(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/50 20240101AFI20240712BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
B60K35/50
B60R16/02 640Z
(21)【出願番号】P 2021052948
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】中村 信也
(72)【発明者】
【氏名】上田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 之宏
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207140803(CN,U)
【文献】特開平09-273945(JP,A)
【文献】特開2004-196071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20
B60R 9/00-11/06,16/00-17/02
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と第2領域とを有するプレートと、
前記プレートの表面側に配置され、かつ前記プレートの第1領域に取り付けられる表示器と、
前記プレートの裏面側に配置され、かつ前記プレートの前記第2領域に取り付けられる筐体とを備え、
前記筐体は、車両にも取付可能であり、
前記第1領域の剛性は、前記第2領域の剛性よりも高
く、
前記第1領域は、前記プレートの中央部分に配置され、
前記第2領域は、前記プレートにおける前記第1領域の外側に配置され、
前記筐体の外側縁部には、外側に向かって突出し、かつ前記車両に取付可能な取付腕が設けられ、
前記取付腕の根元にはスリットが設けられる表示装置。
【請求項2】
前記第1領域にはビード加工がなされる請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両情報を表示するための表示装置では、筐体側の取付部が車両側固定部に面同士を当接させてネジにより締結されるので、締結時あるいは車両の振動時に筐体に捻じりあるいは反りが生じ、捻じりあるいは反りによって表示器が変形する。変形による表示の視認性の低下を防ぐために、弾性変形する座金部により取付がなされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性変形する座金部により取付がなされることによって、車両側の歪みが抑制されて表示器に伝わりにくくなる。しかしながら、表示器の歪み耐性の性能が低かったり、車両側の歪みが大きかったりした場合、歪みを吸収しきれずに表示器に伝わってしまうおそれがある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両に表示器を取り付けた場合において車両側の歪みが表示器に及ぼす影響を低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の表示装置は、第1領域と第2領域とを有するプレートと、プレートの表面側に配置され、かつプレートの第1領域に取り付けられる表示器と、プレートの裏面側に配置され、かつプレートの第2領域に取り付けられる筐体とを備える。筐体は、車両にも取付可能であり、第1領域の剛性は、第2領域の剛性よりも高く、第1領域は、プレートの中央部分に配置され、第2領域は、プレートにおける第1領域の外側に配置され、筐体の外側縁部には、外側に向かって突出し、かつ車両に取付可能な取付腕が設けられ、取付腕の根元にはスリットが設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両に表示器を取り付けた場合において車両側の歪みが表示器に及ぼす影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例に係る車両の車室内の構造を示す図である。
【
図5】
図3の第1取付腕の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を具体的に説明する前に、概要を述べる。本実施例は、車両に搭載可能な表示装置に関する。表示装置は、車両のダッシュボード内に取り付けられ、走行速度を示すためのスピードメータの画像、1分あたりのエンジンの回転数を示すためのタコメータの画像(以下、「メータ画像」と総称されることもある)などを表示する。表示装置では、メータ画像を表示可能な表示器が筐体に取り付けられ、筐体が車両に対して3~4ヶ所の取付部で固定される。その際、取付部を固定する車両側の部分は必ずしも平坦ではないので、固定時に筐体が取付部から歪まされる。この歪みが表示器に伝わると表示器の輝度にムラが発生し、表示品位が悪化してしまう。
【0010】
これまでの表示装置では、表示器を裏側から保持する金属部品のプレートにおいて、筐体への取付部と表示器の取付部との間にスリットが設けられるので、筐体側の歪みがスリットにより抑制されて表示器に伝わりにくくされる。しかしながら、液晶等の種類による歪み耐性の性能が低かったり、車両への取付部の歪みが大きかったりした場合、歪みを吸収しきれず表示器に伝わってしまうおそれがある。
【0011】
そこで、本実施例は、プレートにおいて表示器を取り付ける第1領域の剛性を、プレートにおいて筐体を取り付ける第2領域の剛性よりも高くすることによって、第2領域に歪み吸収構造を備えさせる。また、筐体における車両側への取付部にスリットを設けることによって筐体にも歪み吸収構造を備えさせる。車両側での歪みが2つの歪み吸収構造により抑制されるので、歪みが表示器に伝わりにくくなる。以下の説明において、「平行」、「直交」は、完全な平行、直交だけではなく、誤差の範囲で平行、直交からずれている場合も含むものとする。また、「略」は、おおよその範囲で同一であるという意味である。
