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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】画像処理方法及び画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/958 20060101AFI20240712BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
G01N21/958
G01M11/00 T
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020208930
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096044
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】新田 将
(72)【発明者】
【氏名】雜賀 誠
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04776692(US,A)
【文献】特開平3-135704(JP,A)
【文献】特開平3-199946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01M 11/00 - G01M 11/08
G01B 11/00 - G01B 11/30
G06T 1/00 - G06T 1/40
G06T 3/00 - G06T 7/90
G06V 10/00 - G06V 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明試料を透過した2次元周期パターンであって、且つ第1方向に周期性を有する第1パターンと、前記第1方向とは異なる第2方向に周期性を有する第2パターンと、を含む2次元周期パターンの撮影画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップで取得した前記撮影画像に基づき、前記第1方向において互いに隣り合う前記第1パターンの第1間隔を、前記第2方向において互いに異なる複数位置で検出する第1検出ステップと、
前記画像取得ステップで取得した前記撮影画像に基づき、前記第2方向において互いに隣り合う前記第2パターンの第2間隔を、前記第1方向において互いに異なる複数位置で検出する第2検出ステップと、
前記第1検出ステップの検出した前記第1間隔ごとに、前記第1間隔と、全ての前記第1間隔の平均値との差分の絶対値を示す第1ズレ量を演算する第1演算ステップと、
前記第2検出ステップの検出した前記第2間隔ごとに、前記第2間隔と、全ての前記第2間隔の平均値との差分の絶対値を示す第2ズレ量を演算する第2演算ステップと、
を有する画像処理方法。
【請求項2】
前記第1演算ステップ及び前記第2演算ステップの演算結果に基づき、前記透明試料の良否を判定する判定ステップを有する請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記第1演算ステップ及び前記第2演算ステップの演算結果に基づき、前記第1パターン及び前記第2パターンより区分けされる前記透明試料の複数の領域ごとに、前記第1ズレ量及び前記第2ズレ量の代表値を演算する代表値演算ステップを有し、
前記判定ステップは、前記代表値演算ステップの演算結果に基づき、前記判定を行う請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記第1演算ステップ及び前記第2演算ステップの演算結果を表示する表示ステップを有する請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記第1演算ステップ及び前記第2演算ステップの演算結果に基づき、前記第1パターン及び前記第2パターンより区分けされる前記透明試料の複数の領域ごとに、前記第1ズレ量及び前記第2ズレ量の代表値を演算する代表値演算ステップと、
前記代表値演算ステップの演算結果に基づき、前記領域の位置と、前記領域の前記代表値との関係を示すヒートマップを生成するヒートマップ生成ステップと、
を有し、
前記表示ステップは、前記ヒートマップ生成ステップで生成した前記ヒートマップを表示する請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記表示ステップは、前記撮影画像に前記ヒートマップを重ね合わせて表示させる請求項5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記代表値演算ステップでは、前記領域ごとに、前記第1ズレ量及び前記第2ズレ量の平均値を前記代表値として演算する請求項3、5、又は6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記画像取得ステップは、前記2次元周期パターンが格子パターンである場合に、前記透明試料を透過した前記格子パターンの前記撮影画像を取得する請求項1から7のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項9】
透明試料を透過した2次元周期パターンであって、且つ第1方向に周期性を有する第1パターンと、前記第1方向とは異なる第2方向に周期性を有する第2パターンと、を含む2次元周期パターンの撮影画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した前記撮影画像に基づき、前記第1方向において互いに隣り合う前記第1パターンの第1間隔を、前記第2方向において互いに異なる複数位置で検出する第1検出部と、
前記画像取得部が取得した前記撮影画像に基づき、前記第2方向において互いに隣り合う前記第2パターンの第2間隔を、前記第1方向において互いに異なる複数位置で検出する第2検出部と、
前記第1検出部が検出した前記第1間隔ごとに、前記第1間隔と、全ての前記第1間隔の平均値との差分の絶対値を示す第1ズレ量を演算する第1演算部と、
前記第2検出部が検出した前記第2間隔ごとに、前記第2間隔と、全ての前記第2間隔の平均値との差分の絶対値を示す第2ズレ量を演算する第2演算部と、
を備える画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明試料の検査に用いられる画像処理方法及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科及び眼鏡店には、被検者の眼屈折力等の視機能を自覚検査するために、被検者に対して各種視標を呈示する視力表表示装置が設置されている。例えば、視力表表示装置により被検眼に対してランドルト環等の視力検査用の視標を呈示した場合、この視標に対する被検者の応答に基づき被検者の視力を検査することができる。
