(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】ハウジング管の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 9/02 20060101AFI20240712BHJP
B22D 13/02 20060101ALI20240712BHJP
B22D 13/10 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
F16L9/02
B22D13/02 501J
B22D13/02 501B
B22D13/10 508E
(21)【出願番号】P 2020051061
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】太田 慧
(72)【発明者】
【氏名】明渡 健吾
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚嗣
(72)【発明者】
【氏名】東 浩平
(72)【発明者】
【氏名】下之薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直人
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕信
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-318071(JP,A)
【文献】登録実用新案第3162992(JP,U)
【文献】特開2001-205408(JP,A)
【文献】特開昭55-131443(JP,A)
【文献】実開平06-053890(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/02
B22D 13/02
B22D 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全長に亘って同一径の直管(11)の両端部(10a、10b)外周面にそれぞれ突条(12、12)を有し、その各端部(10a、10b)
を、前記突条(12、12)をハウジング継手(50)に係止しそのハウジング継手(50)によって前記突条(12)を介して他の管と接続するハウジング管(
10
4
)の製造方法であって、
遠心鋳造によって製作した直管からなる鋳造管(10’)
を同一ライン上を移動させ、まず、その鋳造管(10’)の一端側端面(10a’’)から採寸して他端側端部(10b)を切断し、その切断端面(10b’)を基準として他端側端部外周面に他端側の突条(12)を形成し、その後、前記鋳造管(10’)の長さ方向前後を反転し、前記他端側切断端面(10b’)から採寸して一端側端部(10a)を
前記他端側端部(10b)を切断した切断機(A)で切断し、その切断端面(10a’)を基準にして一端側端部外周面に一端側の突条(12)を形成するハウジング管の製造方法。
【請求項2】
上記一端側の突条(12)は、リング(12a、12b)を圧入して形成したり、一端側端部(10a)外周面に溝(13)を形成し、その溝(13)にリング(12a、12b)を嵌めて溶接(14)して形成したり、一端側端部(10a)外周面に膨出部(12c)を形成し、その膨出部(12c)を切削して形成したり、する請求項1に記載のハウジング管の製造方法。
【請求項3】
上記他端側の突条(12)
は、リング(12a、12b)を圧入して形成したり、他端側端部外周面に溝(13)を形成し、その溝(13)にリング(12a、12b)を嵌めて溶接(14)して形成したり、する請求項1又は2に記載のハウジング管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハウジング継手によって接続するハウジング管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、
図14に示すように、自動車専用道路のトンネルT内には、そのトンネル内部における火災に備えて初期消火設備が設置されている。このようなトンネルT内の消火設備は、トンネルの長さ方向に所定間隔で設置された消火栓装置(非常用設備)が送水配管Pで接続されて構成されている。このため、トンネルT内で火災が生じた際、火災の発見者が即座に近傍の消火栓より火災現場に散水して初期消火を行うことができる。このような消火に用いられるトンネル消火送水配管には、ダクタイル鋳造管、鋼管、樹脂管等が使用されている(特許文献1~3参照)。
図14中、Eは電気配線保護配管である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-571号公報
