(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D1/02 232
(21)【出願番号】P 2020144416
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝典
(72)【発明者】
【氏名】本田 孝行
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131248(JP,A)
【文献】特開2017-171317(JP,A)
【文献】特開2019-094072(JP,A)
【文献】特開2019-177908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00- 1/48
B65D 67/00-79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容される内容物の減少に伴い減容変形する内容器、および前記内容器が内装された外容器を備えるとともに、口部、胴部、および底部が、ボトル軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に配設され、
前記内容物の減少に伴い、前記外容器と前記内容器との間に外気を導入する外気導入孔を備え、
前記底部は、有底筒状に形成され、
前記底部の底壁部は、外周縁部に位置する接地部を備え、
前記外容器の前記底部のうち、少なくとも周壁部の下端部および前記接地部それぞれにおける内面および外面に、凹凸部が形成され
、
前記内容器のうち、前記外容器の前記凹凸部上に位置する対応部分と、前記外容器の前記凹凸部と、の間の少なくとも一部に隙間が設けられている、二重容器。
【請求項2】
前記底部の底壁部は、前記接地部より径方向の内側に位置し、上方に向けて窪む有頂筒状の陥没部を備え、
前記凹凸部は、前記外容器の前記底部のうち、前記陥没部の天壁を除いた部分に形成されている、請求項1に記載の二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、収容される内容物の減少に伴い減容変形する内容器、および内容器が内装された外容器を備えるとともに、口部、胴部、および底部が、ボトル軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に配設され、内容物の減少に伴い、外容器と内容器との間に外気を導入する外気導入孔を備え、底部の底壁部が、外周縁部に位置する接地部を備えた二重容器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の二重容器では、特に接地部において、内容器が外容器の内面から剥離しにくく、内容物の残量を低減させることが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、内容物の残量を低減させることができる二重容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の二重容器は、収容される内容物の減少に伴い減容変形する内容器、および前記内容器が内装された外容器を備えるとともに、口部、胴部、および底部が、ボトル軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に配設され、前記内容物の減少に伴い、前記外容器と前記内容器との間に外気を導入する外気導入孔を備え、前記底部は、有底筒状に形成され、前記底部の底壁部は、外周縁部に位置する接地部を備え、前記外容器の前記底部のうち、少なくとも周壁部の下端部および前記接地部それぞれにおける内面および外面に、凹凸部が形成され、前記内容器のうち、前記外容器の前記凹凸部上に位置する対応部分と、前記外容器の前記凹凸部と、の間の少なくとも一部に隙間が設けられている。
【0007】
本発明では、外容器の底部のうち、少なくとも周壁部の下端部および接地部それぞれにおける内面および外面に、凹凸部が形成されているので、周壁部の下端部および接地部において、内容器と外容器の内面との間に、ブロー成形時に隙間を生じさせやすくすることが可能になり、周壁部の下端部および接地部において、内容器と外容器の内面との密着を抑えることができる。これにより、例えば接地部において、内容器と外容器の内面との間に剥離剤等を設けなくても、収容される内容物の減少に伴い、接地部において、内容器を外容器の内面から剥離させやすくすることが可能になり、内容物の残量を容易に低減させることができる。
すなわち、凹凸部が、外容器の底部のうち、接地部だけでなく周壁部の下端部にも形成されているので、収容される内容物の減少に伴い、内容器が外容器の内面から剥離する過程において、周壁部に達した剥離を、接地部においても引っ掛かり少なく円滑に進行させることができる。
【0008】
前記底部の底壁部は、前記接地部より径方向の内側に位置し、上方に向けて窪む有頂筒状の陥没部を備え、前記凹凸部は、前記外容器の前記底部のうち、前記陥没部の天壁を除いた部分に形成されてもよい。
【0009】
