(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240712BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240712BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240712BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20240712BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20240712BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240712BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/13
H01M50/548
H01M50/545
H01M50/531
(21)【出願番号】P 2020111725
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富沢 祥江
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大悟
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207540(JP,A)
【文献】国際公開第2020/111166(WO,A1)
【文献】特開2011-216235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 50/543
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質を含む複数の固体電解質層と、電極活物質を含む複数の内部電極とが交互に積層され、略直方体形状を有し、積層方向端の2面以外の2側面に複数の前記内部電極が交互に露出する積層チップと、
前記2側面に接するように形成された1対の外部電極と、を備え、
異なる外部電極に接続された隣接する2つの内部電極が平面視で交差する交差部において、前記固体電解質層の厚みSEは1μm以上50μm以下であり、
前記2つの内部電極それぞれの厚みEL1,EL2は、1μm以上200μm以下であり、
前記2つの内部電極が平面視で交差しない
2つの非交差部において、接触する外部電極と当該外部電極と離間する内部電極との距離方向の長さEMが50μm以上800μm以下であり、
前記2つの非交差部においてEM/(SE+EL1/4+EL2/4)は、20以下であることを特徴とする全固体電池。
【請求項2】
EM/(SE+EL1/4+EL2/4)は、0.2以上であることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
固体電解質を含む複数の固体電解質層と、電極活物質を含む複数の内部電極とが交互に積層され、略直方体形状を有し、積層方向端の2面以外の2側面に複数の前記内部電極が交互に露出する積層チップと、
前記2側面に接するように形成された1対の外部電極と、を備え、
前記内部電極は、2層の内部電極層によって導電性材料を主成分とする集電体層が挟まれた構造を有し、
異なる外部電極に接続された隣接する2つの内部電極が平面視で交差する交差部において、前記固体電解質層の厚みSEは1μm以上50μm以下であり、
前記2つの内部電極について、
前記2層の内部電極層の合計厚みを、それぞれ厚みEL1,EL2とした場合に、前記厚みEL1,EL2は、1μm以上200μm以下であり、
前記2つの内部電極が平面視で交差しない
2つの非交差部において、接触する外部電極と当該外部電極と離間する内部電極との距離方向の長さEMが50μm以上800μm以下であり、
前記2つの非交差部において、EM/(SE+EL1/4+EL2/4)は、20以下であることを特徴とする全固体電池。
【請求項4】
EM/(SE+EL1/4+EL2/4)は、0.2以上であることを特徴とする請求項3に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池が様々な分野で利用されている。電解液を用いた二次電池には、電解液の漏液等の問題がある。そこで、固体電解質を備え、他の構成要素も固体で構成した全固体電池の開発が行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-216235号公報
【文献】特開2011-129474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全固体電池においては、充放電に伴う活物質の体積膨張収縮が長期サイクル安定性を低下させる要因となっている。特に焼結型の酸化物系全固体電池では、この体積膨張収縮により電極層と固体電解質層などとの部材同士の接点の減少が起こると、正常な電池動作ができなくなる。また、電極層および固体電解質層の厚みが適正範囲内にないと、ショートの発生や、応答性の低下などにより正常な電池動作ができなくなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、正常な電池動作を実現することができる全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る全固体電池は、固体電解質を含む複数の固体電解質層と、電極活物質を含む複数の内部電極とが交互に積層され、略直方体形状を有し、積層方向端の2面以外の2側面に複数の前記内部電極が交互に露出する積層チップと、前記2側面に接するように形成された1対の外部電極と、を備え、異なる外部電極に接続された隣接する2つの内部電極が平面視で交差する交差部において、前記固体電解質層の厚みSEは1μm以上50μm以下であり、前記2つの内部電極それぞれの厚みEL1,EL2は、1μm以上200μm以下であり、前記2つの内部電極が平面視で交差しない2つの非交差部の少なくとも一方において、接触する外部電極と当該外部電極と離間する内部電極との距離方向の長さEMが50μm以上800μm以下であり、EM/(SE+EL1/4+EL2/4)は、20以下であることを特徴とする。
