(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】多価FC化合物を用いる炎症性疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240712BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240712BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240712BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
A61K39/395 ZMD
A61P7/00
A61P29/00
A61P37/00
(21)【出願番号】P 2019527452
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(86)【国際出願番号】 US2017065400
(87)【国際公開番号】W WO2018107082
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510089111
【氏名又は名称】グリックニック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブロック, デイビッド エス.
(72)【発明者】
【氏名】オルセン, ヘンリック
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】齋藤 恵
【審判官】冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518570(JP,A)
【文献】Autoimmunity Reviews,15 (2016.03),781-785
【文献】Allergy,58 (2003),543-552
【文献】Blood,88(1) (1996),184-193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
CAPlus/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS(STN))
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチFc治療薬に対して不適切な応答を有すると決定された患者における炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物がマルチFc治療薬を含み、前記治療が、前記マルチFc治療薬の第1の投与期間中の開始用量の少なくとも約105%の用量で前記マルチFc治療薬の第1の累積漸増用量を投与することを含み、前記患者が、
(a)前記マルチFc治療薬の前記開始用量の投与後の所定の閾値よりも低いiC3bの血中レベル、または
(b)ベースラインから約20%未満、約30%未満、約40%未満、又は約50%未満の変化パーセントであるiC3bの血中レベルを有すると決定されており、
iC3bの所定の閾値が、(ア)約25μg/mL~約300μg/mLであるか、又は(イ)iC3b+である好中球および単球が約25%であり、
前記マルチFc治療薬が、2つ以上のFcドメインを含み、
各Fcドメインが2つのFcドメインモノマーで構成され、
各Fcドメインモノマーは、
(i)CH1ドメインおよびCH2ドメインと、
(ii)N末端ヒンジ領域と、
(iii)多量体化ドメインと、で構成され、
前記多量体化ドメインが前記Fcドメインを多量体に構築させる、医薬組成物。
【請求項2】
マルチFc治療薬に対して不適切な応答を有すると決定された患者における炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物がマルチFc治療薬を含み、前記治療が、前記マルチFc治療薬の第1の投与期間中の開始用量の少なくとも約105%の用量で前記マルチFc治療薬の第1の累積漸増用量を投与することを含み、前記患者が、
(a)前記マルチFc治療薬の前記開始用量の投与後の所定の閾値よりも低いiC3bの血中レベル、または
(b)ベースラインから約20%未満、約30%未満、約40%未満、又は約50%未満の変化パーセントであるiC3bの血中レベルを有すると決定されており、
iC3bの所定の閾値が、(ア)約25μg/mL~約300μg/mLであるか、又は(イ)iC3b+である好中球および単球が約25%であり、
前記マルチFc治療薬が、ホモ二量体のFcドメインの多量体を含み、前記ホモ二量体のFcドメインが、配列番号4のアミノ酸21~264を含むモノマーを含む、医薬組成物。
【請求項3】
前記治療が、前記第1の累積漸増用量の前記マルチFc治療薬の投与後に前記患者の前記血中iC3bレベルを決定することと、前記患者が
(a)前記マルチFc治療薬の前記開始用量の投与後の所定の閾値よりも低いiC3bの血中レベル、または
(b)ベースラインから約10%未満の変化パーセントであるiC3bの血中レベルを有すると決定された場合に、
前記第1の累積漸増用量よりも多い、前記マルチFc治療薬の第2の累積漸増用量を第2の投与期間にわたって投与することと、をさらに含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記血中iC3bのレベルの決定が、前記所定のiC3b閾値が満たされるまで、またはiC3bのレベルが約10%を超えて変化するまで、前記マルチFc治療薬の累積漸増用量を継続しながら繰り返される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
累積漸増用量が、前記投与期間を通しての前記マルチFc治療薬の漸増用量を含む、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
累積漸増用量が、前記投与期間中の漸増用量および増分用量の両方を含む、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記マルチFc治療薬が、5つまたは6つのFcドメインを含み、各Fcドメインは、隣接するFcドメインポリペプチドのシステイン残基にジスルフィド結合を介して結合したシステイン残基を含む、請求項1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記多量体化ドメインがIgMまたはIgAに由来する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記マルチFc治療薬の前記累積漸増用量が、前記マルチFc治療薬の前記以前に投与された用量の少なくとも約110%、少なくとも約115%、少なくとも約120%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、又は少なくとも約200%である、請求項1~8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記iC3bの所定の閾値が
、約50μg/mL~約200μg/mL又は約75μg/mL~約125μg/mLである、請求項1~9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記iC3bの所定の閾値が、約100μg/mLである、請求項1~9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記パーセント変化が約10%未満である、請求項1~9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記iC3bレベルが、iC3bの代替マーカーの測定によって決定される、請求項1~
12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記iC3bの代替マーカーが、iC3b1、iC3b2、C3a、C3a desArg、C4a、C4a desArg、C3f、C3dg、C3d、およびC3gからなる群から選択される、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記iC3bの代替マーカーが、C3a又はC4aである、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記iC3bの代替マーカーについての前記所定の閾値が約30ng/mL未満、約20ng/mL未満、約10ng/mL未満、又は約5ng/mL未満である、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記代替マーカーの前記パーセント変化が約10%未満、約20%未満、約30%未満、約40%未満、又は約50%未満である、請求項
13~16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記自己免疫または炎症性疾患が、自己免疫性血球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、喘息、川崎病、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、結腸クローン病、糖尿病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、重症筋無力症、抗第VIII因子自己免疫疾患、皮膚筋炎、血管炎、ぶどう膜炎、およびアルツハイマー病からなる群から選択される、請求項1~
17のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記iC3bレベルがイムノアッセイによって決定される、請求項1~
18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記イムノアッセイがELISAまたはウエスタンブロットを含む、請求項
19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記iC3bレベルがフローサイトメトリーによって決定される、請求項1~
20のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
マルチFc治療薬の有効用量
の決定
を補助するための方法であって、
前記マルチFc治療薬の開始用量で投与した後の、前記マルチFc治療薬を必要とする対象
から得られたサンプルにおける循環iC3bのレベルを測定すること
、を含み、
前記対象における前記iC3bの循環レベルが所定の閾値を下回るとき、または前記iC3bのレベルが約20%未満、約30%未満、約40%未満、又は約50%未満で変化している場合に、前記対象が前記マルチFc治療薬の第1の累積漸増用量を必要とすると決定
され、
iC3bの所定の閾値が、(ア)約25μg/mL~約300μg/mLであるか、又は(イ)iC3b+である好中球および単球が約25%であり、
前記マルチFc治療薬が、2つ以上のFcドメインを含み、
各Fcドメインが2つのFcドメインモノマーで構成され、
各Fcドメインモノマーは、
(i)CH1ドメインおよびCH2ドメインと、
(ii)N末端ヒンジ領域と、
(iii)多量体化ドメインと、で構成され、
前記多量体化ドメインが前記Fcドメインを多量体に構築させる、方法。
【請求項23】
マルチFc治療薬の有効用量
の決定
を補助するための方法であって、
前記マルチFc治療薬の開始用量で投与した後の、前記マルチFc治療薬を必要とする対象
から得られたサンプルにおける循環iC3bのレベルを測定すること
、を含み、
前記対象における前記iC3bの循環レベルが所定の閾値を下回るとき、または前記iC3bのレベルが約20%未満、約30%未満、約40%未満、又は約50%未満で変化している場合に、前記対象が前記マルチFc治療薬の第1の累積漸増用量を必要とすると決定
され、
iC3bの所定の閾値が、(ア)約25μg/mL~約300μg/mLであるか、又は(イ)iC3b+である好中球および単球が約25%であり、
前記マルチFc治療薬が、二量体の多量体を含み、前記二量体が、配列番号4のアミノ酸21~264を含むモノマーを含む、方法。
【請求項24】
前記マルチFc治療薬の前記第1の累積漸増用量の投与後に、前記患者の血中iC3bレベルの前記決定
が繰り返され、前記iC3bのレベルが所定の閾値より低い場合、または前記iC3bのレベルが約10%未満で変化している場合、以前に投与された累積漸増用量よりも多い前記マルチFc治療薬の第2の累積漸増用量
が決定
される、請求項
22又は
23に記載の方法。
【請求項25】
前記血中iC3bレベルの繰り返しの決定が、前記所定のiC3b閾値が満たされるまで、または前記iC3bのレベルが約10%を超えて変化するまで、前記マルチFc治療薬の累積漸増用量を継続しながら繰り返される、請求項
22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
累積漸増用量が、前記投与期間を通しての前記マルチFc治療薬の漸増用量を含む、請求項
22~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
累積漸増用量が、前記投与期間中の漸増用量および増分用量の両方を含む、請求項
22~25のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記マルチFc治療薬が、5つまたは6つのFcドメインを含み、各Fcドメインは、隣接するFcドメインポリペプチドのシステイン残基にジスルフィド結合を介して結合したシステイン残基を含む、請求項
22~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記多量体化ドメインがIgMまたはIgAに由来する、請求項
22に記載の方法。
【請求項30】
前記マルチFc治療薬の前記累積漸増用量が、前記マルチFc治療薬の前記以前に投与された用量の少なくとも約110%、少なくとも約115%、少なくとも約120%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、又は少なくとも約200%である、請求項
22~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記iC3bの所定の閾値が
、約50μg/mL~約200μg/mL又は約75μg/mL~約125μg/mLである、請求項
22~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記iC3bの所定の閾値が、約100μg/mLである、請求項
22~30のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記パーセント変化が約10%未満である、請求項
22~30のいずれかに記載の方法
【請求項34】
前記iC3bレベルが、iC3bの代替マーカーの測定によって決定される、請求項
22~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記iC3bの代替マーカーが、iC3b1、iC3b2、C3a、C3a desArg、C4a、C4a desArg、C3f、C3dg、C3d、およびC3gからなる群から選択される、請求項
34に記載の方法。
【請求項36】
前記iC3bの代替マーカーが、C3a又はC4aである、請求項
34に記載の方法。
【請求項37】
前記iC3bの代替マーカーについての前記所定の閾値が約30ng/mL未満、約20ng/mL未満、約10ng/mL未満、又は約5ng/mL未満である、請求項
34に記載の方法。
【請求項38】
前記代替マーカーの前記パーセント変化が約10%未満、約20%未満、約30%未満、約40%未満、又は約50%未満である、請求項
34~37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記自己免疫または炎症性疾患が、自己免疫性血球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、喘息、川崎病、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、結腸クローン病、糖尿病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、重症筋無力症、抗第VIII因子自己免疫疾患、皮膚筋炎、血管炎、ぶどう膜炎、およびアルツハイマー病からなる群から選択される、請求項
20~38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記iC3bレベルがイムノアッセイによって決定される、請求項
20~39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記イムノアッセイがELISAまたはウエスタンブロットを含む、請求項
40に記載の方法。
【請求項42】
前記iC3bレベルがフローサイトメトリーによって決定される、請求項
20~41のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2016年12月9日に出願された米国仮特許出願第62/432,407号の優先権を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読フォーマットのコピー(ファイル名:GLIK_020_01WO_ST25.txt、記録日:2017年12月8日、ファイルサイズ15キロバイト)。
【0003】
本発明は、一般に免疫学、自己免疫、炎症、および腫瘍免疫学の分野に関する。より具体的には、本発明は、マルチFc治療薬に対する患者の応答を決定するための方法、およびマルチFc治療薬の有効用量を決定するための方法に関する。本発明はさらに、自己免疫疾患および炎症性疾患などの病的状態を治療することに関する。
【背景技術】
【0004】