【0003】
このような視力表表示装置において、その前面のアクリルフィルタ(透明試料)に脈理が発生していると、被検者に呈示される視標に歪みが生じるため、正確な自覚検査を行うことができない。このため、視力表表示装置の製造にあたっては、アクリルフィルタの脈理の検査(均一性の検査)を行う必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、透明試料に光を透過させ、この透過光を撮像した撮影画像に基づき、検査員が透明試料内の脈理の有無を判断する方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、複数の線パターン及び基準線パターンを含む投影パターンを透明試料に照射し、この透明試料を透過した投影パターンを撮像して、透明試料に照射された投影パターンと撮影画像に含まれる投影パターンとを比較した結果に基づき、透明試料の三次元形状を測定する方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、搬送中の透明試料に対して明部(白)及び暗部(黒)が交互に配置されたストライプパターンを照射し、この透明試料を透過したストライプパターンをラインセンサで撮像した撮影画像に含まれるモアレ縞の節の間隔を検出し、この間隔の検出結果に基づき透明試料内の脈理の有無を判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-267985号公報
【文献】特許第5578844号公報
【文献】特開2015-184059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載の方法では、検査員が透明試料内の脈理の有無を判断するので、検査の正確性及び効率性の点で問題がある。また、特許文献2には、透明試料の三次元形状を測定する方法が開示されているものの、透明試料内の脈理の有無を検査する方法についての開示はなされていない。
【0009】
一方、特許文献3に記載の方法によれば、透明試料内の脈理の有無を自動で検査することができる。しかしながら、特許文献3に記載の方法では、透明試料に対してカメラ(ラインセンサ)が正対していないと、モアレ縞の像が回転したり或いは歪んだりするので、脈理の有無の検査を正確に行うことができない。このため、特許文献3に記載の方法では、透明試料に対してカメラが正対していない場合には撮影画像(モアレ縞の像)の補正を行う必要があり、検査の手間がかかるという問題がある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、透明試料の検査を簡単かつ精度良く行うことができる画像処理方法及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的を達成するための画像処理方法は、透明試料を透過した2次元周期パターンであって、且つ第1方向に周期性を有する第1パターンと、第1方向とは異なる第2方向に周期性を有する第2パターンと、を含む2次元周期パターンの撮影画像を取得する画像取得ステップと、画像取得ステップで取得した撮影画像に基づき、第1方向において互いに隣り合う第1パターンの第1間隔を、第2方向において互いに異なる複数位置で検出する第1検出ステップと、画像取得ステップで取得した撮影画像に基づき、第2方向において互いに隣り合う第2パターンの第2間隔を、第1方向において互いに異なる複数位置で検出する第2検出ステップと、第1検出ステップの検出した第1間隔ごとに、第1間隔と、全ての第1間隔の平均値との差分の絶対値を示す第1ズレ量を演算する第1演算ステップと、第2検出ステップの検出した第2間隔ごとに、第2間隔と、全ての第2間隔の平均値との差分の絶対値を示す第2ズレ量を演算する第2演算ステップと、を有する。
【0012】
この画像処理方法によれば、2次元周期パターンにより区分けされる透明試料の複数の領域ごとの第1ズレ量及び第2ズレ量が得られるので、領域ごとの第1ズレ量及び第2ズレ量を比較することにより、第1ズレ量及び第2ズレ量が局所的に変化している領域、すなわち脈理等の異常が発生している領域を検出することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る画像処理方法において、第1演算ステップ及び第2演算ステップの演算結果に基づき、透明試料の良否を判定する判定ステップを有する。これにより、透明試料の良否を自動判定することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る画像処理方法において、第1演算ステップ及び第2演算ステップの演算結果に基づき、第1パターン及び第2パターンより区分けされる透明試料の複数の領域ごとに、第1ズレ量及び第2ズレ量の代表値を演算する代表値演算ステップを有し、判定ステップは、代表値演算ステップの演算結果に基づき、判定を行う。これにより、透明試料の良否を自動判定することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る画像処理方法において、第1演算ステップ及び第2演算ステップの演算結果を表示する表示ステップを有する。これにより、第1演算ステップ及び第2演算ステップの演算結果をオペレータに呈示することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る画像処理方法において、第1演算ステップ及び第2演算ステップの演算結果に基づき、第1パターン及び第2パターンより区分けされる透明試料の複数の領域ごとに、第1ズレ量及び第2ズレ量の代表値を演算する代表値演算ステップと、代表値演算ステップの演算結果に基づき、領域の位置と、領域の代表値との関係を示すヒートマップを生成するヒートマップ生成ステップと、を有し、表示ステップは、ヒートマップ生成ステップで生成したヒートマップを表示する。これにより、各領域の代表値を視覚化する、すなわち脈理等の異常が発生している箇所を視覚化することができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る画像処理方法において、表示ステップは、撮影画像にヒートマップを重ね合わせて表示させる。これにより、撮影画像内の2次元周期パターンの歪みと、各領域のズレ量平均値と、の対応関係を視覚化することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る画像処理方法において、代表値演算ステップでは、領域ごとに、第1ズレ量及び第2ズレ量の平均値を代表値として演算する。
【0019】
本発明の他の態様に係る画像処理方法において、画像取得ステップは、2次元周期パターンが格子パターンである場合に、透明試料を透過した格子パターンの撮影画像を取得する。
