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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】熱式流速・流量センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/12 20060101AFI20240712BHJP
   G01F 1/684 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
G01P5/12 C
G01F1/684 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023169538
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2020054677の分割
【原出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2023165980
(43)【公開日】2023-11-17
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】516355379
【氏名又は名称】ホルトプラン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】林 泰正
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-210196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/00-5/26
G01F 1/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給電流により熱を発生するヒータ素子と、流体の流速に応じて変化する前記ヒータ素子からの熱の温度を検出する測温素子とを有する流速検出部と、
気温を計測する気温計測部と、
少なくとも前記流速検出部が実装される基板と、
前記基板の外部に設けられ、前記流速検出部の測温素子で検出された温度情報と、前記気温計測部で計測された気温情報とに基づいて、流体の流速および流量を演算する回路部とを備える熱式流速・流量センサであって、
前記基板は、基板主要部と、前記流速検出部が実装される流速検出部用基板部分と、前記基板主要部から前記流速検出部用基板部分に一体的に延び、前記流速検出部を支持する細長形状の流速検出部用支持部とを備え、前記流速検出部用支持部において、前記基板を熱的に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする熱式流速・流量センサ。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記流速検出部用支持部における前記基板主要部側の基端部から中央部までの位置に形成されている請求項1に記載の熱式流速・流量センサ。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記流速検出部用支持部における前記基板主要部側の基端部に形成されている請求項2に記載の熱式流速・流量センサ。
【請求項4】
前記気温計測部は、前記流速検出部用支持部に形成されている前記貫通孔の近傍位置に設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱式流速・流量センサ。
【請求項5】
供給電流により熱を発生するヒータ素子と、流体の流速に応じて変化する前記ヒータ素子からの熱の温度を検出する測温素子とを有する流速検出部と、
気温を計測する気温計測部と、
少なくとも前記流速検出部が実装される基板と、
前記基板の外部に設けられ、前記流速検出部の測温素子で検出された温度情報と、前記気温計測部で計測された気温情報とに基づいて、流体の流速および流量を演算する回路部とを備える熱式流速・流量センサであって、
前記基板は、基板主要部と、前記流速検出部が実装される流速検出部用基板部分と、前記基板主要部から前記流速検出部用基板部分に一体的に延び、前記流速検出部を支持する細長形状の流速検出部用支持部とを備え、前記基板主要部において、前記基板を熱的に貫通する貫通孔(他の装置に取り付けるための取付孔を除く。)が形成されていることを特徴とする熱式流速・流量センサ。
【請求項6】
供給電流により熱を発生するヒータ素子と、流体の流速に応じて変化する前記ヒータ素子からの熱の温度を検出する測温素子とを有する流速検出部と、
気温を計測する気温計測部と、
少なくとも前記流速検出部および前記気温計測部が実装される基板と、
