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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20240712BHJP
   F16J 15/12 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
F16J15/10 N
F16J15/12 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020006203
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021113581
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100189289
【弁理士】
【氏名又は名称】北尾 拓洋
(74)【代理人】
【識別番号】100198856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】蒔苗 大地
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-283295(JP,A)
【文献】実公昭47-040192(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0028547(US,A1)
【文献】特表2017-506595(JP,A)
【文献】特開2000-227167(JP,A)
【文献】実開昭55-050362(JP,U)
【文献】実開昭63-135060(JP,U)
【文献】特開平11-299915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する二つの部材の間に挟持されるガスケットであって、
前記二つの部材の一方の部材の一部を挿通可能な挿通孔が開口されたシール本体であって、当該シール本体の前記挿通孔又は当該シール本体の外周が対向する一対の辺からなる対向辺対を複数有した形状で形成された前記シール本体と、
前記シール本体の前記挿通孔の孔壁又は前記シール本体の前記外周における複数の前記対向辺対のうちの少なくとも一つに対応する部分において、周方向に間隔を空けて形成される複数の突起と、
前記シール本体を支持し、前記シール本体によって少なくとも一部が被覆される基板と、
を含み、
前記一対の辺の一方の辺における前記突起は、前記一対の辺の間の中心線に直交し且つ前記一対の辺の他方の辺における前記突起を通過する通過線のいずれもが前記一方の辺に交差する点を避けた非同一直線上の位置に、配置され
前記シール本体は、
前記中心線、または、前記中心線に直交し且つ前記挿通孔の孔中心を通過する通過線を対称軸として線対称の形状を呈する、ガスケット。
【請求項2】
対向する二つの部材の間に挟持されるガスケットであって、
前記二つの部材の一方の部材の一部を挿通可能な挿通孔が開口されたシール本体であって、当該シール本体の前記挿通孔及び当該シール本体の外周が対向する一対の辺からなる対向辺対を複数有した形状でそれぞれ形成された前記シール本体と、
前記シール本体の前記挿通孔の孔壁及び前記シール本体の前記外周における複数の前記対向辺対のうちの少なくとも一つに対応する部分において、周方向に間隔を空けて形成される複数の突起と、
前記シール本体を支持し、前記シール本体によって少なくとも一部が被覆される基板と、
を含み、
前記挿通孔及び前記外周の前記一対の辺の一方の辺における前記突起は、前記一対の辺の間の中心線に直交し且つ前記挿通孔及び前記外周の前記一対の辺の他方の辺における前記突起を通過する通過線のいずれもが前記一方の辺に交差する点を避けた非同一直線上の位置に、配置され
前記シール本体は、
前記中心線、または、前記中心線に直交し且つ前記挿通孔の孔中心を通過する通過線を対称軸として線対称の形状を呈する、ガスケット。
【請求項3】
前記シール本体は、平面視で環状に形成されている、請求項1又は2に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する二つの部材の間に挟持されるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスケットは、シール部品として自動車などの様々な分野で広く用いられている。例えば、特許文献1には、対向する二つの部材の間に挟持されるシール部品としてのガスケットが開示されている。このガスケットは、全体として環状に形成されたガスケット本体(以下では、シール本体という)を有し、二つの部材の間に装着されている。詳しくは、このガスケットは、二つの部材の一方の部材としてのハウジングに形成された溝内に取り付けられた状態で、二つの部材の他方の部材としてのカバー部材によって押し潰されている。
【0003】
