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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】クーラント液処理システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20240712BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20240712BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B23Q11/10 E
B23Q17/24 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019541914
(86)(22)【出願日】2018-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2018025187
(87)【国際公開番号】W WO2019054018
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-02-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2017176397
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145448
【氏名又は名称】住友重機械ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】西澤 信也
【合議体】
【審判長】渋谷 善弘
【審判官】田々井 正吾
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-111609(JP,A)
【文献】特開2001-343320(JP,A)
【文献】特開2005-087948(JP,A)
【文献】実開昭57-047205(JP,U)
【文献】特開平10-128086(JP,A)
【文献】特開2005-087949(JP,A)
【文献】特開2003-266272(JP,A)
【文献】特開2002-052388(JP,A)
【文献】特開昭51-029771(JP,A)
【文献】特許第4290221(JP,B2)
【文献】特開2011-177810(JP,A)
【文献】特開2004-066425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00 - 11/14
B23Q 17/00 - 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラッジを含むクーラント液をろ過するためのろ過装置と、前記ろ過装置でろ過された処理液中の粒子を検知する検知手段と、を備え、
前記検知手段は、所定の粒子径よりも大きい粒子が所定の数より多く検知された場合に、前記過装置のフィルタの損傷を検知することを特徴とし、
前記検知手段は、測定部に対して処理液を通過させ、当該処理液に光を照射して粒子を検知する光学的検知手段であり、
前記測定部を加圧することを特徴とし、
前記測定部は、0.2MPa以上の圧力に加圧することを特徴とする、クーラント液処理システム。
【請求項2】
前記光は、波長650nm以上の光であることを特徴とする、請求項に記載のクーラント液処理システム。
【請求項3】
スラッジを含むクーラント液をろ過するためのろ過装置と、前記ろ過装置でろ過された処理液中の粒子を検知する検知手段と、を備え、
前記検知手段は、所定の粒子径よりも大きい粒子が所定の数より多く検知された場合に、前記過装置のフィルタの損傷を検知することを特徴とする、クーラント液処理システムであって、
前記ろ過装置の上流には、工作機械から排出されたスラッジを含むクーラント液からスラッジを除去するための前処理装置を備え、
前記ろ過装置の洗浄により回収されたスラッジを前記前処理装置に供給することを特徴とする、クーラント液処理システム。
【請求項4】
スラッジを含むクーラント液をろ過するためのろ過装置と、前記ろ過装置でろ過された処理液中の粒子を検知する検知手段と、を備え、
前記検知手段は、所定の粒子径よりも大きい粒子が所定の数より多く検知された場合に、前記過装置のフィルタの損傷を検知することを特徴とする、クーラント液処理システムであって、
前記スラッジを含むクーラント液を貯留する被処理液槽と、前記処理液を貯留する処理液槽と、を備え、
