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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】骨用ドライバービット接続装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/92 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
A61B17/92
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020215685
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101231
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 知宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0321326(US,A1)
【文献】特開2017-094148(JP,A)
【文献】特開平03-086482(JP,A)
【文献】特開2020-036995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0354906(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジを締め付け固定するドライバービットの接続装置であって、
筒状をなしたハウジングと、
前記ハウジングの一端から突出し、回転力伝達手段に接続されて回転する回転軸と、
前記ハウジングの他端から突出し、前記ネジを回転させるドライバービットを把持するドライバービット用チャックと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記ドライバービットに作用するトルクが所定値以下のときに、前記回転軸及び前記ドライバービット用チャックを連結して連動させ、前記ドライバービットに作用するトルクが所定値を超えたときに、前記回転軸及び前記ドライバービット用チャックの連動を解除するトルクリミッタ機構とを有しており、
前記回転軸は、前記ハウジングの内部に挿入される第1挿入部と、該第1挿入部に取付けられた第1クラッチ板とを有しており、
前記ドライバービット用チャックは、前記ハウジングの内部に挿入され、前記ドライバービットが挿入される、ビット挿入孔を有する第2挿入部と、該第2挿入部に取付けられ、前記第1クラッチ板に接離可能な第2クラッチ板とを有しており、
前記ハウジングの内部には、前記第1クラッチ板を前記第2クラッチ板に向けて付勢す
る第1スプリングが配置されており、
前記第1クラッチ板及び前記第2クラッチ板の間には、前記第1スプリングにより付勢された前記第1クラッチ板と前記第2クラッチ板とを噛み合わせて連結する噛み合い部が設けられており、
前記噛み合い部には、前記ドライバービットに作用するトルクが所定値を超えたときに、前記第1スプリングを圧縮させて、前記第1クラッチ板を前記第2クラッチ板に対して、前記ハウジングの軸方向に離反させて、両クラッチ板どうしの噛み合いを解除させる、テーパ嵌合面が形成されており、
前記ドライバービット用チャックは、
前記第2挿入部の外周に、軸方向にスライド可能に装着され、一端が前記ハウジングの内部に挿入され、他端が前記ハウジングの他端から突出する操作部と、
前記第2挿入部の外周に装着され、前記第1スプリングに対して同軸的に配置されて、
前記操作部を前記ハウジングの他端から突出する方向に付勢する第2スプリングと、
前記第2挿入部及び前記操作部の間に配置され、前記操作部のスライド操作によって、
前記ドライバービットを把持するか又は把持を解除するチャック部とを有しており、
前記第2クラッチ板と前記第2スプリングの一端との間には、前記第2クラッチ板及び前記第2スプリングの一端の、前記ハウジングに対する軸方向の移動を規制するストッパが配置されていることを特徴とするドライバービット接続装置。
【請求項2】
ネジを締め付け固定するドライバービットの接続装置であって、
筒状をなしたハウジングと、
前記ハウジングの一端から突出し、回転力伝達手段に接続されて回転する回転軸と、
前記ハウジングの他端から突出し、前記ネジを回転させるドライバービットを把持するドライバービット用チャックと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記ドライバービットに作用するトルクが所定値以下のときに、前記回転軸及び前記ドライバービット用チャックを連結して連動させ、前記ドライバービットに作用するトルクが所定値を超えたときに、前記回転軸及び前記ドライバービット用チャックの連動を解除するトルクリミッタ機構とを有しており、
