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特許7519747選択的に調整可能な光学屈折力レンズを備えた眼鏡の改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】選択的に調整可能な光学屈折力レンズを備えた眼鏡の改善
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20240712BHJP
   G02C 7/08 20060101ALI20240712BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20240712BHJP
【FI】
G02C7/06
G02C7/08
G02B1/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021081586
(22)【出願日】2021-05-13
(62)【分割の表示】P 2018544205の分割
【原出願日】2017-02-22
(65)【公開番号】P2021119418
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】1603149.4
(32)【優先日】2016-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515210673
【氏名又は名称】アドレンズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADLENS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス,ロバート エドワード
(72)【発明者】
【氏名】エディントン,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ロードス,ダニエル ポール
(72)【発明者】
【氏名】ケネリー, マーティン フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ホロックス,シモン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】カーナウ, ベンジャミン イアン
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/137179(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第02486212(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/06
G02C 7/08
G02B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのレンズと1つ以上のフレーム部とを含む眼鏡であって、前記レンズの一方又は両方は、調整可能であり、2つの重畳レンズ要素と選択的に操作可能な光学屈折力調整器とを備え、前記各レンズ要素は、前記光学屈折力調整器の調整下において前記レンズの光軸を横切る方向に互いに対してスライド可能であるとともに、矯正レンズを形成するために互いに作用し合うよう形作られたレンズ面をそれぞれ有し、屈折力が2つのレンズ要素の相対的な配置に従って変化し、前記1つ以上のフレーム部はノーズブリッジを含み、前記各レンズ要素は前記ノーズブリッジに近接する内側エッジと前記ノーズブリッジから離れて配置される外側エッジとを有し、調整可能な前記レンズの光学屈折力を増加させると、2つの前記レンズ間の中心距離が次第に減少し、最大屈折力位置において前記2つのレンズ要素のそれぞれの前記内側エッジが互いに位置合わせされていることを特徴とする眼鏡。
【請求項2】
最大屈折力位置において、前記2つのレンズ要素のそれぞれの前記内側エッジは、互いに位置合わせされていることを特徴とする、請求項に記載の眼鏡。
【請求項3】
前記1つ以上のフレーム部はノーズブリッジを含み前記各レンズ要素は前記ノーズブリッジに近接する内側エッジと前記ノーズブリッジから離れて配置される外側エッジとを有、前記各レンズ要素は、前記ノーズブリッジに向かって又は前記ノーズブリッジから離れるように互いに移動可能であり、最小屈折力位置における前記2つのレンズ要素のそれぞれの前記内側エッジ又は前記外側エッジは、互いに位置合わせされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の眼鏡。
【請求項4】
前記最小屈折力位置における前記2つのレンズ要素のそれぞれの前記外側エッジは、互いに位置合わせされていることを特徴とする、請求項に記載の眼鏡。
【請求項5】
前記2つのレンズ要素は、それぞれの内側部と外側部との間で異なる幅寸法を有することを特徴とする、請求項1からのいずれか1つに記載の眼鏡。
【請求項6】
前記2つのレンズ要素のそれぞれの内側及び外側エッジの間の幅寸法の差は、8mm以下であることを特徴とする、請求項に記載の眼鏡。
【請求項7】
前記1つ以上のフレーム部に対して前記一方のレンズ要素が移動可能となるように、且つ、前記他方のレンズ要素が移動不能となるように前記各レンズ要素が前記1つ以上のフレーム部に取り付けられていることを特徴とする、請求項1からのいずれか1つに記載の眼鏡。
【請求項8】
前記移動可能なレンズ要素は、前記レンズの光軸を横切る方向にスライド可能にフレーム本体に取り付けられた透明レンズ要素を含むことを特徴とする、請求項に記載の眼鏡。
【請求項9】
前記移動能なレンズ要素は、前記フレーム本体に着脱自在に固定され得る着脱囲い部に取り付けられる透明レンズ要素を含むことを特徴とする、請求項又はに記載の眼鏡。
【請求項10】
前記フレーム本体及び前記囲い部には、前記移動可能なレンズ要素に対して前記移動不能なレンズ要素を正確に位置決めするための相互協働構造が設けられていることを特徴とする、請求項に記載の眼鏡。
【請求項11】
前記移動不能なレンズ要素は、眼鏡着用時に着用者に対して前記移動可能なレンズ要素の前に取り付けられることを特徴とする、請求項から10のいずれか1つに記載の眼鏡。
【請求項12】
両レンズが調整可能であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1つに記載の眼鏡。
【請求項13】
前記各レンズが別個に調整可能であることを特徴とする、請求項12に記載の眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的に調整可能な光学屈折力レンズを有する眼鏡に関し、特に、前記レンズの少なくとも1つが、2つの重畳レンズ要素と選択的に操作可能な光学屈折力調整器とを備え、前記レンズ要素が、前記光学屈折力調整器の調整下で前記レンズの光軸を横切る方向に互いにスライド可能であるとともに、矯正レンズを形成するために互いに作用し合うよう形作られたレンズ面をそれぞれ有し、その屈折力が2つのレンズ要素の相対的な配置に従って変化する眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズの光軸に沿って並んで配置された2つのレンズ要素を含む可変屈折力レンズが特許文献1(Alvarez)に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。特許文献1によると、レンズ要素の各々は研磨された表面を有し、表面の1つは規則的な回転曲面であり、光軸に平行な光学的厚さの変化は、レンズ直径の2分の1未満であり、光軸zに平行な各レンズ要素の光学的厚さtは、実質的に以下の式で定義される。

