(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】ヘッドホンカバーおよびその留め具
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20240712BHJP
H04R 1/12 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
H04R1/10 102
H04R1/12
(21)【出願番号】P 2022543868
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2020031248
(87)【国際公開番号】W WO2022038706
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】514010999
【氏名又は名称】フィフティスクエア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】林 雅之
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-44290(JP,U)
【文献】特開2015-133609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0364356(US,A1)
【文献】米国特許第5545859(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0187151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10- 1/12
A61F 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドに被せて使用するヘッドホンカバーであって、
少なくとも1つの開口を有し、上記イヤーパッドをその外周面から内周面にかけて被覆するための生地と、
上記開口の周縁に当たる開口周縁部に設けられ、上記イヤーパッドの外周面またはハウジングの外周面に上記開口周縁部を固定するための弾性体と、
上記イヤーパッドの内側に形成されている凹空間内に配置されて、上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を固定するための固定用部材とを備え、
上記固定用部材は、可撓性を有する帯状部材であり、
上記帯状部材の一方の面に形成された複数の第1係止部と、
上記帯状部材の上記一方の面とは反対側の他方の面に形成され、上記複数の第1係止部の何れかと係止状態を成す第2係止部と、
上記帯状部材を摺動可能に保持するための保持部とを備え、
上記第1係止部および上記第2係止部は、上記帯状部材の一部分が上記保持部に保持された状態で、上記帯状部材の長手方向の端部から上記保持部により保持される上記一部分までの長さが短くなる一方向にのみ上記帯状部材が摺動可能となる形状に構成されている
ことを特徴とするヘッドホンカバー。
【請求項2】
上記保持部は、上記帯状部材の長手方向の一端に設けられ、上記帯状部材の一端以外の部分を摺動可能に保持することを特徴とする請求項1に記載のヘッドホンカバー。
【請求項3】
上記保持部は、
上記帯状部材を上記一方の面および上記他方の面の方向から挟持する一対の上下挟持面と、
上記帯状部材を幅方向から挟持する一対の幅挟持面とを有し、
上記一対の上下挟持面および上記一対の幅挟持面の中の何れか1つにはスリットが形成され、上記一対の上下挟持面または上記一対の幅挟持面が上記スリットを広げる方向に回動可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドホンカバー。
【請求項4】
上記一対の幅挟持面のうち一方の幅挟持面には、上記帯状部材の厚さよりも薄いスリットが形成され、上記一対の上下挟持面が上記一対の幅挟持面のうち他方の幅挟持面を基点として上記スリットの厚さを広げる方向に回動可能に構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のヘッドホンカバー。
【請求項5】
上記一対の上下挟持面および上記一対の幅挟持面によって、上記帯状部材の長手方向に平行な方向に上記帯状部材を挿通可能になされた内部空間が形成され、当該内部空間の中に上記帯状部材の一部分を上記スリットから挿入可能に構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載のヘッドホンカバー。
【請求項6】
上記第2係止部は、上記帯状部材の上記他方の面上で、上記帯状部材の幅方向中心位置よりも上記スリット側に偏在した位置に形成されていることを特徴とする請求項3~5の何れか1項に記載のヘッドホンカバー。
【請求項7】
上記保持部は、
上記帯状部材を上記一方の面および上記他方の面の方向から挟持する一対の上下挟持面と、
上記帯状部材を幅方向から挟持する一対の幅挟持面とを有し、
上記一対の上下挟持面および上記一対の幅挟持面によって、上記帯状部材の長手方向に平行な方向に上記帯状部材を挿通可能になされた内部空間が形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドホンカバー。
【請求項8】
上記帯状部材の長手方向の端部を含む終端部は、当該終端部以外の厚さよりも厚く構成されていることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のヘッドホンカバー。
【請求項9】
上記生地は筒状に形成され、当該筒状の一端に第1の開口が形成されるとともに、当該筒状の他端に第2の開口が形成され、
上記第1の開口の周縁に当たる第1の開口周縁部に上記弾性体が設けられ、上記第2の開口の周縁に当たる第2の開口周縁部に、上記固定用部材を埋設するための袋状部が設けられていることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載のヘッドホンカバー。
【請求項10】
可撓性を有する帯状部材から成り、アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドにヘッドホンカバーを留めるための留め具であって、
上記帯状部材の一方の面に形成された複数の第1係止部と、
上記帯状部材の上記一方の面とは反対側の他方の面に形成され、上記複数の第1係止部の何れかと係止状態を成す第2係止部と、
上記帯状部材を摺動可能に保持するための保持部とを備え、
上記第1係止部および上記第2係止部は、上記帯状部材の一部分が上記保持部に保持された状態で、上記帯状部材の長手方向の端部から上記保持部により保持される上記一部分までの長さが短くなる一方向にのみ上記帯状部材が摺動可能となる形状に構成されている
ことを特徴とするヘッドホンカバーの留め具。
【請求項11】
上記保持部は、上記帯状部材の長手方向の一端に設けられ、上記帯状部材の一端以外の部分を摺動可能に保持することを特徴とする請求項10に記載のヘッドホンカバーの留め具。
【請求項12】
上記保持部は、
上記帯状部材を上記一方の面および上記他方の面の方向から挟持する一対の上下挟持面と、
上記帯状部材を幅方向から挟持する一対の幅挟持面とを有し、
上記一対の上下挟持面および上記一対の幅挟持面の中の何れか1つにはスリットが形成され、上記一対の上下挟持面または上記一対の幅挟持面が上記スリットを広げる方向に回動可能に構成されている
ことを特徴とする請求項10または11に記載のヘッドホンカバーの留め具。
【請求項13】
上記一対の幅挟持面のうち一方の幅挟持面には、上記帯状部材の厚さよりも薄いスリットが形成され、上記一対の上下挟持面が上記一対の幅挟持面のうち他方の幅挟持面を基点として上記スリットの厚さを広げる方向に回動可能に構成されている