前記回転軸は、前記ハウジングの内部に挿入されると共に、前記ドライバービット用チャックが挿入されるチャック挿入孔が形成された第1挿入部を有しており、
前記ドライバービット用チャックは、前記第1挿入部の前記チャック挿入孔に挿入される部分と、前記ドライバービットが挿入されるビット挿入孔とを設けた第2挿入部を有していることを特徴とするドライバービット接続装置。
【請求項3】
前記トルクリミッタ機構において、前記回転軸及び前記ドライバービット用チャックの連動が解除されるトルク値は5~45N・cmとされている請求項1又は2記載のドライバービット接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨に対して骨固定プレートをネジで締め付け固定するための、骨用ドライバービット接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、開頭手術においては、頭蓋骨に複数のバーホールを開け、これらを介して骨を切除した後、適宜治療を施し、その後、切除した骨(骨弁)を戻して、骨固定プレートをネジで締め付け固定することで、骨固定プレートを介して頭蓋骨に骨弁を固定することが行われている。
【0003】
上記骨固定プレートは、ドライバーで、ネジを手動で回転させるか又は電動で回転させることで、骨に対して締め付け固定される。ただ、近年は、ネジ締め作業の作業性の向上や、使用者の負担軽減を図る観点等から、ドライバーを電動で回転させることが望まれている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、脳神経外科手術用ネジキットに用いられるものであって、動力を供給する電源部と、駆動源であるモータと、モータの回転数を減速する遊星歯車減速機構と、ドライバービットの嵌着部を有し、遊星歯車減速機構からの出力回転をドライバービットに伝える出力軸と、出力軸の正回転のみを許容する手締め機構とを備えた、電動ドリルが記載されている。また、この電動ドリルは、接合プレートに対して、適正位置まで、ネジがねじ込まれたときに、モータをOFFにするセンサー部を有している。
【0005】
そして、この電動ドリルでは、モータで回転するドライバービットによって、骨に対してネジが適正位置までねじ込まれると、センサー部によってモータがOFFとなり、その後、手締め機構によって、手動で増し締めすることで、骨に対して、接合プレートがネジで締付け固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-273598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の電動ドリルでは、骨に対して、ネジは途中まで電動でねじ込まれるが、最終的には、手動で増し締めされるようになっているので、ネジの締め付けに手間がかかっていた。
【0008】
また、ネジを手動で増し締めする際に、強く締め付けてしまうと、ネジの頭をなめて破損してしまったり、所定の骨(例えば、頭蓋骨)や、その周囲の骨(例えば、骨弁)等が破損してしまうおそれがある。
【0009】
一方、ネジの締め付けが弱い場合には、所定の骨や、その周囲の骨に対して、接合プレートをしっかりと取付けることができない、という不都合が生じる。
【0010】
したがって、本発明の目的は、骨に対してネジを容易に締め付けることができると共に、ネジや骨の破損を抑制して、骨に対して骨固定プレートを安定して取付けることができる、骨用ドライバービット接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、骨に対して骨固定プレートをネジで締め付け固定するための、骨用ドライバービット接続装置であって、筒状をなしたハウジングと、前記ハウジングの一端から突出し、回転力伝達手段に接続されて回転する回転軸と、前記ハウジングの他端から突出し、前記ネジを回転させるドライバービットを把持するドライバービット用チャックと、前記ハウジングの内部に設けられ、前記ドライバービットに作用するトルクが所定値以下のときに、前記回転軸及び前記ドライバービット用チャックを連結して連動させ、前記ドライバービットに作用するトルクが所定値を超えたときに、前記回転軸及び前記ドライバービット用チャックの連動を解除するトルクリミッタ機構とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、骨に対して骨固定プレートをネジで締め付け固定すべく、ネジにドライバービットを嵌合させ、回転力伝達手段によって回転軸を回転させる際に、ドライバービットに作用するトルクが所定値以下のときには、トルクリミット機構によって、回転軸及びドライバービット用チャックが連結して連動するので、骨にネジを締め付けることができ、骨に対して骨固定プレートを締め付け固定することができる。