Dは、レンズの厚さを最小限にするために取り除かれるプリズムの係数を表す定数であり、ゼロであってもよく、Eは光軸上のレンズの厚さを表す定数であり、x,yは、光軸を中心とする直交する直交座標系上の座標であり、tは光軸に平行な光学的厚さであり、Aはx方向へのレンズの移動に伴うレンズの屈折率の変化率を表す定数である。x方向への移動方向は、一方のレンズ要素に対しては正であり、他方のレンズ要素に対しては負であることが理解されよう。
【0003】
このような可変屈折力レンズを組み込んだ眼鏡は、特許文献2(Mukaiyamaその他)、特許文献3(Koopsその他)、特許文献4(Van der Heijdeその他)及び特許文献5(GiciLabs LLP)において明らかにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第3305294号明細書
【文献】米国特許第5644374号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0030678号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0122254号明細書
【文献】国際公開第2013/030603号
【文献】米国特許第3583790号明細書
【文献】米国特許第7338159号明細書
【文献】米国特許第7717552号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、この種の少なくとも1つの選択的に調整可能な光学屈折力レンズを含む改良された眼鏡を提供することである。
【0006】
本発明の別の態様は、調整可能なレンズ及びそのような調整可能なレンズに組み込むためのレンズ要素を製造する改良された方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、2つのレンズと1つ以上のフレーム部とを含む眼鏡が提供され、眼鏡は、前記レンズの一方又は両方が調整可能であり、2つの重畳レンズ要素と、選択的に操作可能な光学屈折力調整器とを備え、前記レンズ要素は、前記光学屈折力調整器の調整下において前記レンズの光軸を横切る方向に互いにスライド可能であるとともに、矯正レンズを形成するために互いに作用し合うよう形作られたレンズ面をそれぞれ有し、その光学屈折力が2つの前記レンズ要素の相対的な配置に従って変化し、前記レンズ要素は、前記調整可能なレンズの光学屈折力を増加させると、2つの前記レンズ間の中心距離が次第に減少するように構成されるとともに配置されている。
【0008】
一般的に、本発明の様々な態様の全てにおいて、1つ以上のフレーム部自体が、使用者の顔に眼鏡を支持するように適合され得る。いくつかの実施形態では、例えば、フレーム部はテンプルアーム(又は「テンプル」)を含み得る。しかしながら、他の実施形態では、フレーム部は、頭部バンド、ヘルメット、ゴーグル、又はレンズ部分を使用者の目の前に保持するための任意の他の装置又は部分に取り付けることができる。
【0009】
各調整可能なレンズは、光軸を定義し、2つのレンズ要素は、レンズの光軸に沿って互いに重なり合っている。1つ以上のフレーム部は、典型的にはノーズブリッジを含み、適切には、レンズ要素は、調整可能なレンズの光学屈折力を増加させると、2つのレンズ要素の中間点がノーズブリッジに向かって移動する。各調整可能なレンズは、一般的に、ノーズブリッジに向かい、且つ、ノーズブリッジから遠ざかるように延びるレンズ要素間の相対移動の軸を有し得る。装着した際、相対移動の軸は、ほぼ水平に向けられ得る。レンズのパラメータを定義するために、式(I)に関して上述したように互いに直交する軸x,y,zの同じ座標系を採用することにより、レンズの光軸をz軸とし、レンズ要素の相対移動の軸をx軸とし、y軸はx軸に垂直で且つ光軸zに垂直に指定することができる。メガネは着用されると、y軸は通常、ほぼ垂直に向けられる。
【0010】
眼鏡においては、2つのレンズの間の中心距離は、使用者の目の瞳孔間距離と実質的に一致するはずである。近くの物体を見るとき、使用者の目は収束し、瞳孔間距離(近傍PD)が遠くの物体(遠方PD)を見たときの瞳孔間距離よりも短くなる。本発明の第1の態様によれば、1つ以上の調整可能な光学屈折力レンズの2つの重畳レンズ要素は、近くの物体を見るために(例えば、読書のために)、レンズの光学屈折力が増加され、眼鏡の中心距離が徐々に減少するように有利に構成及び配置される。
【0011】
少なくとも1つの調整可能なレンズのレンズ要素は互いに対して移動可能であるので、レンズ要素の少なくとも1つは、通常、眼鏡が装着されたときに使用者の視野内において少なくとも部分的に視認可能な周縁部を有する。少なくとも1つのレンズ要素の周縁の目に見える部分は、エッジとして視認可能である。いくつかの実施形態では、両方のレンズ要素は、着用者にエッジとして少なくとも部分的に視認され得る周縁部を有し得る。あるいは、一方のレンズ要素は、少なくとも部分的に目に見える周縁部を有してもよく、他方のレンズ要素は、例えばリム又は囲い部などのように、他方のレンズ要素のエッジの少なくとも一部を隠す働きをする1つ又は複数のフレーム部によって隠された周縁部を有し得る。
【0012】
上述のように、レンズ要素がx軸に沿って互いに対して移動可能である場合、y軸に沿って延びる少なくとも1つのレンズ要素の周縁の少なくとも一部は、使用者に視認可能であり得る。特に、ノーズブリッジに近接して配置された内側エッジ及びノーズブリッジから離れて配置された外側エッジは、上述のようにエッジとして見え得る。少なくとも1つの調整可能なレンズのレンズ要素が、x軸に沿ってレンズ要素を互いに対して相対的に移動させることによってレンズの光学屈折力が増加し、眼鏡の屈折力の2つのレンズの間の中心距離が減少するように構成及び配置されることによって、少なくとも1つのレンズ要素の内側エッジがノーズブリッジに向かって徐々に移動し得る。このようにして、着用者が近くの物体を見るための少なくとも1つの調整可能なレンズの屈折力を増加させ、使用者の目が収束すると、少なくとも1つのレンズ要素の内側の可視エッジがノーズブリッジに向かって移動し、着用者の目移りを最小にする。
【0013】
いくつかの実施形態では、2つの重なり合ったレンズ要素は、それらが最大光学屈折力の位置に配置されたときに、2つのレンズ要素の内側又は外側エッジは、実質的に互いに位置合わせされ得る。いくつかの実施形態では、最大屈折力位置において、各レンズ要素の内側エッジは、実質的に互いに位置合わせされている。
【0014】
各レンズ要素は、それぞれの内側エッジ及び外側エッジの間において異なる幅寸法を有することができる。各レンズ要素の一方は、各レンズ要素の相対的な移動方向、すなわちx軸に沿って他方よりも狭くてもよい。適切には、x軸に沿った2つのレンズ要素の幅の差は約8mm以下であるべきであり、好ましくは約6mm未満、より好ましくは約4mm未満であるべきである。
【0015】
各レンズ要素は、内側エッジ及び外側エッジを有することができる。少なくとも1つの調整可能なレンズが最大屈折力の位置に配置されるとき、2つのレンズ要素の内側エッジが実質的に位置合わせされる一方、それらの外側エッジは、x軸に沿って互いに離間していてもよく、上述したように、例えば2つのレンズ要素の幅の差に等しい距離だけ移動させることができる。
【0016】
レンズが最小屈折力の位置に配置されるとき、2つのレンズ要素の内側又は外側エッジは、光軸の方向において互いに実質的に位置合わせされ得る。いくつかの実施形態では、最小屈折力の位置において、レンズ要素の外側エッジは、互いに実質的に位置合わせされる一方、それらの内側エッジは、x軸に沿った2つのレンズ要素の幅の差に等しい距離だけ離間していてもよい。
【0017】
レンズ要素の表面は、最小屈折力位置と最大屈折力位置との間で必要な光学屈折力の変化を提供するように形作られるべきである。
