(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/51 20060101AFI20240712BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/49 311Z
A61F13/49 312Z
(21)【出願番号】P 2018244832
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2020-12-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
【合議体】
【審判長】金丸 治之
【審判官】神山 茂樹
【審判官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-210234(JP,A)
【文献】特開2013-102887(JP,A)
【文献】特開2012-228307(JP,A)
【文献】国際公開第2004/054482(WO,A1)
【文献】特開2016-42918(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099510(WO,A1)
【文献】特開2009-125087(JP,A)
【文献】特開2013-304(JP,A)
【文献】特開2016-42917(JP,A)
【文献】特開2018-114131(JP,A)
【文献】特開2018-196573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹部を覆う前身頃領域と、着用者の背部を覆う後身頃領域と、前記前身頃領域及び前記後身頃領域の間に位置すると共に吸収体が配置される股下領域が連設された吸収性物品であって、
前記前身頃領域及び前記後身頃領域のうち、着用者の胴部を挿通可能な胴開口部において、少なくとも着用者の腰骨に対応する部位から胴回り方向に沿って延設される複数の伸縮部材を含み、前記胴開口部を胴回り方向に収縮させる胴開口部下側収縮部と、
前記胴開口部の開口部端縁と前記胴開口部下側収縮部との間において胴回り方向に沿って延設される複数の伸縮部材を含み、前記胴開口部を胴回り方向に収縮させる胴開口部上側収縮部と、を備え、
前記胴開口部下側収縮部が有する複数の伸縮部材同士の間隔は、前記胴開口部上側収縮部が有する複数の伸縮部材同士の間隔よりも大き
く、
前記胴開口部上側収縮部と前記胴開口部下側収縮部における肌対向面を覆うように積層配置される通気路形成シートを更に備え、
前記通気路形成シートは、前記肌対向面に対して胴回り方向に沿って間欠的に大小交互の間隔で複数設けられる接合部によって接合されており、前記胴開口部上側収縮部と前記胴開口部下側収縮部の収縮によって前記接合部同士の間に位置する非接合領域が撓み、波型に変形することで前記胴開口部上側収縮部および前記胴開口部下側収縮部と、前記通気路形成シートの前記非接合領域によって囲まれる第1通気路を形成し、前記通気路形成シートの肌対向面側に、前記通気路形成シートと着用者の肌との間に形成される隙間である第2通気路を形成する、
吸収性物品。
【請求項2】
前記胴開口部下側収縮部が有する複数の伸縮部材同士の間隔は、6.5mm以上12mm以下である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記胴開口部下側収縮部は、前記開口部端縁から20mm以上40mm以下の範囲内を含む領域に設けられている、
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記開口部端縁と前記胴開口部上側収縮部との間において前記開口部端縁に沿って胴回り方向に延設される複数の伸縮部材を含み、前記胴開口部を胴回り方向に収縮させる開口部端縁側収縮部を更に備え、
前記開口部端縁側収縮部が有する複数の伸縮部材同士の間隔は、前記胴開口部上側収縮部が有する複数の伸縮部材同士の間隔よりも大きい、
請求項1から
3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記胴開口部上側収縮部が有する伸縮部材を、前記胴開口部を形成する部分に内包したカバーシートを備え、
前記カバーシートは、前記開口部端縁の部分で折り返されており、折り返し部分の折り目に前記カバーシートを貫通する連続的な通気孔を有する、
請求項1から
4の何れか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品においては、尿や体液等の排泄液を吸収する吸収体を備えている。この種の吸収体として、例えばパルプや高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)等が用いられている。
【0003】
そして、吸収性物品の着用時においては、吸収体に吸収された尿や体液等から発生する湿気が吸収性物品の内部空間(着用者の肌と吸収性物品の肌当接面との間に形成される空間)に滞留しやすく、この湿気は肌かぶれ等のスキントラブルを引き起こす要因となり、また、蒸れ・べたつき等の不快感を生じさせる要因となるため、好ましくない。
【0004】
そこで、吸収性物品の着用時に、吸収性物品の内部空間に滞留する湿気を外部に排出させるために、吸収性物品の通気性を向上させるための種々の提案がなされている(例えば、特許文献1等を参照)。例えば、弾性部材により外層シート及び内層シートをウエスト周方向に収縮させてウエスト回りに襞を形成し、襞と着用者の肌との隙間から湿気を外部に排出させるようにした使い捨ておむつが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、吸収性物品の通気性を向上させるための各種提案はなされているが、より通気性の高い吸収性物品の提供が望まれているのが実情である。そこで、本発明は、従来に比べて通気性が良好な吸収性物品を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸収性物品は、着用者の腹部を覆う前身頃領域と、着用者の背部を覆う後身頃領域と、前身頃領域及び後身頃領域の間に位置すると共に吸収体が配置される股下領域が連設された吸収性物品であって、前身頃領域及び後身頃領域のうち、着用者の胴部を挿通可能な胴開口部において、少なくとも着用者の腰骨に対応する部位から胴回り方向に沿って延設される複数の伸縮部材を含み、胴開口部を胴回り方向に収縮させる胴開口部下側収縮部と、胴開口部の開口部端縁と胴開口部下側収縮部との間において胴回り方向に沿って延設される複数の伸縮部材を含み、胴開口部を胴回り方向に収縮させる胴開口部上側収縮部と、を備え、胴開口部下側収縮部が有する複数の伸縮部材同士の間隔は、胴開口部上側収縮部が有する複数の伸縮部材同士の間隔よりも大きい。