ここで、二つの部材同士を組付ける組付け作業において、ガスケットが一方の部材に取り付けられた状態で、この一方の部材が傾けられたり反転されたりすると、ガスケットが一方の部材における取り付け部位(特許文献1では溝)から脱落するおそれがある。この脱落を防止するため、特許文献1に記載されたガスケットでは、脱落防止用の複数の突起がシール本体に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-80167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シール本体に脱落防止用の複数の突起が設けられると、二つの部材の一方の部材における溝などの取り付け部位へガスケットを取り付けるための取り付け荷重(挿入荷重)が増加し得るため、その工夫が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、脱落防止用の複数の突起を有しつつ、取り付け荷重を低減させることが可能なガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、二つの部材の間に挟持されるガスケットが提供される。このガスケットは、二つの部材の一方の部材の一部を挿通可能な挿通孔が開口されたシール本体と、複数の突起と、シール本体を支持し、当該シール本体によって少なくとも一部が被覆される基板と、を含む。シール本体の挿通孔又はシール本体の外周は対向する一対の辺からなる対向辺対を複数有した形状で形成されている。そして、複数の突起は、シール本体の挿通孔の孔壁又はシール本体の外周における複数の対向辺対のうちの少なくとも一つに対応する部分において、周方向に間隔を空けて形成されている。一対の辺の一方の辺における突起は、一対の辺の間の中心線に直交し且つ一対の辺の他方の辺における突起を通過する通過線のいずれもが一方の辺に交差する点を避けた非同一直線上の位置に、配置され、前記中心線、または、前記中心線に直交し且つ前記挿通孔の孔中心を通過する通過線を対称軸として線対称の形状を呈する。
【0008】
本発明の別の一側面によると、二つの部材の間に挟持されるガスケットが提供される。このガスケットは、二つの部材の一方の部材の一部を挿通可能な挿通孔が開口されたシール本体と、複数の突起と、シール本体を支持し、当該シール本体によって少なくとも一部が被覆される基板と、を含む。シール本体の挿通孔及びシール本体の外周は対向する一対の辺からなる対向辺対を複数有した形状でそれぞれ形成されている。そして、複数の突起は、シール本体の挿通孔の孔壁及びシール本体の外周における複数の対向辺対のうちの少なくとも一つに対応する部分において、周方向に間隔を空けて形成されている。挿通孔及び外周の一対の辺の一方の辺における突起は、一対の辺の間の中心線に直交し且つ挿通孔及び外周の一対の辺の他方の辺における突起を通過する通過線のいずれもが一方の辺に交差する点を避けた位置に、配置され、前記中心線、または、前記中心線に直交し且つ前記挿通孔の孔中心を通過する通過線を対称軸として線対称の形状を呈する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面及び本発明の別の側面によれば、脱落防止用の複数の突起を有しつつ、取り付け荷重を低減させることが可能なガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態におけるガスケットの正面図である。
図2図1に示すガスケットの部分断面図である。
図3図1に示すガスケットの別の部位の部分断面図である。
図4】本発明の第1実施形態の変形例にかかるガスケットの正面図である。
図5図4に示すガスケットの部分断面図である。
図6】本発明の第2実施形態におけるガスケットの正面図である。
図7図6に示すガスケットの部分断面図である。
図8図6に示すガスケットの別の部位の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態におけるガスケット1の正面図である。図2図1に示すA-A断面線におけるガスケット1の部分断面図であり、図3図1に示すB-B断面線におけるガスケット1の部分断面図である。
【0012】
[ガスケットの装着対象]
図1に示すガスケット1は、図2に示すように、相対移動せずに静止した対向する二つの部材(以下では、第1部材30及び第2部材40という)の間に挟持され、第1部材30と第2部材40との接続部分からの流体の漏れを防止するためのシール部品として、第1部材30と第2部材40との間に装着されている。図1では、第2部材40は紙面手前に位置しており示されていない。
【0013】
具体的には、第2部材40における第1部材30との接続箇所には、例えば、流体の流入用又は流出用のポート(図2では図示範囲外)が形成されている。第1部材30は第2部材40のポートの端面である第2端面部41と対向する第1端面部31を有している。この第1端面部31(図1参照)には、第2端面部41に向かって突出するボス部32が形成されている。このボス部32の端面は第2部材40の第2端面部41におけるポートの開口の周囲の部分に当接している。そして、第1部材30のボス部32を含む部分には、第2部材40のポートの開口形状に合わせた形状の開口33(図1参照、図2では図示範囲外)が形成されている。例えば、第1部材30には第2部材40と締結するためのボルト用のネジ孔34(図1参照、図2では図示範囲外)が形成され、第2部材40にはボルト用のボルト挿通孔(図2では図示範囲外)が形成されている。
【0014】
[ガスケットの構成]
ガスケット1は、シール本体10と複数の突起14とを含み、全体として概ね板状に形成されている。シール本体10は弾性材からなり、この弾性材としては、ゴム又は熱可塑性エラストマーといった良好に弾性変形可能な所定の材料が用いられる。
【0015】
シール本体10は、例えば、平面視で、一方向に扁平した概ね六角形で且つ長軸方向の二つの角部が大きく丸められた輪郭(外形)で形成されている。シール本体10の輪郭は、例えば、第1部材30の第1端面部31の輪郭より一回り小さく、第1端面部31の輪郭と相似形である。
【0016】
シール本体10には、二つの部材(第1部材30及び第2部材40)の一方の部材の一部を挿通可能な挿通孔11が開口されている。挿通孔11は、シール本体10の中央に開口されている。挿通孔11の孔中心Oは第1部材30のボス部32の中心軸及び開口33の中心軸に合わせられている。また、シール本体10における長軸方向の両側の部分には、第1部材30のネジ孔34及び第2部材40のボルト挿通孔に対応する小孔12が開口されている。小孔12は、シール本体10に正対する平面視で、例えば、長孔として開口されている。