【0020】
本発明の目的を達成するための画像処理装置は、透明試料を透過した2次元周期パターンであって、且つ第1方向に周期性を有する第1パターンと、第1方向とは異なる第2方向に周期性を有する第2パターンと、を含む2次元周期パターンの撮影画像を取得する画像取得部と、画像取得部が取得した撮影画像に基づき、第1方向において互いに隣り合う第1パターンの第1間隔を、第2方向において互いに異なる複数位置で検出する第1検出部と、画像取得部が取得した撮影画像に基づき、第2方向において互いに隣り合う第2パターンの第2間隔を、第1方向において互いに異なる複数位置で検出する第2検出部と、第1検出部が検出した第1間隔ごとに、第1間隔と、全ての第1間隔の平均値との差分の絶対値を示す第1ズレ量を演算する第1演算部と、第2検出部が検出した第2間隔ごとに、第2間隔と、全ての第2間隔の平均値との差分の絶対値を示す第2ズレ量を演算する第2演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、透明試料の検査を簡単かつ精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の検査システムの構成を示した概略図である。
図2図1中の視力表表示装置及びエリアカメラの構成を示したブロック図である。
図3】符号3Aはアクリルフィルタに脈理が存在しない場合の撮影画像の一例を示した説明図であり、符号3Bはアクリルフィルタに脈理が存在する場合の撮影画像の一例を示した説明図である。
図4】画像処理装置の機能ブロック図である。
図5】間隔検出部による輝度プロファイルの検出を説明するための説明図である。
図6】間隔検出部による任意の1ラインLx(1ラインLy)における輝度プロファイルの検出結果の一例を示したグラフである。
図7】代表値演算部による矩形領域ごとのズレ量平均値の演算を説明するための説明図である。
図8】ヒートマップ生成部が生成するヒートマップの一例を示した説明図である。
図9】判定結果表示モードを説明するための説明図である。
図10】ヒートマップ表示モードを説明するための説明図である。
図11】重畳表示モードを説明するための説明図である。
図12】検査システムによるアクリルフィルタの検査処理の流れを示すフローチャートである。
図13】第2実施形態の検査システムの構成を示した概略図である。
図14】第2実施形態の画像処理装置の機能ブロック図である。
図15】エリアカメラによる区分領域ごとの撮影の一例を説明するための説明図である。
図16】第3実施形態の検査システムの構成を示した概略図である。
図17】2次元周期パターンの変形例1を説明するための説明図である。
図18】2次元周期パターンの変形例2を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の検査システム10の構成を示した概略図である。図2は、図1中の視力表表示装置12及びエリアカメラ14の構成を示したブロック図である。なお、本実施形態では視力表表示装置12の前後方向をZ方向とし、被検者の眼幅方向をX方向とし、上下方向をY方向としている。
【0024】
図1及び図2に示すように、検査システム10は、視力表表示装置12とエリアカメラ14と画像処理装置16とにより構成されており、視力表表示装置12の前面に設けられているアクリルフィルタ24(本発明の透明試料に相当)の検査を行う。なお、「透明」とは光透過性を有することであり、無色透明及び有色透明の両方が含まれる。
【0025】
視力表表示装置12は、被検者の視力の自覚検査に用いられるものであり、ランドルト環等の視力検査用の視標を表示することで被検者に対して視標の提示を行う。この視力表表示装置12は、Z方向に沿って配置されたパターン光出射部20と、コリメータレンズ22と、アクリルフィルタ24と、を備える。
【0026】
パターン光出射部20は、被検者の視力検査時には、ランドルト環等の視力検査用の視標を複数含む視力表のパターン光をZ方向に出射する。また、パターン光出射部20は、アクリルフィルタ24の検査時には、後述の図3に示すような格子状のパターン光をZ方向に出射する。パターン光出射部20は、例えば、任意形状のパターンの表示可能なLCD(Liquid Crystal Display)及びLCOS(Liquid crystal on silicon)などの公知のパターン投影デバイスが用いられる。また、パターン光出射部20をLED(Light Emitting Diode)などの光源と、各種パターン(視力表及び格子パターン等)が描画されたレチクルとにより構成してもよい。この場合には、光源によりレチクルを照明することで、レチクルを2次光源として各種パターン光を出射する。
【0027】
コリメータレンズ22は、パターン光出射部20から出射された各種パターン光を、アクリルフィルタ24を介して視力表表示装置12のZ方向前方側へ出射する。これにより、被検者の視力検査時には、視力表表示装置12から視力表のパターン光が被検者(被検眼)に向けて出射される。また、アクリルフィルタ24の検査時には、視力表表示装置12から格子状のパターン光がエリアカメラ14に向けて出射される。
【0028】
アクリルフィルタ24は、XY面に平行な平板状に形成されており、視力表表示装置12の表示窓(観察窓)を構成する。被検者は、視力検査時にはアクリルフィルタ24を通して視力表(視標)を視認する。
【0029】
この際にアクリルフィルタ24に脈理等の異常が発生していると、被検者に呈示される視標に歪みが発生してしまうので、正確な自覚検査を行うことができない。そこで、検査システム10では、パターン光出射部20により格子状のパターン光をアクリルフィルタ24に照射し、このアクリルフィルタ24を透過したパターン光をエリアカメラ14で撮像し、エリアカメラ14による撮影画像29(画像データ)を画像処理装置16により画像処理(画像解析)することで、アクリルフィルタ24の良否を検査する。
【0030】
エリアカメラ14は、アクリルフィルタ24の検査時にそのZ方向前方側に配置され、アクリルフィルタ24を透過した格子状のパターン光を撮像する。エリアカメラ14は、Z方向に沿って配置された集光レンズ26と2次元撮像素子27とを備える。
【0031】
集光レンズ26は、アクリルフィルタ24を透過した格子状のパターン光を2次元撮像素子27の受光面に集光させる。
【0032】
2次元撮像素子27は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型又はCCD(Charge Coupled Device)型のイメージセンサが用いられ、XY平面に画素(受光素子)が2次元配列された受光面を有する。2次元撮像素子27は、集光レンズ26により集光された格子状のパターン光を撮像して、撮影画像29を画像処理装置16へ出力する。
