(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】避難誘導システム
(51)【国際特許分類】
G08B 27/00 20060101AFI20240712BHJP
A62B 3/00 20060101ALI20240712BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240712BHJP
H04M 1/72421 20210101ALI20240712BHJP
H04M 11/04 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
G08B27/00 A
A62B3/00 B
G01C21/26 P
H04M1/72421
H04M11/04
(21)【出願番号】P 2019198255
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀規
(72)【発明者】
【氏名】長藤 真作
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-142758(JP,A)
【文献】特開2016-218980(JP,A)
【文献】特開2005-301196(JP,A)
【文献】特開2008-257385(JP,A)
【文献】特開2006-101013(JP,A)
【文献】特開2006-072863(JP,A)
【文献】特開2013-117690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0116922(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B1/00-5/00
35/00-99/00
A62C2/00-99/00
G01C21/00-21/36
23/00-25/00
G06Q10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
G06T7/00-7/90
G06V10/00-20/90
30/418
40/16
40/20
G08B17/00
23/00-31/00
G16Z99/00
H04M1/00
1/24-3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示可能な表示部と、動画を撮影可能な撮像手段と、姿勢と向きを検出可能なセンサとを備え、所定エリアに設置された発信器からの信号を受信して当該発信器の識別情報を含む発信器情報および自己の識別情報を送信可能な携帯端末と、
前記携帯端末からの発信器情報に基づいて、当該携帯端末の現在位置に応じた画像を当該携帯端末の表示部に表示させるための画像データを当該携帯端末へ送信可能な位置情報サーバと、
前記所定エリアに設置された火災感知器からの火災検出信号を受信可能な受信機
からの火災の発生場所情報を含む火災情報および前記位置情報サーバからの携帯端末位置情報に基づいて避難経路もしくは避難方向を決定して避難誘導情報を生成し、対応する携帯端末へ避難誘導情報を送信する避難誘導サーバと、
を備えた避難誘導システムであって、
前記携帯端末は、前記センサにより検出した当該携帯端末の姿勢と向きの情報を前記避難誘導サーバへ送信し、
前記避難誘導サーバは、
前記所定エリアの内部の仮想現実画像データを記憶する記憶手段を備え、
前記携帯端末からの前記姿勢と向きの情報と、前記位置情報サーバからの前記携帯端末位置情報とに基づいて、重畳する避難誘導情報を生成し、
受信した前記携帯端末の位置情報と前記姿勢と向きの情報とに基づいて前記記憶手段より対応する仮想現実画像データを読み出し、前記避難誘導情報を重畳して避難誘導仮想現実画像データとして前記携帯端末へ送信し、
前記避難誘導仮想現実画像データを受信した携帯端末は、受信した避難誘導仮想現実画像を前記表示部に表示可能であることを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
前記避難誘導サーバは、前記携帯端末からの前記姿勢と向きの情報と、前記位置情報サーバからの前記携帯端末位置情報とに基づいて、重畳する避難誘導情報を生成して前記携帯端末へ送出し、
前記避難誘導情報を受信した前記携帯端末は、前記撮像手段により撮影された周辺情景の動画像に、受信した前記避難誘導情報を重畳して前記表示部に拡張現実画像として表示可能であることを特徴とする請求項1に記載の避難誘導システム。
【請求項3】
前記携帯端末は、前記撮像手段により撮影された周辺情景の動画を前記避難誘導サーバへ送信可能であり、
前記周辺情景の動画に基づいて視界の良否を判定し、視界が不良と判定した場合には、
前記拡張現実画像から前記避難誘導仮想現実画像に切り替えて前記表示部に表示することを特徴とする請求項
2に記載の避難誘導システム。
【請求項4】
前記位置情報サーバは、前記受信機から火災の発生場所情報を受信し、当該発生場所情報および前記携帯端末からの発信器情報に基づいて、当該携帯端末の現在位置および火災発生場所を表わす画像を当該携帯端末の表示部に表示させるためのマップ画像データを生成し、送信可能であることを特徴とする請求項2または3に記載の避難誘導システム。
【請求項5】
前記避難誘導サーバは、前記携帯端末の位置情報と受信機からの火災の発生場所情報を含む前記火災情報とを前記位置情報サーバより取得し、危険度を算出して危険度情報を生成し、対応する携帯端末へ送信可能であり、
前記携帯端末は
、前記避難誘導サーバか
ら前記避難誘導情報および前記危険度情報を受信して、前記表示部に、前記危険度情報を重畳した避難誘導画像を表示可能であることを特徴とする請求項4に記載の避難誘導システム。