【0008】
なお、胴開口部下側収縮部が有する複数の伸縮部材同士の間隔は、6.5mm以上12mm以下であってもよい。
【0009】
また、胴開口部下側収縮部は、開口部端縁から20mm以上40mm以下の範囲内を含む領域に設けられていてもよい。
【0010】
また、胴開口部上側収縮部と胴開口部下側収縮部における肌対向面を覆うように積層配
置される通気路形成シートを更に備え、通気路形成シートは、肌対向面に対して胴回り方向に沿って間欠的に複数設けられる接合部によって接合されており、胴開口部上側収縮部と胴開口部下側収縮部の収縮によって接合部同士の間に位置する非接合領域が撓み、波型に変形することで通気路を形成してもよい。
【0011】
また、開口部端縁と胴開口部上側収縮部との間において開口部端縁に沿って胴回り方向に延設される複数の伸縮部材を含み、胴開口部を胴回り方向に収縮させる開口部端縁側収縮部を更に備え、開口部端縁側収縮部が有する複数の伸縮部材同士の間隔は、胴開口部上側収縮部が有する複数の伸縮部材同士の間隔よりも大きくてもよい。
【0012】
また、胴開口部上側収縮部が有する伸縮部材を、胴開口部を形成する部分に内包したカバーシートを備え、カバーシートは、開口部端縁の部分で折り返されており、折り返し部分の折り目にカバーシートを貫通する連続的な通気孔を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記の吸収性物品であれば、従来に比べて良好な通気性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るおむつを展開した状態を模式的に示した図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るおむつの通気路形成シートの設置態様について説明する図である。
【
図5】
図5は、通気路形成シートを接合している接合部の部位を示した図である。
【
図6】
図6は、各収縮部における収縮力の大きさを示した図である。
【
図7】
図7は、ウエストギャザーの第2収縮部とタミーギャザーの第3収縮部に形成される襞を説明する図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るおむつを展開した状態を模式的に示した図である。
【
図9】
図9は、ウエストギャザーの第1収縮部及び第2収縮部とタミーギャザーの第3収縮部に形成される襞を説明する図である。
【
図10】
図10は、ウエストギャザーが収縮した際に胴開口部の開口部端縁に形成される通気孔を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0016】
<実施形態>
図1は、実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)1の斜視図である。
図2は、実施形態に係るおむつ1の分解斜視図である。また、
図3は、実施形態に係るおむつ1を展開した状態を模式的に示した図である。
図3の(A)は、展開時におけるおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。
図3の(B)は、展開時におけるおむつ1の平面構造を模式的に示している。
【0017】
本明細書で用いる方向に関する用語は、おむつ1が着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本明細書で左右方向という場合、おむつ1の着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0018】
また、本明細書において、おむつ1の「前身頃領域」とは、着用者におむつ1を装着し
た際に、着用者の腹部(身体前方)を覆う部分を意味する。おむつ1の「股下領域」とは、着用者におむつ1を装着した際に、着用者の股下を覆う部分を意味する。おむつ1の「後身頃領域」とは、着用者におむつ1を装着した際に、着用者の背部(身体後方)を覆う部分を意味する。また、本明細書において、「長手方向」とは、おむつ1の前身頃領域と後身頃領域を結ぶ方向を意味する。すなわち、おむつ1の長手方向は、前身頃領域、股下領域、及び後身頃領域が連設される連設方向に一致している。また、「幅方向」とは、おむつ1の長手方向に直交する方向を意味する。
【0019】
本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲が入る開口部と、着用者の左下肢及び右下肢が挿通される左右一対の開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本明細書における「吸収性物品」は、パンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。「吸収性物品」には、例えば、着用者の股下(陰部)を前身頃領域から後身頃領域にかけて覆うシート状の部材の一端部付近に固定されたテープを、該シート状の部材の他端部付近に貼り付けることで筒状構造を形成するテープ型使い捨ておむつ等、腹囲と股下を包み得る各種形態の吸収性物品が含まれる。
【0020】
図1~3に示すように、おむつ1は、着用状態において着用者の股下(陰部)を覆う股下領域1Bと、着用者の腹部を覆う前身頃領域1Fと、着用者の背部を覆う後身頃領域1Rとを有している。股下領域1Bは、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの間に位置すると共に前身頃領域1Fと後身頃領域1Rに連設されており、股下領域1Bには液体を吸収して保持する吸収部本体15(吸収体8)が設けられている。
【0021】
本実施形態におけるおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域1Fの左側縁と後身頃領域1Rの左側縁が互いに接合され、前身頃領域1Fの右側縁と後身頃領域1Rの右側縁が互いに接合されることで、
図1に示す状態に組み上がる。
図1に示されるように、前身頃領域1Fの上端縁と後身頃領域1Rの上端縁により、胴開口部(ウエスト開口部)2Tが形成されている。また、おむつ1には、上記接合が施されない股下領域1Bの左側部に左下肢開口部2Lが形成され、股下領域1Bの右側部に右下肢開口部2Rが形成されている。左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rは、おむつ1の装着時に着用者の脚部を挿通させるための開口部である。