【0012】
図1は、車両1000の車室内の構造を示す。ここでは、運転席から前方を見た場合を示す。ダッシュボード500内には表示装置100が固定される。表示装置100には、メータ画像110と総称される第1メータ画像110a、第2メータ画像110bが表示される。第1メータ画像110aは例えばスピードメータの画像であり、第2メータ画像110bは例えばタコメータの画像である。ダッシュボード500の上側にはフロントガラス510が配置され、ダッシュボード500の手前側にはステアリングホイール520が配置される。そのため、運転者(図示せず)は、フロントガラス510を介して前方を見ながら、ステアリングホイール520を操作する際に、表示装置100に表示されたメータ画像110を視認可能である。
【0013】
図2は、表示装置100の構造を示す斜視図である。
図2に示すように、x軸、y軸、z軸を含む直交座標系を規定する。z軸は、表示装置100の上下方向に延びる。また、x軸、y軸、z軸のそれぞれの正の方向は、
図2における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。ここでは、x軸の正方向を「前方」、「前側」、「表側」、x軸の負方向を「後方」、「後側」、「裏側」、y軸の正方向を「右方」、「右側」、y軸の負方向を「左方」、「左側」、z軸の正方向を「上方」、「上側」、z軸の負方向を「下方」、「下側」ということもある。そのため、x軸は前後方向に延び、y軸は左右方向に延び、z軸は上下方向に延びるといえる。
【0014】
前側筐体20は、例えば樹脂により形成され、前後方向に貫通した開口を有する。前側筐体20の開口部分には、表示器30が後側から配置される。また、前側筐体20と表示器30の後側には後側筐体50が配置される。前側筐体20と後側筐体50とが前後方向に接続されることによって、内部に表示器30が配置される。y-z平面において後側筐体50の外周は外側縁部52と総称される第1外側縁部52a、第2外側縁部52b、第3外側縁部52c、第4外側縁部52d(図示せず)により囲まれる。このうち、第3外側縁部52cが下側において左右方向に延びる。
【0015】
第3外側縁部52cにおける左側の部分には下側に延びる第1取付腕54aが配置され、第3外側縁部52cにおける右側の部分には下側に延びる第2取付腕54bが配置される。第1取付腕54aと第2取付腕54bは取付腕54と総称される。第1取付腕54aに設けられた第1取付貫通孔56aと第2取付腕54bに設けられた第2取付貫通孔56bとにネジを通すことによって、取付貫通孔56は車両1000にネジ止めされる。取付貫通孔56を固定する車両1000側の部分が平坦でない場合、固定時に取付腕54が歪むことによって後側筐体50にも歪みが生じるおそれがある。
【0016】
図3は、表示装置100の内部構造を示し、
図4は、プレート40の構造を示す。これらは、
図1の表示装置100から前側筐体20を取り外して前側から見た場合を示す。表示装置100は、表示器30、プレート40、後側筐体50を含む。
【0017】
プレート40は、板形状を有し、y-z平面において矩形状の面を有する。プレート40の前側の面が第1面200であり、プレート40の後側の面が第2面202である。第1面200を表面と呼ぶ場合、第2面202は裏面と呼ばれる。プレート40の第1面200側には表示器30が配置され、プレート40の第2面202側には、後側筐体50が配置される。
【0018】
プレート40の中央部分には、矩形状の第1領域210が配置され、プレート40における第1領域210の外側には、枠形状の第2領域212が配置される。第1領域210と第2領域212は、第1境界214aから第4境界214dと総称される境界214によって区切られる。第1境界214aは左右方向に延び、第2境界214bは第1境界214aの右側端から下側に向かって延び、第3境界214cは第2境界214bの下側端から左側に向かって延び、第4境界214dは第3境界214cの左側端と第1境界214aの左側端とを結ぶ。
【0019】
プレート40は金属製の板であり、第1領域210には、ビード加工がなされることによってビード220が配置される。一方、第2領域212には、ビード加工がなされておらずビード220が配置されない。そのため、第1領域210の剛性は、第2領域212の剛性よりも高くなる。
【0020】
第1領域210には、内側貫通孔230と総称される第1内側貫通孔230aから第3内側貫通孔230cが設けられており、内側貫通孔230にネジを通すことによって、表示器30はプレート40にネジ止めされる。つまり、表示器30はプレート40の第1領域210に取り付けられる。内側貫通孔230の数は「3」に限定されない。
【0021】
第2領域212の上側かつ左側には外側を向いて突出する第1取付突起部240aが設けられ、第2領域212の上側かつ右側には外側を向いて突出する第2取付突起部240bが設けられる。第1取付突起部240aの根元には第1スリット250aが設けられ、第2取付突起部240bの根元には第2スリット250bが設けられる。第1スリット250aと第2スリット250bはスリット250と総称され、スリット250は、直線形状を有し、プレート40を前後方向に貫通する。
【0022】