【0033】
なお、第1実施形態では、エリアカメラ14が、アクリルフィルタ24の有効領域(視力表の表示に用いられる領域、有効径ともいう)の全面を1回で撮影可能であるものとして説明を行う。
【0034】
図3の符号3Aはアクリルフィルタ24に脈理が存在しない場合の撮影画像29の一例を示した説明図であり、符号3Bはアクリルフィルタ24に脈理が存在する場合の撮影画像29の一例を示した説明図である。図3に示すように、撮影画像29には、本発明の2次元周期パターンに相当する格子パターンGPが含まれている。格子パターンGPは、X方向(本発明の第1方向に相当)に周期性を有する第1パターンP1と、Y方向(本発明の第2方向に相当)に周期性を有する線状の第2パターンP2と、を含む。第1パターンP1はY方向に平行な直線パターンであり、第2パターンP2はX方向に平行な直線パターンである。
【0035】
アクリルフィルタ24に脈理が存在する場合には、撮影画像29中の格子パターンGPに局所的な歪みが発生する(図中の点線円C参照)。その結果、格子パターンGPの中で脈理の発生箇所に対応する部分では、互いにX方向又はY方向において隣り合う格子パターンGPの間隔が、正常箇所に対応する部分の間隔よりも広がったり或いは狭まったりする。
【0036】
そこで、本実施形態では、画像処理装置16により撮影画像29を画像処理(画像解析)して、X方向又はY方向において互いに隣り合う格子パターンGPの間隔を格子パターンGPにより区分けされる個々の矩形領域RAごとに検出し、その検出結果に基づきアクリルフィルタ24の良否(脈理の有無)の判定を行う。
【0037】
図4は、画像処理装置16の機能ブロック図である。画像処理装置16は、パーソナルコンピュータ等の各種演算装置である。この画像処理装置16は、制御部30、画像処理部32、及び表示部34等を備える。
【0038】
制御部30は、画像処理装置16の各部を統括制御する。画像処理部32は、撮影画像29を画像処理(画像解析)して、アクリルフィルタ24の良否の検査を行う。これら制御部30及び画像処理部32の機能は、各種のプロセッサ(Processor)を用いて実現される。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御部30及び画像処理部32の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0039】
表示部34は、詳しくは後述するが、画像処理部32によるアクリルフィルタ24の検査結果を表示する。
【0040】
画像処理部32は、不図示の記憶部から読み出したプログラムを実行することで、画像取得部40、間隔検出部42、ズレ量演算部44、代表値演算部46、ヒートマップ生成部48、脈理検出部50、判定部52、及び表示制御部54として機能する。
【0041】
画像取得部40は、不図示の通信ネットワークを介してエリアカメラ14に接続されており、エリアカメラ14から撮影画像29を取得する。
【0042】
図5は、間隔検出部42による輝度プロファイルの検出を説明するための説明図である。図5及び既述の図4に示すように、間隔検出部42は、本発明の第1検出部及び第2検出部に相当する。この間隔検出部42は、画像取得部40が取得した撮影画像29から、X方向において互いに隣り合う第1パターンP1の間隔である第1間隔Wxを、Y方向に互いに異なる複数位置で検出する。また、間隔検出部42は、Y方向において互いに隣り合う第2パターンP2の間隔である第2間隔Wyを、X方向に互いに異なる複数位置で検出する。以下、間隔検出部42による第1間隔Wx及び第2間隔Wyの検出方法について説明する。
【0043】
最初に間隔検出部42は、撮影画像29から格子パターンGPを検出することで、この格子パターンGPにより区分される各矩形領域RA(本発明の領域に相当)を検出する。各矩形領域RAの輝度値は格子パターンGPの輝度値よりも高くなるので、間隔検出部42は、撮影画像29の各画素の輝度値に基づき、撮影画像29内の各矩形領域RAの位置を検出することができる。
【0044】
なお、間隔検出部42は、撮影画像29からの各矩形領域RA(格子パターンGP)の検出に失敗した場合には、その旨を示すエラー情報を後述の判定部52へ出力する。
【0045】
間隔検出部42は、各矩形領域RAの検出が完了すると、X方向に沿った矩形領域RAの1ラインLxについて、この1ラインLxに沿った画素の輝度プロファイルを検出する。以下同様に、間隔検出部42は、X方向に沿った矩形領域RAの全ての1ラインLxについて、輝度プロファイルの検出を繰り返し行う。これにより、第1パターンP1のX方向に沿った輝度プロファイルを、Y方向に互いに異なる複数位置(各1ラインLx)で検出することができる。
【0046】
また、間隔検出部42は、Y方向に沿った矩形領域RAの1ラインLyについて、この1ラインLyに沿った画素の輝度プロファイルを検出する。以下同様に、間隔検出部42は、Y方向に沿った矩形領域RAの全ての1ラインLyについて、輝度プロファイルの検出を繰り返し行う。これにより、第2パターンP2のY方向に沿った輝度プロファイルを、X方向に互いに異なる複数位置(各1ラインLy)で検出することができる。
【0047】
図6は、間隔検出部42による任意の1ラインLx(1ラインLy)における輝度プロファイルの検出結果の一例を示したグラフである。図6に示すように、1ラインLx(1ラインLy)における輝度プロファイルは、第1パターンP1(第2パターンP2)に相当する位置の画素値が極小となり、逆に矩形領域RAに相当する位置の画素値が極大となる。
【0048】
間隔検出部42は、1ラインLxごとの輝度プロファイルの検出結果に公知のノイズ低減の画像処理(メディアンフィルタ処理、ガウシアンフィルタ処理等)を施した後、第1パターンP1に対応するピークの重心位置(極小値でも可)を検出すると共にX方向において互いに隣り合う重心位置間の間隔を検出する。これにより、全ての1ラインLxごとに、1ラインLx上で互いに隣り合う第1パターンP1の第1間隔Wxを検出することができる。
【0049】
また同様に、間隔検出部42は、1ラインLyごとの輝度プロファイルの検出結果に公知のノイズ低減の画像処理を施した後、第2パターンP2に対応するピークの重心位置(極小値でも可)を検出すると共にY方向において互いに隣り合う重心位置間の間隔を検出する。これにより、全ての1ラインLyごとに、1ラインLy上で互いに隣り合う第2パターンP2の第2間隔Wyを検出することができる。
【0050】
