(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】高炉用鉱石受金物
(51)【国際特許分類】
C21B 7/20 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
C21B7/20 305
(21)【出願番号】P 2020062056
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(73)【特許権者】
【識別番号】518377126
【氏名又は名称】ジャパンキャステリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】阿部 郁仁
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-041406(JP,A)
【文献】実開昭51-159704(JP,U)
【文献】特開平11-071606(JP,A)
【文献】特開昭62-275992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉(A)の内部上部に取付けられ、上部に吊輪(20)を有する高炉用鉱石受金物(10)であって、その金物本体(10a)上部(12)に
前記吊輪(20)とは異なる吊り下げ用孔(30)を取付け前に前もって形成し
、前記吊輪(20)及び吊り下げ用孔(30)は線状体(7)を介して金物本体(10a)が別々に吊り下げ・吊り上げされる高炉用鉱石受金物。
【請求項2】
上記金物本体(10a)の上部(12)に取付片(25)を設け、この取付片(25)に上記吊輪(20)
の両脚(22)を宛がい、その吊輪(20)
の両脚(22)と取付片(25)とを貫通する抜き差し可能なピン(23)
でもって、前記取付片(25)に吊輪(20)を着脱可能とし、
かつ前記両脚(22)間に吊輪(20)を金物本体(10a)の上部(12)に対し立ち上げた際、金物本体(10a)の上部(12)に接する倒れ防止杆(24)を設けた請求項1に記載の高炉用鉱石受金物。
【請求項3】
上記吊輪(20)が破損した際、上記吊り下げ用孔(30)
に線状体
(7)を通して固定し、その線状体(7)を介して前記鉱石受金物(10)を高炉(A)の内部上部から取り外す請求項1又は2に記載の高炉用鉱石受金物の取外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高炉内上部に設ける鉱石受金物、その鉱石受金物の取外し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄用の高炉においては、炉頂から投入された焼結ペレット、塊状の鉱石、種々の副原料、コークスなどの装入物が炉頂内の装入設備に一時的に貯溜され、炉内の装入物深度に応じて適宜炉内へ装入される。その装入装置の形式には、例えば、ベル方式と旋回式があり、ベル式は複数のベルの開閉によって鉱石等を炉内に装入する(特許文献1 第7図、第8図参照)。旋回式は、旋回シュートを旋回しながら鉱石等を炉内に装入する(特許文献2
図7(C)参照)。
【0003】
この装入時、いずれの装入装置も、炉内に装入物を放射状に分散して投入するため、その分散された装入物は、炉壁耐火物や鉄皮に衝突して摩耗させる。このため、炉内上部内周面には耐熱耐磨耗鋳鋼製や耐熱耐磨耗鋳鉄製の鉱石受金物が20~30枚に分割されて設けられており、装入装置から放射状に投下された装入物は、鉱石受金物に跳ね返って、炉内に装入される(本願
図1参照)。
このように、装入物の装入時には、多量の装入物が鉱石受金物の内周面に衝突するので、その衝突面の損傷は激しく、適当な時期に、鉱石受金物の出し入れ可能な吊り下げ用のマンホールから、炉頂部に架設されたクレーン又はウインチ等を用いて取り換えている。
【0004】
その従来の鉱石受金物10’は、
図6に示すように、耐熱耐磨耗鋳鋼製や耐熱耐磨耗鋳鉄製の長方形の金物本体10a’の表面(下記鉄皮1側)に縦横に複数のリブ11を形成し、上部12を表側に曲げ、その頂部に上チェーン孔14を形成し、上部12の両側頂面には吊輪13を設け、下部表面には下チェーン孔14を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭57-47729号公報
【文献】特開平11-71606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記鉱石受金物10’は、上述のように、装入物の装入時、多量の装入物が表面に衝突してその衝突面の損傷が激しいため、適当な時期に取り換えを行う必要がある。このとき、通常、吊輪13にチェーンを引っかけて吊り上げて行う。