【0013】
一方、ドライバービットに作用するトルクが所定値を超えたときには、トルクリミット機構によって、回転軸及びドライバービット用チャックの連動が解除されるので、回転軸が回転してもドライバービット用チャックに回転力が伝わらず、ネジに過大なトルクが作用することを防止することができ、ネジの破損や骨の破損を抑制することができる。
【0014】
したがって、骨に対して骨固定プレートを、適切な締付け力で、安定して且つ安全に取付けることができ、使用者は、ネジの締め付け加減を調整する必要がなくなるので、作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る骨用ドライバービット接続装置の、一実施形態を示す斜視図である。
図2】同骨用ドライバービット接続装置を用いた、骨用ネジ締め装置の概略構成図である。
図3A】同骨用ドライバービット接続装置の正面図である。
図3B図3AのA-A矢視線における断面図である。
図3C図3AのB-B矢視線における断面図である。
図4A】同骨用ドライバービット接続装置において、回転軸とドライバービット用チャックとが連動した状態の説明図である。
図4B】同骨用ドライバービット接続装置において、回転軸とドライバービット用チャックとの連動が解除された状態の説明図である。
図5A】同骨用ドライバービット接続装置において、ドライバービットを把持する前の状態を示す説明図である。
図5B】同骨用ドライバービット接続装置において、ドライバービットを把持した状態を示す説明図である。
図6】同骨用ドライバービット接続装置の使用例を示しており、頭蓋骨に対して、骨弁を骨固定プレートを介して固定する前の状態を示す説明図である。
図7】同骨用ドライバービット接続装置の使用例を示しており、頭蓋骨に対して、骨弁を骨固定プレートを介して固定した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(骨用ドライバービット接続装置の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る骨用ドライバービット接続装置の、一実施形態について説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、この実施形態の骨用ドライバービット接続装置10(以下、単に「ビット接続装置10」ともいう)は、例えば、頭蓋骨1や骨弁3等の骨に対して、骨固定プレート5をネジ7で締め付け固定するために用いられるドライバービット80(以下、単に「ビット80」ともいう)を、回転駆動装置60に接続するためのものである。
【0018】
また、図2には、このビット接続装置10を用いた、骨用ネジ締め装置100の概略構成図が示されている。この実施形態における骨用ネジ締め装置100は、回転駆動装置60と、該回転駆動装置60に着脱可能に把持される本発明に係るビット接続装置10と、該ビット接続装置10に着脱可能に把持されるドライバービット80(以下、単に「ビット80」ともいう)とから、主として構成されている。
【0019】
なお、この実施形態の場合、図6に示すように、頭蓋骨1の所定箇所に医療用ドリルでバーホール2を複数開け、これらのバーホール2,2間を医療用ノコギリで切除して、骨弁3として取り出して、適宜治療を施した後、骨弁3を元の位置に戻し、図7に示すように、頭蓋骨1と骨弁3とを、骨固定プレート5を介してネジ7で締め付け固定するようになっている。
【0020】
なお、骨としては、頭蓋骨や骨弁以外の骨であってもよく、更に、チタンやセラミック等で形成された、いわゆる人工骨であってもよい。
【0021】
また、この実施形態における骨固定プレート5は、長板状をなしており、その両端に、ネジ7を挿入可能なネジ孔5aが形成されている。なお、骨固定プレートとしては、例えば、矩形板状としたり、円板状としたり、複数の孔を有するメッシュプレートとしたりしてもよく、特に限定はされない。
【0022】