ことを特徴とする請求項12に記載のヘッドホンカバーの留め具。
【請求項14】
上記一対の上下挟持面および上記一対の幅挟持面によって、上記帯状部材の長手方向に平行な方向に上記帯状部材を挿通可能になされた内部空間が形成され、当該内部空間の中に上記帯状部材の一部分を上記スリットから挿入可能に構成されていることを特徴とする請求項12または13に記載のヘッドホンカバーの留め具。
【請求項15】
上記第2係止部は、上記帯状部材の上記他方の面上で、上記帯状部材の幅方向中心位置よりも上記スリット側に偏在した位置に形成されていることを特徴とする請求項12~14の何れか1項に記載のヘッドホンカバーの留め具。
【請求項16】
上記保持部は、
上記帯状部材を上記一方の面および上記他方の面の方向から挟持する一対の上下挟持面と、
上記帯状部材を幅方向から挟持する一対の幅挟持面とを有し、
上記一対の上下挟持面および上記一対の幅挟持面によって、上記帯状部材の長手方向に平行な方向に上記帯状部材を挿通可能になされた内部空間が形成されている
ことを特徴とする請求項10または11に記載のヘッドホンカバーの留め具。
【請求項17】
上記帯状部材の長手方向の端部を含む終端部は、当該終端部以外の厚さよりも厚く構成されていることを特徴とする請求項10~16の何れか1項に記載のヘッドホンカバーの留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンカバーおよびその留め具に関し、特に、アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッド(耳あて)に被せて使用するヘッドホンカバーおよび、ヘッドホンカバーをイヤーパッドに留めるための留め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドホンのイヤーパッドに被せて使用するヘッドホンカバーが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のヘッドホンカバーは、伸縮性のある生地の周縁部をその全周にわたって一の面側に折り返し、当該一の面側に開口を形成して成るヘッドホンカバーにおいて、開口の周縁に当たる開口周縁部の生地に対して平ゴムが縫い付けられた構成を有している。
【0003】
このように構成されたヘッドホンカバーをイヤーパッドに装着することにより、ヘッドホンを使用しているユーザの汗・脂のべたつきや蒸れによる不快感を解消することが可能となる。すなわち、吸湿性のある布で作ったヘッドホンカバーをイヤーパッドに装着することで、耳の蒸れを軽減することが可能となり、ヘッドホンで音楽を長く聴き続けても蒸れによる不快感が生じないようにすることができる。
【0004】
なお、アラウンドイヤー型(イヤーパッドの真ん中の部分がへこんでいて、その凹空間に耳を挿入するように装着するタイプ。オーバーイヤー型ともいう)のヘッドホンにおいて、イヤーパッドにヘッドホンカバーを装着すると、イヤーパッドで作られる凹空間がヘッドホンカバーによって塞がれるため、耳を押さえつけるようにして固定させるオンイヤー型のヘッドホンに近い使用感となる。
【0005】
アラウンドイヤー型のヘッドホンとオンイヤー型のヘッドホンには一長一短がある。オンイヤー型は、コンパクトかつ軽量に構成することが可能で、ヘッドホンを装着していてもユーザがその重さを実感しにくいといったメリットを有する。
【0006】
一方、アラウンドイヤー型は、耳全体を覆う性質上、周囲のノイズをある程度シャットアウトでき、またスピーカのすぐ横まで耳が近づく状態となるので、より迫力のある音を聴くことができるというメリットを有する。そのため、アラウンドイヤー型のヘッドホンを使用しているユーザにおいて、イヤーパッドにヘッドホンカバーを装着しても、アラウンドイヤー型に近い使用感のまま音楽を楽しみたいとするニーズが存在する。
【0007】
これに対し、アラウンドイヤー型のヘッドホンに使用するヘッドホンカバーであって、イヤーパッドにヘッドホンカバーを装着しても、アラウンドイヤー型に近い使用感を維持できるようになされたヘッドホンカバーが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
この特許文献2に記載のヘッドホンカバーは、両側を開口して円筒状に仕上げたカバーと、カバーの一端側を折り返して包み込ませた円形の固定リングと、カバーの他端側に包み込ませたゴムリングとを備えている。このヘッドホンカバーをヘッドホンに装着する際は、カバーの固定リングを、指で押し縮めつつヘッドホン本体のイヤーパッド内に入れ込み、そこで指を離す。すると、固定リングが円形に復元してイヤーパッドの内奥壁に密着する。その後、カバーをイヤーパッドにくるむように被着させる。
【0009】
【文献】特開2015-133609号公報
【文献】実開平6-44290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ヘッドホンのイヤーパッドには様々な大きさがあり、それらの大きさに合わせて異なるタイプのヘッドホンカバーを用意するのが普通である。しかしながら、特許文献2に記載のヘッドホンカバーは、復元状態にある固定リングの直径よりもイヤーパッドの内径が大きいヘッドホンには装着することができない。また、固定リングを指で強く押し縮めることができる最小サイズよりもイヤーパッドの内径が小さいヘッドホンにも装着することができない。そのため、特許文献2に記載のヘッドホンカバーは、これを適用可能なヘッドホンのサイズに一定の制限があり、種々の大きさのヘッドホンに合わせて数多くの大きさのヘッドホンカバーを用意しなければならないという問題があった。
【0011】
すなわち、固定リングの直径を相当程度大きくすれば、かなり大きいサイズのヘッドホンにも装着可能である。しかしながら、この場合は、小さいサイズのヘッドホンに装着しようとすると、固定リングを指で強く押し縮めなければイヤーパッド内に入れ込むことができないため、簡単に装着することができにくくなる。固定リングの直径が大きく弾性力も強いと、小さいサイズのヘッドホンのイヤーパッド内に固定リングを入れ込むことができない場合も生じてしまう。固定リングの直径をある程度小さくすれば、小さいサイズのヘッドホンに装着可能となるが、逆に大きいサイズのヘッドホンには使えないものとなってしまう。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、留め具を用いてヘッドホンのイヤーパッドを凹空間の状態に維持できるようになされたヘッドホンカバーを、できるだけ多くの大きさのヘッドホンに使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するために、本発明のヘッドホンカバーは、イヤーパッドをその外周面から内周面にかけて被覆するための生地と、生地が有する開口の周縁に当たる開口周縁部をイヤーパッドの外周面またはハウジングの外周面に固定するための弾性体と、イヤーパッドの内側に形成されている凹空間内に配置されて、イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定するための固定用部材とを備える。固定用部材は、可撓性を有する帯状部材であり、帯状部材の一方の面に形成された複数の第1係止部と、反対側の他方の面に形成されて複数の第1係止部の何れかと係止状態を成す第2係止部と、帯状部材を摺動可能に保持するための保持部とを備える。そして、第1係止部および第2係止部を、帯状部材の一部分が保持部に保持された状態で、帯状部材の長手方向の端部から保持部により保持される一部分までの長さが短くなる一方向にのみ帯状部材が摺動可能となる形状に構成している。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成した本発明によれば、生地の開口周縁部をイヤーパッドの外周面またはハウジングの外周面に固定する状態にしてイヤーパッドをその外周面から内周面にかけて生地で被覆し、イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定用部材により固定することにより、ヘッドホンカバーの生地によってイヤーパッドを被覆した状態にしても、イヤーパッドの真ん中の部分にできている凹空間がヘッドホンカバーの生地によって塞がれないようにすることができる。