前記被処理液槽と前記処理液槽は連通していることを特徴とする、クーラント液処理システム。
【請求項5】
前記被処理液槽の内部には、前記被処理液槽より底面の面積が小さく、かつ、容量の小さい被処理液タンクを備えることを特徴とする、請求項に記載のクーラント液処理システム。
【請求項6】
スラッジを含むクーラント液をろ過するためのろ過装置と、前記ろ過装置でろ過された処理液中の粒子を検知する検知手段と、を備え、
前記検知手段は、所定の粒子径よりも大きい粒子が所定の数より多く検知された場合に、前記過装置のフィルタの損傷を検知することを特徴とする、クーラント液処理システムであって、
前記処理液を貯留する処理液槽と、を備え、
前記処理液槽は、液面計が設置されており、工作機械へのクーラント液の供給が停止しないように監視することを特徴とする、クーラント液処理システム。
【請求項7】
前記処理液を貯留する処理液槽を備え、
前記検知手段は、前記ろ過装置と前記処理液槽との間に設置されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のクーラント液処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラッジを含むクーラント液をろ過して、クーラント液からスラッジを除去するためのクーラント液処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に供給されたクーラント液は、加工中に発生した切粉などの不純物がスラッジとしてクーラント液に混入する。クーラント液を再利用するため、ろ過によりクーラント液中のスラッジを捕捉し、クーラント液を浄化するクーラント液処理システムが知られている。ろ過装置は、所定の粒径以上のスラッジが通過しないように、所定のスラッジの粒径より小さなメッシュを有するフィルタを備えている。このフィルタにクーラント液を透過させることでスラッジが捕捉される。ろ過装置を長時間使用すると、徐々にスラッジがフィルタの上流にたまり、フィルタが目詰まりする。フィルタが目詰まりすると、フィルタ洗浄機構によりフィルタを洗浄する。
【0003】
特許文献1には、フィルタ洗浄機構として、逆洗機構を備えたクーラントろ過装置が開示されている。逆洗機構は、圧縮エアをフィルタに対して通常のクーラント液の流れとは逆向きに流すことで、フィルタの周囲に付着した切粉等のスラッジを剥がす機構が利用されている。また、このクーラントろ過装置には、フィルタの目詰まり状態を検知する手段として、圧力スイッチが設けられている。圧力スイッチによりフィルタが目詰まり状態であることを検知すると、フィルタ洗浄機構によりフィルタを洗浄するように構成されている。
【0004】
さらに、このクーラントろ過装置は、ろ過装置で処理された処理液を貯留するための処理槽を備えており、該処理槽では、該処理液が所定量になるまで補給するのに要する補給時間を測定している。そして、この測定時間が、予め設定された設定時間以上になったときに異常を報知する。これにより、このクーラントろ過装置では、フィルタの交換時期や、スラッジを含むクーラント液を貯留する被処理液槽の掃除時期を早期に知らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-66425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のクーラント液処理システムは、差圧の上昇やろ過処理量の低下を検知することにより、フィルタの洗浄や交換の時期を報知するものである。しかし、フィルタの損傷等によりスラッジが処理液側に漏出するという異常が生じた場合では、差圧の上昇やろ過処理量の低下が生じないため、従来のクーラント液処理システムでは、スラッジがフィルタから処理液側に漏出するという異常を検知することができない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、スラッジを含むクーラント液をろ過するためのろ過装置を備えたクーラント液処理システムにおいて、フィルタの損傷等によるスラッジの漏出を素早く検知し、ろ過装置で処理された処理液へのスラッジの混入を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題について鋭意検討した結果、本発明者は、ろ過処理装置で処理された処理液中の粒子を検知することにより、フィルタの損傷等によるスラッジの漏出を素早く検知できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のクーラント液処理システムである。
