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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20240712BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20240712BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
B60C11/13 C
B60C11/12 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019216878
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084591
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】石原 暢之
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-048045(JP,A)
【文献】特開2019-081492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる一対の周方向主溝によって区画された中央陸部領域を有し、
前記中央陸部領域には、前記周方向主溝よりも溝幅が狭く、タイヤ周方向に延びる1つまたは複数の周方向細溝によって区画されたブロック列が設けられ、
前記ブロック列は、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝によって区画された複数の陸部ブロックを有し、
前記幅方向溝は、
幅方向溝部と、
前記幅方向溝部に連なり、タイヤ周方向に屈曲する少なくとも1つの屈曲部と
を含み、
タイヤ幅方向に沿った前記屈曲部の溝幅は、タイヤ周方向に沿って進むに連れて狭くなり、
前記周方向細溝を隔ててタイヤ幅方向において前記ブロック列に隣接する隣接ブロック列は、タイヤ幅方向に延びるサイプが形成された隣接陸部ブロックを有し、
前記陸部ブロックと、前記陸部ブロックに前記周方向細溝を隔ててタイヤ幅方向に隣接する前記隣接陸部ブロックは、互い支え合う状態となるように近接して設けられ、
前記サイプは、前記幅方向溝部のタイヤ周方向における一端と、前記幅方向溝部のタイヤ周方向における他端との間に位置するタイヤ。
【請求項2】
タイヤ周方向に延びる一対の周方向主溝によって区画された中央陸部領域を有し、
前記中央陸部領域には、前記周方向主溝よりも溝幅が狭く、タイヤ周方向に延びる1つまたは複数の周方向細溝によって区画されたブロック列が設けられ、
前記ブロック列は、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝によって区画された複数の陸部ブロックを有し、
前記幅方向溝は、
幅方向溝部と、
前記幅方向溝部に連なり、タイヤ周方向に屈曲する少なくとも1つの屈曲部と
を含み、
タイヤ幅方向に沿った前記屈曲部の溝幅は、タイヤ周方向に沿って進むに連れて狭くなり、
前記周方向細溝を隔ててタイヤ幅方向において前記ブロック列に隣接する隣接ブロック列は、タイヤ幅方向に延びるサイプが形成された隣接陸部ブロックを有し、
前記陸部ブロックと、前記陸部ブロックに前記周方向細溝を隔ててタイヤ幅方向に隣接する前記隣接陸部ブロックは、互い支え合う状態となるように近接して設けられ、
前記幅方向溝部は、前記隣接ブロック列側に少なくも形成され、
前記サイプの延在方向は、前記幅方向溝部の延在方向と一致するタイヤ。
【請求項3】
タイヤ周方向に延びる一対の周方向主溝によって区画された中央陸部領域を有し、
前記中央陸部領域には、前記周方向主溝よりも溝幅が狭く、タイヤ周方向に延びる1つまたは複数の周方向細溝によって区画されたブロック列が設けられ、
前記ブロック列は、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝によって区画された複数の陸部ブロックを有し、
前記幅方向溝は、
幅方向溝部と、
前記幅方向溝部に連なり、タイヤ周方向に屈曲する少なくとも1つの屈曲部と
を含み、
タイヤ幅方向に沿った前記屈曲部の溝幅は、タイヤ周方向に沿って進むに連れて狭くなり、
前記周方向細溝を隔ててタイヤ幅方向において前記ブロック列に隣接する隣接ブロック列は、タイヤ幅方向に延びるサイプが形成された隣接陸部ブロックを有し、