【0007】
上記全固体電池において、EM/(SE+EL1/4+EL2/4)は、0.2以上としてもよい。
【0008】
本発明に係る他の全固体電池は、固体電解質を含む複数の固体電解質層と、電極活物質を含む複数の内部電極とが交互に積層され、略直方体形状を有し、積層方向端の2面以外の2側面に複数の前記内部電極が交互に露出する積層チップと、前記2側面に接するように形成された1対の外部電極と、を備え、前記内部電極は、2層の内部電極層によって導電性材料を主成分とする集電体層が挟まれた構造を有し、異なる外部電極に接続された隣接する2つの内部電極が平面視で交差する交差部において、前記固体電解質層の厚みSEは1μm以上50μm以下であり、前記2つの内部電極について、2層の内部電極層の合計厚みを、それぞれ厚みEL1,EL2とした場合に、前記厚みEL1,EL2は、1μm以上200μm以下であり、前記2つの内部電極が平面視で交差しない2つの非交差部の少なくとも一方において、接触する外部電極と当該外部電極と離間する内部電極との距離方向の長さEMが50μm以上800μm以下であり、EM/(SE+EL1/4+EL2/4)は、20以下であることを特徴とする。
【0009】
上記全固体電池において、EM/(SE+EL1/4+EL2/4)は、0.2以上としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、正常な電池動作を実現することができる全固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】全固体電池の基本構造を示す模式的断面図である。
【
図2】(a)および(b)は実施形態に係る全固体電池の模式的断面図である。
【
図3】(a)および(b)は各寸法を例示する図である。
【
図4】全固体電池の製造方法のフローを例示する図である。
【
図5】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
【
図6】(a)および(b)は他の実施形態に係る全固体電池の模式的断面図である。
【
図7】(a)および(b)は各寸法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、全固体電池100の基本構造を示す模式的断面図である。
図1で例示するように、全固体電池100は、第1内部電極10と第2内部電極20とによって、固体電解質層30が挟持された構造を有する。第1内部電極10は、固体電解質層30の第1主面上に形成されている。第2内部電極20は、固体電解質層30の第2主面上に形成されている。
【0014】
全固体電池100を二次電池として用いる場合には、第1内部電極10および第2内部電極20の一方を正極として用い、他方を負極として用いる。本実施形態においては、一例として、第1内部電極10を正極として用い、第2内部電極20を負極として用いるものとする。
【0015】
固体電解質層30は、イオン伝導性を有する固体電解質を主成分とする。固体電解質層30の固体電解質は、例えばリチウムイオン伝導性を有する酸化物系の固体電解質である。当該固体電解質は、例えば、NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質である。NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質は、高い導電率を有するとともに、大気中で安定しているという性質を有している。リン酸塩系固体電解質は、例えば、リチウムを含んだリン酸塩である。当該リン酸塩は、特に限定されるものではないが、例えば、Tiとの複合リン酸リチウム塩(例えば、LiTi2(PO4)3)などが挙げられる。または、TiをGe,Sn,Hf,Zrなどといった4価の遷移金属に一部あるいは全部置換することもできる。また、Li含有量を増加させるために、Al,Ga,In,Y,Laなどの3価の遷移金属に一部置換してもよい。より具体的には、例えば、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3や、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3などが挙げられる。例えば、第1内部電極10および第2内部電極20に含有されるオリビン型結晶構造をもつリン酸塩が含む遷移金属と同じ遷移金属を予め添加させたLi-Al-Ge-PO4系材料が好ましい。例えば、第1内部電極10および第2内部電極20にCoおよびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、Coを予め添加したLi-Al-Ge-PO4系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。この場合、電極活物質が含む遷移金属の電解質への溶出を抑制する効果が得られる。第1内部電極10および第2内部電極20にCo以外の遷移元素およびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、当該遷移金属を予め添加したLi-Al-Ge-PO4系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。