【0017】
挿通孔11は、対向する一対の辺11a,11bからなる対向辺対11a-11bを複数有した形状で形成された孔である。本実施形態では、挿通孔11は、シール本体10に正対する平面視で、長孔として開口されている(図1参照)。つまり、本実施形態では、対向辺対11a-11bは、二つ(つまり、二対又は二組)である。一方の対向辺対11a-11bを構成する一対の辺11a,11bは互いに平行で且つ直線的に延びており、他方の対向辺対11a-11bを構成する一対の辺11a,11bは円弧状に延びている。詳しくは、挿通孔11は、それぞれ直線的に延びる一対の直線辺111,112と、それぞれ円弧状に延びる一対の円弧辺113,114とからなる形状の孔である。より詳しくは、挿通孔11は、一方の直線辺111の一端と他方の直線辺112の一端とを接続する円弧状(図では半円弧状)の一方の円弧辺113と、一方の直線辺111の他端と他方の直線辺112の他端とを接続する他方の円弧状(図では半円弧状)の円弧辺114とからなる形状の孔である。本実施形態では、図1の平面視で、一方の直線辺111は右側の辺であり、他方の直線辺112は左側の辺であり、各直線辺111,112の一端は上端であり、各直線辺111,112の他端は下端であるものとする。以下では、一方の直線辺111は第1直線辺111と呼び、他方の直線辺112は第2直線辺112と呼び、一方の円弧辺113は第1円弧辺113と呼び、他方の円弧辺114は第2円弧辺114と呼ぶ。このように、一方の対向辺対11a-11bは一方の辺11aとしての第1直線辺111と他方の辺11bとしての第2直線辺112からなり、他方の対向辺対11a-11bは一方の辺11aとしての第1円弧辺113と他方の辺11bとしての第2円弧辺114からなる。また、特に限定されるものではないが、長孔としての挿通孔11の長軸方向はシール本体10の長軸方向と一致している。
【0018】
シール本体10の輪郭について詳しく述べると、シール本体10の外周10A(以下では、外周面10Aという)は、挿通孔11の孔壁11Aと同様に、対向する一対の辺10a,10bからなる対向辺対10a-10bを複数有した形状で形成されている。具体的には、対向辺対10a-10bは、四つ(つまり、四対又は四組)である。図1において、幅方向で対向する対向辺対10a-10bを構成する一対の辺10a,10bは、互いに平行で且つそれぞれ直線的に延びる、平行第1直線辺101及び平行第2直線辺102からなる。孔中心Oを挟んで概ね上下方向で対向する対向辺対10a-10bを構成する一対の辺10a,10bは、三つである。すなわち、一つ目は右上側テーパー第1直線辺103及び左下側テーパー第2直線辺104からなる一対の辺10a,10bであり、二つ目は右下側テーパー第1直線辺105及び左上側テーパー第2直線辺106からなる一対の辺10a,10bであり、三つ目はそれぞれ円弧状に延びる外周第1円弧辺107及び外周第2円弧辺108からなる一対の辺10a,10bである。右上側テーパー第1直線辺103及び左下側テーパー第2直線辺104は互いに平行で且つそれぞれ直線的に延びており、右下側テーパー第1直線辺105及び左上側テーパー第2直線辺106も互いに平行でかつそれぞれ直線的に延びている。
【0019】
本実施形態では、挿通孔11に挿通される二つの部材(第1部材30及び第2部材40)の一方の部材の一部は、第1部材30のボス部32である。そして、挿通孔11は、ボス部32の輪郭(外形)より僅かに大きな寸法で開口されている。したがって、図1図3に示すように、シール本体10における挿通孔11を構成する孔壁11Aとボス部32の外周面32aとの間に、隙間が空けられている。換言すると、ガスケット1の取り付け部位(本実施形態では第1部材30のボス部32)は対向する一対の辺からなる対向辺対を二つ有した外形で形成されており、挿通孔11はこの取り付け部位の断面形状に対応した一対の辺11a,11bからなる対向辺対11a-11bを二つ有した形状で開口されている。
【0020】
また、シール本体10の外周部における厚み方向の両側の部分には、全周に亘って延びる環状のシール部13がそれぞれ形成されている。一方のシール部13はシール本体10の外周部における第1部材30側の面から第1部材30に向かって突出し、他方のシール部13はシール本体10の外周部における第2部材40側の面から第2部材40に向かって突出している。シール部13の形状は特に限定されるものではないが、本実施形態では、弾性変形し易いように、リップ状に形成されている。具体的には、本実施形態では、シール部13は、斜辺を内側(挿通孔11側)に位置させた中実の概ね直角三角形状の断面を有すると共に、第1部材30又は第2部材40に当接する先端部(特に先端部における内周側の部分)が大きく丸められた形状で、シール本体10の外周部の全周に亘って形成されている。シール本体10の厚み方向の一方のシール部13は、第1部材30の第1端面部31に当接して弾性変形し、シール本体10の厚み方向の他方のシール部13は、第2部材40の第2端面部41に当接して弾性変形する。詳しくは、シール本体10(ガスケット1)が第1部材30のボス部32に取り付けられた状態で、図示を省略したボルトを介して第1部材30と第2部材40とが締結される。これにより、ガスケット1は、第1部材30の第1端面部31と第2部材40の第2端面部41との間に挟まれて、第1部材30と第2部材40との間に装着される。このように、ガスケット1が装着されることにより、シール本体10の厚み方向の両側のシール部13,13の内側の領域と外側の領域との間の流体の移動が防止されている。つまり、第1部材30と第2部材40との接続部分からの流体の漏れが防止されている。