前記陸部ブロックと、前記陸部ブロックに前記周方向細溝を隔ててタイヤ幅方向に隣接する前記隣接陸部ブロックは、互い支え合う状態となるように近接して設けられ、
前記幅方向溝部は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に折れ曲がった折れ曲がり部分を有し、
前記折れ曲がり部分を構成する第1傾斜溝壁のタイヤ幅方向における長さ及び位置と、前記折れ曲がり部分を構成する第2傾斜溝壁のタイヤ幅方向における長さ及び位置とは、一致するタイヤ。
【請求項4】
前記屈曲部は、前記ブロック列のタイヤ幅方向における中央部分に形成される請求項1乃至3の何れか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記屈曲部は、V字状である請求項1乃至4の何れか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記幅方向溝は、タイヤ赤道線を含むトレッド中央領域に形成される請求項1乃至5の何れか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷雪路面の走行に適したタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、氷雪路面の走行に適したスタッドレスタイヤなどの空気入りタイヤ(以下、タイヤと適宜省略する)では、氷雪路面の走行性能(以下、雪上性能)だけでなく、特にドライ路面における操縦安定性と耐摩耗性とを両立するため、路面と接する陸部ブロックの剛性を高める様々な形状が採用されている。
【0003】
例えば、幅方向溝によって区画された陸部ブロックを連結するタイバーと呼ばれるバー状の凸部を幅方向溝内に設けるトレッドパターンが知られている(特許文献1参照)。また、このような凸部の上面(タイヤ径方向外側面)には、タイヤ径方向内側に凹んだ凹部が形成される。
【0004】
このようなトレッドパターンによれば、陸部ブロックの剛性が高まるため、操縦安定性及び耐摩耗性を向上し得る。また、凹部が形成されることによって幅方向溝の容積が大きく低減することを回避し得るため、雪上性能などにも大きな影響を与えないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-227154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような陸部ブロックをタイバーによって連結する形状には、次のような課題があると考えられる。
【0007】
具体的には、凸部の存在によって、陸部ブロックのタイヤ周方向における端部の路面に対する圧力(エッヂ圧)が低下する。この結果、雪上トラクションが低下し易い。
【0008】
つまり、雪上トラクション(及び制動力、以下同)の向上には、陸部ブロックのエッヂ圧、特に、陸部ブロックの周方向端部におけるエッヂ圧を高めることが重要である。
【0009】
但し、エッヂ圧を高めると、陸部ブロックの変形の程度が大きくなり、偏摩耗の原因となり易く、耐摩耗性の確保が難しくなる。
【0010】
さらに、陸部ブロックに用いられるゴムの特性によって雪上トラクションを確保する技術も知られているが、昨今のより低い転がり抵抗の要求を考慮すると、ゴムの特性に大きく依存した雪上トラクションの確保には限界があると想定される。
【0011】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、トレッドパターンによって、雪上性能と耐摩耗性とをさらに高い次元で両立し得るタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、タイヤ周方向に延びる一対の周方向主溝(周方向主溝71, 72)によって区画された中央陸部領域(中央陸部領域CT1)を有し、前記中央陸部領域には、前記周方向主溝よりも溝幅が狭く、タイヤ周方向に延びる1つまたは複数の周方向細溝(周方向細溝61, 62)によって区画されたブロック列(ブロック列30)が設けられ、前記ブロック列は、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝(幅方向溝300)によって区画された複数の陸部ブロック(陸部ブロック100, 200)を有し、幅方向溝は、幅方向溝部(幅方向溝部310, 320)と、前記幅方向溝部に連なり、タイヤ周方向に屈曲する少なくとも1つの屈曲部(屈曲部330, 340)とを含み、タイヤ幅方向に沿った前記屈曲部の溝幅は、タイヤ周方向に沿って進むに連れて狭くなるタイヤ(空気入りタイヤ10)である。
