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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】防藻剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/40 20060101AFI20240712BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
A01N37/40
A01P13/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020012752
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021116280
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-10-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】本岡 良太
(72)【発明者】
【氏名】土谷 美緒
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172347(JP,A)
【文献】特開平06-340504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 37/40
A01P 13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
[式中、Rは水素原子またはアルカリ金属を示し、Rは炭素原子数5~22のアルキル基またはアリール基を示す]
で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルを含む防藻剤であって、
式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルは、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルであり、
防藻剤によりにより防藻される藻類は、藍色植物門、紅色植物門、クリプト植物門、褐色植物門、ミドリムシ植物門、プラシノ植物門および緑藻植物亜門に属する藻類からなる群から選択される、防藻剤。
【請求項2】
藻類が生育可能な被処理領域または被処理体に、請求項1に記載の防藻剤を適用し、藻類を防徐または藻類の発生を予防する方法。
【請求項3】
防藻剤を撒布、噴霧または塗布により被処理体へ適用する、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類の防除または藻類の発生を予防する効果に優れた防藻剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中の岩礁や人工建造物(船舶、漁網、海中構造物、海水導入管、浮標など)、住宅の外壁などにおいて、藻類による様々な被害が問題となっている。例えば、漁網においては養殖のりに雑藻が発生することによる商品価値の損失、船舶においては船底へ藻類が発生することにより運航速度の低下や燃料消費量の増加、住宅においては藻類が悪臭・異臭の原因となり、かつ美観を著しく損なうという被害が報告されている。
【0003】
これらの藻類による被害への対策として、殺藻剤や防藻剤を各設備や資材などに適用する方法が知られている。例えば、有機ピリジン系化合物、有機トリアジン系化合物、第4級アンモニウム化合物などの有機系抗菌剤を配合した防藻剤(特許文献1~3)や、亜酸化銅、銅粉、チオシアン酸銅、炭酸銅、塩化銅、硫酸銅、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸ニッケル、銅-ニッケル合金等の無機金属化合物、有機スズ系化合物、有機銅系化合物、有機ニッケル系化合物、有機亜鉛系化合物等の有機金属化合物などを配合した防藻剤(特許文献4)が提案されている。
【0004】
しかし、特許文献1~4に記載の化合物は、人体への悪影響や環境汚染などが問題視されており、実用上好ましくない。
【0005】
また、環境への影響が少ない成分として、パラオキシ安息香酸エステルを配合したケイソウ駆除剤(特許文献5)や殺藻殺菌剤(特許文献6)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-92012号公報
【文献】特開平9-241544号公報
【文献】特開平10-287511号公報
【文献】特開平5-112739号公報
【文献】特開平11-286407号公報
【文献】特開2002-53409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献5および6で提案されているケイソウ駆除剤等は、いずれも炭素原子数1~4であるパラオキシ安息香酸エステルを使用しており、防藻効果に劣るものであった。
【0008】
本発明の目的は、人体や環境への影響が少なく、安全性に優れるとともに、防藻効果が高い防藻剤を提供することにある。また、本発明の目的は、安全性に優れるとともに、防藻効果が高い防藻方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の4-ヒドロキシ安息香酸エステルがクロレラやネンジュモ等の藻類に対して高い防藻効果を奏することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕式(1)
【化1】
[式中、Rは水素原子またはアルカリ金属を示し、Rは炭素原子数5~22のアルキル基またはアリール基を示す]
で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルを含む防藻剤。
〔2〕前記式(1)中、Rは水素原子を示す、〔1〕に記載の防藻剤。
〔3〕前記式(1)中、Rは炭素原子数6~18のアルキル基またはアリール基を示す、〔1〕または〔2〕に記載の防藻剤。
〔4〕前記式(1)中、Rはアルキル基を示す、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の防藻剤。
〔5〕式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルは、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルおよび4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルからなる群から選択される1種以上である、〔1〕に記載の防藻剤。