ヒト血漿由来の免疫グロブリン産物は、1950年代初頭から免疫不全障害の治療に、そして最近では自己免疫疾患および炎症性疾患の治療に使用されてきた。ヒトIVIG(IVIG)は、プールされたヒト血漿から製造された滅菌され精製された免疫グロブリンG(IgG)産物であり、それは典型的には90%を超える未修飾IgGを含み、わずかな量および可変量の凝集免疫グロブリン、IgAまたはIgMを含む(Rutter A et al.,J Am Acad Dermatol,2001,Jun;44(6):1010-1024)。IVIGは当初、低IgGレベルの患者における日和見感染を予防するためのIgG補充療法として使用された(Baerenwaldt、Expert Rev Clin Immunol,6(3),p425-434,2010)。今日、IVIGの最も一般的な用途は慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーの治療にあり、そして一次および二次免疫不全における使用に加えて、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、ギラン・バレー症候群、および川崎病を含む自己免疫疾患の治療に認可されている。IVIGはまた、炎症性ミオパチー(多発性筋炎、皮膚筋炎、および封入体筋炎)、イートン・ランバート症候群、重症筋無力症、および全身硬直症候群を含む他の自己免疫疾患において確立された役割を有する。
【0005】
微量(1~5%)のIgGがIVIG内の凝集形態として存在し、そしてIgG二量体はIVIGの約5~15%を構成し得ることが観察されている。前臨床試験および臨床試験は、これらのIVIGの凝集画分が病理学的免疫複合体によって媒介されるある種の自己免疫疾患の治療に偏って有効であり、ほとんどの活性がこれらのIVIG凝集体のFc部分に分離されることを示す。したがって、IVIGのごくわずかなパーセントではあるが、IVIGの最も有効な割合はマルチFc凝集体である(Augener et al,Blut,50,1985、Teeling et al,Immunobiology,96,2001、Bazin et al,British Journal of Haematology,127,2004を参照されたい)。IVIG凝集体と同様に、多価FcをFc受容体に提示し、ひいては低親和性Fc受容体にさえ強く結合する化合物を用いるIVIG療法の代替法が記載されている(米国特許出願公開第2010/0239633号、同第2013/0156765号、同第2015/0218236号、同第2016/0229913号、同第2010/0143353号ならびにPCT国際出願公開第WO2017/019565号、同第WO2015/132364号、および同第WO2015/132365号を参照されたい)。
【0006】
米国特許出願公開第2013/0156765号に記載されているGL-2045は、IVIGの組換え模倣物である多量体化一般的ストラドマー(stradomer)である。GL-2045は、免疫グロブリン(Ig)G1 Fcが結合するリガンドの大部分または全部に結合する。さらに、GL-2045は、すべての標準的受容体および補体C1qに高い親和性および結合力で結合し、そしてIVIGと比較して10~1,000倍大きいインビトロ効力を有する。そのように、GL-2045はまた、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性多発ニューロパチー、多病巣性運動ニューロパチー、重症筋無力症、臓器移植、および関節リウマチを含むがこれらに限定されない広範囲の自己免疫疾患の治療において潜在的な臨床的有用性を有する。
【0007】
IVIGは、医師の医療設備で最も広く処方されている薬の1つであるが、製造コストの高さ、ロット間の変動、任意の投与量での変動する有効性、有効性に対する十分な投薬を示すバイオマーカーの欠如、1~2日の注入時間、高タンパク質負荷、腎毒性可溶化剤の使用、および感染汚染のリスクなど、いくつかの欠点がある。さらに、IVIGは一般に3~6週ごとに0.6~2g/Kgの範囲の用量にわたって処方されているが、有効性は様々であり、患者の約50~75%が治療に応答する。現在の標準治療では、どの患者が所与のIVIG投与量に応答するかどうかを予測することができない。患者が適切な用量のIVIGをいつ摂取したかを決定するために利用可能なバイオマーカーも現在存在しない。合成マルチFc治療薬(すなわち、GL-2045および他のもの)の使用は、IVIGの多くの欠点を克服しながら、有効性および効力の増大を実証している。合成の組換え生産されたマルチFc治療薬の使用はまた、レシピエントにおける異常な炎症反応の可能性、例えば異なるIVIGブランドおよびロットにおける様々な量のIgAの移動、またはウイルス(ジカなど)またはプリオン感染の潜在的な移動の可能性を実質的に減少させる。しかしながら、マルチFc治療薬の特定の用量に対する特定の患者の応答を予測し、ならびに、臨床的に有効な用量を特定するという課題は残っている。
【0008】
すべての免疫グロブリン産物と同様に、マルチFc治療薬のための治療プロトコルは、不適切な投与のリスク(すなわち基礎疾患または障害を効果的に治療できないこと)と、マルチFc治療薬の場合、低血圧、発熱、過剰なタンパク質負荷による腎機能障害を含む過剰投与もしくは注入速度のリスク、または過剰かつ不必要なコストとのバランスをとらなければならない。そのため、最大有効治療用量が最小量のマルチFc産物で達成されるように、マルチFc生成物の有効用量の決定を可能にする方法に対する当該技術分野における必要性がある。そのような方法は、有害な副作用のリスクを最小にしながら治療的に有益な効果の最適化を可能にするであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2010/0239633号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0156765号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0218236号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0229913号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0143353号明細書
【文献】国際公開第2017/019565号
【文献】国際公開第2015/132364号
【文献】国際公開第2015/132365号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Rutter A et al.,J Am Acad Dermatol,2001,Jun;44(6):1010-1024
【文献】Baerenwaldt、Expert Rev Clin Immunol,6(3),p425-434,2010
【文献】Augener et al,Blut,50,1985、Teeling et al,Immunobiology,96,2001
【文献】Bazin et al,British Journal of Haematology,127,2004
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の方法は、マルチFc治療薬による治療に対して不適切な応答を示す炎症性または自己免疫疾患を有する患者の同定、およびiC3bとして知られている「不活性化C3b」の患者の循環レベルに基づく前記患者に対するマルチFc治療薬の最適用量の決定を提供する。本発明の方法はまた、iC3bレベルに対するマルチFc治療薬の効果を評価するために、マルチFc治療薬の開始用量の使用を提供する。本発明の方法はまた、マルチFc治療薬に対する類似の応答に基づいて、iC3bの代替物として使用され得る他の補体成分を提供する。これらの方法は、少なくとも部分的には、iC3bのレベルがインビトロのマルチFc治療薬の有効性と相関し、自己免疫疾患および炎症性疾患の治療におけるそのような治療薬の使用における改善をもたらすという予想外の発見に基づく。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を有すると決定された患者における自己免疫疾患または炎症性疾患を治療する方法であって、前記マルチFc治療薬の第1の投与期間中の開始用量の少なくとも約105%の用量で前記マルチFc治療薬の第1の累積漸増用量を投与することを含み、ここで、前記患者が、マルチFc治療薬の開始用量の投与後の所定の閾値よりも低いiC3bの血中レベル、またはベースラインから約10%未満の変化であるiC3bの血中レベルを有すると決定されている、方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は、マルチFc治療薬の開始用量を投与することと、患者におけるiC3bの血中レベルを決定することと、iC3bの血中レベルが所定の閾値より高い場合、またはベースラインのiC3b測定値から少なくとも10%増加している場合、マルチFc治療薬の開始用量に対する応答の妥当性を決定することと、を含む、患者における自己免疫疾患または炎症性疾患を治療する方法を提供する。
【0014】
本発明の方法は、第1の累積漸増用量のマルチFc治療薬の投与後に患者の血中iC3bレベルの決定を繰り返すことと、iC3bのレベルが所定の閾値より低いと決定された場合、またはベースラインから約10%未満の変化でiC3bの血中レベルが決定された場合、以前に投与された用量より多いマルチFc治療薬の第2の累積漸増用量を第2の投与期間にわたって投与することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、繰り返されるiC3bの測定およびマルチFc治療薬の追加の累積漸増用量の投与は、所定のiC3b閾値が満たされるまで、またはiC3bの血中レベルがベースラインから約10%を超えて変化するまで継続される。
【0015】
いくつかの態様では、本発明は、(a)マルチFc治療薬を、それを必要とする対象に前記マルチFc治療薬の開始用量で投与することと、(b)対象における循環iC3bのレベルを測定することと、(c)対象におけるiC3bの循環レベルが所定の閾値を下回るとき、またはベースラインから約10%未満の変化であるiC3bの血中レベルのとき、対象がマルチFc治療薬の第1の累積増量用量を必要とすると決定することと、(d)マルチFc治療薬の第1の累積漸増用量を投与することと、を含む方法を提供する。さらなる実施形態では、マルチFc治療薬の有効用量を決定するために本明細書で提供する方法は、(e)マルチFc治療薬の第1の累積漸増用量の投与後に患者の血中iC3bレベルの決定を繰り返すことと、(f)iC3bのレベルが所定の閾値を下回る場合、またはベースラインから約10%未満の変化であるiC3bの血中レベルの場合、以前に投与された累積漸増用量よりも多いマルチ治療薬の第2の累積漸増用量を投与することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、iC3bの決定および累積漸増用量の投与は、所定のiC3b閾値が満たされるまで、またはiC3bの血中レベルがベースラインから約10%を超えて変化するまで繰り返される。
【0016】
いくつかの実施形態では、累積漸増用量は、投与期間を通してマルチFc治療薬の漸増用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、累積漸増用量は、投与期間中に漸増用量および1つ以上の増分用量の両方を投与することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬は、(a)第1のFcドメインモノマー、リンカー、および第2のFcドメインモノマーを含む第1のポリペプチドと、(b)第3のFcドメインモノマーを含む第2のポリペプチドと、(c)第4のFcドメインモノマーを含む第3のポリペプチドと、を含み、前記第1のFcドメインモノマーと前記第3のFcドメインモノマーとが結合して第1のFcドメインを形成し、前記第2のFcドメインモノマーと前記第4のFcドメインモノマーとが結合して第2のFcドメインを形成する。
【0018】
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬は、(a)IgGの少なくとも第1および第2のFcフラグメントを含むポリペプチドと、(b)少なくとも1つのCH2ドメインおよび少なくとも1つのヒンジ領域を含むIgGの第1のFcフラグメントの少なくとも1つと、を含み、IgGの第1および第2のFcフラグメントは、少なくとも1つのヒンジ領域を介して結合して鎖を形成し、ポリペプチドは、実質的に同様の複数の鎖をさらに含み、前記実質的に同様の複数の鎖が、実質的に平行な関係で前記複数の鎖のうちの他の少なくとも1つに結合して二量体を形成する。さらなる実施形態では、複数の平行鎖は多量体を形成する。
【0019】
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬は、2つ以上のFcドメインを含むポリペプチドを含み、各Fcドメインは2つのFcドメインモノマーで構成され、各Fcドメインモノマーは(a)CH1ドメインおよびCH2ドメインと、(b)N末端ヒンジ領域と、(c)C末端に融合した多量体化ドメインと、で構成され、多量体化ドメインはFcドメインを多量体に構築させる。さらなる態様において、多量体化ドメインはIgMまたはIgAに由来する。
【0020】
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬は、コア部分に結合した少なくとも1つのFcドメインをそれぞれ含む2つ以上のポリペプチドを含み、各Fcドメインは、(a)CH1およびCH2ドメインと(b)N末端ヒンジ領域と、でそれぞれ構成される2つのFcドメインモノマーで構成される。いくつかの実施形態では、コア部分はポリスチレンビーズである。いくつかの実施形態では、FcドメインのそれぞれはさらにIgM CH4ドメインを含み、コア部分はJ鎖を含み、その結果、複数のFcγ受容体に結合することができるバイオミメティック(biomimetic)が得られる。
【0021】
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬は5つまたは6つのFcドメインポリペプチドを含み、各Fcドメインポリペプチドは、ジスルフィド結合を介して隣接Fcドメインポリペプチドのシステイン残基に結合したシステイン残基と、多量体化ドメインをそれぞれ含む2つのFcドメインモノマーを含み、多量体化ドメインはFcドメインポリペプチドを多量体に構築させる。さらなる態様において、多量体化ドメインはIgMまたはIgAに由来する。
【0022】
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬は、3、4、5、または6つのFcドメインを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬は、静脈内免疫グロブリン(IVIG)の凝集免疫グロブリン画分を含む。いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬はGL-2045を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬の累積漸増用量は、マルチFc治療薬の開始用量の少なくとも約110%である。いくつかの実施形態では、累積漸増用量は、マルチFc治療薬の開始用量の少なくとも約115%、120%、125%、150%、175%または200%である。
【0025】
いくつかの実施形態では、それを下回るとマルチFc治療薬の追加用量が投与されるiC3bの所定の閾値は、アッセイバックグラウンドより約25μg/mL~300μg/mL高い。さらなる実施形態では、それを下回るとマルチFc治療薬の追加用量が投与されるiC3bの所定の閾値は、アッセイバックグラウンドより約50μg/mL~200μg/mL高い。さらなる実施形態では、それを下回るとマルチFc治療薬の追加用量が投与されるiC3bの所定の閾値は、アッセイバックグラウンドより約75μg/mL~125μg/mL高い。なおさらなる実施形態では、それを下回るとマルチFc治療薬の追加用量が投与されるiC3bの所定の閾値は、アッセイバックグラウンドより100μg/mL高い。いくつかの実施形態では、それを下回るとマルチFc治療薬の追加用量が投与されるiC3bの所定の閾値は、iC3b+である好中球および単球の約25%である。いくつかの実施形態では、iC3bレベルのパーセント変化はベースラインから約20%未満である。いくつかの実施形態では、iC3bレベルのパーセント変化はベースラインから約30%未満である。いくつかの実施形態では、iC3bレベルのパーセント変化はベースラインから約40%未満である。いくつかの実施形態では、iC3bレベルのパーセント変化はベースラインから約50%未満である。
【0026】
いくつかの実施形態では、iC3bレベルは、iC3b1および/またはiC3b2の測定によって決定される。いくつかの実施形態では、iC3bのレベルは、iC3b代替マーカーの測定によって決定される。いくつかの実施形態では、iC3b代替マーカーは、C3a、C3a desArg、C4a、C4a desArg、C3f、C3c、C3dg、C3dおよびC3gからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、iC3b代替マーカーの所定の閾値は約30ng/mL未満である。いくつかの実施形態では、iC3b代替マーカーの所定の閾値は約20ng/mL未満である。いくつかの実施形態では、iC3b代替マーカーの所定の閾値は約10ng/mL未満である。いくつかの実施形態では、iC3b代替マーカーの所定の閾値は約5ng/mL未満である。いくつかの実施形態では、iC3b代替マーカーのパーセント変化は約10%未満である。いくつかの実施形態では、iC3b代替マーカーのパーセント変化は約20%未満である。いくつかの実施形態では、iC3b代替マーカーのパーセント変化は約30%未満である。いくつかの実施形態では、iC3b代替マーカーのパーセント変化は約40%未満である。いくつかの実施形態では、iC3b代替マーカーのパーセント変化は約50%未満である。