【文献】特開2011-239851号公報
【文献】特開2018-91433号公報
【文献】特開2018-179054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、樹脂管には耐熱性を高めたものもあるが(特許文献2、3参照)、その耐熱性樹脂管は、ダクタイル鋳造管ほどの耐熱性はなく、またコスト的にも高価なものとなっている。鋼管は、コスト的に問題がある。
また、消火配管構造は、
図15に示す、トンネルTの内壁の高所に構築する場合、トンネルTの内壁頂部はアーチ状となっているため、管材を吊り上げるクレーンのビームF等がそのアーチ状頂部に干渉する恐れがあり、配管位置に管材を直接に吊り下ろすことが困難である。このため、同図に示すように、配管位置に対峙する仮設の支え梁Gに管材を吊り下ろしてから管材の転動等による横持ちを行って配管位置にセットする必要がある。すなわち、横方向(同図矢印)に移動させる必要があり、管接続時に管の軸方向移動が必要となる挿し込み式(インロウ形)の継手方式は採用し難い。このため、管接続時(及び管取り外し時)に管の軸方向移動が最小限となる(管端面が対向又は近接する)ハウジング形式の継手(ハウジング継手)を採用する場合が多くなる。
図15中、Hは支え突出梁である。
そのハウジング継手は、接続する管端部外周面に突条を有する必要がある(
図13(b)の符号12、特許文献4参照)。
すなわち、その接続する両管端面を対向して突条12をハウジング継手に係止し、そのハウジング継手によって前記突条を介して他の管と接続する。
【0005】
ところで、遠心鋳造は、鋳造物内部にブローホール、引け巣等の欠陥が生じ難く、材質も微密となり、機械的性質等の良好な品質の鋳造物を安価にかつ円滑に得ることができる。このため、水道管等に広く使用される鋳造管の多くは、その遠心鋳造法によって製造されている。
その遠心鋳造機は、例えば、
図16に示すように、円筒状モールド(鋳型)1をローラ2により回転させるとともに、取鍋3、4を介して鋳込用トラフ5に溶湯aを送り込み、そのトラフ5を介して溶湯aを回転して前後するモールド1内に鋳込んで(注湯して)、遠心力により、溶湯aをモールド1内面に均一に分布させることにより、管厚の均一な円筒状溶湯層(鋳造管)10’を形成する。
【0006】
従来、この遠心鋳造においては、同図に示すように、一端が受口10a、他端がその受口10aに挿入接続される挿し口10bを有する鋳造管10’が主に製造され、その受口10aはモールド1内に中子6を装填して膨出状に形成される。このため、鋳造管10’の脱型は、モールドバンド8を取り除き、中子6が付いた状態で、受口10aの内面に引き出し具の爪を引っかけてモールド1から引き抜いて行っている。
このとき、挿し口10b側端部外周面に上記突条12を形成すると、その突条12が邪魔になって引き抜くことができない。図中、7、8はモールド1の端に設けたモールド(鋳型)バンドであって、その端からの溶湯aの漏れを防止する。
【0007】
この発明は、以上の実情の下、遠心鋳造による直管の両端に突条12を有するハウジング管を製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するためのこの発明の一手段は、全長に亘って同一径の直管の両端部外周面にそれぞれ突条を有し、その各端部をハウジング継手によって前記突条を介して他の管と接続するハウジング管の製造方法であって、遠心鋳造によって製作した直管からなる鋳造管の一端側端面から採寸して他端側端部を切断し、その切断端面を基準として他端側端部外周面に他端側の突条を形成し、その後、前記鋳造管の長さ方向前後を反転し、前記他端側切断端面から採寸して一端側を切断し、その切断端面を基準にして一端側の突条を形成する構成を採用したのである。
【0009】
このように、他方(他端側)の突条を形成後、鋳造管を反転すると、切断機や突条形成機が固定で、切断や形成の作業方向が決まっている場合、一端側の突条を形成する際、前記反転によって前記他方の突条と同一方向における切断および形成となるため、作業方向の異なる複数の切断機や突条形成機を設ける必要がなくなる。
【0010】
この構成において、上記遠心鋳造する直管がその一端側端部に膨出部を有するものとし、上記切断した他端側端部端面から採寸して前記一端側端部を前記膨出部を含めて切断し、その切断端面を基準にして一端側の上記突条を形成することができる。
また、上記遠心鋳造する鋳造管がその一端側端部に膨出部を有するものとした場合において、その一端側の突条は、前記膨出部を切削して形成することができる。
