(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】データ収集装置
(51)【国際特許分類】
G01M 13/04 20190101AFI20240712BHJP
F16C 19/54 20060101ALI20240712BHJP
F16C 35/12 20060101ALI20240712BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20240712BHJP
F16C 19/52 20060101ALI20240712BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20240712BHJP
F16C 37/00 20060101ALI20240712BHJP
B23B 19/02 20060101ALI20240712BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
G01M13/04
F16C19/54
F16C35/12
F16C19/06
F16C19/52
F16C41/00
F16C37/00 B
B23B19/02 A
B23Q17/00 A
(21)【出願番号】P 2020100814
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019129900
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 翔平
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/100757(WO,A1)
【文献】特開2017-187451(JP,A)
【文献】特開2010-149244(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114129(WO,A1)
【文献】特開2003-056584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/04
F16C 19/54
F16C 35/12
F16C 19/06
F16C 19/52
F16C 41/00
F16C 37/00
B23B 19/02
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械装置のデータを収集するデータ収集装置であって、
前記機械装置の状態を検出するセンサの検出結果が入力される入力部と、
前記入力部に入力される前記センサの検出結果を所定のサンプリング周期で収集して記憶するように構成された制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記入力部に入力される前記センサの検出結果に応じて前記サンプリング周期を変更し、
前記機械装置は、内輪および外輪を含む軸受を有する軸受装置を含み、
前記センサは、前記軸受または前記軸受の近傍の熱流をゼーベック効果を利用して検出する第1センサを含み、
前記制御装置は、
第1周期で収集した前記センサの検出結果の大きさおよび変化率の少なくとも一方が対応する切替しきい値よりも大きい場合に、前記サンプリング周期を前記第1周期よりも短い第2周期に変更して前記第2周期で前記センサの検出結果を収集し、
前記第2周期で収集した前記第1センサの検出結果の大きさおよび変化率の少なくとも一方が対応する判定しきい値よりも大きい場合に、前記軸受の異常の予兆があると判定する、データ収集装置。
【請求項2】
前記センサは、前記第1センサに加えて、前記軸受の予圧および外部からの荷重を検出する荷重センサを含み、
前記制御装置は、第1周期で収集した前記第1センサまたは前記荷重センサの検出結果の大きさおよび変化率の少なくとも一方が対応する切替しきい値よりも大きい場合に、前記サンプリング周期を前記第1周期よりも短い第2周期に変更して前記第2周期で前記第1センサおよび前記荷重センサの検出結果を収集する、請求項1に記載のデータ収集装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記軸受の異常の予兆があると判定された場合に、前記軸受装置の損傷を防止するための処理を行なう、請求項1に記載のデータ収集装置。
【請求項4】
前記軸受装置の損傷を防止するための処理は、前記内輪または前記外輪の回転を停止させる処理、前記内輪または前記外輪の回転速度を減少させる処理、前記軸受装置を冷却する処理の少なくともいずれかを含む、請求項3に記載のデータ収集装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第2周期で収集した前記第1センサまたは前記荷重センサの検出結果の大きさおよび変化率の少なくとも一方が前記対応する切替しきい値よりも小さい場合に、前記サンプリング周期を前記第2周期から前記第1周期に戻す、請求項
2に記載のデータ収集装置。
【請求項6】
前記センサは、前記第1センサに加えて、前記荷重センサ、および前記内輪または前記外輪の回転速度を検出する回転速度センサの少なくとも一方を含み、
前記制御装置は、第1周期で収集した前記荷重センサおよび前記回転速度センサの少なくとも一方の検出結果が対応する切替しきい値を超えた場合に、前記サンプリング周期を前記第1周期よりも短い第2周期に変更して前記第2周期で前記第1センサの検出結果を収集する、請求項2に記載のデータ収集装置。
【請求項7】
前記軸受装置は、工作機械の主軸を回転自在に支持する、請求項1~6のいずれかに記載のデータ収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受装置などの機械装置のデータを収集するデータ収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械主軸用軸受は、高速かつ低荷重で使用されることが多く、その軸受にはアンギュラ玉軸受が広く使用される。工作機械主軸用軸受は、エアオイル(オイルミスト)潤滑またはグリース潤滑によって潤滑される。エアオイル潤滑は、潤滑油を外部から供給するので、長期に渡り安定した潤滑状態を保つことができるという特徴がある。一方、グリース潤滑は、付帯設備および配管を必要としないことから経済性に優れ、ミストの発生が極めて少ないことで、環境に優しいという特徴がある。
【0003】
工作機械の中でもマシニングセンタの主軸など、より高速な領域、たとえば、内輪内径に回転数を乗じたdn値で100万以上の領域で使用される軸受は、より安定した運転が必要である。しかし、以下に記載の様々な原因で軸受軌道面の面荒、ピーリング、保持器の異常などが生じると、軸受が過度に昇温して軸受の焼損に至ることが懸念される。
・エアオイル潤滑における潤滑油の給排油の不適(油量過小、過多、排気不良)
・軸受内部に封入された潤滑グリースの劣化
・軸受転がり部へのクーラントまたは水の浸入、あるいは異物の侵入
・過大な予圧、つまり転がり部の接触面圧の増大による油膜切れ