【0015】
イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定用部材により固定する際、帯状部材をリング状に撓ませて帯状部材の一部分を保持部により保持させ、イヤーパッドの凹空間の中で帯状部材を一方向に摺動させることによってリングの径を大きくしていき、イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定させる。帯状部材は一方向にのみ摺動し、リングの径が小さくなる方には戻らないので、イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を安定的に固定させることができる。
【0016】
本発明の固定用部材は、弾性力を有する円形リングを押し縮めたときの復元力を利用して生地をイヤーパッドの内周面またはその近傍に固定するのではないので、サイズの大きいヘッドホンにも使えるように帯状部材の長さを長くしていても、強い力でリングを押し縮めるようなことは不要で、小さいサイズのヘッドホンにも使用可能である。これにより、固定用部材を用いてヘッドホンのイヤーパッドを凹空間の状態に維持できるようになされた本発明のヘッドホンカバーを、できるだけ多くの大きさのヘッドホンに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態によるヘッドホンカバーの構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態によるヘッドホンカバーをヘッドホンに装着した状態を示す模式図である。
【
図4】他のタイプのヘッドホンに本実施形態によるヘッドホンカバーを装着した状態を示す図である。
【
図5】本実施形態による固定用部材の構成例を示す図である。
【
図8】帯状部材をリング状にした状態を示す模式図である。
【
図10】スリットから保持部の内部空間内に帯状部材を挿入する様子を示す図である。
【
図12】本実施形態の固定用部材を連結して使用する状態を示す図である。
【
図13】本実施形態によるヘッドホンカバーの他の構成例を示す図である。
【
図14】本実施形態によるヘッドホンカバーの他の構成例を示す図である。
【
図15】
図14に示すヘッドホンカバーをヘッドホンに装着した状態を示す模式図である。
【
図16】本実施形態による固定用部材の他の構成例を示す図である。
【
図17】本実施形態による固定用部材の他の構成例を示す図である。
【
図18】ヘッドホンカバー装着方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るヘッドホンカバーを図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態によるヘッドホンカバー1Aの構成例を示す図であり、(a)は正面の表面を示し、(b)は正面の裏面を示し、(c)は上面を示している。本実施形態のヘッドホンカバー1Aは伸縮性を有していて変形可能であり、
図1は外力が加えられていない定常状態におけるヘッドホンカバー1Aの形状の一態様を示している。
【0019】
本実施形態のヘッドホンカバー1Aは、
図2を用いて後述するように、アラウンドイヤー型のヘッドホン100のイヤーパッド101に被せて使用するものである。アラウンドイヤー型のヘッドホン100は、イヤーパッド101がリング状に形成されているために真ん中の部分がへこんだ状態となっており、そこに円筒状の凹空間105が形成されている。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のヘッドホンカバー1Aは、当該ヘッドホンカバー1Aがヘッドホン100に装着されたときにイヤーパッド101をその外周面から内周面にかけて被覆するための生地11を有している。この生地11の所定位置には開口12
-1,12
-2が形成されている。
【0021】
本実施形態において、生地11は筒状に形成され、当該筒状の一端に第1の開口12-1が形成されるとともに、当該筒状の他端に第2の開口12-2が形成されている。2つの開口12-1,12-2は何れも円形に形成されており、第1の開口12-1よりも第2の開口12-2の方が直径が小さく形成されている。
【0022】
ここで、第1の開口12-1の直径は、ヘッドホンカバー1Aの装着対象として想定される最大サイズのヘッドホン100が有するイヤーパッド101の外周面またはハウジング102(特に、イヤーパッド101と接する部分)の外周面により形成される円の直径(以下、ヘッドホン100の外径という)と略同じかそれよりも大きい値とする。後述するように、第1の開口12-1の周縁には弾性体13が設けられるため、その弾性力によって、ヘッドホンカバー1Aをイヤーパッド101の外周面またはハウジング102の外周面にフィットさせた状態で装着することが可能である。伸縮性のある生地11を用いた場合、第1の開口12-1の直径は、ヘッドホン100の外径より小さい値としてもよい。
【0023】
以下では説明を簡略化するため、
図2に示すように、ヘッドホンカバー1Aを装着するヘッドホン100は、イヤーパッド101の外周面と、ハウジング102のイヤーパッド101と接する部分の外周面とが連続するように面一となっているものとし、イヤーパッド101の外周面により形成される円の直径と、ハウジング102のイヤーパッド101と接する部分の外周面により形成される円の直径とが同じであるものとする。
【0024】
なお、イヤーパッド101の外周面と、ハウジング102のイヤーパッド101と接する部分の外周面とが非連続となっていて、イヤーパッド101の外周面により形成される円の直径よりも、ハウジング102のイヤーパッド101と接する部分の外周面により形成される円の直径の方が小さい場合は、第1の開口12-1の直径は、イヤーパッド101の外周面の直径よりも大きい値とするのが好ましい。
【0025】
また、第2の開口12-2の直径は、例えば、ヘッドホンカバー1Aの装着対象として想定される最大サイズのヘッドホン100が有するイヤーパッド101の内周面により形成される円の直径(以下、ヘッドホン100の内径という)と略同じかそれよりも大きい値とする。伸縮性のある生地11を用いた場合、第2の開口12-2の直径は、ヘッドホン100の内径より小さい値としてもよい。
【0026】
なお、伸縮性の高い生地11を用いることにより、様々な大きさのヘッドホン100に本実施形態のヘッドホンカバー1Aを使用できるようにするのが好ましい。
【0027】
第1の開口12-1の周縁に当たる第1の開口周縁部には、弾性体13が設けられている。この弾性体13は、ヘッドホンカバー1Aがヘッドホン100に装着されたときにイヤーパッド101の外周面またはハウジング102の外周面に生地11の第1の開口周縁部を固定するためのものである。
【0028】
弾性体13はリング形状を成しており、伸ばしていない状態でのリングの直径は、ヘッドホンカバー1Aの装着対象として想定される最小サイズのヘッドホン100の外径よりも小さい。また、弾性体13は、これを伸ばした状態でのリングの直径は、ヘッドホンカバー1Aの装着対象として想定される最大サイズのヘッドホン100の外径よりも大きくなる。これにより、弾性体13を伸ばしてイヤーパッド101の外周面またはハウジング102の外周面に掛けることにより、弾性体13が元の状態に縮もうとする力により、生地11の第1の開口周縁部がイヤーパッド101の外周面またはハウジング102の外周面に固定される。
