関の電話番号の情報を医療機関情報記憶部26から特定し、医療機関に対して救急搬送の要請があることを自動的に架電する(S340)。この架電は好ましくは、候補になった医療機関に対して、同報によって架電が行われるとよいが、それに限定されるものではない。
【0086】
医療機関が電話を受けると、管理システム2は救急出動情報記憶部21に記憶する当該救急出動情報のうち、傷病者の情報、たとえば年齢、性別、傷病の状況、推定した傷病などの情報を抽出し、それらの情報と、より詳細な情報を見たい場合には医療機関端末7からアクセスをすること、受入要請に対する回答を入力することなどを、自動音声によって伝達する(S350)。そして医療機関側が、より詳細な情報を知りたいと思った場合には、医療機関端末7から所定の操作を行うことで管理システム2にアクセスし、管理システム2は、救急出動情報記憶部21に記憶する救急出動情報を特定し、特定した情報を医療機関端末7において受入要請画面として表示させる。受入要請画面の一例を図12に示す。
【0087】
医療機関の医師や看護師などの医療従事者、その支援員などは、傷病者の搬送を受け入れる場合には受入要請画面における「可能」を、受け入れない場合には「不能」を、保留する場合には「保留」を選択する。この際に、受け入れない理由が入力可能であってもよい。そしてこれらの情報は、医療機関端末7から管理システム2に送信され(S360)、管理システム2の搬送先医療機関選定処理部28は、候補となった医療機関の受入要請の可否の情報を救急隊端末6に送信する(S370)。救急隊端末6では管理システム2から受け付けた受入要請の可否の情報を医療機関選定画面で表示をし、救急隊員は、受入可能の医療機関のなかから搬送先とする医療機関を選択する(S380)。図13に受入要請の可否の情報が表示された医療機関選定画面の一例を示す。
【0088】
救急隊員が搬送先の医療機関を選択すると、その情報が管理システム2に送信され、管理システム2の搬送先医療機関選定処理部28は、選択された医療機関に対して、傷病者が搬送されることを通知する。なお、この場合、図13の医療機関選定画面から搬送先として選択した医療機関の行をタップすることで、図14に示す医療機関詳細画面を表示させ、電話のアイコンを選択することで、救急隊端末6から医療機関に対して搬送をすることを電話で、救急隊員が伝えてもよい。
【0089】
この際の医療機関と救急隊員との間の会話は、音声入力装置を介して救急隊端末6が受け付け、救急隊端末6は、管理システム2に会話の音声データを送信する。そして救急隊端末6からの音声データを救急隊処理部24は受け付け、その音声データを、音声処理部20は音声認識サーバ3に送信してテキスト化させる。音声認識サーバ3で音声データがテキスト化されたテキストデータを音声処理部20で受け付けると、救急出動情報に対応付けて救急出動情報記憶部21に記憶されるとともに、救急隊処理部24が当該救急隊端末6に送信し、医療機関詳細画面にテキストデータとして表示をさせてもよい。
【0090】
救急隊員は搬送先として選択した医療機関に対して傷病者の救急搬送を行い(S380)、傷病者は医療機関において医師による診断を受け(S390)、治療が行われる。
【0091】
そして治療の終了後、医療機関の医師や看護師などの医療従事者、その支援員などは、医療機関端末7で所定の操作をすることによって、その傷病者に対して最終的に行った傷病の診断結果の入力を行い、医療機関端末7から管理システム2にその情報が送信される(S400)。管理システム2の診断情報受付処理部29は、医療機関端末7から受け付けた傷病の診断結果の情報を、救急出動情報記憶部21に記憶する当該傷病者の救急出動情報における診断の情報として記憶させる(S410)。
【0092】
以上のような処理を実行することで、通報者による119番通報から救急隊の救急出動、救急隊員による応急処置、搬送先となる医療機関の選定、医療機関における診断結果の反映などの一連の処理を、実効性がより高いシステムとして実現することができる。