図2に示すように、前記回転駆動装置60は、使用者が把持可能な略筒状をなしており、その先端側には、回転可能な回転部61が配置されている。図1に示すように、回転部61の先端側の対向面61a,61aは、互いに平行な平坦面状をなしている。
【0023】
また、図2に示すように、回転部61の内部には、一対の中継器用チャック63,63が、支軸63a,63aを介して回動可能に支持されている。各中継器チャック63の先端側には、フック64が固着されていると共に、各中継器チャック63の基端側にはバネ65が介装されており、バネ65によってフック64、64が常時は閉じる方向に付勢されている。
【0024】
そして、図2に示すように、一対のフック64,64が、ビット接続装置10の回転軸30の接続部35を挟持することで、回転駆動装置60の回転部61に、ビット接続装置10の回転軸30が接続されるようになっている。
【0025】
また、回転駆動装置60の内部には、図示しないモーター(本発明における「回転力伝達手段」をなす)が配置されていると共に、同モーターによって回転駆動する駆動軸67が配置されており、この駆動軸67によって、前記回転部61が回転動作するようになっている。
【0026】
更に、回転駆動装置60の基端側からは、ケーブル69が延出しており、このケーブル69は、コントロールユニット70に電気的に接続されている。コントロールユニット70は、回転駆動装置60内に配置されたモーターに、駆動用の電力を供給すると共に、モーターの回転数や回転方向等を制御可能となっている。このため、この実施形態における回転駆動装置60には、モーター駆動用の電源は内蔵されておらず、軽量・コンパクト化がなされている。なお、コントロールユニット70には、足踏み式の図示しないフットコントローラーが接続されており、モーターの回転駆動をON・OFF可能となっている。
【0027】
また、前記ビット80は、軸方向の先端側に、ネジ7の頭部に嵌合するネジ嵌合部81が形成されている。更に、ビット80の軸方向の基端側であって、径方向に対向する2箇所には、半球形の凹溝状をなしたチャック嵌合部83,83(図1参照)がそれぞれ形成されている。
【0028】
なお、上記の回転駆動装置や、ドライバービット等の形状や構造は、あくまで例示であり、上記態様に限定されるものではない。
【0029】
次に、ビット接続装置10の具体的な構造について詳述する。
【0030】
このビット接続装置10は、筒状をなしたハウジング20と、該ハウジング20の一端21から突出し、回転駆動装置60(回転力伝達手段)に接続されて回転する回転軸30と、ハウジング20の他端23から突出し、ネジ7を回転させるビット80を把持するドライバービット用チャック40(以下、単に「ビット用チャック40」ともいう)と、ハウジング20内に設けられ、ビット80に作用するトルクが所定値以下のときに、回転軸30及びビット用チャック40を連結して連動させ、ビット80に作用するトルクが所定値を超えたときに、回転軸30及びビット用チャック40の連動を解除するトルクリミッタ機構とを有している。
【0031】
ハウジング20は、所定長さで延びる略円筒状をなしている。図3B図4Aに示すように、このハウジング20は、その軸方向の一端21に、開口21aが形成されていると共に、軸方向の他端23にも開口23aが形成されている。また、図3Aに示すように、ハウジング20の軸方向の他端23寄りの位置には、ストッパ装着溝25が形成されている。
【0032】
なお、以下の、ビット接続装置10を構成する各部材の説明において、「一端」又は「一端部」とは、ハウジング20の一端21側に向く一端又は一端部を意味しており、「他端」又は「他端部」とは、ハウジング20の他端23側に向く他端又は他端部を意味している。
【0033】
また、図3Bに示すように、ハウジング20の一端21から突出した回転軸30は、ハウジング20の内部に挿入される第1挿入部31を有している。この第1挿入部31は略円筒状をなしており、その軸方向の他端の外周に、第1クラッチ板33が固着されている。また、第1挿入部31の内側であって、軸方向の他端から一端側に向けて、所定長さでチャック挿入孔31aが形成されている。図3Bに示すように、このチャック挿入孔31aには、ビット用チャック40の、後述する第2挿入部41の縮径部41aが挿入されるようになっている。
【0034】
更に図3Bに示すように、ハウジング20の内周と回転軸30の外周との間には、第1スプリング27が介装されている。この第1スプリング27は、その一端がハウジング20の一端21の開口21aの内周縁部に支持されており、他端が第1クラッチ板33に当接し、圧縮状態で配置されている。そして、この第1スプリング27は、第1クラッチ板33を、第2クラッチ板43に向けて付勢する。
