(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
B60N2/08
(21)【出願番号】P 2019215124
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 健介
(72)【発明者】
【氏名】川村 勇介
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-126183(JP,A)
【文献】特開2012-111378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床に固定されるロアレールと、
シートに固定されると共に、前記ロアレールに対して摺動可能なアッパーレールと、
前記ロアレールと前記アッパーレールとの相対移動を解除可能にロックするロック装置と、
前記ロック装置のロック状態とロック解除状態とを切り換えるレバー機構と、
を備え、
前記レバー機構は、
レバーと、
前記レバーに近接する第一端部と、前記ロック装置に近接すると共に、前記ロック装置に力を印加する押圧部が設けられた第二端部と、を有し、前記第一端部と前記第二端部との間に位置する第一回転支点を中心として回転するレバーブラケットと、
前記レバーとは別部材から成り、前記レバーと接続されると共に、前記レバーに加えられた力を前記レバーブラケットに伝達する伝達部材であって、
前記伝達部材は、第二回転支点となる軸部、および、前記レバーブラケットの前記第一端部側を上方に移動させる移動部を有し、前記移動部よりも前記ロック装置側に位置する
前記第二回転支点を中心として回転する、伝達部材と、
を備え、
前記レバーを操作することで、前記伝達部材は前記第二回転支点を中心として
前記レバーブラケットに対して回転し、前記移動部が
、前記移動部と前記レバーブラケットとの接触点を介して、前記レバーブラケットの前記第一端部側を上方に移動させ、これにより前記レバーブラケットは前記第一回転支点を中心として回転し、前記押圧部が前記ロック装置に力を印加してロック解除を行う、
シートスライド装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記レバーブラケットの側壁の前記第一端部側の下方に接触して配置され、前記レバーブラケットを持ち上げる、
請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記アッパーレールは、前記軸部を保持する保持部を備える、
請求項1又は2に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記アッパーレールの上下方向中間位置よりも上方に設けられている、
請求項3に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のシートの前後位置を調節するためのシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシートの前後位置を調節し、所定の位置でシートをロックできるシートスライド装置が知られている。
図9は、従来のシートスライド装置の一例を示す断面側面図である。従来のシートスライド装置100は、主として、ロアレール110と、アッパーレール120と、ロック装置130と、レバー機構140とを備える。ロアレール110とアッパーレール120とは、ロック装置130によるロック時には相対移動不能であり、ロック解除時には相対移動可能になる。ロック装置130は、レバー機構140によりロック及びロック解除される。
【0003】
レバー機構140は、レバー141と、レバーブラケット142と、バネブラケット143とを備える。レバーブラケット142は第一端部側(前方側)においてレバー141と接続されている。レバーブラケット142の第二端部側(後方側)には、ロック装置130を作動させる押圧部142aが設けられている。レバーブラケット142は第一端部と第二端部との間に突起状の軸部142bを有している。バネブラケット143は板バネから成り、貫通穴143aを有する。バネブラケット143の貫通穴143aには、レバーブラケット142の軸部142bが軸支されている。
【0004】
搭乗者がレバー141を持ち上げることにより、レバー141及びレバーブラケット142が軸部142bを中心として回転し、押圧部142a側が下がる。押圧部142aがロック装置130に力を及ぼすことにより、ロック装置130がロック解除される。
【0005】
