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特許7519818変性シロキサン二酸無水物およびポリイミド樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】変性シロキサン二酸無水物およびポリイミド樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/48 20060101AFI20240712BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
C08G77/48
C08G73/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020103831
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021195474
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】井手 正仁
(72)【発明者】
【氏名】稲成 浩史
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 貴雄
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099516(JP,A)
【文献】特開2006-267800(JP,A)
【文献】特開2020-091323(JP,A)
【文献】特開2018-084826(JP,A)
【文献】特開2011-123278(JP,A)
【文献】特開2010-209265(JP,A)
【文献】特開2010-265374(JP,A)
【文献】特開2010-265372(JP,A)
【文献】特開2009-263643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に酸無水物基を有し、
(A)1分子中に炭素-炭素二重結合を2個有する化合物、(B)1分子中にSiH基を2個有するケイ素化合物、(C)1分子中に炭素-炭素二重結合および酸無水物基を1個ずつ有する化合物、を反応させることで得られるものであり、
前記成分(A)は、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルジメチルグリコールウリル、ビスフェノールSのジアリルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であり、
以下構造で表される変性シロキサン二酸無水物。
【化1】
(上記化学式において、Gは主鎖の炭素数が1から50であって、H原子、O原子、N原子、ハロゲン原子、S原子のいずれかの原子を一種、又は、2種以上含む有機基で表され、Xは酸無水物基を構造中に有する有機基、Rは炭素数1から20で表される有機基を示し、nは~50、mは1~50の整数である)
【請求項2】
前記成分(C)が以下に記載される化合物より選ばれる事を特徴とする請求項1に記載の変性シロキサン二酸無水物。
【化2】
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の変性シロキサン二酸無水物と、ジアミン化合物又はジイソシアネート化合物との反応物であるポリイミド樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性シロキサン二酸無水物およびポリイミド樹脂に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂はエレクトロニクス分野において広く利用されている材料であり、樹脂へ柔軟性付与させる目的で、特許文献1に記載されているように、分子中にシロキサン構造を有するポリイミド樹脂も多く提案されている。しかし、合成時に用いるシロキサンジアミン化合物は純度が低く、高温時に低分子シロキサンが揮発することで電気配線での接合不良を起こす問題や、各種基材との密着性に欠けるなどの問題を有している。
【0003】
一方、特許文献2にはシロキサン構造を有する二酸無水物を用いてポリイミド樹脂を得る技術も提案されている。ただし上記と同様、密着性に欠けるポリイミド樹脂となる課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-056921号公報
【文献】特許第5873529号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、有機変性したシロキサン二酸無水物およびそれを用いて得られる密着性に優れるポリイミド樹脂を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成の為に検討を重ねた結果、有機変性したシロキサン二酸無水物およびそれを用いて得られるポリイミド樹脂が、柔軟性を有し、かつ、優れた密着性を有する事を見出すに至った。本発明は、以下からなるものである。
【0007】
〔1〕.末端に酸無水物基を有する以下構造で表される変性シロキサン二酸無水物。
【0008】
【化1】
【0009】
(上記化学式において、Gは主鎖の炭素数が1から50であって、H原子、O原子、N原子、ハロゲン原子、S原子のいずれかの原子を一種、又は、2種以上含む有機基で表され、Xは酸無水物基を構造中に有する有機基、Rは炭素数1から20で表される有機基を示し、nは0~50、mは1~50の整数である)
【0010】
〔2〕.(A)1分子中に炭素-炭素二重結合を2個有する化合物、(B)1分子中にSiH基を2個有するケイ素化合物、(C)1分子中に炭素-炭素二重結合および酸無水物基を1個ずつ有する化合物、を反応させることで得られる〔1〕に記載の変性シロキサン二酸無水物。
【0011】
〔3〕.成分(C)が以下に記載される化合物より選ばれる事を特徴とする〔2〕に記載の変性シロキサン二酸無水物。
【0012】
【化2】
【0013】
〔4〕.成分(A)がN原子又はS原子を有することを特徴とする〔2〕又は〔3〕に記載の変性シロキサン二酸無水物。
【0014】
〔5〕.成分(A)が以下一般式(c)で表される化合物である事を特徴とする〔4〕に記載の変性シロキサン二酸無水物。
【0015】
【化3】
【0016】
(式中Rは水素原子又は炭素数1~50の一価の有機基を示す)
