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特許7519783エレベーターロープ端末装置およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】エレベーターロープ端末装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/08 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
B66B7/08 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020025769
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130532
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】藤居 薫
【審査官】小野 孝朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/105047(WO,A1)
【文献】特開2005-047673(JP,A)
【文献】実開昭50-135871(JP,U)
【文献】特開平06-002291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/08
F16G 11/00
D07B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアロープと前記コアロープの外周部に設けられた複数のストランドとを有するエレベーターロープの端末部に結合されるエレベーターロープ端末装置であって、
断面テーパ形状のソケットテーパ孔が形成されたソケットと、
前記ソケットテーパ孔の内側に設けられ、それぞれが折り曲げられた複数の前記ストランドの部分を囲むストランド拘束部材と、
複数の前記ストランドのそれぞれに渡って設けられたバビットメタルと、
を備え、
前記ストランド拘束部材には、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分のそれぞれが挿入される複数の溝が周方向に並んで形成されており、
複数の前記溝は、前記ストランド拘束部材の内周面に形成されており、
折り曲げられた複数の前記ストランドの部分が複数の前記溝に1つずつ挿入されているエレベーターロープ端末装置の製造方法であって、
複数の前記ストランドのそれぞれを折り曲げるストランド折曲工程と、
前記ストランド折曲工程の後、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分を前記ストランド拘束部材が囲むストランド拘束工程と、
前記ストランド拘束工程の後、前記ソケットテーパ孔の内側に液体の前記バビットメタルを注入して、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分のそれぞれに前記ストランドを渡らせるバビットメタル注入工程と、
を備え
前記ストランド拘束工程では、シート形状のストランド拘束シートが、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分に巻かれることによって、前記ストランド拘束部材が、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分を囲み、
前記ストランド拘束シートは、波形状に形成されており、
前記ストランド拘束工程では、前記波形状の凹部が前記溝となるエレベーターロープ端末装置の製造方法。
【請求項2】
コアロープと前記コアロープの外周部に設けられた複数のストランドとを有するエレベーターロープの端末部に結合されるエレベーターロープ端末装置であって、
断面テーパ形状のソケットテーパ孔が形成されたソケットと、
前記ソケットテーパ孔の内側に設けられ、それぞれが折り曲げられた複数の前記ストランドの部分を囲むストランド拘束部材と、
複数の前記ストランドのそれぞれに渡って設けられたバビットメタルと、
を備え、
前記ストランド拘束部材には、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分のそれぞれが挿入される複数の溝が周方向に並んで形成されており、
複数の前記溝は、前記ストランド拘束部材の内周面に形成されており、
折り曲げられた複数の前記ストランドの部分が複数の前記溝に1つずつ挿入されているエレベーターロープ端末装置の製造方法であって、
複数の前記ストランドのそれぞれを折り曲げるストランド折曲工程と、
前記ストランド折曲工程の後、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分を前記ストランド拘束部材が囲むストランド拘束工程と、
前記ストランド拘束工程の後、前記ソケットテーパ孔の内側に液体の前記バビットメタルを注入して、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分のそれぞれに前記ストランドを渡らせるバビットメタル注入工程と、
を備え
前記ストランド拘束工程では、シート形状のストランド拘束シートが、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分に巻かれることによって、前記ストランド拘束部材が、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分を囲み、