【0027】
さらなる実施形態では、それを下回るとマルチFc治療薬の追加用量が投与されるiC3bの所定の閾値は、ベースラインiC3b MFIの約125%のiC3b MFIである。いくつかの実施形態では、iC3bレベルはイムノアッセイによって決定される。さらなる態様において、イムノアッセイはELISAまたはウエスタンブロットである。いくつかの実施形態では、iC3bレベルはフローサイトメトリーによって決定される。
【0028】
いくつかの実施形態では、患者は、患者のベースラインiC3bレベルから10%未満で変化しているiC3bの血中レベルを有するとき、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を有すると決定される。いくつかの実施形態では、患者が、以前の患者のiC3bまたはiC3b代替物レベルから10%未満で変化しているiC3bまたはiC3b代替物の血中レベル(例えば、累積漸増用量の投与後に決定されたiC3bレベルから10%未満の変化)を有するとき、患者はマルチFc治療薬に対して不十分な応答を有すると決定される。いくつかの実施形態では、患者の血中レベルは15%未満で変化している。いくつかの実施形態では、患者の血中レベルは20%未満で変化している。さらなる実施形態では、患者の血中レベルは、50%未満、100%未満、200%未満、またはそれ以上で変化している。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は自己免疫疾患または炎症性疾患の治療に使用される。さらなる実施形態では、自己免疫性または炎症性疾患は、自己免疫性血球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、喘息、川崎病、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、結腸クローン病、糖尿病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、重症筋無力症、抗第VIII因子自己免疫疾患、皮膚筋炎、血管炎、ぶどう膜炎およびアルツハイマー病からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】SUDHL4およびRamos細胞のリツキシマブ誘発性補体依存性細胞傷害(CDC)のGL-2045、HAGG、およびIVIGによる阻害を示す。
【
図2】H因子が十分な血清中のGL-2045、HAGG、およびIVIGによって誘導された補体分割産物の濃度を示す。
【
図3】H因子欠乏血清中のGL-2045、HAGG、およびIVIGによって誘導された補体分割産物の濃度を示す。
【
図4】H因子で再構成されたH因子枯渇血清中のC3aおよびC5aの濃度に対するGL-2045、HAGGおよびIVIGの効果を示す。
【
図5】H因子の存在下での代替形態のC3コンバターゼに対するGL-2045の阻害活性を示す。
【
図6A】H因子およびI因子の両方の存在下での代替C3コンバターゼ活性に対するGL-2045の効果(
図6A)、およびiC3bの産生に対するマルチFc治療薬の効果(
図6B、6C)を示す。
【
図7】腎炎のThy-1モデルにおけるタンパク尿に対するG998の効果を示す。
【
図8】iC3b試験およびマルチFc治療薬の投与についての可能性のある実施形態を示す。
【
図9】マルチFc治療薬の試験および投与で使用することができるiC3bとiC3bの様々な代替マーカーとの間のモルベースでの関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
不活性化C3b(iC3b)の血中レベルに基づいてマルチFc治療薬で治療された患者における不適切な免疫応答を第一に決定することを含む自己免疫疾患および炎症性疾患の治療方法が本明細書に提供される。第二に、その後および漸増用量のマルチFc治療薬を投与し、iC3bまたはiC3b代替物の血中レベルを測定して、所定の時点における所定の患者におけるマルチFc治療薬の治療有効用量を決定する。これらの方法は、iC3bレベルがGL-2045、G994、およびG998の有効性と相関しているという予想外の発見に基づいている。本明細書に提供される方法は、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー、抗体媒介性疾患、および補体媒介性疾患を治療するために有用性を有する。
【0032】
本明細書で使用される場合、請求項および/または明細書中の用語「含む」と共に使用されるときの「a」または「an」という単語の使用は、「1つ」を意味し得るが、それはまた「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは複数」の意味とも一致する。本明細書に引用されたすべての参考文献は参照によりその全体が組み込まれる。
【0033】
補体活性化およびiC3b
本発明の方法は、部分的に、補体カスケードの活性化ならびに特異的補体切断および/または分解産物(例えば、iC3b)の生成を測定して、マルチFc治療薬に対する患者の応答を決定することを含む。本明細書に記載されるいくつかのマルチFc治療薬は、少なくとも、補体成分に多価Fcを提示することが可能である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のマルチFc治療薬は、標準Fc受容体(例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、またはFcγRIII)および補体成分の両方に多価Fcを提示することができ、本明細書に記載のマルチFc治療薬のいくつかは多価Fcを主に補体成分に提示できるが、低親和性Fc受容体には提示しない。本明細書で使用される場合、用語「補体」は、補体系または補体カスケードとして文献中に言及されることがある補体カスケードの任意のタンパク質を指す。本明細書で使用される場合、用語「補体結合」または「補体への結合」は、補体カスケードの任意の成分の結合を指す。補体カスケードの成分は当技術分野において既知であり、例えば、Janeway’s Immunobiology,8th Ed.,Murphy ed.,Garland Science,2012に記載されている。現在知られている3つの主な補体経路があり、古典的経路、第2経路、およびレクチン結合経路である。古典的補体経路は、タンパク質C1qが1分子以上のインタクトおよび結合免疫グロブリンIgM、あるいは少なくとも2分子のインタクトおよび結合免疫グロブリンIgG1、IgG2、もしくはIgG3に結合した後に活性化され、その後C1qC1rC1sが形成されC4を切断させる。補体活性化は補体依存性細胞溶解(CDC)につながる。過剰な補体活性化は有害となる可能性があり、重症筋無力症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、および発作性夜間血色素尿症(PNH)を含む多くの疾患と関連している。
【0034】
補体活性化の異なる経路は、古典的C3コンバターゼ(C4bC2a)または代替的C3コンバターゼ(C3bBb)の作用を介してのC3bの生成に収束する。C3b自体は、代替C3コンバターゼ、ならびにそれぞれ下流の補体活性化を媒介する古典的および代替C5コンバターゼの重要な成分である。C3bの半減期は、他のタンパク質への結合によって安定化されない限り、1秒未満であると考えられている。C3bは、C3b-C3b-IgG共有結合複合体の形成、C4bC2a複合体への結合による古典的なC5コンバターゼ(C4bC2aC3b)の生成、B因子との会合およびD因子による切断を介したC3コンバターゼ(C3bBb)の生成をもたらす微生物または宿主細胞表面のオプソニン化、ならびに既に形成されているC3コンバターゼ(C3bBb)との結合による、代替C5コンバターゼ(C3bBbC3b)の形成、を含む多くの方法で安定化できる。
【0035】
結合していない場合、C3bは「不活性化」C3bまたは「iC3b」に分解され、部分的にH因子およびI因子の両方の作用によって促進される。Arg1281-Ser1282間のC3bの切断はC3bのiC3b1への不活性化をもたらす。Arg1298-Ser1299間のさらなる切断は、iC3b1からのC3fの放出をもたらし、iC3b2を生成する。本明細書で使用される場合、iC3bは、iC3b1および/またはiC3b2のいずれかを指し得、そしてiC3bの測定は、iC3b1またはiC3b2のいずれかを検出し得るか、またはiC3b1およびiC3b2の両方を検出し得る。いくつかの実施形態では、iC3bはさらにC3cおよびC3dgに分解され得、そしてC3dgはさらにC3dおよびC3gに分解され得る。用語「iC3b生成」および「iC3b産生」は、本明細書では互換的に使用され、iC3bの存在またはそのレベルの変化をもたらす、H因子およびI因子によって増強されるC3bの不活性化として科学文献が記載するものを指す(例えば、H因子および/またはI因子により増強されたC3bの不活性化)。その名前にもかかわらず、iC3bは生物学的に不活性ではない。活性C3bとは異なり、iC3bの生成は2つの方法で下流の補体活性化を阻害する。第一に、H因子およびI因子活性によって増強されたC3bのiC3bへの切断は、C5コンバターゼの形成に利用可能なC3bの量を制限し、したがって、C5aおよび膜侵襲撃複合体(MAC)(sc5b-9または末端補体複合体(TCC)とも呼ばれる)などの下流の炎症性補体産物の生成を制限する。第二に、C3bとは異なり、iC3bはB因子に結合することができず、それによって代替補体活性化中のさらなるC3コンバターゼの形成を制限し、補体活性化ループを妨げる。
【0036】
いくつかの研究は病理学的補体活性化を示す活性化フラグメントとしてiC3bを記載しているが(Olson et al,米国特許第9,164,088号を参照されたい)、iC3bは強力な抗炎症性および免疫寛容原性特性を有することが十分に立証されている。例えば、補体受容体3(CR3)へのiC3bの結合は、単球の樹状細胞への分化を減少させ、そして長期にわたる免疫寛容原性応答を媒介した(Schmidt et al.,Cancer Immunol Immunother.,55(1)、pp.31-38,(2006))。iC3bはまた、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)の生成を促進し(Hsieh et al.,Blood、121(10),pp.1760-1768,(2013))、そしてTGFβ2およびIL-10の誘導を促進した(Amarilyo et al.,Eur J Immunol.,40(3),pp.699-709,(2010)を参照されたい)。さらに、C3bの超短半減期とは対照的に、iC3bは30~90分という比較的長い半減期を有し、これは持続的な抗炎症性反応を媒介するiC3bの能力を示唆している。
【0037】
本発明者らは、循環iC3bおよびiC3bと並行して変化する補体成分(すなわち、iC3b代替物)のレベルが、マルチFc治療薬(例えば、GL-2045、G994、G998、IVIG、SIF3(商標))の相対的治療効果を示すことを予想外に見出した。したがって、Olson et alの教示とは著しく対照的に、本明細書に記載のデータは、より高いレベルのiC3bが自己免疫障害および炎症性障害の治療に望ましいことを示している。iC3b生成は一般に補体カスケードの初期活性化を必要とし、補体活性化の非存在下では有意な程度に起こるとは予想されないので、補体カスケード活性化が自己免疫疾患および炎症性疾患において有害であるという教示の発生にもかかわらず、初期補体活性化は、自己免疫疾患および炎症性疾患をマルチFc治療薬で治療するのに望ましいことになる。C1q、C1r、またはC1sを標的とするモノクローナル抗体の使用など、上流の古典的経路の補体活性化を遮断するためのモノクローナル抗体または小分子アプローチは、補体活性化の開始を阻害し、したがって長寿命の抗炎症性iC3bを生成しない。同様に、モノクローナル抗体またはC5を標的とする小分子の使用のような、抗C5モノクローナル抗体または下流の補体活性化をブロックするための小分子アプローチは、補体活性化を開始させるとは考えられず、長寿命の抗炎症性iC3bを生成しない。対照的に、六量体C1qに対して多機能性Fcを提示する、本明細書に記載のIVIG凝集体および組換えバイオミメティックを含むマルチFc治療薬は、上流補体活性化ならびに抗炎症性iC3bの生成を開始し、その後にC3/C3bのレベルで補体カスケードの下流活性化を遮断することによって抗炎症性iC3bを生成する。
【0038】
マルチFc治療薬により観察された補体カスケードの初期活性化に続いて補体カスケードの阻害が続き、これはCDCの阻害と関連している。本明細書中のデータは、iC3b生成が初期活性化およびそれに続く補体カスケードのシャットダウンの両方に依存することを実証している。したがって、iC3bの生成は、(1)上流補体切断産物(C3aおよびC4aなど)の生成、および(2)生成された少量のC5aおよびTCCのみによるCDCなどの下流エフェクター機構の阻害を伴う。生成されたC5aおよびTCCの量は一般にベースライン値の約2倍であり、ベースラインを超えて増加したにもかかわらず正常範囲内に留まる可能性がある。
【0039】
いくつかの実施形態では、iC3bは、Arg1281~Ser1282間のC3bの切断によって生成されるiC3b1の形態であってよい。いくつかの実施形態では、iC3bは、iC3b2およびC3fを産生するiC3b1の切断によって生成されたiC3b2の形態であってよい。いくつかの実施形態では、iC3bレベルの評価は、iC3b1および/またはiC3b2の検出を含む。いくつかの実施形態では、iC3bレベルの評価は、iC3b代替物の検出または測定を含む。本明細書では、「iC3b代替物」および「iC3b代替マーカー」という用語は互換的に使用され、補体カスケードの成分、またはiC3b自体の成分を指し、そのレベルはiC3bのレベルと相関する。iC3b代替物には、C3f、C3c、C3dg、C3d、および/またはC3gを含むiC3b切断産物、ならびにC3a、C3a desarg、C4a、および/またはC4a desargを含む上流相補体切断産物が含まれる。
【0040】
iC3bとiC3bの種々の代替マーカーとの間のモルベースでの関係の概略図を
図9に提供する。C3コンバターゼによるC3の切断は、等モル量のC3切断産物C3aおよびC3bを生成する。上記のように、C3bは不安定であり、安定化されない場合、1秒未満でiC3bに分解される。安定なC3bの生成が阻害された場合(すなわち、マルチFc治療薬による治療によって)、C3の切断は等モル量のC3aおよびiC3bの生成をもたらす。したがって、補体カスケードを活性化し、安定なC3bの生成を阻害もするマルチFc治療薬の状況において、そして感染またはC3bを安定化させる他の力がない場合、C3aのレベルはiC3bのレベルに比例して増加する。そのような場合、C3aの測定値は、iC3bの測定値の代替として使用することができる。さらに、生物学的に活性なC3aは、C末端アルギニンの除去によって、より活性ではないがより安定なC3a desArg(アシル化刺激タンパク質(ASP)とも呼ばれる)に異化され得る。したがって、いくつかの実施形態では、レベルC3a desArgは、患者のiC3b下流のレベルを決定するための代替物として使用されてもよい。いくつかの実施形態では、C3aおよびC3a desArgの組み合わせたレベルは、下流のiC3bレベルの代替として使用され得る。さらなる実施形態では、C4aおよび/またはC4a desArgのレベルは、患者のiC3bレベルが所定の閾値を下回るかどうか、または患者のiC3bレベルがベースラインレベルから10%未満の変化を有するかどうかを決定するためにiC3bレベルの代替として使用される。いくつかの実施形態では、C3a/C3a desArg測定は、開始用量の投与後30分~12日以上の間に行われる。いくつかの実施形態では、患者のベースラインレベルから50%未満のC3aおよび/またはC3a desArgレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を示す。いくつかの実施形態では、患者のベースラインレベルから40%未満のC3aおよび/またはC3a desArgレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を示す。いくつかの実施形態では、患者のベースラインレベルから30%未満のC3aおよび/またはC3a desArgレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を示す。いくつかの実施形態では、患者のベースラインレベルから20%未満のC3aおよび/またはC3a desArgレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を示す。いくつかの実施形態では、患者のベースラインレベルから10%未満のC3aおよび/またはC3a desArgレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を示す。
【0041】