上記による軸受の焼損を防止すべく、軸受に隣接した間座に潤滑給油ポンプと非接触式の温度センサを内蔵し、温度センサによる軸受潤滑部の温度測定値に応じて、潤滑給油ポンプにて軸受内部に潤滑油を給油する技術が特開2017-26078号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸受焼損時は、通常の運転時に比べ、瞬間的かつ急激な温度上昇を伴うことが多い。したがって、軸受焼損を含む軸受の異常を防止する(軸受のダメージを最小限に抑える)ためには、軸受の状態を検出するセンサ(たとえば熱流センサ、回転速度センサなど)の出力を高い周波数で収集および記憶して、軸受の状態変化を短周期で細かく監視しておくことが望ましい。しかしながら、センサの出力を高い周波数で収集および記憶する処理を常時行なうと、データの収集量が膨大となり大容量の記録計など付帯設備の導入が必要である。また、不要なデータも膨大となり、データの確認や整理に時間を要する。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、データの収集量を極力抑えつつ、軸受などの機械装置の異常あるいは異常の予兆を精度よく検出することを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本開示によるデータ収集装置は、機械装置のデータを収集する。このデータ収集装置は、機械装置の状態を検出するセンサの検出結果が入力される入力部と、入力部に入力されるセンサの検出結果を所定のサンプリング周期で収集して記憶するように構成された制御装置とを備える。制御装置は、入力部に入力されるセンサの検出結果に応じてサンプリング周期を変更する。
【0008】
(2) ある形態においては、機械装置は、内輪および外輪を含む軸受を有する軸受装置を含む。センサは、軸受または軸受の近傍の熱流束を検出する熱流センサまたは軸受の予圧および外部からの荷重を検出する荷重センサを含む。制御装置は、熱流センサまたは荷重センサの検出結果に応じてサンプリング周期を変更する。
【0009】
(3) ある形態においては、制御装置は、第1周期で収集した熱流センサまたは荷重センサの検出結果の大きさおよび変化率の少なくとも一方が対応する切替しきい値よりも大きい場合に、サンプリング周期を第1周期よりも短い第2周期に変更して第2周期で熱流センサまたは荷重センサの検出結果を収集する。
【0010】
(4) ある形態においては、制御装置は、第2周期で収集した熱流センサまたは荷重センサの検出結果の大きさおよび変化率の少なくとも一方が対応する判定しきい値よりも大きい場合に、軸受装置の損傷を防止するための処理を行なう。
【0011】
(5) ある形態においては、軸受装置の損傷を防止するための処理は、内輪または外輪の回転を停止させる処理、内輪または外輪の回転速度を減少させる処理、軸受装置を冷却する処理の少なくともいずれかを含む。
【0012】
(6) ある形態においては、制御装置は、第2周期で収集した熱流センサまたは荷重センサの検出結果の大きさおよび変化率の少なくとも一方が対応する切替しきい値よりも小さい場合に、サンプリング周期を第2周期から第1周期に戻す。
【0013】
(7) ある形態においては、センサは、熱流センサに加えて、荷重センサ、および内輪または外輪の回転速度を検出する回転速度センサの少なくとも一方を含む。制御装置は、第1周期で収集した荷重センサおよび回転速度センサの少なくとも一方の検出結果が対応する切替しきい値を超えた場合に、サンプリング周期を第1周期よりも短い第2周期に変更して第2周期で熱流センサの検出結果を収集する。
【0014】
(8) ある形態においては、センサは、荷重センサに加えて、熱流センサ、および内輪または外輪の回転速度を検出する回転速度センサの少なくとも一方を含む。制御装置は、第1周期で収集した熱流センサおよび回転速度センサの少なくとも一方の検出結果が対応する切替しきい値を超えた場合に、サンプリング周期を第1周期よりも短い第2周期に変更して第2周期で荷重センサの検出結果を収集する。
【0015】
(9) ある形態においては、制御装置は、第2周期で収集した熱流センサまたは荷重センサの検出結果の大きさおよび変化率の少なくとも一方が対応する判定しきい値よりも大きい場合に、軸受装置の損傷を防止するための処理を行なう。
【0016】
(10) ある形態においては、軸受装置の損傷を防止するための処理は、内輪または外輪の回転を停止させる処理、内輪または外輪の回転速度を減少させる処理、軸受装置を冷却する処理の少なくともいずれかを含む。
【0017】
(11) ある形態においては、制御装置は、第2周期で熱流センサの検出結果、および荷重センサおよび回転速度センサの少なくとも一方の検出結果を収集し、第2周期で収集した荷重センサおよび回転速度センサの少なくとも一方の検出結果が対応する切替しきい値よりも小さい場合に、サンプリング周期を第2周期から第1周期に戻す。
【0018】
(12) ある形態においては、軸受装置は、工作機械の主軸を回転自在に支持する。
【発明の効果】
【0019】
この構成によると、入力部に入力されるセンサの検出結果に応じて、センサの検出結果を収集するサンプリング周期が変更される。そのため、たとえばセンサの検出結果が通常時の値である場合にはサンプリング周期を相対的に低い第1周期としておき、センサの検出結果が異常の予兆が発生しそうな値である場合にはサンプリング周期を第1周期よりも短い第2周期に切り替えることができる。その結果、データの収集量を極力抑えつつ、軸受などの機械装置の異常あるいは異常の予兆を精度よく検出することを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】スピンドル装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】データ収集装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】加減速試験によって得られた熱流束、温度、回転速度の関係を示す図である。
【
図4】
図3のt1~t2に示す部分の横軸を拡大した図である。
【
図5】軸受異常の再現試験における熱流束、温度、回転速度の関係の一例を示す図である。
【
図6】軸受装置の動作を説明するための波形図である。
【
図7】制御装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その1)である。
【
図8】サンプリング周波数(サンプリング周期)、熱流束Qの大きさ、熱流束の変化率Dの関係の一例を示す図である。
【
図9】制御装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その2)である。
【
図10】サンプリング周波数(サンプリング周期)、熱流束Qの関係の一例を示す図である。
【
図11】制御装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その3)である。
【
図12】サンプリング周波数(サンプリング周期)、回転速度N、熱流束の変化率Dの関係の一例を示す図である。
【
図13】制御装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その4)である。
【
図14】サンプリング周波数(サンプリング周期)、荷重L、熱流束の変化率Dの関係の一例を示す図である。
【
図15】熱流センサの配置の変形例を示す図である。
【
図16】熱流センサの配置の他の変形例を示す図(その1)である。
【
図17】熱流センサの配置の他の変形例を示す図(その2)である。
【
図19】荷重センサの配置の他の一例を示す図である。
【
図20】軸受異常の再現試験における荷重、温度、回転速度の関係の一例を示す図である。
【