【0009】
上記課題を解決するための本発明のクーラント液処理システムは、スラッジを含むクーラント液をろ過するためのろ過装置と、前記ろ過装置でろ過された処理液中の粒子を検知する検知手段と、を備えたことを特徴とする。
このクーラント液処理システムによれば、ろ過装置の後段に、処理液中の粒子を検知する検知手段を備えているため、フィルタからスラッジが漏出していることに素早く気付くことができる。そして、スラッジの漏出が検知された場合には、直ちにろ過処理装置を停止する等の対応により、処理液へのスラッジの混入を抑制することができる。
【0010】
本発明のクーラント液処理システムの一実施態様としては、更に、処理液を貯留する処理液槽を備え、検知手段は、ろ過装置と前記処理液槽との間に設置されていることを特徴とする。
この特徴によれば、フィルタの損傷等によるスラッジの漏出をより素早く検知することができるため、処理液へのスラッジの混入を抑制するという本発明の効果をより発揮することができる。
また、検知手段を処理液槽に設置すると、フィルタから漏出したスラッジが処理液槽中の処理液で希薄化するため、検知手段の感度が低下するという問題がある。しかし、ろ過装置と処理液槽との間に検知手段を設置することにより、フィルタから漏出したスラッジが処理液槽で希薄化する前に検出されるため、検知手段の感度を高めることができる。
【0011】
本発明のクーラント液処理システムの一実施態様としては、検知手段は、光を用いて粒子を検知する光学的検知手段であることを特徴とする。
光学的検知手段は、処理液中のスラッジを高感度で検出できるだけでなく、スラッジの粒子径や粒子の数も測定することができるため、スラッジの漏出を精密に検知することができる。よって、検知手段として光学的検知手段を使用することにより、例えば、設定した粒子径より大きい粒子が検知された場合や、設定した粒子の数より多くの粒子が検知された場合に、運転を停止する等の高度な制御が可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スラッジを含むクーラント液をろ過するためのろ過装置を備えたクーラント液処理システムにおいて、フィルタの損傷等によるスラッジの漏出を素早く検知し、ろ過装置で処理された処理液へのスラッジの混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一の実施態様のクーラント液処理システムの構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の第二の実施態様のクーラント液処理システムの構造を示す概略説明図である。
図3】本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システムの構造を示す概略説明図である。
図4】本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システムの制御方法の一例を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
クーラント液は、切削や研磨等の加工機械に使用する潤滑油、水等であり、水性液体及び油性液体のいずれでもよい。クーラント液を、切削機や研磨機や研削盤等の加工機械に使用すると、切削や研磨等の加工により生じる切粉等の粒子が、使用済みのクーラント液にスラッジとして混入する。本発明のクーラント液処理システムは、切粉等のスラッジを含有するクーラント液からスラッジを除去するためのシステムである。特に、本発明のクーラント液処理システムは、スラッジを含むクーラント液をろ過するためのろ過装置を備えたクーラント液処理システムであって、ろ過装置でろ過された処理液中の粒子を検知する検知手段を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
以下に、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
〔第一の実施態様〕
[クーラント液処理システム]
図1は、本発明の第一の実施態様のクーラント液処理システム1A及び工作機械100の全体構成を示す。なお、工作機械100は、クーラント液を使用する研削盤や切削機等の加工機械であり、大小様々な切粉等の粒子が発生するものである。