図4に戻って、ズレ量演算部44は、本発明の第1演算部及び第2演算部に相当する。このズレ量演算部44は、下記の[数1]式に示すように、間隔検出部42による全ての第1パターンP1の第1間隔Wxの検出結果に基づき、第1間隔Wxごとに、第1間隔Wxと全ての第1間隔Wxの平均値mean(Wx)との差分の絶対値を示す第1ズレ量Δtxを演算する。また、ズレ量演算部44は、下記の[数2]式に示すように、間隔検出部42による全ての第2パターンP2の第2間隔Wyの検出結果に基づき、第2間隔Wyごとに、第2間隔Wyと全ての第2間隔Wyの平均値mean(Wy)との差分の絶対値を示す第2ズレ量Δtyを演算する。これにより、矩形領域RAごとに第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyが演算される。
【0051】
【数1】
【0052】
【数2】
【0053】
このように間隔検出部42が検出した第1間隔Wxごとに第1ズレ量Δtxを演算し、且つ第2間隔Wyごとに第2ズレ量Δtyを演算することで、アクリルフィルタ24内で平均値mean(Wx)或いは平均値mean(Wy)との差が生じている箇所、すなわち脈理等の異常が発生している箇所を明らかにすることができる。
【0054】
図7は、代表値演算部46による矩形領域RAごとのズレ量平均値Δtmの演算を説明するための説明図である。図7及び既述の図4に示すように、代表値演算部46は、ズレ量演算部44による矩形領域RAごとの第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyの演算結果に基づき、矩形領域RAごとに、第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyの代表値として平均値であるズレ量平均値Δtm(Δtm=[(Δtx+Δty)/2])を演算する。
【0055】
なお、矩形領域RAごとの第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyの代表値は、ズレ量平均値Δtmに限定されるものではなく、第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyの合計値、最大値などであってもよい。
【0056】
図8は、ヒートマップ生成部48が生成するヒートマップ60の一例を示した説明図である。図8及び既述の図4に示すように、ヒートマップ生成部48は、代表値演算部46による矩形領域RAごとのズレ量平均値Δtmの演算結果に基づき、撮影画像29内(アクリルフィルタ24内)の各矩形領域RAの位置と、各矩形領域RAのズレ量平均値Δtmとの関係を示すヒートマップ60を生成する。これにより、アクリルフィルタ24内でズレ量平均値Δtmが高い箇所、すなわち脈理等の異常が発生している箇所を可視化することができる。
【0057】
また、ヒートマップ生成部48は、後述の脈理検出部50がヒートマップ60内において脈理有と判定している領域、すなわちズレ量平均値Δtmが所定の閾値以上(例えば1.5pixcel以上)となる領域を、枠線60aで囲むことにより識別可能にしている。これにより、脈理等の異常が発生している箇所が容易に判別可能になる。
【0058】
なお、ヒートマップ生成部48は、矩形領域RAごとのズレ量平均値Δtmに基づきヒートマップ60を生成しているが、矩形領域RAごとの第1ズレ量Δtxに基づきヒートマップ60を生成したり、或いは矩形領域RAごとの第2ズレ量Δtyに基づきヒートマップ60を生成したりしてもよい。
【0059】
脈理検出部50は、代表値演算部46による矩形領域RAごとのズレ量平均値Δtmの演算結果に基づき、各矩形領域RAの中でズレ量平均値Δtmが所定の閾値以上(例えば1.5pixcel以上)となる領域を、脈理が存在する脈理領域として検出する。そして、脈理検出部50は、脈理領域の検出結果に基づき、「脈理平均」、「脈理最大」、「脈理割合」、「脈理数」、及び「全体平均」を検出(演算)する。
【0060】
「脈理平均」は、全ての脈理領域のズレ量平均値Δtmの平均値である。「脈理最大」は、全ての脈理領域のズレ量平均値Δtmの最大値である。「脈理割合」は、撮影画像29内での全脈理領域の割合を示す。「脈理数」は、脈理領域の総数を示す。「全体平均」は、全ての矩形領域RAのズレ量平均値Δtmの平均値である。
【0061】
なお、各矩形領域RAの中でズレ量平均値Δtmが所定の閾値以上となる領域を脈理領域とする代わりに、第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyごとに閾値をそれぞれ設定して、第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyの少なくとも一方が閾値以上となる矩形領域RAを脈理領域としてもよい。
【0062】
判定部52は、代表値演算部46による矩形領域RAごとのズレ量平均値Δtmの演算結果に基づき、アクリルフィルタ24の良否(OK、NG)を判定する。具体的には判定部52は、上述の脈理検出部50と同様に、矩形領域RAごとのズレ量平均値Δtmの演算結果に基づき、各矩形領域RAの中で脈理領域を検出する。そして、判定部52は、脈理領域が存在するか否かに基づきアクリルフィルタ24の良否を判定したり、或いは脈理領域の集合体の面積(図8中の枠線60a内の面積)が予め定めた上限値を超えるか否かに基づきアクリルフィルタ24の良否を判定したりする。
【0063】
なお、判定部52は、矩形領域RAごとのズレ量平均値Δtmの演算結果に基づき上述の判定を行う代わりに、矩形領域RAごとの第1ズレ量Δtxに基づき上述の判定を行ったり、或いは矩形領域RAごとの第2ズレ量Δtyに基づき上述の判定を行ったりしてもよい。
【0064】
また、判定部52は、既述の間隔検出部42から各矩形領域RA(格子パターンGP)の検出失敗を示すエラー情報が入力した場合には、判定不能であるとの決定を行う。
【0065】
図4に戻って、表示制御部54は、判定部52の判定結果、ヒートマップ生成部48が生成したヒートマップ60、及び脈理検出部50の検出結果などを表示部34に表示させる。この表示制御部54は、判定結果表示モード、ヒートマップ表示モード、及び重畳表示モードを含む複数の表示モードを有する。なお、表示モードの切替は、不図示の操作部にて実行される。
【0066】
図9は、判定結果表示モードを説明するための説明図である。図9の符号9A,9Bに示すように、表示制御部54は、判定結果表示モードが選択されている場合には、判定部52によるアクリルフィルタ24の良否(OK、NG)の判定結果を表示部34に表示させる。この際に、表示制御部54は、脈理検出部50の検出結果(「脈理平均」等)を判定結果と共に表示部34に表示させてもよい。
【0067】
また、図9の符号9Cに示すように、表示制御部54は、判定部52が判定不能であるとの決定を行った場合には、その旨を示す警告情報を表示部34に表示させる。
【0068】