図21】軸受異常の再現試験における荷重、荷重変化率、回転速度の関係の一例を示す図である。
【
図22】制御装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その5)である。
【
図23】サンプリング周波数(サンプリング周期)、荷重L、荷重Lの変化率の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0022】
図1は、本実施の形態によるデータ収集装置50(
図2参照)の測定対象となるスピンドル装置1の概略構成を示す断面図である。
【0023】
図1に示すスピンドル装置1は、たとえば、工作機械のビルトインモータ方式のスピンドル装置として使用される。この場合、工作機械主軸用のスピンドル装置1で支持されている主軸4の一端側には図示しないモータが組み込まれ、他端側には図示しないエンドミル等の切削工具が接続される。
【0024】
スピンドル装置1は、軸受装置30を備える。軸受装置30は、2つの軸受5a,5bを含む軸受5と、軸受5a,5bに隣接して配置される間座6と、熱流センサ11a,11bとを備える。主軸4は、外筒2の内径部に埋設されたハウジング3に設けた複数の軸受5a,5bによって回転自在に支持される。軸受5aは、内輪5iaと、外輪5gaと、転動体Taと、保持器Rtaとを含む。軸受5bは、内輪5ibと、外輪5gbと、転動体Tbと、保持器Rtbとを含む。間座6は、内輪間座6iと、外輪間座6gとを含む。
【0025】
主軸4には、軸方向に離隔した軸受5aの内輪5iaおよび軸受5bの内輪5ibが締まり嵌め状態(圧入状態)で嵌合されている。内輪5ia-5ib間には内輪間座6iが配置され、外輪5ga-5gb間には外輪間座6gが配置される。
【0026】
軸受5aは、内輪5iaと外輪5gaの間に複数の転動体Taを配置した転がり軸受である。これら転動体Taは、保持器Rtaによって間隔が保持されている。軸受5bは、内輪5ibと外輪5gbの間に複数の転動体Tbを配置した転がり軸受である。これら転動体Tbは、保持器Rtbによって間隔が保持されている。
【0027】
軸受5a,5bは、アンギュラ玉軸受、深溝玉軸受、またはテーパころ軸受等を用いることができる。
図1に示す軸受装置30にはアンギュラ玉軸受が用いられ、2個の軸受5a,5bが背面組み合わせ(DB組み合わせ)で設置されている。なお、軸受の配列は背面組み合わせに限定されるものではなく、たとえば正面組合せであってもよい。
【0028】
ここでは、2つの軸受5a,5bで主軸4を支持する構造を例示して説明するが、2つ以上の軸受で主軸4を支持する構造であってもよい。
【0029】
ハウジング3には冷却媒体流路が形成される。ハウジング3と外筒2との間に冷却媒体を流すことにより、軸受5a,5bを冷却することができる。
【0030】
なお、軸受5a,5bの冷却および潤滑のために、潤滑油を軸受5a,5bに噴射するための潤滑油供給路が、たとえば外輪間座6gに設けられてもよい。また、冷却用エアを内輪間座6iの外径面に向けて吐出するためのノズルが、外輪間座6gに設けられてもよい。
【0031】
軸受装置30には、熱流束を測定する熱流センサ11a,11bが設けられる。熱流センサ11a,11bは、外輪間座6gの内径面6gAに固定され、内輪間座6iの外径面6iAに対向する。なお、熱流束は、単位時間あたりに単位面積を通過する熱量である。
【0032】
熱流センサ11a,11bの各々は、ゼーベック効果を利用して熱流を電気信号に変換するセンサであり、センサ表裏のわずかな温度差から出力電圧が発生する。熱流センサ11a,11bは、非接触式温度センサまたは熱電対などの温度センサに比べ、軸受内部の熱の変化に対する感度が良く、軸受内部の熱の変化にタイムリーに追従する。
【0033】
熱流センサ11aは、外輪間座6gの内径面6gAにおける軸方向(主軸4の回転軸に沿う方向)の軸受5a側の端部に配置される。熱流センサ11bは、外輪間座6gの内径面6gAにおける軸方向の軸受5b側の端部に配置される。このように、外輪間座6gにおける軸受5a,5b近傍に熱流センサ11a,11bがそれぞれ設置されるため、熱流センサ11a,11bは軸受5a,5bの内外輪間に流れる熱の熱流束を直接的に検出し得る。
【0034】
なお、熱流センサ11a,11bを、外輪間座6gの内径面6gAにおける軸方向の中央部分付近に設置することも可能である。このような配置においても、軸受5a,5bの内外輪間に流れる熱の熱流束を間接的に検出することができる。
【0035】
軸受5a,5bの焼き付き(焼損)等の異常の予兆を検出するのに、仮に内輪5ia,5ib、外輪5ga,5gb、間座6等の温度を測定して検出しようとすると、急激な発熱が生じたとしても温度が上昇するまでには遅れがあるため、異常の予兆を早期に検出できないことも想定される。
【0036】
これに対し、本実施の形態においては、熱流センサ11a,11bの出力を用いて、軸受5a,5bの異常の予兆を検出する。熱流センサ11a,11bの出力を利用すれば、温度と比べて熱流は早期に変化し始めるため、急激な発熱を迅速に検出することが可能である。
【0037】
さらに、外輪間座6gの軸方向の軸受5a側の端面には、温度センサ56aおよび振動センサ57aが配置される。外輪間座6gの軸方向の軸受5b側の端面には、温度センサ56bおよび振動センサ57bが配置される。
【0038】
熱流センサ11a,11b、温度センサ56a,56b、および振動センサ57a,57bなどの各センサには、後述するデータ収集装置50(
図2参照)に接続され、検出結果をデータ収集装置50に送る。
【0039】
図2は、本実施の形態によるデータ収集装置50の構成の一例を示すブロック図である。データ収集装置50は、軸受装置30に設けられる各センサの検出結果を示すデータを収集する。なお、本実施の形態ではデータ収集装置50を軸受装置30に適用する例を示すが、本開示によるデータ収集装置は軸受装置以外の機械装置にも適用可能である。
【0040】
データ収集装置50は、入力部51と、制御装置52と、出力部55とを含む。入力部51は、熱流センサ11a,11b、温度センサ56a,56b、振動センサ57a,57b、回転センサ58、荷重センサ59に接続される。入力部51には、各センサの検出結果が入力される。
【0041】
回転センサ58は、主軸4の回転速度Nを検出する。なお、回転センサ58は、軸受装置30の内部に設けられてもよいし、軸受装置30の外部に設けられてもよい。
【0042】
荷重センサ59は、軸受5の予圧および外部からの荷重を検出するように、たとえば軸受と間座との間の隙間に設置される。たとえば工作機器機械の場合には、加工対象によって外部から受ける力の変動や高速運転による発熱、遠心力によって、軸受5に加わる予圧も変動する。予圧が増加すると油膜切れによる摩擦力によって発熱量が増加し得る。したがって、予圧の増加を荷重センサ59によって検出した場合に軸受5a,5bの異常の予兆があると判定することも有効である。
【0043】
制御装置52は、CPU(Central Processing Unit)53およびメモリ(記憶装置)54を含み、軸受5a,5bのデータを収集および記憶する制御、軸受5a,5bの異常の予兆を検出する制御、軸受5a,5bを冷却する制御等の各種制御を実行する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0044】