さらに、上記各突条の形成は、鋳造管(直管)端部外周面に全周の溝を形成し、その溝にリングを嵌め込んだり、直管端部外周面にリングを直接に(溝を形成することなく)嵌め込んだり、する構成を採用することができる。このとき、リングは鋳造管の外周面に溶接することができる。
【0011】
上記各構成の製造方法において、鋳込んだ鋳造管の両端部の鋳出し端面が綺麗でハウジング継手の接続に支障がないのであれば、その端部の切断は省略することができる。このとき、鋳造管の両端部の切断を省略しても、どちらか一方を省略しても良い。端部の切断を省略した場合、その端部を基準にして突条を形成したり、採寸して端部を切断した後その切断端面を基準にして突条を形成したりすることができる。この場合、鋳込み精度を高めてハウジング管の長さや突条の位置を正確にする必要がある。
【0012】
上記一端側の突条は、リングを圧入して形成したり、一端側端部外周面に溝を形成し、その溝にリングを嵌めて溶接して形成したり、一端側端部に膨出部を形成し、その膨出部を切削して形成したり、することができる。
また、上記他端側の突条はリングを圧入して形成したり、他端側端部外周面に溝を形成し、その溝にリングを嵌めて溶接して形成したり、することができる。
なお、上記各構成の製造方法において、採寸するのは所要長さのハウジング管とするためであり、また、その切断端面を基準として突条を形成するのは、接続管の端面を対向した際、その対向面から突条が所要位置にあってハウジング継手によって円滑に接続し得るようにするためである。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、以上のように構成したので、両端部外周面にそれぞれ突条を有し、その各端部をハウジング継手によって前記突条を介して他の管と接続するハウジング管を安価かつ円滑に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明に係るハウジング管の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は一部切断部分拡大正面図
【
図2】同実施形態のハウジング管の一製造工程を示す作用図
【
図3】同実施形態のハウジング管の他の製造工程を示す作用図
【
図4】同実施形態のハウジング管のさらに他の製造工程を示す作用図
【
図5】同実施形態のハウジング管のさらに他の製造工程を示す作用図
【
図6】同実施形態の突条の一製作説明図であり、(a)は一部断面図、(b)は一部斜視図
【
図7】同実施形態の突条の他の製作説明明図であり、(a)は一部断面図、(b)は一部斜視図
【
図8】同実施形態の突条のさらに他の製作説明明図であり、(a)は一部断面図、(b)は一部斜視図
【
図10】同ハウジング管の他の製造工程順を示す概略図
【
図11】同ハウジング管の他の製造工程順を示す概略図
【
図12】この発明に係るハウジング管による配管の一部正面図
【
図13】同配管のハウジング継手部を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のI-I線断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明に係る一実施形態のハウジング管10(以下、10
1、10
2・・の総称符号を「10」とする。)は、
図1に示すように、全長同一径の直管11の両端部外周面にそれぞれハウジング継手50用の突条12、12を有するものである。このハウジング管10は、
図14に示した、トンネルT内の消火配管構造の送水配管(以下、単に「配管」と言う。)Pの大部分を構成する。このハウジング管10はダクタイル鋳鉄による遠心鋳造(遠心鋳造)によって直管(直部)11を製造する。
この実施形態のハウジング管10は、例えば、全長:5200mm、外径:271.6mmφとし、内周面には全長に亘ってモルタルライニング13’を形成した。このモルタルライニング13’は、突条12を形成した後に行う。
【0016】
そのハウジング管10の製造方法の一実施形態は、
図16で示した遠心鋳造機によって鋳造した
図2(a)に示す鋳造管10
1’(以下、10’
1、10’
2・・の総称符号を「10’」とする)を脱型し(同図(b))、その鋳造管10
1’の受口10aの端面(一端側端面)10a’’から採寸して他端(挿し口)側端部10bを切断し(鎖線c
1部分)、その切断した他端側端面10b’を基準にして前記他端側端部10bの外周に他方の突条12を形成し、前記切断した他端側端面10b’から採寸して前記一端側端部10aを前記受口10aを含めて切断し(鎖線c
2部分)て所要長さの直管11
1(以下、11
1、11
2・・の総称符号を「11」とする)とし、その切断した直管11