【0022】
着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入る(通る)ようにおむつ1が装着されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部に接すると共に後身頃領域1Rが着用者の背部側に接し、股下領域1Bが着用者の股部にあてがわれ、更に、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻いた状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのようにして着用者の身体に固定されることで、おむつ1を着用した状態での立ち歩きが可能となる。
【0023】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体8が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するために、左下肢開口部2L、右下肢開口部2R、胴開口部2Tにそれぞれ、立体ギャザーG1L、立体ギャザーG1R、ウエストギャザーG2が設けられている。立体ギャザーG1L,G1RとウエストギャザーG2は、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着するように構成されており、これによって、着用者から排出された排泄液をおむつ1から漏出させることなく吸収部本体15(吸収体8)に吸収させることができる。
【0024】
図2及び
図3に示すように、おむつ1は、着用者に装着された状態において外表面を形成するカバーシート4F,4Rとパッドカバーシート6を有する。カバーシート4Fは、
主におむつ1の前身頃領域1Fの外表面を形成するシート部材である。また、パッドカバーシート6は、主におむつ1の股下領域1Bの外表面を形成するためのシート部材である。また、カバーシート4Rは、主におむつ1の後身頃領域1Rの外表面を形成するためのシート部材である。
【0025】
カバーシート4F,4Rとパッドカバーシート6は、例えば、おむつ1の外表面の補強や手触りの向上のために設けられている。また、カバーシート4F,4Rとパッドカバーシート6は、排泄物の漏れを抑制するために、例えば液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布によって形成することができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。また、液不透過性のシートには、液不透過性と透湿性とが発揮されるように、0.1~数μm程度の微細な孔が多数形成されていても良い。
【0026】
また、おむつ1は、カバーシート4Fの肌対向面側に積層されるインナーカバーシート5Fと、カバーシート4Rの肌対向面側に積層されるインナーカバーシート5Rとを有している。本明細書において、「肌対向面」とは、おむつ1を着用者が着用した際に、着用者の肌に対向する方の面を意味する。詳しくは後述するが、インナーカバーシート5Fは、カバーシート4Fとの層間に線状の伸縮部材である糸ゴムを挟み込んだ状態でカバーシート4Fに貼り合わされるシート部材である。インナーカバーシート5Fは、カバーシート4Fのうち、後述する折返し部4F5と、外装カバー部4F10におけるウエスト第1領域RW1を除いた部分に対応する形状及び大きさを有するシート部材である。また、インナーカバーシート5Rは、カバーシート4Rとの層間に線状の伸縮部材である糸ゴムを挟み込んだ状態でカバーシート4Fに貼り合わされるシート部材である。インナーカバーシート5Rは、カバーシート4Rのうち、後述する折返し部4R5と、外装カバー部4R10におけるウエスト第1領域RW1を除いた部分に対応する形状及び大きさを有するシート部材である。
【0027】
本実施形態のおむつ1は、吸収部本体15を備えている。吸収部本体15は、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rとの間に架橋された状態で保持され、おむつ1の着用時に着用者の股下に配置され、着用者が排泄した尿などの液体を吸収保持する。
図2及び
図3に示すように、吸収部本体15は、パッドカバーシート6、バックシート7、吸収体8、センターシート9、サイドシート10L,10R等を含み、これらによって一体に形成されている。
【0028】
バックシート7、吸収体8、センターシート9は、パッドカバーシート6の肌対向面に対して順に積層されている。パッドカバーシート6は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有しており、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する矩形平面を有するシート部材である。また、バックシート7、吸収体8、センターシート9は、何れもパッドカバーシート6と同様に矩形平面を有するシート部材であり、長手方向がパッドカバーシート6の長手方向と一致する状態でパッドカバーシート6に対してこれらの順に積層されている。
【0029】
吸収体8は、尿などの液体を吸収し、吸収した液体を保持するための部材である。吸収体8は、液不透過性のバックシート7と液透過性のセンターシート9との間に配置される。吸収体8は、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性の高吸収性重合体等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有していても良い。これにより、吸収体8は、着用者から排泄された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持することができる。なお
、吸収体8は、1枚のマットからなる単層構造であってもよいし、複数枚のマットを重ね合わせた積層構造であってもよい。また、吸収体8は、目的に応じた適宜の形状を採用することができる。吸収体8の形状としては、例えば、矩形状、中央部付近が括れた砂時計型、その他各種の形状が挙げられる。
【0030】