前記ストランド拘束シートの一方の面は、波形状に形成されており、
前記ストランド拘束工程では、前記波形状の凹部が前記溝となるエレベーターロープ端末装置の製造方法。
【請求項3】
複数の前記溝は、周方向に等間隔に並んで形成されている請求項1または請求項2に記載のエレベーターロープ端末装置の製造方法。
【請求項4】
前記バビットメタル注入工程では、前記ソケットテーパ孔の内側に注入された液体の前記バビットメタルによって、前記ストランド拘束部材が溶融する請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のエレベーターロープ端末装置の製造方法。
【請求項5】
コアロープと前記コアロープの外周部に設けられた複数のストランドとを有するエレベーターロープの端末部に結合されるエレベーターロープ端末装置であって、
断面テーパ形状のソケットテーパ孔が形成されたソケットと、
前記ソケットテーパ孔の内側に設けられ、それぞれが折り曲げられた複数の前記ストランドの部分を囲むストランド拘束部材と、
複数の前記ストランドのそれぞれに渡って設けられたバビットメタルと、
を備え、
前記ストランド拘束部材には、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分のそれぞれが挿入される複数の溝が周方向に並んで形成されており、
複数の前記溝は、前記ストランド拘束部材の内周面に形成されており、
折り曲げられた複数の前記ストランドの部分が複数の前記溝に1つずつ挿入されているエレベーターロープ端末装置の製造方法であって、
複数の前記ストランドのそれぞれを折り曲げるストランド折曲工程と、
前記ストランド折曲工程の後、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分を前記ストランド拘束部材が囲むストランド拘束工程と、
前記ストランド拘束工程の後、前記ソケットテーパ孔の内側に液体の前記バビットメタルを注入して、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分のそれぞれに前記ストランドを渡らせるバビットメタル注入工程と、
を備え
前記バビットメタル注入工程では、前記ソケットテーパ孔の内側に注入された液体の前記バビットメタルによって、前記ストランド拘束部材が溶融するエレベーターロープ端末装置の製造方法。
【請求項6】
前記ストランド拘束工程では、円環形状の前記ストランド拘束部材の内側に、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分が挿入されることによって、前記ストランド拘束部材が、折り曲げられた複数の前記ストランドの部分を囲む請求項に記載のエレベーターロープ端末装置の製造方法。
【請求項7】
複数の前記溝は、周方向に等間隔に並んで形成されている請求項5または請求項6に記載のエレベーターロープ端末装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターロープ端末装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コアロープとコアロープの外周部に設けられた複数のストランドとを有するエレベーターロープの端末部に結合されるエレベーターロープ端末装置が知られている。このエレベーターロープ端末装置は、断面テーパ形状のソケットテーパ孔が形成されたソケットと、ソケットテーパ孔の内側に設けられたバビットメタルとを備えている。ソケットテーパ孔の内側には、それぞれが折り曲げられた複数のストランドが配置されている。バビットメタルは、複数のストランドのそれぞれに渡って設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2008/105047号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ソケットテーパ孔の内側で周方向に互いに隣り合うストランド同士が互いに接触する場合には、それぞれのストランドの間にバビットメタルが十分に充填されない。これにより、エレベーターロープの端末部とエレベーターロープ端末装置との間の結合が弱くなってしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、エレベーターロープの端末部とエレベーターロープ端末装置との間の結合を向上させることができるエレベーターロープ端末装置およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
の発明に係るエレベーターロープ端末装置の製造方法は、複数のストランドのそれぞれを折り曲げるストランド折曲工程と、ストランド折曲工程の後、折り曲げられた複数のストランドの部分をストランド拘束部材が囲むストランド拘束工程と、ストランド拘束工程の後、ソケットテーパ孔の内側に液体のバビットメタルを注入して、折り曲げられた複数のストランドの部分のそれぞれにストランドを渡らせるバビットメタル注入工程と、を備え、ストランド拘束工程では、シート形状のストランド拘束シートが、折り曲げられた複数のストランドの部分に巻かれることによって、ストランド拘束部材が、折り曲げられた複数のストランドの部分を囲み、ストランド拘束シートは、波形状に形成されており、ストランド拘束工程では、波形状の凹部が溝となる。