〔6〕.〔1〕~〔5〕に記載の変性シロキサン二酸無水物とジアミン化合物又はジイソシアネート化合物とを反応させる事により得られるポリイミド樹脂。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば有機変性したシロキサン二酸無水物およびそれを用いて得られる密着性に優れるポリイミド樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(変性シロキサン二酸無水物)
上記、変性シロキサン二酸無水物は、末端に酸無水物基を有する以下構造で表される変性シロキサン二酸無水物。
【0019】
【化4】
【0020】
(上記化学式において、Gは主鎖の炭素数が1から50であって、H原子、O原子、N原子、ハロゲン原子、S原子のいずれかの原子を一種、又は、2種以上含む有機基で表され、Xは酸無水物基を構造中に有する有機基、Rは炭素数1から20で表される有機基を示し、nは0~50、mは1~50の整数である)
【0021】
ここで言う構造Gとは、主鎖の炭素数が1から50であって、H原子、O原子、N原子、ハロゲン原子、S原子のいずれかの原子を一種、又は、2種以上含む有機基で表され、特に限定されるものではない。当発明で得られるポリイミド樹脂では、構造Gを有さないシロキサン分子を有する樹脂と比較して基材との密着性・樹脂強度を向上させるために有効であり、かつ、ポリイミド樹脂の特長である耐熱性を損なう事無く導入する観点から、下記に示すヒドロシリル化反応を用いて導入する方法が好ましい。
【0022】
以下、ヒドロシリル化反応を用いて変性シロキサン二酸無水物を得るための各必須成分について説明する。
【0023】
(成分(A):1分子中に炭素-炭素二重結合を2個有する化合物)
上記、変性シロキサン二酸無水物は、成分(A)の1分子中に炭素-炭素二重結合を2個有する化合物と、後述の成分(B)および(C)と反応させることによって得ることが出来る。本件発明中の(A)成分である1分子中に炭素-炭素二重結合を2個含有する化合物であれば特に限定されない。
【0024】
成分(A)の炭素-炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(a)
【0025】
【化5】
【0026】
(式中R4は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0027】
【化6】
【0028】
で示される基が特に好ましい。
【0029】
成分(A)の炭素-炭素二重結合としては、下記一般式(b)で表される部分構造を環内に有する脂環式の基が硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。
【0030】
【化7】
【0031】
(式中R5は水素原子あるいはメチル基を表す。)また、原料の入手の容易さからは、下記式で表される部分構造を環内に有する脂環式の基が好適である。
【0032】
【化8】
【0033】
炭素-炭素二重結合は成分(A)の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては炭素数0~10の置換基であれば特に限定されないが、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含むものが好ましい。これらの置換基の例としては、
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
で表される基等が挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0037】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2-ヒドロキシ-3-(アリルオキシ)プロピル基、2-アリルフェニル基、3-アリルフェニル基、4-アリルフェニル基、2-(アリルオキシ)フェニル基、3-(アリルオキシ)フェニル基、4-(アリルオキシ)フェニル基、2-(アリルオキシ)エチル基、2、2-ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3-アリルオキシ-2、2-ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、ビニルエーテル基、等が挙げられる。
【0038】
成分(A)の具体的な例としては、ジアリルフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ジアリリデンペンタエリスリット、ジアリルモノメチルイソシアヌレート。ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルジメチルグリコールウリル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3-ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5-ヘキサジエン、1,9-デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、テトラアリルビスフェノールA、2,5-ジアリルフェノールアリルエーテル
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
等が挙げられる。
【0042】
成分(A)としては、基材との接着性に優れるという観点からは、成分(A)が極性の高いN原子又はS原子を有することが好ましい。具体的な例としては、ジアリルモノメチルイソシアヌレート。ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルジメチルグリコールウリル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、などが挙げられる。
【0043】
その中でも特に、耐熱性、耐光性が高いという観点から下記一般式(c)で表されるジアリルモノメチルイソシアヌレート。ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、及びその誘導体が特に好ましい。
【0044】
【化13】
【0045】
(式中Rは水素原子又は炭素数1~50の一価の有機基を示す)
で表される化合物が好ましい。
【0046】
