(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】モータモジュール
(51)【国際特許分類】
H02P 29/028 20160101AFI20240712BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240712BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
H02P29/028
B60R16/02 660B
B60R16/023 Z
(21)【出願番号】P 2020154618
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】藤田 篤
(72)【発明者】
【氏名】木越 勝敬
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-011710(JP,A)
【文献】特開2002-002293(JP,A)
【文献】特開2017-114228(JP,A)
【文献】特開2005-299152(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0001904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/028
B60R 16/02
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載機器の動力源であるモータと、
前記モータを駆動する駆動部と、
前記駆動部を動作させて前記モータの駆動を制御することにより前記車載機器を動作させる制御部と、
前記制御部が前記車載機器を動作させるための情報を記憶するメモリと、を備えたモータモジュールにおいて、
前記車両に構築されたネットワークを経由して通信を行う通信部をさらに備え、
前記制御部は、
前記車載機器を動作させるための、当該車載機器に特化したモータ制御用のパラメータ情報を、当該モータモジュールを管理する管理モジュールから前記通信部により受信して、前記メモリに記憶させるパラメータ学習処理と、
前記パラメータ情報が前記メモリに記憶されている場合に、前記車載機器を操作するために外部から入力された操作信号と、前記パラメータ情報とに基づいて、前記モータが所定のトルクを出力するように、前記駆動部により前記モータを駆動して、前記車載機器を動作させる通常処理と、
前記パラメータ情報が前記メモリに記憶されていない場合に、前記操作信号に基づいて、前記モータが最大のトルクを出力するように、前記駆動部により前記モータを一定時間駆動した後に停止して、前記車載機器を寸動させる寸動処理と、を実行
し、
前記パラメータ情報が前記メモリに記憶されていない場合に、当該モータモジュールから離れた位置に設置された前記管理モジュールから送信された遠隔操作信号を前記通信部により受信すると、当該遠隔操作信号を無視して、前記駆動部による前記モータの駆動を禁止する、ことを特徴とするモータモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のモータモジュールにおいて、
当該モータモジュールがいずれの車載機器用のモータモジュールであるかを示す識別情報が、前記メモリに予め記憶されており、
前記制御部は、
前記パラメータ学習処理において、前記管理モジュールから受信した前記パラメータ情報に、前記メモリに記憶された識別情報と一致する識別情報が付帯されていれば、当該パラメータ情報を前記メモリに記憶させ、
前記パラメータ情報が前記メモリに記憶されている場合に、前記操作信号が、当該モータモジュールの近くの位置に設置された操作モジュールから前記ネットワークを経由せずに入力された操作信号であるか、または、当該モータモジュールから離れた位置に設置された前記管理モジュールから前記ネットワークを経由して受信され、前記メモリに記憶された前記識別情報と一致する識別情報が付帯された遠隔操作信号であれば、前記通常処理を実行し、
前記パラメータ情報が前記メモリに記憶されていない場合に、前記操作モジュールから操作信号が入力されれば、前記寸動処理を実行する、ことを特徴とするモータモジュール。
【請求項3】
請求項2に記載のモータモジュールにおいて、
前記ネットワークを経由せずに前記操作モジュールと接続される接続部をさらに備え、
前記制御部は、
当該モータモジュールの前記接続部と前記操作モジュールに備わる接続部との接続状態に応じて印加される電圧に基づいて、当該モータモジュールの前記識別情報を決定し、当該識別情報を前記メモリに記憶させる識別情報学習処理をさらに実行する、ことを特徴とするモータモジュール。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のモータモジュールにおいて、
前記車載機器は、前記車両の所定の席に設けられたパワーウインドウ機構から成り、
前記管理モジュールは、前記所定の席から離れた位置に設けられて前記パワーウインドウ機構を遠隔操作する第1スイッチモジュールから成り、
前記操作モジュールは、前記所定の席に設けられて前記パワーウインドウ機構を操作する第2スイッチモジュールから成り、
前記制御部は、
前記通常処理において、前記第1スイッチモジュールの操作状態に応じて当該第1スイッチモジュールから送信され、前記通信部により受信したオートもしくはマニュアルでの遠隔開閉操作信号、または、前記第2スイッチモジュールの操作状態に応じて当該第2スイッチモジュールから入力された、オートもしくはマニュアルでの開閉操作信号と、前記メモリに記憶された前記パラメータ情報とに基づいて、前記モータが所定のトルクを出力するように、前記駆動部により前記モータを駆動して、前記パワーウインドウ機構の窓ガラスをオートまたはマニュアルで開閉動作させ、
前記パラメータ情報が前記メモリに記憶されていない場合に、
前記第2スイッチモジュールからマニュアルでの開操作信号が入力されると、当該開操作信号に基づいて、前記モータが最大のトルクを出力するように、前記駆動部により前記モータを駆動して、前記パワーウインドウ機構の窓ガラスをマニュアルで開動作させ、
前記第2スイッチモジュールからオートもしくはマニュアルでの閉操作信号が入力されると、当該閉操作信号に基づいて、前記モータが最大のトルクを出力するように、前記駆動部により前記モータを一定時間駆動した後に停止して、前記パワーウインドウ機構の窓ガラスを閉方向に寸動させる、ことを特徴とするモータモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたパワーウインドウ機構などの車載機器を動作させるためのモータモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載された車載機器を動作させるため、たとえば特許文献1に開示されているような、モータモジュールが用いられている。このモータモジュールは、車載機器の動力源であるモータと、モータの回転軸の回転を減速する機構と、モータの回転数を検出するセンサと、モータを駆動する駆動部と、駆動部を動作させてモータの駆動を制御する制御部などが一体化されたものである。
【0003】
また、上記の構成に加えて、車載機器を動作させるための情報を記憶するメモリと、車両に構築されたLANやCANなどのネットワークを経由して、他のモジュールや装置と通信を行う通信部が一体化されたモータモジュールもある。たとえば特許文献2および特許文献3には、そのようなモータモジュール(子機)と、当該モータモジュールを管理する管理モジュール(親機)とを含んだ車載機器制御システムが開示されている。管理モジュールは、CPUなどから成る制御部と、メモリと、車両のネットワークを経由した通信を行う通信部などを備えたECU(電子制御装置)、またはその他の機能を有するモジュールから構成されている。
【0004】
モータモジュールが車載機器の動作を制御したり、管理モジュールがモータモジュールを制御したりするには、初期設定を行う必要がある。このため、特許文献2では、子機の識別情報と、親機が子機を制御するためのドライバ(ソフトウェア)とを、予め子機のメモリに記憶させておく。初期設定時に、子機は、自身のメモリに記憶された識別情報とドライバとを、ネットワークを経由して親機に送信する。親機は、子機から識別情報とドライバを受信すると、これらを関連付けてメモリに記憶させる。この後の運用時に、親機は、ドライバで示された条件に従う制御指令を識別情報とともに子機に送信する。子機は、当該制御指令を受信して、当該制御指令に基づいてモータなどの本体部の動作を制御し、車載機器を動作させる。
【0005】
また、たとえば特許文献3には、子機が、ネットワークを経由して接続された親機または他の子機から印加される電圧に基づいて、自身の識別情報を決定する技術が開示されている。具体的には、親機に備わる電圧供給部に接続された電線に、複数の子機に備わる抵抗回路を直列に接続して、当該電線に電圧供給部から電圧を印加する。すると、子機が自身の抵抗回路の分圧値に基づいて、自身の識別情報を決定して、当該識別情報をメモリに記憶させる。
【0006】
また、たとえば特許文献4には、モータとは別体の制御部において、車両のパワーウインドウ機構を安全に開閉動作させるように、モータの駆動を制御するための情報を学習する技術が開示されている。具体的には、モータの駆動状態に応じてパルス発生器が発生したパルス信号に基づいて、制御部が、モータの回転速度などの駆動状態と、窓ガラスの開閉位置などの窓の開閉状態とを検出する。そして、窓への異物の挟み込みがないときに、制御部が、モータの駆動状態に応じてパルス発生器が発生したパルス信号のパルス幅と、パルス幅の変化率とを学習して、これらを挟み込み判定用のパラメータ情報(閾値など)としてメモリに記憶させる。