【0029】
本実施形態では、弾性体13の一例として平ゴムを用いている(以下、平ゴム13と記す)。具体的には、第1の開口12
-1における第1の開口周縁部の生地11に対し、糸14によって平ゴム13を縫い付けている。ここで使用する糸14は、伸縮性を有するものであることが好ましい。また、縫い付ける糸14の長さは、平ゴム13の最も縮んでいる状態での全周の長さ(
図1に示す定常状態での平ゴム13の円周の長さ)よりも長くすることが好ましい。平ゴム13を用いているのは、丸ゴムに比べて、生地11に対する縫着を容易に行うことができるからである。
【0030】
第2の開口12
-2の周縁に当たる第2の開口周縁部には、袋状部16が設けられている(
図1(c)では、袋状部16を模式的にデフォルメして示している)。
図1(b)に示すように、袋状部16は、生地11の第2の開口周縁部を全周にわたって表側から裏側に折り返し、折り返した部分の先端に近い側を糸17で縫うことによって形成されている。
【0031】
図3に示すように、袋状部16の一部には欠損部16aが設けられていて、この欠損部16aから袋状部16の中に固定用部材(留め具)20が挿入されて埋設される。
【0032】
固定用部材20は、ヘッドホンカバー1Aをヘッドホン100に装着するときに、イヤーパッド101の内側に形成されている凹空間105内に配置されて、イヤーパッド101の内周面またはその近傍(以下、内周面等ということがある)に生地11の一部を固定するためのものである。本実施形態において、生地11の一部とは、第2の開口12-2における第2の開口周縁部である。
【0033】
一例として、固定用部材20は、可撓性を有する樹脂製の帯状部材であり、これを撓ませることによってリング状にすることができるようになっている。本明細書において「帯状」とは、一定の幅が細長く続き、長手方向に両端が存在する形状をいう。本実施形態では特に、一定の幅および一定の厚さが直線的に細長く続き、相対向する細長の平面を有する帯状部材を用いる。詳細を後述するように、固定用部材20は、帯状部材を撓ませて形成するリングの直径を調整して固定させることができるようになっている。固定用部材20は、リングの直径を調整することにより、内向きに狭まったリング状態から外向きに広がったリング状態へと変形可能である。
【0034】
例えば、
図3に示すように、袋状部16に挿入してリング状にした固定用部材20の両端を欠損部16aから露出させ、ユーザが固定用部材20の両端の部分を手で持って摺動させることにより、リング状にした固定用部材20の直径の大きさを調整することが可能である。これにより、円筒状の凹空間105の直径が異なる様々な大きさのヘッドホン100に本実施形態のヘッドホンカバー1Aを使用することが可能である。
【0035】
本実施形態の固定用部材20は、生地11の一部(第2の開口周縁部)に形成された袋状部16の中でリング状となり、そのリングの直径を小さい方から大きい方へ広げていくことにより、イヤーパッド101の内周面またはその近傍であるイヤーパッド101の裏面まで生地11の一部(第2の開口周縁部)を誘導する。そして、第2の開口周縁部がイヤーパッド101の内周面等に当接した状態で、その状態を維持可能に構成されている。
【0036】
なお、生地11の第1の開口周縁部に平ゴム13を縫い付けることに代えて、第1の開口周縁部についても袋状部16と同様に袋状部を構成し、その中に丸ゴムまたは平ゴムを埋設するようにしてもよい。また、生地11を弾性力のある素材で形成することにより、第1の開口周縁部に平ゴム13等の弾性体を設けない構成としてもよい。この場合、第1の開口周縁部を二重またはそれ以上に折り返して縫うことにより、開口周縁部の弾性力が増すようにしてもよい。
【0037】
図2は、以上のように構成したヘッドホンカバー1Aをヘッドホン100に装着した状態を示す模式図である。
図2では、ヘッドバンドと一対のヘッドホンユニットとを備えて構成されるヘッドホン100のうち一方のヘッドホンユニットと、それに装着したヘッドホンカバー1Aとの断面を簡易的な模式図として示している。
【0038】
上述したように、アラウンドイヤー型のヘッドホン100の場合、リング状に形成されたイヤーパッド101の真ん中の部分がへこんだ状態となっていて、そこに円筒状の凹空間105が形成されている。凹空間105の底部にスピーカユニット104が存在する。また、イヤーパッド101の内周面の底部には、イヤーパッド101の裏面とハウジング102との間にできた隙間106が存在する。
【0039】
固定用部材20は、この隙間106に入るサイズに構成されており、当該隙間106の内部において、イヤーパッド101の内周面の近傍に生地11の第2の開口周縁部を固定する。ここで、リング状に形成される隙間106の内径(=イヤーパッド101の内周面の直径)の方が、固定用部材20をリング状にして調整可能な最大の直径よりも小さくなるようなサイズに形成されているヘッドホン100であれば、異なるサイズや形状のヘッドホン100であっても、固定用部材20を隙間106の中に入れた状態にして、イヤーパッド101の内周面の近傍に生地11の第2の開口周縁部を固定することが可能である。
【0040】
イヤーパッド101は弾性力を有するクッション材により構成されているので、実際には固定用部材20が隙間106よりも若干厚いサイズに形成されていても、固定用部材20を隙間106に入れることが可能である。そのようなサイズに固定用部材20を構成した場合、隙間106に挿入した固定用部材20がイヤーパッド101の裏面から圧力または摩擦力を受けて抜けにくくなるようにすることが可能である。
【0041】
ヘッドホンカバー1Aをヘッドホン100に装着する際には、例えば、
図1(b)のようにヘッドホンカバー1Aの裏面が外側にくる状態(外から裏面が見える状態)にして、生地11の第2の開口周縁部に形成されている袋状部16の中にリング状にして埋設した固定用部材20を変形させながら(リングの直径を大きくしていきながら)、固定用部材20(生地11の第2の開口周縁部)を全周にわたって隙間106に差し込む。
【0042】
次いで、生地11の表面が外から見えるように生地11を裏返しながら、イヤーパッド101の内周面から外周面を順に生地11で覆っていく。そして、生地11の第1の開口周縁部に縫着された平ゴム13をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に掛けることにより、生地11の第1の開口周縁部をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に固定する。
【0043】
なお、これとは逆の手順でヘッドホンカバー1Aを装着することも可能である。すなわち、
図1(a)のようにヘッドホンカバー1Aの表面が外側にくる状態(外から表面が見える状態)にして、生地11の第1の開口周縁部に縫着された平ゴム13をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に掛けることにより、生地11の第1の開口周縁部をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に固定する。
【0044】
次いで、イヤーパッド101の外周面から内周面を順に生地11で覆っていき、生地11の第2の開口周縁部に形成されている袋状部16の中にリング状にして埋設した固定用部材20を変形させながら、固定用部材20(生地11の第2の開口周縁部)を全周にわたって隙間106に差し込む。
【0045】