【0016】
第1内部電極10および第2内部電極20のうち、少なくとも、正極として用いられる第1内部電極10は、オリビン型結晶構造をもつ物質を電極活物質として含有する。第2内部電極20も、当該電極活物質を含有していることが好ましい。このような電極活物質として、遷移金属とリチウムとを含むリン酸塩が挙げられる。オリビン型結晶構造は、天然のカンラン石(olivine)が有する結晶であり、X線回折において判別することができる。
【0017】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質の典型例として、Coを含むLiCoPO4などを用いることができる。この化学式において遷移金属のCoが置き換わったリン酸塩などを用いることもできる。ここで、価数に応じてLiやPO4の比率は変動し得る。なお、遷移金属として、Co,Mn,Fe,Niなどを用いることが好ましい。
【0018】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質は、正極として作用する第1内部電極10においては、正極活物質として作用する。例えば、第1内部電極10にのみオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合には、当該電極活物質が正極活物質として作用する。第2内部電極20にもオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合に、負極として作用する第2内部電極20においては、その作用メカニズムは完全には判明してはいないものの、負極活物質との部分的な固溶状態の形成に基づくと推察される、放電容量の増大、ならびに、放電に伴う動作電位の上昇という効果が発揮される。
【0019】
第1内部電極10および第2内部電極20の両方ともオリビン型結晶構造をもつ電極活物質を含有する場合に、それぞれの電極活物質には、好ましくは、互いに同一であっても異なっていてもよい遷移金属が含まれる。「互いに同一であっても異なっていてもよい」ということは、第1内部電極10および第2内部電極20が含有する電極活物質が同種の遷移金属を含んでいてもよいし、互いに異なる種類の遷移金属が含まれていてもよい、ということである。第1内部電極10および第2内部電極20には一種だけの遷移金属が含まれていてもよいし、二種以上の遷移金属が含まれていてもよい。好ましくは、第1内部電極10および第2内部電極20には同種の遷移金属が含まれる。より好ましくは、両電極が含有する電極活物質は化学組成が同一である。第1内部電極10および第2内部電極20に同種の遷移金属が含まれていたり、同組成の電極活物質が含まれていたりすることにより、両内部電極層の組成の類似性が高まるので、全固体電池100の端子の取り付けを正負逆にしてしまった場合であっても、用途によっては誤作動せずに実使用に耐えられるという効果を有する。
【0020】
第1内部電極10および第2内部電極20のうち第2内部電極20に、負極活物質として公知である物質をさらに含有させてもよい。一方の電極だけに負極活物質を含有させることによって、当該一方の電極は負極として作用し、他方の電極が正極として作用することが明確になる。一方の電極だけに負極活物質を含有させる場合には、当該一方の電極は第2内部電極20であることが好ましい。なお、両方の電極に負極活物質として公知である物質を含有させてもよい。電極の負極活物質については、二次電池における従来技術を適宜参照することができ、例えば、チタン酸化物、リチウムチタン複合酸化物、リチウムチタン複合リン酸塩、カーボン、リン酸バナジウムリチウムなどの化合物が挙げられる。
【0021】
第1内部電極10および第2内部電極20の作製においては、これら電極活物質に加えて、イオン電導性を有する固体電解質や、導電性材料(導電助剤)などが添加されている。本実施形態においては、これらの部材については、バインダと可塑剤を水あるいは有機溶剤に均一分散させることで内部電極用ペーストを得ることができる。導電助剤として、カーボン材料が含まれていてもよい。導電助剤として、金属が含まれていてもよい。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。第1内部電極10および第2内部電極20に含まれる固体電解質は、例えば、固体電解質層30の主成分固体電解質と同じとすることができる。
【0022】
図2(a)は、第1実施形態に係る全固体電池100aの模式的断面図である。全固体電池100aは、複数の電池単位が積層された積層型の全固体電池である。全固体電池100aは、略直方体形状を有する積層チップ60を備える。積層チップ60において、積層方向端の上面および下面以外の4面のうちの2面である2側面に接するように、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bが設けられている。当該2側面は、隣接する2側面であってもよく、互いに対向する2側面であってもよい。本実施形態においては、互いに対向する2側面(以下、2端面と称する)に接するように第1外部電極40aおよび第2外部電極40bが設けられているものとする。
【0023】