図9に示すレバー機構140の場合、搭乗者がレバー141を持ち上げる部分から軸部142b中心までの距離をX1、軸部142b中心から押圧部142aまでの距離をX2、ロック装置130によるロック力(すなわち、ロック装置130がロアレール110とアッパーレール120とをロックしている力)をFとしたとき、ロック解除するには、レバー141に(X2/X1)Fよりも大きな操作力を加える必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ロック装置によるロック力が大きいほど、シートの保持性能が高くなるため好ましい。一方で、ロック力が大きいほど、ロック解除するためにレバーに印加しなければならない操作力も大きくなる。
【0007】
従来のレバー機構では、設計上、(X2/X1)を大きく変更することはできないため、ロック力を大きくし、一方で、ロック解除するのに必要な操作力を小さくすることは困難であった。
【0008】
本発明は、小さな操作力でロック解除可能な機構を備えたシートスライド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
車両の床に固定されるロアレールと、
シートに固定されると共に、前記ロアレールに対して摺動可能なアッパーレールと、
前記ロアレールと前記アッパーレールとの相対移動を解除可能にロックするロック装置と、
前記ロック装置のロック状態とロック解除状態とを切り換えるレバー機構と、
を備え、
前記レバー機構は、
レバーと、
前記レバーに近接する第一端部と、前記ロック装置に近接すると共に、前記ロック装置に力を印加する押圧部が設けられた第二端部と、を有し、前記第一端部と前記第二端部との間に位置する第一回転支点を中心として回転するレバーブラケットと、
前記レバーと接続されると共に、前記レバーに加えられた力を前記レバーブラケットに伝達する伝達部材であって、前記レバーブラケットの前記第一端部側を上方に移動させる移動部を有し、前記移動部よりも前記ロック装置側に位置する第二回転支点を中心として回転する、伝達部材と、
を備え、
前記レバーを操作することで、前記伝達部材は前記第二回転支点を中心として回転し、前記移動部が前記レバーブラケットの前記第一端部側を上方に移動させ、これにより前記レバーブラケットは前記第一回転支点を中心として回転し、前記押圧部が前記ロック装置に力を印加してロック解除を行う、
シートスライド装置。
【0010】
(項目2)
前記移動部は、前記レバーブラケットの前記第一端部側の下方に配置され、前記レバーブラケットを持ち上げる、
項目1に記載のシートスライド装置。
【0011】
(項目3)
前記伝達部材は前記第二回転支点となる軸部を備え、
前記アッパーレールは、前記軸部を保持する保持部を備える、
項目1又は2に記載のシートスライド装置。
【0012】
(項目4)
前記保持部は、前記アッパーレールの上下方向中間位置よりも上方に設けられている、
項目3に記載のシートスライド装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシートスライド装置では、小さな操作力でロック装置のロックを解除できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】シート及びシートスライド装置の概略側面図である。
【
図3】
図2における、ロアレールとアッパーレールのIII-III線断面図である。
【
図4】シートスライド装置の組立後の部分断面斜視図である。
【
図5】シートスライド装置を前方側から見た図である。
【
図6】(a)ロック装置の斜視図、(b)(a)とは反対側から見たロック装置の斜視図である。
【
図8】(a)レバーの非操作時の側面図、(b)レバーの操作時の側面図である。
【
図9】従来のシートスライド装置の一例を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のシートスライド装置について図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施形態は、本発明の好ましい一具体例を示すものである。本発明は、以下の実施形態に限定されず、その主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0016】
<1 シートスライド装置の構造>
図1は、車両のシートS及びシートスライド装置1の概略側面図である。以下では、「車両上下方向」、「車両前後方向」、「車両左右方向(車幅方向)」をそれぞれ単に「上下方向」、「前後方向」、「左右方向」と表記する。なお、左右方向は搭乗者を基準にして、右及び左を規定している。