このように、イヤーパッド101またはハウジング102の外周面に生地11の第1の開口周縁部を平ゴム13により固定するとともに、イヤーパッド101の内周面の底部(イヤーパッド101の裏面とハウジング102との間)に形成されている隙間106の中で、イヤーパッド101の内周面の近傍に生地11の第2の開口周縁部を固定用部材20により固定する状態にして、イヤーパッド101の外周面および内周面を生地11で被覆する。
図2では、見た目が分かりやすくなるようにイヤーパッド101から生地11を離した状態で図示しているが、実際にはイヤーパッド101の外周面から内周面にかけて生地11をフィットさせることが可能である。
【0046】
このようにすることにより、ヘッドホンカバー1Aの生地11によってイヤーパッド101を被覆した状態にしても、イヤーパッド101の真ん中の部分にできている円筒状の凹空間105がヘッドホンカバー1Aの生地11によって塞がれないようにすることができる。これにより、アラウンドイヤー型のヘッドホン100に本実施形態のヘッドホンカバー1Aを装着しても、ユーザはアラウンドイヤー型に近い使用感でヘッドホン100を使用することができる。
【0047】
図4は、他のタイプのヘッドホン100’に本実施形態のヘッドホンカバー1Aを装着した状態を示す図である。
図4は、イヤーパッド101の内周面の底部に隙間が存在しないタイプのヘッドホン100’にヘッドホンカバー1Aを装着した状態を示している。この場合は、イヤーパッド101の内周面の底部またはハウジング102’の内周面に生地11の第2の開口周縁部を固定用部材20により固定する状態にして、イヤーパッド101を生地11で被覆する。
【0048】
この場合は、イヤーパッド101の内周面の直径の方が、固定用部材20をリング状にして調整可能な最大の直径よりも小さくなるようなサイズに形成されているヘッドホン100’であれば、異なるサイズや形状のヘッドホン100’であっても、固定用部材20をイヤーパッド101の内周面に押し当てた状態にして、イヤーパッド101の内周面に生地11の第2の開口周縁部を固定することが可能である。
【0049】
図5は、固定用部材20の構成例を示す図であり、(a)は上面図(平面図)、(b)は下面図(底面図)、(c)は正面図、(d)はA-A断面図をそれぞれ示している。上述したように、固定用部材20は、可撓性を有する帯状部材21により構成されている。
【0050】
帯状部材21の上面(特許請求の範囲の「一方の面」に相当)には、複数の第1係止部22が形成されている。複数の第1係止部22は、帯状部材21の一端(後述する保持部24が設けられる端部)から所定長さの部分と、帯状部材21の他端から所定長さの終端部25とを除き、帯状部材21の長手方向に沿って配置されている。なお、以下の説明において、保持部24が設けられる端部を帯状部材21の先端とし、その反対側の端部を後端とする。
【0051】
第1係止部22は、
図5(a)および
図5(d)の一部を拡大した
図6に示すように、正面方向から見た断面が直角三角形で、垂直面および斜面が共に長方形を成した凹状部である。複数の第1係止部22は、同じ方向を向いて連続的に配置されることにより、全体として鋸歯状に形成されている。連続的とは、隣接する2つの第1係止部22が隙間なく配置されることをいう。
【0052】
なお、
図5では複数の第1係止部22を連続的に配置する構成を示しているが、断続的(離散的)に配置するようにしてもよい。後述するように、複数の第1係止部22は、帯状部材21を撓まわせてリング状にしたときの直径を調整するための役割を有するものである。このため、複数の第1係止部22を連続的に配置した方が、リングの直径を細かく調整することができる点で好ましい。
【0053】
帯状部材21の下面(特許請求の範囲の「一方の面とは反対側の他方の面」に相当)には、複数の第1係止部22の何れかと係止状態を成す第2係止部23が形成されている。第2係止部23は、帯状部材21の下面で、第1係止部22に対向しない部位に配置されている。具体的には、帯状部材21の先端に設けられた保持部24よりも後端側で、保持部24の近傍位置に第2係止部23が配置されている。
【0054】
第2係止部23は、
図5(b)および
図5(c)の一部を拡大した
図7に示すように、正面方向から見た断面が直角三角形で、垂直面および斜面が共に長方形を成した凸状部である。第2係止部23の凸形状は、第1係止部22の凹形状と略同形同大である。これにより、複数の第1係止部22の中の何れか1つと、第2係止部23とが互いに嵌合する。そして、嵌合した状態において、第2係止部23は、その垂直面が第1係止部22の垂直面から離間する方向には斜面に沿って摺動可能であるが、その反対方向には垂直面どうしがぶつかり合って摺動不可能な係止状態となる。
【0055】
上述したように、帯状部材21の長手方向の一端(先端)には、保持部24が設けられている。この保持部24は、帯状部材21の先端以外の部分を摺動可能に保持するためのものである。すなわち、
図8に模式的に示すように、帯状部材21を撓ませることによりリング状にして、当該帯状部材21をその後端から保持部24の内部空間24D(
図5(d)参照)に挿通した状態で、保持部24が、帯状部材21の第1係止部22が設けられている部分を摺動可能に保持することにより、帯状部材21がリング状に撓んだ状態を維持することができるようになされている。
【0056】
なお、
図8は、帯状部材21の上面(第1係止部22が設けられてる側の面)がリングの内側を向き、帯状部材21の下面(第2係止部23が設けられてる側の面)がリングの外側を向くように帯状部材21を撓ませた状態を示しているが、逆向きに撓ませることも可能である。すなわち、帯状部材21の上面がリングの外側を向き、帯状部材21の下面がリングの内側を向くように帯状部材21を撓ませるようにすることも可能である。
【0057】
第1係止部22および第2係止部23は、帯状部材21の一部分が保持部24に保持された状態で、帯状部材21の長手方向の後端から保持部24により保持される一部分までの長さ(リング状にされた帯状部材21が保持部24からはみ出る部分の長さ)が短くなる一方向にのみ帯状部材21が摺動可能となる形状に構成されている。リング状にされた帯状部材21が保持部24からはみ出る部分の長さが短くなる一方向とは、帯状部材21により形成されるリングの直径が大きくなる方向である。
【0058】
図9は、保持部24を拡大して示した図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図9に示すように、保持部24は、帯状部材21を上面および下面の方向から挟持する一対の上下挟持面24A
-1,24A
-2と、帯状部材21を幅方向から挟持する一対の幅挟持面24B
-1,24B
-2とを有している。これら4つの挟持面24A
-1,24A
-2,24B
-1,24B
-2によって、帯状部材21の長手方向に平行な方向に帯状部材21を挿通可能になされた内部空間24Dが形成されている。すなわち、保持部24が帯状部材21に対して平行に設けられている。
【0059】
一対の上下挟持面24A-1,24A-2は、矩形の平面であり、内部空間24Dを形成する内側の面の一辺(内部空間24Dに挿入される帯状部材21の長手方向に直角な方向の辺)は、帯状部材21の幅と略同じかそれより若干大きい長さである。一対の幅挟持面24B-1,24B-2(一方の幅挟持面24B-1については、以下に述べるスリット24Cがないと仮定した場合の面)は、矩形の平面であり、内部空間24Dを形成する内側の面の一辺(帯状部材21の長手方向に直角な方向の辺)は、帯状部材21の厚さと略同じかそれより若干大きい長さである。これにより、内部空間24Dの断面形状は、帯状部材21の断面形状と略同形および略同大に形成されている。
【0060】