【0007】
一方、特許文献5~9には、安全性と利便性を考慮して、故障や不具合などが生じた場合に、モータやパワーウインドウ機構を寸動(インチング)させる技術が開示されている。具体的には、特許文献5では、モータに関わる故障が発生した場合、窓ガラスを一定変位量だけ移動させる。特許文献6では、窓枠センサに断線が発生した場合、窓ガラスの閉動作を寸動させる。特許文献7では、ユーザが意図せずに、窓ガラスが外力や自重で移動した後に、上昇スイッチがオンされると、モータを一定時間作動させた後に停止させて、窓ガラスの上昇をすぐに止める。特許文献8では、電圧降下により制御部がリセットされて、窓ガラスの絶対位置の学習処理が実行不可能になった場合、オート開閉操作の指令を受けても、その指令方向にモータを僅かな量だけ作動させた後、モータを停止させる。特許文献9では、窓ガラスの原点位置が未設定の場合、モータの駆動を制御して、所定カウント値だけ窓ガラスを断続的に作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2010/110112号
【文献】特開2015-20647号公報
【文献】特開2006-256547号公報
【文献】国際公開第2007/004617号
【文献】台湾実用新案登録第400957号公報
【文献】特開2001-3639号公報
【文献】特開2017-210798号公報
【文献】特開2002-2293号公報
【文献】特開2008-231878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
モータモジュールにより車載機器を安全に動作させるには、当該車載機器に特化したモータ制御用のパラメータ情報を、モータモジュールのメモリに予め記憶させておく必要がある。しかし、故障などの何らかの原因で、モータモジュールのメモリにパラメータ情報が記憶されなかった場合、モータモジュールにより車載機器を安全に動作させることができなくなるおそれがある。また、この場合、安全性を優先して、モータや車載機器の動作を禁止すると、ユーザの利便性が損なわれてしまう。
【0010】
本発明の課題は、故障などの非常時においても車載機器を安全に動作させ、かつ利便性を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のモータモジュールは、車両に搭載された車載機器の動力源であるモータと、このモータを駆動する駆動部と、この駆動部を動作させてモータの駆動を制御することにより車載機器を動作させる制御部と、この制御部が車載機器を動作させるための情報を記憶するメモリと、車両に構築されたネットワークを経由して通信を行う通信部とを備える。制御部は、車載機器を動作させるための、当該車載機器に特化したモータ制御用のパラメータ情報を、当該モータモジュールを管理する管理モジュールから通信部により受信して、メモリに記憶させる「パラメータ学習処理」を実行する。また、制御部は、パラメータ情報がメモリに記憶されている場合に、車載機器を操作するために外部から入力された操作信号と、パラメータ情報とに基づいて、モータが所定のトルクを出力するように、駆動部によりモータを駆動して、車載機器を動作させる「通常処理」を実行する。さらに、制御部は、パラメータ情報がメモリに記憶されていない場合に、外部から入力された操作信号に基づいて、モータが最大のトルクを出力するように、駆動部によりモータを一定時間駆動した後に停止して、車載機器を寸動させる「寸動処理」を実行する。一方、制御部は、パラメータ情報がメモリに記憶されていない場合に、モータモジュールから離れた位置に設置された管理モジュールから送信された遠隔操作信号を通信部により受信すると、当該遠隔操作信号を無視して、駆動部によるモータの駆動を禁止する。
【0012】
上記構成によると、モータモジュールはパラメータ学習処理により、車載機器に特化したモータ制御用のパラメータ情報を、管理モジュールからネットワークを経由して受信して、内部に有するメモリに記憶させる。その後、パラメータ情報がモータモジュールのメモリに記憶されている場合、モータモジュールは、通常処理を実行し、外部から入力された操作信号とパラメータ情報とに基づいて、モータが所定のトルクを出力するように当該モータを駆動して、車載機器を動作させる。このため、モータモジュールがパラメータ情報を保有(記憶)している通常時には、操作信号に応じて、モータモジュールにより車載機器を安全かつ確実に動作させることができる。
【0013】
また、故障などの何らかの原因で、パラメータ情報がモータモジュールのメモリに記憶されていない場合には、モータモジュールは、寸動処理を実行し、外部から入力された操作信号に基づいて、モータが最大のトルクを出力するように、当該モータを一定時間だけ駆動して、車載機器を寸動させる。このため、モータモジュールがパラメータ情報を保有(記憶)していない非常時においても、操作信号に応じて、モータモジュールにより車載機器を安全かつ確実に動作させることができ、ユーザの利便性も確保される。さらに、遠隔操作信号が受信された場合は、当該信号が無視されてモータが駆動されないので、より高い安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、故障などの非常時においてもモータモジュールにより車載機器を安全に動作させ、かつ利便性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態のパワーウインドウシステムの構成図である。
【
図2】
図1の運転席のスイッチモジュールとモータモジュールの詳細な構成図である。
【
図3】
図1の第1他席のスイッチモジュールとモータモジュールの詳細な構成図である。
【
図4】
図1の第2他席のスイッチモジュールとモータモジュールの詳細な構成図である。
【
図5】
図1の第3他席のスイッチモジュールとモータモジュールの詳細な構成図である。
【
図6】
図1のモータモジュールの動作を示したフローチャートである。
【
図7】
図1のパワーウインドウシステムの初期状態を示した図である。
【
図8】
図1のモータモジュールの識別情報の決定方法を説明する図である。
【
図9】
図1のモータモジュールの識別情報の決定方法を説明する図である
【
図10】
図1のパワーウインドウシステムの学習処理正常完了後の状態を示した図である。
【
図11】
図6の通常モードの詳細を示したフローチャートである。
【
図12】
図6の通常モードでの操作信号とモータの状態を示した図である。
【
図13】
図6の非常モードの詳細を示したフローチャートである。
【
図14】
図6の非常モードでの操作信号とモータの状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0017】
まず、実施形態のパワーウインドウシステムの構成を説明する。
【0018】
図1は、パワーウインドウシステム100の構成図である。パワーウインドウシステム100は、自動四輪車から成る車両に搭載されている。パワーウインドウシステム100には、複数のパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1D、複数のモータモジュール2A、2B、2C、2D、複数のスイッチモジュール3A、3B、3C、3D、およびネットワーク4が含まれている。
【0019】
パワーウインドウ機構1A、モータモジュール2A、およびスイッチモジュール3Aは、車両の運転席に設置されている。パワーウインドウ機構1B、モータモジュール2B、およびスイッチモジュール3Bは、車両の第1他席(たとえば助手席)に設置されている。パワーウインドウ機構1C、モータモジュール2C、およびスイッチモジュール3Cは、車両の第2他席(たとえば後部左座席)に設置されている。パワーウインドウ機構1D、モータモジュール2D、およびスイッチモジュール3Dは、車両の第3他席(たとえば後部右座席)に設置されている。
【0020】
ネットワーク4は、車両に構築された有線のLAN(Local Area Network)から構成されている。ネットワーク4には、各モータモジュール2A、2B、2C、2Dと運転席のスイッチモジュール3Aとが接続されている。他の例として、LANに代えて、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)、あるいはこれら以外の有線または無線のネットワークを車両に設けてもよい。
【0021】
パワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dは、車両の運転席、第1他席、第2他席、および第3他席の各窓の窓ガラスと、当該窓ガラスを移動させて窓を開閉させる機構などから構成されている。パワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dには、形状や部材同士の摩擦係数などといった物理的な個体差がある。パワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dは、本発明の「車載機器」の一例である。
【0022】
モータモジュール2A、2B、2C、2Dは、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dをそれぞれ動作させる動力源であるモータ23と、制御部21などを有している(詳細は後述する)。モータモジュール2A、2B、2C、2Dの各々の仕様と性能は同一である。
図1では、便宜上、各モータモジュール2A、2B、2C、2Dに備わる構成要素に同一符号を付している(後述する
図2~
図5、
図7、および
図10でも同様)。
【0023】