この場合、凹凸部が、外容器の底部のうち、陥没部の天壁を除いた部分に形成されているので、底壁部における径方向の中央部に位置する、陥没部の天壁において、内容器を外容器の内面から剥離させにくくすることが可能になり、収容される内容物の減少に伴う内容器の減容変形の形状を安定させることができ、内容物の残量を確実に低減させることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、内容物の残量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る一実施形態として示した二重容器を径方向の外側から見た一部縦断面を含む側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る二重容器を説明する。
本実施形態に係る二重容器1は、
図1に示されるように、収容される内容物の減少に伴い減容変形する内容器12、および内容器12が内装された外容器11を備えている。外容器11の内面に、内容器12の外面が離間可能に設けられている。図示の例では、内容器12は、可撓性に富み、外容器11の内面に剥離可能に積層されている。
なお、外容器11の内面と内容器12の外面との間に隙間が設けられてもよい。
【0013】
二重容器1は、外容器11を形成するための外側プリフォーム内に、内容器12を形成するための内側プリフォームを嵌合した状態で、外側プリフォームおよび内側プリフォームを一体にブロー成形することで形成されている。つまり、二重容器1は、二軸延伸ブロー容器となっている。
【0014】
内容器12および外容器11の材質は合成樹脂材料とされ、互いに同材質でも構わないし異材質でも構わない。合成樹脂材料の一例としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ナイロン(ポリアミド)、およびEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)等が挙げられる。
【0015】
二重容器1は、口部13、肩部15、胴部16および底部14を備えている。口部13、肩部15、胴部16および底部14は、共通軸と同軸にこの順に配設されている。
以下、この共通軸をボトル軸Oといい、ボトル軸Oに沿う二重容器1の口部13側を上側、二重容器1の底部14側を下側という。ボトル軸O方向から見て、ボトル軸Oに交差する方向を径方向といい、ボトル軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0016】
二重容器1の口部13は、内容器12の口部と外容器11の口部とが積層されることで構成され、二重容器1の肩部15は、内容器12の肩部と外容器11の肩部とが積層されることで構成され、二重容器1の胴部16は、内容器12の胴部と外容器11の胴部とが積層されることで構成され、二重容器1の底部14は、内容器12の底部と外容器11の底部とが積層されることで構成されている。
以下の説明において、特に断りのない限り、内容器12および外容器11の双方が同様の形態となっているものとする。
【0017】
二重容器1のボトル軸O方向の大きさは、例えば、115mm以上220mm以下となっている。二重容器1の内容量は、例えば、150ml以上600ml以下となっている。図示の例では、二重容器1のボトル軸O方向の大きさは、約180mmとされ、二重容器1は、内容量が330ml用となっている。
二重容器1の口部13は、肩部15の上端部から上方に向けて延びる円筒状に形成されている。
内容器12の口部の上端部は、径方向の外側に向けて折り曲げられてフランジ状に形成され、外容器11の口部の上端開口縁に載置されている。
【0018】
外容器11の口部の外周面に、図示されないキャップが螺着される雄ねじ部18と、図示されないキャップの周壁部が外嵌される被シール突部19と、が上方から下方に向けてこの順に形成されている。被シール突部19は、外容器11の口部から径方向の外側に向けて突出し、周方向の全長にわたって連続して延びている。被シール突部19の外周面と、図示されないキャップの周壁部の内周面と、の間は、気密にシールされる。
なお、キャップは、外容器11の口部にアンダーカット嵌合されてもよい。
【0019】
外容器11の口部に、内容物の減少に伴い、内容器12との間に外気を導入する外気導入孔17が形成されている。外気導入孔17は、被シール突部19のうち、最も径方向の外側に位置して、周方向の全長にわたって連続して延びるシール面より上方に位置している。
なお、外気導入孔17の形成位置は、外容器11の口部に限定されるものではなく、例えば、外容器11のうち、口部以外の胴部、肩部、若しくは底部であってもよく、また、外容器11の口部の上端開口縁と、内容器12の口部の、フランジ状に形成された上端部の下面と、の間等であってもよい。
【0020】
肩部15は、口部13の下端部から下方に向かうに従い径方向の外側に向けて延びている。肩部15に、縦区画溝15aが周方向に間隔をあけて複数形成されている。肩部15は、径方向の外側に向けて突の曲面状に形成されている。
底部14は、有底筒状に形成されている。底部14の周壁部14bは、下方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びるとともに、径方向の外側に向けて突の曲面状に形成されている。
【0021】
胴部16の下端部16eは、下方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている。胴部16の下端部16eは、底部14の周壁部14bに段差なく連なっている。胴部16の上端部16aは、径方向の外側に向けて突の曲面状に形成されている。胴部16の上端部16aは、肩部15に段差なく連なっている。