センターシート9は、着用者の股下の肌に直接当たり、尿などの液体を吸収体8へ透過させるためのシート部材であり、吸収体8の吸水面を被覆するように積層配置されている。本実施形態におけるセンターシート9は、柔軟性の高い液透過性材料によって形成されている。センターシート9を形成する液透過性材料としては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルム等が例示できる。また、センターシート9は親水性を有していてもよい。
【0031】
バックシート7は、センターシート9を透過し吸収体8に吸収された液体が、おむつ1の外側へ漏出することを抑制するためのシート部材である。このため、バックシート7は、液不透過性材料によって形成されている。バックシート7を形成する液不透過性材料としては、ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムなどを例示できる。また、バックシート7は、通気性を確保するために、多数の微細孔が形成された微多孔性ポリエチレンフィルムによって形成されても良い。
【0032】
パッドカバーシート6は、バックシート7を補強し、かつ、その肌触りを良くするための部材であり、バックシート7に貼り合されている。パッドカバーシート6を形成する材料としては、織布や不織布が例示できる。また、パッドカバーシート6は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルのような熱可塑性樹脂からなる不織布又は湿式不織布等であっても良い。
【0033】
吸収部本体15におけるサイドシート10L,10Rは、上述した立体ギャザーG1L,G1Rを形成するための細長い帯状部材である。サイドシート10L,10Rは、センターシート9の長辺部分に沿って延設されている。また、サイドシート10L,10Rには、長手方向に沿って糸ゴム10L1,10R1が接着されている。前身頃領域1Fの左側縁を形成するカバーシート4Fの左側縁4F7と後身頃領域1Rの左側縁を形成するカバーシート4Rの左側縁4R7が互いに接合され、且つ、前身頃領域1Fの右側縁を形成するカバーシート4Fの右側縁4F8と後身頃領域1Rの右側縁を形成するカバーシート4Rの右側縁4R8が互いに接合されることで
図1に示すおむつ1が組み上がると、サイドシート10L,10Rが糸ゴム10L1,10R1の収縮力によって長手方向に引き寄せられる結果、折り返し線10L2,10R2に沿ってセンターシート9から立ち上がる。
【0034】
これにより、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザーG1L,G1Rが形成される。カバーシート4F,4Rの側縁同士の接合方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等が例示できる。なお、吸収部本体15は、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rに至るまで延在している。
【0035】
次に、おむつ1の詳細構造について説明する。
図3に示すように、カバーシート4Fは、折り返し線4F6を境に先端側が内側に折り返されることで、折返し部4F5が形成されている。以下、カバーシート4Fのうち、折返し部4F5を除く部分を外装カバー部4F10と呼ぶ。カバーシート4Fの外装カバー部4F10は、おむつ1の外表面を形成する。カバーシート4Fの折り返し線4F6は、おむつ1が組み上がった状態における胴開口部2Tの胴開口端縁4F9を形成する。
【0036】
カバーシート4Fにおける折返し部4F5は、外装カバー部4F10との層間に伸長状態の第1糸ゴム4F1を配置している。また、カバーシート4Fにおける折返し部4F5
の先端側は、インナーカバーシート5F、パッドカバーシート6、バックシート7、及び吸収体8の長手方向における一端側を外装カバー部4F10との層間に挟み込んだ状態で、吸収体8の一端部に重ねられた状態で接着されている。なお、本明細書において、一の部材と他の部材とを重ねると表現する際の態様には、部材同士が互いに全面的に接触する状態で重なる態様に限定されるものでなく、一の部材の一部と他の部材の全体が重なる態様、或いは、一の部材と他の部材の一部同士が重なる態様等を含む概念である。
【0037】
更に、
図3に示すように、カバーシート4Fにおける外装カバー部4F10とインナーカバーシート5Fとの層間には、折り返し線4F6側から第2糸ゴム4F2、第3糸ゴム4F3、第4糸ゴム4F4が、これらの順に配置されており、外装カバー部4F10とインナーカバーシート5Fに挟み込まれた状態で接着されている。
図3に示すように、カバーシート4Fにおける第1糸ゴム4F1~第4糸ゴム4F4は、各々が複数本ずつ平行に配置されており、いずれもカバーシート4Fの幅方向(胴回り方向)に沿って延設されている。
【0038】
一方、カバーシート4Rについても、折り返し線4R6を境に先端側が内側に折り返されることで、折返し部4R5が形成されている。以下、カバーシート4Rのうち、折返し部4R5を除く部分を外装カバー部4R10と呼ぶ。カバーシート4Rの外装カバー部4R10は、おむつ1の外表面を形成する。カバーシート4Rの折り返し線4R6は、おむつ1が組み上がった状態における胴開口部2Tの胴開口端縁4R9を形成する。カバーシート4Rにおける折返し部4R5は、外装カバー部4R10との層間に伸長状態の第1糸ゴム4R1を配置している。また、カバーシート4Rにおける折返し部4R5の先端側は、インナーカバーシート5R、パッドカバーシート6、バックシート7、及び吸収体8の長手方向における他端側を外装カバー部4R10との層間に挟み込んだ状態で、吸収体8の他端部に重ねられた状態で接着されている。
【0039】
更に、
図3に示すように、カバーシート4Rにおける外装カバー部4R10とインナーカバーシート5Rとの層間には、折り返し線4R6側から第2糸ゴム4R2、第3糸ゴム4F3、第4糸ゴム4R4がこれらの順に配置されており、外装カバー部4R10とインナーカバーシート5Rとに挟まれた状態で接着されている。
図3に示すように、カバーシート4Rにおける第1糸ゴム4R1~第4糸ゴム4R4は、各々が複数本ずつ平行に配置されており、いずれもカバーシート4Rの幅方向(胴回り方向)に沿って延設されている。
【0040】
以下、おむつ1のカバーシート4F,4Rにおいて、第1糸ゴム4F1,4R1、及び第2糸ゴム4F2,4R2が配置されている領域を「ウエスト領域RW」と呼ぶ。おむつ1のウエスト領域RWは、胴開口部2Tを形成する胴開口端縁4F9,4R9近傍に位置し、ウエストギャザーG2が形成される領域である。更に、ウエスト領域RWのうち、第1糸ゴム4F1,4R1が配置されている領域を「ウエスト第1領域RW1」(第1領域)と呼び、第2糸ゴム4F2,4R2が配置されている領域を「ウエスト第2領域RW2」(第2領域)と呼ぶ。