【0035】
また、第1挿入部31の、ハウジング20の一端31の開口31aから突出した部分であって、軸方向の一端部には、回転駆動装置60との接続部35が形成されている。図3A図4Aに示すように、この接続部35は、第1挿入部31の一端側から他端側に向けて、外周全周が次第に縮径するテーパ状をなしている。
【0036】
そして、回転軸30を、回転駆動装置60の回転部61内に挿入することで、図2に示すように、回転駆動装置60の一対のフック64,64が、回転軸30の接続部35を挟持して、回転駆動装置60の回転部61に、ビット接続装置10の回転軸30が把持されて、回転駆動装置60にビット接続装置10が接続されるようになっている。
【0037】
なお、図1に示すように、回転軸30の、ハウジング20の一端21の開口21aから突出した部分であって、ハウジング20の一端21に隣接した位置には、外周面の径方向に対向する2箇所が平坦面状にカットされた回転規制部37が設けられている。この回転規制部37が、回転部61の先端側の対向面61a,61aに対向配置されることで、回転駆動装置60の回転部61に、回転軸30が回転規制状態で接続される。その結果、回転部61の回転に追随して、回転軸30が回転するようになっている。
【0038】
また、図3Bに示すように、ハウジング20の他端23から突出したビット用チャック40は、ハウジング20の内部に挿入され、ビット80が挿入されるビット挿入孔41bを設けた第2挿入部41を有している。この第2挿入部41は略円筒状をなしており、その軸方向途中箇所から、第2挿入部41の他端側よりも縮径した縮径部41aが設けられている。この縮径部41aは、回転軸30のチャック挿入孔31a内に回転可能に挿入されるようになっている。また、上記ビット挿入孔41bは、第2挿入部41の内側であって、軸方向の他端から前記縮径部41aの途中箇所に至る範囲に形成されている。
【0039】
更に図3Bに示すように、第2挿入部41の軸方向他端側であって、径方向に対向する2箇所には、一対のチャック出没部41c,41cが、第2挿入部41を径方向に貫通して形成されている。各チャック出没部41cには、チャック部47がそれぞれ配置される(これについては後で詳述する)。
【0040】
更に、第2挿入部41の、軸方向の途中箇所(縮径部41aよりもやや他端寄りの位置)であって、その外周には、第1クラッチ板33に接離可能な第2クラッチ板43が固着されている。
【0041】
そして、図4Aに示すように、この第2クラッチ板43と前記第1クラッチ板33との間には、第1スプリング27により付勢された第1クラッチ板33と、第2クラッチ板43とを噛み合わせて連結する噛み合い部50が設けられている。この実施形態における噛み合い部50は、第1クラッチ板33の他端面(第2クラッチ43との対向面)であって、その外周縁に沿って突設された複数の第1嵌合突部51と、第2クラッチ板43の一端面(第1クラッチ33との対向面)であって、その外周縁に沿って突設され、前記複数の第1嵌合突部51に嵌合する複数の第2嵌合突部53とからなる。
【0042】
また、噛み合い部50には、ビット80に作用するトルクが所定値を超えたときに、第1スプリング27を圧縮させて、第1クラッチ板33を第2クラッチ板43に対して、ハウジング20の軸方向に離反させて、両クラッチ板33,43どうしの噛み合いを解除させる、テーパ嵌合面51b,53bがそれぞれ形成されている。
【0043】
具体的には、図4Bに示すように、各第1嵌合突部51の頂部51aから、回転軸30の回転方向R(図1参照)側に向けて且つハウジング20の一端21側に向けて、ハウジング20の軸心Cに対して斜めに傾斜したテーパ面状をなした、第1テーパ嵌合面51bが形成されている。また、各第2嵌合突部53の底部53aから、ビット用チャック40の回転方向R側に向けて且つハウジング20の一端21側に向けて、ハウジング20の軸心Cに対して斜めに傾斜したテーパ面状をなした、第2テーパ嵌合面53bが形成されている。
【0044】
更に、各第1嵌合突部51の、第1テーパ嵌合面51bとは反対側には、ハウジング20の軸心Cに対して平行な、第1嵌合面51cが形成されている。また、各第2嵌合突部53の、第2テーパ嵌合面53bとは反対側には、ハウジング20の軸心Cに対して平行な、第2嵌合面53cが形成されている。
【0045】