同様の実施形態が、C4aおよびその分解産物C4a desArgについて企図されている。iC3bは一般に補体活性化の非存在下では生成され得ない。C4は古典的経路の活性化によりC4aおよびC4bに切断されるので、C4bは古典的経路およびレクチン経路に対するC3コンバターゼに組み込まれる。本発明者らはまた、マルチFc治療薬による古典的経路の活性化時に、古典的経路の活性化の副産物である予想される望ましいC4a生成がiC3b生成に対応することを見出した。理論に縛られることなく、これはマルチFc治療薬(例えば、IVIGまたはGL-2045)が最初に古典的補体経路を活性化し、その後補体活性化が主としてC3/C3bのレベルで終了するため、iC3bが生成すると考えられる。C4aおよび/またはC4a分解産物、C4a desArg、またはC4aとC4a desArgの組み合わせの生成は、古典的な経路活性化を示し、そしてC3/C3bのレベルで補体活性化を遮断するマルチFc治療薬の状況においては、iC3bの適切な生成のための代替でもある。そのように、いくつかの実施形態では、C4aおよび/またはC4a desArgのレベルは、下流のiC3bレベルの代替として使用することができる。さらなる態様では、C4aおよびC4a desArgの組み合わせたレベルは、下流のiC3bレベルの代替として使用することができる。
【0042】
さらなる実施形態では、C4aおよび/またはC4a desArgのレベルは、患者のiC3bレベルが所定の閾値を下回るかどうか、または患者のiC3bレベルがベースラインレベルから10%未満の変化を有するかどうかを決定するためにiC3bレベルの代替として使用される。いくつかの実施形態では、C4a/C4a desArg測定は、開始用量の投与後5分~96時間の間に行われる。いくつかの実施形態では、患者のベースラインレベルからの50%未満のC4aおよび/またはC4a desArgレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を示す。いくつかの実施形態では、患者のベースラインレベルからの40%未満のC4aおよび/またはC4a desArgレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を示す。いくつかの実施形態では、患者のベースラインレベルからの30%未満のC4aおよび/またはC4a desArgレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を示す。いくつかの実施形態では、患者のベースラインレベルからの20%未満のC4aおよび/またはC4a desArgレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を示す。いくつかの実施形態では、患者のベースラインレベルからの10%未満のC4aおよび/またはC4a desArgレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答を示す。
【0043】
マルチFc治療薬
本明細書で使用される場合、用語「バイオミメティック」、「バイオミメティック分子」、「バイオミメティック化合物」、および関連用語は、IVIG、モノクローナル抗体、または抗体のFcフラグメントなどの別の天然に存在する化合物の機能を模倣する人造化合物を指す。「生物学的に活性な」バイオミメティックは、それらの天然に存在する対応物と同じまたは類似の生物学的活性を有する化合物である。「天然に存在する」とは、生物中に通常見出される分子またはその一部を意味する。天然に存在するとは、実質的に天然に存在することも意味する。「免疫学的に活性な」バイオミメティックは、抗体、サイトカイン、インターロイキン、および当技術分野において既知の他の免疫学的分子などの天然に存在する免疫学的に活性な分子と同じまたは類似の免疫学的活性を示すバイオミメティックである。好ましい実施形態では、本発明で使用するためのバイオミメティックは、本明細書で定義されているようなマルチFc治療薬(例えばストラドマー)である。
【0044】
本明細書で使用される「単離された」ポリペプチドまたはペプチドという用語は、天然に存在する対応物を持たないか、または例えば膵臓、肝臓、脾臓、卵巣、精巣、筋肉、関節組織、神経組織、胃腸組織、または乳房組織もしくは腫瘍組織(例えば、乳癌組織)などの組織において、または血液、血清もしくは尿などの体液においてそれに当然付随する成分から分離または精製されたポリペプチドまたはペプチドを指す。典型的には、ポリペプチドまたはペプチドは、それが乾燥重量で少なくとも70%、タンパク質およびそれが天然に会合している他の天然に存在する有機分子を含まない場合、「単離された」とみなされる。好ましくは、本発明のポリペプチド(またはペプチド)の調製物は、乾燥重量の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%が本発明のポリペプチド(ペプチド)である。化学的に合成されたポリペプチドまたはペプチドはそれに当然付随する成分から本質的に分離されているので、合成ポリペプチドまたはペプチドは「単離されている」。本発明の単離されたポリペプチド(またはペプチド)は、例えば、そのポリペプチドまたはペプチドをコードする組換え核酸の発現によって、または化学合成によって得ることができる。天然に由来する起源とは異なる細胞系で産生されるポリペプチドまたはペプチドは、それに当然付随する成分を必然的に含まないために「単離されている」。好ましい実施形態では、本発明の単離されたポリペプチドは、IgG1 FcモノマーおよびIgG2ヒンジ多量体化ドメインに対応する配列(配列番号1)のみを含み、クローニングまたはタンパク質の精製に役立ち得るさらなる配列を含まない。(例えば、導入された制限酵素認識部位または精製タグ)。単離度または純度は、任意の適切な方法、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「マルチFc治療薬」とは、少なくとも補体系の構成要素に多価(すなわち、2つ以上)のFcを提示することができるバイオミメティックタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のマルチFc治療薬は、標準Fc受容体(例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、および/またはFcγRIIIb)および補体成分の両方に多価Fcを提示することができる。マルチFc治療薬は多量体化されていてもいなくてもよい。本明細書に記載の方法に従って使用されるマルチFc治療薬は、米国特許出願公開第2015/0218236号、同第2016/0229913号、同第2017/0088603号、同第2017/0081406号、同第2017/0029505号、同第2010/0143353号、同第2010/0239633号、同第2013/0156765号、ならびにPCT国際公開第WO2016/009232号、同第WO2015/132364号、同第WO2015/132365号、同第WO2015/158867号、同第WO2016/139365号、同第WO2017/005767号、同第WO2017/013203号、同第WO2017/036905号、同第WO2015/168643号および同第WO2017/151971号に開示されているものなどの一般的なマルチFc化合物を指すことができ、そしてIVIGおよび多量体IVIG画分を含むIVIG治療薬を含み得る。各Fc治療薬の定義に使用される構造的言語はわずかに異なるが、本発明の方法に従って使用するための各マルチFc治療薬は、2つ以上のFc受容体または補体成分への結合を可能にする少なくとも2つのFcドメインを含む。最低でも、Fcドメインは、結合してFc受容体または補体成分に結合することができる機能的二量体を形成するために会合する2つのペプチド鎖またはアームを含む二量体ポリペプチド(またはより大きいポリペプチドの二量体領域)である。いくつかの実施形態では、各Fcドメインは多量体化ドメインをさらに含む。そのような実施形態では、前記多量体化ドメインはまた、二量体の多量体ポリペプチドへの構築を促進することができる機能的多量体化ドメインを形成するように会合する2本のペプチド鎖またはアームを含む二量体ポリペプチドである。したがって、本明細書で論じられている個々のフラグメントおよびドメインの機能的形態は一般に二量体形態で存在する。本明細書で論じられている個々のフラグメントおよびドメインのモノマーは、機能的な二量体構造を形成するために第2の鎖またはアームと会合しなければならない一本鎖またはアームである。一本鎖またはアーム間の会合(例えば、システイン結合または静電相互作用)の性質は、それが機能的Fcドメインまたは多量体化ドメインの形成を可能にする限り、重要ではない。
【0046】
「直接連結された」とは、介在配列または外来性の配列、例えばDNAまたはクローニングフラグメントへの制限酵素認識部位の挿入に由来するアミノ酸配列なしに互いに連結された2つの配列を意味する。当業者は、多量体化能力が実質的に影響を受けない限り、「直接結合」がアミノ酸の付加または除去を包含することを理解するであろう。
【0047】
「相同」とは、所与の核酸またはアミノ酸配列の全配列にわたる同一性を意味する。例えば、「80%相同」とは、所与の配列が請求された配列と約80%の同一性を共有し、挿入、欠失、置換、およびフレームシフトを含み得ることを意味する。当業者は、配列の全長にわたって配列同一性を決定するために挿入および欠失を考慮に入れるために配列アラインメントを行うことができることを理解するであろう。
【0048】
IVIGは新生児Fc受容体(FcRn)に結合して完全に飽和させること、およびそのようなFcRnの競合的阻害はIVIGの生物学的活性において重要な役割を果たす可能性があることが記載されている(例えばF.Jin et al.,Human Immunology,2005,66(4)403-410)。Fcγ受容体に強く結合する免疫グロブリンもまた少なくともある程度FcRnに結合するので、当業者は、2つ以上のFcγ受容体に結合することができるマルチFc治療薬もまたFcRnに結合し、それを完全に飽和させることを認識するであろう。
【0049】
DELおよびEEM多形体と呼ばれる2つのIgG1のヒト多形体がある。DEL多形体は、356位にDおよび358位にLを有し、EEM多形体は、356位にEおよび358位にMを有する(Kabat番号付け、配列番号2および3、それぞれEEMおよびDEL多形体)。本明細書に記載のマルチFc治療薬は、DELまたはEEM IgG1多形体のいずれかを含み得る。したがって、特定の変異体についての文章がDEL多形性に関連して明示的に提示されるとしても、当業者は、同じ結果が得られるようにEEM多形性に対して同じ変異がなされ得ることを理解するであろう。
【0050】
Fcフラグメントおよびドメイン
Fcフラグメント
「Fcフラグメント」は、免疫グロブリンのカルボキシ末端に常に見られるタンパク質領域またはタンパク質折り畳み構造を説明するために使用される技術用語である。Fcフラグメントは、不完全かつ不十分なプロセスである酵素消化、例えばパパイン消化の使用によりモノクローナル抗体のFabフラグメントから単離することができる(Mihaesco C et al.,Journal of Experimental Medicine,Vol 127,431-453(1968))。Fabフラグメント(抗原結合ドメインを含む)と共に、Fcフラグメントはホロ抗体、ここでは完全な抗体を構成する。Fcフラグメントは抗体重鎖のカルボキシ末端部分からなる。Fcフラグメント中の鎖の各々は、長さが約220~265アミノ酸であり、そして鎖は多くの場合ジスルフィド結合を介して結合している。Fcフラグメントは多くの場合1つ以上の独立した構造的折り畳みまたは機能的サブドメインを含む。特に、Fcフラグメントは、Fc受容体に結合する最小構造として本明細書中に定義されるFcドメインを包含する。単離されたFcフラグメントは、二量体化されている2つのFcフラグメントモノマー(例えば、抗体重鎖の2つのカルボキシ末端部分、本明細書中でさらに定義される)で構成される。2つのFcフラグメントモノマーが会合すると、得られるFcフラグメントは補体および/またはFc受容体結合活性を有する。
【0051】
Fc部分フラグメント
「Fc部分フラグメント」は、抗体の全Fcフラグメントを満たさないものを含むが、Fc受容体結合活性および/または補体結合活性を含む、Fcフラグメントと同じ活性を有するのに十分な構造を保持するドメインである。したがって、Fc部分フラグメントは、Fc部分ドメインが由来する抗体のアイソタイプに応じて、ヒンジ領域の一部もしくは全部、CH2ドメインの一部もしくは全部、CH3ドメインの一部もしくは全部、および/またはCH4ドメインの一部もしくは全部を欠いていてもよい。Fc部分フラグメントの他の例は、IgG1のCH2およびCH3ドメインを含む分子を含む。この例では、Fc部分フラグメントはIgG1に存在するヒンジドメインを欠いている。Fc部分フラグメントは、2つのFc部分フラグメントモノマーで構成される。本明細書でさらに定義されるように、2つのそのようなFc部分フラグメントモノマーが会合するとき、得られるFc部分フラグメントはFc受容体結合活性および/または補体結合活性を有する。
【0052】
Fcドメイン
本明細書で使用される場合、「Fcドメイン」とは、Fc受容体(FcR)に結合することができる、またはそれによって結合され得る最小領域(より大きなポリペプチドに関して)または最小タンパク質折り畳み構造(単離タンパク質に関して)を表す。FcフラグメントおよびFc部分フラグメントの両方において、Fcドメインは、分子のFc受容体への結合を可能にする最小結合領域である。Fcドメインは、Fc受容体によって結合される別個のホモ二量体ポリペプチドに限定され得るが、Fcドメインは、Fcフラグメントの一部または全部、ならびにFc部分フラグメントの一部または全部であり得ることもまた明らかであろう。用語「Fcドメイン」が本発明において使用される場合、それは1つより多いFcドメインを意味すると当業者によって認識されるであろう。Fcドメインは、2つのFcドメインモノマーで構成される。本明細書でさらに定義されるように、2つのそのようなFcドメインモノマーが会合すると、得られるFcドメインはFc受容体結合活性および/または補体結合活性を有する。したがって、Fcドメインは補体および/またはFc受容体に結合することができる二量体構造である。
【0053】
Fc部分ドメイン
本明細書で使用される場合、「Fc部分ドメイン」は、Fcドメインの一部を説明する。Fc部分ドメインは、個々の重鎖定常領域ドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3およびCH4ドメイン)ならびに異なる免疫グロブリンクラスおよびサブクラスのヒンジ領域を含む。したがって、本発明のヒトFc部分ドメインは、IgG1のCH1ドメイン、IgG1のCH2ドメイン、IgG1のCH3ドメイン、ならびにIgG1およびIgG2のヒンジ領域を含む。他の種における対応するFc部分ドメインは、その種に存在する免疫グロブリンおよびその命名に依拠するだろう。好ましくは、本発明のFc部分ドメインは、IgG1のCH1、CH2およびヒンジドメインならびにIgG2のヒンジドメインを含む。本発明のFc部分ドメインは、これらのドメインおよびヒンジのうちの2つ以上の組み合わせをさらに含み得る。しかしながら、本発明の個々のFc部分ドメインおよびそれらの組み合わせは、FcRに結合する能力を欠いている。したがって、Fc部分ドメインおよびそれらの組み合わせは、Fcドメインを満たさないものを含む。Fc部分ドメインは、互いに結合して、補体および/またはFc受容体結合活性を有するペプチドを形成し、かくしてFcドメインを形成し得る。本発明において、Fc部分ドメインは、本明細書に記載されるように、本発明の方法に従って使用されるマルチFc治療薬を作製するための構成要素としてFcドメインと共に使用される。各Fc部分ドメインは、2つのFc部分ドメインモノマーで構成される。このような2つのFc部分ドメインモノマーが会合すると、Fc部分ドメインが形成される。
【0054】
上記のように、Fcフラグメント、Fc部分フラグメント、FcドメインおよびFc部分ドメインのそれぞれは、二量体タンパク質またはドメインである。したがって、これらの分子のそれぞれは、会合して二量体タンパク質またはドメインを形成する2つのモノマーで構成される。ホモ二量体形態の特徴および活性は上で論じられているが、モノマーペプチドは以下のように論じられる。
【0055】
Fcフラグメントモノマー
本明細書で使用される場合、「Fcフラグメントモノマー」は、他のFcフラグメントモノマーと会合したときFcフラグメントを構成する一本鎖タンパク質である。したがって、Fcフラグメントモノマーは、ホロ抗体のFcフラグメントを構成する抗体重鎖の1つのカルボキシ末端部分(例えば、IgGのヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む重鎖の連続部分)である。一実施形態では、Fcフラグメントモノマーは、少なくとも、隣接して連結してペプチドを形成する1本のヒンジ領域の鎖(ヒンジモノマー)、1本のCH2ドメインの鎖(CH2ドメインモノマー)および1本のCH3ドメインの鎖(CH3ドメインモノマー)を含む。一実施形態では、CH2、CH3およびヒンジドメインは異なるアイソタイプに由来する。特定の実施形態では、Fcフラグメントモノマーは、IgG2ヒンジドメインならびにIgG1のCH2ドメインおよびCH3ドメインを含有する。
【0056】
Fcドメインモノマー
本明細書で使用される場合、「Fcドメインモノマー」は、別のFcドメインモノマーと会合したとき、補体および/または標準Fc受容体に結合し得るFcドメインを構成する一本鎖タンパク質を指す。2つのFcドメインモノマーの会合は1つのFcドメインを作り出す。
【0057】
一実施形態では、Fcドメインモノマーは、アミノ末端からカルボキシ末端に、IgG1ヒンジ、IgG1 CH2とIgG1 CH3、およびIgG2ヒンジを含むFcドメインを含む。
【0058】
マルチFc治療薬