【0021】
複数の突起14は、図1及び図3に示すように、シール本体10の挿通孔11の孔壁11A又はシール本体10の外周面10Aにおいて、周方向に間隔を空けて形成されている。本実施形態では、複数(図では4つ)の突起14は、挿通孔11の孔壁11Aにのみ形成されている。各突起14は、孔壁11Aからボス部32の外周面32aに向かって突出し、ボス部32の外周面32aに当接可能な高さ(孔壁11Aから突起14の先端までの高さ)を有している。したがって、作業者や挿入治具等によって、第1部材30のボス部32が所定の挿入荷重でシール本体10の挿通孔11に挿入されると、各突起14は弾性変形しその先端部がボス部32の外周面32aに密着する。この状態で、各突起14の弾性変形に基づく反力がボス部32の外周面32aに作用する。その結果、シール本体10(ガスケット1)が第1部材30への取り付け部位としてのボス部32の外周面32aに取り付けられる。つまり、第1部材30と第2部材40同士を組付ける組付け作業の前に、シール本体10(ガスケット1)が第1部材30のボス部32に取り付けられて第1部材30に仮組みされる。このガスケット1と第1部材30とからなるサブ組立品は、搬送時や第2部材40への組付け時に傾けられたり反転されたりする。しかし、複数の突起14の弾性変形に基づく反力がボス部32の外周面32aに作用しているため、ガスケット1は第1部材30への取り付け部位(ボス部32)から脱落することなく、第1部材30に仮組みされた状態で、第1部材30と一緒に第2部材40に組付けられる。このように、複数の突起14は、ガスケット1の組付け時などにおける脱落を防止する脱落防止用突起としての機能を有している。なお、複数の突起14の孔壁11Aにおける配置箇所については、後に詳述する。
【0022】
本実施形態では、ガスケット1は、シール本体10を支持(補強)する金属材からなる板状の基板20を更に有しており、補強板付きガスケットである。基板20の金属材としては、ステンレス鋼やSPCCやSPHCといった良好な剛性を有した板状の所定の材料が用いられる。
【0023】
基板20は、前述したようにシール本体10を支持する板状の部材である。基板20には、シール本体10の挿通孔11より大きい開口部21が開口されている。また、本実施形態では、基板20におけるシール本体10の小孔12に対応する位置には、小孔12より大きいボルト用開口部22が開口されている。
【0024】
基板20は、シール本体10における厚み方向の中間でシール本体10内に埋設されており、シール本体10によって被覆されている。つまり、シール本体10は、基板20の少なくとも一部(本実施形態では基板20の全体)を被覆するものである。詳しくは、シール本体10は、少なくとも基板20の開口部21の内周面を含む内周側部分21A(図2及び図3に示す破線で囲まれた部分)を被覆するものであり、本実施形態では、基板20の全体を被覆している。そして、本実施形態では、シール本体10における基板20の開口部21の内周面に密着する環状部15の内側の領域が挿通孔11を構成している。
【0025】
ところで、前述したように、第1部材30へのガスケット1の取り付けの際に、第1部材30のボス部32が作業者や挿入治具等によって所定の挿入荷重でシール本体10の挿通孔11に挿入される。このガスケット1を第1部材30へ取り付けるための挿入荷重(取り付け荷重)は、各突起14の弾性変形量(つまり、各突起14の締め代)が大きくなるほど増加する。そして、例えば、第1部材30が鋳造品であり、ボス部32の外周面32aに切削加工などの加工が施されない場合や、ボス部32の外周面32aに加工が施されていてもその寸法公差が粗い場合などには、各突起14が過度に圧縮されるおそれがある。その結果、突起14がいわゆる過圧縮状態になるおそれがあると共に、この挿入時における挿入荷重が過大になるおそれがある。この点に対し、本実施形態に係るガスケット1では、以下で説明するように、各突起14の配置箇所についての工夫がなされている。
【0026】
次に、複数の突起14の孔壁11Aにおける配置箇所について詳述する。
【0027】
突起14は、シール本体10の挿通孔11の孔壁11Aにおける複数(本実施形態では二つ)の対向辺対11a-11bのうちの少なくとも一つに対応する部分において、孔壁11Aの周方向に間隔を空けて形成されている。本実施形態では、突起14は、孔壁11Aにおける第1直線辺111と第2直線辺112とからなる対向辺対11a-11bに対応する部分に形成されている。換言すると、複数の突起14は、第1直線辺111と第2直線辺112とに振り分けて配置されている。特に限定されるものではないが、本実施形態では、全体として偶数個(図では4個)の突起14が孔壁11Aに形成され、第1直線辺111の部分と第2直線辺112の部分とに、それぞれ半数の個数(2個)の突起14が配置されている。
【0028】
そして、第1直線辺111における突起14は、第1直線辺111と第2直線辺112の間(一対の辺11a,11bの間)の中心線X0に直交し且つ第2直線辺112における突起14を通過する通過線L(本実施形態では、第1通過線L1、第2通過線L2)が第1直線辺111に交差する点P(本実施形態では、第1交差点P1、第2交差点P2)を避けた位置に、配置されている。中心線X0は、第1直線辺111と第2直線辺112との間で直線的に延び、且つ、その延伸方向のいずれの箇所においても第1直線辺111に対する距離と第2直線辺112に対する距離とを同距離に保って延びる線である。また、本実施形態では、中心線X0は、シール本体10の平面視での長軸と一致している。そして、挿通孔11は、中心線X0を線対称の基準線として線対称な形状で開口され、且つ、挿通孔11の孔中心を通り中心線X0に直交する直交線X1を線対称の基準線として線対称な形状で開口されている。つまり、第1直線辺111と第2直線辺112は中心線X0を基準線とすると線対称であり、第1円弧辺113と第2円弧辺114は直交線X1を基準線とすると線対称である。