スイッチモジュール3A、3B、3C、3Dは、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dに窓の開閉を行わせる場合に操作する複数のスイッチを有している(詳細は後述)。スイッチモジュール3A、3B、3C、3Dは、本発明の「操作モジュール」の一例である。
【0024】
運転席のスイッチモジュール3Aは、運転席から離れた位置にある他席のパワーウインドウ機構1B、1C、1Dを遠隔操作する複数のスイッチ(詳細は後述)や、制御部31なども有している。運転席のスイッチモジュール3Aは、ネットワーク4を経由して各席のモータモジュール2A、2B、2C、2Dと通信し、モータモジュール2A、2B、2C、2Dを管理する。運転席のスイッチモジュール3Aは、本発明の「管理モジュール」の一例である。
【0025】
同じ席に設置されたモータモジュールとスイッチモジュール(2Aと3A、2Bと3B、2Cと3C、2Dと3D)とは、ネットワーク4を経由せずに、それぞれハーネス5A、5B、5C、5Dにより1対1で接続されている。各モータモジュール2A、2B、2C、2Dと運転席のスイッチモジュール3Aには、車両に搭載された車載バッテリBtから給電線6を通して電力が供給される。
【0026】
次に、各モータモジュール2A、2B、2C、2Dと各スイッチモジュール3A、3B、3C、3Dの構成を詳述する。
【0027】
図2は、運転席のモータモジュール2Aとスイッチモジュール3Aの構成図である。
図3は、第1他席のモータモジュール2Bとスイッチモジュール3Bの構成図である。
図4は、第2他席のモータモジュール2Cとスイッチモジュール3Cの構成図である。
図5は、第3他席のモータモジュール2Dとスイッチモジュール3Dの構成図である。
図2~
図5では、便宜上、対応する部分には、同一符号を付している。
【0028】
図2~
図5に示すように、各席のモータモジュール2A、2B、2C、2Dには、制御部21、駆動部22、モータ23、ロータリエンコーダ28、通信部24、接続部25、電源回路26、および電圧監視回路27などが備わっている。
【0029】
制御部21は、CPUなどから成り、内部に揮発性メモリ21a、不揮発性メモリ21b、および状態検出部21cを有している。駆動部22は、モータ23を駆動する回路から成る。制御部21は、駆動部22を動作させて、モータ23の駆動を制御し、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1D(
図1)を動作させる。制御部21の揮発性メモリ21aと不揮発性メモリ21bには、対応するモータ23およびパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dを動作させるための情報が記憶される(詳細は後述する)。このモータモジュール2A、2B、2C、2Dのメモリ21a、21bは、本発明の「メモリ」と「第2メモリ」の一例である。
【0030】
ロータリエンコーダ28は、モータ23の回転に同期したパルスを出力する。制御部21の状態検出部21cは、ロータリエンコーダ28から出力されたパルスを検出し、当該パルスに基づいてモータ23の回転速度や回転方向などの駆動状態を検出するとともに、パワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスの開閉位置や窓の開閉度などの開閉状態を検出する。制御部21は、状態検出部21cの検出結果に基づいて、駆動部22によりモータ23の駆動を制御する。
【0031】
通信部24は、ネットワーク4を経由した通信を行うための回路から成る。接続部25は、対応するスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dをハーネス5A、5B、5C、5Dによりそれぞれ接続するためのコネクタから成る。接続部25には、複数の端子Tc、To、Ta、Tgが設けられている。各端子Tc、To、Ta、Tgには、ハーネス5A、5B、5C、5Dに備わる各電線51、52、53、54の一端が接続されている。
【0032】
端子Tc、To、Taと制御部1の入力ポートP1、P2、P3とは、内部配線L1、L2、L3によりそれぞれ接続されている。内部配線L1、L2、L3上には、それぞれ抵抗Rd、Re、Rfが設けられている。また、内部配線L1上の抵抗Rdと端子Tcの間には、抵抗Raの一端と抵抗R1の一端とがそれぞれ接続されている。内部配線L2上の抵抗Reと端子Toの間には、抵抗Rbの一端と抵抗R2の一端とがそれぞれ接続されている。内部配線L3上の抵抗Rfと端子Taの間には、抵抗Rcの一端が接続されている。抵抗Ra、Rb、Rcの他端は、スイッチング素子Q1を介して電源Vcc1に接続されている。抵抗R1、R2の他端は、スイッチング素子Q2を介して電源Vcc2に接続されている。端子Tgはグランドに接地されている。
【0033】
車載バッテリBtから制御部21までの給電用の内部配線L4上には、整流ダイオードD1と電源回路26とが設けられている。内部配線L4は、外部にある給電線6と接続されている。電源回路26は、整流ダイオードD1のカソード側にあって、車載バッテリBtから供給される高電圧を所定の低電圧に変換して、制御部21に供給する。整流ダイオードD1と電源回路26の間には、電源バックアップコンデンサC1が設けられている。電圧監視回路27は、車載バッテリBtからの供給電圧のレベルを監視する。
【0034】
各席のスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dには、接続部35とスイッチW1、W2、W3などが備わっている。接続部35は、対応するモータモジュール2A、2B、2C、2Dをハーネス5A、5B、5C、5Dにより接続するためのコネクタから成る。接続部35には、複数の端子Tc1、Tc2、To1、To2、Ta1、Tg1が設けられている。このうち、端子Ta1と端子Tg1には、ハーネス5A、5B、5C、5Dの電線53の他端と電線54の他端とがそれぞれ接続されている。
【0035】
モータモジュール2A、2B、2C、2Dが、それぞれに接続されたスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dを識別できるようにするため、席に応じて、各モータモジュールと各スイッチモジュールとの間の接続状態を異ならせている。詳しくは、
図2および
図3に示すように、運転席のスイッチモジュール3Aと第1他席のスイッチモジュール3Bの端子Tc1には、ハーネス5A、5Bの電線51の他端がそれぞれ接続されている。
図4および
図5に示すように、第2他席のスイッチモジュール3Cと第3他席のスイッチモジュール3Dの端子Tc2には、ハーネス5C、5Dの電線51の他端がそれぞれ接続されている。
【0036】
また、
図2および
図4に示すように、運転席のスイッチモジュール3Aと第2他席のスイッチモジュール3Cの端子To1には、ハーネス5A、5Cの電線52の他端がそれぞれ接続されている。
図3および
図5に示すように、第1他席のスイッチモジュール3Bと第3他席のスイッチモジュール3Dの端子To2には、ハーネス5B、5Dの電線52の他端がそれぞれ接続されている。このように、モータモジュールとスイッチモジュールとの接続状態を異ならせるために、4種類のハーネスを用いることができる。
【0037】
各スイッチモジュール3A、3B、3C、3DのスイッチW1、W2、W3は、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dを操作するために、ユーザによりオン(短絡)またはオフ(開放)される。具体的には、たとえば対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dをマニュアル閉動作させるときは、スイッチW1がオン操作される。また、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dをマニュアル開動作させるときは、スイッチW2がオン操作される。また、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dをオート閉動作させるときは、スイッチW1とスイッチW3がオン操作される。また、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dをオート開動作させるときは、スイッチW2とスイッチW3がオン操作される。また、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dのマニュアルでの開閉動作を停止させるときは、スイッチW2またはスイッチW1がオフ操作される。さらに、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dのオートでの開閉動作を停止させるときは、スイッチW2またはスイッチW1が再度オン操作またはオフ操作される。
【0038】
各モータモジュール2A、2B、2C、2Dに対して、近い位置に設置され、ネットワーク4を経由せずに、ハーネス5A、5B、5C、5Dにより接続されたスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dは、本発明の「第2スイッチモジュール」の一例である。
【0039】
スイッチモジュール3A、3B、3C、3Dにおいて、一端が端子Tc1に接続された内部配線L5上には、整流ダイオードD2が設けられている。一端が端子Tc2に接続された内部配線L6上には、整流ダイオードD3が設けられている。整流ダイオードD2、D3の各カソードは、スイッチW1の一端に接続されている。
【0040】
一端が端子To1に接続された内部配線L7上には、整流ダイオードD4が設けられている。一端が端子To2に接続された内部配線L8上には、整流ダイオードD5が設けられている。整流ダイオードD4、D5の各カソードは、スイッチW2の一端に接続されている。