そして、ビット80に作用するトルクが所定値以下のときには、図4Aに示すように、両テーパ嵌合面51b,53bが互いに係合して、両嵌合突部51,53が嵌合するので、回転軸30及びビット用チャック40を連結して所定の回転方向Rに連動するようになっている。すなわち、回転軸30が回転方向Rに回転すると、第1テーパ嵌合面51bが第2テーパ嵌合面53bを押圧するので、ビット用チャック40を同方向に回転させる。なお、ビット80でネジ7を回転していない状態においても、第1スプリング27により付勢された第1クラッチ板33の第1嵌合突部51が、第2クラッチ板43の第2嵌合突部53に嵌合して(図4A参照)、噛み合い部50を介して回転軸30及びビット用チャック40が連動可能となっている。
【0046】
一方、ビット80に作用するトルクが所定値を超えたときには、図4Bに示すように、ストッパ55によって位置規制された第2クラッチ板43の、第2嵌合突部53の第2テーパ嵌合面53上を、第1テーパ嵌合面51bが滑るように移動して、第1クラッチ板33が、第1スプリング27を圧縮させつつ、第2クラッチ板43に対してハウジング20の軸方向に離反するように移動する。その結果、両嵌合突部51,53どうしの嵌合が解除されて、両クラッチ板33,43どうしが噛み合わなくなるので、回転軸30及びビット用チャック40の連動が解除されるようになっている。
【0047】
なお、回転軸30が回転方向Rとは反対方向に回転する場合には、第1嵌合面51c及び第2嵌合面53cどうしが互いに係合するので、回転軸30及びビット用チャック40の連動は維持されたままとなる。
【0048】
また、この実施形態のトルクリミッタ機構において、回転軸30及びビット用チャック40の連動が解除されるトルク値は、5~45N・cmであることが好ましく、7~25N・cmであることがより好ましい。上記トルク値が、45N・cmを超えると、ネジ7が破損しやすくなるため好ましくなく、5N・cm未満であると、骨に対するネジ7の締め付け強度が不足しがちになるため好ましくない。
【0049】
また、ビット用チャック40は、上記の第2挿入部41のほか、第2挿入部41の外周に、軸方向にスライド可能に装着され、一端がハウジング20の内部に挿入され、他端がハウジング20の他端23から突出する操作部45と、第2挿入部41の外周に装着され、第1スプリング27に対して同軸的に配置されて、操作部45をハウジング20の他端23から突出する方向に付勢する第2スプリング29と、第2挿入部41及び操作部45の間に配置され、操作部45のスライド操作によって、ビット80を把持するか又は把持を解除するチャック部47とを有している。
【0050】
更に、第2クラッチ板43と第2スプリング29の一端との間には、第2クラッチ板43及び第2スプリング29の一端の、ハウジング20に対する軸方向の移動を規制するストッパ55が配置されている。
【0051】
上記の操作部45や、第2スプリング29、チャック部47、ストッパ55等について、より具体的に説明する。
【0052】
前記操作部45は、第2挿入部41の外周に適合する内周形状を有する略円筒状をなしている。この操作部45の他端外周からは、フランジ部45aが突設されている。また、操作部45の他端側の内周には、操作部45の一端側の内周よりも拡径した、チャック退避部45bが設けられている。
【0053】
更に図3Cに示すように、この実施形態のストッパ55は、互いに平行な一対の側部55a,55aと、両側部55a,55aの一端どうしを連結する曲面状の連結部55bとからなる略U字状をなしている。このストッパ55は、ハウジング20のストッパ装着溝25に装着されて、第2クラッチ板43の他端面側に配置されており(図3B参照)、ハウジング20に対して、第2クラッチ板43が軸方向他端側へ移動することを規制し、かつ、第2スプリング29の一端が軸方向一端側へ移動することを規制する。更に、ストッパ55の他端面側には、ストッパ55とは別体のワッシャ56が配置されている。
【0054】
そして、第2スプリング29は、ハウジング20の内周と第2挿入部41の外周との間に配置されて、その一端がワッシャ56に支持されると共に、他端が操作部45の一端に当接して、操作部45をハウジング20の他端23の開口23aから突出する方向に付勢するようになっている。
【0055】
なお、図3Bに示すように、第2挿入部41の、チャック退避部45bよりも、他端側外周には、抜け止めリング42が装着されている。この抜け止めリング42が、操作部45のチャック退避部45bの底面に係合することで、第2スプリング29により付勢される操作部45の、ハウジング20の他端23からの抜け止めが図られている。
【0056】