【請求項6】
前記避難誘導サーバは、前記位置情報サーバから取得した前記受信機からの前記火災情報および前記携帯端末位置情報に基づいて、前記火災情報に含まれる近隣の各火災感知器の熱、煙、炎の検出情報を抽出し、
前記位置情報サーバからの携帯端末位置と火点位置とその距離と、前記携帯端末からの姿勢と向きの情報と、前記各火災感知器の熱、煙、炎の検出情報と、に基づいて前記危険度を算出するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の避難誘導システム。
【請求項7】
前記携帯端末は、バイブレータおよび/またはスピーカを備え、前記避難誘導サーバからの危険度情報を受信した場合に、前記バイブレータまたはスピーカにより、受信した危険度に応じてそれぞれ所定の振動パターンまたは発音パターンで危険を報知することを特徴とする請求項5または6に記載の避難誘導システム。
【請求項8】
前記表示部は当該携帯端末の筐体に対応して長方形をなし、
前記筐体が縦向きであるときは、前記表示部に、
前記避難誘導仮想現実画像もしくは前記拡張現実画像と避難ルート案内図を上下に並べて表示し、
前記筐体が横向きであるときは、
前記避難誘導仮想現実画像もしくは前記拡張現実画像または避難ルート案内図を、前記表示部の全体に拡大して表示するように構成されていることを特徴とする請求項2~7のいずれかに記載の避難誘導システム。
【請求項9】
前記表示部はタッチパネル方式の表示部であり、
前記携帯端末は、前記表示部に
前記避難誘導仮想現実画像もしくは前記拡張現実画像または避難ルート案内図が表示されている状態において、前記表示部に対して所定の操作がなされたことに応じて、当該表示部に、当該携帯端末を携行する救助要請者の情報を所定の端末へ送信するための救助要請ボタンを表示することを特徴とする請求項8に記載の避難誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末を利用した避難誘導システムに関し、特にビルや地下街等の施設内において火災が発生した場合に携帯端末により避難情報を表示して避難誘導を行うことが可能な避難誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや地下街等の施設で火災等の災害が発生すると大勢の人々が一斉に避難を強いられることとなるが、大型施設になればなるほど、安全なエリアまで避難するのに要する時間が長くなるため、避難ルート等の情報を適切に知らせることが重要である。
従来、携帯端末により避難ルート等の避難情報を表示する技術に関しては、屋外における避難の際に有効な情報を表示するようにした発明が提案されている(例えば特許文献1参照)。この発明は、屋外における避難の際に有効な情報を携帯端末に提供するもので、屋外ではGPS電波を利用して携帯端末の位置情報をサーバへ送信することで、サーバは携帯端末の位置に応じた避難情報を提供することができるという利点を有するものの、GPS電波の届かない屋内での避難誘導には適用することができない。
【0003】
一方、屋内における避難誘導に関しては、携帯端末を用いて防災要員に自身の位置情報及び火災の位置情報、避難経路を伝達できるようにした防災支援システムの発明が提案されている(例えば特許文献2参照)。
特許文献2の発明は、火災受信機が、防火対象物に配設された火災感知器や警報装置等自動火災報知設備の端末機器に内蔵又は関連付けて配設された中継装置を介して防災要員の所持する携帯端末と局所無線通信を行なって端末位置を判断し、火災位置情報および端末位置情報を携帯端末へ送信して火災発生時に防災要員を支援するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-186681号公報
【文献】特開2015-153177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されている防災支援システムの発明は、携帯端末の表示部に当該携帯端末を携行する防災要員の現在位置や避難経路を示した地図を表示させることができるが、地図の向きは携帯端末の向きに応じて変化させるようにしていないため、地図を見た防災要員はどちらの方向へ避難すべきか直感的に認識することができない。また、地図表示された表示部を見たまま避難行動をするのも危険である一方、表示部から目を離して移動すると状況を把握することができないという課題がある。
【0006】
特許文献1には、AR(拡張現実)技術を用いて自端末で撮影された実写映像に避難経路等の情報を重畳させて表示部に表示させることが記載されているが、屋内で被災した場合、火災等で発生した煙が室内に充満すると、実写映像が不鮮明となるため、どちらの方向へ避難すべきか直感的に認識することができない。また、仮にAR技術で実写映像に避難情報を重畳させて表示できたとしても、端末携行者は端末の表示部をずっと見続けたまま移動することは非現実的であり、表示部から目を離して移動している間は避難情報を認識することができないため、状況把握を的確に行えないという課題がある。
【0007】
本発明は上記のような背景の下になされたものでその目的とするところは、携帯端末の携行者が屋内で火災等の災害に遭遇した場合に、携帯端末の表示部を見ることで避難すべき方向を直感的に認識することができる避難誘導システムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、室内に煙が充満して実写映像が不鮮明になったとしても、携帯端末の表示から避難すべき方向を認識することができる避難誘導システムを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、携帯端末の携行者が携帯端末の表示部から目を離している間においても、聴覚を通して危険度等の災害関連情報を知ることができる避難誘導システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、