【0041】
一端が端子Ta1に接続された内部配線L9の他端は、スイッチW3の一端に接続されている。各スイッチW1、W2、W3の他端は、内部配線L10に接続されている。端子Tg1も内部配線L10に接続されている。
【0042】
端子Tc1と整流ダイオードD2との間の内部配線L5には、抵抗R4の一端が接続されている。端子Tc2と整流ダイオードD3との間の内部配線L6には、抵抗R3の一端が接続されている。端子To1と整流ダイオードD4との間の内部配線L7には、抵抗R6の一端が接続されている。端子To2と整流ダイオードD5との間の内部配線L8には、抵抗R5の一端が接続されている。抵抗R3、R4、R5、R6の他端は、内部配線L10に接続されている。抵抗R3と抵抗R4の抵抗値は異なっている。また、抵抗R5と抵抗6の抵抗値も異なっている。
【0043】
後述する識別情報学習処理(
図6のステップS2)では、スイッチモジュール3A、3B、3C、3DのスイッチW1、W2、W3がオンされていない状態にある。このとき、
図2の運転席のモータモジュール2Aと
図3の第1他席のモータモジュール2Bでは、制御部21がスイッチング素子Q2をオンすることで、電源Vcc2からの電流が、抵抗R1と端子Tcなどを通って、該端子Tcに接続されたハーネス5A、5Bの電線51に流れて行く。そして、当該電線51を通った電流が、運転席のスイッチモジュール3Aと第1他席のスイッチモジュール3Bの端子Tc1、抵抗R4、端子Tg1、該端子Tg1に接続されたハーネス5A、5Bの電線54、およびモータモジュール2A、2Bの端子Tgなどを通って、グランドに流れて行く。
【0044】
また、
図4の第2他席のモータモジュール2Cと
図5の第3他席のモータモジュール2Dでは、制御部21がスイッチング素子Q2をオンすることで、電源Vcc2からの電流が、抵抗R1と端子Tcなどを通って、該端子Tcに接続されたハーネス5C、5Dの電線51に流れて行く。そして、当該電線51を通った電流が、第2他席のスイッチモジュール3Cと第3他席のスイッチモジュール3Dの端子Tc2、抵抗R3、端子Tg1、該端子Tg1に接続されたハーネス5C、5Dの電線54、およびモータモジュール2C、2Dの端子Tgなどを通って、グランドに流れて行く。
【0045】
また、
図2の運転席のモータモジュール2Aと
図4の第2他席のモータモジュール2Cでは、制御部21がスイッチング素子Q2をオンすることで、電源Vcc2からの電流が、抵抗R2と端子Toなどを通って、該端子Toに接続されたハーネス5A、5Cの電線52に流れて行く。そして、当該電線52を通った電流が、運転席のスイッチモジュール3Aと第2他席のスイッチモジュール3Cの端子To1、抵抗R6、端子Tg1、該端子Tg1に接続されたハーネス5A、5Cの電線54、およびモータモジュール2A、2Cの端子Tgなどを通って、グランドに流れて行く。
【0046】
さらに、
図3の第1他席のモータモジュール2Bと
図5の第3他席のモータモジュール2Dでは、制御部21がスイッチング素子Q2をオンすることで、電源Vcc2からの電流が、抵抗R2と端子Toなどを通って、該端子Toに接続されたハーネス5B、5Dの電線52に流れて行く。そして、当該電線52を通った電流が、第1他席のスイッチモジュール3Bと第3他席のスイッチモジュール3Dの端子To2、抵抗R5、端子Tg1、該端子Tg1に接続されたハーネス5B、5Dの電線54、およびモータモジュール2B、2Dの端子Tgなどを通って、グランドに流れて行く。
【0047】
上述したように、モータモジュール2A、2B、2C、2Dの電源Vcc2からスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dを経由して、グランドまで電流が流れることにより、制御部21に設けられた入力ポートP1、P2に電圧が印加される。制御部21は、入力ポートP1、P2への印加電圧値に基づいて、自身が属するモータモジュール2A、2B、2C、2Dの識別情報を決定する(詳細は後述する)。
【0048】
後述する通常モード(
図6のステップS5、
図11)や非常モード(
図6のステップS7、
図13)では、モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて、制御部21がスイッチング素子Q1をオンすることで、電源Vcc1からの電流が、抵抗Ra、Rb、Rcと端子Tc、To、Taなどを通って、当該端子Tc、To、Taに接続されたハーネス5A、5B、5C、5Dの電線51、52、53に流れて行く。そして、スイッチモジュール3A、3B、3C、3Dにおいて、スイッチW1、W2、W3がオンされていないときは、上記ハーネス5A、5B、5C、5Dの電線51、52、53を通った電流が、該電線51、52、53と接続された端子Tc1、Tc2、To1、To2、Ta1、抵抗R4、R3、R6、R5、端子Tg1、該端子Tg1に接続されたハーネス5A、5B、5C、5Dの電線54、およびモータモジュール2A、2B、2C、2Dの端子Tgなどを通って、グランドに流れて行く。
【0049】
また、スイッチW1、W2、W3のいずれかがオン操作されたときは、上記ハーネス5A、5B、5C、5Dの電線51、52、53を通った電流が、該電線51、52、53と接続された端子Tc1、Tc2、To1、To2、Ta1、オン操作されたスイッチW1、W2、W3、端子Tg1、該端子Tg1に接続されたハーネス5A、5B、5C、5Dの電線54、およびモータモジュール2A、2B、2C、2Dの端子Tgなどを通って、グランドに流れて行く。
【0050】
上述したようにモータモジュール2A、2B、2C、2Dの電源Vcc1からスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dを経由して、グランドまで電流が流れることにより、制御部21に設けられた入力ポートP1、P2、P3に電圧が印加される。また、スイッチW1、W2、W3の操作状態に応じて、入力ポートP1、P2、P3に印加される電圧の大きさが変化する。制御部21は、入力ポートP1、P2、P3への印加電圧の変化を、スイッチW1、W2、W3の操作状態に応じてスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dから接続部25を経由して入力された操作信号とみなす。そして、制御部21は、当該操作信号に基づいて駆動部22によりモータ23の駆動を制御して、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dに窓の開閉を行わせる。
【0051】
図2に示すように、運転席のスイッチモジュール3Aには、前述した構成に加えて、制御部31、通信部34、スイッチW4b、W5b、W6b、W4c、W5c、W6c、W4d、W5d、W6d、電源回路36、および電圧監視回路37などが備わっている。制御部31は、CPUなどから成り、内部に揮発性メモリ31aと不揮発性メモリ31bとを有している。通信部34は、ネットワーク4を経由した通信を行うための回路から成る。
【0052】
スイッチW4b、W5b、W6bは、第1他席のパワーウインドウ機構1Bを遠隔操作するために、ユーザによりオンまたはオフされる。スイッチW4c、W5c、W6cは、第2他席のパワーウインドウ機構1Cを遠隔操作するために、ユーザによりオンまたはオフされる。スイッチW4d、W5d、W6dは、第3他席のパワーウインドウ機構1Dを遠隔操作するために、ユーザによりオンまたはオフされる。スイッチW4b、W4c、W4dをオン・オフ操作すると、各席のスイッチW1を操作した場合と同様の動作が行われる。スイッチW5b、W5c、W5dをオン・オフ操作すると、各席のスイッチW2を操作した場合と同様の動作が行われる。スイッチW6b、W6c、W6dをオン・オフ操作すると、各席のスイッチW3を操作した場合と同様の動作が行われる。他席のモータモジュール2B、2C、2Dに対して、他席のスイッチモジュール3B、3C、3Dより離れた位置に設置された運転席のスイッチモジュール3Aは、本発明の「第1スイッチモジュール」の一例である。
【0053】
各スイッチW4b、W5b、W6b、W4c、W5c、W6c、W4d、W5d、W6dの一端は、制御部31に接続されている。各スイッチW4b、W5b、W6b、W4c、W5c、W6c、W4d、W5d、W6dの他端は、グランドに接地されている。制御部31は、各スイッチW4b、W5b、W6b、W4c、W5c、W6c、W4d、W5d、W6dのオンまたはオフの操作状態を検出する。そして、制御部31は、その操作状態に応じて他席のパワーウインドウ機構1B、1C、1Dを動作させるための動作指令情報を生成し、当該動作指令情報を通信部34によりネットワーク4を経由して他席のモータモジュール2B、2C、2Dに送信する。
【0054】
電源回路36は、車載バッテリBtから制御部31までの給電用の内部配線L11上に設けられている。内部配線L11は、外部にある給電線6と接続されている。電源回路36と車載バッテリBtの間には、整流ダイオードD6が設けられている。電源回路36は、車載バッテリBtから供給される高電圧を所定の低電圧に変換して、制御部31に供給する。整流ダイオードD6と電源回路36の間には、電源バックアップコンデンサC2が設けられている。電圧監視回路37は、車載バッテリBtからの供給電圧のレベルを監視する。
【0055】
次に、モータモジュール2A、2B、2C、2Dの動作を説明する。
【0056】
図6は、モータモジュール2A、2B、2C、2Dの動作を示したフローチャートである。
図7は、パワーウインドウシステム100の初期状態を示した図である。
図8および