【0017】
シートスライド装置1は、ロアレール2と、アッパーレール3と、ロック装置4と、レバー機構5と、を備える。シートスライド装置1は、後述するレバー51の操作部511を除いて、一つのシートSに対し、左右一対設けられている。
【0018】
ロアレール2は、ブラケットBを介して車両のフロアに固定される。アッパーレール3は、シートSに固定されると共に、ロアレール2に組み付けられる。ロアレール2とアッパーレール3とは、ロック装置4によるロック時には、前後方向に摺動不能であり、ロック解除時には前後方向に摺動可能になる。レバー機構5は、ロック装置4のロック状態とロック解除状態とを切り替える。以下、各構成要素について詳述する。
【0019】
<1-1 ロアレール及びアッパーレール>
図2は、シートスライド装置1の分解斜視図である。
図3は、ロアレール2及びアッパーレール3の、
図2におけるIII-III線断面図である。
図4は、シートスライド装置1の組立後の部分断面斜視図である。
図5は、組立後のシートスライド装置1を前方側から見た図である。
【0020】
主に
図2、
図3及び
図5を参照して、ロアレール2について説明する。ロアレール2は、底壁21と、側壁22と、上壁23と、フランジ部24と、を備えた、前後方向に延びる長尺な部材から成る。側壁22、上壁23及びフランジ部24はそれぞれ一対設けられている。ロアレール2は例えばプレス加工によって一体成形される。
【0021】
底壁21は、前後方向に延びる略平板状である。側壁22は、底壁21の左右両端から、底壁21と略直角を成して上方に延びている。上壁23は、側壁22の上端から他方側の側壁22に向けて、底壁21と略平行に延びている。フランジ部24は、上壁23の端部から下方に、側壁22と略平行に延びている。フランジ部24の下端には、複数の切欠き24aが前後方向に間隔をあけて形成されている。この切欠き24a内には、後述するロック歯412が配置される。
【0022】
次に、
図2から
図5を参照して、アッパーレール3について説明する。
【0023】
図2、
図3及び
図5に示すように、アッパーレール3は、上壁31と、側壁32と、底壁33と、フランジ部34と、突起部35と、保持部36と、取付部37と、を備えた、前後方向に延びる長尺な部材から成る。側壁32、底壁33、フランジ部34、保持部36及び取付部37はそれぞれ一対設けられている。アッパーレール3は例えばプレス加工によって一体成形される。
【0024】
上壁31は、前後方向に延びる略平板状である。側壁32は、上壁31の左右両端から、上壁31と略直角を成して下方に延びている。底壁33は、側壁32から離れるように、側壁32の下端から斜め上方に向けて延びている。フランジ部34は、側壁32に近づくように底壁33から斜め上方に向けて延びると共に、屈曲して、側壁32から離れるように斜め上方に向けて延びている。
【0025】
図3に示すように、側壁32には、複数の開口部32a(本実施形態では四つ)が、ロアレール2の切欠き24aと同じ間隔で形成されている。ロアレール2とアッパーレール3とは、開口部32aと切欠き24aとが相対した状態で、開口部32a及び切欠き24aにロック歯412が挿入されることで、摺動不能にロックされる。
【0026】
図2から
図4に示すように、突起部35は、開口部32aよりも前方の位置において上壁31に一体形成されており、且つ、下方に向けて湾曲しながら突出している。より詳細には、突起部35は、上壁31の一部をエンボス加工により下方に凹ませることで形成されている。突起部35には、後述するレバーブラケット52の上壁521が接触する(
図4及び
図8参照)。
【0027】
図2及び
図3に示すように、保持部36は、突起部35よりも前方で、且つアッパーレール3の上下方向中間位置よりも上方(すなわち、上壁31に近接した位置)に設けられている。保持部36には、後述する伝達部材53の軸部533が保持される。保持部36は、U字型をしており、上壁31に一体形成されている。より詳細には、保持部36は、上壁31の一部を切り起こすことにより形成されている。
【0028】
図3に示すように、一対の取付部37は、前後方向に間隔をあけて形成されている。取付部37には、後述する付勢部材42によってロック部材41が取り付けられる。一対の取付部37は、開口部32aよりも下方の位置で側壁32に一体形成されている。より詳細には、各取付部37は、側壁32の一部を切り起こすことにより形成されており、一方の取付部37は最前方の開口部32aよりも前方に設けられ、他方の取付部37は最後方の開口部32aよりも後方に設けられている。各取付部37は貫通穴37aを有し、その貫通穴37aには付勢部材42の第一部分421が挿入される。
