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特許7519894導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20240712BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20240712BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240712BHJP
   C08K 5/1515 20060101ALI20240712BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240712BHJP
   C08F 16/30 20060101ALI20240712BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20240712BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20240712BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240712BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240712BHJP
【FI】
C08G61/12
C08L65/00
C08K5/17
C08K5/1515
C08L63/00 A
C08F16/30
H01B1/12 F
H01B1/20 A
B32B27/00 A
B32B7/025
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020205843
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092872
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松林 総
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-235127(JP,A)
【文献】特開昭60-226524(JP,A)
【文献】特開2012-241068(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095650(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G、C08L、C08F
C08J7、H01B1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子、及び、下記式(1)で表される化合物1に由来するモノマー単位を有するアニオン性重合体を含む導電性複合体と、分散媒とを含有する、導電性高分子分散液であって、
前記π共役系導電性高分子は、ポリチオフェン系導電性高分子又はポリピロール系導電性高分子であり、
前記アニオン性重合体は、前記化合物1の単独重合体であり、前記単独重合体の質量平均分子量が0.5万~100万である、導電性高分子分散液。
【化1】
[式中、Rは炭素数4~20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、nは4~100の整数である。]
【請求項2】
前記導電性複合体に、前記化合物1に由来するモノマー単位を有しないポリアニオンがさらに含まれる、請求項1記載の導電性高分子分散液。
【請求項3】
前記導電性複合体が有するアニオン基は、アミン化合物若しくは第四級アンモニウム化合物との反応によって修飾されている、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液。
【請求項4】
前記導電性複合体が有するアニオン基は、エポキシ化合物との反応によって修飾されている、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液。
【請求項5】
前記導電性複合体が有するアニオン基は、アミン化合物若しくは第四級アンモニウム化合物、及びエポキシ化合物との反応によって修飾されている、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液。
【請求項6】
前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1~の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
【請求項7】
π共役系導電性高分子を形成するモノマー化合物と、下記式(1)で表される化合物1に由来するモノマー単位を有するアニオン性重合体と、水系分散媒とを含有する反応液中で、前記モノマー化合物を重合することにより、
前記π共役系導電性高分子及び前記アニオン性重合体を含む導電性複合体と、前記水系分散媒とを含有する導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法であって、
前記π共役系導電性高分子は、ポリチオフェン系導電性高分子又はポリピロール系導電性高分子であり、
前記アニオン性重合体は前記化合物1の単独重合体であり、前記単独重合体の質量平均分子量が0.5万~100万である、導電性高分子分散液の製造方法。
【化2】
[式中、Rは炭素数4~20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、nは4~100の整数である。]
【請求項8】
前記反応液中に前記アニオン性重合体以外のポリアニオンをさらに含有させた状態で、前記モノマー化合物を重合することにより、
前記導電性複合体に前記ポリアニオンをさらに含ませる、請求項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項9】
前記水系分散媒を含有する前記導電性高分子分散液に、エポキシ化合物、アミン化合物及び第四級アンモニウム化合物から選択される1種以上を添加し、前記導電性複合体に反応させることにより、前記水系分散媒中に前記反応で修飾された導電性複合体を析出させることと、
前記析出した前記導電性複合体を回収して有機溶剤を加え、前記導電性複合体と前記有機溶剤とを含有する導電性高分子分散液を得る、請求項7又は8に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項10】
基材と、前記基材の少なくとも一つの面に形成された導電層とを備え、
前記導電層が請求項1~の何れか一項に記載された導電性高分子分散液の硬化物である、導電性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含有する導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
π共役系の主鎖を有するπ共役系導電性高分子は、アニオン基を有するポリアニオンがドープすることによって導電性複合体を形成し、水に対する分散性が生じる。導電性複合体を含有する導電性高分子分散液を基材に塗工することにより、導電層を備えた導電性積層体を製造することができる。また、コンデンサ素子の電解質として導電性複合体を備えた電解コンデンサの製造において、導電性高分子分散液が使用されることがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6527271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、導電性高分子分散液に含まれる微粒子状の導電性複合体を陽極箔表面のエッチングピットに導入する場合、その平均粒子径(粒度)が100nm以下の範囲であることが好ましいとされている。また、導電性高分子分散液を基材に塗布して形成する導電層の厚さを200nm程度以下にする場合にも、導電層の表面の凹凸を低減する観点から導電性複合体の粒度を小さくすることが求められることがある。
【0005】
本発明は、小径化された導電性複合体を含む導電性高分子分散液及びその製造方法、並びにその導電性高分子分散液を用いて製造された導電性積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] π共役系導電性高分子、及び、下記式(1)で表される化合物1に由来するモノマー単位を有するアニオン性重合体を含む導電性複合体と、分散媒とを含有する、導電性高分子分散液。
[2] 前記アニオン性重合体が、前記化合物1の単独重合体である、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[3] 前記アニオン性重合体が、スチレンスルホン酸と前記化合物1の共重合体である、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[4] 前記導電性複合体に、前記化合物1に由来するモノマー単位を有しないポリアニオンがさらに含まれる、[1]~[3]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[5] 前記導電性複合体が有するアニオン基は、アミン化合物若しくは第四級アンモニウム化合物との反応によって修飾されている、[1]~[4]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[6] 前記導電性複合体が有するアニオン基は、エポキシ化合物との反応によって修飾されている、[1]~[4]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[7] 前記導電性複合体が有するアニオン基は、アミン化合物若しくは第四級アンモニウム化合物、及びエポキシ化合物との反応によって修飾されている、[1]~[4]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[8] 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、[1]~[7]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[9] π共役系導電性高分子を形成するモノマー化合物と、下記式(1)で表される化合物1に由来するモノマー単位を有するアニオン性重合体と、水系分散媒とを含有する反応液中で、前記モノマー化合物を重合することにより、前記π共役系導電性高分子及び前記アニオン性重合体を含む導電性複合体と、前記水系分散媒とを含有する導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法。
[10] 前記アニオン性重合体が、前記化合物1の単独重合体である、[9]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[11] 前記アニオン性重合体が、スチレンスルホン酸と前記化合物1の共重合体である、[9]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[12] 前記反応液中に前記アニオン性重合体以外のポリアニオンをさらに含有させた状態で、前記モノマー化合物を重合することにより、前記導電性複合体に前記ポリアニオンをさらに含ませる、[9]~[11]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[13] 前記水系分散媒を含有する前記導電性高分子分散液に、エポキシ化合物、アミン化合物及び第四級アンモニウム化合物から選択される1種以上を添加し、前記導電性複合体に反応させることにより、前記水系分散媒中に前記反応で修飾された導電性複合体を析出させることと、前記析出した前記導電性複合体を回収して有機溶剤を加え、前記導電性複合体と前記有機溶剤とを含有する導電性高分子分散液を得る、[9]~[12]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[14] 基材と、前記基材の少なくとも一つの面に形成された導電層とを備え、前記導電層が[1]~[8]の何れか一項に記載された導電性高分子分散液の硬化物である、導電性積層体。
【0007】
【化1】
[式中、Rは炭素数4~20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、nは4~100の整数である。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、粒度の小さい導電性複合体を含む導電性高分子分散液を容易に得ることができる。また、本発明の導電性高分子分散液を用いることにより、厚さ200nm以下という薄い導電層を形成した場合であっても、その表面の凹凸を低減することができる。