1の一端側端面10a’を基準にしてその一端側端部の外周に一方の突条12を形成し、前記直管11
1の両端のそれぞれの突条12、12を管軸の中央部(中心線c)に対して対称に仕上げて、ハウジング管10
1を製作する。両突条12は両端部10a、10bを切断した後、その各切断端面10a’10b’を基準として形成することもできる。
この構成において、切断端面10a’、10b’を基準にして突条12を形成するのは、ハウジング管10をハウジング継手50で接続する際、接続対向管端面から、ハウジング継手50に対応する位置に突条12があるようにするためである。以下同様。
【0017】
上記実施形態は、
図16で示す、従来の金型1を使用することができてコスト的に有利であり、
図3に示すように、中子6を使用しないで鋳造管10
2’を鋳造することもできる。この場合、受口10aに相当する部分が肉厚となって、溶湯aの無駄が多くなる。この鋳造管10
2’からハウジング管10
2を製造するには、同図(b)~(d)に示すように、上記実施形態と同じ作用でもって行う。このときも同様に、直管11
2の両端を所要長さ(鎖線c
1部分、鎖線c
2部分)に切断した後、その両端部10a、10bに切断端面10a’、10b’を基準にして突条12をそれぞれ形成することができる。
【0018】
ハウジング管10の製造方法の他の実施形態を
図4に示し、この実施形態は、突条12を鋳込みによって形成したものである。この遠心鋳造には、
図16で示した金型1を採用しても良いが、
図4(a)に示すように、受口部分を変形した金型1aとし、中子6も変形させたもの6aとすることができる。その中子6aは、有鍔円筒状をしてその内面全周に突条用の溝6bを有しており、回転する鋳型1aへの溶湯aの送り込みによって、直管からなる鋳造管10
3’を形成するとともに、前記溝6bに溶湯aを入り込ませて突条12を形成する(鋳出しによって突条12を形成する)。
【0019】
その鋳造管103’の脱型は、受口10aの内面に引き出し具の爪を引っかけてモールド1aから引き抜いて行う(同図(b))。
その脱型した鋳造管103’の一端側端部10a側から採寸して他端(挿し口)10b側端部を切断して(鎖線c1部分)直管113とし(同図(c))、その切断した他端側端面10b’を基準にして前記他端側端部の外周に直管113の両端部の他方の突条12を形成し、その両端部10a、10bの両突条12,12を管軸の中央部(中心線c)に対して対称に仕上げて、ハウジング管103を製作する(同図(d))。このとき、直管103の一端側端部10aも切断した他端側端面10b’から採寸して所要の長さの直管113とし得る。
【0020】
ハウジング管10の製造方法のさらに他の実施形態を
図5に示し、この実施形態は、同様に、突条12を鋳出しによって形成するものであるが、この遠心鋳造には、
図16で示した金型1を採用しても良いが、同図(a)に示すように、
図4で示したものと同様に、受口部分を変形させた金型1aとするとともに、変形させた中子6aとし、その中子6aは、有蓋円筒状をしてその内面全周に凹溝6bを有しており、回転する鋳型1aへの溶湯aの送り込みによって、直管からなる鋳造管10
4’を形成するとともに、前記凹溝6bに溶湯aを入り込ませて膨出部12cを形成する。
【0021】
その鋳造管104’の脱型は、受口10aの内面に引き出し具の爪を引っかけてモールド1から引き抜いて行う(同図(b))。
その脱型した鋳造管104’の一端側端部10aの端面10a’’から採寸して他端(挿し口)側端部10bを切断し(鎖線c1部分)、その切断した他端側端面10b’を基準にして前記他端側端部10bの外周に直管11の他方の突条12を形成する(同図(b)から(c))。
【0022】
つづいて、その切断した他端側端面10b’から採寸して前記一端側端部を切断(鎖線c
2部分)して所要長さの直管11
4とし(同図(c))、その切断した直管11
4の一端側端面10a’を基準にしてその一端側端部の外周に一方の突条12を形成し、直管11
4の両端のそれぞれの突条12、12を管軸の中央部(中心線c)に対して対称に仕上げて、ハウジング管10
4を製作する(同図(d))。その一方の突条12は、膨出部12cを切削して形成する(
図8参照)。
【0023】
上記各実施形態のハウジング管103、104の製作において、直管11の両側端部10a、10bの鋳出し端面が綺麗で切断しなくても良ければ、上記切断c1、c2を行わず所要長さの直管11に採寸することができる。このとき、どちらか一方のみの切断でも良い。
【0024】
上記突条12は、
図6~
図8に示す各手段によって形成する。
図6に示す手段は、直管11端部外周面全周に亘って溝13を形成し、円周の一部が欠如されたリング12aを前記溝13に嵌め、その前後全周を溶接14したものである。