本発明のクーラント液処理システム1Aは、スラッジを含むクーラント液をろ過するためのろ過装置2と、ろ過装置2でろ過された処理液中に含まれる粒子を検知する検知手段3を備えている。そして、工作機械100から排出されたスラッジを含むクーラント液は、ろ過装置2で所定の大きさの粒子が除去されて、清浄化したクーラント液として再度工作機械100に使用される。
【0016】
<ろ過装置>
ろ過装置2は、工作機械100から排出されたスラッジを含むクーラント液をろ過するための装置であり、フィルタを備えている。フィルタの目開きは、クーラント液に含まれるスラッジの粒子径により適宜設計されるが、例えば、1~30μmであり、より好ましくは5~20μmである。フィルタの目開きを1μm以上とすることにより、ろ過処理量を十分に確保することができる。一方、フィルタの目開きを30μm以下とすることにより、クーラント液が十分に清浄化され、工作機械100における不具合を防止することができる。
【0017】
フィルタの材質は、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、4フッ化エチレン(PTFE)、酢酸セルロース(CA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PS)等の有機膜、酸化アルミニウム(アルミナ Al2O3)、酸化ジルコニウム(ジルコニア ZrO2)、酸化チタン(チタニア TiO2)、ステンレス(SUS)、ガラス(SPG)等の無機膜等が挙げられる。
【0018】
フィルタの形状は、どのような形状でもよく、例えば、板状、円筒状のものが挙げられる。ろ過方式としては、例えば、クーラント液の全量をろ過する全量ろ過方式や、クーラント液を膜面に対して平行に流しながらろ過するクロスフロー方式等がある。ろ過方式は、特に制限されず、クーラント液の供給ポンプの動力費や、膜面へのスラッジの堆積状態等を考慮しつつ、適宜選択することができる。
【0019】
ろ過装置2には、フィルタ洗浄装置を設けることが好ましい。フィルタ洗浄装置としては、特に制限されないが、例えば、逆洗装置や、掻き取り装置等が挙げられる。逆洗装置とは、ろ過の流れ方向とは逆方向に流体を流すことにより、フィルタ表面に堆積したスラッジを剥がし落とす装置である。また、掻き取り装置とは、掻き取り部材等をフィルタ表面に摺動させたり、高圧エアをフィルタ表面に吹き付けたりすることにより、フィルタ表面に堆積したスラッジを掻き取る装置である。洗浄性能に優れるという観点から、逆洗装置を使用することが好ましい。また、逆洗装置に使用する流体としては、特に制限されないが、例えば、空気やろ過処理された処理液等を使用することができる。空気を使用する場合、フィルタを透過する速度が速く、作業性に優れるという効果がある。
【0020】
また、ろ過装置2には、フィルタを洗浄する時期を決定するため、フィルタの目詰まりの状態を検知する手段を設けることが好ましい。フィルタの目詰りの状態を検知する手段としては、例えば、フィルタの前後の差圧を測定する圧力スイッチ等が挙げられる。圧力スイッチを用いることにより、差圧が所定の値に上昇すると、目詰りした状態であると判断して、洗浄装置を自動的に作動することができる。
【0021】
その他、ろ過装置2には、フィルタの交換時期を決定するため、フィルタの性能を検知する手段を設けてもよい。フィルタの性能を検知する手段としては、例えば、ろ過処理量を検出する手段等が挙げられる。ろ過処理量が所定の値まで低下すると、フィルタの性能が低下したと判断して、フィルタの交換時期を決定することができる。
【0022】
<検知手段>
検知手段3は、ろ過装置2でろ過された処理液中の粒子を検知するための構成である。検知手段3としては、処理液中の粒子を検知することが可能であれば、特に制限されないが、例えば、光を用いて粒子を検知する光学的検知手段、マグネットやフィルタ等により粒子を捕捉して検知する捕捉検知手段等が挙げられる。
【0023】
光学的検知手段は、流路を通過する処理液に光を照射して、その散乱光、透過光、吸光、反射光等を検知することにより処理液中の粒子の大きさや粒子の個数などを検知するものである。光の波長は、特に制限されず、粒子を検知できる波長であれば、いずれの波長で検知してもよい。処理液の色度における光の吸収の影響を小さくするという観点から、650nm以上の波長の光を使用することが好ましい。
【0024】