前記基板の外部に設けられ、前記流速検出部の測温素子で検出された温度情報と、前記気温計測部で計測された気温情報とに基づいて、流体の流速および流量を演算する回路部とを備える熱式流速・流量センサであって、
前記基板は、基板主要部と、前記流速検出部が実装される流速検出部用基板部分と、前記気温計測部が実装される気温計測部用基板部分と、前記基板主要部から前記流速検出部用基板部分に一体的に延び、前記流速検出部を支持する細長形状の流速検出部用支持部と、前記基板主要部から前記気温計測部用基板部分に一体的に延び、前記気温計測部を支持する細長形状の気温計測部用支持部とを備え、前記気温計測部用支持部において、前記基板を熱的に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする熱式流速・流量センサ。
【請求項7】
供給電流により熱を発生するヒータ素子と、流体の流速に応じて変化する前記ヒータ素子からの熱の温度を検出する測温素子とを有する流速検出部と、
気温を計測する気温計測部と、
少なくとも前記流速検出部および前記気温計測部が実装される基板と、
前記基板の外部に設けられ、前記流速検出部の測温素子で検出された温度情報と、前記気温計測部で計測された気温情報とに基づいて、流体の流速および流量を演算する回路部とを備える熱式流速・流量センサであって、
前記基板は、基板主要部と、前記流速検出部が実装される流速検出部用基板部分と、前記気温計測部が実装される気温計測部用基板部分と、前記基板主要部から前記流速検出部用基板部分に一体的に延び、前記流速検出部を支持する細長形状の流速検出部用支持部と、前記流速検出部用基板部分から前記気温計測部用基板部分に一体的に延び、前記気温計測部を支持する細長形状の気温計測部用支持部とを備え、前記気温計測部用支持部および/または気温計測部用基板部分において、前記基板を熱的に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする熱式流速・流量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱式の動作原理を用いて流体の流速および流量を計測する熱式流速・流量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱式流速・流量センサは、電熱線等のヒータ素子を有する発熱体を流体中に置いた時に、その発熱体から流体に奪われる熱量が、流体の流速に依存して変化することを利用して流速を検出し、その結果から流体の流量を演算している。そして、熱式流速・流量センサは流速の検出対象となる流体の温度が変化した場合に、流速検出部からの出力(熱量)に対する気温の変化の影響をも補償できるように、一般には気温計測用素子を備えている。
【0003】
ここで、一般的な熱式流速・流量センサの動作原理について説明する。
まず、一定の発熱源を持つ発熱体が、流体中に存在する場合、発熱体の持つ熱が流速に応じて流体に移動する物理現象を利用している。この物理現象は、下記[式1]に示すように、Kingの式として一般的に知られている。
【0004】
[式1]
ここで、Qは発熱体の発熱量、uは流速、Tは発熱体の温度、Taは周囲流体の温度、a及びbは定数で、発熱体の素材や構造に依存する値である。
【0005】
上記[式1]から、流速uを測定するには、発熱量Qが一定の場合には、発熱体の温度T及び周囲流体の温度Taの温度を計測して求めなければならない。また、発熱量Qが不定の場合には、発熱量Q、発熱体の温度T、周囲流体の温度Taを計測して求めなければならない。なお、a及びbは、発熱体の素材や構造に依存する値であるから、素材や構造が同一であれば、原理的には、a及びbは定まる値である。
【0006】
そして、このような熱式流速・流量センサとして、基板上に必要な回路等を実装したものが知られている。具体的には、この熱式流速・流量センサは、図8に示すように、供給電流により熱を発生するヒータ素子20と、流速に応じて変化するヒータ素子20からの熱の温度を検出する測温素子21とを有する流速検出部2と、気温を計測する気温計測部3と、流体の流速および流量を演算する回路部4と、流速検出部2、気温計測部3および回路部4が実装される基板1とを備え、センサの周囲の空間における流体の流速及び流量を計測する(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-68659公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の熱式流速・流量センサは、実装部品の表面積や放熱特性の違いにより、放熱量のバランスも基板の表裏で異なり、指向性誤差を生じる場合があった。
【0009】