図9は、モータモジュール2A、2B、2C、2Dの識別情報を決定する方法を説明するための図である。
【0057】
図7に示すように、パワーウインドウシステム100の初期状態では、運転席のスイッチモジュール3Aの揮発性メモリ31aと、各モータモジュール2A、2B、2C、2Dの揮発性メモリ21aおよび不揮発性メモリ21bには、情報が記憶されていない。対して、運転席のスイッチモジュール3Aの不揮発性メモリ31bには、各モータモジュール2A、2B、2C、2Dの識別情報Ai、Bi、Ci、Diと、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpとが記憶されている。
【0058】
識別情報Ai、Bi、Ci、Diは、各モータモジュール2A、2B、2C、2Dがいずれの席に設置されたパワーウインドウ機構用のモータモジュールであるかを示している。パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpは、各モータモジュール2A、2B、2C、2Dがそれぞれに対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dを動作させるための、各パワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dに特化したモータ23の制御用情報である。具体的には、たとえば各パワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dにおける窓の開閉度や、窓ガラスの開閉位置に応じて開閉速度を制御するための情報や、各パワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dで異物の挟み込みを検出したり当該挟み込みを解除したりするための情報などが、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpには含まれている。モータモジュール2A、2B、2C、2Dの識別情報Ai、Bi、Ci、Diとパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpとは、それぞれ関連付けられて不揮発性メモリ31bに記憶されている。
【0059】
車両のIG(イグニション)スイッチがオン状態になると(
図6のステップS1:YES)、モータモジュール2A、2B、2C、2Dの制御部21は、識別情報学習処理を実行する(ステップS2)。この識別情報学習処理では、まず制御部21は、不揮発性メモリ21bに識別情報が記憶されているか否かを確認する。不揮発性メモリ21bに識別情報が記憶されていなければ、制御部21は、対応するスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dとの接続状態に応じて入力ポートP1、P2に印加される電圧値を検出する。
【0060】
図2に示すように、ハーネス5Aが接続部25、35に接続された場合、抵抗R1と抵抗R4の分圧比により、入力ポートP1に印加される電圧値は、
図8に示すように、所定値V2以上でかつ所定値V3未満の範囲に含まれる。また、抵抗R2と抵抗R6の分圧比により、入力ポートP2に印加される電圧値も、
図8に示すように、所定値V2以上でかつ所定値V3未満の範囲に含まれる。この場合、制御部21は、
図9に示すように自身が属するモータモジュール2Aが運転席のパワーウインドウ機構1A用であることを示す識別情報Aiを決定し、当該識別情報Aiを不揮発性メモリ21bに記憶させる。
【0061】
また、
図3に示すように、ハーネス5Bが接続部25、35に接続された場合、抵抗R1と抵抗R4の分圧比により、入力ポートP1に印加される電圧値は、
図8に示すように、所定値V2以上でかつ所定値V3未満の範囲に含まれる。また、抵抗R2と抵抗R5の分圧比により、入力ポートP2に印加される電圧値は、
図8に示すように、所定値V1以上でかつ所定値V2未満の範囲に含まれる。この場合、制御部21は、
図9に示すように自身が属するモータモジュール2Bが第1他席のパワーウインドウ機構1B用であることを示す識別情報Biを決定し、当該識別情報Biを不揮発性メモリ21bに記憶させる。
【0062】
また、
図4に示すように、ハーネス5Cが接続部25、35に接続された場合、抵抗R1と抵抗R3の分圧比により、入力ポートP1に印加される電圧値は、
図8に示すように、所定値V1以上でかつ所定値V2未満の範囲に含まれる。また、抵抗R2と抵抗R6の分圧比により、入力ポートP2に印加される電圧値は、
図8に示すように、所定値V2以上でかつ所定値V3未満の範囲に含まれる。この場合、制御部21は、
図9に示すように自身が属するモータモジュール2Cが第2他席のパワーウインドウ機構1C用であることを示す識別情報Ciを決定し、当該識別情報Ciを不揮発性メモリ21bに記憶させる。
【0063】
さらに、
図5に示すように、ハーネス5Dが接続部25、35に接続された場合、抵抗R1と抵抗R3の分圧比により、入力ポートP1に印加される電圧値は、
図8に示すように、所定値V1以上でかつ所定値V2未満の範囲に含まれる。また、抵抗R2と抵抗R5の分圧比により、入力ポートP2に印加される電圧値も、
図8に示すように、所定値V1以上でかつ所定値V2未満の範囲に含まれるこの場合、制御部21は、
図9に示すように自身が属するモータモジュール2Dが第3他席のパワーウインドウ機構1D用であることを示す識別情報Diを決定し、当該識別情報Diを不揮発性メモリ21bに記憶させる。
【0064】
上述したように、モータモジュール2A、2B、2C、2Dで識別情報Ai、Bi、Ci、Diを決定して不揮発性メモリ21bに記憶させると、制御部21は、当該識別情報Ai、Bi、Ci、Diを、通信部24によりネットワーク4を経由して運転席のスイッチモジュール3Aに通知する。これにより、モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて、識別情報学習処理が終了する。
【0065】
一方、配線故障などの何らかの原因で、モータモジュール2A、2B、2C、2Dの制御部21の少なくとも一方の入力ポートP1、P2に印加される電圧値が、所定値V1未満または所定値V3以上となることがある。この場合、制御部21は、自身が属するモータモジュール2A、2B、2C、2Dの識別情報を決定することができず、
図9に示すように「異常有り」と判断する。そして、制御部21は、識別情報を学習できない異常があったことを示す異常通知信号を、通信部24によりネットワーク4を経由して運転席のスイッチモジュール3Aに送信する。これによっても、モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて、識別情報学習処理が終了する。
【0066】
また、識別情報学習処理を開始した直後に、制御部21は、不揮発性メモリ21bに識別情報Ai、Bi、Ci、Diが記憶されていることを確認した場合、当該識別情報Ai、Bi、Ci、Diを、通信部24によりネットワーク4を経由して運転席のスイッチモジュール3Aに送信する。これによっても、モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて、識別情報学習処理が終了する。
【0067】
運転席のスイッチモジュール3Aでは、モータモジュール2A、2B、2C、2Dから送信された識別情報Ai、Bi、Ci、Diを通信部34により受信した場合、制御部31が、当該識別情報Ai、Bi、Ci、Diを揮発性メモリ31aに記憶させる。そして、制御部31は、受信した識別情報Ai、Bi、Ci、Diが不揮発性メモリ31bに登録(記憶)されている場合、当該識別情報に対応するパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを不揮発性メモリ31bから読み出して、通信部34によりネットワーク4を経由してモータモジュール2A、2B、2C、2Dに送信する。このとき、制御部31は、送信するパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpに、対応する識別情報Ai、Bi、Ci、Diを付帯させる。
【0068】
また、モータモジュール2A、2B、2C、2Dから送信された異常通知信号を通信部34により受信した場合、制御部31は、当該異常通知の内容を揮発性メモリ31aに記憶させる。そして制御部31は、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpをネットワーク4を経由して送信することなく、受信した異常通知信号を車両側のECU(電子制御装置;図示省略)に転送する。なお、通信故障などの何らかの原因で、運転席のスイッチモジュール3Aがモータモジュール2A、2B、2C、2Dから識別情報や異常通知信号を受信しなかった場合は、識別情報に関して揮発性メモリ31aに何も記憶されない。
【0069】
モータモジュール2A、2B、2C、2Dでは、識別情報学習処理が終了すると、次に制御部21が、パラメータ学習処理を実行する(
図6のステップS3)。本パラメータ学習処理では、たとえば、識別情報学習処理が終了してから所定時間内に、運転席のスイッチモジュール3Aから送信されたパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを、通信部24により受信する。この場合、制御部21は、受信したパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpに、不揮発性メモリ21bに記憶された識別情報Ai、Bi、Ci、Diと一致する情報が付帯されていれば、当該パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを揮発性メモリ21aに記憶させる。そして、制御部21は、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpの学習が正常に完了したことを示す学習完了通知信号を、通信部24によりネットワーク4を経由して、運転席のスイッチモジュール3Aに送信する。このとき、制御部21は、送信する学習完了通知信号に、不揮発性メモリ21bに記憶された識別情報Ai、Bi、Ci、Diを付帯させる。これにより、モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて、パラメータ学習処理が終了する。