制御装置52は、入力部51に入力される各センサの出力(検出結果)を所定のサンプリング周期で収集してメモリ54に記憶するように構成される。制御装置52は、メモリ54に記憶される各センサの検出結果を用いて、軸受5a,5bの焼き付き等の異常の予兆の有無を判定する。異常の予兆があると判定された場合、制御装置52は、軸受5a,5bの焼き付き等による損傷を防止するための処理(以下、単に「損傷防止処理」ともいう)を実行する。なお、損傷防止処理には、主軸4の回転を停止させる処理、主軸4の回転速度を減少させる処理、軸受装置30を冷却する処理の少なくともいずれかが含まれる。また、損傷防止処理に、警報ランプを点灯させる等で異常を報知する処理が含まれてもよい。
【0045】
<加減速試験について>
本出願人は、工作機械主軸スピンドルを模した試験機に実施形態に係る軸受装置を組込み、主軸4の回転速度を加速および減速したときの熱流束、温度、回転速度の関係を評価する加減速試験を行なった。
【0046】
図3は、加減速試験によって得られた熱流束、温度、回転速度の関係を示す図である。
図4は、
図3のt1~t2に示す部分の横軸を拡大した図である。なお、
図3、
図4およびその他の図に示される数値は、あくまで一例であってこの数値に限定されるものではない。以降に説明する図に示される数値についても同様である。
【0047】
図3に示すように、熱流センサの出力(熱流)は、温度センサの出力(軸受温度)よりも回転速度の加減速に対する応答性が良く、軸受の異常の予兆検出の精度を高め得る。熱流センサの出力の増減開始のタイミングは、回転速度の増減開始のタイミングに略同期している。
【0048】
<軸受異常時の再現試験>
本出願人は、転がり軸受に異常が生じる際の予兆検出を試みるため、軸受異常時の再現試験を実施した。本再現試験では、主軸組立時にのみごく少量の潤滑油を転がり軸受に注入することで、試験軸受に潤滑油切れによる異常が発生しやすい状況を作り出した。また、試験軸受の異常に伴って駆動用のモータが過負荷になると、リミッターが作動し、試験機が自動停止するよう設定した。
【0049】
図5は、潤滑油切れによる軸受異常の再現試験における熱流束、温度、回転速度の関係の一例を示す図である。横軸は運転時間(秒)である。上欄には、熱流束Q、内輪温度T(i)、外輪温度T(g)、ハウジング温度T(h)が示され、下欄には回転速度N(毎分の回転数)が示される。
【0050】
熱容量と放熱の関係から、内輪温度T(i)>外輪温度T(g)>ハウジング温度T(h)が成立している。
【0051】
駆動用のモータの過負荷が検出された時刻525(秒)過ぎから、回転速度Nが低下を開始している。時刻525(秒)より前では、各温度はほとんど変化しておらず、温度で異常の予兆を検出するのは困難であることがわかる。試験結果より、熱流束Qは、内輪温度T(i)等よりも早い段階から出力値の上昇が認められており、転がり軸受に異常が生じる際の予兆を早期に検出する際に有効と考えられる。
【0052】
図6は、本実施の形態による軸受装置30の動作を説明するための波形図である。
図6では、
図5に示した再現実験の波形に、上述の損傷防止処理が行なわれた場合の波形を重ねて示している。なお、
図6においては、損傷防止処理として、軸受装置30を冷却する処理が行なわれた例が示されている。
【0053】
図6の横軸は運転時間(秒)である。上欄には、熱流束Q、および熱流束の変化率Dが示され、損傷防止処理(軸受装置30の冷却)が行なわれた場合の熱流束QXおよび変化率DXが重ねて示されている。下欄には回転速度N(毎分の回転数)が示される。
【0054】
損傷防止処理が行なわれない場合、時刻525(秒)を過ぎると、軸受の損傷によってモータが過負荷を検出して回転速度Nが低下していく。
【0055】
軸受の損傷を避けるためには、時刻525(秒)より以前に、異常の予兆を検出して損傷防止処理を行なうことが望ましい。温度の上昇は
図5に示したように、時刻525(秒)よりも後であるので、温度の上昇に基づいて損傷防止処理を行なったのでは手遅れである。これに対して熱流センサの検出する熱流束Qは、時刻523(秒)くらいから上昇する。したがって、熱流センサの出力の上昇を検出して損傷防止処理を開始することが好ましい。熱流センサの出力の上昇を判定するしきい値Qthは、定常状態におけるノイズを考慮してマージンを設けて設定する必要がある。しかし、わずかな上昇に対してしきい値Qthを決めるのは、軸受をセットする機械の個体差、ユーザの運転条件などが様々では非常に難しい。
【0056】
これに対して、熱流束Qの変化率D(単位時間当たりの変化量)を計算するとより早期に軸受損傷の予兆を見つけられることが発明者らの実験によりわかった。変化率Dについては、軸受をセットする機械の個体差、ユーザの運転条件などが違っていても、比較的一律にしきい値を決めても実用に供することができることもわかった。したがって、より好ましくは、熱流束Q(熱流センサの出力)の変化率Dがしきい値Dthを超えた場合に損傷防止処理を開始するのがよい。
【0057】
変化率Dは、熱流センサで検出した熱流束Qを時間微分によって算出したパラメータである。熱流束Qを時間微分したパラメータを用いることで、瞬間かつ急激な発熱を精度良く検出することが可能となる。
【0058】
熱流束Qがしきい値Qthを超えた時点(525秒ごろ)、または、熱流束の変化率Dがしきい値Dthを超えた時点(524秒ごろ)において、異常の予兆を検出して損傷防止処理を開始すれば、軸受は損傷を受けない。その結果、
図6の波形では、モータに制限がかかることなく時刻525(秒)を経過した後にも回転速度NXに示すように定常運転を継続することができる。
【0059】
以上の結果に鑑み、本実施の形態による制御装置52は、熱流センサ11a,11bによって検出された熱流束Qの大きさあるいは熱流束Qの変化率Dが対応する判定しきい値(しきい値Qthあるいはしきい値Dth)を超えた場合に、軸受5a,5bの異常(焼き付き等)の予兆があると判定して、損傷防止処理を行なう。これにより、軸受5a,5bの損傷防止および寿命延長が実現される。
【0060】
<センサ出力のサンプリング周期の切替>
上述したように、軸受の焼損時は、通常の運転時に比べ、瞬間的かつ急激な温度上昇を伴う。したがって、軸受5a,5bの焼損を防止する(軸受5a,5bのダメージを最小限に抑える)ためには、熱流センサ11a,11bの出力を高い周波数で収集および記憶して、軸受5a,5bの状態変化を短い周期で細かく監視しておくことが望ましい。しかしながら、熱流センサ11a,11bセンサの出力を高い周波数で収集および記憶する処理を常時行なうと、データの収集量が膨大となり大容量の記録計など付帯設備の導入が必要である。また、不要なデータも膨大となり、データの確認や整理に時間を要する。
【0061】
そこで、本実施の形態による制御装置52は、熱流センサ11a,11bの検出結果に応じて熱流センサ11a,11bの出力(熱流束Q)を収集するサンプリング周期を変更することによって、データの収集量を極力抑えつつ軸受5a,5bの異常(焼損等)の予兆を精度よく検出する。
【0062】
図7は、制御装置52が実行する制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図7においては、熱流束Qの大きさ(絶対値)をパラメータとしてサンプリング周期を切り替えるか否かを判定し、熱流束Qの変化率Dをパラメータとして異常の予兆の有無を判定する例が示される。なお、本実施の形態においては、2つの熱流センサ11a,11bが設けられるため、上記の各判定に用いられる熱流束Qは、たとえば、熱流センサ11aの出力と熱流センサ11bの出力とのうちの大きい方とすることができる。