【0029】
図1の場合で、詳しく説明すると、第1直線辺111における上側の突起14は、中心線X0に直交し且つ第2直線辺112における上側の突起14を通過する第1通過線L1が第1直線辺111に交差する第1交差点P1を避けた位置に配置されていると共に、中心線X0に直交し且つ第2直線辺112における下側の突起14を通過する第2通過線L2が第1直線辺111に交差する第2交差点P2を避けた位置に配置されている。また、第1直線辺111における下側の突起14についても、上側の突起14と同様に、第1直線辺111における第1交差点P1及び第2交差点P2を避けた位置に配置されている。つまり、第1直線辺111の各突起14は、中心線X0と直交する線であり、且つ、第2直線辺112の各突起14を通過する通過線L(第1通過線L1、第2通過線L2)と同一の線上に配置されていない。なお、第2直線辺112における突起14を主体にして換言すると、第2直線辺112における突起14は、中心線X0に直交し且つ第1直線辺111における突起14を通過する通過線(図示省略)が第2直線辺112に交差する点(図示省略)を避けた位置に、配置されている。第1直線辺111の突起14を主体に表現した場合と第2直線辺112の突起14を主体に表現した場合とで、突起14の配置構成についての実質的な差異はない。
【0030】
上述したように、第1直線辺111の各突起14は、中心線X0と直交し且つ第2直線辺112の各突起14を通過する通過線L(第1通過線L1、第2通過線L2)と同一の線(仮想線)の上に配置されていない。つまり、第1直線辺111の突起14は第2直線辺112の各突起14の真正面に配置されておらず、同様に、第2直線辺112の突起14は第1直線辺111の各突起14の真正面に配置されていない。したがって、いずれの突起14においても、突起14の真正面に他の突起14が配置されていない。その結果、第1部材30のボス部32がガスケット1のシール本体10の挿通孔11に挿入される際に、第1直線辺111の突起14が、第2直線辺112の突起14の通過線L(第1通過線L1、第2通過線L2)と同一の線上で、第2直線辺112の突起14と同時に、ボス部32の外周面32aに接触することが回避されている。つまり、例えば、第1直線辺111の突起14と第2直線辺112の突起14が中心線X0と直交する同一の直線上に配置されている箇所を有する配置構成(同一直線上の配置)と対比して表現すると、本実施形態では、突起14の配置構成として、非同一直線上の配置が採用されているといえる。したがって、突起14の配置構成として上述の同一直線上の配置が採用された場合と比較すると、非同一直線上の配置構成が採用された本実施形態にかかるガスケット1では、第1部材30のボス部32の挿通孔11への挿入荷重が同一直線上の配置の場合の挿入荷重より低減される。つまり、突起14が形成される孔壁11Aにおける対向辺対11a-11bに対応する部分において、各突起14の真正面に他の突起14が位置しないように、一方の辺(第1直線辺111又は第2直線辺112)の突起14の配置箇所が他方の辺(第2直線辺112又は第1直線辺111)の突起14の配置箇所に対して周方向にずらされたことにより、ボス部32の挿通孔11への挿入時の抵抗が低減する。
【0031】
本実施形態によるガスケット1では、シール本体10の挿通孔11の孔壁11Aに脱落防止用の複数の突起14が形成されているが、これらの突起14の配置構成として、上述した非同一直線上の配置を採用した。つまり、一対の辺11a,11bの一方の辺11a(本実施形態では第1直線辺111)における突起14は、一対の辺11a,11bの間の中心線X0に直交し且つ一対の辺11a,11bの他方の辺11b(本実施形態では第2直線辺112)における突起14を通過する通過線L(L1,L2)が一方の辺11a(第1直線辺111)に交差する点P(P1,P2)を避けた位置に、配置されている。これにより、第1部材30のボス部32の挿通孔11への挿入荷重(取り付け荷重)が低減される。このようにして、脱落防止用の複数の突起14を有しつつ、取り付け荷重(挿入荷重)を低減させることが可能なガスケット1を提供することができる。
【0032】
本実施形態では、突起14は、二つの対向辺対11a-11bのうちの第1直線辺111及び第2直線辺112からなる対向辺対11a-11bに形成されている。これにより、対向する第1直線辺111と第2直線辺112の間にボス部32を安定して挟持することができる。その結果、ガスケット1の脱落がより確実且つ簡易な構造で実現される。
【0033】