画像を表示可能な表示部と、動画を撮影可能な撮像手段と、姿勢と向きを検出可能なセンサとを備え、所定エリアに設置された発信器からの信号を受信して当該発信器の識別情報を含む発信器情報および自己の識別情報を送信可能な携帯端末と、
前記携帯端末からの発信器情報に基づいて、当該携帯端末の現在位置に応じた画像を当該携帯端末の表示部に表示させるための画像データを当該携帯端末へ送信可能な位置情報サーバと、
前記所定エリアに設置された火災感知器からの火災検出信号を受信可能な受信機からの火災の発生場所情報を含む火災情報および前記位置情報サーバからの携帯端末位置情報に基づいて避難経路もしくは避難方向を決定して避難誘導情報を生成し、対応する携帯端末へ避難誘導情報を送信する避難誘導サーバと、
を備えた避難誘導システムにおいて、
前記携帯端末は、前記センサにより検出した当該携帯端末の姿勢と向きの情報を前記避難誘導サーバへ送信し、
前記避難誘導サーバは、
前記所定エリアの内部の仮想現実画像データを記憶する記憶手段を備え、
前記携帯端末からの前記姿勢と向きの情報と、前記位置情報サーバからの前記携帯端末位置情報とに基づいて、重畳する避難誘導情報を生成し、
受信した前記携帯端末の位置情報と前記姿勢と向きの情報とに基づいて前記記憶手段より対応する仮想現実画像データを読み出し、前記避難誘導情報を重畳して避難誘導仮想現実画像データとして前記携帯端末へ送信し、
前記避難誘導仮想現実画像データを受信した携帯端末は、受信した避難誘導仮想現実画像を前記表示部に表示可能であるように構成した。
【0009】
上記のような構成を有する避難誘導システムによれば、監視エリア内で火災が発生した場合に、携帯端末の表示部に、当該携帯端末の位置および避難経路もしくは避難方向が示された画像が表示されるため、面積の広い施設の屋内で火災等の災害に遭遇した場合にも、携帯端末の携行者は迅速かつ安全に避難することができる。しかも、仮想現実画像(VR画像)に避難情報が重畳された画像が携帯端末の表示部に表示されるため、携帯端末の携行者は避難すべき方向を直感的に認識することができ、迅速かつ安全に避難することができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記携帯端末は、前記センサにより検出した当該携帯端末の姿勢と向きの情報を前記避難誘導サーバへ送信し、
前記避難誘導サーバは、前記携帯端末からの前記姿勢と向きの情報と、前記位置情報サーバからの前記携帯端末位置情報とに基づいて、重畳する避難誘導情報を生成して前記携帯端末へ送出し、
前記避難誘導情報を受信した前記携帯端末は、前記撮像手段により撮影された周辺情景の動画像に、受信した前記避難誘導情報を重畳して前記表示部に拡張現実画像として表示可能であるように構成する。
かかる構成によれば、実写映像に避難情報が重畳されたAR画像が携帯端末の表示部に表示されるため、携帯端末の携行者は避難すべき方向を直感的に認識することができ、迅速かつ安全に避難することができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記携帯端末は、前記撮像手段により撮影された周辺情景の動画を前記避難誘導サーバへ送信可能であり、
前記周辺情景の動画に基づいて視界の良否を判定し、視界が不良と判定した場合には、前記避難誘導仮想現実画像に切り替えて前記表示部に表示するように構成する。
かかる構成によれば、室内に煙が充満して実写映像が不鮮明になると、実写映像(AR画像)に代わり仮想現実画像に避難情報が重畳して表示されるため、携帯端末の携行者は視界が悪くなったとしても避難すべき方向を正しく認識することができ、安全に避難することができる。
ここで、前記位置情報サーバは、前記受信機から火災の発生場所情報を受信し、当該発生場所情報および前記携帯端末からの発信器情報に基づいて、当該携帯端末の現在位置および火災発生場所を表わす画像を当該携帯端末の表示部に表示させるためのマップ画像データを生成し、送信可能であるように構成しても良い。
【0013】
さらに、望ましくは、前記避難誘導サーバは、前記携帯端末の位置情報と受信機からの火災の発生場所情報を含む前記火災情報とを前記位置情報サーバより取得し、危険度を算出して危険度情報を生成し、対応する携帯端末へ送信可能であり、
前記携帯端末は、前記避難誘導サーバから前記避難誘導情報および前記危険度情報を受信して、前記表示部に、前記危険度情報を重畳した避難誘導画像を表示可能であるように構成する。
かかる構成によれば、危険度が携帯端末に表示されるため、危険度に応じた判断および行動をとることができ、パニックにならない落ち着いた避難が可能となる。
【0014】
また、望ましくは、前記避難誘導サーバは、前記位置情報サーバから取得した前記受信機からの前記火災情報および前記携帯端末位置情報に基づいて、前記火災情報に含まれる近隣の各火災感知器の熱、煙、炎の検出情報を抽出し、
前記位置情報サーバからの携帯端末位置と火点位置とその距離と、前記携帯端末からの姿勢と向きの情報と、前記各火災感知器の熱、煙、炎の検出情報と、に基づいて前記危険度を算出するように構成する。
かかる構成によれば、信頼性の高い危険度を算出することができ、それを表示することによって携帯端末の携行者を安全な方向へ避難させることができる。
【0015】