光学的検知手段としては、微小流路により形成される測定部に処理液を通過させ、レーザー光を用いて測定することが好ましい。なお、微小流路とは、クーラント液のほぼ全量が通過する主流路から、一部分岐された流路である。クーラント液は循環している間に様々な工程を経るため、液中に気泡を含んでいる。光学的検知手段の感度を上げると、クーラント液中の気泡をノイズとして検知し易くなる。そのため、測定部を加圧して測定に影響を及ぼす気泡を除去することが好ましい。測定部を微小流路により形成すると、小型のオイルフィーダー等の簡素な装置で測定部を加圧することができる。
【0025】
微小流路を加圧しつつ、微小流路に安定した流速でクーラント液を供給するために、光学的検知手段の前段にオイルフィーダーを設けることが好ましい。オイルフィーダーの能力としては、0.2MPa以上の圧力に調整できることが好ましい。供給圧力を0.2MPa以上に調整することにより、測定に影響を及ぼす気泡を除去し、安定した測定を実現することができる。また、供給圧力を0.2MPa以上に調整することにより、微小流路に想定外の大きさの粒子が流入した場合に、高圧力で粒子を押し出す作用があり、微小流路への粒子の詰まりを防止するという効果もある。
【0026】
光学的検知手段の具体例としては、例えば、測定部に一定に制御された流速で処理液を通過させ、処理液に波長680nmのレーザー光を照射する。照射されたレーザー光は、測定部を透過し、フォトダイオード等の光検知器により検知される。処理液中に粒子が混入すると、レーザー光を遮蔽するため、光検出器に影が検知される。光検知器では、粒子の影の大きさにより光電変換が行われ、遮蔽された光電量により生じる電圧低下量から導き出された面積を円に換算し、その直径をコンタミの大きさとして処理することができる。このように、光学的検知手段は、処理液中の粒子について、粒子径や粒子数等を高感度で検出することができる。
【0027】
次に、光学的検知手段により検出された処理液中の粒子の粒子径や粒子数によって、ろ過装置2におけるスラッジの漏出の有無を判断する。スラッジの漏出の判断としては、例えば、設定した粒子径より大きい粒子が検知された場合や、設定した粒子の数より多くの粒子が検知された場合に、スラッジの漏出が生じていると判断し、ろ過処理2の運転を停止する等の制御を行う。このような制御は、例えば、コンピュータ等の制御部により制御したり、スラッジの漏出を警報により操作者に報知し、操作者がろ過装置2の運転を停止したりすればよい。
【0028】
捕捉検知手段は、マグネットやフィルタ等の粒子を捕捉するための捕捉手段により粒子を捕捉し、検知するものである。粒子の捕捉状態を検知する方法としては、例えば、流路に監視窓を設け、捕捉手段の状態を監視する方法や、定期的に分解して捕捉手段の状態を観察する方法等が挙げられる。捕捉検知手段は、高価な光学的検知手段を用いずに、簡便に漏出の有無を判定できる。
【0029】
〔第二の実施態様〕
図2には、本発明の第二の実施態様のクーラント液処理システム1B及び工作機械100の構造を示す。
第二の実施態様のクーラント液処理システム1Bでは、ろ過装置2でろ過された処理液を貯留するための処理液槽4と、工作機械100から排出されたスラッジを含むクーラント液を貯留する被処理液槽5を備えている。また、ろ過装置2と処理液槽4との間の流路L2に、検出手段として光学的検知手段3Aが設置されている。
クーラント液は、処理液槽4から流路L4に設置されたポンプP1で工作機械100に供給される。工作機械100で使用されたスラッジを含むクーラント液は、流路L5、前処理装置6、流路L6を介して被処理液槽5に回収される。処理液槽4を備えることにより、ろ過装置2からスラッジが漏出した際に、処理液槽4にスラッジが溜められるため、直ちに工作機械100に大きな粒子などが流入することを防止することができる。
【0030】
被処理液槽5に回収されたスラッジを含むクーラント液は、流路L3に設置されたポンプP2で吸い上げられ、ろ過装置2に供給される。ろ過装置2で処理された処理液は、流路L1を介して処理液槽4に供給される。処理液の一部は、分岐された流路L2(微小流路)を介して処理液槽4に供給される。流路L2には、光学的検知手段3Aが設置されており、光学的検知手段3Aにより、ろ過装置で処理された処理液中に粒子の混入が有るか否かを検知する。流路L1(主流路)から分岐された流路L2(微小流路)を設けることにより、簡易的なオイルフィーダー31で処理液を加圧することが可能となる。そして、処理液を加圧することにより、測定に影響を及ぼす気泡が除去され、光学的検知手段3Aにおける測定の精度や感度を高めることができる。