このとき、従来の鉱石受金物10’は、
図7に示すように、ステンレス製の吊輪13を、鉱石受金物10’の鋳込み時に鋳包んで取り付けている。吊輪13を含めた鉱石受金物10’は、高炉内にて、高温に晒されるため、ヒビcが入って折損する場合がある。
この吊輪13が折損した鉱石受金物10’を取り外すためには、高炉内でガウジング等の手段によって鉱石受金物10’にワイヤーあるいはチェーンを通せる孔を開ける等の工事が必要となり、コスト高となっているとともに、その作業が煩雑となっている(難易度が高くなっている)。
【0007】
また、鉱石受金物10’を再利用する場合、吊輪13が折損した鉱石受金物10’には新たな吊輪13を設ける作業が必要となるが、使用後の鉱石受金物10’は構造溶接に適さないため、その作業も大掛かりとない、コスト高となっている。
【0008】
この発明は、以上の実状の下、吊輪が折損した場合の簡単な取外し手段を行い得るようにすることを第1の課題とし、新たな吊輪の取付を容易にすることを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の課題を達成するため、この発明は、高炉の内部上部に取り付けられ、上部に吊輪を有する高炉用鉱石受金物であって、その金物本体上部に吊り下げ用孔を取付け前に前もって形成したのである。
このように、前もって吊り下げ用孔を形成しておけば、吊輪が折損しても、その孔にロープやチェーン等の線状体を通して引っかけることによって、通常と同様な手段によって鉱石受金物を吊り上げて取り換えることができる。
【0010】
上記第2の課題を達成するために、この発明は、上記吊輪を取り換え可能としたのである。取り換え可能であれば、吊輪を取り換えることによって鉱石受金物を再利用することができる。
その取り換え可能な構成としては、上記金物本体の上部に取付片を設け、この取付片に上記吊輪を宛がい、その吊輪と取付片とを貫通する抜き差し可能なピンをでもって、前記取付片に吊輪を着脱可能とした構成などを採用することができる。
この吊輪の着脱可能な構成は、上記吊り下げ用孔を形成しない鉱石受金物においても採用することができる。
【0011】
上記吊り下げ用孔を形成した各鉱石受金物は、その吊り下げ用孔にチェーン、ロープ等の線状体を通して固定し、その線状体を介して高炉の内部上部から取り外すことができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、以上のように、前もって吊り下げ用孔を形成したので、吊輪が折損しても、通常と同様な手段によって鉱石受金物を円滑に吊り上げて取り換えることができる。
また、上記吊輪を取り換え可能としたので、鉱石受金物の再利用が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明に係る鉱石受金物の一実施形態の切断側面図
【
図3】同実施形態の吊輪部を示し、(a)は吊輪の正面図、(b)は切断側面図
【
図6】従来の鉱石受金物を示し、(a)は切断側面図、(b)同正面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係る鉱石受金物10は、
図1に示すように、従来と同様に、製鉄用の高炉Aの上部内周面に設けられるものである。その高炉Aは、外側を厚鋼板からなる鉄皮1で覆い、内側を厚く耐火煉瓦2で内張りした構造で、炉頂から投入された焼結ペレット、塊状の鉱石、種々の副原料、コークスなどの装入物が炉頂内の装入設備に一時的に貯溜され、ベル方式又は旋回式の装入装置によって炉内の装入物深度に応じて適宜炉内へ装入される。
図1中、3は不定形耐火物層である。
【0015】
鉱石受金物10は、
図1、
図2に示すように、従来と同様に、耐熱耐磨耗鋳鋼製や耐熱耐磨耗鋳鉄製の長方形の金物本体10aの表面(鉄皮1側)に縦横に複数のリブ11を形成し、上部12を表側に曲げ、その頂部にチェーン孔14を形成している。また、鉱石受金物10は、その金物本体10aの上部12の両側頂面には吊輪20を設け、下部表面にもチェーン孔14を設けている。各チェーン孔14、14にチェーン15、15を引っかけて炉外(鉄皮1外)に導いて締結具16で締結して鉱石受金物10を高炉Aの上部内周面に設ける。図中、17は取付爪であって、
図1鎖線に示すように、水冷金物8を設ける場合に使用する。
【0016】