この発明に係るエレベーターロープ端末装置の製造方法は、複数のストランドのそれぞれを折り曲げるストランド折曲工程と、ストランド折曲工程の後、折り曲げられた複数のストランドの部分をストランド拘束部材が囲むストランド拘束工程と、ストランド拘束工程の後、ソケットテーパ孔の内側に液体のバビットメタルを注入して、折り曲げられた複数のストランドの部分のそれぞれにストランドを渡らせるバビットメタル注入工程と、を備え、ストランド拘束工程では、シート形状のストランド拘束シートが、折り曲げられた複数のストランドの部分に巻かれることによって、ストランド拘束部材が、折り曲げられた複数のストランドの部分を囲み、ストランド拘束シートの一方の面は、波形状に形成されており、ストランド拘束工程では、波形状の凹部が溝となる。
この発明に係るエレベーターロープ端末装置の製造方法は、複数のストランドのそれぞれを折り曲げるストランド折曲工程と、ストランド折曲工程の後、折り曲げられた複数のストランドの部分をストランド拘束部材が囲むストランド拘束工程と、ストランド拘束工程の後、ソケットテーパ孔の内側に液体のバビットメタルを注入して、折り曲げられた複数のストランドの部分のそれぞれにストランドを渡らせるバビットメタル注入工程と、を備え、バビットメタル注入工程では、ソケットテーパ孔の内側に注入された液体のバビットメタルによって、ストランド拘束部材が溶融する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエレベーターロープ端末装置およびその製造方法によれば、エレベーターロープの端末部とエレベーターロープ端末装置との間の結合を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るエレベーターロープ端末装置およびエレベーターロープの端末部の構成を示す図である。
図2図1のソケットの構成を示す断面図である。
図3図1のエレベーターロープの端末部およびエレベーターロープ端末装置の一部の構成を示す図である。
図4図1のエレベーターロープの端末部およびエレベーターロープ端末装置を軸方向に見た図である。
図5】この発明の実施の形態1に係るエレベーターロープ端末装置の製造方法を示すフローチャートである。
図6】この発明の実施の形態2に係るエレベーターロープ端末装置およびエレベーターロープの端末部の構成を示す図である。
図7図6のストランド拘束シートの構成を示す図である。
図8図6のストランド拘束シートの構成を示す図である。
図9】実施の形態2の変形例のストランド拘束シートの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーターロープ端末装置およびエレベーターロープの端末部の構成を示す図である。エレベーターロープの端末部100には、エレベーターロープ端末装置200が結合されている。エレベーターロープ端末装置200は、ソケット201を備えている。
【0010】
図2は、図1のソケット201の構成を示す断面図である。図2では、径方向に沿ったソケット201の断面が示されている。ソケット201には、ソケットテーパ孔202が形成されている。ソケットテーパ孔202は、ソケット201の一端部から他端部に向かうにつれて、ソケットテーパ孔202の径方向寸法が小さくなるように形成されている。具体的には、図2に示すソケット201において、ソケット201の左端部から右端部に向かうにつれて、ソケットテーパ孔202の径方向寸法が小さくなるように、ソケットテーパ孔202が形成されている。
【0011】
図3は、図1のエレベーターロープの端末部100およびエレベーターロープ端末装置200の一部の構成を示す図である。エレベーターロープの端末部100は、コアロープ101と、複数のストランド102と、締付具103とを備えている。
【0012】
複数のストランド102は、コアロープ101の外周部に設けられている。複数のストランド102それぞれは、複数の素線から構成されている。コアロープ101の端末部は、切断されている。したがって、ストランド102の端末部は、コアロープ101から離れている。締付具103は、ストランド102におけるコアロープ101に接触している部分の外周部に設けられている。締付具103は、複数のストランド102をコアロープ101に締め付けている。
【0013】
複数のストランド102のそれぞれは、径方向内側に折り曲げられている。エレベーターロープ端末装置200は、複数のストランド102を囲むストランド拘束部材203を備えている。ストランド拘束部材203は、折り曲げられたストランド102における長手方向中間部に配置されている。なお、ストランド拘束部材203は、折り曲げられたストランド102における長手方向中間部よりも締付具103の近くに配置されてもよい。言い換えれば、ストランド拘束部材203は、折り曲げられたストランド102における長手方向中間部よりも折曲部から長手方向について離れて配置されてもよい。
【0014】
図4は、図1のエレベーターロープの端末部100およびエレベーターロープ端末装置200を軸方向に見た図である。ストランド拘束部材203は、円環形状に形成されている。折り曲げられた複数の複数のストランド102の部分は、ストランド拘束部材203の内側に挿入されている。
【0015】