【0009】
本発明はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に資すると考えられる。
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪導電性高分子分散液≫
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子、及び、下記式(1)で表される化合物1に由来するモノマー単位を有するアニオン性重合体を含む導電性複合体と、分散媒とを含有する、導電性高分子分散液である。
本態様の導電性高分子分散液において、前記導電性複合体は、分散状態であってもよいし、溶解状態であってもよい。
【0012】
本態様の前記導電性複合体は、前記π共役系導電性高分子、及び、化合物1に由来するモノマー単位を有するアニオン性重合体を含む。
前記アニオン性重合体は、単独重合体(ホモポリマー)であってもよいし、共重合体(コポリマー)であってもよい。
前記単独重合体は、化合物1のみが重合してなるホモポリマーである。
前記共重合体は、化合物1と、重合性官能基及びアニオン基を有するアニオン性化合物(ただし、化合物1を除く。)とのコポリマーである。
【0013】
前記単独重合体の質量平均分子量Mwは、π共役系導電性高分子へのドーピング効果、及び導電性複合体の分散性を向上させる観点から、0.1万~100万が好ましく、0.5万~10万がより好ましく、1万~5万がさらに好ましい。
ここで質量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフ法(GPC法)により、プルランを標準物質として測定した質量基準の平均分子量である。
【0014】
前記アニオン性化合物の重合性官能基としては、化合物1のビニル基と共重合可能なものであれば特に制限されず、例えば、ビニル基、ビニリデン基等が挙げられる。
前記アニオン性化合物のアニオン基は、水中で解離してπ共役系導電性高分子にドープ可能であるものが好ましく、例えば、スルホ基、カルボキシ基が挙げられる。
前記アニオン基のカウンターカチオンは、プロトンであってもよいし、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンであってもよい。ただし、アニオン性重合体がπ共役系導電性高分子にドープし易くなることから、前記アニオン基のカウンターカチオンはプロトンであることが好ましい。
前記アニオン性化合物の具体例としては、後述するポリアニオンのモノマー単位を構成する公知の化合物が挙げられる。
【0015】
前記共重合体において、化合物1に由来するモノマー単位の含有率Aと、他のモノマー単位の含有率Bとの比率は、前記共重合体の合計のモノマー単位数を100モル%としたとき、含有率A:含有率Bはモル%基準で、例えば10:90~90:10が挙げられ、20:80~80:20が好ましく、30:70~70:30がより好ましく、40:60~60:40がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、本態様の導電性高分子分散液を用いて形成する導電層の導電性の向上と、導電性複合体の小径化とのバランスが優れる。
【0016】
前記共重合体の質量平均分子量Mwは、π共役系導電性高分子へのドーピング効果、及び導電性複合体の分散性を向上させる観点から、0.5万~200万が好ましく、1万~100万がより好ましく、10万~50万がさらに好ましい。
ここで質量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィー法(GPC法)により、プルランを標準物質として測定した質量基準の平均分子量である。
【0017】
前記共重合体を構成する前記他のモノマー単位としては、例えば、後述するポリアニオンを構成するモノマー単位が挙げられる。
【0018】
前記導電性複合体は、化合物1に由来するモノマー単位を有しないポリアニオンをさらに含んでいてもよい。具体的なポリアニオンの例は後述する。
前記導電性複合体に前記ポリアニオンがさらに含まれることにより、本態様の導電性高分子分散液によって形成される導電層の導電性をより高めることができる。
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の粒度(粒子径)を小さくする観点からすると、前記導電性複合体に前記ポリアニオンは含まれないことが好ましい。
【0019】
前記導電性複合体における前記アニオン性重合体の含有量は、前記π共役系導電性高分子100質量部に対して、1質量部以上1000質量部以下が好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。
前記範囲の下限値以上であると、アニオン性重合体のπ共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなり、導電性複合体の分散性が向上し、導電性複合体の粒度が充分に小径化し、導電性がより高くなる。
前記範囲の上限値以下であると、π共役系導電性高分子の含有割合低下による導電性低下を抑制することができる。
【0020】
前記導電性複合体に前記ポリアニオンが含まれる場合、前記ポリアニオンの含有量は、前記π共役系導電性高分子100質量部に対して、1質量部以上1000質量部以下が好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。
前記範囲の下限値以上であると、前記ポリアニオンのπ共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなり、導電性複合体の分散性が向上し、導電性がより高くなる。
前記範囲の上限値以下であると、π共役系導電性高分子の含有割合低下による導電性低下を抑制することができる。
【0021】
前記導電性複合体に前記ポリアニオンが含まれる場合、前記ポリアニオンの含有割合は、アニオン性重合体100質量部に対して、1質量部以上1000質量部以下が好ましく、10質量部以上500質量部以下がより好ましく、50質量部以上200質量部以下がさらに好ましい。
前記範囲の下限値以上であると、前記導電層の導電性がより高くなる。
前記範囲の上限値以下であると、導電性複合体の粒度を小径化する効果が充分に得られる。
【0022】
前記導電性複合体が有するアニオン基、すなわち化合物1に由来するモノマー単位が有するアニオン基及び/又は前記ポリアニオンのアニオン基は、後述するように、エポキシ化合物、アミン化合物、及び第四級アンモニウム化合物から選択される1種以上との反応によって修飾されていてもよい。この修飾の詳細は後述する。
【0023】
導電性高分子分散液の総質量に対する、導電性複合体の含有量は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性をより高めることができる。
【0024】
<π共役系導電性高分子>
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0025】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0026】
<アニオン性重合体>
前記アニオン性重合体のモノマー材料である下記式(1)で表される化合物1は、スルホン酸基とビニル基とが、ポリオキシエチレン鎖(CHCHO)によって連結された化合物である。
前記アニオン性重合体を構成する化合物1は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0027】
【化2】
[式中、Rは炭素数4~20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、nは4~100の整数である。]
【0028】
前記アニオン性重合体は、従来のポリアニオンと同様にπ共役系導電性高分子にドーパントとして結合し得る。ドーパントとして機能する場合にはスルホン酸基がアニオン基としてドープすると考えられる。前記アニオン性重合体がπ共役系導電性高分子にドープすることにより、π共役系導電性高分子の導電性が向上するとともに、後述する粒度の小径化に寄与すると考えられる。
【0029】
前記アニオン性重合体は、π共役系導電性高分子にドープせずに単に添加剤として導電性高分子分散液に含まれているだけでもよいが、本来的に水に対する分散性に乏しいπ共役系導電性高分子(例えばPEDOT)が水系分散媒に対して分散性を示すためには、前記アニオン性重合体がπ共役系導電性高分子にドープしていることが好ましい。
【0030】
前記式(1)のRで表されるアルキル基は直鎖状であることが好ましい。
前記アルキル基の炭素数は、4~20であり、6~18が好ましく、8~16がより好ましく、10~14がさらに好ましく、10~12が特に好ましい。
上記の好適な範囲の炭素数であると、導電性複合体の粒度をより小さくできる。
【0031】
前記ポリオキシエチレン鎖の重合度nの範囲は、4~100であり、5~80が好ましく、6~50がより好ましく、7~30がさらに好ましく、8~20が特に好ましい。
上記の好適な範囲であると、導電性複合体の粒度をより小さくすることができ、本態様の導電性高分子分散液を用いて形成される導電層の導電性をより高めることができる。
【0032】
化合物1の好適な具体例としては、例えば、CAS番号352661-91-7で登録されているアンモニウムα-[1-(アリルオキシ)ドデカン-2-イル]-ω-(スルホナトオキシ)ポリ(オキシエチレン)のアンモニウムをプロトンに置換したスルホン酸体;CAS番号224646-44-0で登録されているアンモニウムα-[1-(アリルオキシ)テトラデカン-2-イル]-ω-(スルホナトオキシ)ポリ(オキシエチレン)のアンモニウムをプロトンに置換したスルホン酸体などが挙げられる。
これらのアンモニウム塩は、第一工業製薬社製のアクアロンKH-05(n=8~11、R=炭素数10又は12の直鎖状アルキル基)、アクアロンKH-10(n=22~25、R=炭素数10又は12の直鎖状アルキル基)、アクアロンKH-1025(n=68~71、R=炭素数10又は12の直鎖状アルキル基)として入手することができる。
【0033】
アニオン性重合体が、π共役系導電性高分子にドープすることによって導電性複合体を形成するとき、アニオン性重合体においては、一部のアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。この余剰のアニオン基は親水基であるため、後述するように修飾前の状態では、導電性複合体は水分散性が高く、有機溶剤分散性が低い。
アニオン性重合体が有する全てのアニオン基の個数を100モル%としたとき、余剰のアニオン基は、30モル%以上90モル%以下が好ましく、45モル%以上75モル%以下がより好ましい。
【0034】
<ポリアニオン>
本態様の導電性高分子分散液は、化合物1に由来するモノマー単位を有しないポリアニオンを含んでいてもよい。ただし、ポリアニオンを含むと、前記導電層の導電性が向上するものの、導電性複合体の粒度が大きくなる傾向があるので、粒度を小さくすることを優先するならば、ポリアニオンを含まないことが好ましい。
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上、好ましくは10個以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させることができる。
【0035】
前記ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子に対するドーピング効果に優れることから、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。これらは単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーからなる共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記導電性複合体を構成する前記ポリアニオンは1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
前記ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。
ここで質量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフ法を用いて、プルランを標準物質として測定した質量基準の平均分子量である。
【0036】
前記ポリアニオンが、π共役系導電性高分子にドープすることによって導電性複合体を形成した場合、前記ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。この余剰のアニオン基は親水基であるため、後述するように修飾前の状態では、導電性複合体は水分散性が高く、有機溶剤分散性が低い。