【実施例2】
【0093】
上述の実施態様に加えて、救急隊員は、救急隊端末6において、救急出動をした時刻、現場に到着した時刻、傷病者を収容した時刻、医療機関への搬送を開始した時刻、医療機関に到着した時刻、医療機関を引き揚げた時刻、消防署に帰署した時刻などの救急出動において記録が求められるタイミングについての日時情報(時刻など)を、それぞれ入力可能になっていると好ましい。なお覚知時刻は、救急隊端末6において管理システム2から最初の通報内容の情報を受け付けた時刻とすることがよい。
【0094】
この入力としては、たとえば救急隊員が救急隊端末6において所定の操作を行うことで、図15に示す打刻画面を表示させ、救急出動をしたとき、現場に到着したときなど、所定の項目の際に、該当する項目をタップすることで、その日時情報を取得し、時刻を打刻画面に表示させればよい。なお、取得した日時情報は、逐次、救急隊端末6から管理システム2に送信され、管理システム2の救急隊処理部24で、当該救急出動情報記憶部21に記憶させる。
【0095】
また、各項目をタップすることで日時情報を取得するほか、救急隊端末6に備えているGPS装置が起動している場合、その位置情報と日時情報とを取得に基づいて、救急出動をした時刻、現場に到着した時刻、医療機関への搬送を開始した時刻、医療機関に到着した時刻、医療機関を引き揚げた時刻、消防署に帰署した時刻を特定してもよい。すなわち、消防署から位置情報が変化した時刻を救急出動をした時刻とし、通報内容における現場の位置情報に到着した時刻を現場に到着した時刻、現場から移動を開始し位置情報が変化した時刻を医療機関への搬送を開始した時刻、医療機関の位置情報に到着した時刻を医療機関に到着した時刻、医療機関から移動を開始し位置情報が変化した時刻を医療機関を引き揚げた時刻、消防署の位置情報に到着した時刻を消防署に帰署した時刻として自動的に設定してもよい。なお、傷病者を収容した時刻は、救急隊員による入力を受け付けてもよいし、救急隊員の発話のテキストデータのうち、傷病者の収容を意味する発話のテキストデータがある時刻を傷病者の収容した時刻として自動的に設定してもよい。
【0096】
このように救急出動においてあらかじめ定められた項目の時刻情報を簡単に入力できることで、救急隊員が消防署に帰署後、報告書を作成する際に、自らの記憶に基づいて時刻を書くのではなく、より正確に時刻情報を記録することができる。
【0097】
とくに現場へ到着するまでの時間(救急出動をした時刻と現場に到着した時刻との差分)や、医療機関に到着するまでの時間(救急出動をした時刻などと医療機関に到着した時刻との差分)などは、行政機関がその地域の救急に関する行政を立案するため統計を採っていることが多い極めて重要なデータである。そのため、できる限り、正確な情報が求められるが、現在のように記憶に頼っている場合には、その精度に欠けてしまう。そこで、本実施例のように構成することで、その精度を向上させることが可能となる。
【実施例3】
【0098】
本発明の救急出動支援システム1の異なる実施態様として、たとえば、医療機関選定画面において、候補とされた医療機関について、受入確率を表示するように構成してもよい。
【0099】
この場合、医療機関情報記憶部26において、当該医療機関の情報として、救急出動について受入要請が行われた回数、受入可能と回答した回数、受入不能と回答した回数を記憶しておく。そして、搬送先医療機関選定処理部28が、医療機関に対して受入要請の架電を行った際、医療機関端末7から受入可能の回答を受け取った際、医療機関端末7から受入不能の回答を受け取った際に、それらの回数を加算する。
【0100】