【0018】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの調整可能なレンズの両方のレンズ要素は、1つ以上のフレーム部に対して移動可能であり、それらは、上述のように構成及び配置されるが、レンズ要素の1つが移動可能に、他のレンズ要素が1つ以上のフレーム部に対して移動不能に、レンズ要素を1つ以上のフレーム部に取り付けてもよい。典型的には、眼鏡は、当該眼鏡が装着されたときに、使用者に対して前面と背面とを有する。審美的及び実用的な理由から、移動不能なレンズ要素は、移動可能なレンズ要素の前に取り付けることができる。移動可能なレンズ要素を移動不能なレンズ要素の後ろに取り付けることにより、移動可能なレンズ要素は、眼鏡が使用されるときにおいてより良好に保護され得る。正面から見たとき、移動可能なレンズ要素が正面に配置された場合よりも、移動不能要素部分は、レンズにとってより魅力的な「通常見た目の」外観を呈することができる。
【0019】
移動可能なレンズ要素は、レンズの光軸を横切る方向、すなわちx軸方向にスライドするようにフレーム本体にスライド自在に取り付けられた透明レンズ要素を含むことができる。移動不能なレンズ要素は、フレーム本体又は、例えば、囲い部のような別のフレーム部に取り付けられた透明レンズ要素を含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、移動不能要素部分は、フレーム本体に着脱可能に固定され得る囲い部などの着脱フレーム部に取り付けられた透明なレンズ要素を含み得る。以下に説明するように、これは、少なくとも1つの調整可能な光学屈折力レンズの清掃を容易にすることができる。
【0021】
典型的には、本発明の第1の態様による屈折力を有する眼鏡の両レンズは調整可能であってもよい。レンズは、独立して調整可能であってもよいが、いくつかの実施形態では、レンズを連結して一緒に調整し得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、一方のレンズ要素が1つ以上のフレーム部の一部を形成するフレーム本体にスライド可能に取り付けられる一方、他方のレンズ要素がフレーム本体に着脱自在に固定された着脱フレーム部に取り付けられるように、各レンズ要素が1つ以上のフレーム部に取り付けられてもよく、フレーム本体と着脱フレーム部とは、一方のレンズ要素に対して他方のレンズ要素の位置決めを正確にするために相互協働構造を備えている。
【0023】
したがって、本発明の第2の態様によれば、2つのレンズと1つ以上のフレーム部とを含む眼鏡が提供され、該眼鏡は、フレーム本体と、1つ以上の着脱フレーム部とを含み、前記レンズの少なくとも1つは、2つの重畳レンズ要素と、選択的に操作可能な光学屈折力調整器とを含み、前記レンズ要素は、前記光学屈折力調整器の調整下で前記レンズの光軸を横切る方向に互いにスライド可能であるとともに、矯正レンズを形成するために互いに作用し合うよう形作られたレンズ面をそれぞれ有し、光学屈折力が2つの前記レンズ要素の相対的な配置に従って変化し、一方のレンズ要素がフレーム本体にスライド可能に取り付けられ、他方のレンズ要素がフレーム本体に着脱可能に固定される着脱フレーム部に取り付けられるように、レンズ要素が1つ以上のフレーム部に取り付けられ、フレーム本体と着脱フレーム部とは、一方のレンズ要素に対して他方のレンズ要素を位置決めするために相互協働構造を備えている。
【0024】
好ましくは、他方のレンズ要素は、着脱フレーム部に対して着脱可能であり、着脱フレーム部に対して移動不能である。
【0025】
好適には、着脱フレーム部は、他方のレンズ要素を保持する周囲の囲い部を含み得る。
【0026】
着脱フレーム部がフレーム本体に着脱可能に固定されるように配置されることにより、レンズ要素を清掃するために必要に応じてフレーム本体から取り外すことができる。少なくとも1つの調整可能なレンズは光軸を定義し、その2つのレンズ要素は、レンズの光軸に沿って一方が他方の後ろに重なり合っていてもよい。各レンズ要素は透明であり、2つの反対面を有し、その一方はレンズの内側に配置され、他方はレンズの外側に配置される。2つのレンズ要素のそれぞれの内側レンズ面は光軸に沿って互いに対向して配置されている。着脱フレーム部をフレーム本体から取り外すことにより、2つのレンズ要素の内側レンズ面にアクセスして清掃することができる。適切には、他方のレンズ要素は、フレーム本体から完全に取り外されてもよい。
【0027】
可変屈折力レンズを提供するために、各レンズ要素の一方の面が3次以上のレンズ面で形成され、他方の面が規則的な回転曲面で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、各レンズ要素の内側レンズ面上に3次以上のレンズ面を形成することができる一方、規則的な回転曲面は、外側レンズ面に形成されてもよい。規則的な回転曲面は、球面円柱面を含み得る。あるいは、一方又は両方のレンズ要素の他方の面は、多焦点或いは累進屈折レンズ面で形成されてもよい。様々な光学的及び人間工学的理由のために、レンズ用のベースカーブを規定することが望ましい場合がある。
【0028】
有利には、レンズ要素の内面は、内面を清潔に保ち、埃などがないようにするために、疎水性、超疎水性又は疎油性コーティングで覆うことができる。一例として、PTFE又は眼科産業において周知の種類の類似の基材をこの目的のために使用することができる。
【0029】
着脱フレーム部をフレーム本体に正確に位置決めするための任意の適切な相互協働構造を使用することができるが、相互協働構造は複数の位置決めピン及びそれに対応する凹部を含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば摩擦嵌合又はスナップ嵌合による相互協働構造は、着脱フレーム部をフレーム本体に取り付けるために使用されてもよいが、他の実施形態では、相互協働構造は、フレーム本体上に着脱部を配置するためにのみ使用されてもよく、着脱部をフレーム本体に着脱可能に固定するための他の手段を設けることができる。例えば、着脱フレーム部及びフレーム本体は、摩擦嵌合又はスナップ嵌合を形成するように互いに嵌合するように形作られてもよい。いくつかの実施形態では、着脱部をフレーム本体に着脱可能に取り付けるために、1つ以上の磁石を使用し得る。例えば、1つ以上の磁石をフレーム本体に組み込むことができ、着脱フレーム部は少なくとも部分的に強磁性金属から作られてもよく、又はその逆であってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の磁石が、フレーム本体及び着脱部の両方に埋め込まれてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、他方のレンズ要素は、上述の如き囲い部のようなものである着脱フレーム部に取り付けられた透明なレンズ要素を備えていてもよい。着脱フレーム部は、一方のレンズ要素に対して他方のレンズ要素を正確に位置決めするために、対応する複数の凹部及び/又は位置決めピンが互いにフレーム本体上において協働するように構成及び配置された複数の位置決めピン及び/又は凹部が形成されてもよい。すべての位置決めピンをフレーム本体又は着脱フレーム部の一方又は他方に配置する必要はなく、すべての凹部を着脱フレーム部又はフレーム本体に形成する必要はないが、いくつかの実施形態でそうすることが便利であり得ることは理解されるであろう。
【0031】
眼鏡は、通常、着用時において使用者に対して前後が本質的に規定される。本発明の第1の態様に関して説明した理由から、他方の移動可能なレンズ要素は、有利には、1つのスライド可能なレンズ要素の前方に配置されてもよい。
【0032】