さらに、望ましくは、前記携帯端末は、バイブレータおよび/またはスピーカを備え、前記避難誘導サーバからの危険度情報を受信した場合に、前記バイブレータまたはスピーカにより、受信した危険度に応じてそれぞれ所定の振動パターンまたは発音パターンで危険を報知するように構成する。
かかる構成によれば、携帯端末の画面を見なくても聴覚を通して危険度を判断することができるため、携帯端末の表示部から目を離した状態での行動時間が長くなっても適切かつ安全な避難が可能となる。
【0016】
また、望ましくは、前記表示部は当該携帯端末の筐体に対応して長方形をなし、
前記筐体が縦向きであるときは、前記表示部に、前記避難誘導仮想現実画像もしくは前記拡張現実画像と避難ルート案内図を上下に並べて表示し、
前記筐体が横向きであるときは、前記避難誘導仮想現実画像もしくは前記拡張現実画像または避難ルート案内図を、前記表示部の全体に拡大して表示するように構成する。
かかる構成によれば、縦長な表示部に、避難誘導仮想現実画像もしくは前記拡張現実画像と避難ルート案内図が上下に並べて表示されるため、避難誘導仮想現実画像もしくは拡張現実画像から火災発生位置や自身の位置を把握できるとともに、避難ルート案内図から避難方向を容易に認識することができる。さらに、筐体が横向きにされると、表示部全体に避難誘導仮想現実画像もしくは拡張現実画像または避難ルート案内図が拡大して表示されるため、画像による判断が行い易くなる。
【0017】
さらに、望ましくは、前記表示部はタッチパネル方式の表示部であり、
前記携帯端末は、前記表示部に前記避難誘導仮想現実画像もしくは前記拡張現実画像または避難ルート案内図が表示されている状態において、前記表示部に対して所定の操作がなされたことに応じて、当該表示部に、当該携帯端末を携行する救助要請者の情報を所定の端末へ送信するための救助要請ボタンを表示するように構成する。
かかる構成によれば、携帯端末の携行者は簡単な操作で所定の端末が所在している防災センター等に対して救助要請を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る避難誘導システムによれば、携帯端末の携行者が屋内で火災等の災害に遭遇した場合に、携帯端末の表示部を見ることで避難すべき方向を直感的に認識することができる。また、室内に煙が充満して実写映像が不鮮明になったとしても、VR(仮想現実)映像に避難情報が重畳されて表示されることで、自身の周辺情景が把握でき、更に避難すべき方向を認識することができる。さらに、携帯端末の携行者が携帯端末の表示部から目を離している間においても、聴覚を通して危険度等の災害関連情報を知ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の避難誘導システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態の避難誘導システムを構成する携帯端末における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態の避難誘導システムを構成する位置情報サーバにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態の避難誘導システムを構成する避難誘導サーバにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】火災発生時に携行者の携帯端末の表示部に表示されるAR画像の合成の仕方を示す図である。
【
図6】火災発生時に携行者の携帯端末の表示部に表示されるAR画像とマップ画像(フロア図画像)の表示例を示す図である。
【
図7】火災発生表示中に携帯端末の姿勢が変化した場合に表示部に表示されるAR画像と画面がスワイプ操作された場合に表示されるマップ画像の一例を示す図である。
【
図8】火災発生時に携行者の携帯端末の表示部に表示される救助要請画面の一例を示す図である。
【
図9】室内に煙が充満した場合における撮影画像の一例を示す図である。
【
図10】他の実施形態の避難誘導システムを構成する携帯端末において危険度を振動または警報音で報知する場合の出力パターンの一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、携帯端末を利用した本発明に係る避難誘導システムの実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の避難誘導システムの概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の避難誘導システムは、
図1に示すように、ビル等の施設の所定エリアA内の複数の箇所に配設されているビーコン(発信器)10からの信号(電波)を受信可能な携帯端末20と、携帯電話基地局30及びインターネット等の通信ネットワークNを介して携帯端末20との間でデータ通信を行う位置情報サーバ40と、施設内部の所定エリアA内の複数の箇所に配設されている火災感知器50からの火災検出信号を受信可能な火災受信機60と、インターフェースもしくはゲートウェイのような中継器70及び通信ネットワークNを介して火災受信機60との間でデータ通信を行う避難誘導サーバ80などから構成されている。位置情報サーバ40と避難誘導サーバ80は1つの支援サーバとして構成しても良い。
【0021】
なお、携帯端末20へ無線信号(機器IDや設備情報などの固有情報)を発信するビーコン10の通信方式としては、例えばBluetooth(登録商標)通信やIEEE 802.11規格に従ったWiFi等の無線LAN、赤外線通信、可視光通信など公知の通信方式を利用することができる。ビーコン10を配置する間隔は特に限定されないが、以下の説明では、隣接するそれぞれのビーコン10の通信範囲が施設内の空間を網羅できるように配置されているものとする。