【0063】
まず、制御装置52は、サンプリング周期を第1周期T1(たとえば1秒)に設定する(ステップS10)。この第1周期T1は、軸受5a,5bの異常および異常の予兆が生じてない通常時のサンプリング周期である。
【0064】
次いで、制御装置52は、ステップS10で設定された第1周期T1で熱流センサ11a,11bの出力(熱流束Q)を収集する(ステップS12)。なお、第1周期T1で収集された熱流束Qはメモリ54に記憶される。
【0065】
次いで、制御装置52は、ステップS12で収集された熱流束Qの大きさ(絶対値)が切替しきい値THsよりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。この判定は、軸受5a,5bの異常の予兆を精度よく検出するために、サンプリング周期を第1周期T1よりも短い第2周期T2(たとえば1ミリ秒)に切り替えるか否かを決めるための処理である。言い換えれば、この判定は、熱流束Qの大きさ(絶対値)が通常時の値であるのか異常の予兆が発生しそうな値であるか否かを切替しきい値THsを用いて切り分ける処理である。したがって、切替しきい値THsは、軸受5a,5bの異常の予兆が発生しそうな値、たとえば
図6に示したしきい値Qthよりも僅かに小さい値に設定することができる。
【0066】
熱流束Qの大きさが切替しきい値THsよりも小さい場合(ステップS14においてNO)、制御装置52は、処理をステップS10に戻し、サンプリング周期を第1周期T1に維持する。
【0067】
一方、熱流束Qの大きさが切替しきい値THsよりも大きい場合(ステップS14においてYES)、制御装置52は、サンプリング周期を第1周期T1よりも短い第2周期T2(たとえば1ミリ秒)に設定する(ステップS16)。これにより、現在のサンプリング周期が第1周期T1である場合には、サンプリング周期が第1周期T1から第1周期T1よりも短い第2周期T2に切り替えられる。
【0068】
次いで、制御装置52は、ステップS16で設定された第2周期T2で熱流センサ11a,11bの出力(熱流束Q)を収集してメモリ54に記憶する(ステップS18)。
【0069】
次いで、制御装置52は、熱流センサ11a,11bの出力(熱流束Q)を第2周期T2で収集する(ステップS18)。なお、第2周期T2で収集された熱流束Qはメモリ54に記憶される。
【0070】
次いで、制御装置52は、第2周期T2で収集された熱流束Qの変化率Dが判定しきい値THdを超えたか否かを判定する(ステップS20)。この判定は、軸受5a,5bの異常の予兆の有無を判定する(異常の予兆を検出する)ための処理である。熱流束Qの変化率Dは、たとえば、メモリ54に記憶された前回の熱流束Qと今回の熱流束Qの差を時間差で除算して得ることができる。
【0071】
本実施の形態のように、熱流束Qの変化率Dをパラメータとして異常の予兆の有無を判定する場合、判定しきい値THdは、たとえば
図6に示したしきい値Dthに設定することができる。
【0072】
また、たとえば、
図4において時刻t1~t2の間に変化した熱流束Q1~Q2を基準として、判定しきい値THdを以下の式(1)に従って決定してもよい。
【0073】
THd=M×(Q2-Q1)/(t2-t1) …(1)
式(1)において、「M」は、安全係数である。上式の安全係数Mは、工作機械の主軸毎で異なるため、M=1、M=100など、様々なケースがある。
【0074】
熱流束Qの変化率Dについては、軸受異常発生時の値のほうが、回転速度Nの増加時の値よりもはるかに大きい値となることがわかっているので、回転速度Nの変化にかかわらず一律のしきい値Dthを使用することができる。
【0075】
熱流束Qの変化率Dが判定しきい値THdを超えた場合(ステップS20においてYES)、制御装置52は、異常の予兆があると判定し(ステップS22)、損傷防止処理を行なう(ステップS24)。上述したように、損傷防止処理には、たとえば、主軸4の回転を停止させる処理、主軸4の回転速度を減少させる処理、軸受装置30を冷却する処理の少なくともいずれかが含まれる。
【0076】
一方、熱流束Qの変化率Dが判定しきい値THdを超えていない場合(ステップS20においてNO)、制御装置52は、異常の予兆なしと判定する(ステップS26)。
【0077】
その後、制御装置52は、第2周期T2で収集された熱流束Qの大きさが切替しきい値THs未満であるか否かを判定する(ステップS28)。この判定は、サンプリング周期を第2周期T2(たとえば1ミリ秒)から第1周期T1(たとえば1秒)に戻すか否かを決めるための処理である。熱流束Qの大きさが切替しきい値THsよりも大きい場合(ステップS28においてNO)、制御装置52は、処理をステップS16に戻し、サンプリング周期を第2周期T1に維持してステップS16以降の処理を繰り返す。一方、熱流束Qの大きさが切替しきい値THs未満である場合(ステップS28においてYES)、制御装置52は、処理をステップS10に戻し、サンプリング周期を第2周期T1から第1周期T1に戻してステップS10以降の処理を繰り返す。
【0078】
図8は、本実施の形態におけるサンプリング周波数(サンプリング周期)、熱流束Qの大きさ(絶対値)、熱流束の変化率Dの関係の一例を示す図である。横軸は運転時間(秒)である。上欄にはサンプリング周波数(サンプリング周期)が示され、中欄には熱流束Q(絶対値)が示され、下欄には熱流束の変化率Dが示される。なお、
図8には、第1周期T1が1秒(1s)であり、第2周期T2が1ミリ秒(1ms)である例が示される。第1周期T1(1s)に対応するサンプリング周波数は1Hzであり、第2周期T2(1ms)に対応するサンプリング周波数は1kHzである。
【0079】
時刻100(秒)以前は、熱流束Q(絶対値)が切替しきい値THs未満である。この場合には、軸受5a,5bの異常の予兆が発生しそうな状況ではないと想定されるため、サンプリング周期が低速側の1秒(第1周期T1)に設定される。これにより、サンプリング周期を高速側の1ミリ秒(第2周期t2)に常時設定する場合に比べて、データの収集量が低減される。そのため、大容量の記録計などの付帯設備を新たに導入することなく、汎用性のある記録計でデータを記憶しておくことができる。
【0080】
熱流束Qの大きさ(絶対値)が切替しきい値THsに達した時刻100(秒)にて、サンプリング周期が1秒(第1周期T1)から1ミリ秒(第2周期T2)に切り替えられる。したがって、時刻100(秒)以降においては、1ミリ秒毎に熱流束Qが収集および記憶される。これにより、軸受5a,5bの状態変化を短い周期で細かく監視することができるので、軸受5a,5bの異常(焼損等)の予兆を精度よく検出することができる。
【0081】
そして、1ミリ秒毎に収集された熱流束Qの変化率Dが算出され、その変化率Dが判定しきい値THdを超えると、異常の予兆ありと判定され、損傷防止処理が行なわれる。これにより、軸受5a,5bの異常(焼損等)が発生することを未然に防止することができる。
【0082】