【0031】
光学的検知手段3Aを、ろ過装置2と処理液槽4との間の流路L2に設置することにより、処理液槽4に処理液が供給される前に処理液中の粒子を検出することができる。これによれば、フィルタの損傷等によるスラッジの漏出をより素早く検知することができるため、処理液槽4に供給される処理液へのスラッジの混入を抑制するという本発明の効果をより発揮することができる。
また、光学的検出手段3Aを処理液槽4、流路L4等、ろ過装置2で処理された直後の処理液が他の処理液と合流した後の位置に設置すると、フィルタから漏出したスラッジが処理液槽4中の処理液で希薄化するため、光学的検出手段3Aの感度が低下するという問題がある。よって、光学的検出手段3Aをろ過装置2と処理液槽4との間の流路L2に設置することにより、フィルタから漏出したスラッジが処理液槽4で希薄化する前に検出されるため、光学的検出手段3Aの感度を高めるという効果もある。
なお、光学的検出手段3Aは、ろ過装置2から工作機械100までの間のいずれの位置に設置してもよく、例えば、光学的検出手段3Aを処理液槽4、流路L4等に設置することも可能である。
【0032】
また、第二の実施態様のクーラント液処理システム1Bでは、処理液槽4と被処理液槽5は、一つの処理槽に区画壁7を設けることにより形成されている。更には、区画壁7の上部には開口8が形成され、処理液槽4と被処理液槽5が上部空間において連通している。なお、処理液槽4と被処理液槽5は、別槽で形成してもよく、その場合には、配管等により処理液槽4と被処理液槽5の上部空間を連通すればよい。処理液槽4と被処理液槽5の上部空間を連通することにより、処理液槽4の処理液が溢流として、被処理液槽5に流れ込むことができるため、ろ過装置2で処理される処理量を、工作機械100に供給される処理液の量よりも大きくなるように設定することができる。
【0033】
ろ過装置2で処理される処理量は、工作機械100に供給される処理液の量よりも大きくなるように設定することが好ましい。例えば、処理液槽4から流路L4を介して工作機械100に供給される処理液の流量に対する被処理液槽5から流路L3を介してろ過装置2に供給される被処理液の流量の比(被処理液の流量/処理液の流量)は、1以上であり、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.4以上である。これにより、処理液槽4の液面が低下して、工作機械100へのクーラント液の供給が停止するというトラブルを防止することができる。
【0034】
また、第二の実施態様のクーラント液処理システム1Bでは、工作機械100から排出されたスラッジを含むクーラント液から、スラッジを除去するための前処理装置6を備えている。前処理装置6により、ろ過装置2の負荷を低減することができるため、フィルタ交換等の作業の頻度を低下することができる。
【0035】
前処理装置6は、スラッジを除去するための装置であれば、どのような装置でもよい。例えば、磁力によりスラッジを付着して除去するマグネットセパレータや、貯留槽の底部に沈降したスラッジを掻き寄せて除去するスラッジコンベアや、遠心力によりスラッジを分離除去するサイクロン分離機等が挙げられる。なお、前処理装置6は、これらの装置を複数組み合わせて使用してもよい。
【0036】
〔第三の実施態様〕
図3には、本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システム1C及び研削盤101の構造を示す。
【0037】
本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システム1Cでは、処理液槽4に、液温調整機H2、液面計S4が設置されている。
液温調整機H2は、研削盤101で熱を吸収したクーラント液の温度を低下するための装置である。
また、液面計S4は、処理液槽4の液面が低下した際に、異常を検知し、研削盤101へのクーラント液の供給が停止しないように監視するための装置である。
【0038】
また、本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システム1Cでは、前処理装置として、スラッジコンベア61及びマグネットセパレータ62を備えている。これにより、ろ過装置の負荷を低減することができる。なお、スラッジコンベア61には、液面計S2が設けられており、クーラント液量の低下などの異常を検知し、ポンプP7が常にクーラント液を吸引できるように設定されている。