〔6〕藻類が生育可能な被処理領域または被処理体に、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の防藻剤を適用し、藻類を防徐または藻類の発生を予防する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安全性に優れるとともに、藻類に対して高い防藻効果を奏する防藻剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の防藻剤は、有効成分として、式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルを含む。
【化2】
[式中、Rは水素原子またはアルカリ金属を示し、Rは炭素原子数5~22のアルキル基またはアリール基を示す。]
【0013】
がアルカリ金属を示す場合、アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムおよびリチウムが挙げられる。Rは好ましくは水素原子である。
【0014】
は、アルキル基またはアリール基を示すことが好ましく、アルキル基を示すことがより好ましい。また、アルキル基またはアリール基は、炭素原子数6~18を有することが好ましく、炭素原子数6~16を有することがより好ましい。
【0015】
式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルとしては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸ペンチル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘプチル、4-ヒドロキシ安息香酸オクチル、4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、4-ヒドロキシ安息香酸ノニル、4-ヒドロキシ安息香酸デシル、4-ヒドロキシ安息香酸ウンデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ドデシル、4-ヒドロキシ安息香酸トリデシル、4-ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ペンタデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘプタデシル、4-ヒドロキシ安息香酸オクタデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ノナデシル、4-ヒドロキシ安息香酸イコシル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘンイコシルおよび4-ヒドロキシ安息香酸ヘンエイコシルからなる群から選択される1種以上が挙げられる。これらの中でも、防藻効果により優れるという点で、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルが好適に使用され、特に4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルがより好適に使用される。
【0016】
上述した4-ヒドロキシ安息香酸エステルは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明で使用される4-ヒドロキシ安息香酸エステルは、市販のものを用いてもよく、また、特開2018-95581号公報や特開2016-210699号公報に記載されるように、触媒の存在下、4-ヒドロキシ安息香酸と脂肪族アルコールとを反応させることによって得られたものを用いてもよい。
【0018】
本発明の防藻剤は、使用目的に応じた形態で用いることができるが、具体的には以下の形態が挙げられる。
【0019】
(1)式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルを単独でそのまま防藻剤として使用する形態。
(2)式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルを固体担体に担持させて防藻剤として使用する形態。
(3)式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルを液体に溶解または分散させた液状組成物を防藻剤として使用する形態。
(4)式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルを樹脂中に練り込んだ樹脂組成物を防藻剤として使用する形態。
【0020】
(2)の固体担体に担持させて防藻剤とする形態において、使用する固体担体としては、例えば、カオリン、タルク、ベントナイト、クレー、珪藻土、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト等の鉱物質又は無機質粉末;木粉、大豆粉、小麦粉、澱粉粉等の植物質粉末;フェノール樹脂、ポリアミド、アクリル、ポリエステル等のプラスチック;該プラスチックからなる合成繊維;ポリブタジエン等のゴムまたはその粉末;樟脳、ナフタレン、パラジクロロベンゼン、トリオキサン、シクロドデカン、アダマンタン等の昇華性粉末;リンター、パルプ等の天然繊維;羊毛、綿、絹などの動植物性繊維;レーヨンなどの再生繊維等が挙げられ、またガラス繊維、石綿などの無機繊維などから得られる紙、不織布等が挙げられる。
【0021】
(3)の液体に溶解または分散させた液状組成物を防藻剤とする形態において、使用する液体としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、ケロシン、パラフィン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;および酢酸エチル、ラウリン酸ヘキシル等のエステル類などが挙げられる。
【0022】
(4)の樹脂中に練り込んだ樹脂組成物を防藻剤とする形態において、使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム類が挙げられる。
【0023】
熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、プラストマーなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、超分子量ポリエチレン、α-オレフィンコポリマー、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・メタアクリル酸共重合樹脂、エチレン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、エラストマー系アイオノマー、ポリプロピレンコンパウンド、変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル、塩化ビニデン単独重合体、アクリル酸エステルと塩化ビニデン共重合体、メタクリル酸エステルと塩化ビニデン共重合体、アクリロニトリルと塩化ビニデン共重合体等の塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリルアクリルスチレン)樹脂、AS(アクリロニトリルスチレン)樹脂、AES(アクリロニトリルエチレンスチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレートブタジエンスチレン)樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどのメタクリル樹脂、ポリビニールアルコール、エチレンビニールアルコール、スチレン系ブロックコポリマー、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂、PSU(ポリサルホン)樹脂、PEI(ポリエーテルイミド)樹脂、PES(ポリエーテルスルホン)樹脂、変性PPE樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、PFE(パーフルオロアルコキシアルカン)樹脂、PFdF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂、PVF(ポリフッ化ビニル)樹脂などのフッ素樹脂、PPS(ポリフェニレンスルフィド)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂などのポリエーテルケトン系樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド、シンジオ型ポリスチレン樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー樹脂、銅アクリルコポリマー、ケイ素アクリルコポリマー、亜鉛アクリルコポリマー、非水分散性アクリルコポリマーなどの加水分解性樹脂、水和分解型樹脂、吸水性樹脂が挙げられる。
【0024】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂、グアナミン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリパラ安息香酸樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂などの樹脂が挙げられる。
【0025】
ゴム類としては、ブチルゴム、イソプレンゴム、SBR(スチレンブタジエンゴム),NIR(ニトリルイソプレンゴム),NBR(ニトリルブタジエンゴム),ウレタンゴム、クロロプレンゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエン共重合体ゴム),EPM(エチレンプロピレン共重合体ゴム),ブタジエンゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、プロピレンオキサイドゴム、エチレン・アクリルゴム、ノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、ポリエーテル系ゴム、四フッ化エチレン・プロピレンゴム、クロロスルホン化ゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、天然ゴムなどが挙げられる。
【0026】
これらの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂およびゴム類は、単独で使用してもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、ポリマーアロイ化して使用してもよく、ブレンドして使用してもよく、あるいはそれぞれの樹脂層を積層して使用してもよい。
【0027】
上記(1)~(4)の使用形態において、いずれの場合も、必要により他の剤、例えば防藻剤、殺藻剤、防汚剤、抗菌剤、抗黴剤、殺菌剤等と併用してもよい。併用してもよい他の剤としては、例えば、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、第4級アンモニウム化合物などの有機系防藻剤や、亜酸化銅、銅粉、チオシアン酸銅、炭酸銅、塩化銅、硫酸銅、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸ニッケル、銅-ニッケル合金等の無機系防藻剤、有機スズ系化合物、有機銅系化合物、有機ニッケル系化合物、有機亜鉛系化合物等の有機金属防藻剤等が挙げられる。他の剤を併用する場合、その使用量(質量)は、式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルの使用量(質量)と同量以下とすることが、安全性の観点から好ましい。
【0028】
上述した形態の防藻剤は、エアゾール剤、ポンプ剤、液剤、塗布剤、マット剤、シート剤、テープ剤、粉剤、顆粒剤、ゲル剤、クリーム剤等の剤型に調製することができる。
【0029】
本発明の防藻剤において、式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルの含有量は、防藻剤の剤型や適用方法、適用場所に応じて適宜決定できる。
【0030】
例えば、液体に溶解または分散させて使用する場合、式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルの割合が好ましくは0.001~50質量%、より好ましくは0.01~40質量%、さらに好ましくは0.1~30質量%となるように含有させるのがよい。また、樹脂中に練り込んだり、固体担体に担持させて使用する場合、式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルの割合が好ましくは0.001~50質量%、より好ましくは0.01~40質量%、さらに好ましくは0.1~30質量%となるように含有させるのがよい。
【0031】
本発明の防藻剤により防藻される藻類としては、藍植物門、紅色植物門、クリプト植物門、褐色植物門、ミドリムシ植物門、プラシノ植物門および緑藻植物亜門に属する藻類(例えば、藍藻類、ミドリムシ藻類、緑藻類、珪藻類、プラシノ藻類などの綱に属する藻類)などであり、具体的には以下の藻類が挙げられる。
【0032】
オシラトリア・ラエテヴイレンス(Oscillatoria laetevirens)などのオシラトリア(Oscillatoria)属、ノストック・コミュン(Nostoc commune)などのネンジュモ(Nostoc)属などを含む藍藻類。
ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)などのユーグレナ(Euglena)属などを含むミドリムシ藻類。
【0033】
クロレラ・ヴルガリス(Chlorella vulgaris)などのクロレラ(Chlorella)属、クラミドモナス・レインハルドティー(Chlamydomonas reinhardtii)などのクラミドモナス(Chlamydomonas)属、ウロスリックス・ヴァリアビリス(Ulothrix variabilis)などのウロスリックス(Ulothrix)属などを含む緑藻類。