また、本実施形態では、シール本体10のシール部13における挿通孔11側の面13aは、シール部13の基端部(基板20側の端部)からシール部13の先端に向かうほど孔壁11Aから離れる方向に傾斜している。そして、シール部13の先端部における内周側(傾斜した面13a側)の部分は、大きく丸められている。これらにより、リップ状のシール部13が外側に倒れ易くなり、シール部13の圧縮時(弾性変形時)におけるリップ倒れの方向を適切に制御することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、第1部材30のボス部32は一つであるものとしたが、これに限らず、複数であってもよい。また、第1部材30の第1端面部31の形状についても、概ね六角形の輪郭の形状のものに限らず、ガスケット1は適宜の輪郭の形状の第1部材30に取り付けられ得る。図4は、第1実施形態の変形例にかかるガスケット1の正面図であり、図5図4に示すC-C断面線におけるガスケット1の部分断面図である。詳しくは、図4に示すように、ボス部32は、二つであってもよい。この場合、流路の一部を構成する開口33は各ボス部32に分割して形成されており、シール本体10には、各ボス部32の挿入用の孔11,11’がそれぞれ開口されると共に、基板20の開口部21は孔11,11’に対応して開口されている。そして、図4では、シール本体10に開口されたボス部32の挿入用の孔11,11’のうちの一方(上側の孔11)が、突起14が形成される孔壁11Aにより構成される挿通孔11として機能している。つまり、二つの孔11,11’のうちの他方の孔11’は、単に長孔として開口されており、その孔壁11A’には突起14が形成されていない。ガスケット1の脱落を防止可能であれば、突起14は二つの孔11,11’のうちの一方の孔壁(11A又は11A’)にのみ形成されればよい。つまり、シール本体10には、複数の孔が開口されており、複数の孔のうちの少なくとも一つが挿通孔11(つまり、第1部材30の一部が挿通され且つ脱落防止の突起14が形成される孔)として機能していればよい。また、突起14は、孔壁11A及び孔壁11A’のそれぞれに形成されてもよい。
【0035】
そして、突起14は、第1直線辺111及び第2直線辺112からなる対向辺対11a-11bのみに形成されたが、これに限らず、第1直線辺111及び第2直線辺112からなる対向辺対11a-11bと第1円弧辺113及び第2円弧辺114からなる対向辺対11a-11bの少なくとも一方に形成されていればよい。図示省略するが、第1円弧辺113及び第2円弧辺114からなる対向辺対11a-11bに突起14が形成される場合、第1円弧辺113における突起14は、第1円弧辺113と第2円弧辺114との間の中心線(直交線X1)に直交し且つ第2円弧辺114における突起14を通過する通過線が第1円弧辺113に交差する点を避けた位置に、配置される。つまり、第1円弧辺113及び第2円弧辺114の突起14においても上述した非同一直線上の配置構成が採用される。また、図4では、長孔としての挿通孔11の長軸(中心線X0)は、シール本体10の長軸と直交しているが、これに限らず、シール本体10の長軸と平行であってもよい。上記孔11’についても同様である。さらに、挿通孔11の形状は長孔に限らず、第1部材30のボス部32を挿通可能であると共に対向する一対の辺11a,11bからなる対向辺対11a-11bを複数有した形状であれば、適宜の形状の孔が挿通孔11として採用され得る。
【0036】
また、突起14は挿通孔11の孔壁11Aにのみ形成されているが、これに限らない。突起14は挿通孔11の孔壁11A及びシール本体10の外周面10Aのうちの少なくとも一方に形成されていればよい。図示を省略するが、例えば、第1部材30の第1端面部31に、ガスケット1全体を収容可能な環状の溝が形成され、この溝の内側の孔壁がボス部32の外周面32aによって構成されている場合には、脱落防止用の突起14は、本実施形態と同様に、挿通孔11の孔壁11Aにのみ形成されてもよいし、シール本体10の外周面10Aにのみ形成されてもよいし、孔壁11A及び外周面10Aの両方に形成されてもよい。外周面10Aに形成された突起14は、第1端面部31の上記溝の外側の孔壁に当接して脱落防止機能を発揮する。具体的には、外周面10Aの突起14は、シール本体10の外周面10Aにおける複数(本実施形態では四つ)の対向辺対10a-10bのうちの少なくとも一つに対応する部分において、周方向に間隔を空けて形成される。特に限定されないが、外周面10Aにおいて、突起14は、例えば、外周面10Aにおける平行第1直線辺101と平行第2直線辺102とからなる対向辺対10a-10bに対応する部分に形成される。この場合を一例とすると、図示を省略するが、一対の辺10a,10bの一方の辺10a(平行第1直線辺101)における突起14は、一対の辺10a,10bの間の中心線X0に直交し且つ一対の辺10a,10bの他方の辺10b(本実施形態では平行第2直線辺102)における突起14を通過する通過線が一方の辺10a(平行第1直線辺101)に交差する点を避けた位置に、配置されている。つまり、外周面10Aの突起14の配置構成として、孔壁11Aの突起14と同様に非同一直線上の配置が採用される。なお、突起14が孔壁11Aにのみ形成される場合は、シール本体10の輪郭(つまり、外周面10A)の形状は特に限定されず、適宜の形状が採用され得る。そして、突起14がシール本体10の外周面10Aにのみ形成される場合は、挿通孔11の形状は特に限定されず、適宜の形状が採用され得る。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態に係るガスケット1’について説明する。
図6は第2実施形態におけるガスケット1’の正面図である。図7図6に示すD-D断面線におけるガスケット1’の部分断面図であり、図8図6に示すE-E断面線におけるガスケット1’の部分断面図である。第1実施形態のガスケット1と同じ要素については同じ符号を用いて、説明を省略又は簡略化し、以下では、第1実施形態のガスケット1と異なる部分について主に説明する。
【0038】