以下の説明において、全固体電池100と同一の組成範囲、同一の厚み範囲、および同一の粒度分布範囲を有するものについては、同一符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0024】
全固体電池100aにおいては、複数の第1内部電極10と複数の第2内部電極20とが、固体電解質層30を介して交互に積層されている。複数の第1内部電極10の端縁は、積層チップ60の第1端面に露出し、第2端面には露出していない。複数の第2内部電極20の端縁は、積層チップ60の第2端面に露出し、第1端面には露出していない。それにより、第1内部電極10および第2内部電極20は、第1外部電極40aと第2外部電極40bとに、交互に導通している。なお、固体電解質層30は、第1外部電極40aから第2外部電極40bにかけて延在している。このように、全固体電池100aは、複数の電池単位が積層された構造を有している。
【0025】
第1内部電極10、固体電解質層30および第2内部電極20の積層構造の上面(
図2(a)の例では、最上層の第1内部電極10の上面)に、カバー層50が積層されている。また、当該積層構造の下面(
図2(a)の例では、最下層の第1内部電極10の下面)にも、カバー層50が積層されている。カバー層50は、例えば、Al、Zr、Tiなどを含む無機材料(例えば、Al
2O
3、ZrO
2、TiO
2など)を主成分とする。カバー層50は、固体電解質層30の主成分を主成分として含んでいてもよい。
【0026】
図2(b)で例示するように、第1外部電極40aに接続された第1内部電極10と、第2外部電極40bに接続された第2内部電極20とが対向する領域は、全固体電池100aにおいて電池動作する領域である。当該電池動作する領域は、第1内部電極10および第2内部電極20に対する平面視において、第1内部電極10と第2内部電極20とが交差する領域であるため、交差部70と称する。すなわち、交差部70は、異なる極性の外部電極に接続されて隣接する内部電極同士が対向する領域である。
【0027】
第1外部電極40aに接続された第1内部電極10同士が、第2外部電極40bに接続された第2内部電極20を介さずに対向する領域を、非交差部80aと称する。また、第2外部電極40bに接続された第2内部電極20同士が、第1外部電極40aに接続された第1内部電極10を介さずに対向する領域は、非交差部80bと称する。非交差部80a,80bは、第1内部電極10および第2内部電極20に対する平面視において、第1内部電極10と第2内部電極20とが交差しない領域である。すなわち、非交差部80a,80bは、同じ外部電極に接続された内部電極が極性の異なる外部電極に接続された内部電極を介さずに対向する領域である。非交差部80a,80bは、電池動作しにくい領域である。
【0028】
全固体電池100aにおいては、充放電に伴う活物質の体積膨張収縮が、クラックなどを引き起こし、長期サイクル安定性を低下させる要因となっている。特に、焼結型の酸化物系全固体電池では、この体積膨張収縮により、第1内部電極10と固体電解質層30との接点減少および第2内部電極20と固体電解質層30との接点減少が起きると、正常な電池動作ができなくなる。したがって、接点の減少を抑制することが全固体電池100aの長期信頼性および性能向上に求められる。
【0029】
非交差部80a,80bが電池動作しにくいと、充電時の活物質の体積膨張収縮により、同一電極内の交差部70と非交差部80a,80bとの間で体積のずれが生じ、境界部の部材同士の接点が減少し、正常な電池動作ができなくなる可能性がある。そこで、本実施形態に係る全固体電池100aは、非交差部80a,80bが電池動作しやすい構造を有している。すなわち、全固体電池100aは、全固体電池100aの全体の電池動作における非交差部80a,80bの電池動作割合が高い構造を有している。それにより、第1内部電極10と固体電解質層30との接点減少および第2内部電極20と固体電解質層30との接点減少を抑制することができる。
【0030】
まず、第1内部電極10および第2内部電極20が薄いと、全固体電池100a全体の容量密度が低くなるおそれがある。一方、第1内部電極10および第2内部電極20が厚いと、全固体電池100a全体の応答性が低下するおそれがある。次に、固体電解質層30が薄いと、ショートが発生するおそれがあり、全固体電池100a全体の信頼性が低下するおそれがある。一方、固体電解質層30が厚いと、全固体電池100a全体の応答性が低下するおそれがある。以上のことから、第1内部電極10の厚みに上限および下限を設けることが好ましく、第2内部電極20の厚みに上限および下限を設けることが好ましく、固体電解質層30の厚みに上限および下限を設けることが好ましい。
【0031】
図3(a)で例示するように、
図2(b)で例示した交差部70における固体電解質層30の1層あたりの平均厚みを厚みSEとする。第1内部電極10の1層あたりの平均厚みを厚みEL1とする。第2内部電極20の1層あたりの平均厚みを厚みEL2とする。第1外部電極40aと第2内部電極20の端部との距離方向において、
図2(b)で例示した非交差部80aの長さを長さEM1とする。第2外部電極40bと第1内部電極10の端部との距離方向において、
図2(b)で例示した非交差部80bの長さを長さEM2とする。
【0032】
本実施形態においては、厚みSEは、1μm以上である。厚みSEは、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、厚みSEは、50μm以下である。厚みSEは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0033】