前記ポリアニオンが有する全てのアニオン基の個数を100モル%としたとき、余剰のアニオン基は、30モル%以上90モル%以下が好ましく、45モル%以上75モル%以下がより好ましい。
【0037】
<アニオン基の修飾>
前記導電性複合体に含まれる、アニオン性重合体及び前記ポリアニオンが有するドープに関与しない余剰のアニオン基(以下、「一部のアニオン基」ともいう)は、エポキシ化合物、アミン化合物及び第四級アンモニウム化合物から選択される1種以上との反応によって修飾されていてもよい。
【0038】
前記ポリアニオンの一部のアニオン基がエポキシ化合物と反応した場合、下記の置換基(A)が形成されると考えられる。アニオン性重合体のスルホン酸基がエポキシ化合物と反応した場合にも同様の基が形成されると考えられる。
前記ポリアニオンの一部のアニオン基がアミン化合物と反応した場合、下記の置換基(B)が形成されると考えられる。アニオン性重合体のスルホン酸基がアミン化合物と反応した場合にも同様の基が形成されると考えられる。
前記ポリアニオンの一部のアニオン基が第四級アンモニウム化合物と反応した場合、下記の置換基(C)が形成されると考えられる。アニオン性重合体のスルホン酸基がアミン化合物と反応した場合にも同様の基が形成されると考えられる。
【0039】
(置換基A)
前記置換基(A)は、下記式(A1)で表される基、又は下記式(A2)で表される基であると推測される。
【0040】
【化3】
【0041】
[式(A1)中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は任意の置換基である。]
【0042】
【化4】
【0043】
[式(A2)中、mは2以上の整数であり、複数のR、複数のR、複数のR、及び複数のRはそれぞれ独立に、水素原子、又は任意の置換基であり、複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のRは同一でも異なっていてもよい。]
【0044】
式(A1)及び(A2)において、左端の結合手は、置換基(A)が、アニオン基のプロトンと置換していることを表す。置換されるプロトンを有するアニオン基として、例えば、「-SOH」のように酸素原子に結合した活性なプロトンを有するアニオン基が挙げられる。
【0045】
式(A1)において、R、R、R、及びRの任意の置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。RとRとは結合して置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。例えば、RとRとが前記炭化水素基であり、Rの1価の炭化水素基の任意の1つの水素原子を除いた2価の炭化水素基と、Rの1価の炭化水素基の任意の1つの水素原子を除いた2価の炭化水素基とが、前記水素原子が除かれた炭素原子同士で結合して環を形成する場合が挙げられる。
式(A2)において、R、R、R、及びRの任意の置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。RとRとは結合して置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。環を形成する例は、上記と同様である。
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
置換基としての1価の基としては、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、トリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基等)、等が挙げられる。
置換基としての2価の基としては、酸素原子(-O-)、-C(=O)-、-C(=O)-O-等が挙げられる。
mは2以上の整数であり、2~100が好ましく、2~50がより好ましく、2~25がさらに好ましい。mが上記下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなる。mが前記上限値以下であると、疎水性が高くなりすぎたり、導電性が低下したりするのを抑制することができる。
【0046】
エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ以上有する化合物(エポキシ基含有化合物)である。凝集又はゲル化を防止する点では、エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ有する化合物が好ましい。
前記導電性複合体と反応するエポキシ化合物は1種類でもよいし、2種以上でもよい。
【0047】
1分子中にエポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert-ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシエイコサン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシ-9-デカン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシブタン、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2-エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、1,2-エポキシシクロドデカン、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタデカン、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-ヘプタデカフルオロブタン、3,4-エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシコハク酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α-ピネンオキサイド、2,3-エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-[2-(パーフルオロヘキシル)エトキシ]-1,2-エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(3-グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10-エポキシ-1,5-シクロドデカジエン、4-tert-ブチル安息香酸グリシジル、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、2-tert-ブチル-2-[2-(4-クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-フェニルプロピレンオキサイド、コレステロール-5α,6α-エポキシド、スチルベンオキサイド、p-トルエンスルホン酸グリシジル、3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル、N-プロピル-N-(2,3-エポキシプロピル)ペルフルオロ-n-オクチルスルホンアミド、(2S,3S)-1,2-エポキシ-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-4-フェニルブタン、3-ニトロベンゼンスルホン酸(R)-グリシジル、3-ニトロベンゼンスルホン酸-グリシジル、パルテノリド、N-グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4-グリシジルオキシカルバゾール、7,7-ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、炭素数10~16の高級アルコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0048】
前記高級アルコールグリシジルエーテルとしては、炭素数10~16の高級アルコールグリシジルエーテルの1種以上が好ましく、炭素数12~14の高級アルコールグリシジルエーテルの1種以上がより好ましく、C12(炭素数12)高級アルコールグリシジルエーテル及びC13(炭素数13)高級アルコールグリシジルエーテルのうち少なくとも1種がさらに好ましい。
【0049】
1分子中にエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7-オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2:3,4-ジエポキシブタン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、イソシアヌル酸トリグリシジル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2:3,4-ジエポキシブタン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0050】
エポキシ化合物は、有機溶剤への分散性が高くなることから、分子量が50以上2000以下であることが好ましい。また、低極性の炭化水素系溶剤、エステル系溶剤への分散性が高くなることから、エポキシ化合物は、炭素数が4以上120以下のものが好ましく、7以上100以下のものがより好ましく、10以上80以下のものがさらに好ましく、15以上50以下のものが特に好ましい。
【0051】
(置換基B)
前記置換基(B)は、下記式(B)で表される基であると推測される。
【0052】
-HN111213 ・・・(B)
[式(B)中、R11~R13はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有してもよい炭化水素基であり、ただし、R11~R13のうち少なくとも1つは置換基を有してもよい炭化水素基である。]
【0053】
置換基(B)において、左端の結合手は、アニオン基の負電荷と、アミン化合物の正電荷とが結合していることを表す。負に荷電し得るアニオン基として、例えば「-SO 」のように、酸素原子に活性なプロトンが結合したアニオン基が挙げられる。
【0054】
化学式(B)におけるR11~R13は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。化学式(B)におけるR11~R13は後述するアミン化合物に由来する置換基である。
化学式(B)における炭化水素基は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基の置換基としては、フェニル基、水酸基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、水酸基等が挙げられる。
【0055】
前記アミン化合物は、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。前記導電性複合体と反応するアミン化合物は1種類でもよいし、2種以上でもよい。
第一級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
第二級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物のうち、本態様の導電性複合体の導電性を高められることから、第三級アミンが好ましく、トリオクチルアミン及びトリブチルアミンの少なくとも一方がより好ましい。
【0056】
有機溶剤への分散性、特に、低極性の炭化水素系溶剤、エステル系溶剤への分散性が高くなることから、アミン化合物は、窒素原子上に炭素数が4以上の置換基を有することが好ましく、6以上の置換基を有することがより好ましく、窒素原子上に炭素数が8以上の置換基を有することがさらに好ましい。この窒素原子上の置換基の炭素数の上限値は特に制限されず、溶剤への溶解性や反応性を考慮して、例えば、50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下がさらに好ましい。
【0057】
前記導電性複合体が、置換基(A)及び置換基(B)を有する場合、[置換基(A)]:[置換基(B)]で表される質量比(以下、A/B比ともいう)は、10:90~90:10が好ましく、20:80~80:20がより好ましく、25:75~75:25がさらに好ましい。A/B比が上記範囲内であると、分散性、導電性のバランスを取りやすくなる。なお、[置換基(A)]の質量は、[(エポキシ化合物と導電性複合体とを反応させて得られる反応物Aの質量)-(エポキシ化合物と反応させる前の導電性複合体の質量)]で算出することができる。また、[置換基(B)]の質量は、[(前記反応物Aとアミン化合物とを反応させて得られる反応物Bの質量)-(前記反応物Aの質量)]から算出することができる。
