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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】コンクリート構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/02 20060101AFI20240712BHJP
   E04H 12/12 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
E01D19/02
E04H12/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020194177
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2021183799
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2020088014
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 均
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝
(72)【発明者】
【氏名】守屋 健一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 英紀
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-300698(JP,A)
【文献】特開平07-102775(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108412128(CN,A)
【文献】特公昭49-005099(JP,B1)
【文献】特開平10-030212(JP,A)
【文献】特開2006-051522(JP,A)
【文献】特開平04-306338(JP,A)
【文献】特開昭61-017649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/02
E04H 12/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に立設した主鋼材と、前記主鋼材を囲むコンクリートとからなるコンクリート構造であって、
前記主鋼材がT形鋼からなり、前記T形鋼はフランジ部の外面が型枠の内面と平行して対面するとともに、ウエブ部が対面する型枠の内面から隔離する方向に延びる向きに配置されており、
前記T形鋼を長手方向に複数に分割し、分割されたT形鋼を継手部で接合する構造とし、前記T形鋼の継手部は、一方のT形鋼に、フランジ部の一方側半内面及びウェブ部の一方側外面に連続して積層される断面L形の一方側添接板が、一方のT形鋼の端縁から突出した状態で溶接されるとともに、他方のT形鋼に、フランジ部の他方側半内面及びウェブ部の他方側外面に連続して積層される断面L形の他方側添接板が、他方のT形鋼の端縁から突出した状態で溶接されており、前記一方側添接板及び他方側添接板の各T形鋼の端縁から突出した部分が、対向するT形鋼に積層され、ウェブ部を貫通するボルトで連結された構造を成しており、
前記T形鋼のフランジ部の外面は添接板、高力ボルト及びナットは配置されないフラットな継手構造とすることによりフランジ外面のかぶり厚さを最小限としたことを特徴とするコンクリート構造。
【請求項2】
記T形鋼のフランジ部の外面に多数の突起を備えている請求項1記載のコンクリート構造。
【請求項3】
前記T形鋼の継手部には、T形鋼のフランジ部の外面に、前記T形鋼の端縁から突出した状態で、前記T形鋼同士の接合をガイドするガイド部材が設けられている請求項1、2いずれかに記載のコンクリート構造。
【請求項4】
前記ガイド部材が取り外し可能に設けられている請求項記載のコンクリート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛直方向に立設した主鋼材と、前記主鋼材を囲むコンクリートとからなる鉄骨コンクリート複合形式のコンクリート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記鉄骨コンクリート複合形式のコンクリート構造として、例えば下記特許文献1には、鉛直鋼材を立設し、型枠と躯体を兼ねた帯鉄筋を埋設したプレキャスト版からなる型枠を組立て、この型枠内にコンクリートを打設する塔構造物の構築方法が開示されている。