また、厚みEL1は、200μm以下である。厚みEL1は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。また、厚みEL2は、200μm以下である。厚みEL2は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。厚みEL1は、1μm以上である。厚みEL1は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、厚みEL2は、1μm以上である。厚みEL2は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
【0034】
非交差部80a,80bが短いと、非交差部80a,80bの電池動作割合が高くなる。非交差部80a,80bにおける電極の任意の箇所と、対極端との平均距離が小さくなるからである。一方、非交差部80a,80bが短すぎると、
内部電極と、極性の異なる外部電極との距離が短くなるため、ショートが発生するショート率が高くなるおそれがある。以上のことから、長さEM1および長さEM2に上限および下限を設けることが好ましい。本実施形態においては、長さEM1は、50μm以上である。長さEM1は、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましい。長さEM1は、800μm以下である。長さEM1は、600μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましい。
【0035】
次に、
図3(b)で例示するように、a=SE+EL1/4+EL2/4とする。c1=EM1とする。c2=EM2とする。長さaおよび長さc1を直交する2辺とした場合の斜辺の長さをb1とする。長さaおよび長さc2を直交する2辺とした場合の斜辺の長さをb2とする。
【0036】
b1/aが小さいと、第1内部電極10と第2内部電極20との距離に対して、第2内部電極20から、第1内部電極10のうち最も離れた箇所である第1外部電極40a近傍までの距離が短いことになる。この場合、非交差部80aの電池動作割合が高くなる。そこで、b1/aは小さいことが好ましい。b1/aはc1/aに略比例することから、本実施形態においてはc1/aを小さい値とする。本実施形態においては、c1/aは、20以下である。c1/aは、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0037】
一方、b1/aが小さすぎると、ショートのリスクが高まるおそれがある。そこで、b1/aに下限を設けることが好ましい。例えば、b1/aは、0.2以上であることが好ましく、0.77以上であることがより好ましく、2.14以上であることがさらに好ましい。
【0038】
b2/aが小さいと、第1内部電極10と第2内部電極20との距離に対して、第1内部電極10から、第2内部電極20のうち最も離れた箇所である、第2外部電極40b近傍までの距離が短いことになる。この場合、非交差部80bの電池動作割合が高くなる。そこで、b2/aは小さいことが好ましい。b2/aはc2/aに略比例することから、本実施形態においてはc2/aを小さい値とする。本実施形態においては、c2/aは、20以下である。c2/aは、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0039】
一方、b2/aが小さすぎると、ショートのリスクが高まるおそれがある。そこで、b2/aに下限を設けることが好ましい。例えば、b2/aは、0.2以上であることが好ましく、0.77以上であることがより好ましく、2.14以上であることがさらに好ましい。
【0040】
続いて、
図2(a)で例示した全固体電池100aの製造方法について説明する。
図4は、全固体電池100aの製造方法のフローを例示する図である。
【0041】
(固体電解質層用の原料粉末作製工程)
まず、上述の固体電解質層30を構成する固体電解質層用の原料粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、固体電解質層用の原料粉末を作製することができる。得られた原料粉末を乾式粉砕することで、所望の平均粒径に調整することができる。例えば、5mmφのZrO2ボールを用いた遊星ボールミルで、所望の平均粒径に調整する。
【0042】
(カバー層用の原料粉末作製工程)
まず、上述のカバー層50を構成するセラミックスの原料粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、カバー層用の原料粉末を作製することができる。得られた原料粉末を乾式粉砕することで、所望の平均粒径に調整することができる。例えば、5mmφのZrO2ボールを用いた遊星ボールミルで、所望の平均粒径に調整する。
【0043】
(内部電極用ペースト作製工程)
次に、上述の第1内部電極10および第2内部電極20の作製用の内部電極用ペーストを作製する。例えば、導電助剤、電極活物質、固体電解質材料、焼結助剤、バインダ、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで内部電極用ペーストを得ることができる。固体電解質材料として、上述した固体電解質ペーストを用いてもよい。導電助剤として、カーボン材料を用いる。導電助剤として、さらに金属を用いてもよい。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金や各種カーボン材料などをさらに用いてもよい。第1内部電極10と第2内部電極20とで組成が異なる場合には、それぞれの内部電極用ペーストを個別に作製すればよい。