【発明の効果】
【0013】
上述したタイヤによれば、トレッドパターンによって、雪上性能と耐摩耗性とをさらに高い次元で両立し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、空気入りタイヤ10のトレッドの一部平面展開図である。
図2図2は、ブロック列30の一部拡大平面図である。
図3図3は、周方向区間Sの図示を含むブロック列30及びブロック列40の一部拡大平面図である。
図4図4は、延在角度θ1及び延在角度θ2の図示を含むブロック列30及びブロック列40の一部拡大平面図である。
図5図5は、幅方向溝300を構成する幅方向溝部310側の一部拡大平面図である。
図6図6は、幅方向溝300を構成する幅方向溝部320側の一部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0016】
(1)タイヤの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10のトレッドの一部平面展開図である。図1に示すように、空気入りタイヤ10は、路面と接するトレッド20を有する。
【0017】
トレッド20には、空気入りタイヤ10に対する要求性能に応じたトレッドパターンが形成される。本実施形態では、空気入りタイヤ10は、トラック・バス(TB)に好適に用い得るスタッドレスタイヤである。なお、スタッドレスタイヤは、スノータイヤまたはウインタータイヤなどと呼ばれてもよい。或いは、空気入りタイヤ10は、冬期に限らず、四季を通じて利用可能ないわゆるオールシーズンタイヤであっても構わない。
【0018】
また、空気入りタイヤ10は、必ずしもトラック・バス用ではなく、他の車種、例えば、乗用自動車、バン・小型トラックに用いられても構わない。
【0019】
トレッド20には、タイヤ周方向に延びる複数のブロック列が設けられる。具体的には、トレッド20には、ブロック列30、ブロック列40及びブロック列50が設けられる。
【0020】
ブロック列30は、タイヤ赤道線CLを含む位置に設けられる。ブロック列30は、周方向細溝61及び周方向細溝62によって区画されたブロック列である。ブロック列40及びブロック列50は、ブロック列30のタイヤ幅方向外側に設けられる。
【0021】
ブロック列40のタイヤ幅方向外側には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝71が形成される。同様に、ブロック列30のタイヤ幅方向外側には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝72が形成される。本実施形態では、周方向主溝71及び周方向主溝72は、直線状である。但し、周方向主溝71及び周方向主溝72は、タイヤ幅方向に多少惰行するなど、必ずしも直線状でなくても構わない。
【0022】
より具体的には、ブロック列30、ブロック列40及びブロック列50は、中央陸部領域CT1に設けられる。中央陸部領域CT1は、タイヤ周方向に延びる一対の周方向主溝71及び周方向主溝72によって区画された領域として定義されてよい。
【0023】
また、ブロック列30は、トレッド中央領域CT2に設けられる。トレッド中央領域CT2は、より具体的には、タイヤ赤道線CLを含む領域と定義されてもよい。さらに、トレッド中央領域CT2は、中央陸部領域CT1に含まれ、中央陸部領域CT1よりも狭い領域と定義されてもよい。
【0024】
本実施形態では、中央陸部領域CT1には、周方向主溝71及び周方向主溝72の溝幅と同程度或いは周方向主溝71及び周方向主溝72の溝幅よりも広い溝幅を有する周方向溝は形成されていない。なお、本実施形態では、周方向主溝71及び周方向主溝72の溝幅は、4.0~10.0mm程度、周方向細溝61及び周方向細溝62の溝幅は、1.5~4.0mm程度である。
【0025】
つまり、中央陸部領域CT1は、周方向細溝61及び周方向細溝62など、タイヤ周方向に延びる周方向細溝のみが形成される。このため、中央陸部領域CT1では、隣接陸部ブロック間の距離(間隔、空隙と呼んでもよい)が狭く、この種の一般的なタイヤよりも複数の陸部ブロックが凝集している。
【0026】