【0070】
また、識別情報学習処理が終了してから所定時間内にパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを受信しても、当該パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpに、不揮発性メモリ21bに記憶された識別情報Ai、Bi、Ci、Diと一致する情報が付帯されていることを所定時間内に確認できなければ、制御部21は、パラメータ学習処理を終了する。また、不揮発性メモリ21bに識別情報Ai、Bi、Ci、Diが記憶されていない場合も、制御部21はパラメータ学習処理を終了する。これらの場合、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpが揮発性メモリ21aに記憶されることはなく、学習完了通知信号が運転席のスイッチモジュール3Aに送信されることもない。
【0071】
さらに、通信故障などの何らかの原因で、識別情報学習処理が終了してから所定時間以内に、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを受信しなかった場合も、制御部21はパラメータ学習処理を終了する。この場合も、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpが揮発性メモリ21aに記憶されることはなく、学習完了通知信号が運転席のスイッチモジュール3Aに送信されることもない。
【0072】
運転席のスイッチモジュール3Aにおいて、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを送信してから所定時間内に、モータモジュール2A、2B、2C、2Dから送信された学習完了通知信号を通信部34により受信した場合、制御部31は、当該通知信号の内容を揮発性メモリ31aに記憶させる。
【0073】
対して、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを送信してから所定時間内に、学習完了通知を通信部34により受信しなかった場合、制御部31は、送信したパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpがモータモジュール2A、2B、2C、2Dで正常に学習されなかったと判断する。そして、制御部31は、その旨を揮発性メモリ31aに記憶させるとともに、車両側のECUに通知する。
【0074】
図10は、パワーウインドウシステム100の学習処理(識別情報学習処理とパラメータ学習処理)の正常完了後の状態を示した図である。前述したように、モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて識別情報学習処理とパラメータ学習処理が異常なく完了すると、
図10に示すように、モータモジュール2A、2B、2C、2Dの不揮発性メモリ21bには、自身の識別情報Ai、Bi、Ci、Diが記憶され、揮発性メモリ21aには、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dに特化したパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpが記憶された状態となる。また、運転席のスイッチモジュール3Aの揮発性メモリ31aには、モータモジュール2A、2B、2C、2Dで識別情報の学習が正常に完了したことを示す「識別情報学習結果」と、パラメータ情報の学習が正常に完了したことを示す「パラメータ情報学習結果」とが記憶された状態となる。
【0075】
なお、モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて識別情報学習処理時やパラメータ学習処理時に異常があった場合は、その旨を示した「識別情報学習結果」や「パラメータ情報学習結果」が、運転席のスイッチモジュール3Aの揮発性メモリ31aに記憶された状態となる。
【0076】
モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて、パラメータ学習処理が終了すると、制御部21は、揮発性メモリ21aにパラメータ情報が記憶されているか否かを確認する。このとき、揮発性メモリ21aにパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpのいずれかが記憶されていれば(
図6のステップS4:YES)、制御部21は通常モードへ移行する(ステップS5)。そして、IGスイッチがオフ状態にならなければ(ステップS6:NO)、通常モードは継続される。
【0077】
図11は、通常モードの詳細を示したフローチャートである。
図12は、通常モードにおける操作信号とモータ23の状態を示した図である。
【0078】
モータモジュール2A、2B、2C、2Dが通常モードにあるときに、スイッチモジュール3A、3B、3C、3Dにおいて、自席のパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dを操作するスイッチW1、W2、W3(
図2~
図5)のいずれかが操作されると、当該操作状態に応じた操作信号がスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dから、ハーネス5A、5B、5C、5Dを経由して、対応するモータモジュール2A、2B、2C、2Dに入力される(
図11のステップS11:YES、
図12(a)、(b)の操作信号「有」)。
【0079】
また、運転席のスイッチモジュール3Aにおいて、他席のパワーウインドウ機構1B、1C、1Dを遠隔操作するスイッチW4b、W5b、W6b、W4c、W5c、W6c、W4d、W5d、W6d(
図2)のいずれかが操作されると、制御部31が、当該スイッチの操作状態に応じて他席のパワーウインドウ機構1B、1C、1Dの動作を命じる遠隔操作信号を生成し、当該遠隔操作信号を通信部34によりネットワーク4を経由して送信する。このとき、制御部31は、操作されたスイッチW4b、W5b、W6b、W4c、W5c、W6c、W4d、W5d、W6dに対応する他席のモータモジュール2B、2C、2Dの識別情報Bi、Ci、Diを、遠隔操作信号に付帯させる。
【0080】
モータモジュール2A、2B、2C、2Dでは、運転席のスイッチモジュール3Aから送信された遠隔操作信号を、ネットワーク4を経由して通信部24により受信すると(
図11のステップS12:YES)、制御部21は、受信した遠隔操作信号に付帯された識別情報と、不揮発性メモリ21bに記憶された識別情報Ai、Bi、Ci、Diとを照合する。運転席のモータモジュール2Aでは、遠隔操作信号に付帯された識別情報Bi、Ci、Diと、不揮発性メモリ21bに記憶された識別情報Aiとが一致することはない(ステップS13:NO)。然るに、他席のモータモジュール2B、2C、2Dでは、遠隔操作信号に付帯された識別情報Bi、Ci、Diと、不揮発性メモリ21bに記憶された識別情報Bi、Ci、Diとが一致する(ステップS13:YES)。このため、モータモジュール2B、2C、2Dの制御部21は、自己宛の遠隔操作信号を受信したと判断する(
図12(a)、(b)の遠隔操作信号「有」)。
【0081】
次に、制御部21は、対応するスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dから入力された操作信号、または運転席のスイッチモジュール3Aから受信した自己宛の遠隔操作信号の種類を判別する(
図11のステップS14)。ここで、操作信号または遠隔操作信号が「オート開操作信号」であると判別された場合は、ステップS15へ進む。そして制御部21は、そのオート開操作信号と、揮発性メモリ21aに記憶されたパラメータ情報Ap、B、Cp、Dpと、状態検出部21c(
図2~
図5)の検出結果(モータ23の駆動状態や窓の開閉状態など)とに基づいて、モータ23が最大トルクTmaxより小さい所定のトルクTを出力するように(
図12(b)のモータトルクT)、駆動部22によりモータ23を駆動して(
図12(b)のモータ動作「駆動」)、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスをオートで開動作させる。なお、駆動部22からモータ23に供給する電流を小さくするほど、モータ23が出力するトルクは小さくなり、モータ23の回転数は大きくなり、窓ガラスの移動速度は速くなる。
【0082】
また、操作信号または遠隔操作信号が「マニュアル開操作信号」であると判別された場合は、ステップS16へ進む。そして制御部21は、そのマニュアル開操作信号と、揮発性メモリ21aに記憶されたパラメータ情報Ap、B、Cp、Dpと、状態検出部21cの検出結果とに基づいて、モータ23が所定のトルクTを出力するように(
図12(a)のモータトルクT)、駆動部22によりモータ23を駆動して(
図12(a)のモータ動作「駆動」)、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスをマニュアルで開動作させる。