【0041】
また、おむつ1のカバーシート4F,4Rにおいて、第3糸ゴム4F3,4R3、及び第4糸ゴム4F4,4R4が配置されている領域を「タミー領域RT」と呼ぶ。タミー領域RTは、ウエスト領域RWの下方に位置する領域である。タミー領域RTのうち、第3糸ゴム4F3,4R3が配置されている領域を「タミー第1領域RT1」と呼び、第4糸ゴム4F4,4R4が配置されている領域を「タミー第2領域RT2」と呼ぶ。
【0042】
ここで、ウエスト第1領域RW1における第1糸ゴム4F1,4R1は、例えばおむつ1の組み立て過程において、伸長された状態で接着剤を塗布された後、外装カバー部4F
10,4R10と折返し部4F5,4R5の間に挟み込まれることでこれらの層間に接着される。同様に、ウエスト第2領域RW2における第2糸ゴム4F2,4R2と、タミー領域RTにおける第3糸ゴム4F3,4R3及び第4糸ゴム4F4,4R4は、例えばおむつ1の組み立て過程において、伸長された状態で接着剤が塗布された後、カバーシート4F,4Rの外装カバー部4F10,4R10とインナーカバーシート5F,5Rの間に挟み込まれることでこれらの層間に接着される。
【0043】
ここで、カバーシート4F,4Rにおける外装カバー部4F10,4R10とインナーカバーシート5F,5Rとの層間に伸長状態で挟み込まれて接着されたウエスト第1領域RW1の第1糸ゴム4F1,4R1が収縮すると、それに追従して外装カバー部4F10,4R10と折返し部4F5,4R5のうち、ウエスト第1領域RW1に対応する部分がひだ状に連続的に撓むことで、ウエスト第1領域RW1を胴回り方向に収縮させる第1収縮部S1が形成される。
【0044】
ウエスト第2領域RW2においても、外装カバー部4F10,4R10とインナーカバーシート5F,5Rとの層間に伸長状態で挟み込まれて接着された第2糸ゴム4F2,4R2が収縮すると、それに追従して外装カバー部4F10,4R10とインナーカバーシート5F,5Rのうち、ウエスト第2領域RW2に対応する部分がひだ状に連続的に撓むことで、ウエスト第2領域RW2を胴回り方向に収縮させる第2収縮部S2(本願でいう「胴開口部上側収縮部」の一例である)が形成される。
【0045】
本実施形態においては、主としてウエスト第1領域RW1に形成される第1収縮部S1とウエスト第2領域RW2に形成される第2収縮部S2によってウエストギャザーG2が形成されている。ウエストギャザーG2は、第1糸ゴム4F1,4R1及び第2糸ゴム4F2,4R2の収縮力によって、着用者のウエスト回りにおけるおむつ1のフィット性を向上させる。ウエストギャザーG2の第1収縮部S1には、複数の第1糸ゴム4F1,4R1が互いに平行に、且つ一定間隔A1で配置されている。また、ウエストギャザーG2の第2収縮部S2には、複数の第2糸ゴム4F2,4R2が互いに平行且つ一定の間隔A2を空けて設けられている。なお、ここでいう糸ゴム同士の間隔とは、隣の糸ゴム同士がおむつの長手方向(身頃領域と後身頃領域を結ぶ方向)に離間する寸法を意味する。
【0046】
また、本実施形態において、ウエスト第1領域RW1の第1糸ゴム4F1,4R1及びウエスト第2領域RW2の第2糸ゴム4F2,4R2は、カバーシート4F,4Rの全幅区間に亘って延在している。そのため、おむつ1の完成後において、第1糸ゴム4F1,4R1及び第2糸ゴム4F2,4R2は、胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成する。言い換えると、おむつ1の完成後において、ウエストギャザーG2(第1収縮部S1、第2収縮部S2)が胴回り方向の全周に亘って形成される。
【0047】
タミー第1領域RT1においても、カバーシート4F,4Rにおける外装カバー部4F10,4R10とインナーカバーシート5F,5Rとの層間に伸長状態で挟み込まれて接着された第3糸ゴム4F3,4R3が収縮すると、それに追従してカバーシート4F,4Rにおける外装カバー部4F10,4R10とインナーカバーシート5F,5Rのうち、タミー第1領域RT1に対応する部分がひだ状に連続的に撓むことで、タミー第1領域RT1を胴回り方向に収縮させる第3収縮部S3(本願でいう「胴開口部下側収縮部」の一例である)が形成される。第3収縮部S3は、おむつ1の着用時に着用者の腰骨の高さ近傍にフィットする領域であり、胴開口部2Tの開口部端縁から20mm以上40mm以下の範囲内を含む領域に設けられている。
【0048】
また、タミー第2領域RT2においても、カバーシート4F,4Rにおける外装カバー部4F10,4R10とインナーカバーシート5F,5Rとの層間に伸長状態で挟み込ま
れて接着された第4糸ゴム4F4,4R4が収縮すると、それに追従してカバーシート4F,4Rにおける外装カバー部4F10,4R10とインナーカバーシート5F,5Rのうち、タミー第2領域RT2に対応する部分がひだ状に連続的に撓むことで、タミー第2領域RT2を胴回り方向に収縮させる第4収縮部S4が形成される。そして、本実施形態においては、主としてタミー第1領域RT1に形成される第3収縮部S3とタミー第2領域RT2に形成される第4収縮部S4によってタミーギャザーG3が形成されている。タミーギャザーG3は、第3糸ゴム4F3,4R3及び第4糸ゴム4F4,4R4の収縮力によって、例えば着用者の下腹部回りにおけるおむつ1のフィット性を向上させている。
【0049】
タミーギャザーG3の第3収縮部S3に配置される第3糸ゴム4F3,4R3は、互いに平行に、且つ一定の間隔A3を空けて設けられている。また、タミーギャザーG3の第4収縮部S4に配置される第4糸ゴム4F4,4R4も、互いに平行に、且つ一定の間隔A4を空けて設けられている。そして、本実施形態では、タミーギャザーG3の第3収縮部S3における第3糸ゴム4F3,4R3の間隔A3が、ウエストギャザーG2の第2収縮部S2における第2糸ゴム4F2,4R2の間隔A2よりも大きな寸法に設定されており、これにより、胴開口部2Tを広げておむつ1を装着する際、着用者の腰骨に当接する部位となるタミーギャザーG3の第3収縮部S3を、ウエストギャザーG2の第2収縮部S2よりも相対的に広げやすくしている。
【0050】
また、本実施形態においては、第1収縮部S1~第4収縮部S4を形成するために、各糸ゴム4F1,4R1、4F2,4R2、4F3,4R3、4F4,4R4をカバーシート4F,4Rの幅方向(胴回り方向)に沿って延設したが、線状の伸縮部材であれば糸ゴムに限らず、他の材料、形態を用いても良い。また、本明細書において「線状」とは、細長く特定の方向に延びる態様を表すものであり、帯状、短冊状の形状を含む概念である。なお、糸ゴムの材料としては、天然ゴム、合成ゴム等が例示できるが、特定の材料には限定されない。