本発明の第3の態様では、1つ以上のフレーム部を有する調整可能な屈折力レンズ組立体が提供され、該屈折力レンズ組立体は、フレーム本体、2つの重畳レンズ要素及び光学屈折力調整器を備え、前記レンズ要素は、前記光学屈折力調整器の調整下で前記レンズの光軸を横切る方向に互いにスライド可能であるとともに、矯正レンズを形成するために互いに作用し合うよう形作られたレンズ面をそれぞれ有し、光学屈折力が2つの前記レンズ要素の相対的な配置に従って変化し、レンズ要素の少なくとも一方は、フレーム本体にスライド可能に取り付けられるとともに、少なくとも一方のレンズ要素の他方のレンズ要素に対する移動を案内するための、フレーム本体上の対応する構成と協働する複数のガイド構成を有する周縁部を含み、少なくとも一方のレンズ要素は、スライド軸と直交する方向にフレーム本体に対してバネ付勢されている。
【0033】
調整可能な屈折力レンズ組立体は、光軸を定義し、その2つのレンズ要素は、レンズの光軸に沿って一方が他方の後ろに重ね合わされる。レンズのパラメータを定義するために、上述したように互いに直交する軸x,y,zと同じ座標系を採用することにより、レンズの光軸をz軸とし、レンズ要素の相対移動の軸をx軸とし、y軸はx軸に垂直で且つ光軸zに垂直に指定することができる。少なくとも一方のレンズ要素は、スライド軸と一方のレンズ要素を基準面に位置合わせするための光軸とに直交する方向でフレーム本体に対してバネ付勢され得る。したがって、好適には、少なくとも一方のレンズ要素は、レンズ要素を基準に位置合わせするためにy軸にバネ付勢され、それにより、2つのレンズ要素間の相対的な移動方向に垂直な方向にレンズ要素をフレーム本体に対して正確に位置決めすることができる。このようにして、少なくとも一方のレンズ要素のフレーム本体に対するy軸上の位置を正確に調整することができる。x軸に沿ったその位置は、光学屈折力調整器によって調整される。有利には、フレーム本体に対する少なくとも一方のレンズ要素の回転公差は最小限に抑えられる。しかしながら、いくつかの実施形態では、少なくとも一方のレンズ要素は、追加的に又は代替的に、フレーム本体に対してz方向にバネ付勢されてもよい。
【0034】
少なくとも一方のレンズ要素は、それぞれのガイド構造と、フレーム本体に形成された対応する凹部があるフレーム本体との間に配置された少なくとも1つのバネによってバネ付勢され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、ガイド構造の少なくとも1つは、少なくとも一方のレンズ要素から突出するタブを備え得る。したがって、少なくとも一方のレンズ要素は、タブとそれに対応する凹部があるフレーム本体との間に配置された少なくとも1つのバネによってバネ付勢されてもよい。前記バネは、例えば圧縮バネ、片持ち梁又は板バネを含み得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、少なくともタブの2つが、少なくとも一方のレンズ要素の周縁部から互いに同じ方向の外側に突出して設けられるとともに、フレーム本体における1つ以上の対応する溝形部に受け入れられ、タブ及び1つ以上の溝形部は、フレーム本体に対するレンズ要素の移動軌跡を規定するように構成及び配置されている。移動軌跡は、x軸に沿って延び得る。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのタブは、y軸の方向に突出し得る。移動軌跡は曲線であってもよく、これは、例えば眼鏡において上述の如きベースカーブを有する光学レンズに特に適している。
【0037】
少なくとも1つの他のタブが、一方のレンズ要素の周縁部から突出するとともに、フレーム本体に形成された対応する溝形部に受け入れられ、前記他のタブは、レンズ要素をフレーム本体に対して正の向きに付勢するために、少なくとも2つのタブの方向にフレーム本体に対してバネ付勢されている。
【0038】
典型的には、レンズは、2つの対向する長辺と2つの対向する短辺とを有するほぼ四辺形の形状を有してもよく、少なくとも一方のレンズ要素は、長辺に略平行な方向にフレーム本体に対してスライドするように配置され、少なくとも2つのタブは、長辺のうちの一方に配置され、他のタブは、他方の長辺に配置されている。
【0039】
溝形部は、フレーム本体内において溝形状体又はポケットとして形成され得る。或いは、溝形部は、少なくとも一方のレンズ要素の移動を案内するためのガイド構造又はタブを案内する働きをするフレーム本体上の一連の構造として形成することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、一方のレンズ要素は、他方のレンズ要素に対して移動するためにフレーム本体にスライド可能に取り付けられる一方、他方のレンズ要素は、フレーム部に対して移動不能であるように1つ以上のフレーム部に取り付けられ得る。
【0041】
本発明の第4の態様では、本発明の第3の態様による少なくとも1つの調整可能な屈折力レンズ組立体を含む眼鏡が提供される。
【0042】
本発明の第5の態様では、レンズの光軸を横切る方向に互いに対してスライド可能であるとともに、矯正光学レンズを形成するために互いに作用し合うよう形作られたレンズ面をそれぞれ有する2つのレンズ要素を含み、屈折力が2つの前記レンズ要素の相対的な配置に従って変化する調整可能な屈折力レンズのためのレンズ要素を製造する方法を提供し、その方法は、調整可能な屈折力レンズの各レンズ要素の一方の対向するレンズ面を形成するために相互対応中央領域に形作られた2つの反対面を有する円形のレンズパックを形成する工程を含み、前記パックは、少なくとも1つの位置決め特徴部を有し、その後、位置決め特徴部を参照して前記パックを所望の瞳形状に縁取るよう構成される。
【0043】
縁取り工程の際、レンズパックは所与のフレーム用に所望の瞳形状に粉砕される。前記パックは所望の瞳形状の周縁部に形成される。縁取るために、従来のレンズ縁取り機を使用し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、パックは2つ以上の別個の位置決め特徴部を有し得る。パックを縁取ると、少なくとも1つの位置決め特徴部が瞳形状内に残り得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの位置決め特徴部が、パックの縁取りの際に取り外されるように所望の瞳形状の外側に配置され得る。
【0045】
本明細書の「位置決め特徴部」は、パックが形成されたときに当該パックに適用されるか或いはパックに組み込まれる基準マーク又は他のマーキングを意味する。いくつかの実施形態では、位置決め特徴部は、当技術分野で知られている種類の可視又は半可視マーキングであってもよい。半可視マーキングは、パックを縁取った後にレンズ要素上に残る位置決めマーキングに特に適している。
【0046】
好適には、パックの一方の面の中央領域は、例えば、上記の式(I)によって定義される表面のような3次以上のレンズ表面で形成されてもよく、他方の面の位置決めされる中央領域は、規則的な回転曲面であるレンズ面で形成されていてもよい。規則的な回転曲面は、球面円柱面を含み得る。或いは、一方又は両方のレンズ要素の他方の面は、多焦点又は累進屈折レンズ面で形成されてもよい。前記パックの中央領域から離れた、3次以上のレンズ面がパック全体の厚さを調整するように修正される1つ以上の周辺領域を一方の面が有していてもよく、例えば、それは成形に適している。
【0047】
好適には、前記パックは、適切な透明の熱可塑性材料から射出成形で形成されてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、所望の瞳形状は非円形であってもよい。したがって、パックは、円形又は非円形のレンズ要素を形成するように縁取られてもよい。