もとより、実装部品を基板の表面と裏面で均一な回路構成とすることも考えられるが、それだと実装部品の二重化などにより無駄が生じてしまい、コスト高になるものであった。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成にして、基板の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響を軽減することができる熱式流速・流量センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、供給電流により熱を発生するヒータ素子と、流体の流速に応じて変化する前記ヒータ素子からの熱の温度を検出する測温素子とを有する流速検出部と、気温を計測する気温計測部と、少なくとも前記流速検出部が実装される基板と、前記基板の外部に設けられ、前記流速検出部の測温素子で検出された温度情報と、前記気温計測部で計測された気温情報とに基づいて、流体の流速および流量を演算する回路部とを備える熱式流速・流量センサであって、前記基板は、基板主要部と、前記流速検出部が実装される流速検出部用基板部分と、前記基板主要部から前記流速検出部用基板部分に一体的に延び、前記流速検出部を支持する細長形状の流速検出部用支持部とを備え、前記流速検出部用支持部において、前記基板を熱的に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
なお、本発明において、前記貫通孔は、貫通孔内に空間が空けられているものに限定されるものではなく、基板の表裏の熱伝導の役割を持つものであればよい。例えば、貫通孔の工法としては、貫通孔の内側に金属メッキを施したスルーホールや、貫通孔の中に金属を詰めたパットオンビア工法のほか、IVH工法、BVH工法、ビルドアップ工法など、熱伝導率の高い部材で基板の表裏を熱的に貫通させる工法が挙げられる。
【0013】
これによれば、基板の表裏で実装部品の構成が異なることにより、実装部品の発熱量や放熱量のバランスが基板の表裏で異なる場合であっても、これら実装部品で発生した熱が貫通孔を流通することにより、基板の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響を軽減することができる。このため、流速検出部において測温素子がヒータ素子の温度を精度良く検出することができ、ひいては流体の流速および流量を精度良く演算することが可能となる。
【0014】
また、前記貫通孔は、前記流速検出部用支持部における前記基板主要部側の基端部から中央部までの位置に形成されているのが好ましく、さらに好ましくは、前記貫通孔は、前記流速検出部用支持部における前記基板主要部側の基端部に形成されているのがよい。これによれば、貫通孔が流速検出部用支持部において基板主要部の実装部品に近い位置に設けられるため、基板の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響をより軽減することができる。
【0015】
また、前記気温計測部は、前記流速検出部用支持部に形成されている前記貫通孔の近傍位置に設けられてもよい。これによれば、貫通孔により基板の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響を軽減することができることから、気温計測部においても気温計測素子が周囲流体の気温を精度良く計測することができる。
【0016】
また、本発明は、上記目的を達成するために、供給電流により熱を発生するヒータ素子と、流体の流速に応じて変化する前記ヒータ素子からの熱の温度を検出する測温素子とを有する流速検出部と、気温を計測する気温計測部と、少なくとも前記流速検出部が実装される基板と、前記基板の外部に設けられ、前記流速検出部の測温素子で検出された温度情報と、前記気温計測部で計測された気温情報とに基づいて、流体の流速および流量を演算する回路部とを備える熱式流速・流量センサであって、前記基板は、基板主要部と、前記流速検出部が実装される流速検出部用基板部分と、前記基板主要部から前記流速検出部用基板部分に一体的に延び、前記流速検出部を支持する細長形状の流速検出部用支持部とを備え、前記基板主要部において、前記基板を熱的に貫通する貫通孔(他の装置に取り付けるための取付孔を除く。)が形成されていることを特徴とする。
【0017】
これによれば、貫通孔により基板の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響を軽減することができることから、流速検出部において測温素子がヒータ素子の温度を精度良く検出することができ、ひいては流体の流速および流量を精度良く演算することが可能となる。