【0051】
次に、おむつ1の通気路形成シート11F,11Rについて説明する。
図2及び
図3に示すように、おむつ1は、カバーシート4F,4Rにおける折返し部4F5,4R5と、吸収部本体15におけるパッドカバーシート6、センターシート9等の長手方向端部領域において、当該折返し部4F5,4R5に積層配置される通気路形成シート11F,11Rを備える。通気路形成シート11F,11Rは、おむつ1のウエストギャザーG2及びタミーギャザーG3における肌当接面を形成する。「肌当接面」とは、おむつ1の着用時に、着用者の肌に直接当たる面、すなわちおむつ1の最内面を意味する。
【0052】
図4は、実施形態に係るおむつ1の通気路形成シート11F,11Rの設置態様について説明する図である。
図4の(A)は、ウエストギャザーG2の第1収縮部S1をおむつ1の内部空間側から眺めた状態を示す図である。また、
図4の(B)は、おむつ1の側方から見た場合のウエストギャザーG2の第1収縮部S1内の内部構造を模式的に示す図である。また、
図4の(C)は、おむつ1の上方(すなわち、(B)のA矢視方向)からウエストギャザーG2の第1収縮部S1を眺めた状態を示す図である。
図4の(A)及び(C)は、便宜上、ウエストギャザーG2における第1収縮部S1が収縮する前の状態を示している。また、
図4の(D)は、収縮後におけるウエストギャザーG2の第1収縮部S1を上方から眺めた状態を示す図である。
【0053】
通気路形成シート11F,11Rは、少なくとも第1収縮部S1、第2収縮部S2及び第3収縮部S3に対応する部位に配置されており、符号Sによって示される接合部を介して、パッドカバーシート6における長手方向の端部領域及び折返し部4F5,4R5等に接合されている。
図5は、通気路形成シート11F,11Rを接合している接合部Sの部位を示した図である。本実施形態では、熱可塑性樹脂によって形成されたカバーシート4
F,4Rの折返し部4F5,4R5及びパッドカバーシート6に重ねた通気路形成シート11F,11Rを、超音波溶着で接合することにより、接合部Sを形成している。
図4(A)や
図5に示されるように、カバーシート4F,4Rの胴開口端縁4F9,4R9から胴回り方向(幅方向)に直交する長手方向に沿って複数の接合部Sが間欠的に配置されることで、おむつ1の長手方向に延びる線状接合部SLが形成されている。言い換えると、1つの線状接合部SLは、おむつ1の長手方向に沿って間欠的に配置される複数の接合部Sの集合体として形成されている。ここで、「間欠的」に配置されるとは、非連続的、或いは断続的に配置される態様を意味する。
【0054】
図4(A)に示すように、ウエストギャザーG2の第1収縮部S1には、複数本の線状接合部SLが、カバーシート4F,4Rの胴回り方向(幅方向)に沿って間欠的に配置されている。
図4(A)に示す例では、各線状接合部SLが互いに平行に設けられており、線状接合部SL同士の間隔が大小交互となるように設定されている。つまり、1組の線状接合部SLによって形成される二重線が胴回り方向(幅方向)に等間隔で並ぶような形態で線状接合部SLが間欠的に配置されている。なお、
図3(A)には、線状接合部SLがおむつ1の長手方向に延在する範囲をハッチングにて図示している。図示のように、線状接合部SLは、第1収縮部S1が形成されるウエスト第1領域RW1及び第2収縮部S2が形成されるウエスト第2領域RW2に跨って延在している。
【0055】
ウエストギャザーG2の第1収縮部S1と第2収縮部S2及びタミーギャザーG3の第3収縮部S3における通気路形成シート11F,11Rの超音波接合は、ウエストギャザーG2の第1糸ゴム4F1,4R1及び第2糸ゴム4F2,4R2と、タミーギャザーG3の第3糸ゴム4F3,4R3及び第4糸ゴム4F4,4R4が伸長状態にある状態で行われる。そして、ウエストギャザーG2の第1収縮部S1と第2収縮部S2及びタミーギャザーG3の第3収縮部S3における通気路形成シート11F,11Rの接合が完了した後に、シート層間に挟まれて固着された第1糸ゴム4F1,4R1、第2糸ゴム4F2,4R2、第3糸ゴム4F3,4R3及び第4糸ゴム4F4,4R4の伸長状態が解除される。その結果、ウエストギャザーG2とタミーギャザーG3が収縮し、通気路形成シート11F,11Rにおける線状接合部SL同士の間隔が狭められる。これにより、通気路形成シート11F,11Rのうち、線状接合部SL同士の間に位置する非接合領域110が撓むことで波形に変形する。
【0056】
その結果、線状接合部SL同士の間に位置する非接合領域110が離間することで、
図4の(D)に示されるように折返し部4F5,4R5等と通気路形成シート11F,11Rの非接合領域110とによって囲まれる第1通気路111が形成される。また、通気路形成シート11F,11Rの肌当接面11a側に第2通気路112が形成される。
図4(D)において符号SSで示す二点鎖線は、おむつ1を着用者が着用した場合に、通気路形成シート11F,11Rに当接する肌面を仮想線として示したものである。第2通気路112は、おむつ1を着用者が装着した際に、通気路形成シート11F,11Rの肌当接面11aと着用者の肌との間に形成される隙間として形成される。おむつ1の内部空間における湿気は、ウエストギャザーG2の第1収縮部S1と第2収縮部S2及びタミーギャザーG3の第3収縮部S3に形成される第1通気路111及び第2通気路112を通じて外部に排出することができる。第1通気路111は、おむつ1の内部空間から通気路形成シート11F,11Rを透過した湿気が通る通気路である。一方、第2通気路112は、おむつ1の内部空間と外部空間を直接的に連通する通気経路であり、おむつ1内の湿気をより円滑に排出することができる。
【0057】
図4の(D)に示されるように、ウエストギャザーG2及びタミーギャザG3の収縮後においては、第1収縮部S1を形成する、相対的に大きな第1襞41と、相対的に小さな第2襞42とが交互に形成されている。また、波形に撓み変形した通気路形成シート11
F,11Rも、相対的に大きな第1襞113と、相対的に小さな第2襞114とが交互に形成されている。これは、線状接合部SL同士の間隔が大小交互となるように設定されていることによるものである。すなわち、間隔の広い一組の線状接合部SLによって大きな第1襞41,113が形成され、間隔の狭い一組の線状接合部SLによって小さな第2襞42,114が形成される。