【0049】
パックは、周縁部と、周縁部から外方に突出する複数のタブとを有する所望の瞳形状を形成するために縁取られてもよい。或いは、タブは、縁取り後にレンズ要素に取り付けることができる。
【0050】
各レンズ要素は、本発明の第5の態様に従い、可変光学屈折力レンズを形成するように一方を他方の後ろに組み立てるために対を成して形成されてもよい。
【0051】
本発明の第6の態様では、光軸を横切る方向に互いに対してスライド可能であるとともに、矯正レンズを形成するために互いに作用し合うよう形作られたレンズ面をそれぞれ有する2つのレンズ要素を含み、屈折力が2つの前記レンズ要素の相対的な配置に従って変化する調整可能な屈折力レンズのためのレンズ要素を製造する方法を提供し、その方法は、本発明の第5の態様の方法に従って同じ瞳形状の2つのレンズ要素を形成することを含み、その後、光軸を横切る方向に互いに対してスライド可能となるように2つのレンズ要素を重ね合わせて組み立てるとともに、2つのレンズ要素の相対位置を調整する光学的屈折力調整器を設けるよう構成される。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明に従って製造されたレンズは、少なくとも約+0.75ジオプター、好ましくは少なくとも+2.0ジオプター、より好ましくは少なくとも+3.5ジオプターの最大屈折力変化を提供することができる。
【0053】
好都合なことに、各レンズ要素は、上述の如き瞳形状内に少なくとも1つの位置決め特徴部を有することができ、この方法は、瞳形状内の位置決め特徴部を使用してレンズ要素を互いに位置決めすることを含む。
【0054】
本発明の第7の態様では、本発明の第6の態様による少なくとも1つの調整可能な光学屈折力レンズを含む眼鏡を形成し、且つ、眼鏡を着用者の顔に装着するために、少なくとも1つの調整可能なレンズを、第2レンズと、ノーズブリッジ及びテンプルアームを含む1つ以上のフレーム部とで組み立てる方法が提供される。いくつかの実施形態では、第2レンズも調整可能であってもよい。
【0055】
本発明はまた、本発明の第6の態様の方法に従って形成されたレンズ及び本発明の第7の態様の方法に従って形成された眼鏡を含む。
【0056】
以下は、本発明の実施形態の添付図面の参照であり、一例としてのみの説明である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、本発明に係る2つの可変屈折力レンズを含む眼鏡を正面上方の一方の側方から見た斜視図であり、z軸がレンズの光軸に平行に指定された各レンズのパラメータを定義するための互いに直交する軸x,y,zの直交座標系を示す。
図2図2は、図1の眼鏡の背面図である。
図3図3は、図2のIII-III線における部分断面図である。
図4図4は、図3の一部を拡大して示した図であり、レンズのz軸に沿って一方が他方の前面に配置され、着脱フレーム部内に取り付けられた固定式の前側レンズ要素とスライド可能な後側レンズ要素とを含む可変屈折力レンズの左側を示す。
図5図5は、可変屈折力レンズを分解してその構成部品を示した状態の図1の眼鏡の上方で且つ左側からの正面図である。
図6図6は、図1の眼鏡を上方の一側方から見た背面図であり、図5に対応して同様に左側の可変屈折力レンズを分解して示す。
図7図7は、図1の眼鏡を下側で且つ側方から見た正面図であり、左側の可変屈折力レンズの前側レンズ要素を保持する着脱フレーム部と、フレーム本体に対してx軸に沿った後側レンズ要素の移動を案内するための後側レンズ要素の突出タブを示すようにフレーム本体から展開された後側レンズ要素とを示す。
図8図8は、図7の一部拡大図であり、後側レンズ要素の上部内側タブと、フレーム本体において後側レンズ要素をフレーム本体に対してバネ付勢するために板バネが内部に配置された対応する溝形部とを示す。
図9図9は、図7の別の部分の拡大図であり、後側レンズ要素の上部外側タブと、フレーム本体内の対応する溝形部と、フレーム本体の後側レンズ要素にバネ付勢を加えるためのバネとを示す。
図10図10は、図1の眼鏡の下側で且つ一側方から見た別の正面図であり、左側の可変屈折力レンズの前側レンズ要素を支持する取り外された着脱フレーム部と、後側レンズ要素の動きを案内するためのフレーム本体の対応する溝形部における後側レンズ要素のタブの係合を示すようにフレーム本体に取り付けられた後側レンズ要素とを示す。
図11図11は、図10の一部拡大図であり、対応する溝形部に配置された後側レンズ要素の上部内側タブを示す。
図12図12は、図10の別の部分の拡大図であり、フレーム本体の対応する溝形部に配置された後側レンズ要素の上部外側タブを示す。
図13図13は、左側レンズの前側レンズ要素を取り外した状態を示す図1の眼鏡を上から見た側面図である。
図14図14は、図13の一部拡大図であり、対応する溝形部内にスライド可能に配置された左側レンズにおける後側レンズ要素の上部外側タブを示す。
図15図15は、左側レンズの前側レンズ要素を取り外した状態で、且つ、図13に対応するが、後側レンズ要素がフレーム本体から展開されている状態を示す図1の眼鏡を上から見た別の側面図である。
図16図16は、図15の一部拡大図であり、左側レンズの後側レンズ要素における上部外側タブとそれに対応する溝形部とがどのように構成されているかを示す。
図17図17は、本発明によるレンズ要素を製造するための円形パックを示しており、パックから切り取ることができる様々な中心の複数の異なるレンズ要素の輪郭を示す。
図18図18は、本発明によるレンズ要素を製造するための円形パックを示し、パックから切り取ることができる様々な眼鏡の複数の異なるレンズ要素の輪郭を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、本発明における眼鏡1を示す。眼鏡1は、2つのレンズ11,12と、レンズ11,12が着用者(図示せず)の目の前に配置されるようにレンズ11,12を保持するとともに着用者の顔に眼鏡を支持するための複数のフレーム部とを備える。図1に示す眼鏡1のフレーム部は、2つのテンプルアーム13,14と、ノーズパッド(図示せず)が取り付けられ得るノーズブリッジ15とを含む限りにおいては従来のものである。レンズ11,12、テンプルアーム13,14及びノーズブリッジ15の形状は、本発明にとって重要ではなく、所望に応じて変更することができる。例えば、いくつかの実施形態では、レンズ11,12は、ヘルメット又はゴーグルに一体化することができ、或いは、フレーム部分をヘッドバンドやレンズ11,12を着用者の目の前に保持するためのものに接続することができる。本実施形態では、非円形レンズ11,12が用いられている。
【0059】
それらは人によって着用されるように設計されているので、眼鏡1は、固有の向きを有し、右側及び左側は、図1において文字L及びRによってそれぞれ示され、表及び裏は、文字F及びBによって示され、眼鏡の左側及び右側のそれぞれにおける上部及び下部は、ノーズブリッジ15に対する内側領域及び外側領域を示す。左右のテンプルアーム13,14及び左右のレンズ11,12は、互いに反転対称性を有することが理解されよう。
【0060】
レンズ11,12の各々は、以下でより詳細に説明するように、可変屈折力レンズである。本実施形態では、両レンズは可変屈折力レンズであるが、本発明のいくつかの他の実施形態では、一方のレンズのみが可変屈折力を有する一方、他方は、眼鏡の使用又は意図された用途に応じて、固定された光学屈折力を有してもよいし、光学屈折力を有しなくてもよい。例えば、単一の可変屈折力レンズを含む眼鏡は、患者の眼のうちの1つの光学屈折力が回復期間中に変動し得る眼科手術後の状況において有用であり得る。図示された実施形態では、レンズ11,12は独立して調整可能であるが、いくつかの実施形態では、レンズ11,12が一緒に調整されるように関連付けられてもよいことが想定され得る。