【0025】
図7に示す手段は、溝13を形成することなく、同リング12bを直管11端部に嵌め込んで同溶接14したものである。このとき、突条12を形成するリングは、
図6(b)に示す一部切欠きリング12aでも良いが、
図7(b)に示す、切欠きの無い全周連続した円状の物12bでも良く(同図(b)参照)、この場合は、リング12bの直管11端部への装着は圧入による。これらの場合も、リング12a、12bの前後全周には溶接14を行う。
【0026】
図8に示す手段は、直管11の鋳造と同時に、一方の端部10aに突条12又は膨出部12cを遠心鋳造によって形成した場合(
図4、
図5)であって、他方の端部の突条12は、
図6、
図7に示す手段によって形成する。膨出部12cの場合は切削によって、
図8(a)に示すように、膨出部12cを旋盤などによって切削して突条12を形成し、鋳込みのままの突条12の場合(
図4)も必要に応じて切削して形を整えることができる。
【0027】
いずれにおいても、リング12a、12bは一般構造用圧延鋼(SS材)を使用し得るが、ダクタイル鋳鉄等の突条12として使用し得る材であれば、いずれでも良く、その突条12には亜鉛メッキなどを施して防食対策を行うことができる。
【0028】
直管11の突条12の形成順序は適宜に考えられ、例えば、
図9~
図11に示す態様とする。
図9に示す態様は、同一ラインに沿って、切断機A、圧入機B、溶接機C、旋盤(切削機)Dを順々に備える工場において、
図2、
図3のハウジング管10
1、10
2(以下、10)の突条12をリング12a、12bの圧入で形成する場合であり、まず、脱型した鋳造管10’(10
1’、10
2’)を切断機Aに送り込んで他端部(挿し口)10bを切断し、続いて、その鋳造管10’を圧入機Bに送り込んでリング12a、12bを他端部10bの外周面に嵌める。その後、鋳造管10’を溶接機Cに送り込んで溶接14を行った後、旋盤Dに送り込んで突条12の形を整える。
さらに、その突条12を形成した鋳造管10’を反転して上記切断機Aに再び送り込んで一端側端部(受口)10aを切断し、その鋳造管10’の一端側端部10aの外周面にリング12a、12bを嵌める。その後、鋳造管10’を溶接機Cに送り込んで溶接14を行った後、旋盤Dに送り込んで突条12の形を整えて、ハウジング管10を得る。
図中、eは各加工機A、B、C、Dのラインに沿って設けたレールであり、そのレールeを鋳造管10’(直管11)を載せた台車が転動輪を介して走行する。なお、図面においては、レールeは上下に離れているが、同一ライン上に連続し、各加工機に対応するレールeは同一位置のものである(同一ライン上のものである)。
【0029】
このように、他方の突条12を形成後、鋳造管10’を反転すると、切断機Aや突条形成機B、C、Dが固定で、切断や形成の作業方向(位置)が決まっている場合、前記反転によって前記他方の突条12と同一方向における切断および形成となるため、作業方向(位置)の異なる二台(複数)の切断機や突条形成機を設ける必要がなくなる。
その反転は、フォークリフト等によって行い、例えば、鋳造管10’をレールe上から別の位置(別のレール)に一旦預け、反対側から掬って今までのライン(レールe上の台車)に戻すことなどによって行う。以下同様。なお、反転は、反転機等の専用機を使用することもできる。
【0030】
図10に示す態様は、同一ラインに沿って、切断機A、溶接機C、旋盤(切削機)Dを順々に備える工場において、
図2、
図3のハウジング管10
1、10
2の突条12を、溝13の形成及びその溝13にリング12aを嵌めて形成する場合である。
まず、脱型した鋳造管10’を切断機Aに送り込んで他端部(挿し口)10bを切断し、続いて、その鋳造管10’を旋盤Dに送り込んで、他端部外周面に溝13を形成してリング12aをその溝13に嵌める。その後、鋳造管10’をその長さ方向前後に反転した後、切断機Aに送り込んで、一端側端部(受口、鍔)10aを切断して旋盤Dに送り込んで溝13を形成してその溝13にリング12aを嵌める。その後、そのリング12aを嵌めた直管11を溶接機Cに送り込んでリング12aの周囲を溶接14し、さらに、旋盤Dに送り込んでリング12a及び溶接14を切削して一方の突条12を形成する。その後、その直管11をその長さ方向前後に反転して溶接機Cに送り込んで他方のリング12aの周囲を溶接14した後、旋盤Dに送り込んでリング12a及び溶接14を切削して他方の突条12を形成してハウジング管10を得る。
【0031】
図11に示す態様は、同一ラインに沿って、切断機A、圧入機B、溶接機C、旋盤(切削機)Dを順々に備える工場において、