【0034】
エオリムナ・ミニマ(Eolimna minima)などのエオリムナ(Eolimna)属、ゴンフォネマ・パルブルム(Gomphonema parvulum)などのゴンフォネマ(Gomphonema)属、タベラリア・フロキューサ(Tabellaria flocculosa)などのタベラリア(Tabellaria)属、メロシラ・グラニュラータ(Melosira granulata)などのメロシラ(Melosira)属を含む珪藻類。
【0035】
これらの中でも、オシラトリア(Oscillatoria)属、ネンジュモ(Nostoc)属、クロレラ(Chlorella)属、エオリムナ(Eolimna)属、ゴンフォネマ(Gomphonema)属が好適に防藻され、エオリムナ(Eolimna)属がより好適に防藻される。
【0036】
また、上記の藻類と共生または上記の藻類を餌とするヒドラ、イソギンチャク、サンゴなどの腔腸動物、フサケコムシ、ナギサコケムシ、チゴケムシ、ヒドラコケムシなどの触手動物、タテジマフジツボ、サンカクフジツボ、サラサフジツボ、アカフジツボ、エボシガイ、ドロクダムシ、エビ、カニなどの節足動物、ウズマキゴカイ、カサネカンザシ、ウロコムシ、シリス、カンザシゴカイなどの環形動物、ムラサキイガイ、イガイ、マガキ、キヌマトイガイなどの軟体動物、シロボヤ、ユウレイボヤ、アカイタボヤなどの原索動物、ムラサキカイメン、ナミイソカイメンなどの海綿類などにも有効である。
【0037】
本発明の防藻剤は、藻類が育成可能な被処理領域または被処理体に適用し、藻類を防徐または藻類の発生を予防することができる。
【0038】
被処理領域または被処理体としては、例えば、船舶(特に船底)、プール、水槽、漁網、海苔網、漁業用カゴ、釣り具、水中の岩礁、海中構造物、海水導入管、浮標等、住宅(特に外壁、屋根、厨房、洗面所、ベランダ、物置など)、植木鉢、プランター、育苗鉢の底部または周辺部、排水口の内側等が挙げられる。また、藻類の栄養源となり得る生物自体や該生物の周辺部に適用することができる。
【0039】
本発明の防藻剤の被処理体への適用手段としては、撒布、噴霧または塗布等の方法が挙げられる。
【0040】
また、本発明の防藻剤を、塗料、ゴム、繊維、不織布、樹脂、プラスチック、接着剤、シーリング剤、建材、コーキング剤、木材処理剤、土壌処理剤、顔料、工業用冷却水、インキ、切削油、化粧用品などに添加し、藻類を防藻したい場所に適用してもよい。
【実施例
【0041】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例および比較例に用いた防藻剤A~D、および試験対象藻類1~5と使用培地を以下に示す。
【0042】
<防藻剤>
防藻剤A:4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル(上野製薬株式会社製)
防藻剤B:4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル(上野製薬株式会社製)
防藻剤C:4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル(上野製薬株式会社製)
防藻剤D:4-ヒドロキシ安息香酸メチル(上野製薬株式会社製)
【0043】
<試験対象藻類>
藻類1:クロレラ・ヴルガリス:Chlorella vulgaris NIES-2170(使用培地:C培地)
藻類2:ノストック・コミュン:Nostoc commune NIES-24(使用培地:MDM培地)
藻類3:オシラトリア・ラエテヴイレンス:Oscillatoria laetevirens NIES-31(使用培地:MDM培地)
藻類4:エオリムナ・ミニマ:Eolimna minima NIES-2720(使用培地:CSi培地)
藻類5:ゴンフォネマ・パルブルム:Gomphonema parvulum NIES-2723(使用培地:CSi培地)
【0044】
[実施例1]
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル0.04g、ジメチルスルホシキド(DMSO)500μL、培地9.46mLをサンプル管へ投入し、ボルテックスミキサーにて1分間撹拌し、前調製液(4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル濃度4000μg/mL)を作製した。各試験対象藻類に対し、試験管を12本準備し、左端の試験管へ前調製液を3mL、それ以外の試験管へは培地1.5mLを採取した。
【0045】
左端の試験管より、前調製液1.5mL採取し、隣の試験管へ投入し、ボルテックスミキサーにて30秒撹拌、そこから1.5mL採取し、隣の試験管へ投入する作業を繰り返し実施し、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル濃度2μg/mLになるまで、2倍ずつ希釈した液を各試験管内に準備した。
【0046】
すべての試験管内へ培地1.4mL、試験対象藻類の懸濁液100μLずつ加えた後、照度1000LXで、1日あたり16時間の照射条件下、25℃で40日間培養した。培養後の藻類の生育を観察して、最小発育阻止濃度(MIC:μg/mL)を算出した。
結果を表1に示す。
【0047】
なお、最小発育阻止濃度は、日本化学療法学会標準法において、菌を藻に変更して測定した。
【0048】
[実施例2](参考例)
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルに変更した以外は実施例1と同様にして最小発育阻止濃度を算出した。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3](参考例)
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルに変更した以外は実施例1と同様にして最小発育阻止濃度を算出した。結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1]
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを4-ヒドロキシ安息香酸メチルに変更した以外は実施例1と同様にして最小発育阻止濃度を算出した。結果を表1に示す。
【0051】
表1から明らかなように、式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステル(実施例1~3)は、藻類の発育阻止効果に優れ、防藻剤として有用であることが理解される。一方、4-ヒドロキシ安息香酸メチル(比較例1)は藻類の発育阻止効果が低いものであった。
【0052】
【表1】