【0061】
各レンズ11,12は光軸を有する。互いに直交する軸x,y,zの直交座標系は、レンズのパラメータを記述するのに便利な方法である。図1に示すように、z軸は光軸に平行に指定されている。x軸及びy軸の向きは、以下でより詳細に説明される。
【0062】
図5に最も良く示されているように、各可変屈折力レンズ11,12は、2つのレンズ要素、すなわち後側レンズ要素21及び前側レンズ要素22を含む。後側レンズ要素21及び前側レンズ要素22は、図4及び図5に示すように、一方が他方の後ろに配置された状態で並んで配置されている。前側レンズ要素22は光学的に透明であり、それぞれ前面33及び後面34を有し、以下でより詳細に説明するように、周縁囲い部31を含む着脱フレーム部内に強固に固定される。後側レンズ要素21も光学的に透明であり、前面40及び後面44と、複数の突出タブ45~48とを有する。前側レンズ要素22及び後側レンズ要素21は、眼のために好適な光学的及び物理的品質として適切な合成熱可塑性樹脂材料から自由に形成することができる。
【0063】
後側レンズ要素21は、ノーズブリッジ15と一体的に形成されたそれぞれのフレーム本体51内にスライド自在に取り付けられている。したがって、本実施形態の眼鏡1では、2つのレンズ11,12のフレーム本体51がノーズブリッジ15を含む一体物として形成されるが、異なる実施形態では、各レンズ11,12のフレーム本体51を別々に形成し、次いでノーズブリッジ15に接合することができる。さらに、他の実施形態(図示せず)では、前側及び後側レンズ要素22,21の両方をフレーム本体内に取り付けてもよく、囲い部31のような着脱フレーム部が不要になる。
【0064】
図5及び図6に最も良く示されているように、後側レンズ要素21は、略長方形状のものであり、上下の長辺エッジ41,43と、内側及び外側の短辺エッジ49,50とを有する。これらの図から分かるように、後側レンズ要素21の側面は直線状ではなく、眼用レンズのために従来の方法で湾曲している。長辺エッジと短辺エッジとの間の角部もまた丸みを帯びている。後側レンズ要素21の側縁は、その周縁を定義する。
【0065】
後側レンズ要素21の周縁部から突出するのは、ノーズブリッジ15に近接する上部の長辺エッジ41から上方に突出する上部内側タブ45であり、下側長辺エッジ43に従属する下部内側タブ46及び下部外側タブ47と、上側長辺エッジ41に隣接する後側レンズ要素21の外側エッジ50から外側に突出する上部外側タブ48とを含む。図6図14及び図15に最もよく示されているように、上部外側タブ48は、下方に詳細に記載されているように上向きの支持面64を規定する凹部62が形成された後面61と、ピニオン70との係合のためのラックを形成する複数の歯66が形成された上面65とを有するラック延出部60を備えて製造される。
【0066】
フレーム本体51は、前面81と後面82とを有し、後側レンズ要素21の形状に対応する形状をなし、上部及び下部52,53と内側部及び外側部54,55とを備えている。上部52と下部53との間のフレーム本体51の高さは、その上側エッジ41と下側エッジ43との間の後側レンズ要素21の高さとほぼ同じであり、後側レンズ要素21をフレーム本体51に対して左右にスライドさせるために、内側部及び外側部54,55の間のフレーム本体51の幅は、内側エッジ及び外側エッジ49,50の間の後側レンズ要素21の幅よりも広い。フレーム本体51の上部52には、図8及び図1に最もよく示されているように、後側レンズ要素21の上部内側タブ45を受け入れるための、上方に延びる上部内側溝形部56が形成されている。上部内側溝形部56は、後側レンズ要素21がフレーム本体51に対してスライドすることができるような寸法にされている。上部内側溝形部56は、図8に最もよく示されるように、後側レンズ要素21の上部内側タブ45と係合してこれに押しつける板バネ85を収容する。
【0067】
フレーム本体51の下部53には、図5に最も良く示されているように、下部内側タブ46及び下部外側タブ47をそれぞれ受け入れる下部内側溝形部57及び下部外側溝形部58が形成されている。下部内側溝形部57及び下部外側溝形部58は、タブ46,47がその中をスライドすることを可能にする寸法にされている。フレーム本体51の下部53、後側レンズ要素21の下側エッジ43及び内側及び外側下部タブ46,47は、後側レンズ要素21がフレーム本体に嵌め込まれる際、後側レンズ要素21の下側エッジ43がフレーム本体51の下部53に着座し、溝形部57,58が後側レンズ要素21のフレーム本体51に対するスライド移動を案内するように構成されている。
【0068】
後側レンズ要素21の上部外側タブ48は、上部52と外側部55との間の角部においてフレーム本体51の前面81に形成された溝形部59に受け入れられる(図5参照)。フレーム本体51の前面81における溝形部59内には、垂下板バネ84を支持するための2つのスロットが形成された前方に突出するリブ83が形成されている。後側レンズ要素21の上部外側タブ48が上部外側溝形部59に受け入れられた状態において、リブ83は、フレーム本体51に対する後側レンズ要素21のスライド移動を案内するためのラック延出部60に形成された凹部62に収容され、板バネ84は、ラック延出部60の上向きの支持面64に係合するとともに下向きに押し下げる。
【0069】
後側レンズ要素21を下向きに押す板バネ84,85の効果は、後側レンズ要素をフレーム本体51の下部53に向かって下方に押し付けることであり、その結果、下側エッジ43がフレーム本体51の下部53にしっかりと着座し、これは、フレーム本体51に対してレンズ要素21の位置を正確に位置決めするための基準にレンズ12の後側レンズ要素21を位置決めするのに役立つ。本実施形態では、スライド可能な後側レンズ要素21は、y軸の方向の基準に位置合わせされている。本発明の本質はまた、後側レンズ要素21を同様に、又はy軸の代わりにz軸の方向にフレーム本体51に対してバネ付勢するように当て嵌められてもよいことが理解されよう。
【0070】
したがって、後側レンズ要素21は、光軸を横切る方向にフレーム本体51内で左右にスライド移動することができ、その移動は、対応する溝形部56~59におけるタブ45~48の係合によって案内される。後側レンズ要素21の移動軸はx軸で示されている。上述したように、z軸は、レンズ12の光軸と平行に定義される。y軸は、x軸及びz軸の両方に垂直であり、眼鏡が装着される際の眼鏡1の一般的な向きに関する垂直軸にほぼ対応する。板バネ84,85は、後側レンズ要素21をy軸方向に押圧するように作用する。実際には、後側レンズ要素21は、以下で詳細に説明するように湾曲しており、したがって、タブ45~48及び対応する溝形部56~59によって規定されるスライド移動の軌跡も湾曲している。
【0071】
ラック延出部60の歯66は、図6に最もよく示されているように、フレーム本体51の後面82に形成された適切形成凹部71内に取り付けられたピニオン70と係合する。ピニオン70は、凹部71内でフレーム本体51に形成された孔74内に軸支されてピニオン70の回転を可能にする短軸73を備えている。また、ピニオン70には、当該ピニオン70よりも僅かに大きな外径を有するサムホイール75が取り付けられている。図2に示すように、サムホイール75は、フレーム本体51の上部52の上方に突出しているので、手動で回転させるために着用者の指先に係合させることができる。サムホイール75の回転は対応するピニオン70の回転を引き起こし、当該ピニオン70はラック延出部60の歯66と係合しているので、フレーム本体51に対する後側レンズ要素21の側方移動を引き起こす。このようにサムホイール75は、以下により詳細に説明するように、レンズ12の屈折力を調整するために着用者によって使用され得る。各図から分かるように、各レンズ11,12は、2つのレンズ11,12を独立して調整するためのサムホイール75を含むそれ自体の調整機構を有するが、上述したように、いくつかの実施形態では、両方のレンズ11,12を同時に調整するために単一の調整機構(図示せず)を設けることができる。