【0018】
また、本発明は、上記目的を達成するために、供給電流により熱を発生するヒータ素子と、流体の流速に応じて変化する前記ヒータ素子からの熱の温度を検出する測温素子とを有する流速検出部と、気温を計測する気温計測部と、少なくとも前記流速検出部および前記気温計測部が実装される基板と、前記基板の外部に設けられ、前記流速検出部の測温素子で検出された温度情報と、前記気温計測部で計測された気温情報とに基づいて、流体の流速および流量を演算する回路部とを備える熱式流速・流量センサであって、前記基板は、基板主要部と、前記流速検出部が実装される流速検出部用基板部分と、前記気温計測部が実装される気温計測部用基板部分と、前記基板主要部から前記流速検出部用基板部分に一体的に延び、前記流速検出部を支持する細長形状の流速検出部用支持部と、前記基板主要部から前記気温計測部用基板部分に一体的に延び、前記気温計測部を支持する細長形状の気温計測部用支持部とを備え、前記気温計測部用支持部において、前記基板を熱的に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、貫通孔により基板の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響を軽減することができることから、気温計測部において気温計測素子が周囲流体の気温を精度良く計測することができ、ひいては流体の流速および流量を精度良く演算することが可能となる。
【0020】
また、本発明は、上記目的を達成するために、供給電流により熱を発生するヒータ素子と、流体の流速に応じて変化する前記ヒータ素子からの熱の温度を検出する測温素子とを有する流速検出部と、気温を計測する気温計測部と、少なくとも前記流速検出部および前記気温計測部が実装される基板と、前記基板の外部に設けられ、前記流速検出部の測温素子で検出された温度情報と、前記気温計測部で計測された気温情報とに基づいて、流体の流速および流量を演算する回路部とを備える熱式流速・流量センサであって、前記基板は、基板主要部と、前記流速検出部が実装される流速検出部用基板部分と、前記気温計測部が実装される気温計測部用基板部分と、前記基板主要部から前記流速検出部用基板部分に一体的に延び、前記流速検出部を支持する細長形状の流速検出部用支持部と、前記流速検出部用基板部分から前記気温計測部用基板部分に一体的に延び、前記気温計測部を支持する細長形状の気温計測部用支持部とを備え、前記気温計測部用支持部および/または気温計測部用基板部分において、前記基板を熱的に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0021】
これによれば、貫通孔により基板の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響を軽減することができることから、気温計測部において気温計測素子が周囲流体の気温を精度良く計測することができるとともに、流速検出部において測温素子がヒータ素子の温度を精度良く検出することができ、ひいては流体の流速および流量を精度良く演算することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板の表裏で実装部品の構成が異なることにより、実装部品の発熱量や放熱量のバランスが基板の表裏で異なる場合であっても、これら実装部品で発生した熱が貫通孔を流通することにより、基板の表裏で回路部による発熱および放熱の指向性特性への影響を軽減することができる。このため、流速検出部において測温素子がヒータ素子の温度を精度良く検出することができ、ひいては流体の流速および流量を精度良く演算することが可能となる。
【0023】
また、基板に貫通孔を形成するという簡易な構成であるため、指向性を有しない熱式流速・流量センサを低コストで製作、提供することがことができ、これにより従来は価格面で設置が難しかった設置場所にも設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態に係る熱式流速・流量センサの構成概略図である。
図2図1の熱式流速・流量センサの電気的構成を示すブロック図である。
図3図1の熱式流速・流量センサの測定結果を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る熱式流速・流量センサの構成概略図である。
図5図4の熱式流速・流量センサの測定結果を示す図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る熱式流速・流量センサの構成概略図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係る熱式流速・流量センサの構成概略図である。