【0039】
また、本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システム1Cでは、被処理液槽5の内部に、被処理液タンク51を備えている。被処理液タンク51は、被処理液槽5と比較して底面の面積が小さく、かつ、容量が小さいタンクにより構成されている。また、被処理液タンク51は、被処理液槽5の低位において、フロート式逆止弁52を介して連通している。フロート式逆止弁52は、フロートが浮いている状態で閉状態となり、フロートが下がることにより、被処理液槽5から被処理液タンク51にクーラント液が流入するように構成されている。すなわち、被処理液タンク51内のスラッジを含むクーラント液をポンプP5及び/又はポンプP6により吸い上げると、被処理液タンク51内の水面が低下し、被処理液タンク51の液面が所定高さ以下まで低下すると、液面に追従してフロートが下がり、被処理液槽5から被処理液タンク51にクーラント液が流入するというものである。なお、被処理液タンク51には、液面計S3が設けられており、運転に異常があれば、直ぐに検知することができる。
【0040】
次に、被処理液タンク51の作用効果を説明する。前述した第二の実施態様のようにスラッジを含むクーラント液を被処理液槽5に回収する場合、流路L6の出口付近の底部にスラッジが堆積するという問題がある。被処理液槽5はろ過装置に常にクーラント液を供給できるように所定の大きさを確保する必要があるが、そうすると、被処理液槽5の容量が大きくなり、被処理液槽5内に堆積したスラッジをポンプで吸い上げられないからである。
一方、第三の実施態様のようにすると、被処理液タンク51は、被処理液槽5と比較して底面の面積が小さいためスラッジの堆積する領域が限定されている。また、容量が小さいことから被処理液タンク51の内部全体に強い流れが生じて、スラッジがポンプP5及び/又はポンプP6の方向に移送される。そのため、被処理液タンク51に回収されたスラッジは、被処理液タンク51の底部に堆積せず、ポンプP5及び/又はポンプP6で吸い上げられ、ろ過装置2A及び/又はろ過装置2Bへ供給することができる。
【0041】
また、本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システム1Cでは、2つのろ過装置2A及び2Bが並列に設置されている。さらに、各ろ過装置2A及び2Bには、フィルタの目詰まりを検知する圧力スイッチSW、エアコンプレッサーACから供給された圧縮空気によりフィルタを洗浄する逆洗装置が設けられている。ろ過装置2A及び2Bは、一方のろ過装置を運転している間に、他のろ過装置の運転が停止され、ろ過装置の洗浄が行われるように制御される。フィルタ洗浄により回収されたスラッジは、流路L20及び/又は流路L21を介してスラッジコンベア61に供給されて、系外に排出される。
【0042】
第三の実施態様のように、本発明のクーラント液処理システムは、複数のろ過装置を並列に設置することが好ましい。複数のろ過装置を並列に設置することにより、検知手段において処理液側にスラッジの漏出が検知された際に、正常なろ過装置で運転を継続しつつ、スラッジの漏出が検知されたろ過装置のみを停止することができる。そのため、スラッジの漏出が生じた場合でも、工作機械100やクーラント液処理システム全体を停止する必要がなくなり、スラッジの漏出が検知されたろ過装置へのクーラント液の供給を素早く停止することが可能となる。
また、フィルタ洗浄やフィルタ交換の際にも、運転を停止することなく、洗浄操作や交換操作を実施することができる。
【0043】
ろ過装置2A及び2Bによりろ過処理された処理液は、液採取ボックス9に一時的に集められ、その後、処理液槽4に供給される。また、液採取ボックス9から処理液槽4の間の流路L14は、流路L15が分岐しており、流路L15には、第二の実施態様と同様、オイルフィーダー31及び光学的検知手段3Aが設けられ、処理液中に含まれる粒子を検知している。ろ過装置2A及び2Bによりろ過処理された処理液を、液採取ボックス9に一時的に集め、その出口で処理液中の粒子を検知することにより、各々のろ過装置2A、2Bに対して、一つの光学的検知手段3Aで粒子を検知できる。
【0044】