【0003】
また、従来より、軸方向鉄筋に代えて付着性能に優れた突起付きH形鋼と、本体構造の一部として適用可能な高耐久性埋設型枠とを組み合わせた鉄骨コンクリート複合形式の橋脚構造(REED工法)が知られている。このREED工法は、プレキャスト型枠を用いた構造の単純化及び工種の削減により、現場作業が省力化でき、工期短縮及び安全性の向上が図れるなどの利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-152899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の工法では、図7及び図8に示されるように、鉛直方向に立設される主鋼材50としてH形鋼が用いられているため、中詰めコンクリートの充填作業において、H形鋼のフランジ部Fを回り込んでウェブ部Wの周囲にまでコンクリートが流動しにくく、流動を促す加振を丁寧に行わなければならないなど、コンクリートの充填作業に手間がかかっていた。
【0006】
H形鋼からなる主鋼材を高力ボルトにより摩擦接合する際、従来では、図9に示されるように、H形鋼の突合わせ部に跨がるようにして、H形鋼のフランジ部Fの外面及び内面にそれぞれ添接板51を積層し、これらH形鋼のフランジ部F及び添接板51を一体に貫通する高力ボルト52で締結するとともに、H形鋼のウェブ部Wの両面にそれぞれ添接板53を積層し、これらH形鋼のウェブ部W及び添接板53を一体に貫通する高力ボルト54で締結することにより成されているが、図示のように、H形鋼の向きをH形鋼のフランジ部Fをコンクリート構造外面と平行に配置した強軸使いとした場合には、前記高力ボルト52による摩擦接合によってフランジ面の外側に、添接板厚さ+ナット高さ+高力ボルト余長+施工時余裕を考慮してかぶりを設定する必要があるため、かぶりを大きく取らざるを得ず、耐力確保の上で不利となる欠点があった。従って、高力ボルトによる摩擦接合を行う場合、図7に示されるように、H形鋼のフランジ面をコンクリート構造外面と直交させた弱軸使いとするのが一般的であるが、この場合には、H形鋼のウェブ部Wの両側にフランジ部Fが突出した状態で配置されるため、このフランジ部Fと型枠との隙間を通って回り込ませるようにコンクリートを流動させなければ、ウェブ部Wとフランジ部Fで囲まれたウェブ部外側の空間部にコンクリートが充填されにくいため、充填作業に更に手間がかかる問題があった。
【0007】
また、主鋼材としてH形鋼を用いた場合、鋼材量が多くなり、構造物の重量及び加工面積が増大し、コストが嵩むとともに、施工性が低下する問題があった。H形鋼の使用量を低減するため、配置間隔を広げた場合には、ひび割れ分散性に問題が生じるおそれがある。
【0008】
上述したように、主鋼材を高力ボルトにより摩擦接合する場合、従来の継手構造は、図9に示されるように、H形鋼のフランジ部Fの外面及び内面にそれぞれ添接板51を積層し高力ボルト52で締結するとともに、H形鋼のウェブ部Wの両面にそれぞれ添接板53を積層し高力ボルト54で締結するのが一般的であるが、この継手構造では、ボルト締めに多くの時間を要し、主鋼材同士の接合作業に手間がかかるとともに、上述の通り主鋼材の外側のかぶりが大きくなる欠点がある。
【0009】
そこで本発明の第1の課題は、コンクリートの充填作業を容易化するとともに、主鋼材の鋼材量を低減したコンクリート構造を提供することにある。また、第2の課題は、主鋼材同士の接合作業を容易化するとともに、主鋼材の外側のかぶりが大きくなるのを防止したコンクリート構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記第1の課題を解決するために請求項1に係る本発明として、鉛直方向に立設した主鋼材と、前記主鋼材を囲むコンクリートとからなるコンクリート構造であって、
前記主鋼材がT形鋼からなり、前記T形鋼はフランジ部の外面が型枠の内面と平行して対面するとともに、ウエブ部が対面する型枠の内面から隔離する方向に延びる向きに配置されており、
前記T形鋼を長手方向に複数に分割し、分割されたT形鋼を継手部で接合する構造とし、前記T形鋼の継手部は、一方のT形鋼に、フランジ部の一方側半内面及びウェブ部の一方側外面に連続して積層される断面L形の一方側添接板が、一方のT形鋼の端縁から突出した状態で溶接されるとともに、他方のT形鋼に、フランジ部の他方側半内面及びウェブ部の他方側外面に連続して積層される断面L形の他方側添接板が、他方のT形鋼の端縁から突出した状態で溶接されており、前記一方側添接板及び他方側添接板の各T形鋼の端縁から突出した部分が、対向するT形鋼に積層され、ウェブ部を貫通するボルトで連結された構造を成しており、