【0058】
ここで、波形に撓み変形した通気路形成シート11F,11Rの第1襞113は、第1収縮部S1を形成する第1襞41と協働して大きな第1通気路111を確保するために寄与する。一方、通気路形成シート11F,11Rの第2襞114は、第1収縮部S1を形成する第2襞42と協働して第1通気路111を形成すると共に、胴回り方向(幅方向)に隣接する第1襞113同士を適正に離間させ、第2通気路112の通気断面を確保するために寄与する。本実施形態では、ウエストギャザーG2とタミーギャザーG3の収縮に追従して波型に変形する通気路形成シート11F,11Rによって形成されるフルート構造をウエストギャザーG2の第1収縮部S1と第2収縮部S2及びタミーギャザーG3の第3収縮部S3の肌当接面側に設けることで、第1通気路111及び第2通気路112を通じておむつ1内の湿気を外部に効率的に排出することができる。また、本実施形態においては、線状接合部SLは、おむつ1の長手方向に沿って間欠的に配置される複数の接合部Sの集合体として形成されているため、接合部S同士の隙間を通じて、隣接する第1通気路111同士が連通されている。そのため、隣接する第1通気路111間の通気性の向上を図り、局部的な蒸れ感を着用者が受け難くすることができる。
【0059】
更に、本実施形態における通気路形成シート11F,11Rには、通気用の微細な通気孔11F1,11R1が多数設けられている。ここで、通気孔とは、シートの一方の面の側の空間と他方の面の側の空間とを連通させる開口部を意味し、その形状は特に限定されない。よって、通気孔11F1,11R1としては、例えば、円形、楕円形、多角形(三角形、四角形等)等の形状の開口部を適用することができる。通気路形成シート11F,11Rへの通気孔11F1,11R1の形成は、該通気路形成シート11F,11Rが通気性を有しない素材であることを意味するものでは無く、該通気路形成シート11F,11Rは通気性を有する素材と通気性を有しない素材の何れであってもよい。通気路形成シート11F,11Rは、通気性や液透過性を有する素材であることが好ましいが、例えば、非通気性の素材であってもよい。通気孔11F1,11R1の大きさや個数は特に限定されないが、例えば、開口面積が0.5~10mm2の孔であれば5~200個程度形成されることが好ましい。
【0060】
そして、本発明者等は鋭意検討を行った結果、第2収縮部S2を形成する第2糸ゴム4F2,4R2同士の間隔A2よりも、第3収縮部S3を形成する第3糸ゴム4F3,4R3同士の間隔A3を大きくすることで、おむつ1が適正な装着状態となるように第3収縮部S3を着用者の腰骨に誘導し、且つ、着用者の動きに合わせて伸縮する第3収縮部S3における第1通気路111及び第2通気路112の伸縮による変形に伴うポンプ効果がおむつ1内部からの湿気の排出を促進させることを見出すに至った。特に、間隔A3を6.5mm以上12mm以下に設定することで、間隔A3がこれより狭い間隔に設定される場合に比べて、通気路形成シート11F,11Rが第3糸ゴム4F3,4R3によって拘束される度合いが低下し、拘束の度合いの低下により第1通気路111及び第2通気路112が大きくなって第3収縮部S3におけるポンプ効果が高まるという知見を得た。
【0061】
図6は、各収縮部における収縮力の大きさを示した図である。
図6に示す白抜きの矢印は、収縮力の大きさを示している。本実施形態のおむつ1は、第3収縮部S3を形成する第3糸ゴム4F3,4R3同士の間隔A3が、第2収縮部S2を形成する第2糸ゴム4F2,4R2同士の間隔A2よりも大きい。よって、本実施形態のおむつ1は、
図6に示されるように、第3収縮部S3の収縮力が、第1収縮部S1及び第2収縮部S2の収縮力よ
りも弱い。そして、第3収縮部S3は、おむつ1が適正な位置に装着された状態において、着用者の腰骨に当接するように設計されており、また、腰骨は
図6に示されるように着用者の胴回りにおいて最も横幅の大きい部位である。また、第3収縮部S3は、一般的な成人の人差し指の第1関節と第2関節との間から指先端までの距離である20mm以上40mm以下の範囲内に一致するよう、胴開口部2Tの開口部端縁から20mm以上40mm以下の範囲内を含む領域に設けられている。したがって、第3収縮部S3の収縮力が、第1収縮部S1及び第2収縮部S2の収縮力よりも弱い本実施形態のおむつ1では、着用者に装着する際に胴開口部2Tが手で広げられた際、第3収縮部S3が最も広がるため、装着作業を行っている人の人差し指の第2関節が胴開口部2Tの開口部端縁付近にかかり、第1収縮部S1と第2収縮部S2が人差し指の第1関節と第2関節の間に位置し、第1収縮部S1及び第2収縮部S2よりも広がりやすい第3収縮部S3に人差し指の先端が引っ掛かるような状態となる。そして、着用者の胴回りにおいて最も横幅の大きい腰骨が、最も広がっている第3収縮部S3に自然に収まるように装着される。この結果、第3収縮部S3が着用者の腰骨に当接するように設計されているおむつ1が着用者に適正な位置で装着されることになる。
【0062】
図7は、ウエストギャザーG2の第2収縮部S2とタミーギャザーG3の第3収縮部S3に形成される襞を説明する図である。糸ゴム同士の間に形成される襞は、糸ゴムからの距離が近い箇所ほど糸ゴムによって拘束される度合いが高くなる。よって、第3糸ゴム4F3,4R3同士の間に形成される通気路形成シート11F,11Rの第1襞113及び第2襞114は、第3糸ゴム4F3,4R3同士の間隔A3より間隔の狭い間隔A2で並ぶ第2糸ゴム4F2,4R2同士の間に形成される通気路形成シート11F,11Rの第1襞113及び第2襞114よりも拘束されていない。よって、タミーギャザーG3の第3収縮部S3に形成される襞は、ウエストギャザーG2の第2収縮部S2に形成される襞より大きくなる。このため、本実施形態に係るおむつ1によれば、タミーギャザーG3の部分において第1襞113及び第2襞114によって形成される第1通気路111及び第2通気路112の大きさが他の部位より大きくなる。そして、タミーギャザーG3は着用者の動作によって伸縮する部分であるため、タミーギャザーG3の部分に形成される第1通気路111及び第2通気路112は、着用者の動作に連動して拡縮することによりポンプ機能を発揮し、おむつ1内の湿気をより円滑に排出する。また、着用者の腰骨の部分は着用者の胴回りにおいて最も横幅の大きい部分であり、着用者の周囲のものが接触して外圧が加わりやすい箇所でもあるため、腰骨の部分に対応するタミーギャザーG3では第1通気路111及び第2通気路112が外圧で拡縮することによるポンプ効果も期待される。これにより、おむつ1の内部空間をより快適な環境にすることができる。