また、並列に設置された2つのろ過装置2A及び2Bの出口である流路L13、L12のそれぞれに光学的検知手段を設けてもよい。この場合、光学的検知手段により検知された粒子径及び/又は粒子数からスラッジの漏出があると判断されると、直ぐにスラッジの漏出の生じたろ過装置を特定することができる。これにより、スラッジの漏出の生じたろ過装置の使用を素早く停止することができるため、処理液槽4へのスラッジの混入を抑制するという本発明の効果をより一層発揮できる。
【0045】
図4には、2つのろ過装置2A及び2Bの運転の制御方法の例を示す。この制御方法では、ろ過装置2A又はろ過装置2Bの運転を開始するStep1、ろ過装置2A又はろ過装置2Bで処理された処理液中の粒子径及び/又は粒子数を光学的検知手段3Aにより監視するStep2を備える。
次に、光学的検知手段3Aにより得られたデータによりスラッジの漏出の有無を判断する(if1)。スラッジの漏出の有無の判断は、特に制限されないが、例えば、目開き10μmのフィルタを用いてろ過処理する場合に、粒子径10μm以上の粒子が1mL当たり10個以上検出されるとスラッジの漏出があると判断する等、目開きより大きな粒子径の粒子の数を設定し、これを超える場合にスラッジの漏出があると判断する。
【0046】
光学的検知手段3Aのデータからスラッジの漏出があると判断された場合、警報によりスラッジの漏出を報知するStep3と、これに続いて、ろ過装置2Aとろ過装置2Bの運転を切り替えるStep4を実行する。警報は、特に制限されないが、アラーム音を鳴らしたり、クーラント液処理システムの操作画面にアラームを表示したりすればよい。Step4は、運転していたろ過装置を停止し、もう一方のろ過装置の運転を開始する工程である。なお、停止したろ過装置は、スラッジの漏出の原因を調査し、フィルタ交換等の適切な処理を行い、復旧すればよい。
【0047】
Step3及びStep4の後、継続して光学的検知手段3Aによるスラッジの漏出の有無の判断を行う(if2)。そして、光学的検知手段3Aにより得られたデータが、設定した粒子径及び/又は粒子数の範囲内となると、警報を停止するStep5を実行する。警報を停止するStep5は、自動的に停止しても、操作者により停止してもよい。警報を停止した後は、処理液中の粒子径及び/又は粒子数を光学的検知手段3Aにより監視するStep2を実行する。
【0048】
なお、図4に示す2つのろ過装置2A及び2Bの運転の制御方法は一例であり、どのような制御を行ってもよい。例えば、ろ過装置2Aとろ過装置2Bの後段にそれぞれ光学的検知手段を設け、ろ過装置2A及びろ過装置2Bを同時に運転する制御方法では、スラッジの漏出があると判断されたろ過装置のみを一時的に停止し、停止したろ過装置の復旧を行えばよい。図4に示す制御方法のように、2つのろ過装置を交互に運転する制御方法は、ろ過処理量を一定に制御することができるので、処理液槽4の液面レベルの管理が容易であるなどの利点がある。
【0049】
また、第三の実施態様では、研削盤101の駆動軸を冷却するためのクーラント液を供給する構成として、主軸冷却タンク102を備えている。主軸冷却タンク102は、2つの槽で構成され、クーラント液が供給される槽に液温調整機H1を備え、もう一方の槽には、研削盤101にクーラント液を供給するためのポンプP3と、クーラント液量の低下等の異常を検知するための液面計S1を備えている。また、研削盤101にクーラント液を供給するための流路L7の配管の先端には、サクションフィルタFを設け、研削盤101の駆動軸への異物の混入を防止している。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のクーラント液処理システムは、クーラント液に含まれるスラッジを除去するための装置として利用することができる。例えば、金属を被削材とする金属研磨加工機械、岩石を被削材する岩石研磨加工機械等におけるクーラント液からスラッジを除去するために利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1A,1B,1C…クーラント液処理システム、2,2A,2B…ろ過装置、3…検知手段、3A…光学的検知手段、31…オイルフィーダー、4…処理液槽、5…被処理液槽、6…前処理装置、7…区画壁、8…開口、9…液採取ボックス、51…被処理水タンク、52…フロート式逆止弁、61…スラッジコンベア、62…マグネットセパレータ―、100…工作機械、101…研削盤、102…主軸冷却タンク、P1~P7…ポンプ、L1~L21…流路、S1~S4…液面計、H1~H2…液温調整機、F…サクションフィルタ、AC…エアコンプレッサー、SW…圧力スイッチ
図1
図2
図3
図4