胴部16における上端部16aおよび下端部16eの各外周面は、二重容器1において、最も外径の大きい最大外径部分を含んでいる。この最大外径部分の外径は、例えば、58mm以上74mm以下となっている。図示の例では、二重容器1の最大外径部分の外径は、約66mmとなっている。
【0022】
胴部16のうち、上端部16aと下端部16eとの間に位置する中間部分は、ボトル軸O方向に沿って外側から内側に向かうに従い径方向の内側に向けて延びるくびれ部21となっている。くびれ部21のボトル軸O方向の大きさは、胴部16のボトル軸O方向の大きさの半分以上となっている。くびれ部21のボトル軸O方向の大きさは、口部13、肩部15、および底部14それぞれのボトル軸O方向の大きさより大きくなっている。
胴部16の下端部16eとくびれ部21との接続部分に、径方向の内側に向けて窪み、周方向の全長にわたって連続して延びる周溝16dが形成されている。
【0023】
くびれ部21は、径方向の内側に向けて窪む凹曲面部16bと、径方向の外側に向けて膨出する凸曲面部16cと、が、上方から下方に向けてこの順に段差なく連ねられて構成されている。
凹曲面部16bのボトル軸O方向の大きさは、凸曲面部16cのボトル軸O方向の大きさより大きくなっている。なお、凹曲面部16bのボトル軸O方向の大きさを、凸曲面部16cのボトル軸O方向の大きさ以下としてもよい。
外容器11のうちの少なくともくびれ部(胴部)が、スクイズ変形(弾性変形)可能とされ、外容器11のスクイズ変形に伴って内容器12がしぼみ変形する。
【0024】
ここで、底部14の底壁部22は、外周縁部に位置する接地部23と、接地部23より径方向の内側に位置し、上方に向けて窪む有頂筒状の陥没部24と、を備えている。接地部23の外周縁部は、周壁部14bの下端部に接続されている。
接地部23および陥没部24は、ボトル軸Oと同軸に配設されている。陥没部24の天壁25の上下面は平坦面となっている。天壁25は、底壁部22における径方向の中央部に位置している。陥没部24の周壁26は、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている。
【0025】
図1および
図2にハッチングで示されるように、外容器11の底部のうち、少なくとも周壁部の下端部および接地部それぞれにおける内面および外面に、凹凸部27が形成されている。凹凸部27は、外容器11の底部のうち、陥没部の天壁を除いた部分に形成されている。
【0026】
図示の例では、凹凸部27は、外容器11の底部のうち、陥没部の天壁、および周壁部の上部を除く全域にわたって形成されている。凹凸部27は、外容器11における肉厚方向の全域に形成され、外容器11における内面および外面に一体に形成されている。凹凸部27は、微小な凹部および凸部がランダムにむら無く配置されて構成されている。内容器12のうち、外容器11の凹凸部27上に位置する対応部分と、外容器11の凹凸部27と、の間の少なくとも一部に隙間が設けられている。
なお、凹凸部27は、外容器11の底部における全域にわたって形成されてもよい。
【0027】
以上説明したように、本実施形態による二重容器1によれば、外容器11の底部のうち、少なくとも周壁部の下端部および接地部それぞれにおける内面および外面に、凹凸部27が形成されているので、周壁部14bの下端部および接地部23において、内容器12と外容器11の内面との間に、ブロー成形時に隙間を生じさせやすくすることが可能になり、周壁部14bの下端部および接地部23において、内容器12と外容器11の内面との密着を抑えることができる。これにより、例えば接地部23において、内容器12と外容器11の内面との間に剥離剤等を設けなくても、収容される内容物の減少に伴い、接地部23において、内容器12を外容器11の内面から剥離させやすくすることが可能になり、内容物の残量を容易に低減させることができる。
【0028】
すなわち、凹凸部27が、外容器11の底部のうち、接地部だけでなく周壁部の下端部にも形成されているので、収容される内容物の減少に伴い、内容器12が外容器11の内面から剥離する過程において、周壁部14bに達した剥離を、接地部23においても引っ掛かり少なく円滑に進行させることができる。
【0029】
凹凸部27が、外容器11の底部のうち、陥没部の天壁を除いた部分に形成されているので、底壁部22における径方向の中央部に位置する、陥没部24の天壁25において、内容器12を外容器11の内面から剥離させにくくすることが可能になり、収容される内容物の減少に伴う内容器12の減容変形の形状を安定させることができ、内容物の残量を確実に低減させることができる。
【0030】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0031】
胴部16は、くびれ部21を有さず、例えばボトル軸O方向に真直ぐ延びてもよい。
【0032】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記実施形態および前記変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 二重容器
11 外容器
12 内容器
13 口部
14 底部
16 胴部
17 外気導入孔
22 底壁部
23 接地部
24 陥没部
25 天壁
27 凹凸部
O ボトル軸