【0029】
図5に示すように、ロアレール2とアッパーレール3とは、ロアレール2の一対のフランジ部24間の空間にアッパーレール3の側壁32が配置され、ロアレール2の側壁22とフランジ部24との間の空間に、アッパーレール3のフランジ部34が配置されるように組み立てられる。
【0030】
ロアレール2の底壁21と側壁22との間のコーナ部と、アッパーレール3の底壁33との間には、ボール等の転動手段6が配置されている。また、ロアレール2の側壁22の上端と、アッパーレール3のフランジ部34の上端との間には、ボール等の転動手段6が配置されている。この転動手段6により、ロアレール2とアッパーレール3とは、前後方向に円滑に摺動できるようになっている。
【0031】
<1-2 ロック装置>
主に、
図2、
図4、
図6及び
図7を参照して、ロック装置4について説明する。
図6(a)はロック装置4の斜視図、
図6(b)は
図6(a)とは反対側から見たロック装置4の斜視図である。
図7は、
図4のVII-VII線断面図である。ロック装置4は、ロック部材41と、付勢部材42と、を備え、ロアレール2とアッパーレール3とを相対移動不能にロックする。
【0032】
図6に示すように、ロック部材41は、一対の取付部411と、複数のロック歯412と、被押圧部413と、を備える。
【0033】
一対の取付部411は前後方向に間隔をあけて形成されており、それぞれ貫通穴411aを有している。各取付部411は、アッパーレール3の取付部37にそれぞれ相対して配置され、取付部411の貫通穴411aは取付部37の貫通穴37aと連通する。取付部411の貫通穴411a及び取付部37の貫通穴37aには、後述する付勢部材42の第一部分421が挿入され、これによりロック部材41はアッパーレール3の取付部37に回転可能に保持される。
【0034】
ロック歯412は、アッパーレール3の開口部32aと同数(すなわち、四つ)設けられており、開口部32aに向けて延びている。
図7に示すように、ロック歯412はロック時に、ロアレール2の切欠き24a及びアッパーレール3の開口部32a内に配置され、ロアレール2とアッパーレール3との相対移動を規制する。
【0035】
被押圧部413は、ロック歯412よりも前方に、且つ、ロック歯412とは反対側に(すなわち、開口部32aから離れる方向に)向けて湾曲して延びている。被押圧部413は、ロック解除操作時に、後述するレバーブラケット52の押圧部523によって押圧される。
【0036】
付勢部材42は、ロック部材41をアッパーレール3の側壁32に向けて(すなわち、ロック歯412を開口部32a内に向けて)付勢している。本実施形態において、付勢部材42は、折り曲げ加工された線状バネからなる。
【0037】
付勢部材42は、第一部分421と、第二部分422と、第三部分423と、第四部分424と、第五部分425と、を備える。
【0038】
第一部分421は、前後方向に延び、貫通穴411a及び貫通穴37aに挿入される。第二部分422は、第一部分421から上方に立ち上がっている。第一部分421及び第二部分422は、側壁32とロック部材41との間に配置されている。第三部分423は、第二部分422からロック部材41の上方を跨いで、ロック部材41の反対側に延びている。第四部分424は、第三部分423から下方に延びると共に、ロック部材41に接触している。第五部分425は、第四部分424から水平に延びると共に、ロック部材41に接触している。
【0039】
ロック部材41は、レバーブラケット52により被押圧部413が押圧されると、付勢部材42の第一部分421を回転軸として、ロック歯412が開口部32a及び切欠き24a内から離脱するように回転する。レバーブラケット52による押圧が除荷されると、付勢部材42の復元力により、ロック部材41は自動的に逆回転し、ロック歯412が開口部32a内及び切欠き24a内に配置される。
【0040】
<1-3 レバー機構>
主に
図2、
図4及び
図5を参照して、レバー機構5について説明する。レバー機構5は、レバー51と、レバーブラケット52と、伝達部材53と、付勢部材54と、を備える。搭乗者がレバー51を操作することにより、レバー51の動作が伝達部材53によってレバーブラケット52に伝達され、レバーブラケット52によってロック装置4のロック解除が行われる。