本実施形態では、ガスケット1’は全体として環状に形成されており、シール本体10は平面視で環状に形成されている。対向辺対11a-11bは第1実施形態と同様に二つであるが、一方の対向辺対11a-11bを構成する一対の辺11a,11bと、他方の対向辺対11a-11bを構成する一対の辺11a,11bは、いずれも直線的に延びている。したがって、本実施形態では、シール本体10は平面視で矩形の環状に形成されている。
【0039】
具体的には、第1部材30の第1端面部31及びボス部32は、平面視で概ね台形状の輪郭(外形)で形成されており、シール本体10及び基板20は平面視で概ね台形の環状に形成されている。つまり、シール本体10及び基板20は第1部材30の第1端面部31の輪郭に対応して平面視で概ね台形状の輪郭で形成されており、挿通孔11及び開口部21はボス部32の断面形状に対応して台形の孔として開口されている。したがって、挿通孔11は、シール本体10の台形の枠の内側の領域により構成されている。また、シール本体10に小孔12は開口されておらず、基板20にボルト用開口部22は開口されていない。
【0040】
詳しくは、二つの対向辺対11a-11bのうちの一方は互いに平行に延びており、二つの対向辺対11a-11bのうちの他方は、テーパー状に斜めに延びている。以下では、図6の平面視で、平行に延びる一対の辺11a,11bのうちの上側の辺を平行第1直線辺115と呼び、平行に延びる一対の辺11a,11bのうちの下側の辺を平行第2直線辺116と呼び、斜めに延びる一対の辺11a,11bのうちの右側の辺をテーパー第1直線辺117と呼び、斜めに延びる一対の辺11a,11bのうちの左側の辺をテーパー第2直線辺118と呼ぶ。
【0041】
本実施形態では、シール本体10は基板20の開口部21の内周面を含む内周側部分21A(図7及び図8に示す破線で囲まれた部分)のみを被覆しており、基板20の内周側部分21Aを除いた外周側の表面(詳しくは、厚み方向の両側の面の大半、及び、外周面)はシール本体10によって被覆されずに露出している。
【0042】
また、複数の突起14は、平行第1直線辺115、平行第2直線辺116、テーパー第1直線辺117、及び、テーパー第2直線辺118に振り分けて配置されている。特に限定されるものではないが、本実施形態では、全体として8個の突起14が孔壁11Aに形成されている。突起14は、平行第1直線辺115に1個、平行第2直線辺116に2個、テーパー第1直線辺117に2個、テーパー第2直線辺118に3個配置されている。
【0043】
そして、図6に示すように、平行第1直線辺115における突起14は、平行第1直線辺115と平行第2直線辺116の間の中心線である第1中心線X01(図では後述する第6通過線L6と重複している)に直交し且つ平行第2直線辺116における突起14を通過する通過線L(本実施形態では、左から順に第3通過線L3、第4通過線L4)が平行第1直線辺115に交差する点P(本実施形態では、左から順に第3交差点P3、第4交差点P4)を避けた位置に、配置されている。第1中心線X01は、平行第1直線辺115と平行第2直線辺116との間で直線的に延び、且つ、その延伸方向のいずれの箇所においても平行第1直線辺115に対する距離と平行第2直線辺116に対する距離とを同距離に保って延びる線である。また、テーパー第1直線辺117における突起14は、テーパー第1直線辺117とテーパー第2直線辺118の間の中心線である第2中心線X02に直交し且つテーパー第2直線辺118における突起14を通過する通過線L(本実施形態では、上から順に第5通過線L5、第6通過線L6、第7通過線L7)がテーパー第1直線辺117に交差する点P(本実施形態では、上から順に第5交差点P5、第6交差点P6、第7交差点P7)を避けた位置に、配置されている。第2中心線X02は、テーパー第1直線辺117とテーパー第2直線辺118との間で直線的に延び、且つ、その延伸方向のいずれの箇所においてもテーパー第1直線辺117に対する距離とテーパー第2直線辺118に対する距離とを同距離に保って延びる線である。
【0044】
本実施形態(第2実施形態)のガスケット1’では、突起14の配置構成として、平面視で上下及び左右のいずれの直線辺(115,116,117,118)においても前述した非同一直線上の配置が採用されている。第1部材30のボス部32の挿通孔11への挿入荷重(取り付け荷重)が低減される。
【0045】
また、ガスケット1’におけるシール部13の基端部は、ガスケット1におけるシール部13の基端部よりも細く、弾性変形し易く形成されている。したがって、シール部13は、第1部材30及び第2部材40の寸法のばらつきに起因した締め代のばらつきに、柔軟に追随して弾性変形し得る。
【0046】
また、ガスケット1’において、シール部13の環状部15の内周面(つまり、挿通孔11の孔壁11A)は、厚み方向の両側においてボス部32の外周面32aから離れるように(換言すると逃げるように)形成されている。詳しくは、孔壁11Aは、厚み方向の中央においてボス部32の外周面32aに対して平行に延びる平坦部11A0と、平坦部11A0の一端(図では下端)から第1端面部31に向かうほどボス部32の外周面32aから離れる第1逃げ面11A1と、平坦部11A0の他端(図では上端)から第2端面部41に向かうほどボス部32の外周面32aから離れる第2逃げ面11A2とからなる。この孔壁11Aの平坦部11A0に、突起14が形成されている。そして、シール本体10における孔壁11A(詳しくは、平坦部11A0)とボス部32の外周面32aとの間に、僅かな隙間が空けられている。
【0047】