【0044】
(外部電極用ペースト作製工程)
次に、上述の第1外部電極40aおよび第2外部電極40bの作製用の外部電極用ペーストを作製する。例えば、導電性材料、ガラスフリット、バインダ、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで外部電極用ペーストを得ることができる。
【0045】
(固体電解質グリーンシート作製工程)
固体電解質層用の原料粉末を、結着材、分散剤、可塑剤などとともに、水性溶媒あるいは有機溶媒に均一に分散させて、湿式粉砕を行うことで、所望の平均粒径を有する固体電解質スラリを得る。このとき、ビーズミル、湿式ジェットミル、各種混練機、高圧ホモジナイザーなどを用いることができ、粒度分布の調整と分散とを同時に行うことができる観点からビーズミルを用いることが好ましい。得られた固体電解質スラリにバインダを添加して固体電解質ペーストを得る。得られた固体電解質ペーストを塗工することで、固体電解質グリーンシート51を作製することができる。塗工方法は、特に限定されるものではなく、スロットダイ方式、リバースコート方式、グラビアコート方式、バーコート方式、ドクターブレード方式などを用いることができる。湿式粉砕後の粒度分布は、例えば、レーザ回折散乱法を用いたレーザ回折測定装置を用いて測定することができる。
【0046】
(積層工程)
図5(a)で例示するように、固体電解質グリーンシート51の一面に、内部電極用ペースト52を印刷する。なお、内部電極用ペースト52の厚みは、固体電解質グリーンシート51の厚み以上とする。固体電解質グリーンシート51上で内部電極用ペースト52が印刷されていない領域には、逆パターン53を印刷する。逆パターン53として、固体電解質グリーンシート51と同様のものを用いることができる。印刷後の複数の固体電解質グリーンシート51を、交互にずらして積層する。
図5(b)で例示するように、積層方向の上下から、カバーシート54を圧着することで、積層体を得る。この場合、当該積層体において、2端面に交互に、内部電極用ペースト52が露出するように、略直方体形状の積層体を得る。カバーシート54は、固体電解質グリーンシート作製工程と同様の手法でカバー層用の原料粉末を塗工することで形成することができる。カバーシート54は、固体電解質グリーンシート51よりも厚く形成しておく。塗工時に厚くしてもよく、塗工したシートを複数枚重ねることで厚くしてもよい。
【0047】
次に、2端面のそれぞれに、ディップ法等で外部電極用ペースト55を塗布して乾燥させる。これにより、全固体電池100aを形成するための成型体が得られる。
【0048】
(焼成工程)
次に、得られた積層体を焼成する。焼成の条件は酸化性雰囲気下あるいは非酸化性雰囲気下で、最高温度を好ましくは400℃~1000℃、より好ましくは500℃~900℃などとすることが特に限定なく挙げられる。最高温度に達するまでにバインダを十分に除去するために酸化性雰囲気において最高温度より低い温度で保持する工程を設けてもよい。プロセスコストを低減するためにはできるだけ低温で焼成することが望ましい。焼成後に、再酸化処理を施してもよい。以上の工程により、全固体電池100aが生成される。
【0049】
(第2実施形態)
図6(a)および
図6(b)は、第2実施形態に係る全固体電池100bを例示する図である。
図6(a)および
図6(b)で例示するように、全固体電池100bが全固体電池100aと異なる点は、第1内部電極10の代わりに第1内部電極10bが備わり、第2内部電極20の代わりに第2内部電極20bが備わっている点である。
図6(a)で例示するように、第1内部電極10bは、2層の第1内部電極層11によって1層の第1集電体層12が挟まれた構造を有する。第2内部電極20bは、2層の第2内部電極層21によって1層の第2集電体層22が挟まれた構造を有する。第1内部電極層11は、第1内部電極10と同様の材料からなる。第2内部電極層21は、第2内部電極20と同様の材料からなる。第1集電体層12および第2集電体層22は、導電性材料を主成分とする。例えば、第1集電体層12および第2集電体層22の導電性材料として、金属、カーボンなどを用いることができる。第1集電体層12を第1外部電極40aに接続し、第2集電体層22を第2外部電極40bに接続することで、集電効率が向上する。
【0050】
図7(a)は、全固体電池100bにおける各厚みの定義を例示する図である。
図7(a)で例示するように、全固体電池100bにおいては、厚みSEは、
図6(b)で例示した交差部70における固体電解質層30の1層あたりの平均厚みと定義することができる。厚みEL1の2分の1は、第1内部電極層11の1層あたりの平均厚みと定義することができる。したがって、厚みEL2の2分の1は、第2内部電極層21の1層あたりの平均厚みと定義することができる。このように定義することで、第1内部電極10bにおいて第1集電体層12を除いた部分の平均厚みがEL1と定義される。また、第2内部電極20bにおいて第2集電体層22を除いた部分の平均厚みがEL2と定義される。
【0051】
次に、
図7(b)で例示するように、a=SE+EL1/4+EL2/4と定義することができる。c1=EM1とし、c2=EM2とすると、長さaおよび長さc1を直交する2辺とした場合の斜辺の長さをb1と定義することができ、長さaおよび長さc2を直交する2辺とした場合の斜辺の長さをb2と定義することができる。