【0072】
上述したように、本実施形態では、前側レンズ要素22は、レンズ囲い部31を含む着脱フレーム部内に固定して取り付けられる。レンズ囲い部31は、前面35と後面36とを有する。レンズ囲い部31の後面36は、レンズ囲い部31の上部、下部及び外側部の周りに延びるスカート部37を含む。レンズ囲い部31は、当該レンズ囲い部31をレンズ本体51に着脱可能に取り付けるために、レンズ本体51と嵌合する形状とされている。取り付けられる際、スカート部37は、レンズ本体51の上部、下部、外側部52,53,55に跨って延びる。レンズ囲い部31は、フレーム本体51に形成された上部外側溝形部59の上に延びるとともにこれを閉鎖する上部外側ショルダー部38と、ピニオン軸73を収容する孔74の前面と、ノーズブリッジ15とフレーム本体51との間に形成された対応形状段部17に当接するように構成された上部内側ショルダー部39とを含む。フレーム本体51上の対応する構成とのスカート部37及び上部外側ショルダー部38、上部内側ショルダー部39の相互係合は、レンズ囲い部31をフレーム本体51に対して位置決めする働きをする。レンズ囲い部31は、摩擦によって位置が保持されるように、フレーム本体51に密着するように寸法決めされている。望むのであれば、安全性を高めるために、相互係合スナップフィッティング又は戻り止めが、レンズ囲い部31及びフレーム本体51に設けられてもよい。
【0073】
前側レンズ要素22を後側レンズ要素21に対して正確に配置するために、レンズ囲い部31の後面36及びフレーム本体51の前面81は、相互係合構造で形成される。特に、レンズ囲い部31の後面36及びフレーム本体51の前面81には、相互係合する位置決めピン90と、該位置決めピン90が受け入れられる対応する凹部92とが形成されている。位置決めピン90の全てがレンズ囲い部31又はフレーム本体51のいずれか一方に形成されていてもよいし、レンズ囲い部31に1つ以上の位置決めピン90を設け、フレーム本体51に1つ以上の位置決めピン90を設けてもよい。本実施形態では、2つの位置決めピン90がフレーム本体51の前面81に設けられ、1つの位置決めピン90(図示せず)がフレーム本体51の内側部54の図5に示す凹部92に係合するためにレンズ囲い部31の後面36に設けられている。位置決めピン90がレンズ囲い部31又はフレーム本体51に設けられているかどうかにかかわらず、少なくとも2つ、好ましくは3つ以上の位置決めピン90を設ける必要がある。
【0074】
したがって、位置決めピン90及び凹部92は、フレーム本体51に対して、つまり後側レンズ要素21に対して前側レンズ要素22を正確に位置決めする。フレーム本体51に取り付けられると、前側レンズ要素22は、後側レンズ要素21に対して移動不能になる。レンズ囲い部31が取り外し可能であることにより、清掃のために後側レンズ要素21の前面40及び前側レンズ要素22の後面34にアクセスできる。いくつかの実施形態では、後側レンズ要素21の少なくとも前面40及び前側レンズ要素22の後面34は、レンズ表面を埃や汚れに対して保護するための眼科産業において知られている種類の疎水性、超疎水性又は疎油性のコーティングを施すことができる。例えば、PTFEをこの目的のために使用することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、着脱可能なレンズ囲い部31を省略し、前側レンズ要素22を移動可能な後側レンズ要素21の前でフレーム本体51に不動に取り付けることができる。
【0076】
前側及び後側レンズ要素22,21は、可変光学屈折力レンズ12を形成する。これを達成するために、前側及び後側レンズ要素22,21の厚さは、2つのレンズ要素22,21の相対的な配置に応じて異なるレンズ屈折力を与える協働するレンズ面を提供するように調整される。一般的に、各レンズ要素22の一方の面33,34及び各レンズ要素21の一方の面40,44は、3次以上の面で形成される一方、各レンズ要素22の他方の面34,33及び各レンズ要素21の他方の面44,40は、規則的な回転曲面、例えば球面円筒面に形成されるか、或いは、別の従来の瞳用レンズ表面、例えば多焦点又は累進屈折レンズ面で形成される。後側レンズ要素21をフレーム本体51に対してスライドさせることによってレンズ12が調整されるように、或いは、着用者が眼を左右に動かすとき、眼とレンズ12との間の距離が実質的に一定のままになるように、2つのレンズ要素22,21にとって、前側レンズ要素22の前面33が凸面で、且つ、後側レンズ要素21の後面44が凹面であるベースカーブを定義することが望ましい場合がある。具体的には、タブ45~48及びそれに対応する溝形部56~59によって規定されるスライド移動の軌跡は、以下の式によって定義されるレンズの厚みtの2次のベースカーブ成分と同じであってもよい。
【0077】
本実施形態では、後側レンズ要素21の前面40と、前側レンズ要素22の後面34とは、z軸に平行なレンズ要素21,22の厚さtによって規定されるように、次の式に従って立方体の表面が与えられる。

Dは、レンズの厚さを最小限にするために取り除かれるプリズムの係数を表す定数であり、ゼロであってもよく、Eは光軸上でのレンズ要素の厚さを表す定数であり、x,y,zは上述のであり、Aは、x方向における相対的なレンズ要素の移動によるレンズ屈折力変化の割合を表す定数であり、レンズ要素22,21の一方に対して正であり、レンズ要素22,21の他方に対して負である。他の適切な3次以上の表面は、特許文献1、特許文献6(Baker)、特許文献7(Spivey)、特許文献8(Spivey)、特許文献2及び特許文献5に記載されている。
【0078】
本発明は、使用されるレンズ表面の精密な形に限定されず、ただ可変屈折力レンズを形成するためにレンズ要素22,21が協働すべきであり、その屈折力は、調整機構60,70の調整下においてレンズ11,12の光軸を横切る方向における2つのレンズ要素22,21の相対的な移動により調整し得る。
【0079】
しかしながら、本発明の一態様によれば、後側レンズ要素21がフレーム本体51に対してx軸上で内側に移動するにつれて、レンズ12の光学的屈折力が次第に増加するように、後側レンズ要素21と前側レンズ要素22とが構成され、配置されることが重要である。すなわち、眼鏡1の左側のレンズ12に対応するサムホイール75を後方から見て時計回りに回転させると(図2参照)、後側レンズ要素21は、レンズ12の屈折力を増加させるようにノーズブリッジ15に向かって内側に移動する。後側レンズ要素21がフレーム本体51に対してx軸上において外方に移動すると、レンズ12の光学的屈折力は減少する(右側のレンズ11については、関連するサムホイール75を反時計回りに回転させて、そのレンズの後方のレンズ要素を内側に動かしてその屈折力を増加させる)。
【0080】