本発明の方法は、Fcが機能性を保持している、任意のマルチFcドメイン含有化合物に対する対象の応答を決定することを提供する。特定の実施形態では、本発明の方法は、GL-2045、G994、G998、またはこれらのそれぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2010/0239633号または同第2013/0156765号、PCT国際公開第WO2017/019565号、およびPCT国際出願第PCT/US2017/043538号に記載されている、別のストラドマーなどのマルチFc治療薬に対して対象が適切な応答を有するかどうかを決定するのに使用する。さらに、追加のマルチFc治療薬が記載されている(米国特許出願公開第2015/0218236号、同第2016/0229913号、同第2010/0143353号、同第2017/0088603号、第2017/0081406号、および第2017/0029505号、ならびにPCT国際公開第WO2015/132364号、同第WO2015/132365号、同第WO2015/158867号、同第WO2015/168643号、同第WO2016/009232号、同第WO2016/139365号、同第WO2017/005767号、同第WO2017/013203号、同第WO2017/036905号、および同第WO2017/151971号を参照、これらのそれぞれは参照により組み込まれる)。
【0059】
これらの説明は個々の構成要素を説明するのに使用される言語がわずかに異なるが、これらのマルチFc治療薬は、上記および米国特許出願公開第2010/0239633号および同第2013/0156765号に開示されるストラドマーと実質的に構造的および/または機能的に類似する。各々は本質的に、少なくとも2つの機能的Fcドメイン(例えばストラドマー単位)を形成するように会合した直列に連結されたFcドメインモノマーを含む二量体ポリペプチドで構成されるポリペプチドを記載する。Fcドメインモノマーを連結するリンカーは、共有結合(例えば、ペプチド結合)、ペプチドリンカー、または非ペプチドリンカーであり得る。さらに、機能的Fcドメインを形成するためのFcドメインモノマー間の会合の性質は、それが標準Fc受容体および/または補体成分に結合(例えばシステイン結合または静電相互作用)することができる機能的Fcドメインの形成を可能にする限り重要ではない。
【0060】
ストラドマー
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬はストラドマー(例えばGL-2045)である。米国特許出願公開第2010/0239633号は、自己免疫疾患や他の炎症状態を含む病的状態の治療のためのストラドマーの個々の構成要素間の制限部位および親和性タグを含む短い配列を含むIVIGの規則正しい多量体化免疫グロブリンFcバイオミメティック(ストラドマーとして知られる生物学的に活性な規則正しい多量体)を作製するための結合免疫グロブリンFcドメインの使用を開示する。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2010/0239633を参照されたい。米国特許出願公開第2013/0156765号は、個々の成分が制限部位または親和性タグによって分離されるのではなく直接連結されているストラドマーを開示している。US2013/0156765はまた、N末端連結化合物(GL-2019、US2010/0239633に記載されている)と比較して増強された多量体化を示す、そのC末端に直接連結されたIgG2ヒンジ多量体化ドメインを有するIgG1 Fcドメインを含む多量体化ストラドマー(GL-2045)を具体的に開示する。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、US 2013/0156765を参照されたい。GL-2045の構造は、IgG1ヒンジ-IgG1CH2 IgG1 CH3-IgG2ヒンジであり、GL-2045は、配列番号4および5として提供される(それぞれEEMおよびDEL多形体)。
【0061】
本発明の方法で使用するためのストラドマーは、補体および/または標準Fc受容体に結合することができるバイオミメティック化合物である。さらに、当業者は、ストラドマーの任意の立体配座(例えば、連続、クラスター、コア、またはFcフラグメント)が本明細書に記載の方法に従って使用され得ることを理解するであろう。連続ストラドマーは、少なくとも2つの連続的に連結されたFcドメインで構成される二量体ペプチドである。したがって、連続ストラドマーは、2つ以上のFc受容体に結合することができる。
【0062】
クラスターストラドマーは、放射状形態を有し、そして多量体化する中央部分「ヘッド」および2つ以上の「レッグ」を有するストラドマーであり、各レッグは少なくとも1つのFc受容体および/または補体に結合できる1つ以上のFcドメインを含む。クラスターストラドマーは「多量体化ストラドマー」とも呼ばれる(例えば、GL-2045)。明らかになるように、上記で論じられたFcフラグメント、Fc部分フラグメント、FcドメインおよびFc部分ドメインは、種々のストラドマー立体配座の構築において使用される。さらに、最初に製造されて二量体ストラドマー単位を形成し、次に多量体化ドメイン(例えば、IgG2ヒンジ)の包含を介して多量体化して本発明のクラスターストラドマーである多量体構造を形成するのは、やはり上記で論じられた個々のFcドメインモノマーおよびFc部分ドメインモノマーである。具体的なストラドマーは、US2010/0239633およびUS2013/0156765に非常に詳細に記載されており、その両方の内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0063】
コアストラドマーは、1つ以上のFcドメインを含む2つ以上のポリペプチドが結合するコア部分を含み、それによって2つ以上のFcγ受容体に結合することができるバイオミメティック化合物を作り出す。Fcフラグメント、Fc部分フラグメント、連続ストラドマー、またはクラスターストラドマー単位は、これらの分子がそれぞれ少なくとも1つのFcドメインを含んでいるため、コアストラドマー中のコアストラドマー単位の一方または両方(それらが2つのFcドメインを含む場合)としてそれぞれ独立して働き得る。いくつかの実施形態では、コア部分はポリスチレンビーズである。いくつかの実施形態では、各FcドメインはさらにIgM CH4ドメインを含み、コア部分はJ鎖を含み、その結果、複数のFcγ受容体に結合することができるバイオミメティックが得られる。
【0064】
当業者は、ストラドマーが抗原結合Fabフラグメントを含まないことを理解するであろう。そのようなFab含有化合物は一般に「ストラドボディ」と呼ばれる。したがって、一態様では、本発明に従って有用なマルチFc治療薬は、抗原結合Fabドメインを特異的に欠く。
【0065】
いくつかの実施形態では、二量体ポリペプチドは、二量体ポリペプチドの多量体タンパク質への構築を促進する多量体化ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「多量体化ドメイン」とは、Fcドメインを含むポリペプチドの多量体Fcタンパク質への構築を容易にするドメインを指す。多量体化ドメインの性質は、二量体ポリペプチドを、現在の多価FcからFc受容体および/または補体成分にできるマルチFcタンパク質(例えば、マルチFc治療薬)への構築を可能とする限り重要ではない。いくつかの実施形態では、多量体化ドメインはIgG2ヒンジである。いくつかの実施形態では、二量体ポリペプチドは末端IgM CH4ドメインを含む。いくつかの実施形態では、そのようなドメインの包含は、コアストラドマーを形成するための、J鎖などのコア部分とのストラドマーの自己凝集を可能にする。
【0066】
補体優先(Complement-preferential)ストラドマー、一般的なストラドマー、および六量体ストラドマー
PCT国際公開第WO2017/0195656号はストラドマーを含む補体優先マルチFc治療薬を記載し、そしてPCT国際出願第PCT/US2017/043538号はストラドマーを含む一般的および六量体マルチFc治療薬を記載し、それらの基本構造は上記に記載される。これらのストラドマーは多量体化ドメインを含み、さらにFcドメインのCH1および/またはCH2領域に点突然変異を含む。特定の点突然変異は、正常な非凝集ヒト免疫グロブリンFcと比較して、補体優先的ストラドマーがC1qのような1つ以上の補体成分に優先的に結合することを可能にする(WO2017/0195656)。この優先的結合は、補体成分への結合の増加を介して直接的に、または標準Fc受容体へのストラドマーの結合の減少を介して間接的に達成される。それ自体、これらの化合物は、マルチFc治療薬に多量体化することができ、さらに補体成分に優先的に結合することができるストラドマー単位を含む。同様に、一般的なストラドマーに存在する点変異の特定の組み合わせは、変異の特定の組み合わせに応じて増加したまたは減少した親和性で補体成分および/またはFc受容体に結合することを可能にし、六量体ストラドマーが6つのFcドメインを含む多量体化Fc治療薬を優先的に形成することを可能にする(PCT/US2017/043538)。
【0067】
Fc受容体の選択的免疫調節剤(SIF)
米国特許出願公開第2016/0229913号は、第1のFcドメインモノマー、リンカー、および第2のFcドメインモノマーを含む第1のポリペプチド、第3のFcドメインモノマーを含む第2のポリペプチド、および第4のFcドメインモノマーを含む第3のポリペプチドを含む、Fc受容体(SIF)の選択的免疫調節剤を記載している。前記第1および第3のFcドメインモノマーは結合して第1のFcドメインを形成し、および前記第2および第4のFcドメインモノマーは結合して第2のFcドメインモノマーを形成する。したがって、これらの化合物は、3つの独立したポリペプチドの会合を通して2つの機能的Fcドメインを形成する(SIF3(商標))。米国特許出願公開第2016/0229913号に開示されているさらなる実施形態は、5個までのFcドメインモノマーを含む化合物の形成を記載している。これらの化合物は、本質的に、連続的に連結されたFcドメイン(米国特許出願公開第2005/0249723号および同第2010/0239633号を参照および配列変異を介して構築する個々のFcドメインモノマー(その変形は、米国特許出願公開第2006/0074225号に開示されている)を含む。そのようなものとして、最終結果は連続のストラドマーに似たマルチFc治療薬である。US2016/0229913に記載されているSIF3(商標)化合物は、多量体化ドメインを含まない。さらなるSIFの実施形態は、PCT国際公開第WO2017/151971号に記載されている。
【0068】
尾部Fc多量体
米国特許出願公開第2015/0218236号は、それを必要とする患者にマルチFc治療薬を投与することを含む、自己免疫疾患または炎症性疾患の治療方法を開示している。そこに記載されているマルチFc治療薬は、5、6、または7個のポリペプチドモノマー単位を含み、各モノマー単位は、2つのIgG重鎖定常領域を含むFc受容体結合部分を含む。各IgG重鎖定常領域は、隣接するポリペプチドモノマーのIgG重鎖定常領域のシステイン残基にジスルフィド結合を介して結合したシステイン残基を含む。US2015/0218236に記載されているペプチド「モノマー」は2つのIgG重鎖で構成されるので、それらは実際には二量体タンパク質(例えば、Fcドメイン)である。US2015/0218236のいくつかの実施形態では、モノマー単位は、モノマー単位のポリマー(例えば、多量体)への構築を容易にする尾部領域をさらに含む。そのように、その中で使用されている「尾部」は、本明細書およびUS2010/0239633およびUS2013/0156765に記載されている多量体化ドメインと機能的に同等である。この化合物は、上記のように構築してクラスターストラドマーを形成する多量体化ドメインを有するストラドマー単位を本質的に含む。追加の尾部Fc多量体は、PCT国際公開第WO2016/009232号および同第WO2017/005767号に記載されている。
【0069】
309位に変異を含むFcマルチマー
PCT国際公開第WO2015/132364号、同第WO2015/132365号、同第WO2015/158867号、同第WO2017/036905号、同第WO2017/013203号、および同第WO2016/139365号、ならびに米国特許出願公開第2017/0081406号、同第2017/0088603号、および同第2017/0029505号には、各ポリペプチドモノマーがFcドメインを含むポリペプチドモノマー単位で構成されるマルチFc治療薬が記載されている。前記各Fcドメインは、2つの重鎖Fc領域で構成され、それぞれ309位にシステインを含み(WO2015/132365およびWO2016/139365)、または309位にシステイン以外のアミノ酸を含む(WO2015/132364、WO2017/036905、およびWO2017/013203)。そのようなものとして、PCT国際公開第WO2015/132364号、同第WO2015/132365号、同第WO2015/158867号、同第WO2017/036905号、同第WO2017/013203号、および同第WO2016/139365号、ならびに米国特許出願公開第2017/0081406号、同第2017/0088603号、および同第2017/0029505号に記載されているポリペプチド「モノマー」実際には二量体タンパク質である(例えば、本明細書で使用されるFcドメインモノマー)。各重鎖Fc領域は、そのC末端で尾部に融合されており、それによってモノマーを多量体に構築させる。そのように、そこで使用される「尾部」は、本明細書に記載される多量体化ドメインと機能的に同等である。その中の好ましい実施形態では、マルチFc治療薬は三量体または六量体多量体である。この化合物は、上記のように構築させてクラスターストラドマーを形成する多量体化ドメインを有するストラドマー単位を本質的に含む。
【0070】
連続に連結されたFcドメインモノマーで構成されるFc多量体
米国特許出願公開第2010/0143353号は、IgGの少なくとも第1および第2のFcフラグメント、少なくとも1つのCH2ドメインおよびヒンジ領域を含むIgGの第1のIgGフラグメントの少なくとも1つを含み、IgGの第1および第2のFcフラグメントはヒンジを介して結合して鎖を形成する、マルチFc治療薬を記載している。US2010/0143353のいくつかの実施形態では、実質的に同様の鎖が会合して二量体を形成する。US2010/0143353の他の実施形態では、複数の実質的に同様の鎖が会合して多量体を形成する。本明細書に記載されるように、FcフラグメントはFcドメインを包含する。そのように、US2010/0143353に開示されている治療薬は、少なくとも2つのFc受容体に結合して多量体を構築することができる多量体化Fc治療薬を含む。
【0071】
治療方法
本発明の方法はさらに、自己免疫疾患および炎症性疾患を治療する方法であって、少なくとも1回の累積漸増用量のマルチFc治療薬を患者に投与することを含み、患者が、以前に投与されたマルチFc治療薬に対して不適切な応答を有すると決定されている、方法を提供する。
【0072】
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬に対する「不適切な応答」とは、マルチFc治療薬の以前に投与された用量の投与後の所定の閾値より低いiC3bの血中レベルを指す。いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬に対する「不適切な応答」とは、マルチFc治療薬の以前に投与された用量の投与後のベースラインの約10%未満のiC3bの血中レベルの変化を指す。いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬に対する「不適切な応答」とは、マルチFc治療薬の以前に投与された用量の投与後のベースラインの約25%未満、または約50%未満のiC3bの血中レベルの変化を指す。いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬に対する「不適切な応答」とは、患者および/または患者集団について確立された正常値内に留まるiC3bの血中レベルの変化を指す。いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬に対する「不適切な応答」とは、マルチFc治療薬の以前に投与された用量の投与後のベースラインiC3b測定値に対して10%未満、25%未満、または50%未満を超える増加である、iC3bの血中レベルの増加を指す。いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬に対する「不適切な応答」とは、集団について確立された正常値の約150%以内に留まるiC3bの血中レベルの変化を指す。
【0073】
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬の以前に投与された用量は、対象に投与されたマルチFc治療薬に対して適切な応答をもたらすことができないことが知られている。そのような実施形態では、適切な反応を引き出すことができない用量でのマルチFcの投薬は、対象において典型的には観察されないアレルギー反応または他の異常な免疫反応などのマルチFc治療薬の潜在的なオフターゲット効果を評価するため、投与され得る。その後、マルチFc治療薬の漸増用量をその後投与することができる。
【0074】