【0058】
(置換基C)
前記置換基(C)は、下記式(C)で表される基であると推測される。
【0059】
-N11121314 ・・・(C)
[式(C)中、R11~R14はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基である。]
【0060】
置換基(C)において、左端の結合手は、アニオン基の負電荷と、第四級アンモニウムカチオンの正電荷とが結合していることを表す。負に荷電し得るアニオン基として、例えば「-SO 」のように、酸素原子に活性なプロトンが結合したアニオン基が挙げられる。
【0061】
化学式(C)におけるR11~R14は置換基を有していてもよい炭化水素基である。化学式(C)におけるR11~R14は第四級アンモニウム化合物に由来する置換基である。
化学式(C)における炭化水素基は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基の置換基としては、フェニル基、水酸基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、水酸基等が挙げられる。
【0062】
有機溶剤への分散性が高くなることから、第四級アンモニウム化合物は、窒素原子上に炭素数が4以上の置換基を有することが好ましく、6以上の置換基を有することがより好ましく、窒素原子上に炭素数が8以上の置換基を有することがさらに好ましい。この窒素原子上の置換基の炭素数の上限値は特に制限されず、溶剤への溶解性や反応性を考慮して、例えば、50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下がさらに好ましい。
また、第四級アンモニウム化合物が有する前記R11~R14の合計の炭素数は、8~44が好ましく、12~40がより好ましく、16~36がさらに好ましい。
前記窒素原子上の各置換基の炭素数の数は同じでも良いし、異なっていてもよい。
【0063】
第四級アンモニウム化合物の具体例としては、テトラ-n-オクチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、テトラナフチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。アンモニウムカチオンのカウンターアニオンとしては、例えば、臭素イオン、塩素イオン等のハロゲンイオンやヒドロキシイオンが挙げられる。
【0064】
前記導電性複合体が置換基(A)及び置換基(C)を有する場合、[置換基(A)]:[置換基(C)]で表される質量比(以下、A/C比ともいう)は、10:90~90:10が好ましく、20:80~80:20がより好ましく、25:75~75:25がさらに好ましい。A/C比が上記範囲内であると、分散性、導電性のバランスを取りやすくなる。なお、[置換基(A)]の質量は、[(エポキシ化合物と導電性複合体とを反応させて得られる反応物Aの質量)-(エポキシ化合物と反応させる前の導電性複合体の質量)]で算出することができる。また、[置換基(C)]の質量は、[(前記反応物Aと第四級アンモニウム化合物とを反応させて得られる反応物Cの質量)-(前記反応物Aの質量)]から算出することができる。
【0065】
<分散媒>
本態様の導電性高分子分散液に含まれる分散媒は、前述した導電性複合体を分散又は溶解する液剤である。本明細書において、分散と溶解とを区別せずに単に分散ということがあり、分散媒と溶媒とを区別せずに単に分散媒ということがある。よって、前記分散媒を溶媒と言い換えてもよい。
【0066】
前記分散媒は、水及び有機溶剤のうち少なくとも一方を含む。
本態様の導電性高分子分散液に含まれるπ共役系導電性高分子は、アニオン性重合体、前記ポリアニオンと結合した導電性複合体を形成しているので、水分散性を呈しやすい。この導電性複合体は、前述したように置換基(A)~(C)の修飾によって疎水化されていてもよい。疎水化されている場合には、分散媒として有機溶剤を用いることが好ましい。疎水化されていない場合には、分散媒として水系分散媒を用いることが好ましい。
【0067】
(水系分散媒)
水系分散媒は、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合液である。ここで、水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤である。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水系分散媒の総質量に対する水の含有量は、50質量%以上であり、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
【0068】
(有機溶剤)
本態様における有機溶剤は、水溶性有機溶剤でもよいし、非水溶性有機溶剤でもよいし、水溶性有機溶剤及び非水溶性有機溶剤の混合溶剤でもよい。ここで、水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤であり、非水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g未満の有機溶剤である。
【0069】
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノール)、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性高分子分散液のフィルム基材に対する塗工性が良好になることから、水溶性有機溶剤としてはアルコール系溶剤、ケトン系溶剤又はエステル系溶剤が好ましい。
【0070】
非水溶性有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤等が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
非水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
アニオン性重合体及び前記ポリアニオンが前記置換基(A)~(C)の何れかを有し、疎水化されている場合、導電性高分子分散液の分散媒の総質量に対する有機溶剤の含有量は、50質量%超が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上99.9質量%以下がさらに好ましい。有機溶剤の含有割合が上記範囲であると、疎水化された導電性複合体を容易に分散させることができ、容易に導電層を形成するこができる。
【0072】
(エステル系溶剤)
前記エステル系溶剤は、エステル基(-C(=O)-O-)を有するエステル基含有化合物である。
本態様の導電性高分子分散液がエステル系溶剤を含む場合、π共役系導電性高分子の分散性を高める観点から、下記式1zで表される1種類以上のエステル基含有化合物を含むことが好ましい。
式1z:R21-C(=O)-O-R22
[式中、R21は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R22は炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。]
【0073】
本態様のπ共役系導電性高分子の分散性を高める観点から、R21はメチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、R22の炭素数は2~5が好ましく、2~4がより好ましい。
【0074】
エステル系溶剤の好適な具体例としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等が挙げられる。
【0075】
本態様の導電性高分子分散液に含まれるエステル系溶剤の含有量は、前記分散媒の総質量に対し、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上がより一層好ましく、80質量%以上が特に好ましく、90質量%以上が最も好ましく、100質量%であってもよい。エステル系溶剤の含有量が上記範囲内であると、導電性複合体の分散性を高めることができる。
【0076】
本態様の導電性高分子分散液がエステル系溶剤を含む場合、エステル系溶剤以外の有機溶剤がさらに1種類以上含まれていても構わない。
【0077】
本態様の導電性高分子分散液がエステル系溶剤を含む場合、前記π共役系導電性高分子の分散性を高める観点から、アニオン性重合体及び前記ポリアニオンは、前記置換基(A)及び前記置換基(B)、或いは、前記置換基(A)及び前記置換基(C)を有することが好ましい。
【0078】
本態様の導電性高分子分散液はアニオン性重合体を含むのでpHが酸性となり易い。具体的には、pH3以下となり易く、pH2以下となり易い。
【0079】
本態様の導電性高分子分散液の分散媒が水系分散媒である場合、25℃の水系分散媒における導電性複合体の粒度は、前記導電性高分子分散液の総質量に対する導電性複合体の濃度を0.1~0.2質量%に調整した時に、200nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましく、15nm以上85nm以下がさらに好ましく、20nm以上70nm以下が特に好ましい。これらの好適な範囲であると、導電性複合体の分散安定性がより向上する。
上記粒度は、動的光散乱法によって、キュムラント平均粒径を測定した値として求められる。
【0080】
本態様の導電性高分子分散液の分散媒が有機溶剤を50質量%超含む有機系分散媒である場合、25℃の有機系分散媒における導電性複合体の粒度は、前記導電性高分子分散液の総質量に対する導電性複合体の濃度を0.01~0.1質量%に調整した時に、250nm以下が好ましく、50nm以上200nm以下がより好ましく、70nm以上170nm以下がさらに好ましく、90nm以上140nm以下が特に好ましい。これらの好適な範囲であると、導電性複合体の分散安定性がより向上する。
上記粒度は、動的光散乱法によって、キュムラント平均粒径を測定した値として求められる。
【0081】
<バインダ成分>
本態様の導電性高分子分散液は、バインダ成分を1種以上含んでいてもよい。バインダ成分は、前記アニオン性重合体、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオン以外の樹脂又はその前駆体であり、熱可塑性樹脂、又は、導電層形成時に硬化する硬化性のモノマー又はオリゴマーである。熱可塑性樹脂はそのままバインダ樹脂となり、硬化性のモノマー又はオリゴマーは硬化により形成した樹脂がバインダ樹脂となる。
【0082】
バインダ成分由来のバインダ樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂(アクリル化合物)、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン等が挙げられる。
本態様の導電性高分子分散液の分散媒が水系分散媒である場合、含有するバインダ樹脂としては、水分散性エマルション樹脂又は水溶性樹脂が好ましく、水分散性エマルション樹脂がより好ましい。
【0083】
水分散性エマルション樹脂の具体例としては、アクリル樹脂(アクリル化合物)、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等であって、乳化剤によってエマルションにされたものが挙げられる。なかでも、導電性高分子分散液をフィルム基材に塗工した塗膜の強度が高くなることから、ポリエステルエマルションが好ましい。特に、ポリエステルフィルム基材に塗工する場合、フィルム基材に対する塗膜の密着性が高くなることから、ポリエステルエマルションが好ましい。
【0084】
水溶性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂(アクリル化合物)、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂であって、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有するものが挙げられる。ここで、水溶性樹脂は、25℃の蒸留水100gに、1g以上、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上溶解するものが好ましい。
【0085】
水分散性樹脂が有するカルボキシ基、スルホ基等の酸基は、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のカチオンと塩を形成していてもよい。