【0041】
図2及び
図4に示すように、レバー51は、操作部511と、アーム部512と、連結部513と、を備える。操作部511及びアーム部512は、アッパーレール3の外部に配置されている。操作部511は、搭乗者が掴んでレバー51を操作する部位である。アーム部512は左右一対設けられており、一対のアーム部512は操作部511によって連結されている。連結部513は、一対のアーム部512のそれぞれの先端に設けられており、伝達部材53と連結される。これによりレバー51は伝達部材53と連結される。
【0042】
図2及び
図4に示すように、レバーブラケット52は、上壁521と、一対の側壁522と、押圧部523と、を備える。レバーブラケット52は、ロアレール2とアッパーレール3との間に配置されている。
【0043】
一対の側壁522は、上壁521から下方に延びている。側壁522の下部には、切欠き522aが設けられている。この切欠き522aには、付勢部材54が取り付けられている。付勢部材54は例えば線状のバネである。レバーブラケット52は付勢部材54によって上方に付勢され、これにより、上壁521の一部は、突起部35に押し当てられている(
図4及び
図8参照)。後述するが、レバーブラケット52は、上壁521と突起部35との接触点P1(
図4及び
図8参照)を中心として回転する。
【0044】
押圧部523は、上壁521の後端に設けられ、平板状であり、ロック部材41の被押圧部413上に、好ましくは接触して配置されている。押圧部523はレバーブラケット52の回転に伴い、被押圧部413を押圧して、ロック部材41を回転させる。
【0045】
図2及び
図4に示すように、伝達部材53は、ロアレール2とアッパーレール3との間に配置され、レバー51の動作をレバーブラケット52に伝達する。伝達部材53は、底壁531と、一対の側壁532と、一対の軸部533と、一対の移動部534と、を備える。
【0046】
一対の側壁532は、底壁531から立ち上がっており、互いに対向している。軸部533は円柱状であり、一対の側壁532のそれぞれの外面から、互いに反対方向に延びている。軸部533は、アッパーレール3の保持部36に保持され、伝達部材53は、軸部533を中心として回転する。
【0047】
移動部534は、一対の側壁532のそれぞれの前端(すなわち、軸部533よりも前方)に設けられている。一対の移動部534は、側壁532から互いに反対方向に延びており、
図5に示すように、レバーブラケット52の一対の側壁522の下方にそれぞれ接触して配置されている。
【0048】
<2 ロック装置及びレバー機構の動作>
主に
図8を参照して、ロック装置4及びレバー機構5の動作について説明する。
図8(a)はレバー51の非操作時のシートスライド装置1の側面図であり、
図8(b)はレバー51の操作時(すなわち、レバー51を上方に持ち上げたとき)のシートスライド装置1の側面図である。
【0049】
搭乗者がレバー51の操作部511を持ち上げると、レバー51及び伝達部材53が、伝達部材53の軸部533を中心として回転する。伝達部材53の回転に伴い、伝達部材53の移動部534が、レバーブラケット52の前方側を持ち上げる(移動部534とレバーブラケット52の側壁522との接触点をP2と表記する)。これにより、レバーブラケット52は、その上壁521とアッパーレール3の突起部35との接触点P1を中心として回転する。つまり、レバーブラケット52のうち、接触点P1よりも前方の部分は上方に移動し、接触点P1よりも後方の部分は下方に移動する。
【0050】
そして、レバーブラケット52の押圧部523が、ロック部材41の被押圧部413を押圧する。その結果、ロック部材41は、付勢部材42の第一部分421を回転軸として、ロック歯412が切欠き24a及び開口部32aから離脱するよう回転する。こうして、ロアレール2とアッパーレール3とのロックが解除され、ロアレール2とアッパーレール3とは互いに摺動可能になる。
【0051】
ここで、レバー51の操作部511に操作力T1を印加したとき、ロック部材41に作用する力を求めると以下のようになる。なお、
図8(a)では、各部材に作用する力を矢印で表記しているが、矢印の向き及び長さは、その力の向き及び大きさを正確に表しているわけではない。
【0052】
レバー51の操作部511から伝達部材53の軸部533中心までの距離をY1、接触点P2から伝達部材53の軸部533中心までの距離をY2、接触点P2から接触点P1までの距離をY3、接触点P1から押圧部523までの距離をY4とする。