マルチFc治療薬の以前に投与された用量に対して不適切な応答を有すると決定された患者は、「累積漸増用量」であって、「漸増用量」または漸増用量と1つ以上の「増分用量」のいずれかで構成される「累積漸増用量」で治療され得る。本明細書で使用される場合、「以前に投与された用量」は、前の投与期間中に患者に投与されたマルチFc治療薬の投与量を指す。いくつかの実施形態では、以前に投与された用量は累積漸増用量を指す。いくつかの実施形態では、以前に投与された用量は開始用量を指す。本明細書で使用される場合、「開始用量」とは、上記マルチFc治療薬の最も低い一般的に使用される用量を指す。いくつかの実施形態では、開始用量は、所与の疾患または障害に対するマルチFc治療薬の商業的に承認された最低用量であり得る。本明細書で使用される場合、「商業的に承認された最低用量」とは、指示された疾患または障害の治療に承認されている所与のマルチFc治療薬の最低用量を指す。しかしながら、所与の疾患または障害に対する医療標準治療は、商業的に承認された最低用量よりも低い用量のマルチFc治療薬での治療の開始が必要され得る。そのような実施形態では、開始用量は、商業的に承認された最低用量または医療標準治療用量の90%、80%、70%、60%、50%以下であり得る。あるいは、所与の疾患または障害に対する医療標準治療は、より高用量のマルチFc治療薬での治療の開始を必要とし得る。そのような実施形態では、開始用量は、商業的に承認された最低用量の105%、110%、125%、150%、200%、250%、またはそれ以上であり得る。例えば、免疫不全疾患を治療するためのIVIGの商業的に承認された最低用量は600mg/Kgであり得るが、CIDPのような自己免疫性状態の医療標準治療の処置は2000mg/Kgであり得る。商業的に承認された最低用量が定義されていない場合、開始用量はまた、製造業者および/または医師によって推奨される初期用量、またはその後科学文献に記載されている初期用量を指すこともある。したがって、一実施形態では、開始用量は、マルチFc治療薬またはIVIGで治療されている特定の患者に与えられる実際の最初の用量である。
【0075】
一実施形態では、以前に投与された用量のマルチFc治療薬に対して不適切な応答を有すると判定された患者において炎症性疾患を治療する方法であって、1つ以上の漸増用量を患者に投与することを含む方法が提供される。本明細書で使用される場合、「漸増用量」は、以前に投与された用量のマルチFc治療薬よりも多い量であるか、または予想よりも頻繁に与えられるかのいずれかであるマルチFc治療薬の用量である。そのような1つ以上の漸増用量は、合計でマルチFc治療薬の「累積漸増用量」である。本明細書で使用される場合、「累積漸増用量」とは、所与のマルチFc治療薬の以前に投与された用量より累積的に多い投与期間中に投与されるマルチFc治療薬の用量である。いくつかの実施形態では、累積漸増用量は、以前に投与された用量より約105%、110%、115%、120%、125%、150%、200%以上である。いくつかの実施形態では、累積漸増用量は、投与期間を通して投与される漸増用量を含み、この漸増用量は、以前の投与期間中に投与されたマルチFc治療薬の用量よりも多い。いくつかの実施形態では、漸増用量は、以前の投与期間中に投与されたマルチFc治療薬の用量より約105%、110%、115%、120%、125%、150%、もしくは200%以上である。いくつかの実施形態では、累積漸増用量は、前の投与期間中の量と等しい量であり、それよりも頻繁に投与される漸増用量を含む。いくつかの実施形態では、漸増用量は、所与の投与期間中に、以前に投与されたマルチFc治療薬の用量より少なくとも1回多く投与される。いくつかの実施形態では、漸増用量は、所与の投与期間中に、以前に投与されたマルチFc治療薬の用量より少なくとも2、3、4、5、10、15、20回以上投与される。
【0076】
投与期間中の任意の時点で、iC3bの血中レベルを測定することができ、それに応じて前記投与期間中に投与されるマルチFcの用量を調整することができる。そのような実施形態では、累積漸増用量は、投与期間の一部に投与された漸増用量と、それに続く残りの投与期間に投与された「増分用量」とを含み得る。本明細書で使用される場合、「増分用量」は、漸増用量よりも量が多く、漸増用量と同じ投与期間内に投与されるマルチFc治療薬の用量である。いくつかの実施形態では、増分用量は、漸増用量の後に与えられ、漸増用量よりも多い単回投与期間内に与えられる増加用量である。いくつかの実施形態では、増分投与量は、単回の投与期間内に与えられる投与量であり、漸増用量について以前に予想された投与スケジュールよりも頻繁に投与される。いくつかの実施形態では、増分投与量は、同じ投与期間中に投与される漸増用量の約105%、110%、115%、120%、125%、150%、もしくは200%またはそれ以上である。そのように、いくつかの実施形態では、累積漸増用量は、同じ投与期間中に投与される漸増用量および1つ以上の増分用量を含み得る。例示的な投与計画の概略図を
図8に提供する。
【0077】
さらなる例として、成人男性に対する液体Gammagard(商標)(Baxaltaによって製造されたヒト免疫グロブリン輸液)の皮下投与のための推奨される初期用量は、4週間ごとに400mg/Kgである。この例では、Gammagard(商標)の開始用量は400mg/kgである。本明細書に記載の方法によって、患者がマルチFc治療薬の初期用量に対して不適切な応答を示したと判断された場合、累積漸増用量が投与される。この明確な例では、累積漸増用量は、投与期間の間投与される漸増用量、例えば500mg/Kgを含み得る。あるいは、累積漸増用量は漸増用量を含み得、ここで漸増用量は開始用量と量が等しく(例えば400mg/mL)、そして開始用量よりも頻繁に投与される(例えば開始用量の少なくとも2回以上)。あるいは、累積漸増用量は、投与期間の一部に投与されるこれらの漸増用量のいずれか、および投与期間の残りに投与される増分用量(例えば、550mg/Kg)を含み得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、「投与期間」とは、マルチFc治療薬が投与される期間を指す。投与期間は、少なくとも1日、2日、3日、4日、1週間、1ヶ月、6ヶ月、またはそれ以上であり得る。いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬は、投与期間中に少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回またはそれ以上投与することができる。明確な例として、投与期間は6ヶ月であり得、ここでマルチFc治療薬は毎月1回、合計6回投与される。本明細書に記載の方法は、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、またはそれ以上の投与期間にわたってマルチFc治療薬を投与することを含み得る。
【0079】
本明細書に記載の方法に従って使用するために、本明細書で定義するマルチFc治療薬の用量(例えば、漸増用量および増分用量)をいくつかの投与期間にわたっていくつかの方法で組み合わせることができる。漸増用量、増分用量、累積漸増用量、および投与期間の間の関係を
図8に示す。
図8に開示された実施形態は、例示を目的としたものにすぎず、本明細書に記載の方法を限定するものではない。
【0080】
いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬に対する不適切な応答は、患者におけるiC3bまたは代替iC3bマーカーの循環レベルを測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、所定の閾値より低いiC3bのレベルは、マルチFc治療薬に対する不適切な応答の指標である。そのような実施形態では、漸増用量のマルチFc治療薬を投与することができる。いくつかの実施形態では、所定の閾値より高いiC3bのレベルは、マルチFc治療薬に対する適切な応答の指標である。そのような実施形態では、漸増用量のマルチFc治療薬を投与しなくてもよい。いくつかの実施形態では、iC3bの所定の閾値は、約25μg/mL~約300μg/mLでアッセイバックグラウンドを上回る。いくつかの実施形態では、iC3bの所定の閾値は、約50μg/mL~約200μg/mLでアッセイバックグラウンドより上回る。いくつかの実施形態では、iC3bの所定の閾値は、約75μg/mL~約125μg/mLでアッセイバックグラウンドを上回る。いくつかの実施形態では、iC3bの所定の閾値は、約100μg/mLアッセイバックグラウンドを上回る。いくつかの実施形態では、患者のベースラインレベルから10%未満のiC3bレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答の指標である。いくつかの実施形態では、患者の以前に決定されたiC3bレベルからの10%未満のiC3bレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答の指標である。いくつかの実施形態では、20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、または50%未満のiC3bレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答の指標である。
【0081】
さらなる実施形態では、患者のベースラインレベルから10%未満のiC3bの代替マーカー(例えば、C4a、C4a desArg、C3a、C3a desArg、C3f、C3c、C3dg、C3d、および/またはC3g)のレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答の指標である。いくつかの実施形態では、患者の以前に決定されたiC3bレベルからの10%未満のiC3bの代替マーカーのレベルの変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答の指標である。いくつかの実施形態では、iC3bの代替マーカーのレベルの20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、または50%未満の変化は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答の指標である。いくつかの実施形態では、患者のベースラインからのまたは、患者の以前に決定されたiC3bレベルからの10%未満のiC3bの代替マーカー(例えば、C4a、C4a desArg、C3a、C3a desArg、C3f、C3c、C3dg、C3d、および/またはC3g)のレベルの増加は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答の指標である。いくつかの実施形態では、患者のベースラインからのまたは患者の以前に決定されたiC3bレベルからの、iC3bの代替マーカーのレベルの20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、または50%未満の増加は、マルチFc治療薬に対する不適切な応答の指標である。いくつかの実施形態では、所定の閾値より低いiC3bの代替マーカーのレベルはマルチFc治療薬に対する不適切な応答の指標である。いくつかの実施形態では、iC3bの代替マーカーの所定の閾値は約5ng/mL~約30ng/mLである。いくつかの実施形態では、iC3bの代替マーカーの所定の閾値は、約10ng/mL~約20ng/mLである。
【0082】
iC3bレベルに関して本明細書で使用される用語「決定する」、「測定する」、および「定量する」は、特定の時点でのiC3bアッセイによるiC3bの血中レベルの評価を指す。iC3b生成が評価される時点は、投与前、適切な患者におけるマルチFc治療薬の使用後、5分未満、15分、30分、1時間、2時間、4時間、12時間、24時間、2日、3日、7日、14日、1ヶ月以上であり得る。上記のように、いくつかの実施形態では、上流補体切断産物(例えば、C3a、C3a desArg、C4aおよび/もしくはC4a desArg)のレベル、またはiC3b切断および/または分解産物(例えば、iC3b1、iC3b2、C3f、C3dg、C3dおよび/またはC3g)のレベルが、下流のiC3bレベルの代替物として使用される。患者における循環iC3bのレベルを決定するための本明細書に記載される方法は、iC3b1、iC3b2、C4a、C4a desArg、C3a、C3a desArg、C3f、C3dg、C3d、および/またはC3gのレベルの決定に等しく適用されるが、当業者は、そのような測定の理想的なタイミングがiC3bとは異なり得ることを認識するであろう。iC3b1、iC3b2、C4a、C4a desArg、C3a、C3a desArg、C3f、C3dg、C3d、および/またはC3gのレベルは、ELISA、ウエスタンブロット、および/またはフローサイトメトリーまたは他の類似の方法によって決定され得る。用語「iC3bの血中レベル」および「iC3bレベル」は、本明細書では互換的に使用され、所与の時点における患者または対象におけるiC3bの循環レベルを指す。
【0083】
CDCの阻害を決定するためのアッセイは当該分野で既知であり、そして腫瘍細胞株、新鮮な赤血球、または他の材料を使用して種々の方法で達成され得る。アッセイにおいて標的細胞のCDCをもたらす補体経路を活性化するために、標的抗原に対する抗体および補体C1qが一般にこれらのアッセイにおいて必要である。
【0084】
いくつかの実施形態では、循環iC3bのレベルは、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)またはウエスタンブロットなどの免疫検定法によって決定される。いくつかの実施形態では、循環iC3bのレベルは、米国特許第9,164,088号に記載されているイムノアッセイ法によって決定される。そのようなアッセイは可溶性iC3bを検出することができる。そのように、iC3bの所定の閾値は、血液サンプルから決定されたiC3bの濃度に基づいてよい。いくつかの実施形態では、iC3bは循環細胞の表面に結合していてもよい。そのような実施形態では、循環iC3bのレベルはフローサイトメトリーによって決定され得る。そのような実施形態では、循環iC3bの所定の閾値は、iC3b+である細胞の割合もしくはパーセンテージとして、および/または所与のiC3bに対する相対平均蛍光強度(MFI)を有する細胞の割合もしくはパーセンテージとして表すことができる。いくつかの実施形態では、iC3bの所定の閾値は、iC3b+である好中球および単球の25%である。さらなる実施形態では、iC3bの所定の閾値は、ベースラインのiC3b MFIの125%のiC3b MFIである。いくつかの実施形態では、iC3bレベルはイムノアッセイによって決定される。可溶性および細胞結合iC3bを決定する方法は、所定の閾値を生成するために組み合わせてもよい(例えば、0.02μg/mL未満のiC3b濃度および/または25%未満のiC3b+単球および好中球のパーセンテージおよび/またはベースラインの125%未満である単球および好中球におけるiC3b MFI)。さらなる実施態様では、イムノアッセイはELISAまたはウエスタンブロットである。いくつかの実施形態では、iC3bレベルはフローサイトメトリーによって決定される。
【0085】
マルチFc治療薬の有効用量を決定するための追加の方法が本明細書で提供され、それはマルチFc治療薬を、それを必要とする対象に開始用量で投与することと、iC3bの循環レベルを測定することと、対象におけるiC3bの循環レベルが所定の閾値を下回っている場合、またはiC3b血中レベルの循環レベルが、マルチFc治療薬の開始用量の投与後に投与前のベースラインから不適切な変化を有する場合、対象がマルチFc治療薬の累積漸増用量を必要とすることを決定することと、必要ならばマルチFc治療薬の累積漸増用量を投与することと、を含む。さらなる実施形態では、iC3bの循環レベルを決定するプロセスは、累積漸増用量の投与後に繰り返される。iC3bの循環レベルが第1の投与期間の累積漸増用量の投与後に所定の閾値を下回ったままである場合、またはiC3b血中レベルの循環レベルが投与前ベースラインからの不適切な変化を有する場合、第2の累積漸増用量が第2の投与期間中に投与される。そのような実施形態では、第2の累積増量用量は第1の累積増量用量よりも高用量である。そのような実施形態では、第2投与期間は、第1投与期間よりも短い、長い、または同じ時間であり得る。なおさらなる実施形態では、連続投与期間中にますます高用量のマルチFc治療薬を投与するこのプロセスは、iC3bの所定の閾値に達するまで、またはiC3bの血中レベルの循環レベルが投与前ベースラインから適切に変化するまで繰り返される。
【0086】
iC3bを測定するための新しい技術、および/または既存の技術またはアッセイの感度、特異性、陽性的中率、および/または陰性的中率の変更もしくは改良は、本開示を根本的に変えるものではない。iC3bを評価するための新規および/または改良された技術は、本明細書に記載の方法において使用することができる。
【0087】
当業者は、患者にマルチFc治療薬を投与する行為とiC3bの循環レベルを測定する行為とが同じ人によって行われる必要がないことを理解するであろう。したがって、いくつかの実施形態では、患者にマルチFc治療薬を投与する行為およびiC3bの循環レベルを測定する行為は、異なる人によって行われる。いくつかの実施形態では、患者にマルチFc治療薬を投与する行為と、iC3bの循環レベルを測定する行為とは、同じ人によって行われる。さらに、いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬を患者に投与する行為およびiC3bの循環レベルを測定する行為は、異なる地理的位置で行われる(例えば、マルチFc治療薬は臨床現場で医師によって投与され、そして患者から血液を採取し、iC3bレベルを決定するために施設外の検査室に送る。)。いくつかの実施形態では、2つの行為は、同じ場所で、かつ/または単一の人または人々のグループの指示の下で実行される。
【0088】