このように医療機関情報記憶部26において、医療機関ごとの受入要請の回数、受入可能の回答の回数、受入不能の回答の回数を記憶しておくことで、医療機関候補選定処理部27が候補となる医療機関を特定して救急隊端末6に送信する際に、それらの情報に基づいて受入確率を算出し、救急隊端末6に送信することで、救急隊員が搬送先の医療機関を選定する際に、参考とすることができる。なお受入確率は数値であってもよいし、複数のレベル、たとえば「高」、「中」、「低」などであってもよい。レベルごとに受入確率の閾値を設定しておき、その閾値に基づいてレベルを特定すればよい。
【0101】
なお、受入確率は、すべての受入要請に基づいて算出してもよいし、傷病候補推定処理部25が推定した、候補となる傷病に対応する受入要請の回数、受入可能の回答の回数、受入不能の回答の回数に基づいて算出をしてもよい。この場合、医療機関情報記憶部26ではこれらの情報を傷病毎に記憶する。
【0102】
このように、医療機関の受入確率を表示させることで、救急隊員は受入の可能性が高い医療機関に優先的に受入要請を行うことができ、それにより、傷病者を医療機関に搬送する時間を短縮することができる。
【0103】
なお、医療機関候補選定処理部27は、数値やレベルなどの受入確率で表示するほか、受入が可能か否かを示す受入可能性に関する情報であればいかなる表示形態であってもよい。
【実施例4】
【0104】
実施例3の異なる実施態様として、管理システム2の医療機関情報記憶部26に、医療機関ごとの受入要請の回数、受入可能の回数、受入不能の回数などの受入状況の情報を記憶させることで、所定の操作を行うことで、医療機関ごとの受入状況や受入実績の分析を行うことが可能となる。図16に受入状況の分析を示す受入状況分析画面を、図17に受入実績の分析を示す受入実績分析画面を示す。これらの分析は、受入要請の回数と、受入可能の回数、受入不能の回数とを演算したり、受入不能の理由を集計する、それらを曜日毎に集計するなど、目的に応じて多角的に分析を行えばよい。
【実施例5】
【0105】
実施例1乃至実施例4の異なる実施態様として、救急隊が消防署に帰署後、救急出動に関する報告書を作成する場合を説明する。
【0106】
救急隊員は、消防署に帰署後、救急隊端末6において所定の操作、たとえば「報告書」ボタンをタップすることで、報告書画面を表示させる。この際に、救急隊端末6から管理システム2に対して、報告書作成のための救急出動情報の取得要求を送信する。これを受け付けた管理システム2では、救急出動情報記憶部21に記憶する救急出動情報のうち、報告書作成のためにあらかじめ定められた項目の情報を特定し、それを管理システム2から救急隊端末6に送信する。図18に報告書画面の一例を示す。
【0107】
救急隊端末6では管理システム2から受け付けた情報を含めて報告書画面を表示し、さらに必要な情報の入力を行った上で、救急出動の報告書を作成する。そして作成した救急出動の報告書の情報は、救急隊員が救急隊端末6で所定の操作をすることで、あらかじめ定められたサーバに送信され、記憶される。
【0108】
このような処理を実行することで、救急隊員は、救急出動後の報告書の作成を容易に行うことが可能となる。また、救急出動情報に基づいて報告書を作成するので、入力される情報の精度も高くなる。
【実施例6】
【0109】
上述の各実施態様においては、救急隊端末6への傷病者のバイタルサインの入力方法として、救急隊員が音声または手入力を行う場合を説明したが、バイタルサインを計測する装置、たとえば血圧、脈拍、SpO、体温などを計測する装置および救急隊端末6にそれぞれ無線通信装置を備えておき、計測装置と救急隊端末6とが近距離無線通信を行うことで、定期的、自動的に、計測したバイタルサインを取得し、バイタルサイン画面にそれらの情報が入力されていてもよい。これによって、救急隊員の作業負担を軽減することができる。
【0110】
無線通信装置としては、ブルートゥース(登録商標)やZigBee(登録商標)などの近距離無線通信が可能な方式により自動的に無線通信を行うとよい。
【実施例7】
【0111】