【0086】
硬化性のモノマー又はオリゴマーは、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよいし、光硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよい。ここで、オリゴマーは、質量平均分子量が1万未満の重合体のことである。
硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリルモノマー(アクリル化合物)、エポキシモノマー、オルガノシロキサン等が挙げられる。硬化性のオリゴマーとしては、例えば、アクリルオリゴマー(アクリル化合物)、エポキシオリゴマー、シリコーンオリゴマー(硬化型シリコーン)等が挙げられる。
バインダ成分としてアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーを用いた場合には、加熱又は光照射により容易に硬化させることができる。
【0087】
硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、さらに硬化触媒を含むことが好ましい。例えば、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、加熱によりラジカルを発生させる熱重合開始剤を含むことが好ましく、光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、光照射によりラジカルを発生させる光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0088】
本態様の導電性高分子分散液に含まれるバインダ成分(ただし、後述するシリコーン化合物を除く。)の含有割合は、前記導電性複合体1質量部に対して、例えば、1質量部以上10000質量部以下が好ましく、10質量部以上5000質量部以下がより好ましく、100質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、本態様の導電性高分子分散液によって形成される導電層に含まれるバインダ成分の特性を充分に発揮させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、本態様の導電性高分子分散液によって形成される導電層の充分な導電性を確保できる。
【0089】
(シリコーン化合物)
本態様の導電性高分子分散液は、分散媒として有機溶剤を含む場合、好ましくは非水溶性有機溶剤を含む場合、バインダ成分として、低極性であるシリコーン化合物を添加して、充分に分散させることができる。前記有機溶剤が炭化水素系溶剤又はエステル系溶剤を含む場合、シリコーン化合物の分散性がより高められるので好ましい。
シリコーン化合物としては、硬化型シリコーンが挙げられる。バインダ成分が硬化型シリコーンである場合、硬化型シリコーンを硬化させることにより、導電層に離型性を付与することができる。
【0090】
硬化型シリコーンは、付加硬化型シリコーン、縮合硬化型シリコーンのいずれであってもよい。本態様では、付加硬化型シリコーンを使用しても硬化阻害が生じにくいため、好ましい。
【0091】
付加硬化型シリコーンとしては、シロキサン結合を有する直鎖状ポリマーであって、前記直鎖の両方の末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサンと、ハイドロジェンシランとを有するものが挙げられる。このような付加硬化型シリコーンは、付加反応によって三次元架橋構造を形成して硬化する。硬化を促進させるために白金系硬化触媒を用いてもよい。
付加硬化型シリコーンの具体例としては、KS-3703T、KS-847T、KM-3951、X-52-151、X-52-6068、X-52-6069(信越化学工業社製)等が挙げられる。
付加硬化型シリコーンは有機溶剤に溶解又は分散しているものが好適に使用される。
【0092】
本態様の導電性高分子分散液に含まれるシリコーン化合物の含有割合は、前記導電性複合体100質量部に対して、10質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上5000質量部以下がより好ましく、500質量部以上3000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、本態様の導電性高分子分散液によって形成される導電層に充分な離型性を付与することができる。
上記範囲の上限値以下であると、本態様の導電性高分子分散液によって形成される導電層の充分な導電性を確保できる。
【0093】
[粘着剤]
本態様の導電性高分子分散液は、バインダ成分として粘着剤を含有してもよい。粘着剤を含む導電性高分子分散液を用いることにより、粘着性を有する導電層を形成することができる。
本態様の導電性高分子分散液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤に予め分散された粘着剤と容易に混合することができる。本態様の導電性高分子分散液が炭化水素系溶剤又はエステル系溶剤を含む場合、炭化水素系溶剤又はエステル系溶剤に予め分散された粘着剤と容易に混合することができ、その混合液中において導電性複合体を安定に分散できるので好ましい。
【0094】
本態様の粘着剤が有する粘着性の程度は特に制限されず、貼付した後で、手で容易に剥離可能な程度の粘着性であってもよいし、貼付した後で剥離することが難しい程度の粘着性であってもよい。剥離することが困難な粘着性は接着性と言い換えることができる。つまり、粘着性は半永久的に接着することが可能な程度であってもよい。
【0095】
前記粘着剤として、公知の粘着剤が適用できる。導電性を維持しつつ良好な粘着性を発揮させる観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0096】
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤は、同種又は異種の固体の面と面とを貼り合せて一体化させることができる。アクリル系粘着剤は、アクリル系樹脂(アクリル系重合体)を含む。
【0097】
アクリル系樹脂を形成するアクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート;テトラエチレングリコールジメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート;ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、アクリロイルホルモリン、N-メチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
前記アクリル系樹脂を形成するアクリルモノマーは1種類でもよいし、2種以上でもよい。アクリルモノマーを2種以上組み合わせることにより粘着性を調整することができる。
【0098】
アクリル系樹脂は、アクリルモノマーと、アクリルモノマー以外のビニル系モノマーとの共重合体であってもよい。
ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸等が挙げられる。
上記共重合体におけるアクリルモノマー単位の含有量は、50モル%以上100モル%未満であることが好ましく、70モル%以上98モル%以下であることがより好ましい。
アクリルモノマー単位の含有量が前記下限値以上であれば、粘着性を容易に発現できる。
上記共重合体におけるビニル系モノマー単位の含有量は、例えば、2モル%以上20モル%以下とすることができる。
【0099】
前記アクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。ガラス転移温度が80℃を超えるアクリル系樹脂は、粘着性が低い。アクリル系樹脂のガラス転移温度は-80℃以上であり、それよりガラス転移温度が低いものを得ることは困難である。アクリル系樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定又は動的粘弾性測定により求めることができる。
アクリル系樹脂のガラス転移温度を低くする傾向を有するアクリルモノマーとして、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート(特にn-ブチルアクリレート)、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。アクリル系樹脂において、これらのモノマー単位の割合が多くなる程、ガラス転移温度が低くなる。
【0100】
アクリル系樹脂の質量平均分子量は1万以上200万以下であることが好ましく、3万以上100万以下であることがより好ましい。アクリル系樹脂の質量平均分子量が前記下限値以上であれば、充分な凝集力を確保できる。前記上限値以下であれば、粘着性をより向上させることができる。
【0101】
アクリル系樹脂が、反応性官能基を有するアクリルモノマー単位を有する場合には、硬化剤と反応させて硬化させてもよい。アクリル系樹脂を硬化させると、粘着剤を含む導電層の凝集力が向上して強度を向上させることができる。また、導電層の凝集力を向上させることによって、接着と剥離を繰り返すことが可能な再剥離性の導電層とすることもできる。
前記反応性官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、エポキシ基等が挙げられる。後述する多官能イソシアネートと反応させる場合には、反応性官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
ヒドロキシ基を有するアクリルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
カルボキシ基を有するアクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等が挙げられる。
アミノ基を有するアクリルモノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
アミド基を有するアクリルモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
エポキシ基を有するアクリルモノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
硬化剤として多官能イソシアネートを用いる場合には、前記反応性官能基を有するアクリルモノマーのなかでも、硬化性及びコストを勘案すると、ヒドロキシ基を有するアクリルモノマーが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートがより好ましい。
前記アクリル樹脂を形成する、前記反応性官能基を有するアクリルモノマーは、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0102】
本態様の導電性高分子分散液に含まれる粘着剤の含有割合は、前記導電性複合体1質量部に対して10質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上5000質量部以下がより好ましく、300質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、本態様の導電性高分子分散液によって形成される導電層に充分な粘着性を付与できる。
上記範囲の上限値以下であると、本態様の導電性高分子分散液によって形成される導電層の充分な導電性を確保できる。
【0103】
(硬化剤)
本態様の導電性高分子分散液に含まれる前記粘着剤が反応性官能基を有する場合、本態様の導電性高分子分散液は硬化剤を含有することが好ましい。
硬化剤としては、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する多官能イソシアネート等のイソシアネート系硬化剤、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物等のエポキシ系硬化剤等が挙げられる。これら硬化剤のなかでも、反応性の点から、多官能イソシアネートが好ましい。特に、粘着剤が、ヒドロキシ基を有するアクリルモノマー単位を有する場合には、硬化剤が多官能イソシアネートであることが好ましい。
【0104】
多官能イソシアネートとしては、脂肪族多官能イソシアネート、脂環族多官能イソシアネート及び芳香族多官能イソシアネートが挙げられる。
多官能イソシアネートの具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタトリイソシアネート、トリメチルへキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