図10は、ヒートマップ表示モードを説明するための説明図である。図10に示すように、表示制御部54は、ヒートマップ表示モードが選択されている場合には、ヒートマップ生成部48が生成したヒートマップ60を表示部34に表示させる。また、本実施形態の表示制御部54は、ヒートマップ60の他に、脈理検出部50の検出結果を示す検出欄62及び判定部52の判定結果を示す判定欄64を表示部34に同時表示させる。なお、検出欄62及び判定欄64については表示を省略してもよい。
【0069】
図11は、重畳表示モードを説明するための説明図である。図11に示すように、表示制御部54は、重畳表示モードが選択されている場合には、画像取得部40が取得した撮影画像29を表示部34に表示させると共に、ヒートマップ生成部48が生成したヒートマップ60をリサイズして撮影画像29上に重畳表示(スーパーインポーズ)させる。
【0070】
[検査システムの作用]
図12には、上記構成の検査システム10によるアクリルフィルタ24の検査処理の流れを示すフローチャートである。なお、図中のステップS3からステップS10までが本発明の画像処理方法に相当する。
【0071】
視力表表示装置12のアクリルフィルタ24の検査を行う場合、オペレータは視力表表示装置12のコントローラ(不図示)を操作して、パターン光出射部20から格子パターンGPのパターン光を出射させる(ステップS1)。これにより、格子パターンGPのパターン光がコリメータレンズ22を経てアクリルフィルタ24に入射し、このアクリルフィルタ24を透過したパターン光がエリアカメラ14の集光レンズ26に入射する。
【0072】
エリアカメラ14は、画像処理装置16の制御部30の制御の下、集光レンズ26により受光面に集光されたパターン光を2次元撮像素子27により撮像して、撮影画像29を画像処理装置16へ出力する(ステップS2)。エリアカメラ14(2次元撮像素子27)を用いてパターン光の撮像を行うことで、上記特許文献3に記載の発明とは異なり、アクリルフィルタ24を製品(視力表表示装置12)に組み込んだ状態で撮影(検査)を行う、すなわち製品とほぼ同じ状態で撮影(検査)を行うことができる。これにより、アクリルフィルタ24内の歪みだけでなく、製品におけるアクリルフィルタ24の固定状態(押さえ等)に起因する歪みも検査することができる。また、上記特許文献3に記載の発明のようにラインセンサを用いるのではなく、アクリルフィルタ24の有効領域を1回で撮影可能なエリアカメラ14を用いることで、アクリルフィルタ24に対してエリアカメラ14を相対移動させる必要がなくなる。その結果、アクリルフィルタ24の検査を簡単に行うことができる。
【0073】
画像処理部32は、画像取得部40がエリアカメラ14から撮影画像29を取得すると(ステップS3、本発明の画像取得ステップに相当)、この撮影画像29の画像処理、すなわちアクリルフィルタ24の検査処理を開始する。
【0074】
最初に間隔検出部42が、画像取得部40が取得した撮影画像29から、格子パターンGPにより区分される各矩形領域RAを検出する。なお、間隔検出部42は、各矩形領域RAの検出に失敗した場合には、その旨を示すエラー情報を判定部52へ出力する。
【0075】
次いで、間隔検出部42は、既述の図5及び図6に示したように、X方向に沿った矩形領域RAの全ての1ラインLxごとに輝度プロファイルを検出すると共に、Y方向に沿った矩形領域RAの全ての1ラインLyごとに輝度プロファイルを検出する。
【0076】
そして、間隔検出部42は、1ラインLxごとの輝度プロファイルの検出結果に基づき、1ラインLxごとに、1ラインLx上で互いに隣り合う第1パターンP1の第1間隔Wxを検出する(ステップS4、本発明の第1検出ステップに相当)。また同様に間隔検出部42は、1ラインLyごとの輝度プロファイルの検出結果に基づき、1ラインLyごとに、1ラインLy上で互いに隣り合う第2パターンP2の第2間隔Wyを検出する(ステップS4、本発明の第2検出ステップに相当)。
【0077】
間隔検出部42による第1間隔Wx及び第2間隔Wyの検出が完了すると、ズレ量演算部44が、全ての第1パターンP1の第1間隔Wxの検出結果に基づき上記[数1]式を用いて矩形領域RAごとの第1ズレ量Δtxを演算する。また同様に、ズレ量演算部44が、全ての第2パターンP2の第2間隔Wyの検出結果に基づき上記[数2]式を用いて矩形領域RAごとの第2ズレ量Δtyを演算する。これにより、矩形領域RAごとに第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyが演算される(ステップS5、本発明の第1演算ステップ及び第2演算ステップに相当)。
【0078】
次いで、代表値演算部46が、既述の図7に示したように、矩形領域RAごとの第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyの演算結果に基づき、矩形領域RAごとにズレ量平均値Δtmを演算する(ステップS6、本発明の代表値演算ステップに相当)。
【0079】
そして、ヒートマップ生成部48が、既述の図8に示したように、矩形領域RAごとのズレ量平均値Δtmの演算結果に基づきヒートマップ60を生成する(ステップS7、本発明のヒートマップ生成ステップに相当)。この際に、ヒートマップ生成部48は、ズレ量平均値Δtmが所定の閾値以上となる領域を枠線60aで囲むことで、脈理等の異常が発生している箇所の識別を容易にする。
【0080】
また、脈理検出部50が、矩形領域RAごとのズレ量平均値Δtmの演算結果に基づき、各矩形領域RAの中からの脈理領域の検出と、既述の「脈理平均」、「脈理最大」、「脈理割合」、「脈理数」、及び「全体平均」の検出と、を実行する(ステップS8)。
【0081】
さらに判定部52が、矩形領域RAごとのズレ量平均値Δtmの演算結果に基づき、各矩形領域RAの中で脈理領域を検出する。そして、判定部52が、脈理領域が存在するか否かに基づきアクリルフィルタ24の良否を判定したり、或いは脈理領域の集合体の面積が予め定めた上限値を超えるか否かに基づきアクリルフィルタ24の良否を判定したりする(ステップS9、本発明の判定ステップに相当)。また、判定部52は、間隔検出部42からエラー情報が入力した場合には、判定不能であるとの決定を行う。
【0082】
なお、ステップS7からステップS9の順番は任意に入れ替えたり、或いは各々を同時に実行したりしてもよい。
【0083】
ステップS7からステップS9が完了すると、表示制御部54が、予め選択された表示モードに従って判定部52の判定結果、ヒートマップ60、及び脈理検出部50の検出結果等を表示部34に表示させる(ステップS10、本発明の表示ステップに相当)。
【0084】
例えば、表示制御部54は、表示モードが判定結果表示モードである場合、図9に示したように、判定部52によるアクリルフィルタ24の良否の判定結果を表示部34に表示させる。これにより、オペレータは、アクリルフィルタ24の良否を確認することができる。また、表示制御部54は、判定部52が判定不能を決定した場合には、その決定結果を表示部34に表示させる。これにより、オペレータは、撮影画像29からの格子パターンGPの検出に失敗したことを知ることができるので、速やかにアクリルフィルタ24の再検査を開始させることができる。