図8】従来の熱式流速・流量センサの構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施形態>
次に、本発明に係る熱式流速・流量センサ(以下、本センサという)の第1の実施形態について図1および図2を参照しつつ説明する。
【0026】
本センサは、図1に示すように、所定の形状に形成された基板1において、流速検出部2、気温計測部3および回路部4が実装されており、前記流速検出部2の周囲の空間における流体の流速及び流量を計測する。以下、各構成について具体的に説明する。
【0027】
前記基板1は、多角形の薄板状に形成されており、回路部4が実装される基板主要部10と、流速検出部2が実装される流速検出部用基板部分11と、気温計測部3が実装される2個の気温計測部用基板部分12と、基板主要部10から流速検出部用基板部分11まで一体的に延びる流速検出部用支持部13と、基板主要部10の両側部から気温計測部用基板部分12まで延びる2個の気温計測部用支持部14とから構成される。
【0028】
この基板1としては、プリント基板として一般に広く販売されているガラスエポキシ製のFR-4が好適に用いられるが、ポリアミド製の基板でもよく、セラミック製の基板、シリコン製の基板のように熱伝導率が低い部材で形成された基板でもよい。
【0029】
前記基板主要部10は、正面視矩形状に形成されており、表面にマイクロコンピュータ等の主要な回路部4が実装されている。この回路部4は、図示略の流速検出用の回路パターン、気温計測用の回路パターン、電源供給及び信号の取り出し用の情報出力装置等から構成される。また、基板主要部10は、裏面に表面とは非対称の所定の回路パターンが実装されている。なお、基板主要部10は、本センサを他の装置や構造物に取り付けるための取付孔15や、回路部4で演算された流体の流速や流量のデータをデジタル信号またはアナログ信号により外部に伝達する電気的コネクタ16が設けられている。
【0030】
前記流速検出部用基板部分11は、正面視略円形状に形成されており、表面に流速検出部2が実装されている。この流速検出部2は、流体の流速を検出するためのものであって、供給電流により熱を発生するヒータ素子20と、流速に応じて変化する前記ヒータ素子20からの熱の温度を検出する測温素子21とを有する。これらヒータ素子20と測温素子21は、互いに隣接した状態で実装されることで流速検出部用基板部分11を介して熱的に直接接続された構造となっている。
【0031】
前記気温計測部用基板部分12は、正面視矩形状に形成されており、表面に気温計測部3が実装されている。この気温計測部3は、図示略の気温計測用素子を有しており、気温計測用素子により気温計測部3の周囲の流体の気温を計測する。
【0032】
前記流速検出部用支持部13は、基板主要部10の長さ方向の一方端部の中央部から流速検出部用基板部分11まで一体的に延びる細長形状に形成されており、先端部に流速検出部用基板部分11が同一平面上に連設されている。このため、流速検出部用基板部分11に実装された流速検出部2は、基板主要部10に一体的に形成された流速検出部用支持部13により支持された構造となっている。このように流速検出部用支持部13を細長状に形成することにより、流速検出部2から基板主要部10への熱伝導を抑えることができる。
【0033】
また、前記流速検出部用支持部13は、基板主要部10側の基端部に幅広部13aが形成され、該幅広部13aに複数の貫通孔5が形成されている。具体的には、これら貫通孔5は、流速検出部用支持部13の幅広部13aの両側部において、それぞれ軸線方向に沿って4個ずつ形成されており、流速検出部用支持部13の表裏を貫通している。この貫通孔5の作用効果については後に詳述する。
【0034】
前記気温計測部用支持部14は、基板主要部10の長さ方向の一方端部の両側部から気温計測部用基板部分12まで一体的に延びる細長形状に形成されており、先端部に気温計測部用基板部分12が同一平面上に連設されている。このため、気温計測部用基板部分12に実装された気温計測部3は、基板主要部10に一体的に形成された気温計測部用支持部14により支持された構造となっている。
【0035】
このように、基板1は、流速検出部用基板部分11と気温計測部用基板部分12がそれぞれ流速検出部用支持部13と気温計測部用支持部14を介して一体的に連設された構造となっている。よって、流速検出部用基板部分11に実装された流速検出部2と、気温計測部用基板部分12に実装された気温計測部3は、基板主要部10に実装された実装部品と所定距離を隔てるとともに、互いに所定距離を隔てた状態で配置されることになる。
【0036】