【0063】
また、本実施形態に係るおむつ1によれば、タミーギャザーG3の部分に形成される襞が、ウエストギャザーG2の第2収縮部S2に形成される襞より大きいため、タミーギャザーG3の部分の襞が他よりも目立ち、タミーギャザーG3を着用者の胴回りにおいて最も横幅の大きい腰骨に当接するように着用者へ自然に意識させることができる。また、タミーギャザーG3の部分に形成される襞が、ウエストギャザーG2の第2収縮部S2に形成される襞より大きいため、胴開口部2Tを広げる際にタミーギャザーG3の部分が広がりやすい。このため、おむつ1を装着する際、比較的広がりやすいタミーギャザーG3の部分が腰骨に当接するようにおむつ1が自然に位置合わせされやすい。
【0064】
ところで、上記実施形態のおむつ1は、例えば、以下のように変形してもよい。
図8は、変形例に係るおむつ1を展開した状態を模式的に示した図である。本変形例では、第1収縮部S1における第1糸ゴム4F1,4R1の間隔A1が、第2収縮部S2における第2糸ゴム4F2,4R2の間隔A2よりも大きな寸法に設定されており、これによりおむつ1の内部空間の湿気を外部に排出する湿気排出機能や、胴開口部2Tを広げやすくする機能を第1収縮部S1が担保している。一方、ウエストギャザーG2の第2収縮部S2は
、第1収縮部S1に比べて胴回り方向への収縮力を高めることで、おむつ1の着用時におけるずれ落ちを抑制する位置保持機能(ずれ落ち抑制機能)を担保するようにしている。
【0065】
図9は、ウエストギャザーG2の第1収縮部S1及び第2収縮部S2とタミーギャザーG3の第3収縮部S3に形成される襞を説明する図である。上述したように、糸ゴム同士の間に形成される襞は、糸ゴムからの距離が近い箇所ほど糸ゴムによって拘束される度合いが高くなる。よって、第1糸ゴム4F1,4R1同士の間に形成される通気路形成シート11F,11Rの第1襞113及び第2襞114は、第1糸ゴム4F1,4R1同士の間隔A1より間隔の狭い間隔A2で並ぶ第2糸ゴム4F2,4R2同士の間に形成される通気路形成シート11F,11Rの第1襞113及び第2襞114よりも拘束されていない。よって、ウエストギャザーG2の第1収縮部S1に形成される襞は、ウエストギャザーG2の第2収縮部S2に形成される襞より大きくなる。このため、本変形例に係るおむつ1によれば、ウエストギャザーG2の第1収縮部S1の部分において第1襞113及び第2襞114によって形成される第1通気路111及び第2通気路112の大きさが、第2収縮部S2の部分より大きくなる。そして、ウエストギャザーG2は着用者の動作によって伸縮する部分であるため、第1通気路111及び第2通気路112には、ウエストギャザーG2の第1収縮部S1の部分とタミーギャザーG3の部分の2箇所でそれぞれポンプ機能が発揮され、おむつ1内の湿気をより円滑に排出する(ダブルポンプ機能)。これにより、おむつ1の内部空間をより快適な環境にすることができる。
【0066】
ところで、上記のおむつ1は、カバーシート4F,4Rの折り返し線4F6,4R6に、直線状に入れられた細かい切れ目によって貫通形成される通気孔が点線状に並んでいてもよい。この場合、折り返し線4F6,4R6に形成される点線状の通気孔は、着用者の指が入らない大きさとなっていることが好ましい。例えば、5mm以下の長さの切れ目によって形成される通気孔であれば、一般的な乳幼児の指が入ることはない。また、折り返し線4F6,4R6は、おむつ1の通常の使用状態によって、カバーシート4F,4Rが
折り返し線4F6,4R6を境界にして切り裂けることが無いように、点線状の通気孔を形成する切れ目同士の間隔が所定の長さを有していることが好ましい。カバーシート4F,4Rを構成する素材の強度にもよるが、胴回りに求められる伸縮性と着用感を損なわない坪量が8~50g/m2程度のシートであれば、切れ目同士の間隔は、2mm以上であることが好ましい。
【0067】
図10は、ウエストギャザーG2が収縮した際に胴開口部2Tの開口部端縁に形成される通気孔を示した図である。
図10では、カバーシート4Fの部分を示しているが、カバーシート4Rについても同様である。本変形例のおむつ1では、カバーシート4F,4Rの折り返し線4F6,4R6が、直線状に入れられた細かい切れ目によって形成される点線状の通気孔であるため、ウエストギャザー3Rが糸ゴム4F1,4F2の収縮力で縮むと、折り返し線4F6,4R6を形成する細かい切れ目が広がり、切れ目同士の間にあるつなぎ目4F6T以外の部分の通気孔4F6Kが広がる。よって、本変形例のおむつ1では、通気路形成シート11F,11Rとカバーシート4F,4Rとの間に形成される通気路(
図10においてハーフトーンで示す空間)のみならず、カバーシート4F,4Rが折り返し線4F6,4R6を境に折り返されることによってカバーシート4F,4R内に形成される通気路(
図10においてハッチングで示す空間)が形成される。よって、本実施形態のおむつ1は、折り返し線4F6,4R6の部分に通気孔4F6Kが形成されないものと比べると、ウエストギャザー3Rにおける通気性が高い。特に、上記変形例として示したダブルポンプ機能を有する形態、すなわち、ウエストギャザーG2の第1収縮部S1の部分とタミーギャザーG3の部分の2箇所でそれぞれポンプ機能が発揮される形態と組み合わせれば、通気孔4F6Kを通じた通気も加わり、おむつ1内の湿気をより円滑に排出することが可能である。これにより、おむつ1の内部空間をより快適な環境にすることができる。
【0068】
なお、上記実施形態のおむつ1には、通気路形成シート11F,11Rが設けられていたが、通気路形成シート11F,11Rは省略してもよい。通気路形成シート11F,11Rが省略されると、第1通気路111及び第2通気路112は失われるが、第3糸ゴム4F3,4R3による拘束の度合いの低下は維持されるため、第3収縮部S3に形成される襞の大きさが周囲より大きくなる状態は維持され、上記実施形態と同様、第3収縮部S3におけるポンプ効果は維持することができる。
【符号の説明】
【0069】
1・・おむつ
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2T・・胴開口部
G2・・ウエストギャザー
4F,4R・・カバーシート
4F1,4R1・・第1糸ゴム
4F2,4R2・・第2糸ゴム
4F3,4R3・・第3糸ゴム
4F4,4R4・・第4糸ゴム
11F,11R・・通気路形成シート
S・・接合部
S1・・第1収縮部
S2・・第2収縮部
S3・・第3収縮部
S4・・第4収縮部