ストランド拘束部材203の内周面には、折り曲げられた複数のストランド102の部分のそれぞれが挿入されている複数の溝204が周方向に等間隔に並んで形成されている。1個の溝204に1本のストランド102が挿入されている。したがって、折り曲げられた複数のストランド102の部分のそれぞれは、周方向について互いに離れて配置されている。
【0016】
ストランド拘束部材203の内周面の形状は、ストランド拘束部材203の長手方向一端部から長手方向他端部に向かうにつれて、径方向寸法が小さくなるテーパ形状となっている。ストランド拘束部材203の外周面の形状は、ストランド拘束部材203の長手方向一端部から長手方向他端部に向かうにつれて、径方向寸法が小さくなるテーパ形状となっている。ストランド拘束部材203の外周面は、ソケットテーパ孔202の内周面に対向する。
【0017】
エレベーターロープ端末装置200は、ソケットテーパ孔202の内側に設けられたバビットメタル205をさらに備えている。バビットメタル205は、複数のストランド102のそれぞれに渡って設けられている。バビットメタル205は、コアロープ101とストランド102とストランド拘束部材203とによって構成された空間に充填されている。また、バビットメタル205は、ソケット201とストランド拘束部材203とによって構成された空間に充填されている。これにより、エレベーターロープの端末部100とエレベーターロープ端末装置200とが結合されている。
【0018】
次に、エレベーターロープ端末装置200をエレベーターロープの端末部100に結合する手順について説明する。図5は、この発明の実施の形態1に係るエレベーターロープ端末装置200の製造方法を示すフローチャートである。まず、ステップS101において、ストランド折曲工程を行う。ストランド折曲工程では、エレベーターロープの端末部100のストランド102の部分をコアロープ101から離し、さらに、それぞれのストランド102の部分を互いに離す。また、ストランド折曲工程では、それぞれのストランド102の部分を径方向内側に折り曲げる。折り曲げられた複数のストランド102の部分のそれぞれは、周方向に等間隔に並ぶように配置される。
【0019】
その後、ステップS102において、ストランド拘束工程を行う。ストランド拘束工程では、ストランド拘束部材203の内側に、折り曲げられた複数のストランド102の部分のそれぞれを挿入する。これにより、ストランド拘束部材203は、折り曲げられたストランド102の部分を囲む。ストランド拘束工程では、1個の溝204に1本のストランド102が挿入される。
【0020】
その後、ステップS103において、バビットメタル注入工程を行う。バビットメタル注入工程では、まず、折り曲げられた複数のストランド102の部分のそれぞれおよびストランド拘束部材203をソケットテーパ孔202の内側に挿入する。また、バビットメタル注入工程では、液体のバビットメタル205をソケットテーパ孔202の内側に注入する。これにより、バビットメタル205は、複数のストランド102のそれぞれに渡って設けられる。また、バビットメタル205は、ソケット201とストランド拘束部材203とに渡って設けられる。なお、ストランド拘束部材203の融点は、バビットメタル注入工程におけるバビットメタル205の温度よりも高い。したがって、バビットメタル注入工程では、ストランド拘束部材203は、溶融しない。以上により、エレベーターロープ端末装置200をエレベーターロープの端末部100に結合する手順が終了する。
【0021】
以上説明したように、実施の形態1に係るエレベーターロープ端末装置200では、ソケット201と、ストランド拘束部材203と、バビットメタル205と、を備えている。ソケット201には、断面テーパ形状のソケットテーパ孔202が形成されている。ソケットテーパ孔202には、それぞれが折り曲げられた複数のストランド102の部分が設けられている。ストランド拘束部材203は、それぞれが折り曲げられた複数のストランド102の部分を囲んでいる。バビットメタル205は、複数のストランド102のそれぞれに渡って設けられている。ストランド拘束部材203には、折り曲げられた複数のストランド102の部分のそれぞれが挿入される複数の溝204が周方向に並んで形成されている。この構成によれば、それぞれが折り曲げられたストランド102の部分をソケットテーパ孔202の内側に挿入する際に、周方向に隣り合うストランド102同士が互いに接触することが抑制される。これにより、それぞれのストランド102の間にバビットメタル205が十分に充填される。その結果、エレベーターロープの端末部とエレベーターロープ端末装置との間の結合を向上させることができる。
【0022】
また、実施の形態1に係るエレベーターロープ端末装置200の製造方法では、ストランド折曲工程と、ストランド折曲工程の後に実行されるストランド拘束工程と、ストランド拘束工程の後に実行される。バビットメタル注入工程と、を備えている。ストランド折曲工程では、複数のストランド102のそれぞれが折り曲げられる。ストランド拘束工程では、折り曲げられた複数のストランド102の部分をストランド拘束部材203が囲む。バビットメタル注入工程では、ソケットテーパ孔202の内側に液体のバビットメタル205が注入されて、折り曲げられた複数のストランド102の部分のそれぞれにバビットメタル205が渡る。この方法によれば、それぞれが折り曲げられたストランド102の部分をソケットテーパ孔202の内側に挿入する際に、周方向に隣り合うストランド102同士が互いに接触することが抑制される。これにより、それぞれのストランド102の間にバビットメタル205が十分に充填される。その結果、エレベーターロープの端末部とエレベーターロープ端末装置との間の結合を向上させることができる。