実施例1乃至実施例6の異なる実施態様として、住民が、自らの医療に関連する情報、たとえば既往歴、服薬歴、アレルギー歴、かかりつけ医療機関などの医療関連情報を登録しておくことで、それを救急出動の際に利用する場合を説明する。この場合の救急出動支援システム1の全体の構成の一例を図19に示す。
【0112】
図19の救急出動支援システム1では、さらに管理システム2に、医療関連情報処理部30と、医療関連情報記憶部31とを有している。また利用者端末8は、住民が利用する通信端末であって、一般的には携帯電話、スマートフォンなどの可搬型通信端末が該当するが、それに限定されない。
【0113】
医療関連情報処理部30は、住民が操作する利用者端末8から、救急搬送前に(平時に)、自らの医療関連情報を受け付ける。この際に、氏名、住所、生年月日、電話番号、電子メールアドレス、SNSにおけるIDなどの住民識別情報も受け付ける。医療関連情報処理部30は、受け付けた医療関連情報、住民識別情報を、後述する医療関連情報記憶部31に記憶させる。
【0114】
当該住民が救急搬送される場合には、医療関連情報処理部30は、医療関連情報記憶部31に記憶する当該住民の医療関連情報について、本人またはその家族などの近親者による利用者端末8からの医療関連情報の提供指示を住民識別情報とともに受け付ける。医療関連情報の提供指示を受け付けると、住民識別情報に基づいて医療関連情報記憶部31に記憶する当該住民の医療関連情報を特定し、指令センター処理部22および/または救急隊処理部24に渡す。これによって、指令センター処理部22は指令センター端末5に、救急隊処理部24は救急隊端末6に対して、当該住民の医療関連情報を渡す。なお、提供指示には、情報提供の承諾の意思表示が含まれているとよい。
【0115】
医療関連情報記憶部31は、医療関連情報処理部30において受け付けた医療関連情報を記憶する。医療関連情報記憶部31では、住民識別情報と医療関連情報とが対応づけて記憶されている。
【0116】
つぎに本実施例における救急出動支援システム1の処理プロセスを説明する。
【0117】
本実施例における救急出動支援システム1による医療関連情報の提供を希望する住民は、利用者端末8を操作して、あらかじめ定められた方法により管理端末2にアクセスし、自らの医療関連情報、たとえば既往歴、服薬歴、アレルギー歴、かかりつけ医療機関などの情報を入力する。また住民識別情報を入力する。これらの情報を受け付けた医療関連情報処理部30は、それらを対応づけて医療関連情報記憶部31に記憶させる。
【0118】
医療関連情報処理部30は、利用者端末8から医療関連情報の入力を受け付けるほか、当該住民が所定の操作を行うことで、かかりつけ医療機関の電子カルテを管理するコンピュータから、医療関連情報を取得してもよい。この場合、住民が利用者端末8で所定の操作を行うことで、かかりつけ医療機関のコンピュータに対して、救急出動支援システム1への電子カルテの一部または全部の情報を含む医療関連情報の送信要求を行う。そして、当該かかりつけ医療機関のコンピュータから当該住民の電子カルテの一部または全部の情報を含む医療関連情報を管理システム2の医療関連情報処理部30で受け付け、医療関連情報記憶部31に記憶させる。なお、かかりつけ医療機関のほか、当該住民のPHR(Private Health Record)を管理するコンピュータに対して、救急出動支援システム1への上記送信要求を行い、PHRの一部または全部の医療関連情報を医療関連情報処理部30で受け付けて、医療関連情報記憶部31に記憶させてもよい。PHRとは、個人の自らの健康に関する情報であり、たとえば身長、体重、血液型、バイタル情報(脈拍、呼吸、血圧、体温など)、アレルギー歴、副作用歴、既往歴、通院・検査・診療に関する情報、処方や投薬に関する情報、医師のコメント、健康診断に関する情報、健康保険に関する情報などがある。
【0119】
以上のように、住民は、救急搬送される前に(平時に)、救急出動支援システム1に医療関連情報を登録しておく。
【0120】