【0085】
また、表示制御部54は、表示モードがヒートマップ表示モードである場合、図10に示したようにヒートマップ生成部48が生成したヒートマップ60、検出欄62、及び判定欄64を表示部34に表示させる。これにより、各矩形領域RAのズレ量平均値Δtmを視覚化する、すなわち脈理等の異常が発生している箇所を視覚化することができる。その結果、オペレータがアクリルフィルタ24内での脈理の発生箇所を容易に認識することができる。
【0086】
さらに、表示制御部54は、表示モードが重畳表示モードである場合、図11に示したように、ヒートマップ60をリサイズして撮影画像29上に重畳表示させる。これにより、撮影画像29内の格子パターンGPの歪みと、各矩形領域RAのズレ量平均値Δtmと、の対応関係を視覚化することができる。
【0087】
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態では、アクリルフィルタ24を透過した格子パターンGPの撮影画像29を画像処理して矩形領域RAごとの第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δty(ズレ量平均値Δtm)を演算することで、アクリルフィルタ24内で第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyが周囲(他の領域)と相対的に異なる箇所を検出することができる。その結果、アクリルフィルタ24内で局所的に発生している脈理等の異常箇所が簡単に検出可能(判別可能)になる。また、アクリルフィルタ24内で第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyが周囲と相対的に異なる箇所を検出可能であればよいので、上記特許文献3に記載の発明のように透明試料に対してカメラを必ずしも正対させる必要がなく、検査の手間(エリアカメラ14の位置調整等)を省略することができる。その結果、アクリルフィルタ24の検査を簡単かつ容易に行うことができる。
【0088】
[第2実施形態]
図13は、第2実施形態の検査システム10の構成を示した概略図である。図14は、第2実施形態の画像処理装置16の機能ブロック図である。上記第1実施形態では、エリアカメラ14の撮影範囲(画角)がアクリルフィルタ24の有効領域の全面を撮影可能な大きさを有している。これに対して第2実施形態では、エリアカメラ14の撮影範囲がアクリルフィルタ24の有効領域よりも小さいため、アクリルフィルタ24を複数に区分した区分領域24a(図15参照)ごとに、エリアカメラ14による格子パターンGPのパターン光の撮像と、画像処理装置16による画像処理と、を繰り返し実行する。
【0089】
図13及び図14に示すように、第2実施形態の検査システム10は、XYステージ70を備える点を除けば、上記第1実施形態の検査システム10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0090】
XYステージ70は、公知のアクチュエータにより構成されており、エリアカメラ14を保持する。このXYステージ70は、制御部30の下、エリアカメラ14をXY方向に移動させる。これにより、視力表表示装置12(アクリルフィルタ24)に対してエリアカメラ14をXY方向に相対移動させることができる。なお、XYステージ70によりエリアカメラ14をXY方向に移動させる代わりに、視力表表示装置12(アクリルフィルタ24)をXY方向に移動させてもよい。
【0091】
図15は、エリアカメラ14による区分領域24aごとの撮影の一例を説明するための説明図である。図15に示すように、区分領域24aの大きさは、エリアカメラ14による1回の撮影で撮影可能な大きさに決定される。本実施形態では区分領域24aの数が4であるが、エリアカメラ14の撮影範囲(画角)及びアクリルフィルタ24の面積等に応じて3以下或いは5以上であってもよい。
【0092】
制御部30は、最初にXYステージ70を駆動して、エリアカメラ14の撮影範囲を第1番目の区分領域24aに位置合わせする。次いで、制御部30は、第1番目の区分領域24aを透過した格子パターンGPのパターン光の撮像をエリアカメラ14に実行させる。これにより、エリアカメラ14から画像処理装置16へ第1番目の区分領域24aの撮影画像29が出力される。以下、制御部30は、残りの区分領域24aごとに、エリアカメラ14の位置合わせと、エリアカメラ14によるパターン光の撮像及び撮影画像29の出力と、を繰り返し実行させる。なお、本実施形態では、画像処理装置16の制御部30によりXYステージ70の駆動を制御しているが、画像処理装置16とは別体の制御装置によりXYステージ70の駆動を制御してもよい。この場合、制御装置が例えばエリアカメラ14内或いはXYステージ70内に設けられていてもよい。
【0093】
第2実施形態の画像処理装置16は、エリアカメラ14から各区分領域24aの撮影画像29が出力されるごとに、上記第1実施形態の図12で説明したステップS3からステップS6までの処理を繰り返し実行する。そして、画像処理装置16は、全ての区分領域24aについてステップS6までの処理が完了した後、ステップS7以降の処理を実行する。或いは第2実施形態の画像処理装置16は、全ての区分領域24aの撮影画像29を取得した後にステップS2以降の処理を実行してもよい。
【0094】
以上のように第2実施形態では、エリアカメラ14の撮影範囲がアクリルフィルタ24の有効領域よりも小さい場合であっても、アクリルフィルタ24の検査を簡単かつ容易に行うことができる。なお、第2実施形態では、アクリルフィルタ24に対してエリアカメラ14を相対移動させる必要があるが、この場合であっても上記特許文献3に記載の発明のようにラインセンサを用いる場合と比較して相対移動の移動量を減らすことができる。
【0095】
[第3実施形態]
図16は、第3実施形態の検査システム10の構成を示した概略図である。上記各実施形態では平板状のアクリルフィルタ24の検査を行うが、第3実施形態の検査システム10では曲面形状のアクリルフィルタ25の検査を行う。なお、第3実施形態の検査システム10の構成は上記各実施形態と基本的に同じであるので、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0096】
図16に示すように、第3実施形態の画像処理装置16は、上記各実施形態と同様に撮影画像29を画像処理して、矩形領域RAごとの第1間隔Wx及び第2間隔Wyの検出と、矩形領域RAごとの第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyの演算と、矩形領域RAごとのズレ量平均値Δtmの演算と、ヒートマップ60の生成と、を行う。