本明細書で使用される「有効用量」または「治療有効用量」は、所定の閾値を超えるiC3bのレベルをもたらし、そしてまた疾患または状態の症状の改善または治療をもたらすマルチFc治療薬の量を指す。改善は、疾患または状態、あるいは疾患または状態の症状の任意の改善または治療である。いくつかの実施形態では、改善は観察可能なまたは測定可能な改善であるか、または対象の全般的な幸福感の改善であり得る。したがって、当業者は、治療によって病状が改善される可能性があるが、その疾患に対する完全な治療法ではない可能性があることを理解する。具体的には、対象における改善は、以下のうちの1つ以上を含み得る;炎症の低減、C反応性タンパク質のような炎症性の実験室マーカーの減少、自己抗体などの自己免疫マーカーまたは血小板数、白血球数、または赤血球数における1つ以上の改善によって証明されるような自己免疫の減少、発疹または紫斑病の減少、脱力感、しびれ、またはうずきの減少、高血糖症患者における血糖値の上昇、関節痛、炎症、腫れ、または悪化の減少、けいれんおよび下痢の頻度と量の減少、狭心症の減少、組織炎症の減少、または発作頻度の減少;癌の腫瘍量の減少、腫瘍進行までの時間の増加、癌の痛みの減少、生存率の増加、または生活の質の向上、または骨粗鬆症の進行または改善の遅延。
【0089】
本明細書で使用される場合、「予防」とは、疾患の症状の完全な予防、疾患の症状の発症の遅延、またはその後に発症する疾患の症状の重症度の低減を意味し得る。
【0090】
本明細書で使用される「対象」または「患者」という用語は、本明細書に記載の方法に従ってマルチFc治療薬が投与される任意の哺乳動物対象を意味すると解釈される。特定の実施形態では、本開示の方法はヒト対象を治療するために使用される。本開示の方法はまた、非ヒト霊長類(例えば、サル、ヒヒ、およびチンパンジー)、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ブタ、ウサギ、ヤギ、シカ、ヒツジ、フェレット、スナネズミ、モルモット、ハムスター、コウモリ、鳥類(鶏、七面鳥、アヒルなど)、魚、爬虫類を治療するためにも使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、H因子および/またはI因子が欠損していない患者または対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、H因子および/またはI因子タンパク質の機能に影響を及ぼすH因子および/またはI因子遺伝子に変異を有さない対象患者を治療するために使用される。
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって治療される患者は、H因子および/またはI因子の突然変異または欠乏に関連するおよび/またはそれによって引き起こされる溶血性尿毒症症候群、膜増殖性糸球体腎炎、または加齢性黄斑変性症に罹患していない。
【0091】
投与経路は、当然、治療される疾患の位置および性質によって異なり、例えば、皮内、経皮(transdermal)、皮下(subdermal)、非経口、経鼻、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮下(subcutaneous)、経皮(percutaneous)、気管内、腹腔内、腫瘍内、灌流、洗浄、直接注射、および経口投与などが挙げられる。
【0092】
一実施形態では、マルチFc治療薬は、静脈内、皮下、経口、腹腔内、舌下、口腔内、経皮、直腸内、皮下インプラントによって、または筋肉内に投与される。特定の実施形態では、マルチFc治療薬は静脈内、皮下または筋肉内に投与される。
【0093】
マルチFc治療薬による治療に適した病状には、アレルギー、癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、および増加したまたは不適切な補体活性を含む、補体活性化または補体媒介エフェクター機能によって引き起こされるまたは関連する任意の疾患が含まれる。このような病状には、エクリズマブなどの補体結合薬で現在または過去に治療されたことがある病状が含まれる。エクリズマブは補体タンパク質C5(古典的補体経路においてC1およびC1qの下流にある補体タンパク質)に結合し、その切断およびその後の補体媒介細胞溶解を阻害する。マルチFc治療薬は、当該分野で既知の他の補体結合薬に対する安全で効果的な代替物を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、マルチFc治療薬は、古典的補体経路のC1複合体中の最初のサブユニットであるC1qに結合する。本明細書に記載の方法での治療に適した病状には、重症筋無力症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間血色素尿症(PNH)、膜性腎症、視神経脊髄炎、同種移植片抗体媒介拒絶反応、ループス腎炎、黄斑変性症、鎌状赤血球症、および膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)が挙げられるがこれらに限定されない。マルチFc治療薬による治療に適したさらなる病状には、IVIGを含む広範な免疫抑制療法で現在日常的に治療されているもの、または自己免疫性血球減少症、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、抗第VIII因子自己免疫疾患、皮膚筋炎、血管炎、およびぶどう膜炎などのIVIGが臨床的に有用であることが判明しているもの(F.G.van der Meche et al.,N.Engl.J.Med.326,1123(1992)、P.Gajdos et al,Lancet,323(1984)、Y.Sultan et al.,Lancet ii,765(1984);M.C.Dalakas et al.,N.Engl.J.Med.329,1993(1993)、D.R.Jayne et al,Lancet 337,1137(1991)、P.LeHoang et al.,Ocul.Immunol.Inflamm.8,49(2000)を参照)、およびモノクローナル抗体が使用され得るかまたは既に臨床使用されている癌または炎症性疾患状態が含まれる。本発明の主題である化合物によって効果的に治療され得るものに含まれる状態には、サイトカインネットワークにおける不均衡を伴う炎症性疾患、病原性自己抗体もしくは自己攻撃性T細胞によって媒介される自己免疫障害、または慢性再発性自己免疫、炎症性、または感染症または感染プロセスの急性もしくは慢性期が含まれる。
【0094】
さらに、補体が関与する炎症性成分を有する他の病状、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、心筋梗塞、脳卒中、B型肝炎、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス関連炎症、副腎白質ジストロフィー、およびてんかん性疾患、特にラスムッセン症候群、ウェスト症候群、およびレノックス-ガースト症候群を含むウイルス感染後脳炎に関連すると考えられているものなどは、マルチFc治療薬による治療から恩恵を受けるであろう。
【0095】
補体阻害は、抗体媒介疾患を減少させることが実証されている(例えば、Stegall et al.,American Journal of Transplantation 2011 Nov;11(1):2405-2413を参照されたい)。本発明の方法はまた、抗体媒介性の疾患または状態を治療するためにも使用され得る。自己抗体は多くの既知の自己免疫疾患を媒介し、そしておそらく他の多数の自己免疫疾患において役割を果たす。本発明の方法を使用することができる認識された抗体媒介性疾患には、グッドパスチャーを含む抗糸球体基底膜抗体媒介性腎炎、固形臓器移植における抗ドナー抗体(ドナー特異的同種抗体)、視神経脊髄炎における抗Aquaporin-4抗体、神経筋緊張症、辺縁系脳炎、およびモーバン症候群における抗VGKC抗体、重症筋無力症における抗ニコチン性アセチルコリン受容体および抗MuSK抗体、ランバートイートン筋無力症候群における抗VGCC抗体、腫瘍とよく関連する辺縁系脳炎における抗AMPARおよび抗GABA(B)R抗体、スティフパーソン症候群または過剰驚愕症における抗GlyR抗体、再発性の自然流産、ヒューズ症候群、および全身性エリテマトーデスにおける抗リン脂質、抗カルジオリピン、および抗β2糖タンパク質I抗体、スティフパーソン症候群、自己免疫性小脳性運動失調症または辺縁系脳炎における抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体、多くの場合、卵巣奇形腫と関連しているが、非腫瘍性であり得る若年成人および小児では顕著な運動障害を伴う辺縁系および皮質下の両方の特徴を含む新たに記載された症候群における抗NMDA受容体抗体、
全身性エリテマトーデスにおける抗二本鎖DNA、抗一本鎖DNA、抗RNA、抗SM、および抗C1q抗体、強皮症、シェーグレン症候群、抗Ro、抗La、抗Scl 70、抗Jo-1などの多発性筋炎を含む結合組織疾患における抗核抗体および抗核小体抗体、慢性関節リウマチにおける抗リウマチ因子抗体、結節性多発動脈炎における抗B型肝炎表面抗原抗体;クレスト症候群における抗セントロメア抗体、心内膜炎におけるまたは心内膜炎のリスクとしての抗連鎖球菌抗体、橋本甲状腺炎における抗チログロブリン、抗甲状腺ペルオキシダーゼ、および抗TSH受容体抗体、混合性結合組織病および全身性エリテマトーデスにおける抗U1 RNP抗体、天疱瘡における抗デスモグレイン抗体および抗ケラチノサイト抗体、が含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
マルチFc治療薬は、以下を含むがこれらに限定されない状態を治療するために使用できる、鬱血性心不全(CHF)、血管炎、酒さ、ニキビ、湿疹、心筋炎およびその他の心筋の症状、全身性エリテマトーデス、糖尿病、脊椎症、滑膜線維芽細胞、骨髄間質、骨喪失、パジェット病、破骨細胞腫;多発性骨髄腫;乳癌、廃用性骨減少症、栄養失調、歯周病、ゴーシェ病、ランゲルハンス細胞組織球増加症、脊髄損傷、急性敗血症性関節炎、骨軟化症、クッシング症候群、単骨性線維性異形成、多発性線維性異形成、歯周組織再建、および骨折、サルコイドーシス、骨溶解性骨癌、肺癌、腎臓癌および直腸癌、骨転移、骨痛管理、および体液性悪性高カルシウム血症、強直性脊椎炎およびその他の脊椎関節症、移植拒絶反応、ウイルス感染症、血液腫瘍および新生物様症状、例えばホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ性白血病、菌状息肉腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、有毛細胞性白血病およびリンパ性白血病)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫、およびT細胞性急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫、胸腺腫を含むリンパ球前駆細胞の腫瘍、末梢T細胞性白血病、成人T細胞白血病/T細胞リンパ腫および大顆粒リンパ球性白血病を含む成熟TおよびNK細胞の腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、成熟したAML、分化していないAMLを含む急性骨髄性白血病などの骨髄性新生物、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、および急性単球性白血病、骨髄異形成症候群、および慢性骨髄性白血病を含む慢性骨髄増殖性疾患、中枢神経系の腫瘍、例えば脳腫瘍(神経膠腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、髄芽腫、上衣腫、網膜芽細胞腫)、固形腫瘍(鼻咽頭癌、基底細胞癌、膵臓癌、胆管癌、カポジ肉腫、精巣癌、子宮、膣または子宮頸癌、卵巣癌、原発肝臓癌または子宮内膜癌、血管系の腫瘍(血管肉腫および血管外皮腫))または他の癌。
【0097】
本明細書における「癌」は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すかまたは説明する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫(脂肪肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、平滑筋肉腫、脊索腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、横紋筋肉腫、線維肉腫、粘液肉腫、および軟骨肉腫が含まれる)、神経内分泌腫瘍、中皮腫、滑膜腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺癌、黒色腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が挙げられるがこれらに限定されない。そのような癌のより特定の例には、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、小細胞肺癌を含む肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌、小細胞肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃癌(gastric or stomach cancer)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney or renal cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、精巣癌、食道癌、胆道の腫瘍、ユーイング腫瘍、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、ユーイング腫瘍、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、精巣腫瘍、肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストロームマクログロブリン血症、骨髄異形成疾患、重鎖疾患、神経内分泌腫瘍、神経鞘腫、および他の癌腫、ならびに頭頸部癌が含まれる。
【0098】
自己免疫疾患を治療するためにマルチFc治療薬を使用することができる。本明細書で使用される「自己免疫疾患」という用語は、80を超える疾患および状態の多様な群を指す。これらの病気や症状のすべてにおいて、根本的な問題は体の免疫システムが体そのものを攻撃するということである。自己免疫疾患は、結合組織、神経、筋肉、内分泌系、皮膚、血液、ならびに呼吸器系および消化器系を含むすべての主要な身体系に影響を及ぼす。自己免疫疾患には、例えば、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、重症筋無力症、および1型糖尿病が含まれる。
【0099】
本発明の組成物および方法を用いて治療可能な疾患または状態は、鎌状赤血球症、特発性血小板減少性紫斑病、同種免疫/自己免疫性血小板減少症、後天性免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性溶血性貧血、パルボウイルス、B19関連赤血球形成不全、後天性抗第VIII因子自己免疫、後天的フォンビルブラント病、多発性骨髄腫および意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症、敗血症、再生不良性貧血、赤芽球ろう、ダイヤモンド-ブラックファン貧血、新生児の溶血性疾患、免疫介在性好中球減少症、血小板輸血に対する不応性、新生児、輸血後紫斑病、溶血性尿毒症症候群、全身性血管炎、血栓性血小板減少性紫斑病、またはエバン症候群を含むがこれらに限定されない。
【0100】
疾患または状態はまた、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性ポリジニューロニューロパチー、パラプロテインIgM脱髄性多発ニューロパチー、ランバート-イートン筋無力症、重症筋無力症、多巣性運動ニューロパチー、抗/GM1に関連した下部運動ニューロン症候群、脱髄、多発性硬化症および視神経炎、スティフマン症候群、抗Yo抗体を伴う腫瘍随伴性小脳変性症、腫瘍随伴性脳脊髄炎、抗Hu抗体を伴う感覚神経障害、てんかん、脳炎、骨髄炎、特にヒトT細胞リンパ球向性ウイルス-1に関連する骨髄症、自己免疫性糖尿病性ニューロパチー、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、または急性特発性自律神経障害ニューロパチーを含むがこれらに限定されない、神経免疫学的プロセスであり得る。
【0101】
疾患または状態はまた、難聴または失明に関連する炎症または自己免疫であり得る。例えば、疾患または状態は、騒音誘発性難聴または加齢性難聴などの自己免疫性難聴であってもよく、または聴覚機器(たとえば、人工内耳)などの機器の移植に関連していてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、デバイスの移植の前に、それと同時に、またはその後に被験体に投与され得る。
【0102】
疾患または状態はまた、限定されないが、川崎病、関節リウマチ、フェルティ症候群、ANCA陽性血管炎、自発性多発性筋炎、皮膚筋炎、抗リン脂質症候群、再発性自然流産、全身性エリテマトーデス、若年性突発性関節炎、レイノー病、クレスト症候群、またはぶどう膜炎などを含む、リウマチ性疾患プロセスであり得る。
【0103】
疾患または状態はまた、これらに限定されないが、中毒性表皮壊死症、壊疽、肉芽腫、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、落葉状天疱瘡を含む自己免疫性皮膚水疱症、白斑、連鎖球菌中毒性ショック症候群、強皮症、びまん性および限局性皮膚全身性硬化症を含む全身性硬化症またはアトピー性皮膚炎(特にステロイド依存性)を含む皮膚免疫疾患プロセスであり得る。
【0104】