【0022】
具体的には、もともと施設内には所定の間隔をおいて火災感知器50やスプリンクラーヘッドが設置されていることが多いので、それらの機器に内蔵もしくは付加する形態で取り付けたビーコン10、あるいは、それらの機器の近傍に設置する形態で取り付けたビーコン10を利用することができる。
ビーコン10は、所定の情報を無線信号に乗せて定期的に周囲に発信する発信部を備える。ビーコン10が無線で発信する信号(ビーコン信号)には、少なくとも当該ビーコン10の識別情報(発信器の機器ID)またはアドレス情報が含まれていれば良く、さらに、設置されているエリアに関する情報が含まれても良い。
【0023】
携帯端末20は、ビーコン10からの信号を受信する受信機能と無線通信機能および表示部を備えるスマートフォン等の携行可能な機器である。携帯端末20の内部メモリには、定期的にビーコン10から無線で発信されるビーコン信号を受信して当該ビーコン信号に含まれる識別情報(機器ID)等を抽出し、識別情報等を含むビーコン情報を携帯電話基地局30及び通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信する処理と、通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して位置情報サーバ40から送信されたフロア図情報に基づくフロア図画像を表示部に表示する処理とを実行するアプリケーション・プログラム(位置情報表示アプリ)が格納されている。
【0024】
また、携帯端末20は、ビーコン信号の受信電波強度を検出する機能および検出した受信電波強度情報を位置情報サーバ40へ送信する機能を有し、位置情報サーバ40は受信した受信電波強度情報から対応するビーコンからの距離を算出する機能を有していても良い。さらに、携帯端末20は、複数のビーコン10(通信範囲が互いに重なるビーコン10)から発信されるビーコン信号を受信した場合には、それぞれのビーコン情報を位置情報サーバ40へ送信する機能を有していても良い。
また、携帯端末20は、タッチパネル方式の表示部と、3軸ジャイロセンサや3軸加速度センサ、電子コンパス(地磁気センサ)など端末の姿勢や向きを検出するセンサおよび動画を撮影可能なカメラを備えている。
【0025】
火災感知器50は、例えば、熱、煙、炎、有害ガスなどの異常現象の発生を検出すると、火災検出信号を、感知器回線51を介して火災受信機60へ送信する。また、火災感知器50は、熱感知器の場合には検出した温度に関する情報、煙やガスの感知器の場合には濃度に関する情報、炎感知器の場合には炎の大きさに関する情報を火災受信機60へ送信する機能を有していても良い。これらの情報は、後述の避難誘導サーバが携帯端末の周囲の危険度を算出する際の情報として使用される。なお、火災感知器50は、火災検出信号に自己の設置アドレスを付加するタイプの感知器であっても良いし、火災検出信号に自身の設置アドレスを付加しないタイプの感知器であっても良い。
【0026】
火災受信機60は、火災感知器50からの火災検出信号を受信した場合に、表示部に火災報知表示を行うとともに、地区ベル鳴動や防排煙連動などの制御を行う。さらに、火災受信機60は、火災の発生場所情報や発生時刻情報、温度や濃度、炎の大きさに関する情報などを含む火災情報を、中継器70及び通信ネットワークNを介して避難誘導サーバ80へ送信する。
なお、火災受信機60は、火災検出信号に火災感知器50の設置アドレスが付加されている場合には、当該設置アドレスに基づいて火災の発生場所を特定する。一方、火災検出信号に火災感知器50の設置アドレスが付加されていない場合には、当該火災検出信号を伝送した感知器回線51(警戒区域)に基づいて火災の発生場所を特定する。
【0027】
位置情報サーバ40は、当該位置情報サーバ40が管理する施設の各フロアの地図情報(フロア図)と、ビーコン10の識別情報(機器ID)もしくはアドレス情報を記憶するデータベースを備えている。なお、各フロアの地図情報(フロア図情報)には、各フロアに設置されているビーコン10の機器IDもしくはアドレス情報と関連して各ビーコンの設置位置情報などが含まれている。
【0028】
位置情報サーバ40は、携帯端末20からビーコン10の機器IDを受信すると、受信したビーコンの機器IDもしくはアドレス情報とデータベースに記憶されている情報に基づいて当該携帯端末20の現在位置を算出する。そして、データベースから当該携帯端末20が位置しているフロアのマップ情報(フロア図)を読み出し、読み出したフロア図に当該携帯端末20の現在位置を示すマークをプロットしてフロア図画像データを生成し、生成したフロア図情報を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20へ送信する処理を実行する。これにより、当該携帯端末20の表示部には、当該携帯端末20の現在位置を示すフロア図画像が表示される。
【0029】
さらに、本実施形態の位置情報サーバ40は、火災受信機60から火災情報(火災の発生場所情報を含む情報)を受信した場合に、これらの情報を反映させたフロア図情報を生成し、通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して携帯端末20へ送信する処理を実行可能に構成されている。これにより、当該携帯端末20の表示部には、端末の現在位置を示すマークと共に、火災発生位置を示すマークや火災発信機、消火器、消火栓の位置を示すマークを含む火災情報が反映されたフロア図が表示される。