以上のように、本実施の形態による制御装置52は、熱流束Qの大きさが切替しきい値THsよりも小さい場合(通常時の値である場合)にはサンプリング周期を相対的に低い第1周期T1としておく。一方、熱流束Qの大きさが切替しきい値THsよりも大きい場合(異常の予兆が発生しそうな場合)、制御装置52は、サンプリング周期を第1周期T1よりも短い第2周期T2に切り替えて、第2周期T2で収集された熱流束Qの変化率Dを用いて軸受5a,5bの異常の予兆の有無を判定する。これにより、データの収集量を極力抑えつつ、軸受5a,5bの異常の予兆を精度よく検出することができる。
【0083】
[変形例1]
上述の実施の形態では、熱流束Qの変化率Dをパラメータとして異常の予兆の有無を判定する例が示される。しかしながら、熱流束Qの大きさをパラメータとして異常の予兆の有無を判定するようにしてもよい。
【0084】
図9は、本変形例1による制御装置52が実行する制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9のフローチャートは、上述した
図7のフローチャートのステップS20を、ステップS20Aに変更したものである。その他のステップ(上述の
図7に示したステップと同じ番号を付しているステップ)については、既に説明したため詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0085】
熱流束Qの大きさが切替しきい値THsよりも大きい場合(ステップS14においてYES)、制御装置52は、サンプリング周期を第1周期T1よりも短い第2周期T2に設定し(ステップS16)、熱流センサ11a,11bの出力(熱流束Q)を第2周期T2で収集する(ステップS18)。
【0086】
次いで、制御装置52は、第2周期T2で収集された熱流束Qの大きさが判定しきい値THdを超えたか否かを判定する(ステップS20A)。この判定は、軸受5a,5bの異常の予兆の有無を判定する(異常の予兆を検出する)ための処理である。したがって、この処理においては、判定しきい値THdは、たとえば
図8に示したしきい値Qthに設定することができる。また、この判定は第2周期T2で収集された熱流束Qを用いて行なわれることに鑑み、判定しきい値THdは、サンプリング周期の切り替えに用いられる切替しきい値THsよりも所定値だけ大きい値に設定される。
【0087】
熱流束Qの大きさが判定しきい値THdを超えていない場合(ステップS20AにおいてNO)、制御装置52は、異常の予兆なしと判定する(ステップS26)。一方、熱流束Qの大きさが判定しきい値THdを超えた場合(ステップS20AにおいてYES)、制御装置52は、異常の予兆があると判定し(ステップS22)、損傷防止処理を行なう(ステップS24)。
【0088】
図10は、本変形例1におけるサンプリング周波数(サンプリング周期)、熱流束Q(絶対値)の関係の一例を示す図である。横軸は運転時間(秒)である。上欄にはサンプリング周波数(サンプリング周期)が示され、下欄には熱流束Q(絶対値)が示される。
【0089】
時刻100(秒)以前は、熱流束Q(絶対値)が切替しきい値THs未満であるため、サンプリング周期が1秒(第1周期T1)に設定される。
【0090】
熱流束Q(絶対値)が切替しきい値THsに達した時刻100(秒)にて、サンプリング周期が1秒(第1周期T1)から1ミリ秒(第2周期T2)に切り替えられる。したがって、時刻100(秒)以降においては、1ミリ秒毎に熱流束Qが収集される。
【0091】
そして、1ミリ秒毎に収集された熱流束Qの大きさが判定しきい値THdを超えると、異常の予兆ありと判定され、損傷防止処理が行なわれる。
【0092】
このように変形しても、上述の実施の形態と同様に、データの収集量を極力抑えつつ、軸受5a,5bの異常の予兆を精度よく検出することができる。
【0093】
[変形例2]
上述の実施の形態では、熱流束Qの大きさをパラメータとしてサンプリング周期の切替を行なう例が示される。しかしながら、回転速度Nをパラメータとしてサンプリング周期の切替を行なうようにしてもよい。
【0094】
図11は、本変形例2による制御装置52が実行する制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11のフローチャートは、上述した
図7のフローチャートのステップS12,S14,S18,S28を、それぞれステップS12B,S14B,S18B,S28Bに変更したものである。その他のステップ(上述の
図7に示したステップと同じ番号を付しているステップ)については、既に説明したため詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0095】
制御装置52は、回転センサ58の出力(回転速度N)を第1周期T1で収集して記憶する(ステップS12B)。
【0096】
次いで、制御装置52は、第1周期T1で収集された回転速度Nが切替しきい値THsよりも大きいか否かを判定する(ステップS14B)。切替しきい値THsは、軸受5a,5bの異常の予兆が発生しそうな回転速度に設定することができる。回転速度Nが切替しきい値THsよりも大きくない場合(ステップS14BにおいてNO)、制御装置52は、処理をステップS10に戻す。
【0097】
回転速度Nが切替しきい値THsよりも大きい場合(ステップS14BにおいてYES)、制御装置52は、サンプリング周期を第1周期T1よりも短い第2周期T2に設定する(ステップS16)。
【0098】
次いで、制御装置52は、回転センサ58の出力(回転速度N)および熱流センサ11a,11bの出力(熱流束Q)を第2周期T2で収集する(ステップS18B)。なお、収集された回転速度Nおよび熱流束Qはメモリ54に記憶される。
【0099】
次いで、制御装置52は、第2周期T2で収集された熱流束Qの変化率Dが判定しきい値THdを超えたか否かを判定する(ステップS20)。
【0100】
変化率Dが判定しきい値THdを超えていない場合(ステップS20においてNO)、制御装置52は、異常の予兆なしと判定し(ステップS26)、第2周期T2で収集された回転速度Nが切替しきい値THs未満であるか否かを判定する(ステップS28B)。
【0101】
回転速度Nが切替しきい値THs未満でない場合(ステップS28BにおいてNO)、制御装置52は、処理をステップS16に戻し、サンプリング周期を第2周期T1に維持してステップS16以降の処理を繰り返す。回転速度Nが切替しきい値THs未満である場合(ステップS28BにおいてYES)、制御装置52は、処理をステップS10に戻し、サンプリング周期を第2周期T1から第1周期T1に戻してステップS10以降の処理を繰り返す。
【0102】
図12は、本実施の形態におけるサンプリング周波数(サンプリング周期)、回転速度N、熱流束の変化率Dの関係の一例を示す図である。横軸は運転時間(秒)である。上欄にはサンプリング周波数(サンプリング周期)が示され、中欄には回転速度Nが示され、下欄には熱流束の変化率Dが示される。
【0103】
時刻100(秒)以前は、回転速度Nが切替しきい値THs未満であるため、サンプリング周期が1秒(第1周期T1)に設定される。
【0104】
回転速度Nが切替しきい値THsに達した時刻100(秒)にて、サンプリング周期が1秒(第1周期T1)から1ミリ秒(第2周期T2)に切り替えられる。時刻100(秒)以降においては、1ミリ秒毎に回転速度Nおよび熱流束Qが収集される。
【0105】
そして、1ミリ秒毎に収集された熱流束Qの変化率Dが判定しきい値THdを超えると、異常の予兆ありと判定され、損傷防止処理が行なわれる。
【0106】