多官能イソシアネートは、前記ジイソシアネートを、NCO/OHモル比が2/1以上となるように変性した変性多官能イソシアネートより形成した変性ジイソシアネートであってもよい。
多官能イソシアネートは、変性ポリイソシアネートであってもよい。変性ポリイソシアネートしては、例えば、前記多官能イソシアネートを多価アルコールと反応させて得られるポリウレタンポリイソシアネート、多官能イソシアネートを重合させることによって得られる、イソシアヌレート環を含んだポリイソシアネート、多官能イソシアネートと水と反応させて得られる、ビュレット結合を含んだポリイソシアネート等が挙げられる。
本態様の導電性高分子分散液に含まれる硬化剤の種類は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0105】
本態様の導電性高分子分散液に含まれる硬化剤の含有割合は、前記粘着剤100質量部に対して、例えば、1質量部以上100質量部以下が好ましく、2質量部以上50質量部以下がより好ましく、3質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、本態様の導電性高分子分散液によって形成される導電層に充分な粘着性を付与することができる。
【0106】
(高導電化剤)
本態様の導電性高分子分散液は、高導電化剤を含んでもよい。
ここで、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、アニオン性重合体、有機溶剤、粘着剤、硬化剤、及びバインダ成分は、高導電化剤に分類しない。なお、前記エポキシ化合物、前記アミン化合物、前記第四級アンモニウム化合物は、ここで説明する高導電化剤に該当していてもよい。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上の水酸基を有する化合物、1個以上の水酸基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
本態様の導電性高分子分散液に含有される高導電化剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
高導電化剤の含有割合は導電性複合体の100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下が好ましく、10質量部以上5000質量部以下がより好ましく、100質量部以上2500質量部以下がさらに好ましい。
高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
【0107】
(その他の添加剤)
本態様の導電性高分子分散液には、公知のその他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
本態様の導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体の100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
【0108】
≪アニオン性重合体の製造方法≫
前記アニオン性重合体は、化合物1と水系分散媒とを含有する反応液中で、化合物1を重合することにより得ることができる。化合物1を重合する方法として、ビニル化合物を重合する公知方法を適用することができる。例えば、後述する酸化剤や触媒を用いたラジカル重合法が挙げられる。
前記反応液中に含まれる化合物1は、スルホン酸基のカウンターカチオンとしてナトリウムイオンやアンモニウムイオンが含まれた塩であってもよい。
【0109】
前記反応液に含まれる前記分散媒は、前記水系分散媒が好ましく、水がより好ましい。
前記分散媒が水を含むことにより、化合物1の重合反応が安定して進行し、アニオン性重合体が分散媒中で安定に分散された状態で得られやすい。
前記反応液中で重合した化合物1のスルホン酸基に結合したカウンターカチオン、及び反応液に添加した触媒や酸化剤を、化合物1の重合後に反応液から除去することが好ましい。前記カウンターカチオンを除去することは、重合により得られたアニオン性重合体のスルホン酸基に結合するカウンターカチオンを除去して、プロトンに置換することを意味する。
【0110】
前記カウンターカチオン等を前記反応液から除去する方法としては、例えば、イオン交換樹脂に前記反応液を接触させてイオン交換樹脂に吸着させる方法、イオン交換水を添加しつつ前記反応液を限外ろ過処理し、分散媒の置換とともに除去する方法等が挙げられる。このうち、イオン交換樹脂を使用する方法が簡便であるため好ましい。前記イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を併用することが好ましい。
【0111】
≪導電性高分子分散液の製造方法≫
<アニオン性重合体の存在下でのπ共役系導電性高分子の合成>
本発明の第二態様は、重合によりπ共役系導電性高分子を形成するモノマー化合物と、前記式(1)で表される化合物1に由来するモノマー単位を有するアニオン性重合体と、水系分散媒とを含有する反応液中で、前記モノマー化合物を重合することにより、前記π共役系導電性高分子及び前記アニオン性重合体を含む導電性複合体と、前記水系分散媒とを含有する導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法である。
本態様の製造方法により、第一態様の導電性高分子分散液を製造することができる。
【0112】
前記反応液におけるπ共役系導電性高分子の合成は、前記反応液に前記アニオン性重合体が含まれること以外は、従来のπ共役系導電性高分子の合成と同様にして行うことができる。
【0113】
前記反応液に含まれる前記分散媒は、前記水系分散媒が好ましく、水がより好ましい。
前記分散媒が水を含むことにより、前記モノマーの重合反応が安定して進行し、π共役系導電性高分子がアニオン性重合体と結合した導電性複合体を形成し、分散媒中で安定に分散された状態で得られやすい。
【0114】
前記モノマーを化学酸化することによって前記モノマー同士を重合させることができる。化学酸化重合は、公知の触媒及び酸化剤を用いて行うことができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
【0115】
前記反応液の総質量に対するアニオン性重合体の含有量としては、例えば、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.75質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、目的の導電性高分子分散液において、π共役系導電性高分子とアニオン性重合体の含有比を、前述した好適な範囲に調整することが容易となる。
【0116】
重合反応開始直前の前記反応液の総質量に対する前記モノマーの含有量は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
【0117】
前記反応液において、π共役系導電性高分子にアニオン性重合体を結合させ、水分散性に優れた導電性複合体を形成する観点から、重合反応開始直前における前記反応液に含まれるアニオン性重合体の含有割合は、前記モノマー100質量部に対して、50質量部以上5000質量部以下が好ましく、100質量部以上1000質量部以下がより好ましく、150質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。
【0118】
前記モノマーの化学酸化重合によりπ共役系導電性高分子を合成することにより、目的の第一態様の導電性高分子分散液を得ることができる。
【0119】
前記反応液に添加した触媒及び酸化剤を、前記モノマーの化学酸化重合の後で、導電性高分子分散液から除去することが好ましい。
除去する方法としては、例えば、イオン交換樹脂に導電性高分子分散液を接触させ、触媒及び酸化剤をイオン交換樹脂に吸着させる方法、導電性高分子分散液を限外ろ過することにより分散媒の置換とともに除去する方法等が挙げられる。このうち、イオン交換樹脂を使用する方法が簡便であるため好ましい。前記イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を併用することが好ましい。
【0120】
本発明の第二態様の方法で製造すると、π共役系導電性高分子の化学酸化重合時にアニオン性重合体が存在するので、アニオン性重合体がπ共役系導電性高分子に結合又はドープして、水分散性の粒度が小さい導電性複合体を得ることができる。
【0121】
<ポリアニオンの添加>
本態様の製造方法において、重合前の前記反応液にさらに前記ポリアニオン(化合物1に由来するモノマー単位を有しないポリアニオン)を添加した後で、前記モノマーを重合してもよい。アニオン性重合体及び前記ポリアニオンの存在下でπ共役系導電性高分子を重合することにより、アニオン性重合体及び前記ポリアニオンのうち少なくとも一方がπ共役系導電性高分子に結合又はドープした導電性複合体を形成することができる。
【0122】
重合反応開始直前の前記反応液の総質量に対する前記ポリアニオンの含有量は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.75質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
上記の好適な範囲とすることにより、π共役系導電性高分子の粒度の増加を抑制することができ、本態様の導電性高分子分散液を用いて形成される導電層の導電性をより高めることができる。
【0123】
前記反応液において、π共役系導電性高分子に前記ポリアニオンを結合させ、水分散性及び導電性に優れた導電性複合体を形成する観点から、重合反応開始直前における前記反応液に含まれる前記ポリアニオンの含有割合は、前記モノマー100質量部に対して、50質量部以上5000質量部以下が好ましく、100質量部以上1000質量部以下がより好ましく、150質量部以上500質量部以下の範囲がさらに好ましい。
【0124】
以上で得られた導電性高分子分散液に、さらにバインダ成分やその他の添加剤を添加してもよい。バインダ成分や添加剤の種類及び含有量は第一態様で説明した好適な範囲を適用することが好ましい。
【0125】
<析出回収工程>
以上で得られた水系分散媒を含む導電性高分子分散液に、エポキシ化合物、アミン化合物及び第四級アンモニウム化合物から選択される1種以上を添加することにより、前記導電性複合体を含む反応生成物を析出させ、析出した前記反応生成物を回収して溶剤を加え、導電性高分子分散液を得てもよい。析出物の回収方法は特に制限されず、例えば、濾過が挙げられる。
本工程で得た導電性複合体のアニオン基には、上記の添加した化合物が反応して、前述した置換基(A)~(C)の何れかが形成されて疎水化されている。
【0126】
導電性高分子分散液にエポキシ化合物の1種以上を添加すると、エポキシ化合物のエポキシ基が、アニオン性重合体及び/又は前記ポリアニオンの一部のアニオン基と反応する。これにより置換基(A)が形成されて、導電性複合体が疎水性になるため、水系分散液中での安定的な分散が困難になり、析出して析出物となる。
エポキシ化合物の添加の際には反応促進のために加熱してよい。加熱温度は、40℃以上100℃以下とすることが好ましい。
エポキシ化合物の添加量は、導電性複合体の100質量部に対して、10質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上5000質量部以下がより好ましく、500質量部以上3000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなり、有機溶剤、特に炭化水素系溶剤及びエステル系溶剤に対する分散性が向上する。
上記範囲の上限値以下であると、未反応のエポキシ化合物による導電性低下を防止できる。
【0127】
導電性高分子分散液にエポキシ化合物、アミン化合物及び第四級アンモニウム化合物から選択される1種以上を添加する前、添加と同時又は添加した後には、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。ここで、水溶性有機溶剤とは、温度20℃において水100gに対して溶解量が1g以上の有機溶剤である。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。添加する有機溶剤は、1種類でもよいし、2種以上でもよい。
【0128】
導電性高分子分散液にアミン化合物の1種以上を添加すると、アミン化合物が、アニオン性重合体及び/又は前記ポリアニオンの一部のアニオン基と反応する。これにより置換基(B)が形成されて導電性複合体が疎水性になるため、水系分散液中での安定的な分散が困難になり、析出して析出物となる。