疾患または状態はまた、封入体筋炎、壊死性筋膜炎、炎症性ミオパチー、筋炎、抗デコリン(BJ抗原)ミオパチー、腫瘍随伴性壊死性ミオパチー、X連鎖空胞性ミオパチー、ペナシラミン誘発性多発性筋炎(penacillamine-induced polymyositis)、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈疾患、または心筋症を含むがこれらに限定されない筋骨格免疫疾患プロセスであり得る。
【0105】
疾患または状態はまた、これらに限定されないが、悪性貧血、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、セリアック病、疱疹状皮膚炎、突発性肝硬変、反応性関節炎、クローン病、ホイップル病、潰瘍性大腸炎、または硬化性胆管炎を含む胃腸免疫疾患プロセスであり得る。
【0106】
疾患または状態はまた、移植片対宿主病、移植片の抗体媒介拒絶反応、骨髄移植後拒絶反応、感染症後炎症、リンパ腫、白血病、新形成、喘息、抗β細胞を伴う1型糖尿病、抗体、シェーグレン症候群、混合結合組織病、アジソン病、フォクト-コヤナギ-ハラダ症候群、膜増殖性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、橋本甲状腺炎、ウェゲナー肉芽腫、微小多発性動脈炎(micropolyarterits)、チャーグシュトラウス症候群、結節性多発動脈炎、または多臓器不全であり得る。
【0107】
疾患または状態は、グッドパスチャー病、固形臓器移植拒絶反応、視神経脊髄炎、神経筋緊張症、辺縁系脳炎、Morvan線維性舞踏病症候群、重症筋無力症、ランバートイートン筋無力症候群、自律神経障害、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、パーキンソン病、スティフパーソン症候群または過剰驚愕症、再発性の自然流産、ヒューズ症候群、全身性エリテマトーデス、自己免疫性小脳性運動失調症、強皮症を含む結合組織疾患、シェーグレン症候群、多発性筋炎、慢性関節リウマチ、結節性多発動脈炎、クレスト症候群、心内膜炎、橋本甲状腺炎、混合結合組織病、チャネル病、連鎖球菌感染症に関連した小児自己免疫性神経精神障害(PANDAS)、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体に対する抗体、特にNR1、コンタクチン関連タンパク質2、AMPAR、GluR1/GluR2、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、GlyRα1a、アセチルコリン受容体、VGCC P/Q型、VGKC、MuSK、GABA(B)R、に関する臨床症状、アクアポリンそして天疱瘡からなる群から選択される抗体媒介性疾患であり得る。疾患または状態は変形性関節症であり得る。
【0108】
疾患または症状は、重症筋無力症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間血色素尿症(PNH)、視神経脊髄炎、同種移植片の抗体媒介性拒絶反応、膜性腎症を含む腎症、ならびに膜増殖性糸球体腎炎(MPGN)およびループス腎炎を含む腎炎からなる群から選択される補体媒介疾患であり得る。
【0109】
疾患または状態は、ヘモグロビンSS、ヘモグロビンSC、ヘモグロビンSβ 0サラセミア、ヘモグロビンSβ +サラセミア、ヘモグロビンSD、およびヘモグロビンSEを含む鎌状赤血球症などの貧血を含む血液障害であり得る。
【0110】
疾患または状態は、加齢黄斑変性症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、またはパーキンソン病を含む炎症性疾患であり得る。
【0111】
本明細書で使用される「アレルギー」は、IgEによって媒介されるすべての免疫反応、ならびにIgE媒介反応を模倣するそれらの反応を含む。アレルギーは、IgEまたはIgE様免疫応答を引き起こす、タンパク質、ペプチド、炭水化物、およびそれらの組み合わせを含むアレルゲンによって誘発される。例示的なアレルギーとしては、ナッツアレルギー、花粉アレルギー、および昆虫刺されアレルギーが挙げられる。例示的なアレルゲンは、ツタウルシおよびオークのウルシオール、ハウスダスト抗原、白樺の花粉成分Bet v 1およびBet v 2、セロリ中の15kD抗原、リンゴ抗原Mal d 1、桃のPru p3、チモシー草花粉アレルゲンPhl p 1、ライムギのLol p 3、Lol p I、またはLol p V、バミューダグラスのCyn d 1、ダストダニアレルゲンダストダニDer p1、Der p2、またはDer f1、グルテン中のα-グリアジンおよびγ-グリアジンエピトープ、ハチ毒ホスホリパーゼA2、落花生のAra h 1、Ara h 2、およびAra h 3エピトープを含む。
【0112】
本発明はさらに、感染病原体によって引き起こされる疾患の治療方法を含む。感染病原体には、これらに限定されないが、細菌性、真菌性、寄生虫性、およびウイルス性の物質が含まれる。そのような感染病原体の例としては、以下が挙げられる:Staphylococcus属、メチシリン耐性Staphylococcus Aureus、Escherichia coli、連鎖球菌科(Streptococcaceae)、ナイセリア科(Neisseriaaceae)、球菌、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、Enterococcus属、バンコマイシン耐性Enterococcus属、Cryptococcus属、Histoplasma属、Aspergillus属、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、ビブリオ科(Vibrionaceae)、Campylobacter属、パスツレラ科(Pasteurellaceae)、Bordetella属、Francisella属、Brucella属、レジオネラ科(Legionellaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、グラム陰性菌、Clostridium属、Corynebacterium属、Propionibacterium属、グラム陽性菌、炭疽菌、Actinomyces属、Nocardia属、Mycobacterium属、Treponema属、Borrelia属、Leptospira属、Mycoplasma属、Ureaplasma属、Rickettsia属、Chlamydiae属、Candida属、全身真菌症、日和見真菌症、原虫、線虫、吸虫、条虫、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルスおよびエプスタインバーウイルス、ならびに帯状疱疹ウイルスを含む)、ポックスウイルス、パポバウイルス、肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスを含む)、パピローマウイルス、オルソミクソウイルス(例えば、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、およびC型インフルエンザを含む)、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、レオウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、ブニヤウイルス科、ラブドウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、ヒト免疫不全ウイルスおよびレトロウイルス。例示的な感染症としては、カンジダ症、カンジダ血症、アスペルギルス症、連鎖球菌性肺炎、連鎖球菌性皮膚病および口腔咽頭病(streptococcal skin and oropharyngeal condition)、グラム陰性セプシス、結核、単核球症、インフルエンザ、RSウイルスによる呼吸器疾患、マラリア、住血吸虫症、およびトリパノソーマ症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
本明細書に引用されたすべての参考文献は、その全体が参考として組み込まれる。
【実施例】
【0114】
実施例1:CDCからGL-2045で保護された抗体オプソニン化細胞
補体媒介性細胞傷害性(CDC)の阻害についてのGL-2045の治療有効用量を決定するために実験を行った。手短に言えば、CD20+B細胞リンパ腫系、SUDHL4およびRamosを、抗CD20抗体(リツキシマブ、10μg/mL)と共に2%FBSを含む培地中、氷上で5分間インキュベートした。リツキシマブ(RTX)、GL-2045、熱凝集IVIG(HAGG)、およびIVIG(10、50、100、500、1000および10,000μg/mL)を正常ヒト血清と共に37℃で10~15分間インキュベートした。血清/試験化合物混合物を細胞に最終濃度6%まで添加した。試料を37℃で45分間インキュベートした。SUDHL4およびRamos細胞の細胞傷害性を、アネキシンV/7-AAD染色のフローサイトメトリー検出によって測定した。両方の細胞株について、試験したGL-2045の最大有効用量は100μg/mLであった。さらに、GL-2045は、同様の用量でIVIGよりも実質的に強力であった(
図1Aおよび
図1B)。
【0115】
実施例2:GL-2045は限定された初期補体活性化を推進した。
GL-2045が細胞をCDCから保護するメカニズムを決定するために実験を行った。無細胞系において、正常ヒト血清(NHS)を、漸増濃度のGL-2045、HAGG、およびIVIG(1~10,000μg/mL)と共に37℃で90分間インキュベートした。補体分割産物のレベルC4a、C3aおよびC5aをBD Biosciences CBA human anaphylatoxin kit(カタログ番号561418)で評価した。この系において、GL-2045は、C4aの増加によって示されるC4の有意な切断(
図2、左パネル)、およびC3aのより小さな増加によって示される中程度のC3の切断を媒介した(
図2、中央パネル)。さらに、GL-2045で処理した血清は、検出可能なレベルのC5aを含まなかった(
図2、右パネル)。これらのデータは、C4a産生によって実証されるように、GL-2045が古典的補体活性化の初期段階を活性化するが、下流のC3切断を媒介する能力には限界を有し、試験用量でC5切断を媒介できないことを実証する。結果は、GL-2045が下流の活性化を媒介することができないことで限定された初期補体活性化を推進することを示した。
【0116】
実施例3:GL-2045による限定的補体活性化はH因子に依存していた。
下流補体活性化を阻害するGL-2045の能力に基づいて、H因子などの補体活性化の調節因子がGL-2045の作用に関与しているか否かを決定するために実験を行った。H因子は、代替的および古典的補体活性化の両方の重要な調節因子であり、異常なおよび過剰な補体活性化の防止において重要な役割を果たしている。H因子枯渇血清を様々な濃度のGL-2045、HAGGおよびIVIG(0.01~10,000μg/mL)と共にインキュベートし、C4a、C3aおよびC5a産生を上流(C3a、C4a)および下流(C5a)の指標として測定した。H因子枯渇血清において、GL-2045、HAGG、またはIVIGのいずれについても有意なレベルのC4aは観察されず、これは、H因子が古典的補体経路の活性化の開始においてこれまで報告されていない役割を果たし得ることを示す(
図3、左パネル)。驚くべきことに、そして正常なヒト血清とは対照的に、H因子欠乏血清において、GL-2045およびIVIGの両方が、H因子の非存在下で有意なレベルのC3aおよびC5aの両方の生成を媒介した(
図3、中央および右パネル)。H因子欠乏血清のH因子による再構成は、100μg/mLのGL-2045および100μg/mLのIVIGへの曝露後にC3aおよびC5aのレベルの濃度依存的な減少をもたらした(
図4)。これらのデータは、H因子が下流の補体活性化を阻害するためのマルチFc治療薬の能力を媒介することにおいて重要な役割を果たすことを示している。適切なH因子の存在下で、マルチFc治療薬への曝露時のC5a生成の不在は、C3bが古典的または代替的なC5コンバターゼのいずれにも組み込まれず、代わりにiC3bに分解されることを意味する。
【0117】
実施例4:GL-2045はH因子およびI因子の機能を促進し、iC3b生成を増強した。
GL-2045、H因子、およびI因子間の相互作用をさらに明確にするために実験を行った。代替形態のC3コンバターゼは、GL-2045、HAGG、またはIVIGの存在下で、H因子あり(
図5、黒いバー)またはH因子なし(
図5、白いバー)での、C3b、D因子、B因子、およびC3のインキュベーションによって生成した。予想されたように、H因子は、C3aの減少によって示されている、代替C3コンバターゼの作用を阻害した。驚くべきことに、GL-2045の添加は、C3aの用量依存的な減少によって注目されるように、濃度依存的にH因子の阻害機能を増強した(
図5)。H因子はI因子の補因子であるので、H因子、I因子、およびGL-2045の間の相互作用を決定するために類似の系が使用された。C3a生成は、増加する濃度のI因子(1または25μg/mL)の存在下、一定の準最適濃度のH因子(1μg/mL)の存在下で測定された。GL-2045は、H因子およびI因子が濃度依存的に代替型のC3コンバターゼを阻害する能力を増強した(
図6A、
*p<0.05、
**p<0.01)。したがって、GL-2045は、準最適濃度のH因子の存在下でさえ、下流の補体活性化を阻害し、そしてH因子およびI因子の機能を増強することができた。
【0118】
さらに、マルチFc治療薬GL-2045、G994、G998、およびG1033の添加はすべて、有意なレベルのiC3bを誘導した(
図6Bおよび6C)。マルチFc治療薬によって誘導されたiC3bのレベルはいくつかの重要な点を示した。第一に、GL-2045とIVIGはiC3bの増加を誘導することができたが、GL-2045はIVIGと比較してiC3bのより高い全体レベルを誘導し(それぞれ約40μg/mLと比較して約250μg/mL)、治療閾値を超えるiC3bレベルを生成することにおいて、GL-2045がIVIGよりも強力であることを示唆している。
【0119】
第二に、GL-2045、G994、G998、またはG1033の非存在下では補体カスケードの活性化はなく、したがって古典的補体経路の活性化がiC3b生成に必要とされるのでiC3bは生成されない。実際、1μg/mLでのまたはそれ以下の濃度のGL-2045、G994、G998、またはG1003は比較的少量のiC3bを生成したが、10~100μg/mLの濃度の化合物は実質的なiC3b生成をもたらした。第3に、iC3bのレベルは100μg/mLのGL-2045の存在下で250μg/mLでピークに達し、そして増加する濃度のGL-2045と共に急速に漸減するが(
図6B)、これは最大の薬物効果があり、そしてマルチFc治療薬の用量をさらに増加させることは有害であり得ることを示す。驚くべきことに、100μg/mLのGL-2045はまたCDCの阻害について試験した最大有効用量であった(
図1Aおよび
図1B)。したがって、これらのデータは、iC3bがGL-2045の最大治療有効用量の代わりとして役立つ可能性を示している。
【0120】
実施例5:iC3bレベルはインビボでの有効なGL-2045用量と相関する
マウス腎炎モデルにおけるiC3bレベルとGL-2045の治療効果との相関を評価するために実験を行った。このモデルでは、ラットメサンギウム細胞上に存在する表面Thy-1抗原に対して反応性である胸腺細胞に対する抗体(ATS)が使用されている(Yamamoto 1987およびJefferson 1999)。ATSの投与は補体依存性メサンギウム分解を誘発し、続いて急速なメサンギウム増殖性糸球体腎炎を誘発し、これは注射後5日以内にピークに達し、そしてその後経時的に消散する。
【0121】
0日目に、Wistarラット(n=8)にマウス抗ラットCD90(Thy1.1)(Cedar Lane)を注射することにより疾患を誘発し、糸球体腎炎を誘発した。0、2、4および6日目に、動物を異なる用量のCDC阻害性ストラドマーで処置した。対照の非罹患動物は、抗Thy1抗体または他の処置を受けなかった。陽性対照タクロリムスは、抗血清注射の前の-9日目から始めて毎日1mg/kgの筋肉内投与量で投与される。0日目の投与は抗血清注射の4時間前であった。投与前ならびに抗血清注射後3、5、7および9日目に尿を採取した。腎臓を研究終了時にラットから採取し、組織学的分析のために10%ホルマリンで固定する。血清を血清BUN分析およびiC3bレベルの決定のために収集する。
【0122】
図7A~7Bは、腎炎のThy-1モデルにおけるタンパク尿からの保護に対する異なる用量でのG998の効果(
図7A)およびタンパク尿からの保護に対するG994およびG998の効果(
図7B)を示す。
図7Aは、このモデルにおける2mg/Kg IVでのG998の部分的有効性および10mg/Kg IV以上の用量での完全な有効性を実証する。さらなる結果は、異なる用量のマルチFc治療剤G998が異なるレベルのiC3b生成、C3a生成、およびC4a生成と関連することを実証する。さらなる結果はまた、マルチFc治療薬の最大治療効果に対応する用量はまた、iC3bにおいてベースラインを超える最大の増加を生じることを実証する。さらに、本発明者らは、意図せずにC3aに特異的な現在のラットELISAキットがC3もピックアップする、すなわちC3a+C3a desArgに特異的ではないことを見出した。
図7Bは、5mg/Kg IVで投与されたG994およびG998の両方がこのモデルにおける完全な有効性と関連していたことを実証している。さらなる結果は、G994およびG998の治療有効用量(例えば、タンパク尿生成からの保護、腎炎の組織学的証拠の減少、および/またはプラセボ治療と比較したBUNレベルの低下)が、血清中検出された閾値レベルを超えるiC3bの検出と相関することを示す。
【配列表】