一対の幅挟持面24B-1,24B-2のうち、一方の幅挟持面24B-1には、帯状部材21の厚さよりも薄いスリット24Cが形成されている。保持部24は可撓性を有する樹脂などにより構成されており、一対の上下挟持面24A-1,24A-2が、一対の幅挟持面24B-1,24B-2のうち他方の幅挟持面24B-2を基点として、スリット24Cの厚さを広げる方向に回動可能となっている。
【0061】
これにより、帯状部材21が保持部24の内部空間24Dの中で摺動して、第2係止部23と係合する第1係止部22の位置を変えるときに、一対の上下挟持面24A-1,24A-2が回動することにより、帯状部材21が内部空間24Dの中で上下動することを可能にしている。このため、第2係止部23を上下動させるための機構を設けることが不要であり、固定用部材20をコンパクトに構成することができる。
【0062】
また、本実施形態では、
図10に示すように、保持部24の内部空間24Dの中に帯状部材21の一部分をスリット24Cからスライドさせて挿入可能に構成されている。
図9(b)に示すように、スリット24Cは、一方の幅挟持面24B
-1の外側の方が広く、内側の方が狭くなるように形成されている。そのため、スリット24Cの対向するエッジ面は、保持部24の外側から内側(内部空間24D側)に向かうにつれて離間距離が徐々に狭くなるように傾斜したテーパ面となっている。これにより、保持部24の外側からスリット24Cを介して内部空間24Dの中に帯状部材21の一部分をスライドさせて挿入する作業を行いやすくすることができる。
【0063】
以上のように、帯状部材21がスリット24Cから内部空間24Dに挿入され、帯状部材21の一部分が保持部24に保持された状態で、帯状部材21はリングの直径が大きくなる一方向にのみ摺動可能である。一方、帯状部材21の一部分が保持部24に保持されていない状態であれば、帯状部材21により形成されるリングの直径を小さくする方向に縮めることは自由にできる。このため、以下のような手順で、生地11の第2の開口周縁部を固定用部材20によってイヤーパッド101の内周面等に固定させることが可能である。
【0064】
まず、帯状部材21を生地11の袋状部16に挿入する。このとき、帯状部材21の先端にある保持部24と、帯状部材21の後端から任意長さの部分とを袋状部16の欠損部16aから袋状部16の外に出た状態にしておく。次に、帯状部材21を保持部24の内部空間24Dに挿入していない状態のまま、帯状部材21を撓ませて形成するリングの直径を、イヤーパッド101の内周面により形成される円の直径よりも小さくなるように調整する。
【0065】
そして、その状態でスリット24Cから帯状部材21を保持部24の内部空間24Dに挿入する。これにより、何れかの位置の第1係止部22と第2係止部23とが係止状態となり、その小さい直径のリング状態を維持することができる。このようにすれば、生地11の袋状部16の中でリング状にした固定用部材20をイヤーパッド101の凹空間105に入れることが可能である。
【0066】
その後、イヤーパッド101の凹空間105の中で、生地11の第2の開口周縁部がイヤーパッド101の内周面等に当接するまで、リングの直径を広げる方向に帯状部材21を摺動させていき、別の位置の第1係止部22と第2係止部23とを係止状態とさせる。これにより、大きくした直径のリング状態を維持し、生地11の第2の開口周縁部をイヤーパッド101の内周面等に固定させることができる。
【0067】
図9(b)および
図5(b)に示すように、第2係止部23は、帯状部材21の下面上で、帯状部材21の幅方向中心位置よりもスリット24C側に偏在した位置に形成されている。これは、帯状部材21を保持部24の内部空間24Dの中で摺動させやすくするための工夫である。
【0068】
すなわち、帯状部材21が保持部24の内部空間24Dの中で摺動させる際に、保持部24の近傍位置に配置されている第2係止部23を第1係止部22が乗り越えていく必要があり、このとき帯状部材21が内部空間24Dの中で上下動する。そのため、第1係止部22が第2係止部23を乗り越えるのに必要な量だけ一対の上下挟持面24A-1,24A-2が回動する必要がある。ここで、回動の基点となる他方の幅挟持面24B-2からできるだけ遠い位置に第2係止部23を配置することにより、必要な回動量(保持部24の撓み量)をできるだけ少なくすることができる。そのため、帯状部材21を内部空間24Dの中で摺動させる際に保持部24を撓ませるのに必要な力を小さくすることができ、帯状部材21により形成されるリングの直径の調整を行いやすくすることができる。
【0069】
図5(c)の一部を拡大した
図11に示すように、帯状部材21の長手方向の後端を含む所定長さの終端部25は、当該終端部25以外の厚さよりも厚く構成されている。この終端部25に第1係止部22は設けられていない。終端部25の厚さは、保持部24の内部空間24Dの厚さと略同じかそれよりも若干大きい厚さである。一方、帯状部材21の終端部25以外の厚さは、上述したように、内部空間24Dの厚さより若干薄い厚さである。
【0070】
これにより、帯状部材21を保持部24により保持した状態でリングの直径を広げていく際に、第1係止部22の設けられている部分が内部空間24Dを通り過ぎて終端部25が内部空間24Dに入ろうとするときに、終端部25が一対の上下挟持面24A-1,24A-2に当接し、または一対の上下挟持面24A-1,24A-2により圧接され、それまでよりも強い抵抗を生じる。このため、ユーザは、帯状部材21の終端部25が保持部24に当たるまでリングの直径を広げ切ったことを手の感触で把握することができる。
【0071】
本実施形態の固定用部材20は、
図12に模式的に示すように、複数の固定用部材20を連結して使用することも可能である。例えば、第1の固定用部材20
-1の保持部24
-1に第2の固定用部材20
-2の帯状部材21
-2を保持させるとともに、第2の固定用部材20
-2の保持部24
-2に第1の固定用部材20
-1の帯状部材21
-1を保持させることにより、連結した2つの固定用部材20
-1,20
-2によって1つのリング状態を形成することが可能である。
【0072】
この場合、帯状部材21-1,21-2を保持部24-1,24-2により保持した状態で、例えば第1の帯状部材21-1を摺動させてリングの直径を広げていく際に、第1の終端部25-1が第2の保持部24-2に当たった場合に、ユーザは、第1の帯状部材21-1の終端部25-1が第2の保持部24-2に当たるまでリングの直径を広げたことを手の感触で把握することができる。
【0073】
このとき、第2の帯状部材21-2の第2の終端部25-2が第1の保持部24-1にまだ当たっていなければ、第2の帯状部材21-2を摺動させてリングの直径を更に広げることができる。このとき、第1の終端部25-1が第2の保持部24-2に当たって強い抵抗を生じているのに対して、第2の帯状部材21-2は第1の保持部24-1により圧接されていない状態であるため、第1の終端部25-1が第2の保持部24-2から抜けてしまうことを防ぎつつ、第2の帯状部材21-2を摺動させてリングの直径を更に広げていくことが可能である。
【0074】
なお、帯状部材21の終端部25が保持部24に当たった後も、強めの力で帯状部材21を摺動させれば、帯状部材21を保持部24から引き抜くことが可能である。ここで、
図11に示すように、終端部25とそれ以外の部分との境界の段差部分は、帯状部材21の後端側から先端側に向けて徐々に厚さが薄くなるように傾斜したテーパ面となっている。これにより、テーパ面となっていない場合に比べて、帯状部材21を保持部24から引き抜くことを容易に行うことが可能である。