このように変形しても、上述の実施の形態と同様に、データの収集量を極力抑えつつ、軸受5a,5bの異常の予兆を精度よく検出することができる。
【0107】
[変形例3]
上述の実施の形態では、熱流束Qの大きさをパラメータとしてサンプリング周期の切替を行なう例が示される。しかしながら、荷重センサ59の検出結果(以下「荷重L」ともいう)をパラメータとしてサンプリング周期の切替を行なうようにしてもよい。
【0108】
図13は、本変形例3による制御装置52が実行する制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13のフローチャートは、上述した
図11のフローチャートのステップS12B,S14B,S18B,S28Bを、それぞれステップS12C,S14C,S18C,S28Cに変更したものである。その他のステップ(上述の
図11に示したステップと同じ番号を付しているステップ)については、既に説明したため詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0109】
制御装置52は、荷重センサ59の出力(荷重L)を第1周期T1で収集する(ステップS12C)。なお、収集された荷重Lはメモリ54に記憶される。
【0110】
次いで、制御装置52は、第1周期T1で収集された荷重Lが切替しきい値THsよりも大きいか否かを判定する(ステップS14C)。切替しきい値THsは、軸受5a,5bの異常の予兆が発生しそうな荷重に設定することができる。
【0111】
荷重Lが切替しきい値THsよりも大きい場合(ステップS14CにおいてYES)、制御装置52は、サンプリング周期を第1周期T1よりも短い第2周期T2に設定する(ステップS16)。
【0112】
次いで、制御装置52は、荷重センサ59の出力(荷重L)および熱流センサ11a,11bの出力(熱流束Q)を第2周期T2で収集する(ステップS18C)。なお、収集された荷重Lおよび熱流束Qはメモリ54に記憶される。
【0113】
また、制御装置52は、第2周期T2で収集された荷重Lが切替しきい値THs未満であるか否かを判定する(ステップS28C)。荷重Lが切替しきい値THs未満でない場合(ステップS28CにおいてNO)、制御装置52は、処理をステップS16に戻し、サンプリング周期を第2周期T1に維持してステップS16以降の処理を繰り返す。荷重Lが切替しきい値THs未満である場合(ステップS28CにおいてYES)、制御装置52は、処理をステップS10に戻し、サンプリング周期を第2周期T1から第1周期T1に戻してステップS10以降の処理を繰り返す。
【0114】
図14は、本実施の形態におけるサンプリング周波数(サンプリング周期)、荷重L、熱流束の変化率Dの関係の一例を示す図である。横軸は運転時間(秒)である。上欄にはサンプリング周波数(サンプリング周期)が示され、中欄には荷重Lが示され、下欄には熱流束の変化率Dが示される。
【0115】
荷重Lが切替しきい値THsに達した時刻100(秒)にて、サンプリング周期が1秒(第1周期T1)から1ミリ秒(第2周期T2)に切り替えられる。時刻100(秒)以降においては、1ミリ秒毎に荷重Lおよび熱流束Qが収集される。
【0116】
図14に示す例では、時刻100(秒)以降において熱流束Qの変化率Dが判定しきい値THdを超えることなく、時刻150(秒)にて荷重Lが切替しきい値THs未満に低下しているため、サンプリング周期が1ミリ秒(第2周期T2)から1秒(第1周期T1)に戻される。これにより、不要なデータの収集が抑制される。
【0117】
このように変形しても、上述の実施の形態と同様に、データの収集量を極力抑えつつ、軸受5a,5bの異常の予兆を精度よく検出することができる。
【0118】
[熱流センサの配置の変形例]
図15は、熱流センサの配置の変形例を示す図である。本変形例では、
図15に示すように、固定側である外輪間座6gに、軸方向側面から内外輪間に突出する突出部7a,7bが付加され、一方の突出部7aに熱流センサ11aが設置される。この場合、図示しないが、もう一方の突出部7bにも、同様に熱流センサ11bを配置するとよい。
【0119】
発熱源は、転がり軸受の固定側軌道輪の転動体接触部分であるが、固定側軌道輪に熱流センサを設置する場合、固定側軌道輪の加工コスト等が高くなる問題が懸念される。固定側間座の突出部7a,7bに熱流センサを設置する場合、この問題が解消でき容易に熱流センサを設置できる。また内外輪間に突出する突出部7a,7bに熱流センサ11a,11bを設置するため、運転時における軸受内部の温度変化を直接的に検出することができる。
【0120】
なお、突出部7a,7bは、軸受5a,5bにエアオイル潤滑の潤滑油を吐出するノズルを兼ねるものであってもよい。この場合、潤滑油を吐出する既存のノズルを利用して熱流センサを設置できるため、たとえば、熱流センサを設置する専用部品を設けるよりもコスト低減を図れる。
【0121】
図16は、熱流センサの配置の他の変形例を示す図である。
図1では、熱流センサ11a,11bが外輪間座6gの内径面における軸方向の端部(軸受5近傍)に設置された例を示した。しかしながら、
図16に示すように、熱流センサ11を、外輪間座6gの内径面における軸方向の中央部に設置してもよい。
【0122】
図17は、熱流センサの配置の他の変形例を示す図である。
図17に示すように、熱流センサ11aを、外輪5gaの内径面に設置してもよい。この場合、図示しないが、同様に熱流センサ11bを外輪5gbの内径面に設置するとよい。
【0123】
[軸受異常の予兆検出の変形例]
上述の実施の形態においては、熱流センサ11a,11bによって検出された熱流束Qの大きさあるいは熱流束Qの変化率D(時間微分値)から軸受異常の予兆を検出する例について説明した。しかしながら、熱流センサ11a,11bによって検出された熱流束Qとその他の検出値との組み合わせにより、軸受異常の予兆を検出するようにしてもよい。
【0124】
たとえば、熱流束Qとその他の検出値(回転速度N、振動、温度、モータ電流値、予圧および外部からの荷重など)との相関関係(追従性など)、熱流束Qの時間積分値などのパラメータを用いて軸受異常の予兆を検出するようにしてもよい。たとえば、回転速度Nと、この回転速度に追従する熱流束Qとの関係に基づいて、軸受異常の予兆の有無を判定してもよい。また、回転速度Nと熱流束Qとの関係を監視し、両者の関係に齟齬が生じた場合、軸受異常の予兆があると判定してもよい。また、たとえば、回転速度Nが一定で変化していないにもかかわらず、熱流束Qが急峻に変化する場合に、軸受異常の予兆あると判定してもよい。また、たとえば、回転速度Nが変動しているときに、熱流束Qが回転速度Nに追従しない場合に、軸受異常の予兆あると判定するようにしてもよい。
【0125】
さらに、上記のパラメータを用いて、軸受異常の予兆を検出することに加えて、軸受異常そのものを検出する異常診断を行なうようにしてもよい。たとえば、熱流束Qまたは熱流束の変化率Dがそれぞれ
図6に示したQthまたはDthよりもさらに大きなしきい値を超えた場合に、軸受に異常が生じたと判定するようにしてもよい。また、たとえば、軸受異常の予兆が検出されたことによって損傷防止処理を行なった後もさらに熱流束Qが増加する場合には、軸受が損傷していることが想定されるため、軸受が異常であると判定するようにしてもよい。
【0126】
[荷重センサの配置例]
上述したように、荷重センサ59は、たとえば軸受と間座との間の隙間に設置される。