ブロック列30には、タイヤ周方向に沿って複数の陸部ブロック100及び陸部ブロック200が設けられてもよい。具体的には、陸部ブロック100は、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向における一方側において、タイヤ周方向に沿って複数設けられる。陸部ブロック200は、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向における他方側において、タイヤ周方向に沿って複数設けられる。図1に示すように、陸部ブロック100と陸部ブロック200とは、概ね同形状である。また、陸部ブロック100と陸部ブロック200とは、点対称または線対称であってもよい。
【0027】
なお、符号を付した図示は省略するが、ブロック列40及びブロック列50にも、陸部ブロック100及び陸部ブロック200と概ね同形状の陸部ブロックが設けられてもよい。また、陸部ブロック100及び陸部ブロック200など、トレッド20を構成する陸部ブロックに用いられるゴムには、雪上性能及び耐摩耗性などを考慮し、適宜適切な材料が用いられればよく、特に限定されない。
【0028】
但し、空気入りタイヤ10の転がり抵抗(RR)の低減に貢献する材料が用いられてよい。具体的には、転がり抵抗係数(RRC)は、7.5以下であることが望ましい。
【0029】
(2)ブロック列30の形状
図2は、ブロック列30の一部拡大平面図である。図2に示すように、ブロック列30は、タイヤ周方向に延びる周方向細溝61と、周方向細溝62とによって区画されている。
【0030】
ブロック列30は、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝300によって区画された複数の陸部ブロック100及び陸部ブロック200を有する。つまり、本実施形態では、ブロック列30には、陸部ブロック100と陸部ブロック200とが含まれる。
【0031】
幅方向溝300は、ブロック列30に形成されており、トレッド中央領域CT2(図1参照)に位置する。
【0032】
上述したように、周方向細溝61及び周方向細溝62は、周方向主溝71及び周方向主溝72よりも溝幅が狭い。また、本実施形態では、周方向細溝61及び周方向細溝62は、直線状である。但し、周方向細溝61及び周方向細溝62も、タイヤ幅方向に多少惰行するなど、必ずしも直線状でなくても構わない。
【0033】
陸部ブロック100及び陸部ブロック200には、タイヤ幅方向に延びる複数のサイプが形成される。
【0034】
具体的には、陸部ブロック100には、サイプ110及びサイプ120が形成される。また、陸部ブロック200には、サイプ210及びサイプ220が形成される。なお、サイプとは、陸部ブロックの接地面内では閉じる細溝であり、非接地時におけるサイプの開口幅は、特に限定されないが、一般的には、0.1mm~1.5mm程度である。
【0035】
タイヤ幅方向における陸部ブロック100と陸部ブロック200との間には、ブロック間細溝400が形成される。ブロック間細溝400は、タイヤ周方向に沿って延びるが、直線状ではなく、タイヤ幅方向において惰行している。
【0036】
幅方向溝300は、タイヤ周方向において隣接する陸部ブロック100を区画するとともに、タイヤ周方向において隣接する陸部ブロック200を区画する。
【0037】
幅方向溝300は、幅方向溝部310、幅方向溝部320、屈曲部330及び屈曲部340を有する。つまり、幅方向溝300は、幅方向溝部と、幅方向溝部に連なり、タイヤ周方向に屈曲する少なくとも1つの屈曲部とを含んでよい。
【0038】
幅方向溝部310は、タイヤ周方向において隣接する陸部ブロック100を区画する部分である。幅方向溝部320は、タイヤ周方向において隣接する陸部ブロック200を区画する部分である。なお、幅方向溝部310及び幅方向溝部320は、ラグ溝部或いは横溝部などと呼ばれてもよいし、幅方向溝300は、ラグ溝或いは横溝などと呼ばれてもよい。
【0039】
屈曲部330は、幅方向溝部310と幅方向溝部320とに連通し、幅方向溝部310と幅方向溝部320との間に形成される。同様に、屈曲部340は、幅方向溝部310と幅方向溝部320とに連通し、幅方向溝部310と幅方向溝部320との間に形成される。
【0040】
屈曲部330は、タイヤ周方向における一方側に凸となり、屈曲部340は、タイヤ周方向における他方側に凸となる。また、タイヤ幅方向に沿った屈曲部330の溝幅は、タイヤ周方向に沿って、具体的には、タイヤ周方向における一方側に進むに連れて狭くなる。同様に、タイヤ幅方向に沿った屈曲部340の溝幅は、タイヤ周方向に沿って、具体的には、タイヤ周方向における他方側に進むに連れて狭くなる。
【0041】