【0052】
なお、第1実施形態において説明した製造工程において、内部電極用ペーストと、導電性材料を含む集電体用ペーストと、内部電極用ペーストとを順に積層して焼成することで、全固体電池100bの第1内部電極10bおよび第2内部電極20bを形成することができる。
【実施例】
【0053】
以下、第1実施形態に従って全固体電池を作製し、特性について調べた。
【0054】
(実施例1)
所定の粒子径を有するリン酸塩系固体電解質に焼結助剤を添加し、分散媒中で分散させて固体電解質スラリを作製した。得られた固体電解質スラリにバインダを添加することで、固体電解質ペーストを作製した。固体電解質ペーストを塗工することで、グリーンシートを作製した。
【0055】
電極活物質および固体電解質材料を湿式ビーズミル等で高分散化し、セラミックス粒子のみからなるセラミックスペーストを作製した。次に、セラミックスペーストと導電性材料とをよく混合し、内部電極用ペーストを作製した。
【0056】
固体電解質グリーンシート上に、所定のパターンのスクリーンを用いて、内部電極用ペーストを印刷した。印刷後のシートを、左右に電極が引き出されるようにずらして100枚重ねた。
【0057】
所定の粒子径を有するリン酸塩系固体電解質に焼結助剤を添加し、分散媒中で分散させて固体電解質スラリを作製した。得られた固体電解質スラリにバインダを添加することで、カバーシート用ペーストを作製した。カバーシート用ペーストを塗工することで、カバーシートを作製した。
【0058】
固体電解質グリーンシートを重ねたものをカバー層として上下に貼り付け、熱加圧プレスにより圧着し、ダイサーにて積層体を所定のサイズにカットした。それにより、略直方体形状の積層体を得た。当該積層体において、内部電極用ペーストが露出する2端面のそれぞれに、ディップ法等で、外部電極用ペーストを塗布して乾燥させた。その後、300℃以上500℃以下で熱処理して脱脂し、900℃以下で熱処理して焼結させ焼結体を作製した。
【0059】
厚みEL1/2および厚みEL2/2は、20μmであった。厚みSEは、20μmであった。長さEM1および長さEM2は、200μmであった。c1/aおよびc2/aは、5であった。
【0060】
(実施例2)
実施例2では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が10μmであり、厚みSEが10μmであり、長さEM1および長さEM2が200μmであり、c1/aおよびc2/aが10であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0061】
(実施例3)
実施例3では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が5μmであり、厚みSEが5μmであり、長さEM1および長さEM2が200μmであり、c1/aおよびc2/aが20であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0062】
(実施例4)
実施例4では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が20μmであり、厚みSEが40μmであり、長さEM1および長さEM2が200μmであり、c1/aおよびc2/aが3.3であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0063】
(実施例5)
実施例5では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が180μmであり、厚みSEが20μmであり、長さEM1および長さEM2が200μmであり、c1/aおよびc2/aが1であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0064】
(実施例6)
実施例6では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が20μmであり、厚みSEが20μmであり、長さEM1および長さEM2が60μmであり、c1/aおよびc2/aが1.5であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0065】
(実施例7)
実施例7では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が20μmであり、厚みSEが20μmであり、長さEM1および長さEM2が700μmであり、c1/aおよびc2/aが17.5であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0066】
(比較例1)
比較例1では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が2μmであり、厚みSEが2μmであり、長さEM1および長さEM2が200μmであり、c1/aおよびc2/aが50であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0067】
(比較例2)
比較例2では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が2μmであり、厚みSEが0.5μmであり、長さEM1および長さEM2が200μmであり、c1/aおよびc2/aが80であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0068】