次に、本センサの回路部4の電気的構成について、図2を参照しつつ説明する。
【0037】
本センサの回路部4は、量子化装置41(ADコンバータ)、演算装置42(マイクロコンピュータ)、情報出力装置43によって構成されている。
【0038】
前記量子化装置41は、流速検出部2の測温素子21からの温度情報と、気温計測部3からの温度情報を、それぞれデジタル信号に変換するAD変換機能を有している。前記演算装置42は、流速検出部2で検出されたヒータ素子20の温度情報と、気温計測部3で計測された周囲流体の気温情報とに基づいて、上記[式1]の熱式の動作原理を用いて流体の流速および流量を演算する。前記情報出力装置43は、演算装置42により演算された流体の流速および流量を所定の装置に出力する。
【0039】
次に、本センサの作用動作について説明する。
【0040】
まず、流速検出部2において、流速検出部用基板部分11の内部電源配線(図示略)からの供給電流により、流速検出部用基板部分11の表面に実装されているヒータ素子20が加熱される。そして、本センサが流体中に配置されると、その流体の流速に応じてヒータ素子20の熱は変化して、流速検出部用基板部分11を介して測温素子21へと熱的に直接伝導する。そして、測温素子21が、ヒータ素子20から伝導してきた熱の温度を検出する。
【0041】
一方、気温計測部3において、図示略の気温計測用素子が気温計測部3の周囲の流体の気温を計測する。
【0042】
そして、回路部4において、流速検出部2で検出されたヒータ素子20の温度情報と、気温計測部3で計測された周囲流体の気温情報とに基づいて、上記[式1]の熱式の動作原理を用いて流体の流速および流量を演算する。
【0043】
このとき、基板1は、上述のように基板主要部10の表裏で回路構成が異なることから、従来の基板構成だと、実装部品の発熱量のバランスが異なっているのに加え、実装部品の表面積や放熱特性の違いにより、放熱量のバランスも基板1の表裏で異なり、指向性誤差を生じる場合があった。
【0044】
この点、本実施形態では、流速検出部用支持部13の基板主要部10側の幅広部13aにおいて複数の貫通孔5が形成されている。このため、基板1の表裏で実装部品の構成が異なることにより、実装部品の発熱量や放熱量のバランスが基板1の表裏で異なる場合であっても、これら実装部品で発生した熱が貫通孔5を流通することにより、基板1の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響を軽減することができる。よって、流速検出部2において測温素子21がヒータ素子20の温度を精度良く検出することができ、ひいては流体の流速および流量を精度良く演算することが可能となる。
【0045】
次に、従来のセンサと本センサの周囲流体の熱の測定結果について図3を参照しつつ説明する。
【0046】
図3は、従来のセンサと本センサを用いて、基板1の周囲流体の温度をパラメータとした場合の測定結果を示すものであり、流体の上流側の90度の方向が基板1の裏面側であり、流体の下流側の-90度の方向が基板1の表面側を示す。
【0047】
この図3に示すように、貫通孔5が形成されていない従来のセンサの場合、基板1の裏面側(90度)において周囲流体の温度が理想値よりも大幅に低くなって誤差が生じている一方、基板1の表面側(-90度)において流体の温度が理想値より大幅に高くなって誤差が生じている。これに対して、貫通孔5が形成されている本センサの場合、従来のセンサに比べて、基板1の裏面側(90度)および表面側(-90度)のいずれにおいても流体の温度が理想値に近づいており、基板1の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響が軽減しているのがわかる。
【0048】
<第2の実施形態>
次に、本センサの第2の実施形態について図4を参照しつつ説明する。なお、以下では上記の実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0049】
本実施形態では、前記基板1は、多角形の薄板状に形成されており、基板主要部10と、流速検出部2が実装される流速検出部用基板部分11と、基板主要部10から流速検出部用基板部分11まで一体的に延びる流速検出部用支持部13とを備え、気温計測部3が流速検出部用支持部13に実装されている。
【0050】
なお、回路部4は、基板主要部10の外部に設けられており、流速検出部2の温度情報と気温計測部3の気温情報に関する各データは電気的コネクタ16から外部の回路部4に伝達される。
【0051】