【0075】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、イヤーパッド101をその外周面から内周面にかけて生地11により被覆し、イヤーパッド101の真ん中の部分にできている凹空間105が塞がれないように生地11の一部(第2の開口周縁部)をイヤーパッド101の内周面等に固定用部材20を用いて固定するようになされたヘッドホンカバー1Aにおいて、固定用部材20を可撓性を有する帯状部材21により構成し、帯状部材21の上面に複数の第1係止部22を形成するとともに、下面に第2係止部23を形成し、帯状部材21の後端以外の部分を摺動可能に保持するための保持部24を備えるようにしている。そして、第1係止部22および第2係止部23を、帯状部材21の一部分が保持部24に保持された状態で、帯状部材21の長手方向の後端から保持部24により保持される一部分までの長さが短くなる一方向にのみ帯状部材21が摺動可能となる形状に構成している。
【0076】
このように構成した本実施形態によれば、イヤーパッド101の内周面等に生地11の一部を固定用部材20により固定する際に、帯状部材21をリング状に撓ませて帯状部材21の一部分を保持部24により保持させ、イヤーパッド101の凹空間105の中で帯状部材21を一方向に摺動させることによってリングの径を大きくしていき、イヤーパッド101の内周面等に生地11の一部を固定させることができる。帯状部材21は一方向にのみ摺動し、リングの径が小さくなる方には戻らないので、イヤーパッド101の内周面等に生地11の一部を安定的に固定させることができる。
【0077】
また、本実施形態の固定用部材20は、弾性力を有する円形リングを押し縮めたときの復元力を利用して生地11をイヤーパッド101の内周面等に固定するのではないので、サイズの大きいヘッドホンにも使えるように帯状部材21の長さを長くしていても、強い力でリングを押し縮めるようなことは不要で、小さいサイズのヘッドホンにも使用可能である。これにより、固定用部材20を用いてヘッドホンのイヤーパッド101を凹空間105の状態に維持できるようになされた本実施形態のヘッドホンカバー1Aを、できるだけ多くの大きさのヘッドホンに使用することができる。
【0078】
また、本実施形態では、保持部24の構成として、一対の幅挟持面24B-1,24B-2のうち一方の幅挟持面24B-1にスリット24Cを形成し、他方の幅挟持面24B-2を基点として一対の上下挟持面24A-1,24A-2が回動可能となるようにしている。これにより、保持部24の内部空間24Dの中に帯状部材21の一部分をスリット24Cからスライドさせて挿入可能に構成している。
【0079】
このように構成することにより、帯状部材21を保持部24に保持した状態のまま、帯状部材21を一方向とは逆の方向(リングの直径を小さくする方向)に摺動させる必要がない。そのため、第1係止部22と第2係止部23との係止状態を解除するための構成を保持部24に設けることが不要で、保持部24をコンパクトに構成することができる。これにより、保持部24を袋状部16に入りやすくすることができる。また、構造が単純なので、製造コストを低減することができるというメリットも有する。
【0080】
また、本実施形態では、帯状部材21の幅方向中心位置よりもスリット24C側に偏在した位置(上下挟持面24A-1,24A-2の回動の基点となる幅挟持面24B-2から離れた位置)に第2係止部23を形成している。これにより、保持部24の外側からスリット24Cを介して内部空間24Dの中に帯状部材21の一部分をスライドさせて挿入する作業を行いやすくすることができる。
【0081】
なお、上記実施形態では、生地11が筒状に形成され、当該筒状の両端開口12
-1,12
-2が形成された形状のヘッドホンカバー1Aについて説明したが、ヘッドホンカバー1Aの形状はこれに限定されない。例えば、
図13または
図14のような形状のヘッドホンカバー1B,1Cであってもよい。
【0082】
図13において、(a)は上面(平面)を示し、(b)は下面(底面)を示している。
図13のヘッドホンカバー1Bは伸縮性を有していて変形可能であり、
図13は外力が加えられていない定常状態におけるヘッドホンカバー1Bの形状の一態様を示している。
【0083】
生地11’は、その周縁部が全周にわたって底面側に折り返され、当該底面側に第1の開口12-1’が形成されるとともに、底面側とは反対側の、折り返されていない面側(平面側)に第2の開口12-2’が形成されている。2つの開口12-1’,12-2’は何れも円形に形成されており、第1の開口12-1’よりも第2の開口12-2’の方が直径が小さく形成されている。
【0084】
第1の開口12-1’の周縁に当たる第1の開口周縁部には、当該第1の開口周縁部をイヤーパッド101の外周面またはハウジング102の外周面に固定するための弾性体(例えば平ゴム)13が設けられている。
また、第2の開口12-2’の周縁に当たる第2の開口周縁部には袋状部16’が形成され、ここに固定用部材20が挿入されて埋設される。
【0085】
図13のように構成したヘッドホンカバー1Bの生地11’によってイヤーパッド101を被覆した状態(
図2と同様の状態)にしても、イヤーパッド101の真ん中の部分にできている円筒状の凹空間105がヘッドホンカバー1Bの生地11’によって塞がれないようにすることができる。これにより、アラウンドイヤー型のヘッドホン100にヘッドホンカバー1Bを装着しても、ユーザはアラウンドイヤー型に近い使用感でヘッドホン100を使用することができる。
【0086】
また、
図14において、(a)は上面(平面)を示し、(b)は下面(底面)を示している。
図14のヘッドホンカバー1Cも伸縮性を有していて変形可能であり、
図14は外力が加えられていない定常状態におけるヘッドホンカバー1Cの形状の一態様を示している。
【0087】
生地11”は、その周縁部が全周にわたって底面側に折り返され、当該底面側に開口12
-1”が形成されている。この開口12
-1”は、
図13に示したヘッドホンカバー1Bにおける第1の開口12
-1’と同様のものである。
図14に示すヘッドホンカバー1Cでは、ヘッドホンカバー1Bにおける第2の開口12
-2’は存在しない。
【0088】
開口12
-1”の周縁に当たる開口周縁部には、当該開口周縁部をイヤーパッド101の外周面またはハウジング102の外周面に固定するための弾性体(例えば平ゴム)13が設けられている。
図14に示すヘッドホンカバー1Cは、固定用部材20を埋設するための袋状部16を備えていない。
【0089】
図14に示すヘッドホンカバー1Cの場合、固定用部材20は、生地11”の底面側とは反対側の、折り返されていない平面側の生地11”の一部をイヤーパッド101の内周面等に固定する。生地11”の一部とは、
図13に示したヘッドホンカバー1Bの第2の開口12
-2’の開口周縁部が存在している位置あたりの部分をいう。
【0090】
図15は、ヘッドホンカバー1Cをヘッドホン100に装着する様子を示す模式図である。ヘッドホンカバー1Cをヘッドホン100に装着する際には、まず、
図15(a)に示すように、生地11”の開口12
-1”を広げながらイヤーパッド101の全体を生地11”で覆うような状態にして、生地11”の開口周縁部に縫着された平ゴム13をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に掛けることにより、開口周縁部をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に固定する。この段階では、生地11”が円筒状の凹空間105を塞いだ状態になっている。
【0091】
次いで、
図15(b)に示すように、円筒状の凹空間105を塞いだ状態となっている生地11”を伸ばしてイヤーパッド101の底部の方に押し下げながら、生地11”の上からリング状にした固定用部材20を押し当てて、リングの直径を広げていきながら、固定用部材20をイヤーパッド101とハウジング102との隙間106に生地11”の一部と共に押し込む。これにより、隙間106の中で生地11”の一部を固定する状態にして、イヤーパッド101を生地11”で被覆する。