アミン化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下が好ましく、10質量部以上5000質量部以下がより好ましく、100質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなり、有機溶剤、特に炭化水素系溶剤及びエステル系溶剤に対する分散性が向上する。
上記範囲の上限値以下であると、未反応のアミン化合物による導電性低下を防止できる。
【0129】
導電性高分子水系分散液に第四級アンモニウム化合物の1種以上を添加すると、第四級アンモニウム化合物が、アニオン性重合体及び/又は前記ポリアニオンの一部のアニオン基と反応する。置換基(C)が形成されて導電性複合体が疎水性になるため、水系分散液中での安定的な分散が困難になり、析出して析出物となる。
第四級アンモニウム化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下が好ましく、10質量部以上5000質量部以下がより好ましく、50質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなり、有機溶剤に対する分散性が向上する。
上記範囲の上限値以下であると、未反応の第四級アンモニウム化合物による導電性低下を防止できる。
第四級アンモニウム化合物は、アミン化合物と類似した反応機構で、アミン化合物よりも少ない添加量で、導電性複合体に対して良好な反応性を示す。第四級アンモニウム化合物によって修飾された導電性複合体を含む導電層の導電性は、アミン化合物によって修飾された場合よりも優れる傾向がある。
【0130】
前記導電性高分子分散液に、エポキシ化合物と、アミン化合物若しくは第四級アンモニウム化合物との両方を添加する場合、その添加順序は特に限定されない。合成中間体(反応中間体)の取り扱いが容易であることから、まずエポキシ化合物を添加して、ポリアニオンの一部のアニオン基と反応させた後、アミン化合物若しくは第四級アンモニウム化合物を添加してポリアニオンの他部のアニオン基と反応させることが好ましい。
【0131】
本工程で得た析出物の水分量は可能な限り少ないことが好ましく、水分を全く含まないことが最も好ましいが、実用の観点からは、水分を10質量%以下の範囲で含んでもよい。
水分量を少なくする方法としては、例えば、粉体等の固体状態で溶媒から分離した析出物を有機溶剤で洗い流す方法、析出物を乾燥する方法等が挙げられる。
【0132】
<洗浄>
本工程で回収した反応生成物(析出物)を洗浄用有機溶剤で洗浄してもよい。この洗浄によって、残留する水、未反応のエポキシ化合物、未反応のアミン化合物、未反応の第四級アンモニウム化合物、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物、及び、エポキシ化合物の加水分解物を除去することができる。
洗浄用有機溶剤は、析出物を溶解せずに洗浄可能なものが好適に使用される。洗浄用有機溶剤に含まれる有機溶剤は1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
洗浄方法としては特に制限はなく、例えば、析出物の上から洗浄用有機溶剤をかけ流して析出物を洗浄してもよいし、洗浄用有機溶剤中で析出物を攪拌して析出物を洗浄してもよい。
【0133】
<溶剤の添加>
得られた反応生成物に溶剤を添加して導電性高分子分散液を得る。添加する溶剤は、反応生成物を分散できるものであればよく、水系分散媒でもよいし、有機溶剤でもよい。反応生成物の疎水性が高い場合には有機溶剤を用いることが好ましい。
有機溶剤は、第一態様の導電性高分子分散液に含まれる有機溶剤を適用することができる。なかでも、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、及びエステル系溶剤から選択される1種類以上が好ましく、イソプロパノール、メチルエチルトン、及び酢酸エチルから選択される1種類以上がより好ましい。これらの好適な有機溶剤を用いることにより、導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の分散性をより一層高めることができる。
前記有機溶剤に含まれる各溶剤の含有量は、第一態様で例示した好ましい範囲であることが好ましい。
【0134】
反応生成物に溶剤を添加した後には導電性高分子分散液を攪拌して分散処理を施してもよい。攪拌の方法は特に制限されず、スターラー等の剪断力が弱い攪拌であってもよいし、高剪断力の分散機(ホモジナイザ等)を用いて攪拌してもよい。
【0135】
以上で得られた導電性高分子分散液に、さらにバインダ成分やその他の添加剤を添加してもよい。バインダ成分や添加剤の種類及び含有量は第一態様で説明した好適な範囲を適用することが好ましい。
【0136】
≪導電性積層体≫
本発明の第三態様は、基材と、前記基材の少なくとも一つの面に形成された導電層を備えた、導電性積層体である。前記導電層は、第一態様の導電性高分子分散液の硬化物からなる。
【0137】
[導電層]
基材の少なくとも一つの面に備えられた前記導電層の平均厚みとしては、例えば、10nm以上100μm以下であることが好ましく、20nm以上50μm以下であることがより好ましく、30nm以上30μm以下であることがさらに好ましい。
導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層の基材に対する密着性がより向上する。
【0138】
本態様の導電性積層体が備える導電層は、前記導電性複合体を含有する。
基材に塗布した導電性高分子分散液がバインダ成分を含む場合には、導電層にバインダ成分若しくはバインダ成分の硬化物が含まれる。
【0139】
[基材]
本態様の導電性積層体を構成する基材は、絶縁性材料からなる基材であってもよいし、導電性材料からなる基材であってもよい。基材の形状は特に制限されず、例えば、フィルム、基板等の平面を主体とする形状が挙げられる。
絶縁性材料としては、ガラス、合成樹脂、セラミックス等が挙げられる。
導電性材料としては、金属、導電性金属酸化物、カーボン等が挙げられる。
【0140】
(フィルム基材)
前記基材としてフィルム基材を用いると、導電性積層体は導電性フィルムとなる。
前記フィルム基材としては、例えば、合成樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。前記合成樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
フィルム基材と導電層との密着性を高める観点から、フィルム基材用の合成樹脂はバインダ樹脂と同種の樹脂であることが好ましく、なかでも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂が好ましい。
【0141】
フィルム基材用の合成樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、導電性高分子分散液から形成される導電層の接着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
【0142】
フィルム基材の平均厚みは、5μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0143】
(ガラス基材)
ガラス基材としては、例えば、無アルカリガラス基材、ソーダ石灰ガラス基材、ホウケイ酸ガラス基材、石英ガラス基材等が挙げられる。基材にアルカリ成分が含まれると、導電層の導電性が低下する傾向にあるため、前記ガラス基材のなかでも、無アルカリガラスが好ましい。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分の含有量がガラス組成物の総質量に対し、0.1質量%以下のガラス組成物のことである。
【0144】
ガラス基材の平均厚みとしては、50μm以上3000μm以下であることが好ましく、100μm以上1000μm以下であることがより好ましい。ガラス基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破損しにくくなり、前記上限値以下であれば、導電性積層体の薄型化に寄与できる。
ガラス基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0145】
≪導電性積層体の製造方法≫
本発明の第四態様は、第一態様の導電性高分子分散液を基材の少なくとも一つの面に塗工する工程を含む、導電性積層体の製造方法である。本態様の製造方法により、第三態様の導電性積層体を製造することができる。
【0146】
導電性高分子分散液を基材の任意の面に塗工(塗布)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
【0147】
導電性高分子分散液の基材への塗布量は特に制限されないが、均一にムラなく塗工することと、導電性と膜強度を勘案して、固形分として、0.01g/m以上10.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
【0148】
基材上に塗工した導電性高分子分散液からなる塗膜を乾燥させて、分散媒を除去することにより、前記塗膜が硬化してなる導電層(導電膜)が形成された導電性積層体を得ることができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記加熱温度の範囲における好適な乾燥時間としては、1分以上30分以下が好ましく、5分以上15分以下がより好ましい。
【0149】
導電性高分子分散液が活性エネルギー線硬化性のバインダ成分を含有する場合には、乾燥した塗膜に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程をさらに有してもよい。活性エネルギー線照射工程を有すると、導電層の形成速度を速くでき、導電性フィルムの生産性が向上する。
活性エネルギー線照射工程を有する場合、使用される活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源を用いることができる。
紫外線照射における照度は100mW/cm以上が好ましい。照度が100mW/cm未満であると、活性エネルギー線硬化性のバインダ成分が充分に硬化しないことがある。また、積算光量は50mJ/cm以上が好ましい。積算光量が50mJ/cm未満であると、充分に架橋しないことがある。なお、本明細書における照度、積算光量は、トプコン社製UVR-T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD-T36、測定波長範囲;300nm以上390nm以下、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
【実施例
【0150】
(製造例1)
アクアロンKH-05(第一工業製薬社製、前記式(1)のn=8~11、R=炭素数10又は12の直鎖状アルキル基、アンモニウム塩)10gに、イオン交換水90gと、過硫酸アンモニウム0.1gを加え、80℃で8時間反応した。
次に、デュオライトC255LFH(住化ケムテックス社製、陽イオン交換樹脂)10g添加して16時間攪拌した。得られた溶液を濾過してデュオライトC255LFHを取り除き、アニオン性重合体であるアクアロンKH-05重合体のスルホン酸体(10質量%水溶液)100gを得た。この重合体の質量平均分子量Mwは12000であった。
【0151】
(製造例2)
アクアロンKH-05(第一工業製薬社製)10gを、アクアロンKH-10(第一工業製薬社製、前記式(1)のn=22~25、R=炭素数10又は12の直鎖状アルキル基、アンモニウム塩)10gに変えたこと以外は、製造例1と同様にして、アニオン性重合体であるアクアロンKH-10重合体のスルホン酸体(10質量%水溶液)100gを得た。この重合体の質量平均分子量Mwは15000であった。
【0152】
(製造例3)
アクアロンKH-05(第一工業製薬社製)10gを、アクアロンKH-1025(第一工業製薬社製、前記式(1)のn=68~71、R=炭素数10又は12の直鎖状アルキル基、アンモニウム塩)10gに変えたこと以外は、製造例1と同様にして、アニオン性重合体であるアクアロンKH-1025重合体のスルホン酸体(10質量%水溶液)100gを得た。この重合体の質量平均分子量Mwは20000であった。
【0153】
(製造例4)
アクアロンKH-05(第一工業製薬社製)10gを、アクアロンKH-05(第一工業製薬社製)5gとスチレンスルホン酸ナトリウム5gに変えたこと以外は、製造例1と同様にして、アニオン性重合体であるアクアロンKH-05のスルホン酸体とスチレンスルホン酸の共重合体(10質量%水溶液)100gを得た。この重合体の質量平均分子量Mwは200000であった。