前記流速検出部用支持部13は、基板主要部10の長さ方向の一方端部の中央部から流速検出部用基板部分11まで一体的に延びる細長形状に形成されており、先端部に流速検出部用基板部分11が同一平面上に連設されている。なお、図4(a)は、流速検出部用支持部13が基板主要部10の長さ方向に延びたものを示し、図4(b)は、流速検出部用支持部13が基板主要部10の幅方向に延びたものを示す。
【0052】
そして、前記流速検出部用支持部13は、基板主要部10側の基端部から中央部にかけて幅広部13aが形成され、該幅広部13aの先端部側に複数の貫通孔5が形成されている。具体的には、これら貫通孔5は、流速検出部用支持部13の幅広部13aの両側部において、それぞれ軸線方向に沿って4個ずつ形成されており、流速検出部用支持部13の表裏を貫通している。なお、気温計測部3が流速検出部用支持部13に形成されている貫通孔5の近傍位置に設けらている。
【0053】
このため、基板1の表裏で実装部品の構成が異なることにより、実装部品の発熱量や放熱量のバランスが基板1の表裏で異なる場合であっても、これら実装部品で発生した熱が貫通孔5を流通することにより、基板1の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響を軽減することができる。よって、流速検出部2において測温素子21がヒータ素子20の温度を精度良く検出することができる。
【0054】
また、前記気温計測部3は、流速検出部用支持部13の幅広部13aの中央部であって、貫通孔5の近傍位置に実装されている。このため、気温計測部3の周囲においても、基板1の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響が軽減されるため、気温計測部3において周囲流体の温度を精度良く計測することができる。
【0055】
次に、従来のセンサと本センサの周囲流体の熱の測定結果について説明する。
【0056】
図5は、従来のセンサと本センサを用いて、気温計測部3における周囲流体の温度をパラメータとした場合の測定結果を示すものであり、全方向の測定値の平均値を1とした場合の気温計測部3への付与角度別の偏差を示したものである。
【0057】
この図5(a)に示すように、貫通孔5が形成されていない従来のセンサの場合、付与角度の方向によって計測値に偏りが生じており、±2度程度の指向性が生じている。これに対して、図5(b)に示すように、貫通孔5が形成されている本センサの場合、付与角度の方向による計測値の偏りが±0.4度程度まで改善されていることがわかる。
【0058】
<第3の実施形態>
次に、本センサの第3の実施形態について図6を参照しつつ説明する。なお、以下では上記の実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0059】
本実施形態では、前記基板1は、多角形の薄板状に形成されており、回路部4が実装される基板主要部10と、流速検出部2が実装される流速検出部用基板部分11と、気温計測部3が実装される気温計測部用基板部分12と、基板主要部10から流速検出部用基板部分11まで一体的に延びる流速検出部用支持部13と、基板主要部10から気温計測部用基板部分12まで延びる気温計測部用支持部14とから構成される。
【0060】
なお、回路部4は、基板主要部10の外部に設けられており、流速検出部2の温度情報と気温計測部3の気温情報に関する各データは電気的コネクタ16から外部の回路部4に伝達される。
【0061】
前記流速検出部用支持部13は、基板主要部10の幅方向の一方側端部から流速検出部用基板部分11まで一体的に延びる細長形状に形成されており、先端部に流速検出部用基板部分11が同一平面上に連設されている。
【0062】
そして、前記流速検出部用支持部13は、基板主要部10側の基端部から中央部にかけて幅広部13aが形成され、該幅広部13aの先端部側に複数の貫通孔5が形成されている。具体的には、これら貫通孔5は、流速検出部用支持部13の幅広部13aの両側部において、それぞれ軸線方向に沿って4個ずつ形成されており、流速検出部用支持部13の表裏を貫通している。
【0063】
このため、基板1の表裏で実装部品の構成が異なることにより、実装部品の発熱量や放熱量のバランスが基板1の表裏で異なる場合であっても、これら実装部品で発生した熱が貫通孔5を流通することにより、基板1の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響を軽減することができる。よって、流速検出部2において測温素子21がヒータ素子20の温度を精度良く検出することができる。
【0064】
また、前記気温計測部用支持部14は、基板主要部10の幅方向の他方側端部から気温計測部用基板部分12まで一体的に延びる細長形状に形成されており、先端部に気温計測部用基板部分12が同一平面上に連設されている。