【0053】
レバー51の操作部511を力点、接触点P2を作用点、伝達部材53の軸部533を支点とするテコの原理により、作用点(接触点P2)に働く力T2は、T2=(Y1/Y2)T1となる。つまり、レバーブラケット52の前方部分(接触点P2)には、レバー51の操作部511に加えられた力T1よりも大きな力T2が働く。(Y1/Y2)は、好ましくは、5~6である。
【0054】
次に、接触点P2を力点、接触点P1を支点、押圧部523と被押圧部413との接触点を作用点とするテコの原理により、ロック部材41の被押圧部413に働く力T3は、(Y3/Y4)T2=(Y1/Y2)(Y3/Y4)T1となる。(Y3/Y4)は、好ましくは、0.5以上であり、例えば0.5~0.6である。
【0055】
言い換えると、ロック装置4のロック力をFとしたとき、ロック装置4を解除するのに必要な操作力は、(Y4/Y3)(Y2/Y1)Fとなる。
【0056】
レバー51の操作部511に印加された力T1を除荷すると、レバー51自体の自重及び付勢部材42の復元力によりレバー51が下がる。これにより、レバーブラケット52の押圧部523は上昇し、ロック部材41の被押圧部413を押圧しなくなる。その結果、ロック部材41は付勢部材42の復元力により自動的に回転し、ロック歯412が切欠き24a及び開口部32aに挿入される。こうして、ロアレール2とアッパーレール3とが摺動不能となるようにロックされる。
【0057】
<3 特徴>
本発明のシートスライド装置1では、レバー51とレバーブラケット52との間に、伝達部材53を介在させることにより、操作部511に印加された力よりも大きな力をレバーブラケット52の前方部分(接触点P2)に働かせることができる。その結果、レバー51の操作部511に働く力よりも大きな力をロック部材41の被押圧部413に印加することができるようになる。よって、小さな力でもロック解除することができるようになる。
【0058】
伝達部材53の軸部533を保持するための保持部36を、アッパーレール3に一体形成することにより、軸部533の保持部を別部材として設ける必要がない。そのため、部品数を減らすことができる。また、保持部36は、アッパーレール3の上壁31近傍に設けられている。これにより、レバー51のアーム部512とロアレール2の底壁21との間の隙間t(
図8(a)参照)を大きくすることができる。
【0059】
レバーブラケット52は、付勢部材54によりアッパーレール3の上壁31に設けられた突起部35との接触点P1を中心として回転する。したがって、レバーブラケット52の回転支点を形成するために、バネブラケット等の固定部品が必要なくなる。また、レバーブラケット52の回転中心(接触点P1)は、アッパーレール3の上壁31近傍に存在する。そのため、レバー51のアーム部512とロアレール2の底壁21との間の隙間t(
図8(a)参照)を大きくすることができる。
【0060】
車両衝突時等には、左右一対のシートスライド装置1のうちの一方側の
シートスライド装置1の後端部が、他方側のシートスライド装置1の後端部よりも相対的に持ち上がることがある。このような場合、一方側の
シートスライド装置1におけるレバー51のアーム部512が上方に移動(すなわち、ロック解除方向に移動)したのと等価な状況が生じる。ここで、本発明のシートスライド装置1では、アーム部512とロアレール2の底壁21との間の隙間t(
図8(a)参照)が大きくなっており、アーム部512は初期姿勢からさらに下向きに移動する余地がある。これにより、一方側の
シートスライド装置1の後端部が、他方側のシートスライド装置1の後端部よりも持ち上がったとしても、一方側のアーム部512は他方側のアーム部512とのバランスを保ちながら下向きに移動することで、一方側の
シートスライド装置1の後端部の持ち上がりに追従することができる。その結果、一方側のアーム部512は、見かけ上、初期姿勢を保つことができ、一方側の
シートスライド装置1におけるロック解除を防止することができる。なお、このような機能は「キャンセル機能」と呼ばれ、特開2015-116998号に詳述されている。
【符号の説明】
【0061】
1 シートスライド装置
2 ロアレール
3 アッパーレール
31 上壁
35 突起部
36 保持部
4 ロック装置
5 レバー機構
51 レバー
52 レバーブラケット
521 上壁
523 押圧部
53 伝達部材
533 軸部(第二回転支点)
534 移動部
54 付勢部材
S シート
P1 接触点(第一回転支点)