【0092】
このようにすることにより、ヘッドホンカバー1Cの生地11”によってイヤーパッド101を被覆した状態にしても、イヤーパッド101の真ん中の部分にできている円筒状の凹空間105がヘッドホンカバー1Cの生地11”によって塞がれないようにすることができる。これにより、アラウンドイヤー型のヘッドホン100に本実施形態のヘッドホンカバー1Cを装着しても、ユーザはアラウンドイヤー型に近い使用感でヘッドホン100を使用することができる。
【0093】
なお、上記実施形態では、保持部24にスリット24Cを設けて、保持部24の内部空間24Dの中に帯状部材21の一部分をスリット24Cから挿入可能に構成する例について説明したが、スリット24Cを設けない構成としてもよい。例えば、一方の上下挟持面24A-1を、それ以外の3面の挟持面とは別体として構成し、当該一方の上下挟持面24A-1をその端部を基点として回動可能に構成するようにすることが考えられる。ただし、この場合は、一方の上下挟持面24A-1を回動可能にして内部空間24Dを開くための機構や、一方の上下挟持面24A-1をロックして内部空間24Dを閉じるための機構などが必要となり、構造が複雑となる。この点で、上記実施形態のようにスリット24Cを設ける構成の方が好ましい。
【0094】
また、上記実施形態では、帯状部材21の幅方向中心位置よりもスリット24C側に偏在した位置に第2係止部23を設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、帯状部材21の幅方向中心位置に第2係止部23を設けるようにしてもよい。ただし、この場合は、スリット24Cから帯状部材21を挿入するために必要となる保持部24の撓み量が多くなる。この点で、上記実施形態のようにスリット24C側に偏在した位置に第2係止部23を設ける方が好ましい。
【0095】
また、上記実施形態では、保持部24を帯状部材21に対して平行に設け、内部空間24Dが帯状部材21に対して平行となるように形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図16に示すように、保持部24を帯状部材21に対して垂直に設け、内部空間24Dが帯状部材21に対して垂直となるようにしてもよい。この場合、第2係止部23は、保持部24の内部に形成する。なお、上記実施形態のように保持部24を帯状部材21に対して平行に設ける場合においても、第2係止部23を保持部24の内部に形成するようにしてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、帯状部材21として、一定の幅および一定の厚さが直線的に細長く続き、これによって形成される相対向する細長の平面(一対の上下挟持面24A
-1,24A
-2と平行な面)が直線状、つまり平面の形が長方形である形状を用いる例について説明したが、一定の幅および一定の厚さが非直線的に細長く続く形状としてもよい。一例として、固定用部材20’を下面から見た状態の
図17に示すように、帯状部材21’は、一定の幅および一定の厚さが円弧状に細長く続く形状としてもよい。
【0097】
この場合は、円弧の半径が小さくなる方向(帯状部材21’の終端部25が保持部24に近づく方向)に帯状部材21’を撓ませた後、スリット24Cから帯状部材21’を保持部24の内部空間24Dに挿入させることにより、帯状部材21’の左右の側面がリングの内側と外側を向くようにリング状態を形成する。その後、生地11をイヤーパッド101の内壁に固定する際には、リング状にした円弧の半径が大きくなる方向に帯状部材21’を保持部24内で摺動させる。
【0098】
また、上記実施形態では、帯状部材21の上面と下面(一対の上下挟持面24A-1,24A-2と平行な面)に第1係止部22と第2係止部23とを備える構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、帯状部材21の左右の側面(一対の幅挟持面24B-1,24B-2と平行な面)に第1係止部22と第2係止部23とを備える構成としてもよい。この場合は、一対の上下挟持面24A-1,24A-2のうち一方に、帯状部材21の幅よりも狭いスリットを設け、一対の幅挟持面24B-1,24B-2が、一対の上下挟持面24A-1,24A-2のうち他方を基点としてスリットの幅を広げる方向に回動可能となるようにする。
【0099】
また、上記実施形態では、ヘッドホンカバー1Aの生地11が有する第2の開口12
-2の第2の開口周縁部に形成した袋状部16に固定用部材20を埋設する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図18に示すように第2の開口周縁部に袋状部16を設けずにヘッドホンカバー1Dを構成し、
図18(a)のように固定用部材20を生地11の外側から当てることによって生地11をイヤーパッド101の内周面等に固定するようにしてもよい。
【0100】
ここで、大きなサイズのヘッドホン100’(または100)にも装着可能とするために生地11の円筒形状を大きく構成したヘッドホンカバー1Dを、比較的小さなヘッドホン100’に装着するときに、生地11をイヤーパッド101の内周面にダブつきなくフィットさせようとすると、固定用部材20を押し当てる生地11の一部の箇所よりも先端側(平ゴム13が設けられていない第2の開口12-2側)に余りが生じる。以下、生地11のイヤーパッド101の内周面にフィットさせた部分をフィット部分11bといい、生地11の余った部分を生地余り11aという。
【0101】
この生地余り11aがイヤーパッド101の凹空間105に存在すると、ヘッドホン100’を装着したユーザの耳に生地余り11aが触り、ユーザに不快感を与えることがある。そこで、
図18(b)に示すように、固定用部材20を押し当てることとなる箇所で生地11を折り返して固定用部材20を覆うようにし、生地11を折り返した箇所から第2の開口12
-2までの生地余り11aとなる部分がイヤーパッド101の内周面と生地11のフィット部分11b(生地11の折り返されていない部分)または内周面と固定用部材20との間に挟まる状態にして、固定用部材20によって生地11をイヤーパッド101の内周面等に固定するようにしてもよい。なお、
図18(b)のようにヘッドホンカバー1Dを固定する際に用いる固定用部材20は、上記実施形態で示した構成に限らない。例えば、PCT/JP2019/014984の明細書および図面で開示した構成を有するものであってもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、保持部24の帯状部材21の先端に設ける例について説明したが、帯状部材21の他の位置に設けるようにしてもよい。ただし、保持部24の帯状部材21の先端に設けることにより、複数の第1係止部22を配置可能な部分の長さを最も長くすることができる点で好ましい。
【0103】
また、上記実施形態では、固定用部材20の帯状部材21を樹脂により構成する例について説明したが、銅、真鍮、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属素材により構成された形状記憶合金ワイヤ(メモリワイヤ)であってもよい。
【0104】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0105】
1A,1B,1C,1D ヘッドホンカバー
11,11’,11” 生地
12-1,12-2,12-1’,12-2’,12-1” 開口
13 平ゴム(弾性体)
16 袋状部
20 固定用部材(留め具)
21 帯状部材
22 第1係止部
23 第2係止部
24 保持部
24C スリット
24D 内部空間
25 終端部