前記T形鋼のフランジ部の外面は添接板、高力ボルト及びナットは配置されないフラットな継手構造とすることによりフランジ外面のかぶり厚さを最小限としたことを特徴とするコンクリート構造が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、主鋼材としてT形鋼を用いているため、T形鋼のフランジ部とウェブ部との間にコンクリートが充填されやすくなり、主鋼材を囲むコンクリートの充填作業が容易化できる。また、前記主鋼材を構成するT形鋼は、フランジ部がウェブ部の一方側にしか設けられていない分、H形鋼と比べて鋼材量が低減するため、構造物の重量及び加工面積が低減でき、コストが削減できるとともに、施工性が向上する。
【0012】
T形鋼からなる主鋼材を配置する向きについては、前記T形鋼はフランジ部の外面が型枠の内面と平行して対面するとともに、ウエブ部が対面する型枠の内面から隔離する方向に延びる向きに配置されている。このため、T形鋼のフランジ部とウェブ部との間にコンクリートがより一層充填しやすくなり、主鋼材を囲むコンクリートの充填作業が容易化できる。また、T形鋼からなる主鋼材をこの向きで配置することによって、H形鋼とした場合に比べて、各鋼材の重心位置が外側に移動するため、同一断面積の場合、有効高さが大きくなり、設計上有利となる。
【0013】
前記T形鋼の継手部は、一方のT形鋼に、フランジ部の一方側半内面及びウェブ部の一方側外面に連続して積層される断面L形の一方側添接板が、一方のT形鋼の端縁から突出した状態で溶接されるとともに、他方のT形鋼に、フランジ部の他方側半内面及びウェブ部の他方側外面に連続して積層される断面L形の他方側添接板が、他方のT形鋼の端縁から突出した状態で溶接されており、前記一方側添接板及び他方側添接板の各T形鋼の端縁から突出した部分が、対向するT形鋼に積層され、ウェブ部を貫通するボルトで連結された構造を成しており、前記T形鋼のフランジ部の外面は添接板、高力ボルト及びナットは配置されないフラットな継手構造とすることによりフランジ外面のかぶり厚さを最小限としている。
【0014】
すなわち、フランジ外面のかぶり厚さを小さくするため、フランジ外面に添接板や高力ボルト及びナットが配置されないフラットな継手構造としているため、T形鋼の外側のかぶりが大きくなるのが防止できる。
【0015】
請求項に係る本発明として、前記T形鋼のフランジ部の外面に多数の突起を備えている請求項1記載のコンクリート構造が提供される。
【0016】
上記請求項載の発明では、T形鋼とこのT形鋼を囲むコンクリートとの付着性能を向上させるため、T形鋼のフランジ部の外面に多数の突起を設けている。
【0017】
請求項に係る本発明として、前記T形鋼の継手部には、T形鋼のフランジ部の外面に、前記T形鋼の端縁から突出した状態で、前記T形鋼同士の接合をガイドするガイド部材が設けられている請求項1、2いずれかに記載のコンクリート構造が提供される。
【0018】
上記請求項記載の発明では、前記T形鋼の継手部において、T形鋼を設置する際、T形鋼同士の接合をガイドし位置合わせが容易にできるようにするため、T形鋼のフランジ部の外面に前記ガイド部材を設けている。
【0019】
請求項に係る本発明として、前記ガイド部材が取り外し可能に設けられている請求項記載のコンクリート構造が提供される。
【0020】
上記請求項記載の発明では、T形鋼のフランジ外面に対するかぶりを小さくするため、T形鋼の設置時にのみ用いる前記ガイド部材を、T形鋼の設置後には取り外しできる構造としている。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、コンクリートの充填作業が容易化できるとともに、主鋼材の鋼材量が低減できるコンクリート構造が提供できるようになる。また、主鋼材同士の接合作業が容易化できるとともに、主鋼材の外側のかぶりが大きくなるのが防止できるコンクリート構造が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るコンクリート構造1の斜視図である。
図2】その横断面図である。
図3】コンクリートの充填状態を示す主鋼材2の断面図である。
図4】主鋼材2の斜視図である。
図5】(A)、(B)は、主鋼材2の接合要領を示す斜視図である。
図6】(A)~(C)は、変形例に係る主鋼材2の接合要領を示す斜視図である。
図7】従来のコンクリート構造を示す横断面図である。
図8】従来のコンクリートの充填状態を示す主鋼材50の断面図である。