【0083】
また、操作信号または遠隔操作信号が「マニュアル閉操作信号」であると判別された場合は、ステップS17へ進む。そして制御部21は、そのマニュアル閉操作信号と、揮発性メモリ21aに記憶されたパラメータ情報Ap、B、Cp、Dpと、状態検出部21cの検出結果とに基づいて、モータ23が所定のトルクTを出力するように(
図12(a)のモータトルクT)、駆動部22によりモータ23を駆動して(
図12(a)のモータ動作「駆動」)、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスをマニュアルで閉動作させる。
【0084】
さらに、操作信号または遠隔操作信号が「オート閉操作信号」であると判別された場合は、ステップS18へ進む。そして制御部21は、そのオート閉操作信号と、揮発性メモリ21aに記憶されたパラメータ情報Ap、B、Cp、Dpと、状態検出部21cの検出結果とに基づいて、モータ23が所定のトルクTを出力するように(
図12(b)のモータトルクT)、駆動部22によりモータ23を駆動して(
図12(b)のモータ動作「駆動」)、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスをオートで閉動作させる。
図11のステップS15~ステップS18は、本発明の「通常処理」の一例である。
【0085】
一方、モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて、パラメータ情報学習処理が終了した後、揮発性メモリ21aの故障などの何らかの原因で、揮発性メモリ21aにパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpが記憶されていなければ(
図6のステップS4:NO)、制御部21は非常モードへ移行する(ステップS7)。この後、IGスイッチがオフ状態にならなければ(ステップS8:NO)、非常モードは継続される。
【0086】
図13は、非常モードの詳細を示したフローチャートである。
図14は、非常モードにおける操作信号とモータ23の状態を示した図である。
【0087】
モータモジュール2A、2B、2C、2Dが非常モードにあるときに、対応するスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dからモータモジュール2A、2B、2C、2Dに操作信号が入力された場合(
図13のステップS21:YES、
図14(a)、(b)、(c)、(d)の操作信号「有」)、制御部21は、当該操作信号の種類を判別する(ステップS23)。
【0088】
操作信号が「マニュアル開操作信号」であると判別された場合(
図14(a))は、ステップS24へ進む。そして制御部21は、当該マニュアル開操作信号と、揮発性メモリ21aに記憶されたパラメータ情報Ap、B、Cp、Dpと、状態検出部21cの検出結果とに基づいて、モータ23が最大トルクTmaxを出力するように(
図14(a)のモータトルクTmax)、駆動部22によりモータ23を駆動して(
図14(a)のモータ動作「駆動」)、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスをマニュアルで開動作させる。なお、駆動部22からモータ23に供給する電流を大きくするほど、モータ23が出力するトルクは大きくなり、モータ23の回転数は小さくなり、窓ガラスの移動速度は遅くなる。
【0089】
また、操作信号が「マニュアル閉操作信号」または「オート閉操作信号」であると判別された場合(
図14(c)、(d))は、ステップS25へ進む。そして制御部21は、当該マニュアル閉操作信号またはオート閉操作信号に基づいて、モータ23が最大トルクTmaxを出力するように(
図14(c)、(d)のモータトルクTmax)、駆動部22によりモータ23を僅かな一定時間だけ駆動して(
図14(c)、(d)のモータ動作「駆動」)、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスを閉方向に寸動させる。このとき、マニュアルまたはオートの閉操作信号の入力が続いても、モータ23が最大トルクTmaxを出力するように、モータ23を短時間駆動した後に停止して、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスを閉方向に僅かな変位量だけ移動させる。
図13のステップS25は、本発明の「寸動処理」の一例である。
【0090】
また、操作信号が「オート開操作信号」であると判別された場合(
図14(b))は、
図13のように当該オート開操作信号は無視されて、モータ23は駆動されず(
図14(b)のモータ動作「停止」)、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスが開動作することもない。
【0091】
一方、運転席のスイッチモジュール3Aから送信された遠隔操作信号を通信部24により受信した場合(
図13のステップS22:YES)、制御部21は、当該遠隔操作信号を無視して、モータ23を駆動せず、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスを開閉動作させることもない。
【0092】
以上の実施形態によると、車両のパワーウインドウシステム100において、モータモジュール2A、2B、2C、2Dはパラメータ学習処理により、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dに特化したモータ23の制御用のパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを、運転席のスイッチモジュール3Aからネットワーク4を経由して受信して、内部に有する揮発性メモリ21aに記憶させる。その後、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpが揮発性メモリ21aに記憶されている場合、モータモジュール2A、2B、2C、2Dは「通常モード」に移行する。そして、モータモジュール2A、2B、2C、2Dは、スイッチモジュール3A、3B、3C、3Dからの操作信号または遠隔操作信号と、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpとに基づいて、モータ23が所定のトルクTを出力するようにモータ23を駆動して、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスを開閉動作させる。このため、モータモジュール2A、2B、2C、2Dがそれぞれに対応するパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを保有(記憶)している通常時には、スイッチモジュール3A、3B、3C、3Dからの操作信号または遠隔操作信号に応じて、モータモジュール2A、2B、2C、2Dによりパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスを安全かつ確実に開閉動作させることができる。
【0093】
また、以上の実施形態では、故障などの何らかの原因で、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpが揮発性メモリ21aに記憶されていない場合には、モータモジュール2A、2B、2C、2Dは「非常モード」に移行する。そして、モータモジュール2A、2B、2C、2Dは、同一席にあるスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dからの閉操作信号に基づいて、モータ23が最大のトルクTmaxを出力するように、モータ23を一定時間だけ駆動して、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスを閉方向に寸動させる。このため、モータモジュール2A、2B、2C、2Dがパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを保有(記憶)していない非常時においても、同一席にあるスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dからの閉操作信号に応じて、モータモジュール2A、2B、2C、2Dによりパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスを安全かつ確実に閉方向に寸動させることができ、ユーザの利便性も確保される。また、非常モードにおいては、スイッチモジュール3A、3B、3C、3DのスイッチW1、W2、W3が閉操作されても、パワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスが、閉方向に僅かに変位した後停止するので、窓への異物の挟み込みなどの危険を回避して、高い安全性を確保することができる。さらに、スイッチW1、W2、W3の閉操作を何度も繰り返すことで、窓ガラスを閉方向に少しずつ移動させて、窓を閉じて行くこともできる。
【0094】