【0127】
図18は、荷重センサ59の配置の一例を示す図である。
図18に示す例では、荷重センサ59は、外輪5gaの側面と外輪間座6gの側面との間に配置され、外輪5gaの側面と外輪間座6gの側面とで挟持される。
【0128】
なお、荷重センサ59は軸受と間座との間の隙間に設置されることに限定されない。
【0129】
図19は、荷重センサ59の配置の他の一例を示す図である。
図19に示すように、荷重センサ59は、外輪間座6gの外径面とハウジング3の内径面との間に配置され、外輪間座6gの外径面とハウジング3の内径面とで挟持されるようにしてもよい。
【0130】
[軸受異常の予兆検出の他の変形例]
上述の実施の形態では、熱流センサ11a,11bの検出結果を用いて異常予兆を検出する例が示される。しかしながら、荷重センサ59の検出結果を用いて異常予兆の有無を検出するようにしてもよい。以下、荷重センサ59の検出結果を用いた異常予兆の検出手法について詳しく説明する。
【0131】
図20は、潤滑油切れによる軸受異常の再現試験における荷重、温度、回転速度の関係の一例を示す図である。横軸は運転時間(秒)である。上欄には、荷重L、内輪温度T(i)、外輪温度T(g)、ハウジング温度T(h)が示され、下欄には回転速度N(毎分の回転数)が示される。
【0132】
図21は、潤滑油切れによる軸受異常の再現試験における荷重、荷重変化率、回転速度の関係の一例を示す図である。
図21では、
図20に示した荷重Lの波形に、荷重変化率(荷重Lの変化率)の波形を重ねて示している。
【0133】
時刻525(秒)を過ぎると、軸受の損傷によってモータが過負荷を検出して回転速度Nが低下していく。軸受の損傷を避けるためには、時刻525(秒)より以前に、異常の予兆を検出して損傷防止処理を行なうことが望ましい。
図20および
図21から理解できるように、荷重Lの大きさ、および荷重Lの変化率は、内輪温度T(i)等よりも早い段階から出力値の上昇が認められており、転がり軸受に異常が生じる際の予兆を早期に検出する際に有効と考えられる。
【0134】
以上の結果に鑑み、本変形例による制御装置52は、荷重センサ59によって検出された荷重Lの大きさあるいは荷重Lの変化率が対応する判定しきい値THdを超えた場合に、軸受5a,5bの異常(焼き付き等)の予兆があると判定して、損傷防止処理を行なう。これにより、熱流センサ11a,11bの検出結果を用いることなく、軸受5a,5bの損傷防止および寿命延長を実現することができる。
【0135】
以下では、荷重Lの変化率が判定しきい値THdを超えた場合に異常の予兆があると判定する例について説明する。ただし、上述したように、荷重Lの大きさが判定しきい値THdを超えた場合に異常の予兆があると判定するようにしてもよい。
【0136】
図22は、本変形例による制御装置52が実行する制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図22のフローチャートは、上述した
図13のフローチャートのステップS18C,S20を、それぞれステップS18D,S20Dに変更したものである。その他のステップ(上述の
図13に示したステップと同じ番号を付しているステップ)については、既に説明したため詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0137】
制御装置52は、第1周期T1で収集された荷重Lが切替しきい値THsよりも大きいか否かを判定する(ステップS14C)。荷重Lが切替しきい値THsよりも大きい場合(ステップS14CにおいてYES)、制御装置52は、サンプリング周期を第1周期T1よりも短い第2周期T2に設定する(ステップS16)。
【0138】
次いで、制御装置52は、荷重センサ59の出力(荷重L)を第2周期T2で収集する(ステップS18D)。なお、収集された荷重Lはメモリ54に記憶される。
【0139】
次いで、制御装置52は、第2周期T2で収集された荷重Lの変化率が判定しきい値THdを超えたか否かを判定する(ステップS20D)。この判定は、荷重Lの変化率を用いて、軸受5a,5bの異常の予兆の有無を判定する(異常の予兆を検出する)ための処理である。そのため、ステップS20Dで用いられる判定しきい値THdは、荷重Lの変化率を用いて異常の予兆を検出できるように予め調整された値である。なお、荷重Lの変化率は、たとえば、メモリ54に記憶された前回の荷重Lと今回の荷重Lの差を時間差で除算して得ることができる。
【0140】
荷重Lの変化率が判定しきい値THdを超えた場合(ステップS20DにおいてYES)、制御装置52は、異常の予兆があると判定し(ステップS22)、上述の損傷防止処理を行なう(ステップS24)。一方、荷重Lの変化率が判定しきい値THdを超えていない場合(ステップS20DにおいてNO)、制御装置52は、異常の予兆なしと判定する(ステップS26)。
【0141】
図23は、本変形例におけるサンプリング周波数(サンプリング周期)、荷重L、荷重Lの変化率の関係の一例を示す図である。横軸は運転時間(秒)である。上欄にはサンプリング周波数(サンプリング周期)が示され、中欄には荷重Lが示され、下欄には荷重Lの変化率が示される。
【0142】
時刻100(秒)以前は、荷重Lが切替しきい値THs未満であるため、サンプリング周期が1秒(第1周期T1)に設定される。
【0143】
荷重Lが切替しきい値THsに達した時刻100(秒)にて、サンプリング周期が1秒(第1周期T1)から1ミリ秒(第2周期T2)に切り替えられる。時刻100(秒)以降においては、1ミリ秒毎に荷重Lが収集される。
【0144】
そして、1ミリ秒毎に収集された荷重Lの変化率が判定しきい値THdを超えると、異常の予兆ありと判定され、損傷防止処理が行なわれる。
【0145】
このように、荷重センサ59によって検出された荷重Lの大きさをパラメータとしてサンプリング周期の切替を行なうとともに、荷重Lの変化率をパラメータとして軸受5a,5bの異常の予兆の有無を判定するようにしてもよい。これにより、熱流センサ11a,11bの検出結果を用いることなく、上述の実施の形態と同様に、データの収集量を極力抑えつつ、軸受5a,5bの異常の予兆を精度よく検出することができる。
【0146】
なお、本変形例では、荷重センサ59の検出結果をパラメータとしてサンプリング周期の切替を行なう例が示される。しかしながら、荷重センサ59および回転センサ58の少なくとも一方の検出結果をパラメータとしてサンプリング周期の切替を行なうようにしてもよい。すなわち、第1周期T1で収集した荷重センサ59および回転センサ58の少なくとも一方の検出結果が対応する切替しきい値を超えた場合に、サンプリング周期を第1周期よりも短い第2周期に変更して第2周期で荷重センサの検出結果を収集するようにしてもよい。
【0147】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0148】
1 スピンドル装置、2 外筒、3 ハウジング、4 主軸、5,5a,5b 軸受、5ga,5gb 外輪、5ia,5ib 内輪、6 間座、6g 外輪間座、6gA 内径面、6i 内輪間座、6iA 外径面、7a,7b 突出部、11,11a,11b 熱流センサ、30 軸受装置、50 データ収集装置、51 入力部、52 制御装置、54 メモリ、55 出力部、56a,56b 温度センサ、57a,57b 振動センサ、58 回転センサ、59 荷重センサ。