図9】従来のコンクリート構造を示す要部拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
本発明に係るコンクリート構造1は、図1に示される橋脚構造などの柱構造の他に、擁壁構造、護岸構造、岸壁構造など、主鋼材2と、この主鋼材2を囲むコンクリート4とからなる鉄骨コンクリート複合形式のコンクリート構造全般に及ぶものである。
【0025】
前記コンクリート構造1は、図1及び図2に示されるように、鉛直方向に立設した主鋼材2と、前記主鋼材2を囲むコンクリート4とで主に構成されている。また、図示例のコンクリート構造1では、構造物の外殻を構成するプレキャストコンクリート製の埋設型枠3が設けられており、前記コンクリート4が、前記埋設型枠3の内部に現場打ちによって中詰めされている。
【0026】
なお、このような埋設型枠3に代えて、型枠内に流し込んだコンクリート4の硬化後に脱型する通常の型枠を用いてもよい。また、図2に示されるように、前記主鋼材2の外周を囲うように帯鉄筋9を配筋してもよい。
【0027】
そして、本コンクリート構造1では、前記主鋼材2としてT形鋼を用いているのが特徴的である。このように本コンクリート構造1では、主鋼材2としてT形鋼を用いているため、H形鋼を用いた場合(図8)に比べて、図3に示されるように、コンクリート4がT形鋼のフランジ部Fとウェブ部Wとの間に充填しやすくなり、コンクリートを丁寧に流動させる手間などが省け、コンクリート4の充填作業が容易化できる。また、T形鋼はフランジ部Fがウェブ部Wの一方側にしか設けられていない分、H形鋼と比べて鋼材量が低減するため、構造物の重量及び加工面積が低減でき、輸送や加工などにかかるコストが削減できるとともに、施工性が向上する。
【0028】
前記主鋼材2は、図4に示されるように、フランジ部Fと、このフランジ部Fの幅方向中央部から直交して延びるウェブ部Wとからなる断面略T字形の鋼材である。前記フランジ部Fの外面(前記ウェブ部Wの非配設面)には、中詰めコンクリート4との付着性能を向上させるため、多数の突起5、5…を設けるのが好ましい。前記突起5の形態としてはコンクリートとの付着性能が向上するように構成されていれば特に限定しないが、主鋼材2の部材長手方向に間隔を空けて多数配置されるとともに、フランジ部Fの幅方向に延びる線状(ストライプ状)に形成するのが好ましい。前記突起5の高さは0.5~5mm、好ましくは1~3mmとするのがよく、ピッチは5~50mm、好ましくは10~30mmとするのがよい。前記主鋼材2は、埋設型枠3の内部に所定の間隔を空けて複数配置されている。
【0029】
図1及び図2に示されるように、前記主鋼材2を配置する向きとしては、T形鋼のフランジ部Fを構造物の外側に向けて配置するのが好ましい。すなわち、T形鋼のフランジ部Fの外面が埋設型枠3の内面とほぼ平行して対面するとともに、T形鋼のウェブ部Wがこの対面する埋設型枠3の内面から離隔する方向に延びる向きに配置するのがよい。主鋼材2をこの向きに配置することによって、コンクリート4の充填時に、埋設型枠3の中央側から外側に向けて流動するコンクリート4が、T形鋼のフランジ部Fとウェブ部Wとの間により一層充填されやすくなる。また、T形鋼からなる主鋼材2をこの向きで配置することによって、H形鋼とした場合に比べて、各鋼材の重心位置が外側に移動するため、同一断面積の場合、有効高さが大きくなり、設計上有利となる。
【0030】
コンクリート構造の高さが所定の高さを超える場合には、前記主鋼材2を部材長手方向に複数に分割し、分割された主鋼材2…を継手部で接合する構造とする。主鋼材2、2の接合は、高力ボルトによる摩擦接合とするのが好ましい。具体的な継手構造について図5に基づいて説明すると、図5(A)に示されるように、前記主鋼材2の継手部は、一方の主鋼材2Aに、フランジ部Fの一方側半内面及びウェブ部Wの一方側外面に連続して積層される断面L形の一方側添接板6Aが、前記一方の主鋼材2Aの端縁から突出した状態で前記主鋼材2Aに溶接されるとともに、他方の主鋼材2Bに、フランジ部Fの他方側半内面及びウェブ部Wの他方側外面に連続して積層される断面L形の他方側添接板6Bが、前記他方の主鋼材2Bから突出した状態で前記主鋼材2Bに溶接されている。そして、図5(B)に示されるように、前記一方側添接板6A及び他方側添接板6Bの各主鋼材2A、2Bから突出した部分を、対向する主鋼材2に積層した状態で、前記添接板6A、6BのうちT形鋼のウェブ部Wに積層された部分及びT形鋼のウェブ部Wを一体的に貫通する複数のボルト(摩擦接合用高力ボルト)7、7…によって連結されている。