このように、本実施形態では、屈曲部330及び屈曲部340は、楔状である。つまり、屈曲部330及び屈曲部340は、V字状、先細状などと言い換えてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、屈曲部330及び屈曲部340は、ブロック列30のタイヤ幅方向における中央部分に形成される。なお、中央部分とは、タイヤ幅方向に沿ったブロック列30の幅を二分した位置を基準とした所定範囲を意味してよい。所定範囲とは、例えば、ブロック列30の幅の1/4~1/5程度とすることができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、幅方向溝部310は、周方向細溝61に連なる。また、幅方向溝部320は、周方向細溝62に連なる。なお、本実施形態では、幅方向溝部310が周方向細溝61に連なるタイヤ周方向における位置と、幅方向溝部320が周方向細溝62に連なるタイヤ周方向における位置とは、オフセットしている(つまり、異なっている)。
【0044】
また、幅方向溝部310の段差部分311よりも周方向細溝61寄りの部分では、屈曲部330及び屈曲部340を含む他の部分よりも溝深さが深く、周方向細溝61の溝深さと同様の溝深さとなっている。同様に、幅方向溝部320の段差部分321よりも周方向細溝62寄りの部分では、屈曲部330及び屈曲部340を含む他の部分よりも溝深さが深く、周方向細溝62の溝深さと同様の溝深さとなっている。つまり、幅方向溝300の屈曲部330及び屈曲部340を含む中央部分の溝深さは、周方向細溝61及び周方向細溝62などの溝深さよりも浅い。
【0045】
屈曲部330及び屈曲部340は、ブロック間細溝400に連通する。ブロック間細溝400も、屈曲部330及び屈曲部340と同様の溝深さを有する。
【0046】
(3)隣接ブロック列との関係
図3は、周方向区間Sの図示を含むブロック列30及びブロック列40の一部拡大平面図である。図3に示すように、ブロック列40は、ブロック列30に隣接する。具体的には、ブロック列40は、ブロック列30のタイヤ幅方向外側において、ブロック列30に隣接する。本実施形態において、ブロック列40Jは、隣接ブロック列を構成する。
【0047】
より具体的には、ブロック列40の陸部ブロック100は、ブロック列30の陸部ブロック200に隣接する。本実施形態において、ブロック列40の陸部ブロック100は、隣接陸部ブロックを構成する。
【0048】
つまり、周方向細溝62を隔ててタイヤ幅方向においてブロック列30に隣接するブロック列40は、タイヤ幅方向に延びるサイプ120が形成された陸部ブロック100を有する。
【0049】
ブロック列40の陸部ブロック100に形成されるサイプ120は、幅方向溝部320のタイヤ周方向における一端と、幅方向溝部のタイヤ周方向における他端との間に位置する。
【0050】
具体的には、ブロック列40の陸部ブロック100に形成されるサイプ120は、周方向端320aと周方向端320bとの間、具体的には周方向区間S内に位置する。より具体的には、周方向細溝62に連通するサイプ120の端部120aは、周方向端320aと周方向端320bとの間に位置する。
【0051】
なお、本実施形態では、サイプ120の全体が周方向区間S内に位置しているが、端部120aが周方向区間S内に位置していればよく、必ずしもサイプ120全体が周方向区間S内に位置していなくてもよい。
【0052】
図4は、延在角度θ1及び延在角度θ2の図示を含むブロック列30及びブロック列40の一部拡大平面図である。
【0053】
図4に示すように、幅方向溝部320は、ブロック列30に隣接するブロック列40側に形成されている。幅方向溝部320は、上述したように、タイヤ幅方向に延びている。具体的には、幅方向溝部320は、タイヤ幅方向と平行ではなく、延在角度θ1を有している。延在角度θ1は、幅方向溝部320の延在方向と、タイヤ幅方向とが成す角度である。なお、幅方向溝部320の延在方向は、ブロック列30の陸部ブロック200の溝壁230の延在方向を基準としてよい。
【0054】
また、ブロック列40の陸部ブロック100のサイプ120、及びブロック列40の陸部ブロック200のサイプ210もタイヤ幅方向に延びているが、タイヤ幅方向と平行ではなく、延在角度θ2を有している。
【0055】
延在角度θ1及び延在角度θ2は、5~15°程度であることが好ましい。本実施形態では、ブロック列40の陸部ブロック100のサイプ120、及びブロック列40の陸部ブロック200のサイプ210の延在方向は、ブロック列30の幅方向溝部320の延在方向と一致する。ここで、延在方向が一致するとは、延在角度θ1と延在角度θ2との差が、10度以下であることを意味してよい。