図4のハウジング管10
3の他方の突条12をリング12bの圧入で形成する場合である。
まず、脱型した鋳造管10’を切断機Aに送り込んで他端部(挿し口)部10bを切断し、続いて、その鋳造管10’(11)を圧入機Bに送り込んでリング12bを他端部10bの外周面に嵌める。その後、直管11を溶接機Cに送り込んで溶接14を行った後、旋盤Dに送り込んで突条12の形を整える。
つぎに、その突条12を形成した直管11を反転して旋盤Dに再び送り込んで一端側端部(受口)10aの外周面の鋳出し突部12を切削して形を整えた一端側端部の突条12としてハウジング管10を得る。
この実施形態において、
図5のハウジング管の一方の突条12を形成する場合は、反転した後、鋳出突部加工において、膨出部12cを切削加工して一端側端部の突条12を形成することとなる。
【0032】
以上の各手段によって
図1に示すハウジング管10を製作し、つぎに、このハウジング管10によって、
図14に示す、トンネルTの内壁の高所に配管Pを構築する場合の作業手順について説明する。
まず、
図15に示すように、配管位置の横にハウジング管10を吊り下ろしてからハウジング管10の転動等による横持ちを行って配管位置にセットする。セットした直管10同士は芯出しした後、ハウジング継手50でもって
図12、
図13に示すように水密に接続する。
【0033】
そのハウジング継手50は、
図13に示すように、半割の円環状カップリング51、51と、その対の半割カップリング51をその両端で締結するボルト・ナット52と、ゴムリング53とからなる。対の半割カップリング51の対向する端部にはL字状締結金具54が設けられており、同図に示すように、その対の半割カップリング51を対向する直管10、10の端部に、その両突条12を挟むようにゴムリング53を介在して宛がい、締結金具54をボルト・ナット52によって締結して、両直管10、10を水密に接続する。このとき、管端部のゴムリング53との当たり面(接触面)には潤滑油を塗布し、その潤滑油にはシリコーングリース又は高粘度のシリコーンオイルを使用する。
【0034】
そのハウジング管10の複数を連続して接続し、非常用設備(消火栓装置)の位置に至れば、
図14に示すように、その位置にT字状分岐管(T字管)40をセットして、その一端をハウジング継手50によってハウジング管10に接続し、そのT字状分岐管40と今まで接続したハウジング管10との間に、そのハウジング管10等を切断し、一端部に突条12を持つ乙切短管20、一端部がK形の受口を持ち他端部に突条12を持つ甲切短管30を接続して一体とした管材を位置してハウジング管10とT字状分岐管40の間に接続する。
このとき、仮に、乙切短管20と甲切短管30の一体管材が管10とT字状分岐管40の間にぴったり嵌らなくても、乙切短管20と甲切短管30とのK形継手及びハウジング継手50は、軸方向の移動許容値:8+20mmで、施工上の精度に余裕があるため、乙切短管20の挿し口の甲切短管30への受口への挿し込み度合いを調整して乙切短管20と甲切短管30の一体管材を直管10とT字状分岐管40の間に確実に嵌めて接続する。
【0035】
T字状分岐管40以降は、上記と同様にしてハウジング管10を接続し、非常用設備Hの位置では字状分岐管40を位置するとともに、乙切短管20、甲切短管30を接続した管材を位置してハウジング管10とT字状分岐管40の間に接続する。
なお、この実施形態においては、T字状分岐管40が配置された後に、乙切短管20、甲切短管30を接続したが、乙切短管20、甲切短管30、T字状分岐管40、ハウジング管10・・の順で接続することもできる。このとき、配管長さ調整は、乙切短管20と甲切短管30のK形継手における挿し口21の挿し込み調整によって行うことができる。
また、上記各実施形態において、一端側を「受口」、他端側を「挿し口」としているが、切断や突起形成に支障がない限り、一端側を「挿し口」、他端側を「受口」とし得ることは勿論である。
【0036】
上記実施形態は、ハウジング管10等の管材をダクタイル鋳造管としたが、ネズミ鋳鉄等の遠心鋳造し得る材料であれば、この発明を採用し得ることは言うまでもない。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0037】
P 送水配管
1、1a,1b 鋳型(金型、モールド)
10、101、102、103、104 ハウジング管
10’、101’、102’、103’、104’ 鋳造管
10a ハウジング管の一端側端部(受口)
10b 同他端部(挿し口)
11、111、112、113、114 直管(直部)
12 突条
12a、12b 突条用リング
13 溝
14 溶接
50 ハウジング継手