また、第2挿入部41の一対のチャック出没部41c,41cには、ボール状をなしたチャック部47がそれぞれ配置されている。図5A及び図5Bに示すように、各チャック部47は、チャック出没部41cの径方向に対して移動可能となっている。
【0057】
すなわち、図3B及び図5Bに示すように、第2スプリング29によって、操作部45がハウジング20の他端23から突出する方向に付勢されている場合は、操作部45の一端部内周に、一対のチャック部47,47が押圧されて、各チャック部47は、その一部が第2挿入部41内のビット挿入孔41bに突出している。
【0058】
一方、図5Aに示すように、フランジ部45aを把持して、第2スプリング29の付勢力に抗して、操作部45の一端部をハウジング20の一端21に近接する方向にスライドさせて、操作部45のチャック退避部45bがチャック部47に至ると、一対のチャック部47,47をチャック退避部45b内に退避させることが可能となる。
【0059】
そのため、操作部45の上記スライド状態を維持したまま、第2挿入部41のビット挿入孔41bの他端開口から、ビット80を一端側から挿入していくと(図5Aの矢印D参照)、第2挿入部41内をビット80が挿入可能となる。その後、ビット挿入孔41bに対するビット80の挿入量やビット80の回転角度を調整して、ビット80の一対のチャック嵌合部83,83を、一対のチャック部47,47に整合させることで、一対のチャック部47,47が一対のチャック嵌合部83,83に嵌合するので、図5Bに示すように、ビット用チャック40にビット80を把持できるようになっている。
【0060】
以上説明した骨用ドライバービット接続装置の各構成部材(ハウジング、回転軸、ドライバービット用チャック、トルクリミッタ機構、第1スプリング、第2スプリング、ストッパ等)の形状や構造は、あくまでも例示であり、少なくとも、回転軸と、ドライバービット用チャックと、トルクリミッタ機構とを有するものであれば、上記態様に限定されるものではない。
【0061】
また、トルクリミッタ機構における、回転軸及びドライバービット用チャックの連動又は連動解除のトルク値としては、例えば、ハウジング20の軸心Cに対する第1テーパ嵌合面51bや第2テーパ嵌合面53bの傾斜角度を変更したり、第1嵌合突部51や第2嵌合突部53の突出量(底部から頂部までの高さ)を変更したり、第1スプリング27の線径や外径等に起因するバネ力を変更したりすることで、適宜調整することができる。
【0062】
なお、第1嵌合面51cや第2嵌合面53cも、第1テーパ嵌合面51bや第2テーパ嵌合面53bと同様に、ハウジング20の軸心Cに対して傾斜したテーパ面とすれば、回転軸30が回転方向Rとは反対方向に回転する際に、回転軸30及びビット用チャック40の連動を解除可能な構成とすることができる(回転軸30の逆回転時にもトルクリミッタ機構を作用させることができる)。
【0063】
(作用効果)
次に、上記構成からなるビット接続装置10の使用方法の一例、及び、その作用効果について説明する。
【0064】
すなわち、図6に示すように、頭蓋骨1から切除した骨弁3の外周縁部の所定箇所に、骨固定プレート5の一端を当接させ、一端側のネジ孔5aにネジ7を挿入した後、ビット80でネジ7を締め付けて、骨弁3に骨固定プレート5の一端を締め付け固定する。その後、骨弁3を元の位置に戻して、骨固定プレート5の他端を、頭蓋骨1に当接して、他端側のネジ孔5aにネジ7を挿入して、ビット80でネジ7を締め付けることで、頭蓋骨1に骨固定プレート5の他端が締め付け固定される。その結果、頭蓋骨1に対して、骨弁3が、複数の骨固定プレート5を介して固定することができる。
【0065】
そして、このビット接続装置10においては、頭蓋骨1や骨弁3等の骨に対して、骨固定プレート5をネジ7で締め付け固定する際には、ネジ7の頭部にビット80のネジ嵌合部81を嵌合させた後、コントロールユニット70の図示しないフットコントローラーを踏んで、回転駆動装置60内のモーターを回転させる。すると、回転軸30が回転方向Rに回転し、噛み合い部50を介して、ビット用チャック40が同方向に連動して回転する。その結果、ビット80が回転して、骨に対してネジ7を締め付ける。
【0066】
この際、ビット80に作用するトルクが所定値以下のときには、図4Aに示すように、トルクリミット機構によって、回転軸30及びビット用チャック40が連結して連動するので、骨にネジ7を締め付けることができ、頭蓋骨1や骨弁3等の骨に対して骨固定プレート5を締め付け固定することができる。
【0067】