また、炭素-炭素二重結合を2個有するケイ素系化合物も用いる事も出来る。最も一般的に入手し易いものとして、ビニル基末端直鎖状ポリシロキサンが挙げられるが、ジメチルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位の単一重合体、および、それぞれのシロキサン単位の共重合体についてジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリオルガノシロキサン重合体であれば特に限定されない。具体的には、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジビニルジシロキサン、1,1,3,3,5,5,―ヘキサメチルジビニルトリシロキサン、1,1,5,5-テトラメチルジビニル-3,3-ジフェニルトリシロキサンなどが、好ましい例として例示される。また、ビニル基末端のポリシロキサン化合物以外のケイ素系化合物も用いる事ができ、例えば、1,4-ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジフェニルビニルシリル)ベンゼン、1,4-ビス(メチルフェニルビニルシリル)ベンゼン、ジビニルジメチルシラン、ジビニルシクロヘキシルメチルシラン、ジビニルフェニルメチルシラン、ジビニルジシクロヘキシルシラン、ジビニルジフェニルシラン、ビス(ビニルジメチルシリル)メタン、ビス(ビニルフェニルメチルシリル)メタン、ビス(ビニルシクロヘキシルメチルシリル)メタン、ビス(ビニルジフェニルシリル)メタン、(ビニルジメチルシリル)(ジビニルメチルシリル)メタン、(ビニルフェニルメチルシリル)(ジビニルメチルシリル)メタン、1,2-ビス(ビニルジメチルシリル)エタン、1,2-ビス(ビニルジフェニルシリル)エタン、1,2-ビス(ジビニルメチルシリル)エタン、1,2-ビス(ジビニルフェニルシリル)エタン、1,3-ビス(ビニルジメチルシリル)プロパン、1,3-ビス(ビニルジフェニルシリル)プロパン、1,4-ビス(ビニルジメチルシリル)ブタン、1,4-ビス(ビニルジフェニルシリル)ブタン、1,5-ビス(ビニルジメチルシリル)ペンタン、1,5-ビス(ビニルジフェニルシリル)ペンタン、1,4-ビス(ビニルジメチルシリル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ビニルフェニルメチルシリル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ビニルシクロヘキシルメチルシリル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ビニルジフェニルシリル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ビニルフェニルメチルシリル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ビニルシクロヘキシルメチルシリル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ビニルジフェニルシリル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ビニルジメチルシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ビニルフェニルメチルシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ビニルシクロヘキシルメチルシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ビニルジフェニルシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジビニルメチルシリル)ベンゼン、1,3-ビス(ビニルジメチルシリル)ベンゼン、1,3-ビス(ビニルフェニルメチルシリル)ベンゼン、1,3-ビス(ビニルシクロヘキシルメチルシリル)ベンゼン、1,3-ビス(ビニルジフェニルシリル)ベンゼン、2,6-ビス(ビニルジメチルシリル)ナフタレン、2,6-ビス(ビニルフェニルメチルシリル)ナフタレン、2,6-ビス(ビニルシクロヘキシルメチルシリル)ナフタレン、2,6-ビス(ビニルジフェニルシリル)ナフタレン、2,7-ビス(ビニルジメチルシリル)ナフタレン、2,7-ビス(ビニルフェニルメチルシリル)ナフタレン、2,7-ビス(ビニルシクロヘキシルメチルシリル)ナフタレン、2,7-ビス(ビニルジフェニルシリル)ナフタレン、2,7-ビス(ビニルジメチルシリル)アントラセン、2,7-ビス(ビニルフェニルメチルシリル)アントラセン、2,7-ビス(ビニルシクロヘキシルメチルシリル)アントラセン、2,7-ビス(ビニルジフェニルシリル)アントラセン、2,8-ビス(ビニルジメチルシリル)アントラセン、2,8-ビス(ビニルフェニルメチルシリル)アントラセン、2,8-ビス(ビニルシクロヘキシルメチルシリル)アントラセン、2,8-ビス(ビニルジフェニルシリル)アントラセン、等が挙げられる。
【0047】
(成分(B):1分子中にSiH基を2個有するケイ素化合物)
成分(B)としては、SiH基を2個有するケイ素化合物、つまり、Si原子を分子中に有するSiH基を2個有する化合物であれば特に限定せず使用できる。最も一般的に入手し易いものとして、SiH基末端直鎖状ポリシロキサンが挙げられるが、ジメチルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位の単一重合体、および、それぞれのシロキサン単位の共重合体についてジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリオルガノシロキサン重合体であれば特に限定されない。具体的には、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5,―ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサンなどが、好ましい例として例示される。また、SiH基末端のポリシロキサン化合物以外のケイ素系化合物も用いる事ができ、例えば、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジフェニルシリル)ベンゼン、1,4-ビス(メチルフェニルシリル)ベンゼン、などが具体的に挙げられる。
【0048】
(成分(C):1分子中に炭素-炭素二重結合および酸無水物基を1個ずつ有する化合物)
成分(C)としては、1分子中に炭素-炭素二重結合および酸無水物基を1個ずつ有する化合物であれば特に限定せず使用する事ができる。具体的な例としては、無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アリルコハク酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロメチル無水フタル酸、テトラメチルフェニル無水フタル酸が挙げられる。反応性の観点より、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、アリルコハク酸無水物が好ましい。