【0030】
避難誘導サーバ80は、位置情報サーバ40より、フロア図情報(避難口の位置情報を含む)と携帯端末20の位置情報と、火災発生位置情報を取得する。そして、取得した情報に基づいて最適な避難ルートを算出し、通信ネットワークNを介して携帯端末20へ送信する機能を有する。また、避難誘導サーバ80は、携帯端末20から端末の姿勢や向きを示す情報を受信し、携帯端末20の携行者が避難すべき方向を算出し、通信ネットワークNを介して携帯端末20へ送信する機能を有する。
【0031】
次に、本実施形態の避難誘導システムを構成する携帯端末20、位置情報サーバ40及び避難誘導サーバ80による処理の手順を、
図2~
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
携帯端末20は、位置情報表示アプリが起動されると、例えば
図2に示すように、まず、ビーコン10から発信されるビーコン信号を受信したかを判定する(ステップS11)。そして、ビーコン信号を受信した場合(ステップS11;Yes)には、当該ビーコン信号に含まれるビーコン10の識別情報(機器ID)等と当該ビーコン信号の受信電波強度とを含むビーコン情報を、携帯電話基地局30及び通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信する(ステップS12)。
【0032】
次に、携帯端末20は、位置情報サーバ40から送信されるフロア図情報を受信したかを判定する(ステップS13)。そして、フロア図情報を受信した場合(ステップS13;Yes)には、当該フロア図情報に基づくフロア図画像を表示部に表示する(ステップS14)。これにより、位置情報表示アプリの起動後最初のステップS14では、最新のフロア図画像が携帯端末20の表示部に表示されることとなり、位置情報表示アプリの起動後、2回目以降のステップS14では、表示中のフロア図画像が最新のフロア図画像に更新される。
続いて、携帯端末20は、避難誘導サーバ80から、避難情報を受信したかを判定する(ステップS15)。そして、避難情報を受信した場合(ステップS15;Yes)には、当該避難情報に基づく避難経路や避難方向をフロア図画像に付加して表示する(ステップS16)。
【0033】
その後、携帯端末20は、避難誘導サーバ80から送信される危険度情報を受信したかを判定する(ステップS17)。ここで、危険度情報には、当該施設内のビーコン10の信号範囲を単位とする局所エリアごとに危険度を数値化した情報(例えば5段階のレベル)が含まれている。携帯端末20は、危険度情報を受信したと判定した場合(ステップS17;Yes)には、避難誘導サーバ80からの危険度情報に基づいて判定した危険度を表示部に表示する(ステップS18)。
なお、危険度は、例えば「危険度レベル5」のように、数値が大きいほど危険性が高いことを表わすようにする。これにより、携帯端末の携行者は、自身が居る地点の危険度を、視覚を通して把握することができる。
【0034】
一方、位置情報サーバ40は、
図3に示すように、まず、携帯端末20から送信されるビーコン情報を受信したかを判定する(ステップS21)。そして、ビーコン情報を受信した(Yes)と判定した場合には、受信したビーコン情報および端末IDとデータベースに記憶されている情報とに基づいて当該携帯端末20の現在位置を算出する(ステップS22)。続いて、データベースから当該携帯端末20が位置しているフロアのフロア図を読み出し、読み出したフロア図に当該携帯端末20の現在位置を示すマークをプロットしたフロア図情報を生成する(ステップS23)。
【0035】
次に、位置情報サーバ40は、当該携帯端末20が位置している施設内で火災が発生しているかを判定する(ステップS24)。具体的には、位置情報サーバ40は、例えば火災受信機60が中継器70および通信ネットワークNを介して送信した火災情報を受信した場合に、火災が発生していると判定する。なお、火災受信機60が中継器70および通信ネットワークNを介して送信した火災情報は、避難誘導サーバ80に届く。
そして、当該携帯端末20が位置している施設で火災が発生していない(ステップS24;No)と判定した場合には、ステップS23で生成したフロア図情報を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20へ送信する(ステップS29)。
【0036】
一方、位置情報サーバ40は、当該携帯端末20が位置している施設で火災が発生している場合(ステップS24;Yes)には、火災受信機60から火災発生位置情報を取得する(ステップS25)。そして、当該携帯端末20が位置しているフロアと同一のフロアで火災が発生しているか否かを判定する(ステップS26)。
ここで、当該携帯端末20が位置しているフロアで火災が発生していると判定した場合(ステップS26;Yes)には、ステップS23で携帯端末20の現在位置がプロットされたフロア図に、火災の発生位置をプロットする(ステップS27)。
【0037】
次に、位置情報サーバ40は、生成したフロア図情報を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20へ送信する(ステップS29)。これにより、例えば
図7(B)に示すようなフロアマップの画像が当該携帯端末20の表示部に表示されることとなる。なお、
図7(B)には、当該携帯端末20が存在するフロアで火災が発生した場合を想定して、火災のマークと自身のマークおよび避難経路を示す矢印を表示しているが、他のフロアで火災が発生した場合には、火災のマークの表示は省略し、自身のマークおよび避難経路を表示すれば良い。