ここで、シール部13が圧縮されて弾性変形すると、環状部15も圧縮されて弾性変形する。しかし、ガスケット1’では、環状部15の内周面(孔壁11A)に第1逃げ面11A1及び第2逃げ面11A2が設けられているため、環状部15の大半はボス部32の外周面32aに拘束されることなく変形する。つまり、第1逃げ面11A1及び第2逃げ面11A2は、シール本体10の弾性変形時における変形の逃がしとして機能している。その結果、例えば、孔壁11Aに形成された突起14が過度に圧縮されることが防止される。
【0048】
また、全体として環状に形成されたガスケット1’の装着対象の部材(第1部材30及び第2部材40)は、一般的に大きなサイズの部材であり、この部材の厚み方向の剛性が比較的に低い場合がある。そのため、ガスケット1’の装着によって、装着対象の部材(第1部材30及び第2部材40)に変形が生じないようにする必要があると共に、ガスケット1’の組付け性の向上が望まれ得る。これに対し、ガスケット1’では、突起14の配置構成の工夫によって、ガスケット1’を第1部材30へ取り付けるための取り付け荷重(挿入荷重)が低減され、突起14からボス部32への反力が低減されている。そして、シール部13のリップ形状の工夫によって、シール部13から第1部材30及び第2部材40への反力も低減されている。さらに、孔壁11Aに設けられた逃がし(第1逃げ面11A1及び第2逃げ面11A2)によって、低反力化が図られている。つまり、ガスケット1’から装着対象の部材(第1部材30及び第2部材40)への反力がより効果的に低減されており、確実な低反力化が図られている。したがって、装着対象の部材の剛性が比較的に低い場合に好適なガスケット1’を提供することができる。また、ガスケット1’は環状に形成されているが、基板20によってシール本体10が補強されているため、ガスケット1’の取り扱い(ハンドリング)が容易になり、組付け性が向上し得る。
【0049】
また、一般的に、ガスケット1’のような環状のガスケットをシール部品として用いる場合、装着対象の部材に、加工コストの比較的高い溝加工が施され、この溝にガスケットが取り付けられて仮組みされることが多い。これ対し、ガスケット1’は基板20を有しており、基板20はシール本体10の環状部15の外側への移動を拘束しており、上記溝の外側の壁(外壁)として機能している。したがって、ガスケット1’は環状に形成されているが、装着対象の部材(第1部材30及び第2部材40)におけるガスケット1’の取り付け部位(仮組み部位)に、従来のような高コストの溝加工を施す必要がない。
【0050】
なお、ガスケット1’において、基板20の外周側の部位は、シール本体10によって被覆されていないが、これに限らず、基板20の全体がシール本体10よって被覆されてもよい。また、ガスケット1’では、挿通孔11は台形の孔として開口されているが、これに限らない。挿通孔11は、正方形、長方形、平行四辺形、菱形といった形状の孔として開口されてもよい。そして、直線的に延びる一対の辺11a,11bからなる対向辺対11a-11bは二つであるものとしたが、これに限らず、三つ以上であってもよい。換言すると、挿通孔11の形状は矩形状(正方形、長方形、平行四辺形、菱形、台形)に限らず、第1部材30のボス部32を挿通可能であると共に対向する一対の辺11a,11bからなる対向辺対11a-11bを複数有した形状であれば、適宜の形状の孔が挿通孔11として採用され得る。また、図示を省略するが、基板20の全体がシール本体10によって被覆され、例えば、第1部材30の第1端面部31に、ガスケット1’全体を収容可能な環状の溝が形成されている場合が想定される。この場合には、脱落防止用の突起14は、挿通孔11の孔壁11Aにのみ形成されてもよいし、シール本体10の外周面10Aにのみ形成されてもよいし、孔壁11A及び外周面10Aの両方に形成されてもよい。ガスケット1’のシール本体10の外周面10Aの突起14においても、上述した非同一直線上の配置構成が採用される。そして、突起14が孔壁11Aにのみ形成される場合は、シール本体10の輪郭(つまり、外周面10A)の形状は特に限定されず、適宜の形状が採用され得る。また、突起14がシール本体10の外周面10Aにのみ形成される場合は、挿通孔11の形状は特に限定されず、適宜の形状が採用され得る。
【0051】
また、第2実施形態においても、第1部材30及び第2部材40に流路が形成され、ガスケット1’は流体の密封用のシール部品として用いられ、第1実施形態と同様に、第1部材30に開口33(図6参照)が形成され、開口33に対応して第2部材40にポート(図示範囲外)が形成されるものとしたが、これに限らない。この場合、ガスケット1’は、シール部13,13の内側の領域に、埃などの異物が侵入することを防止するシール部品として用いられ得る。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態及びその変形例について幾つか説明したが、本発明は上記実施形態及び上記変形例に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…ガスケット、1’…ガスケット、10…シール本体、10A…外周面(外周)、10a…一対の辺の一方の辺、10b…一対の辺の他方の辺、10a-10b…対向辺対、11…挿通孔、11A…孔壁、11a…一対の辺の一方の辺、11b…一対の辺の他方の辺、11a-11b…対向辺対、14…突起、30…第1部材(二つの部材の一方の部材)、32…ボス部(二つの部材の一方の部材の一部)、40…第2部材(二つの部材の他方の部材)、X0…一対の辺の間の中心線、X01…第1中心線(一対の辺の間の中心線)、X02…第2中心線(一対の辺の間の中心線)、L…通過線、P…通過線が一方の辺に交差する点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8