【0049】
(成分(A)、(B)、(C)の反応)
成分(A)、(B)、(C)を反応させ変性シロキサン二酸無水物を得る方法としては、ヒドロシリル化反応を用いる。この場合、スムーズに反応を進行させる目的で触媒を用いても良い。
【0050】
ヒドロシリル化反応の触媒としては、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金-オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2)、白金-ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4m)、白金-ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34)、白金-ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金-炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金-オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0051】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
【0052】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0053】
成分(A)、(B)、(C)の反応させる順序については、まず成分(A)と(B)とをSiH基量を多くした条件でヒドロシリル化により反応させ、次に成分(C)を逐次で反応させ、末端に酸無水物基を導入する事によって、変性シロキサン二酸無水物を得る事ができる。
【0054】
(ポリイミド樹脂について)
本発明の変性シロキサン二酸無水物を用いて得られるポリイミド樹脂は、一般にジアミン化合物又はジイソシアネート化合物との反応により得られ、特に限定されるものではない。
【0055】
本発明のポリイミド合成のために用いるジアミンとしては、例えば、[ビス(4-アミノ-3-カルボキシ)フェニル]メタン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノフェニルエタン、4,4’-ジアミノフェニルエーテル、4,4’-ジジアミノフェニルスルフィド、4,4’-ジジアミノフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、6-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,5-ジアミノ-3’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5-ジアミノ-4’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,7-ジアミノフルオレン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、2,2’,5,5’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジメトキシビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)-ビフェニル、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(p-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(m-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチル)フェノキシ]-オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1-メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4-ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]-ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミン等及びそれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で、又は任意の割合で混合した混合物を好ましく用いることができる。
【0056】
さらに、樹脂の溶剤への溶解性を向上させ塗布性を確保する目的で、上記、ポリイミド樹脂のポリマー分子中に脂環式構造又はスルホン基を有している事が好ましい。脂環式構造のポリマー分子への導入方法は限定されないが、原料のジアミン、又は、テトラカルボン酸化合物にこれら構造を有しているものを用いる事で簡便に導入する事ができる。ジアミン化合物について記載したが、ジアミン化合物のアミノ基をイソシアネート基に置き換えたジイソシアネート化合物も、ジアミン化合物と同様に用いることができる。
【実施例
【0057】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
(密着性評価)
実施例および比較例で得られたポリイミド樹脂溶液をCu製膜ウェハ基板上に膜厚5μmでスピンコーティングした後250℃1時間ホットプレートで加熱する事で、ポリイミド樹脂膜を形成した。次にJIS K5600-V-VI(ISO2409)に準じてクロ
スカット試験を行い、Cu薄膜への密着性評価を行った。
【0059】
●評価指標
0:剥離無し 1:1~10%剥離 2:20~30%剥離
3:50%剥離 4:70~80%剥離 5:90%以上剥離
【0060】
(耐熱性評価)
熱重量測定装置(TGA、島津製作所製)を用いて、室温から500℃まで10℃/分で昇温させ、1%重量減少温度を指標として評価を行った。
【0061】
(実施例1)
500mL四つ口フラスコにトルエン100g、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン15gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。ジアリルモノメチルイソシアヌレート9g、トルエン10g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から3時間後に1H-NMRでアリル基の反応率が100%であることを確認し、60℃冷却した。その後、アリルコハク酸無水物1.5gとトルエン3gの混合溶液を滴下した。滴下終了から5時間後に1H-NMRでアリルコハク酸無水物の二重結合の反応率が100%であることを確認し、冷却した反応を終了した。トルエンを減圧留去し、酸無水物基を末端に有する変性シロキサン化合物Aを得た。