一方、ビット80に作用するトルクが所定値を超えたときには、図4Bに示すように、トルクリミット機構によって、回転軸30及びビット用チャック40の連動が解除されるので、回転軸30が回転してもビット用チャック40に回転力が伝わらず、ネジ7に過大なトルクが作用することを防止することができ、ネジ7の破損や、頭蓋骨1や骨弁3等の骨の破損を抑制することができる。
【0068】
したがって、このビット接続装置10においては、骨に対して骨固定プレート5を、適切な締付け力で、安定して且つ安全に取付けることができ、使用者は、ネジ7の締め付け加減を調整する必要がなくなるので、作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0069】
また、この実施形態においては、トルクリミッタ機構において、回転軸30及びビット用チャック40の連動が解除されるトルク値は5~45N・cmとされている。そのため、頭蓋骨1や骨弁3等の骨に対して、骨固定プレート5を、骨に適した締付け力でもって、ネジ7で締め付け固定することができる。
【0070】
更に、この実施形態においては、図4A及び図4Bに示すように、回転軸30は、ハウジング20の内部に挿入される第1挿入部31と、第1挿入部31に取付けられた第1クラッチ板33とを有しており、ビット用チャック40は、ハウジング20の内部に挿入され、ビット80が挿入される、ビット挿入孔41bを有する第2挿入部41と、第2挿入部41に取付けられ、第1クラッチ板33に接離可能な第2クラッチ板43とを有しており、ハウジング20の内部には、第1クラッチ板33を第2クラッチ板43に向けて付勢する第1スプリング27が配置されており、第1クラッチ板33及び第2クラッチ板43の間には、第1スプリング27により付勢された第1クラッチ板33と第2クラッチ板43とを噛み合わせて連結する噛み合い部50が設けられており、噛み合い部50には、ビット80に作用するトルクが所定値を超えたときに、第1スプリング27を圧縮させて、第1クラッチ板33を第2クラッチ板43に対して、ハウジング20の軸方向に離反させて、両クラッチ板33,43どうしの噛み合いを解除させる、テーパ嵌合面51b,53bが形成されている。
【0071】
上記態様によれば、比較的簡単な構造で且つコンパクトなビット接続装置10を得ることができる。また、テーパ嵌合面51b,53bの傾斜角度等や、第1スプリング27の線径や外径等に起因するバネ力などによって、回転軸30及びビット用チャック40の連動が解除されるトルクの所定値を、容易に調整することができる。
【0072】
また、この実施形態においては、図3B図3Cに示すように、ビット用チャック40は、第2挿入部41の外周に、軸方向にスライド可能に装着され、一端がハウジング20の内部に挿入され、他端がハウジング20の他端23から突出する操作部45と、第2挿入部41の外周に装着され、第1スプリング27に対して同軸的に配置されて、操作部45をハウジング20の他端23から突出する方向に付勢する第2スプリング29と、第2挿入部41及び操作部45の間に配置され、操作部45のスライド操作によって、ビット80を把持するか又は把持を解除するチャック部47とを有しており、第2クラッチ板43と第2スプリング29の一端との間には、第2クラッチ板43及び第2スプリング29の一端の、ハウジング20に対する軸方向の移動を規制するストッパ55が配置されている。
【0073】
上記態様によれば、ストッパ55によって、第2クラッチ板43及び第2スプリング29の軸方向移動を規制することができると共に、第2スプリング29が第1スプリング27に対して同軸的に配置されていることで、ビット用チャック40とトルクリミッタ機構の構造をコンパクトに構成することができる。
【0074】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 頭蓋骨
3 骨弁
5 骨固定プレート
7 ネジ
10 骨用ドライバービット接続装置(ビット接続装置)
20 ハウジング
21 一端
23 他端
27 第1スプリング
29 第2スプリング
30 回転軸
31 第1挿入部
31a チャック挿入孔
33 第1クラッチ板
35 接続部
37 回転規制部
40 ドライバービット用チャック(ビット用チャック)
41 第2挿入部
41b ビット挿入孔
43 第2クラッチ板
45 操作部
50 噛み合い部
51 第1嵌合突部
51b 第1テーパ嵌合面
53b 第2テーパ嵌合面
55 ストッパ
60 回転駆動装置
70 コントロールユニット
80 ドライバービット(ビット)
100 骨用ネジ締め装置
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7