【0154】
(製造例5)ポリスチレンスルホン酸の製造
アクアロンKH-05(第一工業製薬社製)10gを、スチレンスルホン酸ナトリウム10gに変えたこと以外は、製造例1と同様にして、スチレンスルホン酸の重合体(10質量%水溶液)100gを得た。この重合体の質量平均分子量Mwは200000であった。
【0155】
(実施例1)
3,4-エチレンジオキシチオフェン0.5gと、製造例1のアクアロンKH-05重合体のスルホン酸体(10質量%水溶液)15gと、イオン交換水84.5gを混合した
反応液を得た。
得られた反応液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、硫酸第二鉄0.03gをイオン交換水4.97gに溶かした触媒溶液と、過硫酸アンモニウム1.1gをイオン交換水8.9gに溶かした酸化剤溶液とをゆっくり添加し、得られた反応液を24時間攪拌して反応させた。
上記反応により、π共役系導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びアクアロンKH-05重合体のスルホン酸体を含む導電性複合体と、分散媒である水と、酸化剤及び触媒を含む導電性高分子分散液を得た。
この導電性高分子分散液にデュオライトC255LFH(住化ケムテックス社製、陽イオン交換樹脂)13.2gとデュオライトA368S(住化ケムテックス社製、陰イオン交換樹脂)13.2gを加え、濾過してイオン交換樹脂を除き、前記酸化剤及び前記触媒が除去された導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液の固形分(不揮発成分)の質量とpHと粒度を測定した結果を表1に示す。
次に、得られた導電性高分子分散液を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、120℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。
【0156】
(実施例2)
3,4-エチレンジオキシチオフェン0.5gと、製造例1のアクアロンKH-05重合体のスルホン酸体(10質量%水溶液)10gと、イオン交換水89.5gを混合した反応液を得た。この反応液を用い、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製し、評価した。
【0157】
(実施例3)
3,4-エチレンジオキシチオフェン0.5gと、製造例1のアクアロンKH-05重合体のスルホン酸体(10質量%水溶液)20gと、イオン交換水79.5gを混合した反応液を得た。この反応液を用い、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製し、評価した。
【0158】
(実施例4)
製造例1のアクアロンKH-05重合体15gを、製造例2のアクアロンKH-10重合体のスルホン酸体(10質量%水溶液)15gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
【0159】
(実施例5)
製造例1のアクアロンKH-05重合体15gを、製造例3のアクアロンKH-1025重合体のスルホン酸体(10質量%水溶液)15gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
【0160】
(実施例6)
製造例1のアクアロンKH-05重合体15gを、製造例4のアクアロンKH-05のスルホン酸体とスチレンスルホン酸の共重合体(10質量%水溶液)15gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
【0161】
(実施例7)
アクアロンKH-05重合体15gを、アクアロンKH-05重合体(10質量%水溶液)7.5gとポリスチレンスルホン酸(10質量%水溶液)7.5gの混合液に変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
【0162】
(比較例1)
アクアロンKH-05重合体15gを添加せず、イオン交換水の添加量を84.5gから99.5gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を作製しようとしたが、すべての導電性高分子が沈殿したため検討を中止した。
【0163】
(比較例2)
アクアロンKH-05重合体15gを、ポリスチレンスルホン酸(10質量%水溶液)15gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
なお、以上の実施例4~7及び比較例1~2で記載した「アクアロンKH-05重合体15g」は、実施例1で使用した「製造例1のアクアロンKH-05重合体のスルホン酸体(10質量%水溶液)15g」を指す。
【0164】
[表面抵抗値の測定]
各例で作製した導電性フィルムについて、導電層の表面抵抗値を、抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社製ハイレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。表中、「1.0E+07」は「1.0×10」を意味し、他も同様である。
【0165】
[pHの測定]
各例で作製した導電性高分子分散液について、市販のpHメーターを用いて常法により、温度20℃でのpHを測定した。各測定結果を表1に示す。
【0166】
[粒度の測定方法]
実施例1~7、比較例2で作製した導電性高分子分散液(固形分濃度は表中に記載)を蒸留水で希釈して導電性複合体濃度0.1%に調整したものを試料として、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(ELSZ-2000ZS、大塚電子社製)を用い、動的光散乱法によって、25℃でキュムラント平均粒径を測定した値を粒度とした。
【0167】
【表1】
【0168】
<結果1>
実施例1~7の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の粒度は、比較例2の導電性複合体の粒度よりも小さく、水系分散媒中において200nm以下であった。この分散液を用いて作製した導電性フィルムの導電性は帯電防止機能を示し得る程度であった。
実施例1~5の導電性複合体は、化合物1に由来するモノマー単位のみを有するアニオン性重合体がドーパントであるので、粒度が格段に小さくなった。
実施例6~7の導電性複合体は、ドーパントがスチレンスルホン酸に由来するモノマー単位を有するので、実施例1~5と比べて粒度が大きくなったが、導電性は向上した。
【0169】
(実施例8)
実施例1の導電性高分子分散液100gに、イソプロパノール50gとトリオクチルアミン10gを添加し1時間攪拌した。ここで、π共役系導電性高分子とアクアロンKH-5重合体を含む導電性複合体とトリオクチルアミンとの反応生成物が析出し、すべて溶液上層に浮遊したことを確認した。得られた反応液を濾過し、前記反応生成物を粉体として得た。
得られた粉体にイソプロパノールを加えて500gの溶液とし、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、500gのアミン修飾型の導電性高分子分散液を得た。その固形分と粒度を測定した後、#8のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得て、導電性を評価した。
【0170】
(実施例9)
実施例1の導電性高分子分散液100gを、実施例6の導電性高分子分散液100gに変えたこと以外は、実施例8と同様にして導電性フィルムを得た。
【0171】
(実施例10)
実施例1の導電性高分子分散液100gを、実施例7の導電性高分子分散液100gに変えたこと以外は、実施例8と同様にして導電性フィルムを得た。
【0172】
(比較例3)
実施例1の導電性高分子分散液100gを、比較例2の導電性高分子分散液100gに変えたこと以外は、実施例8と同様にして導電性フィルムを得た。
【0173】
(実施例11)
実施例1の導電性高分子分散液100gに、エポキシ化合物(共栄社化学株式会社製エポライトM-1230、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル)25gを加え、60℃で4時間加熱攪拌した。ここで、π共役系導電性高分子とアクアロンKH-5重合体を含む導電性複合体とエポキシ化合物との反応生成物が析出した。この析出物を濾過により回収した。
得られた析出物にメチルエチルケトンを添加して300gの溶液とし、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、300gのエポキシ修飾型の導電性高分子分散液を得た。その固形分と粒度を測定した後、#8のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。
【0174】
(実施例12)
実施例1の導電性高分子分散液100gを、実施例6の導電性高分子分散液100gに変えたこと以外は、実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
【0175】
(実施例13)
実施例1の導電性高分子分散液100gを、実施例7の導電性高分子分散液100gに変えたこと以外は、実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
【0176】
(比較例4)
実施例1の導電性高分子分散液100gを、比較例2の導電性高分子分散液100gに変えたこと以外は、実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
【0177】
(実施例14)
実施例1の導電性高分子分散液100gに、エポキシ化合物(共栄社化学株式会社製エポライトM-1230、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル)25gを加え、60℃で4時間加熱攪拌した。次に、イソプロパノール50gとトリオクチルアミン10gを添加して1時間攪拌した。ここで、π共役系導電性高分子とアクアロンKH-5重合体を含む導電性複合体とエポキシ化合物及びアミン化合物との反応生成物が析出した。この析出物を濾過により回収した。
得られた析出物に酢酸エチルを添加して800gの溶液とし、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、800gのエポキシ・アミン修飾型の導電性高分子分散液を得た。その固形分と粒度を測定した後、#8のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。
【0178】
(実施例15)
実施例1の導電性高分子分散液100gを、実施例6の導電性高分子分散液100gに変えたこと以外は、実施例14と同様にして導電性フィルムを得た。
【0179】
(実施例16)
実施例1の導電性高分子分散液100gを、実施例7の導電性高分子分散液100gに変えたこと以外は、実施例14と同様にして導電性フィルムを得た。
【0180】
(比較例5)
実施例1の導電性高分子分散液100gを、比較例2の導電性高分子分散液100gに変えたこと以外は、実施例14と同様にして導電性フィルムを得て、導電性を評価した。
【0181】
[粒度の測定方法]
実施例8~16、比較例3~5で作製した導電性高分子分散液(固形分濃度は表中に記載)を各分散液の分散媒(有機溶剤)で希釈して導電性複合体濃度0.05質量%に調整したものを試料として、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(ELSZ-2000ZS、大塚電子社製)を用い、動的光散乱法によって、25℃でキュムラント平均粒径を測定した値を粒度とした。
【0182】
【表2】
【0183】
<結果2>
実施例8~16の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の粒度は、比較例3~5の導電性複合体の粒度よりも小さく、有機溶剤中において200nm以下であった。この分散液を用いて作製した導電性フィルムの導電性は帯電防止機能を示し得る程度であった。
実施例8,11,14の導電性複合体は、化合物1に由来するモノマー単位のみを有するアニオン性重合体がドーパントであるので、粒度が他の実施例と比べて小さかった。
実施例9~10,12~13,15~16の導電性複合体は、ドーパントがスチレンスルホン酸に由来するモノマー単位を有するので、実施例8,11,14と比べて粒度が少し大きくなったが、導電性は向上した。