【0062】
次に、200mLのフラスコ中に、溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド20g、上記で得た変性シロキサン化合物Aを2.5g、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5gを投入し、室温、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。さらにN,N-ジメチルホルムアミド5g、ピリジン0.8g、無水酢酸1.5gを順次フラスコに投入し、90℃に加熱しながら3時間撹拌した。常温に戻ってから、フラスコに500mLのイソプロピルアルコールを投入し、析出物を回収した。更に500mLのイソプロピルアルコールで洗浄を3回行い、得られた析出物を80℃で6時間減圧乾燥し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで50%に希釈してポリイミド樹脂溶液Aを得た。
【0063】
(実施例2)
500mL四つ口フラスコにトルエン100g、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン15gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。ジアリルモノプロピルイソシアヌレート8g、トルエン10g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から3時間後に1H-NMRでアリル基の反応率が100%であることを確認し、60℃冷却した。その後、アリルコハク酸無水物1.5gとトルエン3gの混合溶液を滴下した。滴下終了から5時間後に1H-NMRでアリルコハク酸無水物の二重結合の反応率が100%であることを確認し、冷却した反応を終了した。トルエンを減圧留去し、酸無水物基を末端に有する変性シロキサン化合物Bを得た。
【0064】
次に、200mLのフラスコ中に、溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド20g、上記で得た変性シロキサン化合物Bを2.5g、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5gを投入し、室温、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。さらにN,N-ジメチルホルムアミド5g、ピリジン0.8g、無水酢酸1.5gを順次フラスコに投入し、90℃に加熱しながら3時間撹拌した。常温に戻ってから、フラスコに500mLのイソプロピルアルコールを投入し、析出物を回収した。更に500mLのイソプロピルアルコールで洗浄を3回行い、得られた析出物を80℃で6時間減圧乾燥し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで50%に希釈してポリイミド樹脂溶液Bを得た。
【0065】
(実施例3)
500mL四つ口フラスコにトルエン100g、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン15gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。ビス(p-アリルオキシフェニル)スルホン12g、トルエン10g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から3時間後に1H-NMRでアリル基の反応率が100%であることを確認し、60℃冷却した。その後、アリルコハク酸無水物1.5gとトルエン3gの混合溶液を滴下した。滴下終了から5時間後に1H-NMRでアリルコハク酸無水物の二重結合の反応率が100%であることを確認し、冷却した反応を終了した。トルエンを減圧留去し、酸無水物基を末端に有する変性シロキサン化合物Cを得た。
【0066】
次に、200mLのフラスコ中に、溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド20g、上記で得た変性シロキサン化合物Cを2.5g、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5gを投入し、室温、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。さらにN,N-ジメチルホルムアミド5g、ピリジン0.8g、無水酢酸1.5gを順次フラスコに投入し、90℃に加熱しながら3時間撹拌した。常温に戻ってから、フラスコに500mLのイソプロピルアルコールを投入し、析出物を回収した。更に500mLのイソプロピルアルコールで洗浄を3回行い、得られた析出物を80℃で6時間減圧乾燥し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで50%に希釈してポリイミド樹脂溶液Cを得た。
【0067】
参考例4)
500mL四つ口フラスコにトルエン100g、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン15gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。ジビニルベンゼン4g、トルエン10g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から3時間後にH-NMRでアリル基の反応率が100%であることを確認し、60℃冷却した。その後、アリルコハク酸無水物1.5gとトルエン3gの混合溶液を滴下した。滴下終了から5時間後にH-NMRでアリルコハク酸無水物の二重結合の反応率が100%であることを確認し、冷却した反応を終了した。トルエンを減圧留去し、酸無水物基を末端に有する変性シロキサン化合物Dを得た。
【0068】