また、以上の実施形態では、モータモジュール2A、2B、2C、2Dは、同一席にあるスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dからのマニュアル開操作信号に基づいて、モータ23が最大のトルクTmaxを出力するように、モータ23の駆動を制御して、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスをマニュアルで開動作させる。このため、モータモジュール2A、2B、2C、2Dがパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを保有(記憶)していない非常時においても、同一席にあるスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dからのマニュアル開操作信号に応じて、モータモジュール2A、2B、2C、2Dによりパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスを安全かつ確実にマニュアルで開動作させることができ、ユーザの利便性が向上する。
【0095】
また、以上の実施形態では、非常モードにおいて、スイッチモジュール3A、3B、3C、3Dから入力されたオート開操作信号が無視されるので、各席のパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスが大きく開くことはなく、安全性を確保することができる。また、他席のモータモジュール2B、2C、2Dでは、運転席のスイッチモジュール3Aから受信した遠隔操作信号が無視されるので、他席のパワーウインドウ機構1B、1C、1Dの窓ガラスが遠隔操作で開閉されることもなく、より高い安全性を確保することができる。
【0096】
また、以上の実施形態では、モータモジュール2A、2B、2C、2Dが、識別情報学習処理において、ネットワーク4を経由しないスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dとの接続状態(モータモジュールの接続部25と、スイッチモジュールの接続部35との接続状態)に応じて入力ポートP1、P2に印加される電圧に基づいて、自身の識別情報Ai、Bi、Ci、Diを決定して、当該識別情報Ai、Bi、Ci、Diを不揮発性メモリ21bに記憶させる。そして、運転席のスイッチモジュール3Aが、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpや遠隔操作信号をネットワーク4を経由して送信する際に、それらの情報に送信先のモータモジュール2A、2B、2C、2Dの識別情報Ai、Bi、Ci、Diを付帯させる。このため、モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて、自身の識別情報Ai、Bi、Ci、Diが付帯された自己宛のパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpや遠隔操作信号を確実に受信して、これらの情報に基づいて、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスを安全かつ適正に開閉させることができる。
【0097】
さらに、以上の実施形態では、各モータモジュール2A、2B、2C、2Dの識別情報Ai、Bi、Ci、Diは、当該モータモジュールがいずれのパワーウインドウ機構用のモータモジュールであるかを示している。そして、各識別情報Ai、Bi、Ci、Diに対応するパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpは、当該識別情報に対応するパワーウインドウ機構に特化した、モータ23の制御用パラメータ情報である。このため、モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて、それぞれに対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dを動作させるのに適したパラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを、運転席のスイッチモジュール3Aから確実に受信して、当該パラメータ情報に基づいて、対応するパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dを適正に開閉動作させることができる。
【0098】
また、複数のパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dに形状や部材同士の摩擦係数などの物理的な個体差があっても、それらのパワーウインドウ機構を開閉動作させるために、同一の仕様および性能を有する複数のモータモジュール2A、2B、2C、2Dを用いることができる。また、車両の車種やモータモジュールの設置場所に関係なく、各席のパワーウインドウ機構に対して、同一の仕様および性能を有するモータモジュール2A、2B、2C、2Dを用いることができる。さらに、複数のモータモジュール間で品番を異ならせる必要がなくなり、品番を削減して、当該モータモジュールの取り扱いと管理を容易にすることが可能となる。
【0099】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。
【0100】
たとえば、前記の実施形態では、モータモジュール2A、2B、2C、2Dにおいて、識別情報Ai、Bi、Ci、Diを不揮発性メモリ21bに記憶させ、パラメータ情報Ap、Bp、Cp、Dpを揮発性メモリ21aに記憶させた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。識別情報を揮発性メモリ21aに記憶させたり、パラメータ情報を不揮発性メモリ21bに記憶させたりしてもよい。また、識別情報とパラメータ情報の両方を、揮発性メモリ21aに記憶させてもよいし、または、不揮発性メモリ21bに記憶させてもよい。
【0101】
また、前記の実施形態では、モータモジュール2A、2B、2C、2Dが、スイッチモジュール3A、3B、3C、3Dとの接続状態に応じて入力ポートP1、P2に印加される電圧に基づいて、自身の識別情報Ai、Bi、Ci、Diを決定して、不揮発性メモリ21bに記憶させる例を示したが、これ以外の方法で、モータモジュールが自身の識別情報を決定して、メモリに記憶させてもよい。また、モータモジュール2A、2B、2C、2Dの不揮発性メモリ21bに、自身の識別情報を予め記憶させておき、制御部21が不揮発性メモリ21bを読み込んで、当該識別情報を認識するようにしてもよい。この場合、モータモジュール2A、2B、2C、2Dでの処理負担を減らして、パワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dが操作可能になるまでの時間を短縮することができる。
【0102】
また、前記の実施形態では、モータモジュール2A、2B、2C、2Dが非常モードにあるときに、スイッチモジュール3A、3B、3C、3Dからマニュアル開操作信号が入力されると、パワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dの窓ガラスをマニュアルで開動作させ、オートまたはマニュアルの閉操作信号が入力されると、当該窓ガラスを閉方向に寸動させた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえばモータモジュールが非常モードにあるときに、スイッチモジュールからオート開操作信号が入力されると、パワーウインドウ機構をオートで開動作させてもよいし、または、オートもしくはマニュアルの開操作信号が入力されると、パワーウインドウ機構を開方向に寸動させてもよい。
【0103】
また、
図12および
図14に示した実施形態では、モータモジュール2A、2B、2C、2Dのモータ23が一定のトルクを出力するように、モータ23を駆動した例を示したが、たとえば窓ガラスの開閉位置やモータ23にかかる負荷などに応じて、出力トルクの大きさが変化するように、モータ23の駆動を制御してもよい。
【0104】
また、前記の実施形態では、モータモジュール2A、2B、2C、2Dが、識別情報学習処理において、自身の識別情報の決定および記憶を1回行い、パラメータ学習処理においても、自身のパラメータ情報の受信および記憶を1回行った例を示したが、識別情報やパラメータ情報の記憶に失敗した場合は、所定回数まで学習処理のリトライを実行してもよい。
【0105】
また、前記の実施形態では、パワーウインドウシステム100にパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1D、モータモジュール2A、2B、2C、2D、およびスイッチモジュール3A、3B、3C、3Dをそれぞれ4つ設けた例を示したが、これらの数はそれぞれ1つでもよいし、4つ以外の複数でもよい。
【0106】
また、前記の実施形態では、運転席のスイッチモジュール3Aを管理モジュールとして用いたが、他席のスイッチモジュール3B、3C、3Dと同一構成のものを運転席のスイッチモジュールとして用いて、これらとは別の管理モジュールを設けてもよい。
【0107】
さらに、以上の実施形態では、車載機器としてパワーウインドウ機構1A、1B、1C、1Dを例に挙げたが、その他の車載機器を動作させるモータモジュールに対しても、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0108】
1A、1B、1C、1D パワーウインドウ機構(車載機器)
2A、2B、2C、2D モータモジュール
3A スイッチモジュール(管理モジュール、操作モジュール、第1スイッチモジュール、第2スイッチモジュール)
3B、3C、3D スイッチモジュール(操作モジュール、第2スイッチモジュール)
4 ネットワーク
21 制御部
21a 揮発性メモリ
21b 不揮発性メモリ
22 駆動部
23 モータ
24 通信部
25、35 接続部
31b 不揮発性メモリ
100 パワーウインドウシステム
Ai、Bi、Ci、Di 識別情報
Ap、Bp、Cp、Dp パラメータ情報
T 所定のトルク
Tmax 最大トルク