上述したように、本発明のこの実施形態では、レンズ12の後側レンズ要素21の側方へのスライド移動を可能にするために、後側レンズ要素21における内側エッジ49と外側エッジ50の間の幅寸法は、フレーム本体51の内側部54と外側部55との間の幅よりも小さい。これは、図2に最もよく示されており、内側隙間101が後側レンズ要素21の内側エッジ49とフレーム本体51の内側部54との間に見られ、外側隙間102が後側レンズ要素21の外側エッジ50とフレーム本体51の外側部55との間に見られる。サムホイール75及びラックアンドピニオン機構60,70の調整下において、後側レンズ要素21が左右に移動するにつれて、内側隙間101及び外側隙間102の寸法が変化する。本実施形態によれば、内側隙間101の寸法は、レンズ12がその最大屈折力位置にあるときで、且つ、後側レンズ要素21がノーズブリッジ15に向かって完全に内方に移動するときに最小にされるべきである。これは、着用者が近くの物体、例えばコンピュータ画面を見るために又は読むためにレンズの屈折力を増加させるにつれて、目を自然に収束させて瞳孔間距離を減少させるためである。
【0081】
後側レンズ要素21の内側及び外側エッジ49,50は、後側レンズ要素21の少なくともいくつかの位置で着用者に視認可能であり、これらのエッジは出来るだけ避けられる限り、着用者の気を散らすべきものではないことが望ましい。本実施形態では、前側レンズ要素22の周囲はレンズ囲い部31によって隠される。本発明によれば、後側レンズ要素21における内側エッジ49と外側エッジ50との間の幅、及び、フレーム本体51における内側部54と外側部55との間の前側レンズ要素22の幅、すなわちx軸に沿った幅の差は、約8mm以下、好ましくは6mm未満、より好ましくは4mm未満にすべきである。本実施形態の最大屈折力位置では、後側レンズ要素21の内側エッジ49は、フレーム本体51の内側部54に位置合わせされ、内側隙間101の幅は、ゼロ又は限りなくゼロに近くなる一方、この位置における外側隙間102の幅は、上述したように、約8mm及び好ましくはそれ以下である。最小屈折力位置では、後側レンズ要素21の外側エッジ50は、フレーム本体51の外側部55に位置合わせされ、外側隙間102の幅は、ゼロ又は限りなくゼロに近くなる一方、内側隙間101の幅は、上述したように、約8mm及び好ましくはそれ以下である。
【0082】
他の実施形態では、最大屈折力位置において、後側レンズ要素21の外側エッジ50がフレーム本体の外側部55と位置合わせされてもよいことが理解されよう。さらに他の実施形態では、最小屈折力位置において、後側レンズ要素21の内側エッジ49がフレーム本体51の内側部54と位置合わせされてもよい。これらの他の実施形態では、例えば、フレーム本体51内に形成された凹部によって関連する側部エッジ49,50が受け入れられ、視界から隠れるようにされるように、フレーム本体51は、最大屈折力位置における後側レンズ要素21の内側エッジ49、及び/又は、最小屈折力位置における後側レンズ要素21の外側エッジ50を隠すように構成されてもよい。
【0083】
本発明はまた、レンズ12の前側レンズ要素22及び後側レンズ要素21を製造するための改良された方法を提供する。
【0084】
本発明によれば、図17及び図18に示すように、前側レンズ要素22及び後側レンズ要素21のそれぞれが、不均一な厚さの円形パック200の形態で最初に射出成形される。パックは2つの反対面201,202で形成され、円形の周縁部205を有する。一方の面201は、中央領域204において、パック200の中央を中心とする上記で詳細に説明した種類のものである3次以上の面で形成される。例えば、一方の面201は、上記の式(I)で表される面で形成されてもよい。他方の面202は、例えば、球及び/又は筒状構成要素を含む球面円柱面のような規則的な回転曲面である表面が形成されている。他方の面202に形成された規則的な回転曲面は、3次以上の面が形成された一方の面201上の中央領域204と位置合わせされるように、パック200の中央領域に限定されてもよい。いくつかの実施形態では、他方の面202は、多焦点又は累進屈折レンズ面で形成されてもよい。パック200の一方の面201に形成されたレンズ面の形状は、選択された三次以上の関数に従って、2つの面201,202の間のパック200の厚さによって定義されることが理解されよう。
【0085】
パック200の中央領域204からその周縁部205に向かって、パックの厚さは、ある領域では非常に大きくなり、他の領域では非常に薄くなり、3次以上の関数の動作の結果として作ることは潜在的に困難であり、不可能でさえある。したがって、周縁部205に向かう周方向に間隔をあけた周辺領域206において、パック200は、さもなければ3次以上の関数によって示唆されるよりも大きく又は小さく調整された厚さで形成され、3次以上の表面は修正された厚さの周辺領域206に「混合」される。
【0086】
金型から取り出された後、円形パック200には、当該パック200の物理的形状に対する3次以上の表面の位置を正確に見つけるために、一方又は両方の表面201,202上の位置合わせ特徴部としての1つ以上の基準マークF1,F2がマークされ、必要に応じて、後でより詳細に説明するように、前側及び後側レンズ要素の位置決めのために使用される。
【0087】
その後、パック200を縁取りして、所望の形状の非円形レンズ要素22,21を所要の中心に形成し得る。パック200に対する3次以上の面の位置が基準マークF1,F2によって特定される限り、円形パック200は、適切な工具によって保持され、その周囲を所要の中心で所望の形状にトリミングすることによって縁取りがなされる。図17は、同一の瞳形状で異なる中心のレンズc1,c2,c3の位置を示す一方、図18は、同一のパック200から全て切り取ることができる異なる瞳形状s1,s2,s3のレンズの位置を示している。周辺領域206の混合部分は、最終的なレンズ要素22,21の中に入ることはない。基準マークF1は瞳形状の外側にはみ出しているので、パック200を縁取りするときに取り除かれるが、基準マークF2は瞳形状の内側にあり、取り除かれない。基準マークF2は、当技術分野で知られている種類の可視又は半可視のマーキングであってもよい。
【0088】
次いで、所望であれば、上述の如き疎水性、超疎水性又は疎油性のコーティングを含む、当該分野で公知の種類の1つ以上の光学コーティングで、パック200の一方又は両方の表面201,202を処理することができる。
【0089】
レンズ要素22,21は、当該レンズ要素22,21を一方の後ろに他方を並べて組み立てて上述の如き可変光学屈折力レンズ11,12を形成するために、同じ瞳形状及び組立てのためのセンタリングの一致するペアで製造されるべきであり、その結果として、光学z軸を横切る方向に互いに対してスライド可能であり、2つのレンズ要素の相対的配置を調整するための適切な調整機構60,70を提供する。パック200を縁取った後に瞳形状に残る基準マークF2は、フレーム内の前側レンズ要素22及び後側レンズ要素21を互いに正確に位置合わせするために使用され得る。
【0090】
1つ又は両方のレンズ要素22,21(例えば、上述の種類の後側レンズ要素21)は、外側に突出する周縁タブ45~48を有するようにパック200から切り取ることができる。或いは、周縁タブ45~48は、例えば結合又は溶接により、パック200から切り出された後のレンズ要素21に取り付けられてもよい。レンズ表面を定義するために使用される3次以上の関数の正確な形態に応じて、本発明の方法に従って製造されるレンズは、少なくとも+0.75ジオプター、いくつかの実施形態では、最大+2.0ジオプター又は+3.5ジオプターの光学屈折力の変化を提供することができる。
【0091】
本発明によるレンズ要素22,21を有するレンズ11,12を製造する方法の利点は、同じ形状のパック200から複数の異なる瞳形状及び中心のレンズ要素を形成することができることである。これにより、レンズ要素の製造が大幅に簡略化され、パック200の在庫が作られ、その後、縁取り加工によって注文が完了する。

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