また、第2領域212の下側かつ右側には外側を向いて突出する第3取付突起部240cが設けられ、第2領域212の下側かつ左側には外側を向いて突出する第4取付突起部240dが設けられる。第1取付突起部240aから第4取付突起部240dは取付突起部240と総称され、取付突起部240も第2領域212に含まれる。第2領域212には、外側貫通孔232と総称される第1外側貫通孔232aから第8外側貫通孔232hが設けられており、外側貫通孔232にネジを通すことによって、後側筐体50はプレート40にネジ止めされる。つまり、後側筐体50はプレート40の第2領域212に取り付けられる。外側貫通孔232の数は「8」に限定されない。
【0023】
後側筐体50は、例えば樹脂により形成される。前述のごとく、y-z平面において後側筐体50の外周は第1外側縁部52a、第2外側縁部52b、第3外側縁部52c、第4外側縁部52dにより囲まれる。第1外側縁部52aは、後側筐体50の上側を左右方向に延び、第2外側縁部52bは、第1外側縁部52aの右側端から下向きに延びる。また、第3外側縁部52cは、第2外側縁部52bの下側端から左向きに延び、第4外側縁部52dは、第3外側縁部52cの左側端と第1外側縁部52aの左側端とを結ぶ。
【0024】
第3外側縁部52cには外側に向かって突出する第1取付腕54aと第2取付腕54bが設けられる。前述のごとく、第1取付腕54aに設けられた第1取付貫通孔56aと第2取付腕54bに設けられた第2取付貫通孔56bがネジ止めされることによって、後側筐体50、つまり表示装置100が車両1000にも取り付けられる。
【0025】
図5は、第1取付腕54aの構造を示す斜視図である。第1取付腕54aの左側の根元には第1スリット58aが設けられ、第1取付腕54aの右側の根元には第2スリット58bが設けられる。第1スリット58aと第2スリット58bはスリット58と総称され、第3外側縁部52cから上方向に延びる形状を有し、かつ後側筐体50を前後方向に貫通する。
図3に戻る。第2取付腕54bに対しても、第1取付腕54aと同様に、第3スリット58cと第4スリット58dが設けられる。第3スリット58cと第4スリット58dもスリット58と総称される。
【0026】
取付腕54を固定する車両1000側の部分が平坦でない場合、固定時に取付腕54が歪む。取付腕54の根元にスリット58が設けられているので、取付腕54の剛性が下がり、取付腕54の歪みが後側筐体50に伝わりにくくなる。そのため、取付腕54の歪みによる後側筐体50の歪みが小さくなる。後側筐体50はプレート40の第2領域212に取り付けられているので、後側筐体50に歪みが生じた場合、その歪みはプレート40に伝えられる。プレート40において第2領域212の剛性は第1領域210の剛性よりも低いので、後側筐体50の歪みは第2領域212において吸収されやすくなる。そのため、後側筐体50の歪みによる第2領域212の歪みは第1領域210に伝わりにくくなる。さらに、第1領域210の剛性は高いので、第1領域210に取り付けられた表示器30における歪みの影響は小さくなる。その結果、表示器30の表示の輝度ムラが抑制され、表示品位が維持される。
【0027】
本実施例によれば、表示器が取り付けられるプレートの第1領域の剛性を、筐体が取り付けられるプレートの第2領域の剛性よりも高くしているので、車両に表示器を取り付けた場合において車両側の歪みを第2領域で低減できる。また、車両に表示器を取り付けた場合において車両側の歪みが第2領域で低減されるので、剛性の高い第1領域における歪みの影響を低減できる。また、剛性の高い第1領域における歪みの影響が低減されるので、表示器に及ぼす影響を低減できる。また、第1領域にビード加工がなされているので、第1領域の剛性を高くできる。また、筐体の取付腕の根元にはスリットが設けられているので、取付腕の剛性を下げることができる。また、取付腕の剛性が下げられているので、車両の歪みの影響を低減できる。
【0028】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の表示装置は、第1領域と第2領域とを有するプレートと、プレートの表面側に配置され、かつプレートの第1領域に取り付けられる表示器と、プレートの裏面側に配置され、かつプレートの第2領域に取り付けられる筐体とを備える。筐体は、車両にも取付可能であり、第1領域の剛性は、第2領域の剛性よりも高い。
【0029】
この態様によると、表示器が取り付けられるプレートの第1領域の剛性を、筐体が取り付けられるプレートの第2領域の剛性よりも高くしているので、車両に表示器を取り付けた場合において車両側の歪みが表示器に及ぼす影響を低減できる。
【0030】
第1領域にはビード加工がなされてもよい。この場合、第1領域にビード加工がなされるので、第1領域の剛性を高くできる。
【0031】
プレートの第1領域は中央部に配置され、第2領域は第1領域の外側に配置される。筐体の外側縁部には、外側に向かって突出し、かつ車両に取付可能な取付腕が設けられ、取付腕の根元にはスリットが設けられてもよい。この場合、筐体の取付腕の根元にはスリットが設けられるので、取付腕の弾性によって車両の歪みの影響を低減できる。
【0032】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0033】
20 前側筐体、 30 表示器、 40 プレート、 50 後側筐体、 52 外側縁部、 54 取付腕、 56 取付貫通孔、 58 スリット、 100 表示装置、 110 メータ画像、 200 第1面、 202 第2面、 210 第1領域、 212 第2領域、 214 境界、 220 ビード、 230 内側貫通孔、 232 外側貫通孔、 240 取付突起部、 250 スリット、 500 ダッシュボード、 510 フロントガラス、 520 ステアリングホイール、 1000 車両。