【0065】
そして、気温計測部用基板部分12は、複数の貫通孔5が気温計測部3を取り囲む態様で形成されている。具体的には、これらの貫通孔5は、気温計測部用基板部分12の先端部側の幅方向両側部(端部を除く)および基端部側の両側部(端部を除く)において、それぞ軸線方向に沿って2個ずつ形成されており、気温計測部用基板部分12の表裏を貫通している。
【0066】
このため、気温計測部3の周囲においても、基板の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響が軽減されるため、気温計測部3において周囲流体の温度を精度良く計測することができる。
【0067】
また、流速検出部用支持部13と気温計測部用支持部14が基板主要部10から互いに反対方向に延びていることにより、流速検出部用基板部分11に実装された流速検出部2と気温検出部用基板部分12に実装された気温計測部3が離れて配置されるため、気温計測部3において流速検出部2から伝わる熱の影響を軽減することができる。
【0068】
<第4の実施形態>
次に、本センサの第4の実施形態について図7を参照しつつ説明する。なお、以下では上記の実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0069】
本実施形態では、前記基板1は、多角形の薄板状に形成されており、回路部4が実装される基板主要部10と、流速検出部2が実装される流速検出部用基板部分11と、気温計測部3が実装される気温計測部用基板部分12と、基板主要部10から流速検出部用基板部分11まで一体的に延びる流速検出部用支持部13と、流速検出部用基板部分11から気温計測部用基板部分12まで延びる気温計測部用支持部14とから構成される。
【0070】
なお、回路部4は、基板主要部10の外部に設けられており、流速検出部2の温度情報と気温計測部3の気温情報に関する各データは電気的コネクタ16から外部の回路部4に伝達される。
【0071】
前記流速検出部用支持部13は、基板主要部10の長さ方向の一方端部の中央部から流速検出部用基板部分11まで一体的に延びる細長形状に形成されており、先端部に流速検出部用基板部分11が同一平面上に連設されている。
【0072】
前記気温計測部用支持部14は、流速検出部用基板部分11から気温計測部用基板部分12まで一体的に延びる細長形状に形成されており、先端部に気温計測部用基板部分12が同一平面上に連設されている。
【0073】
そして、気温計測部用基板部分12は、複数の切欠状の貫通孔5が気温計測部3を取り囲む態様で形成されている。具体的には、これらの貫通孔5は、気温計測部用基板部分12の先端部側の幅方向両側端部および基端部側の幅方向両側端部において、それぞ軸線方向に沿って2個ずつ形成されており、気温計測部用基板部分12の表裏を貫通している。
【0074】
このため、基板1の表裏で実装部品4の構成が異なることにより、実装部品の発熱量や放熱量のバランスが基板1の表裏で異なる場合であっても、これら実装部品で発生した熱が貫通孔5を流通することにより、基板1の表裏で実装部品による発熱および放熱の指向性特性への影響を軽減することができる。よって、気温計測部3において周囲流体の温度を精度良く計測することができる。
【0075】
なお、上述の各実施形態では、流速検出部用支持部13、気温計測部用支持部14、気温計測部用基板部分12に貫通孔5を形成したが、それに代えて、あるいは加えて基板主要部10に貫通孔5を形成してもよい。
【0076】
また、流速検出部2を流速検出部用基板部分11の表面に実装したが、表面と裏面の両面に実装してもよい。
【0077】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
応用分野としては、エアコン等の空調管理やそれによるエネルギーマネジメント分野など、人の生活環境への利用が見込まれる。また、産業分野では、クリーンルームなどの気流環境を重要視する製造現場や、温室などの栽培施設における風の管理など、従来ではセンサ設置が難しかった場所での設置が可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1…基板
10…基板主要部
11…流速検出部用基板部分
12…気温計測部用基板部分
13…流速検出部用支持部
14…気温計測部用支持部
15…取付孔
16…電気的コネクタ
2…流速検出部
20…ヒータ素子
21…測温素子
3…気温計測部
4…回路部
41…量子化装置
42…演算装置
43…情報出力装置
5…貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8