(比較例3)
比較例3では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が20μmであり、厚みSEが60μmであり、長さEM1および長さEM2が200μmであり、c1/aおよびc2/aが2.5であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0069】
(比較例4)
比較例4では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が230μmであり、厚みSEが20μmであり、長さEM1および長さEM2が200μmであり、c1/aおよびc2/aが0.8であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0070】
(比較例5)
比較例5では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が20μmであり、厚みSEが20μmであり、長さEM1および長さEM2が40μmであり、c1/aおよびc2/aが1であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0071】
(比較例6)
比較例6では、厚みEL1/2および厚みEL2/2が20μmであり、厚みSEが20μmであり、長さEM1および長さEM2が900μmであり、c1/aおよびc2/aが22.5であった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0072】
(ショート試験)
実施例1~7および比較例1~6のそれぞれについてショート試験を行なった。ショート試験においては、DC電圧印加試験を行なった。具体的には0.5VのDC電圧を印加し続け、1時間後の電流値が放電容量に対して規定されるCレートで0.01C以下であれば合格「○」と判定し、0.01Cを超えれば不合格「×」と判定した。
【0073】
(応答性試験)
実施例1~7および比較例1~6のそれぞれについて応答性試験を行なった。応答性試験においては、レート特性評価を行なった。具体的には0.2Cでの充放電と1Cでの充放電を行い、放電容量比(1C/0.2C)が50%以上であれば合格「○」と判定し、50%未満であれば不合格「×」と判定した。
【0074】
(非交差部の動作割合)
実施例1~7および比較例1~6のそれぞれについて、非交差部の電池動作割合について調べた。具体的には、ケルビンプローブフォース顕微鏡による表面電位分布測定を行なった。充電前後で交差部と同様の電位変化が認められた場合は合格「○」と判定し、交差部よりも少ないが電位変化が認められた場合は良好「△」と判定し、電位変化が認められない場合は不合格「×」と判定した。
【0075】
(総合判定)
ショート試験、応答性試験、および非交差部の動作割合で、1つも不合格がなければ合格「〇」と判定し、1つでも不合格があれば不合格「×」と判定した。
【0076】
ショート試験、応答性試験、非交差部の動作割合、および総合判定の結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1~7では、いずれも総合判定が合格「〇」と判定された。これは、1μm≦SE≦50μm、1≦EL1≦200μm、50μm≦EM1≦800μmおよびc1/a≦20の条件、または1μm≦SE≦50μm、1≦EL2≦200μm、50μm≦EM2≦800μmおよびc2/a≦20の条件が成立したからであると考えられる。
【0077】
一方、比較例1では、非交差部の動作割合が不合格と判定された。これは、c1/a≦20の条件、またはc2/a≦20の条件の条件が成立しなかったからであると考えられる。比較例2では、ショート試験で不合格と判定された。これは、1μm≦SEの条件が成立しなかったからであると考えられる。比較例3では、応答性試験が不合格と判定された。これは、SE≦50μmの条件が成立しなかったからであると考えられる。比較例4では、応答性試験が不合格と判定された。これは、EL1≦200μmまたはEL2≦200μmの条件が成立しなかったからであると考えられる。比較例5では、ショート試験が不合格と判定された。これは、50μm≦EM1または50μm≦EM2の条件が成立しなかったからであると考えられる。比較例6では、非交差部の動作割合が不合格と判定された。これは、c1/a≦20の条件もしくはc2/a≦20の条件の条件が成立しなかったからか、または、50μm≦EM1≦800μmの条件もしくは50μm≦EM2≦800μmの条件が成立しなかったからであると考えられる。
【0078】
なお、実施例3,7よりも、実施例1,2,4~6では、非交差部の動作割合の結果が良好となった。これは、c1/aおよびc2/aのいずれかが15以下となったからであると考えられる。
【表1】
【0079】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
10,10b 第1内部電極
11 第1内部電極層
12 第1集電体層
20,20b 第2内部電極
21 第2内部電極層
22 第2集電体層
30 固体電解質層
40a 第1外部電極
40b 第2外部電極
50 カバー層
51 固体電解質グリーンシート
52 内部電極用ペースト
53 逆パターン
54 カバーシート
55 外部電極用ペースト
60 積層チップ
100,100a,100b 全固体電池