次に、200mLのフラスコ中に、溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド20g、上記で得た変性シロキサン化合物Dを2.5g、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5gを投入し、室温、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。さらにN,N-ジメチルホルムアミド5g、ピリジン0.8g、無水酢酸1.5gを順次フラスコに投入し、90℃に加熱しながら3時間撹拌した。常温に戻ってから、フラスコに500mLのイソプロピルアルコールを投入し、析出物を回収した。更に500mLリットルのイソプロピルアルコールで洗浄を3回行い、得られた析出物を80℃で6時間減圧乾燥し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで50%に希釈してポリイミド樹脂溶液Dを得た。
【0069】
参考例5)
500mL四つ口フラスコにトルエン100g、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン15gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。ビニルノルボルネン12.5g、トルエン10g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から3時間後にH-NMRでアリル基の反応率が100%であることを確認し、60℃冷却した。その後、アリルコハク酸無水物1.5gとトルエン3gの混合溶液を滴下した。滴下終了から5時間後にH-NMRでアリルコハク酸無水物の二重結合の反応率が100%であることを確認し、冷却した反応を終了した。トルエンを減圧留去し、酸無水物基を末端に有する変性シロキサン化合物Eを得た。
【0070】
次に、200mLのフラスコ中に、溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド20g、上記で得た変性シロキサン化合物Eを2.5g、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5gを投入し、室温、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。さらにN,N-ジメチルホルムアミド5g、ピリジン0.8g、無水酢酸1.5gを順次フラスコに投入し、90℃に加熱しながら3時間撹拌した。常温に戻ってから、フラスコに500mLのイソプロピルアルコールを投入し、析出物を回収した。更に500mLリットルのイソプロピルアルコールで洗浄を3回行い、得られた析出物を80℃で6時間減圧乾燥し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで50%に希釈してポリイミド樹脂溶液Eを得た。
【0071】
参考例6)
500mL四つ口フラスコにトルエン100g、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン15gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン11g、トルエン10g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から3時間後にH-NMRでアリル基の反応率が100%であることを確認し、60℃冷却した。その後、アリルコハク酸無水物1.5gとトルエン3gの混合溶液を滴下した。滴下終了から5時間後にH-NMRでアリルコハク酸無水物の二重結合の反応率が100%であることを確認し、冷却した反応を終了した。トルエンを減圧留去し、酸無水物基を末端に有する変性シロキサン化合物Fを得た。
【0072】
次に、200mLのフラスコ中に、溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド20g、上記で得た変性シロキサン化合物Fを2.5g、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5gを投入し、室温、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。さらにN,N-ジメチルホルムアミド5g、ピリジン0.8g、無水酢酸1.5gを順次フラスコに投入し、90℃に加熱しながら3時間撹拌した。常温に戻ってから、フラスコに500mLのイソプロピルアルコールを投入し、析出物を回収した。更に500mLリットルのイソプロピルアルコールで洗浄を3回行い、得られた析出物を80℃で6時間減圧乾燥し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで50%に希釈してポリイミド樹脂溶液Fを得た。
【0073】
参考例7)
500mL四つ口フラスコにトルエン100g、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン15gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。1,1,5,5-テトラメチルジビニル-3,3-ジフェニルトリシロキサン12g、トルエン10g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から3時間後にH-NMRでアリル基の反応率が100%であることを確認し、60℃冷却した。その後、アリルコハク酸無水物1.5gとトルエン3gの混合溶液を滴下した。滴下終了から5時間後にH-NMRでアリルコハク酸無水物の二重結合の反応率が100%であることを確認し、冷却した反応を終了した。トルエンを減圧留去し、酸無水物基を末端に有する変性シロキサン化合物Gを得た。
【0074】
次に、200mLのフラスコ中に、溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド20g、上記で得た変性シロキサン化合物Gを2.5g、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5gを投入し、室温、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。さらにN,N-ジメチルホルムアミド5g、ピリジン0.8g、無水酢酸1.5gを順次フラスコに投入し、90℃に加熱しながら3時間撹拌した。常温に戻ってから、フラスコに500mLのイソプロピルアルコールを投入し、析出物を回収した。更に500mLリットルのイソプロピルアルコールで洗浄を3回行い、得られた析出物を80℃で6時間減圧乾燥し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで50%に希釈してポリイミド樹脂溶液Hを得た。