鉱石受金物10の以上の構成は従来と同様であり、この発明に係る実施形態の特徴は、上記金物本体10a上部12の幅方向の中央に吊り下げ用孔30を形成した点と、上記吊輪20を着脱可能とした点である。
吊り下げ用孔30の位置及び大きさは、鉱石受金物10を後述のワイヤー7で円滑に吊り上げ得るとともに強度劣化を招かないように実験等によって適宜に設定する。この吊り下げ用孔30の数は一つで十分であるが、必要であれば、2以上と任意であり、その際、等間隔が好ましい。
吊輪20は、ステンレス製であって、下方が欠如した円環状の本体21と、その欠如端から下方に延びる脚22、22と、その両脚22の下部間を貫通したボルト・ナット23と、同両脚22の上部間に固定した倒れ防止杆24と、からなる(
図3参照)。
この吊輪20は、
図2、
図3(b)に示すように、金物本体10aの上部12から突出した取付片25の取付孔26にボルト・ナット(ピン)23を貫通させることによって金物本体10aに取り付ける。このとき、倒れ防止杆24が金物本体上部12の上面に接して吊輪20の起立状態を維持する。
【0017】
この実施形態の鉱石受金物10は以上の構成であり、つぎに、その鉱石受金物10の高炉A上部への取付及び取外しについて説明する。
【0018】
鉱石受金物10の高炉A上部への取付は、まず、高炉A外において、
図4Aに示すように、鉱石受金物10の上下のチェーン孔14、14にチェーン15、15を引っかける。つぎに、
図4Bに示すように、高炉A上部のクレーン等のフック4を吊輪20に引っかけ、
図4Cに示すように、高炉内上部の取付位置に鉱石受金物10を位置させた後、上下のチェーン15、15を鉄皮1の取付孔(透孔)5に導いて締結具16で締結して鉱石受金物10を高炉Aの上部内周面に設ける。
その後、
図4Dに示すように、フック4を吊輪20から外し退去させて、鉱石受金物10の取付けを完了する。取付孔5の位置及び数は、鉱石受金物10を円滑に取り付け得るように適宜に設定し、例えば、この実施形態においては、一枚の鉱石受金物10に対して上:2個所、下:1個所の計3か所に設けている。
【0019】
鉱石受金物10の高炉A上部からの取外しは、鉱石受金物10が磨耗などによって交換時期になって、吊輪20の折損が認められず、十分な吊り上げ強度を有すれば、
図4Cに示すように、フック4で鉱石受金物10を吊輪20を介し吊り上げて取り外す。
一方、吊輪20が折損等によって十分な吊り上げ強度を有しないと認められる場合、
図5Aに示すように、鉄皮1の取付孔5の一つから鍵付き棒6を炉内に差し入れ、フック4に吊り下げられているワイヤー7をその鍵付き棒6でつかむ。その状態で、
図5Bに示すように、吊り下げ用孔30にワイヤー7を宛がってその先端を通し、
図5Cに示すように、そのワイヤー7の先端をつかみ直してフック4に引っかける。この状態で、上記と同様に、フック4で鉱石受金物10を吊り上げて取り外す(
図4C参照)。
【0020】
上記取外した鉱石受金物10を再生せずに新しいものに交換する場合はその新しい鉱石受金物10を上記取付手順によって高炉A上部内面に取付ける。
また、取外した鉱石受金物10を磨耗部分を硬化肉盛り等して再利用する場合、吊輪20に折損等の支障が無い場合は、そのまま、上記と同様に、古い吊輪20でもって鉱石受金物10を吊り下げて高炉A上部内面に取り付ける。
一方、吊輪20に折損等の支障がある場合は、支障のある吊輪20のボルト・ナット23を引き抜いて吊輪本体21を新しいものに取り換えてボルト・ナット23で鉱石受金物10に取り付ける。この後、上記と同様に、新しい吊輪20でもって鉱石受金物10を吊り下げて高炉A上部内面に取り付ける。
【0021】
上記鉱石受金物10の取付・取外しの手順は一例であって、他の手段を採用し得ることは勿論である。
また、吊輪20の取り換え構造も上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。さらに、この実施形態においても、特許文献2等に記載の保護プレートを付設することができる。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0022】
A 高炉
1 鉄皮
2 耐火煉瓦
3 不定形耐火物
4 フック
5 チェーン取付孔
6 鍵付き棒
7 ワイヤー
10、10’ 鉱石受金物
10a、10a’ 鉱石受金物本体
11 鉱石受金物のリブ
12 鉱石受金物上部
13 従来の吊輪
14 チェーン用孔
15 チェーン
16 締結具
20 吊輪
21 吊輪本体
22 吊輪の脚
23 ボルト・ナット
24 倒れ防止杆
25 吊輪取付片
30 吊り下げ用孔