【0031】
このように、継手構造として、断面L形の添接板6A、6Bがフランジ部Fの内面側に固接されるとともに、ボルト7…がウェブ部Wのみに設けられ、フランジ部Fの外面には添接板や高力ボルト及びナットが配置されないフラットな継手構造となっているため、フランジ外面のかぶり厚さを最小限に抑えることが可能となり、構造物の耐力が向上できる。
【0032】
また、フランジ部Fに高力ボルトが配置されないため、施工手間が削減できるとともに、構造物の外側での作業が減少するため、落下事故等の作業中の事故が低減できる利点もある。
【0033】
前記添接板6A、6Bと主鋼材2との接触面にはそれぞれ、必要に応じて、ブラスト加工などの表面に凹凸を付与する加工処理を施すようにしても良い。これにより、これらの積層面の摩擦抵抗が増大するため、継手部の引張耐力を向上させることができるようになる。
【0034】
前記添接板6A、6Bはそれぞれ、予め主鋼材2の端部に溶接されている。前記添接板6A、6Bを主鋼材2に溶接するには、主鋼材先端部を除く接触部の外周を全断面溶込みグルーブ溶接とするのが好ましい。これにより、応力の伝達性能に優れた継手部を得ることができる。
【0035】
前記添接板6A、6BのうちT形鋼のウェブ部に積層される片部及び前記添接板6A、6Bが積層されるT形鋼のウェブ部Wにはそれぞれ、前記ボルト7が挿通可能な一体的に貫通した通孔が複数設けられている。
【0036】
継手部における前記主鋼材2、2の接合を容易化するため、図6に示されるように、T形鋼のフランジ部Fの外面に、主鋼材2の端縁から突出した状態で、主鋼材2、2同士の接合をガイドするガイド部材8を設けても良い。前記ガイド部材8を設けることにより、主鋼材2の設置に当たって、主鋼材2が前記ガイド部材8によってガイドされるため、主鋼材2、2同士の位置合わせが容易にできるようになる。前記ガイド部材8としては、図示例のように、一方の主鋼材2Aのフランジ部Fの外面に取り付けられた板材とするのが好ましい。主鋼材2、2の接合の際、前記ガイド部材8と一方の主鋼材2Aに固接された一方側添接板6Aとの間に、他方の主鋼材2Bの他方側添接板6Bが設けられない側のフランジ部Fが挿入され、主鋼材2がガイドされる。
【0037】
一方、前記ガイド部材8は、主鋼材2、2の接合時にのみ使用され、主鋼材2の設置後にはガイド部材8の厚み分だけ主鋼材2のフランジ外面に対するかぶり厚さが大きくなるので不要なものとなる。そのため、主鋼材2の設置後に、前記ガイド部材8が取り外しできるようにするのが好ましい。具体的には、前記ガイド部材8を主鋼材2の外面に溶接しておき、主鋼材2の設置後は、この溶接部をディスクグラインダなどの研削工具で研削することによって簡単に取り外すことができるようになる。より簡単に取り外しができるように、前記ガイド部材8の溶接部を間欠的に施してもよい。また、前記ガイド部材8を主鋼材2に溶接する方法に代えて、クランプ(シャコ万等)で堅固に固定することにより、簡単に取り外しできるようにしてもよい。
【0038】
前記埋設型枠3は、プレキャストコンクリートからなる上下面が開放した中空の枠体であり、図2に示されるように、必要に応じて内部に帯鉄筋9が配筋されている。前記埋設型枠3は、複数の前記主鋼材2、2…の外側を一体的に囲うように配置され、中空断面の柱構造の場合には、図示しない内型枠が別途設けられる。前記埋設型枠3に代えて、コンクリート4の硬化後に脱型する通常の型枠を用いてもよい。
【0039】
以上の構成からなるコンクリート構造1の施工方法は次の通りである。前記主鋼材2をフーチング内に建て込み、フーチング用の鉄筋及び型枠を組み立てた後、コンクリートを打設してフーチングを施工する。フーチングから立設された主鋼材2…の上端から前記埋設型枠3を吊り下ろして設置する。その後、前記埋設型枠3の内部に中詰めコンクリート4を現場打ちにて打設する。必要に応じて、主鋼材2を継手部にて接合しながら埋設型枠3の設置及び中詰めコンクリート4の打設を繰り返し、コンクリート構造を完成させる。
【0040】
前記埋設型枠3に代えて、コンクリート4の硬化後に脱型する通常の型枠を用いる場合、主鋼材2の外側に型枠を組立てた後、型枠内にコンクリート4を打設し、養生後、脱型する。
【符号の説明】
【0041】
1…コンクリート構造、2…主鋼材、3…埋設型枠、4…コンクリート、5…突起、6A…一方側添接板、6B…他方側添接板、7…ボルト、8…ガイド部材、9…帯鉄筋、F…フランジ部、W…ウェブ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9