【0075】
(実施例8)
500mL四つ口フラスコにトルエン100g、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン15gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。ジアリルモノメチルイソシアヌレート9g、トルエン10g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から3時間後に1H-NMRでアリル基の反応率が100%であることを確認し、60℃冷却した。その後、イタコン酸無水物1.3gとトルエン3gの混合溶液を滴下した。滴下終了から5時間後に1H-NMRでイタコン酸無水物の二重結合の反応率が100%であることを確認し、冷却した反応を終了した。トルエンを減圧留去し、酸無水物基を末端に有する変性シロキサン化合物Hを得た。
【0076】
次に、200mLのフラスコ中に、溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド20g、上記で得た変性シロキサン化合物Hを2.5g、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5gを投入し、室温、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。さらにN,N-ジメチルホルムアミド5g、ピリジン0.8g、無水酢酸1.5gを順次フラスコに投入し、90℃に加熱しながら3時間撹拌した。常温に戻ってから、フラスコに500mLのイソプロピルアルコールを投入し、析出物を回収した。更に500mLリットルのイソプロピルアルコールで洗浄を3回行い、得られた析出物を80℃で6時間減圧乾燥し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで50%に希釈してポリイミド樹脂溶液Iを得た。
【0077】
(実施例9)
500mL四つ口フラスコにトルエン100g、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン15gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。ジアリルモノメチルイソシアヌレート9g、トルエン10g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0163gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から3時間後に1H-NMRでアリル基の反応率が100%であることを確認し、60℃冷却した。その後、マレイン酸無水物1.0gとトルエン3gの混合溶液を滴下した。滴下終了から5時間後に1H-NMRでマレイン酸無水物の二重結合の反応率が100%であることを確認し、冷却した反応を終了した。トルエンを減圧留去し、酸無水物基を末端に有する変性シロキサン化合物Iを得た。
【0078】
次に、200mLのフラスコ中に、溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド20g、上記で得た変性シロキサン化合物Iを2.5g、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5gを投入し、室温、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。さらにN,N-ジメチルホルムアミド5g、ピリジン0.8g、無水酢酸1.5gを順次フラスコに投入し、90℃に加熱しながら3時間撹拌した。常温に戻ってから、フラスコに500mLのイソプロピルアルコールを投入し、析出物を回収した。更に500mLリットルのイソプロピルアルコールで洗浄を3回行い、得られた析出物を80℃で6時間減圧乾燥し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで50%に希釈してポリイミド樹脂溶液Jを得た。
【0079】
(比較例1)
200mLのフラスコ中に、溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド20g、シロキサンジアミン(商品名:KF-8010、信越化学工業株式会社製)を1.5g、2,2’-ヘキサフルオロプロピリデンジフタル酸二無水物2.5gを投入し、室温、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。さらにN,N-ジメチルホルムアミド5g、ピリジン0.8g、無水酢酸1.5gを順次フラスコに投入し、90℃に加熱しながら3時間撹拌した。常温に戻ってから、フラスコに500mLのイソプロピルアルコールを投入し、析出物を回収した。更に500mLリットルのイソプロピルアルコールで洗浄を3回行い、得られた析出物を80℃で6時間減圧乾燥し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで50%に希釈してポリイミド樹脂溶液Jを得た。
【0080】
(比較例2)
200mLのフラスコ中に、溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド20g、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5g、2,2’-ヘキサフルオロプロピリデンジフタル酸二無水物2.5gを投入し、室温、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。さらにN,N-ジメチルホルムアミド5g、ピリジン0.8g、無水酢酸1.5gを順次フラスコに投入し、90℃に加熱しながら3時間撹拌した。常温に戻ってから、フラスコに500mLのイソプロピルアルコールを投入し、析出物を回収した。更に500mLリットルのイソプロピルアルコールで洗浄を3回行い、得られた析出物を80℃で6時間減圧乾燥し、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで50%に希釈してポリイミド樹脂溶液Kを得た。
【0081】
(結果)
実施例1~3、8、9、参考例4~7および比較例1、2で得られたポリイミド樹脂溶液に対し、前述の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、半導体やディスプレイ等のエレクトロニクスデバイス用の絶縁層間膜、接着剤、コーティング剤および封止剤等の様々な分野で利用することができる。