【0056】
(4)幅方向溝300の形状
図5は、幅方向溝300を構成する幅方向溝部310側の一部拡大平面図である。図6は、幅方向溝300を構成する幅方向溝部320側の一部拡大平面図である。
【0057】
図5に示すように、幅方向溝部310は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に折れ曲がった折れ曲がり部分312を有する。
【0058】
幅方向溝部310は、陸部ブロック100の溝壁130、及びタイヤ周方向において溝壁130側の陸部ブロック100と隣接する陸部ブロック100の溝壁140とによって形成される。溝壁130は、折れ曲がり部分312を構成する傾斜溝壁131を含む。また、溝壁140は、折れ曲がり部分312を構成する傾斜溝壁141を含む。傾斜溝壁131と傾斜溝壁141とは、対向して形成される。
【0059】
本実施形態では、傾斜溝壁131(第1傾斜溝壁)のタイヤ幅方向における長さ及び位置と、傾斜溝壁141(第2傾斜溝壁)のタイヤ幅方向における長さ及び位置とは、一致している。言い換えると、傾斜溝壁131のタイヤ幅方向外側端と、傾斜溝壁141のタイヤ幅方向外側端とは、タイヤ周方向上において重なっている。同様に、傾斜溝壁131のタイヤ幅方向内側端と、傾斜溝壁141のタイヤ幅方向内側端とは、タイヤ周方向上において重なっている。
【0060】
また、図6に示すように、幅方向溝部320は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に折れ曲がった折れ曲がり部分322を有する。
【0061】
幅方向溝部320は、陸部ブロック200の溝壁230、及びタイヤ周方向において溝壁230側の陸部ブロック200と隣接する陸部ブロック200の溝壁240とによって形成される。
【0062】
上述した幅方向溝部310と同様に、本実施形態では、傾斜溝壁231(第1傾斜溝壁)のタイヤ幅方向における長さ及び位置と、傾斜溝壁241(第2傾斜溝壁)のタイヤ幅方向における長さ及び位置とは、一致している。言い換えると、傾斜溝壁231のタイヤ幅方向外側端と、傾斜溝壁241のタイヤ幅方向外側端とは、タイヤ周方向上において重なっている。同様に、傾斜溝壁231のタイヤ幅方向内側端と、傾斜溝壁241のタイヤ幅方向内側端とは、タイヤ周方向上において重なっている。
【0063】
(5)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、中央陸部領域CT1には、周方向主溝71, 72よりも溝幅が狭い周方向細溝61, 62によって区画されたブロック列30が設けられる。また、幅方向溝300は、幅方向溝部310, 320と、屈曲部330, 340とを含み、タイヤ幅方向に沿った屈曲部330, 340の溝幅は、タイヤ周方向に沿って進むに連れて狭くなる楔状である。
【0064】
周方向細溝61, 62によって区画されたブロック列30の陸部ブロック100, 200、及びブロック列30に隣接するブロック列40(及びブロック列50)の陸部ブロックは、タイヤ幅方向において近接して設けられるため、互いに支え合うような状態となり、特にタイヤ幅方向における変形(動き)が抑制される。このため、陸部ブロックの偏摩耗を抑制し得る。また、タイバーなどは設けられないため、陸部ブロックタイヤ周方向端部における十分なエッジ圧も確保し得る。
【0065】
また、陸部ブロック間に幅方向溝300を形成するととともに、屈曲部330, 340の溝幅は、タイヤ周方向に沿って進むに連れて狭くなる楔状であるため、幅方向溝300に入り込む雪のボリュームを確保しつつ、屈曲部330, 340による雪柱せん断力を高め得る。
【0066】
具体的には、屈曲部330, 340が楔状であるため、屈曲部330, 340への雪の貫入を促しつつ、屈曲部330, 340に入り込んだ雪を効率よく押し固めることができ、雪柱せん断力が向上する。これにより、雪上性能が向上する。
【0067】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、トレッドパターンによって、雪上性能と耐摩耗性とをさらに高い次元で両立し得る。
【0068】
本実施形態では、屈曲部330, 340は、ブロック列30のタイヤ幅方向における中央部分に形成される。このため、接地圧が最も高くなる領域を利用することによって、雪柱せん断力をさらに効果的に向上し得る。これにより、雪上性能がさらに向上する。