そして、仮に、その住民が体調不良などで救急出動を要請する場合、119番通報を行うとともに、利用者端末8で所定の操作を行うことで、管理システム2に対して、住民識別情報と、医療関連情報の提供指示の情報とを送る。これを受け付けた医療関連情報処理部30は、住民識別情報に基づいて医療関連情報記憶部31から当該住民の医療関連情報を特定し、指令センター処理部22および/または救急隊処理部24に特定した医療関連情報を渡す。これによって、指令センター処理部22は指令センター端末5に、救急隊処理部24は救急隊端末6に対して、当該住民の医療関連情報を提供し、指令センターの指令官、救急隊の救急隊員は、救急搬送される住民の医療関連情報を認識できる。
【0121】
また救急搬送される住民自らが操作をすることができず、家族が通報をする場合には、家族が操作をすることで、医療関連情報の提供指示を行うことができる。この場合、本人ではなく家族が操作をしたことを示すため、家族が操作をしたことを示す情報、あるいは操作をしたものの氏名などの識別情報が利用者端末8から管理システム2に送られるとよい。これにより、誰が提供指示を行ったかを明確にすることができる。
【0122】
さらに、指令センターの指令官が、119番通報において、医療関連情報の提供依頼を求め、119番通報で会話をしている者(本人や家族など)による承諾が得られた場合には、救急搬送される者の電話番号などの住民識別情報を口頭で尋ねる。そして電話番号を聴取した指令センターの指令官は、指令センター端末5で所定の操作を行うことで、聴取した住民識別情報を入力し、医療関連情報の取得要求を管理システム2に対して行う。この取得要求を指令センター処理部22で受け付けると、医療関連情報処理部30は、住民識別情報に基づいて医療関連情報記憶部31における医療関連情報を特定し、指令センター処理部22および/または救急隊処理部24に渡す。そして指令センター処理部22は、指令センター端末5に、救急隊処理部24は救急隊端末6に、医療関連情報を送る。
【0123】
また、本実施例のさらなる変形例として、あらかじめ医療関連情報を医療関連情報記憶部31に記憶しておくほか、救急搬送される際に、搬送される住民が利用者端末8で所定の操作を行うことで、かかりつけ医療機関の電子カルテを管理するコンピュータやPHRを管理するコンピュータに対して、電子カルテの一部または全部を含む医療関連情報、PHRの一部または全部を含む医療関連情報の救急出動支援システム1への送信要求を行ってもよい。この場合、上記送信要求を受け付けた当該医療機関のコンピュータまたはPHRを管理するコンピュータから、救急出動支援システムに対して、医療関連情報が送信される。そして、それらのコンピュータから医療関連情報を受け付けた医療関連情報処理部30は、受け付けた医療関連情報を指令センター処理部22および/または救急隊処理部24に渡す。そして指令センター処理部22は、指令センター端末5に、救急隊処理部24は救急隊端末6に、医療関連情報を送るように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の救急出動支援システム1を用いることで、実効性がより高い救急出動の支援が可能となる。
【符号の説明】
【0125】
1:救急出動支援システム
2:管理システム
3:音声認識サーバ
4:通報者端末
5:指令センター端末
6:救急隊端末
7:医療機関端末
8:利用者端末
20:音声処理部
21:救急出動情報記憶部
22:指令センター処理部
23:応急処置情報記憶部
24:救急隊処理部
25:傷病候補推定処理部
26:医療機関情報記憶部
27:医療機関候補選定処理部
28:搬送先医療機関選定処理部
29:診断情報受付処理部
30:医療関連情報処理部
31:医療関連情報記憶部
90:演算装置
91:記憶装置
92:表示装置
93:入力装置
94:通信装置
図1
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