【0038】
一方、位置情報サーバ40は、当該携帯端末20が位置しているフロアで火災が発生していないと判定した場合(ステップS26;No)には、ステップS23で生成したフロア図情報および他のフロアで火災が発生していることを知られるメッセージ情報等を付加し(ステップS28)、通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20へ送信する(ステップS29)。
【0039】
避難誘導サーバ80は、
図4に示すように、まず、監視エリアの火災受信機60から火災情報(火災発生位置情報を含む)を受信したか判定する(ステップS31)。ここで、火災情報を受信したと判定した場合(ステップS31;Yes)には、位置情報サーバ40から監視エリアに存在する携帯端末20の位置情報を取得する(ステップS32)。
続いて、避難誘導サーバ80は、該当する携帯端末について、火災発生位置情報と当該携帯端末の位置情報に基づいて避難ルート(経路)を決定し、ルート案内図を作成する(ステップS33)。次に、位置情報サーバ40より該当する携帯端末20の姿勢や向きに関する情報を取得し(ステップS34)、取得した端末の姿勢や向きに基づいて避難方向を決定して携帯端末20へ避難情報(矢印等)を送信する(ステップS35)。
【0040】
次に、避難誘導サーバ80は、ステップS32で取得した火災位置情報と携帯端末位置情報とに基づき、各携帯端末ごとに危険度を算出する(ステップS36)。具体的には、火災感知器50から火災受信機60へ送信される温度に関する情報、煙やガスの濃度に関する情報、炎の大きさ(炎面積)に関する情報等を取得し、それらの情報に基づいて、予めデータベースに格納されているテーブルを参照して危険度を算出する。
【0041】
続いて、避難誘導サーバ80は、算出した危険度(数値化した5段階のレベル)の情報をエリア情報と対にして当該施設内に存在するすべての携帯端末20へ送信する(ステップS37)。なお、避難誘導サーバ80は、施設内に存在する携帯端末ごとに、火災感知器50からの温度情報、煙やガスの濃度情報、炎面積情報等に基づいて危険度を算出して、対応する携帯端末へ危険度を送信するようにしても良い。また、これらの情報がない場合には、火災を検知した火災感知器と携帯端末との距離に基づいて危険度を算出するようにしても良い。さらに、危険度の算出には、携帯端末の姿勢や向きの情報を考慮しても良い。すなわち、携帯端末が火点の方向を向いているときは危険度を高くするように補正し、避難方向を向いているときには危険度を低くするように補正しても良い。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態における携帯端末10の機能について、
図5~
図7を用いて説明する。第2の実施形態では、携帯端末20は、ビーコン信号受信機能、無線通信機能、端末の姿勢や向きを検出する機能の他に動画撮影機能(カメラ)を備えていることを条件とする。
携帯端末20は、避難誘導サーバ80から火災発生の通知を受けると、自動的もしくは手動で動画撮影モードに移行する。そして、自身の位置を示す端末位置情報(ビーコン機器ID)と携帯端末の姿勢や向きの情報と撮影画像データを避難誘導サーバ80へ送信する。
【0043】
すると、避難誘導サーバ80は、受信した端末位置情報と携帯端末の姿勢や向きの情報または/および撮影画像データに基づいて画像内におけるビーコンの位置を判断し、火災発生位置と画像内ビーコン位置とから避難方向を判定して避難方向を示す矢印画像を生成するとともに、危険度を算出して当該携帯端末20へ送信する。このとき、避難誘導サーバ80は、矢印画像のみ送信しても良いし、受信した画像に矢印画像および危険度情報を挿入した画像を生成して送信しても良い。
また、避難誘導サーバ80は、避難指示情報や避難口までの距離情報または救助者が到達するまでの時間情報等を携帯端末20へ送信して表示させるようにしても良い。さらに、避難誘導サーバ80は、携帯端末20より受信した端末位置情報と撮影画像データを防災センター等の端末へ送信しても良い。これにより、消火活動や救助活動を行う際に、内部の詳細な状況を把握することができ、的確な消火や要救助者の早期発見を行うことが可能となる。
【0044】
矢印等の避難情報画像を受信した携帯端末20は、AR(拡張現実)技術を用いて、
図5に示すように、自機カメラで撮影した画像VPと避難方向を示す矢印および危険度情報を含む画像IPとを合成した合成画像CPとして表示する。また、携帯端末20は、送信した撮影画像に矢印画像および危険度情報を挿入した画像を受信した場合には、受信した撮影画像と現時点でのカメラの撮影画像とを比較して、一致している場合には、背景画像を現撮影画像に切り替えて矢印画像および危険度情報を挿入して表示する。一致していない場合には、例えばリトライ処理を行っても良い。これにより、誤った避難方向が表示されるのを回避することができる。
さらに、避難誘導サーバ80は、携帯端末20から受信した撮影画像に対する火災発生位置を判定し、火災発生位置の方向や避難が適切でない方向に、火災のマークや進入禁止のマークを挿入した画像を生成して送信しても良い。
【0045】
また、携帯端末20は、上記撮影画像上への避難情報の表示処理と並行して、避難誘導サーバ80から避難ルート案内図(フロアマップ)の受信処理を実行しており、任意のタイミングで避難方向を示す矢印画像および危険度情報が挿入された撮影画像から、避難ルート案内図に切り替えて表示することができる。また、
図6に示すように、携帯端末20の表示部DSは、端末の筐体に対応して長方形をなしており、表示部DSの上半分に撮影画像P1を表示し下半分に避難ルート案内