【0097】
ここで、例えばアクリルフィルタ25のY方向に沿った断面が曲面形状である場合には、アクリルフィルタ25のY方向中央部における第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyの平均値に対して、アクリルフィルタ25のY方向両端部(周辺部)における第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyの平均値が大きくなったり或いは小さくなったりする。このため、ヒートマップ60のY方向中央部とY方向両端部とで色に変化が生じてしまう。
【0098】
しかしながら、例えば、アクリルフィルタ25のY方向中央部内に脈理が存在している場合、このY方向中央部内の脈理のある領域と脈理の無い領域とにおいて第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyに違いが生じる、すなわちヒートマップ60のY方向中央部内で脈理の存在している箇所の色が局所的に変化する。従って、脈理の検出が可能となる。このように本実施形態では、アクリルフィルタ25の任意の領域内における第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δtyの局所的な変化を捉えることができるので、アクリルフィルタ25の形状に関係なくその検査を行うことができる。
【0099】
また、第3実施形態では、アクリルフィルタ25の領域ごと(例えばY方向中央部、Y方向両端部)に、脈理領域の有無を判定するためのズレ量平均値Δtm(第1ズレ量Δtx及び第2ズレ量Δty)の閾値が個別に設定されている。これにより、アクリルフィルタ25の領域ごとに脈理領域を検出することができるので、既述の脈理検出部50による脈理平均等の検出、及び判定部52による判定を行うことができる。
【0100】
以上のように第3実施形態では、非平板状(曲面状、半球面状等)のアクリルフィルタ25の検査を簡単かつ容易に行うことができる。
【0101】
[その他]
上記各実施形態では、アクリルフィルタ24,25を透過した格子パターンGPのパターン光をエリアカメラ14で撮像してこのエリアカメラ14の撮影画像29を画像処理装置16で画像処理しているが、格子パターンGP以外の2次元周期パターンを用いてもよい。
【0102】
図17は、2次元周期パターンの変形例1を説明するための説明図である。図18は、2次元周期パターンの変形例2を説明するための説明図である。
【0103】
図17に示すように、格子パターンGPの代わりの2次元周期パターンとして、X方向に周期性を有する1次元ドットパターンである第1パターンP3と、Y方向に周期性を有する1次元ドットパターンである第2パターンP4と、を含む2次元ドットパターンTDPを用いてもよい。また、図18に示すように、格子パターンGPの代わりの2次元周期パターンとして、X方向に周期性を有する千鳥配置パターンである第1パターンP5と、Y方向に周期性を有する千鳥配置パターンである第2パターンP6と、を含むチェッカーパターンCPを用いてもよい。
【0104】
この場合に間隔検出部42は、1ラインLxごとに1ラインLx上で互いに隣り合う第1パターンP3,P5の第1間隔Wxを検出し、且つ1ラインLyごとに1ラインLy上で互いに隣り合う第2パターンP4,P6の第2間隔Wyを検出する。この場合でも上記各実施形態と同様に、第1ズレ量Δtx、第2ズレ量Δty、及びズレ量平均値Δtmの演算を行うと共に、ヒートマップ60の生成等を行うことができる。
【0105】
また、上記各実施形態では、第1パターンP1,P3,P5がX方向に周期性を有しているが、Z方向に垂直な方向であれば任意の方向に周期性を有していてもよい。また同様に、上記各実施形態では、第2パターンP2,P4,P6がY方向に周期性を有しているが、Z方向に垂直な方向であれば任意の方向に周期性を有していてもよい。すなわち、本発明の2次元周期パターンは、互いに異なる第1方向及び第2方向に周期性をもつパターンであれば特に限定はされない。また、2次元周期パターンにより区分けされる領域も矩形領域RAに限定されるものではなく任意の四角形状をとり得る。
【0106】
上記各実施形態では、視力表表示装置12のアクリルフィルタ24,25の検査を行う場合について説明したが、公知の各種の眼科装置で用いられる透明フィルタなどのように、アクリルフィルタ24,25以外の各種の透明試料の検査を行う場合にも本発明を適用可能である。この場合には、透明試料と、この透明試料に向けて2次元周期パターンのパターン光を出射する出射部(光源)とが別体に設けられていてもよい。また、本発明は、アクリルフィルタ24,25のような無色透明な透明試料の検査だけではなく、例えばガラスフィルタやカラーフィルタ(フィルム)のような有色透明な透明試料の検査にも適用可能である。さらに、本発明は、眼科装置以外に用いられる透明試料の検査にも適用可能である。
【0107】
上記各実施形態では、アクリルフィルタ24,25(透明試料)の脈理の有無或いは面積等に基づきアクリルフィルタ24,25の良否を判定しているが、2次元周期パターンの歪み、すなわち視標の歪みを発生させるアクリルフィルタ24,25の各種異常(不具合、欠陥、変形、歪み、傾き等)に基づきアクリルフィルタ24,25の良否を判定してもよい。
【0108】
上記各実施形態では、画像処理装置16が視力表表示装置12及びエリアカメラ14と別体に設けられているが、視力表表示装置12内或いはエリアカメラ14内に画像処理装置16が内蔵されていてもよい。
【符号の説明】
【0109】
10 検査システム
12 視力表表示装置
14 エリアカメラ
16 画像処理装置
20 パターン光出射部
22 コリメータレンズ
24 アクリルフィルタ
24a 区分領域
25 アクリルフィルタ
26 集光レンズ
27 2次元撮像素子
29 撮影画像
30 制御部
32 画像処理部
34 表示部
40 画像取得部
42 間隔検出部
44 ズレ量演算部
46 代表値演算部
48 ヒートマップ生成部
50 脈理検出部
52 判定部
54 表示制御部
60 ヒートマップ
60a 枠線
62 検出欄
64 判定欄
70 XYステージ
C 点線円
CP チェッカーパターン
GP 格子パターン
Lx,Ly 1ライン
P1,P3,P5 第1パターン
P2,P4,P6 第2パターン
RA 矩形領域
TDP 2次元ドットパターン
Wx 第1間隔
Wy 第2間隔
mean 平均値
Δtm ズレ量平均値
Δtx 第1ズレ量
Δty 第2ズレ量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18