【0023】
また、ストランド拘束工程では、円環形状のストランド拘束部材203の内側に、折り曲げられた複数のストランド102の部分が挿入されることによって、ストランド拘束部材203が、折り曲げられた複数のストランド102の部分を囲む。この方法によれば、簡単な構成で、ストランド拘束部材203がストランド102を囲むことができる。
【0024】
また、複数の溝204は、周方向に等間隔に並んで形成されている。この構成によれば、ストランド拘束部材203が、折り曲げられた複数のストランド102の部分を囲むことによって、折り曲げられた複数のストランド102の部分を周方向に等間隔に並んで配置することができる。
【0025】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2に係るエレベーターロープ端末装置およびエレベーターロープの端末部の構成を示す図である。図6では、エレベーターロープ端末装置200およびエレベーターロープの端末部100を軸方向に見た図が示されている。ストランド拘束部材203は、シート形状の一枚のストランド拘束シート206から構成されている。
【0026】
図7は、図6のストランド拘束シート206の構成を示す図である。図8は、図6のストランド拘束シート206の構成を示す図である。図7および図8では、ストランド拘束シート206が平面に沿って配置された状態が示されている。
【0027】
ストランド拘束シート206は、波形状に形成されている。これにより、ストランド拘束シート206には、波形状の凹部207が形成されている。波形状の凹部207の数は、ストランド102の数に対応している。ストランド拘束工程では、ストランド拘束シート206が、折り曲げられた複数のストランド102の部分に巻かれる。これにより、ストランド拘束部材203は、折り曲げられた複数のストランド102の部分を囲む。ストランド拘束シート206が、折り曲げられた複数のストランド102の部分に巻かれた場合に、波形状の凹部207は、ストランド102が挿入された溝204となる。ストランド拘束シート206の板厚は、ストランド拘束シート206の全域に渡って均一となっている。
【0028】
ストランド拘束シート206の幅方向を向く両側面は、ストランド拘束シート206の高さ方向一端部から高さ方向他端部に向かうにつれて、互いに近づくように、形成されている。これにより、ストランド拘束シート206の幅方向両端面が互いに接触した場合に、ストランド拘束部材203の内周面の形状は、テーパ形状となる。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0029】
以上説明したように、実施の形態2に係るエレベーターロープ端末装置200の製造方法において、ストランド拘束工程では、シート形状のストランド拘束シート206が、折り曲げられた複数のストランド102の部分に巻かれる。これにより、ストランド拘束部材203が、折り曲げられた複数のストランド102の部分を囲む。この方法によれば、簡単な構成で、ストランド拘束部材203がストランド102を囲むことができる。
【0030】
また、ストランド拘束シート206は、波形状に形成されており、ストランド拘束工程では、波形状の凹部207が溝204となる。この方法によれば、簡単な構成で、溝204にストランド102を挿入することができる。
【0031】
なお、実施の形態2では、ストランド拘束シート206の板厚は、ストランド拘束シート206の全域に渡って均一となっている構成について説明した。図9は、実施の形態2の変形例のストランド拘束シート206の構成を示す図である。ストランド拘束シート206の一方の面は、波形状に形成されてもよい。ストランド拘束シート206は、波形状の凹部207が形成されている部分が、凸部が形成されている部分よりも板厚が小さい。この場合であっても、ストランド拘束工程では、波形状の凹部207が溝204となる。
【0032】
また、実施の形態1および2では、ストランド拘束部材203の融点が、バビットメタル注入工程におけるバビットメタル205の温度よりも高い構成について説明した。ストランド拘束部材203の融点が、バビットメタル注入工程におけるバビットメタル205の温度よりも低い構成であってもよい。この場合に、バビットメタル注入工程では、ソケットテーパ孔202の内側に注入された液体のバビットメタル205によって、ストランド拘束部材203が溶融する。これにより、ストランド102とソケット201とによって構成される空間を、バビットメタル205とストランド拘束部材203とから構成された材料が満たす。
【符号の説明】
【0033】
100 端末部、101 コアロープ、102 ストランド、103 締付具、200 エレベーターロープ端末装置、201 ソケット、202 ソケットテーパ孔、203 ストランド拘束部材、204 溝、205 バビットメタル、206 ストランド拘束シート、207 凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9