【0069】
本実施形態では、ブロック列40の陸部ブロック100に形成されるサイプ120は、周方向端320aと周方向端320bとの間、具体的には周方向区間S内に位置する。このため、空気入りタイヤ10が路面の転動時には、幅方向溝300の屈曲部330, 340と、サイプ120との接地タイミングが概ね一致するため、同時期に両方のエッヂ効果を発揮させることでき、雪上性能が向上する。
【0070】
本実施形態では、ブロック列40の陸部ブロック100のサイプ120、及びブロック列40の陸部ブロック200のサイプ210の延在方向は、ブロック列30の幅方向溝部320の延在方向と一致する。このため、空気入りタイヤ10が路面の転動時には、陸部ブロックに形成されているサイプと、幅方向溝300の幅方向溝部320との接地タイミングが同時期になるとともに、当該サイプと幅方向溝部320の延在方向も一致していることによって、効果的にエッヂ効果を発揮させることでき、雪上性能が向上する。
【0071】
本実施形態では、傾斜溝壁131(傾斜溝壁231)のタイヤ幅方向における長さ及び位置と、傾斜溝壁141(傾斜溝壁241)のタイヤ幅方向における長さ及び位置とは、一致している。このため、折れ曲がり部分312(折れ曲がり部分322)によって、雪柱せん断力をさらに高めつつ、傾斜溝壁のタイヤ幅方向における長さ及び位置が一致することによって、幅方向溝300に入り込んで固められた雪が排出され易い。これにより、雪上性能がさらに向上する。
【0072】
本実施形態では、幅方向溝300は、トレッド中央領域CT2に形成される。このため、接地圧が最も高くなる領域を利用することによって、幅方向溝300による雪柱せん断力及びエッヂ圧をさらに効果的に向上し得る。これにより、雪上性能がさらに向上する。
【0073】
(6)その他の実施形態
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0074】
例えば、上述した実施形態では、幅方向溝300の屈曲部330及び屈曲部340は、楔状(V字状)であるとして説明したが、屈曲部330及び屈曲部340の形状は、必ずしも楔状でなくても構わない。具体的には、タイヤ幅方向に沿った屈曲部の溝幅が、タイヤ周方向に沿って進むに連れて狭くなる形状であれば、例えば、テーパー状またはドーム状などであってもよいし、階段状に溝幅が減少するような形状でも構わない。
【0075】
上述した本実施形態では、屈曲部330及び屈曲部340のタイヤ幅方向における位置は概ね同様であるが、屈曲部330及び屈曲部340のタイヤ幅方向における位置は、タイヤ幅方向においてオフセットしていてもよい。
【0076】
また、屈曲部は、タイヤ周方向における一方側のみに形成されてもよい。さらに、ブロック列30には、実質的に2つの副ブロック列(陸部ブロック100のブロック列と、陸部ブロック200のブロック列)とが設けられていたが、例えば、ブロック間細溝400を形成せずに、ブロック列30(及び/または他のブロック列)は、1つのブロック列が設けられてもよい。
【0077】
また、屈曲部は、必ずしもブロック列30のタイヤ幅方向における中央部分に形成されていなくてもよく、さらに、屈曲部に連通する幅方向溝部310または幅方向溝部320の長さは、屈曲部の位置に応じて異なってもよい。
【0078】
また、空気入りタイヤ10は、車両への装着時における回転方向(Rotation)が指定されてもよい。
【0079】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0080】
10 空気入りタイヤ
20 トレッド
30, 40, 50 ブロック列
61, 62 周方向細溝
71, 72 周方向主溝
100 陸部ブロック
110, 120 サイプ
120a 端部
130 溝壁
131 傾斜溝壁
140 溝壁
141 傾斜溝壁
200 陸部ブロック
210, 220 サイプ
230 溝壁
231 傾斜溝壁
240 溝壁
241 傾斜溝壁
300 幅方向溝
310 幅方向溝部
311 段差部分
312 折れ曲がり部分
320 幅方向溝部
320a, 320b 周方向端
321 段差部分
322 折れ曲がり部分
330, 340 屈曲部
400 ブロック間細溝
CT1 中央陸部領域
CT2 トレッド中央領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6