図P2を表示することができるように構成されている。
【0046】
さらに、携帯端末20は、姿勢を検出するセンサからの信号に基づいて端末の姿勢を判定し、自機の姿勢が縦向きから横向きに変化したことを認識すると、
図7(A)に示すように、表示部DSの画面全体に矢印画像および危険度情報が挿入された撮影画像P1を表示する。そして、この状態で表示部DSの画面が横方向または縦方向へスワイプ操作されると、
図7(B)に示すように、表示部全体に避難ルート案内
図P2を表示するように構成されている。
【0047】
また、本実施形態の携帯端末20は、例えば
図6に示す火災発生表示画面DSにおいて横方向へまたは縦方向へスワイプ操作されると、
図8に示すように、「救助要請」や「通話呼出し」などの緊急要請ボタンB1,B2が表示され、「救助要請」ボタンB1をタップすると、携帯端末20は、防災センターへ救助が必要なことおよび救助要請者の情報(屋内位置情報を含む)を送信し、「通話呼出し」B2をタップすると防災センターと通話を可能とするように構成されている。
【0048】
さらに、携帯端末20は、自ら所定パターンの救助要請ビーコン電波や音を発するように構成されている。ここで、所定パターンとしては、例えば5秒に1回の割合で発音させ、
6回連続後に休止期間を入れて再び前記動作を繰り返すようにすることが考えられる。なお、
図8に示す「救助要請」ボタンB1は、
図4のステップS36で算出された危険度に応じて、危険度のレベルが高いときは表示し、危険度のレベルが低いときは表示しないようにしても良い。また、携帯端末からビーコン電波を発することで、救助要請者の居場所を見つけ易くすることができる。
【0049】
次に、本発明の第3の実施形態における携帯端末10の機能について説明する。
第3の実施形態は、AR(拡張現実)技術による矢印および危険度情報が挿入された撮影画像を表示しているモード中に、
図9に示すように、室内に煙が充満して撮影画像が不鮮明になった場合における対策処理機能を本避難誘導システムに持たせるようにしたものである。
具体的には、避難誘導サーバ80内に、対象エリア内のVR(仮想現実)画像のデータを記憶しておき、手動または自動でAR画像からVR画像に切り替える。
【0050】
手動による切替えの場合、携帯端末の携行者が画面上の「VR切替」ボタンB3をタップ操作すると切替えを行い、避難誘導サーバ80が携帯端末の位置および向きや姿勢に応じたVR画像を読出し、このVR画像に矢印および危険度の情報を挿入した画像データを送信し、携帯端末はAR画像からVR画像に切り替えて表示するように構成されている。
なお、VR画像が表示されている画面上に「AR切替」ボタンを表示して、タップ操作するとAR画像に戻るようにしても良い。自動で切り替えるタイミングとしては、例えばカメラの撮影画像の信号レベルがしきい値よりも低い(画面が暗い)と判断したとき、または煙の充満や停電等でコントラスト値がしきい値を下回ったと判断したときなどが考えられる。
【0051】
また、第3の実施形態では、携帯端末20は、ビーコン信号受信機能、無線通信機能、端末の姿勢や向きを検出する機能の他に振動機能(バイブレータ)や発音機能(スピーカ)を備えていることを条件としており、避難誘導サーバ80から送信される危険度情報に応じて端末を振動させたり警報音で危険度を報知したりするように構成されている。
具体的には、
図10に示すように、危険度が最も高い場合(レベル5)には連続振動もしくは連続して警報音を発し、危険度が低くなるに従って振動もしくは警報音の発生間隔を長くするような制御(間欠鳴動)が行われる。なお、警報音の代わりに音声で、火災発生位置と端末現在位置との関係で最適な避難指示を通知するようにしても良い。さらに、音声と同様の内容のメッセージを表示部に文字で表示するようにしても良い。
【0052】
上記のような機能により、携帯端末の画面を見なくても危険度を判断することができるため、携帯端末の表示部から目を離した状態での行動時間が長くなっても適切かつ安全な避難が可能となる。例えば表示部から目を離して移動している途中で振動の周期が長くなり、危険度のレベルが低くなると、正しい方向へ避難していることを認識できるので、落ち着いた避難が行えるようになる。
【0053】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、ビーコン10を火災感知器50の近傍に設置しているが、それぞれの機能に適した位置に別々に設置するようにしても良い。また、上記実施形態では、ビーコン10は情報を送信する機能のみ有していると説明したが、携帯端末や他の発信器(無線タグ、端末等)からの無線信号を受信する機能さらには受信した情報をサーバへ送信する機能を有するものであっても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、位置情報システムとして、ビーコンによる測位を利用したシステムを例示したが、これに限定されず、位置情報システムは、例えばIMES(Indoor MEssaging System)等のその他の方式による測位を利用したシステムであっても良い。すなわち、発信器は、ビーコンに限定されずIMES送信機等であっても良い。
さらに、上記実施形態では、有事の例として火災感知器により火災を検知した場合について説明したが、地震や水害などによる他の有事が発生した場合に適用しても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 ビーコン(発信器)
20 携帯端末
30 携帯電話基地局
40 位置情報サーバ
50 火災感知器
60 火災受信機
70 中継器
80 避難誘導サーバ