(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】筋疾患または神経筋疾患を治療するための単独または併用での非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4375 20060101AFI20240712BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240712BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240712BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240712BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240712BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240712BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240712BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20240712BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240712BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240712BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240712BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240712BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240712BHJP
A61P 21/00 20060101ALN20240712BHJP
A61P 25/00 20060101ALN20240712BHJP
【FI】
A61K31/4375
A61P21/04
A61P43/00 121
A61K45/06
A61K31/506
A61K45/00
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/28
A61K9/16
A61K9/14
A61K9/10
A61K9/12
A61K9/08
A61P21/00
A61P25/00
(21)【出願番号】P 2020563702
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2019062021
(87)【国際公開番号】W WO2019215317
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-15
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ザンドナー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・コルクホーフ
(72)【発明者】
【氏名】イルカ・マーター
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー・ブライテンシュタイン
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/069126(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/106268(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/069148(WO,A1)
【文献】FASEB J.,2015年,29,pp. 4544-4554
【文献】PLoS ONE,2017年,12(9),e0184888, page 1-13,<https://doi.org/10.1371/journal.pone.0184888>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00-45/08
A61K 31/33-33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療および/または予防に使用するための医薬組成物であって、式(I)によるフィネレノン、(S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミド)
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項2】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療に使用するための医薬組成物であって、式(I)によるフィネレノン、またはその薬学的に許容される塩、ならびに少なくとも1つのさらなる追加のsGC刺激剤を含む、医薬組成物。
【請求項3】
前記sGC刺激剤が、
・メチル4,6-ジアミノ-2-[1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]-5-ピリミジニル(メチル)カルバメート(リオシグアト)、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(ベリシグアト)、
・3-(4-アミノ-5-シクロプロピルピリミジン-2-イル)-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン(BAY 41-2272)および
・1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-[({5-フルオロ-2-[1-(2-フルオロベンジル)-5-(1,2-オキサゾール-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]-4-ピリミジニル}アミノ)メチル]-2-プロパノール(プラリシグアト)
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記sGC刺激剤が、3-(4-アミノ-5-シクロプロピルピリミジン-2-イル)-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン(BAY 41-2272)またはその薬学的に許容される塩である、請求項2または3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
1つまたは複数の不活性で非毒性の薬学的に適切な助剤と組み合わせて、請求項1に記載の式(I)によるフィネレノン、またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を含む
、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療および/または予防に使用するための医薬品。
【請求項6】
1つまたは複数の不活性で非毒性の薬学的に適切な助剤と組み合わせて、請求項2から4のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む
、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療および/または予防に使用するための医薬品。
【請求項7】
経口または非経口投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物、あるいは請求項5または6に記載の医薬品。
【請求項8】
経口投与のための投与形態が、錠剤、口腔で急速に崩壊するフィルム/ウエハー、フィルム/凍結乾燥物、もしくはカプセル剤、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、散剤、乳剤、懸濁剤、エアゾール剤及び液剤から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物、あるいは請求項5または6に記載の医薬品。
【請求項9】
非経口投与のための投与形態が、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥物または滅菌散剤の形態の注射および注入用製剤から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物、あるいは請求項5または6に記載の医薬品。
【請求項10】
非経口投与の場合、用量が0.001~1mg/kg体重である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物、あるいは請求項5または6に記載の医薬品。
【請求項11】
非経口投与の場合、用量が0.01~0.5mg/kg体重である、請求項10に記載の医薬組成物または医薬品。
【請求項12】
経口投与の場合、用量が0.01~100mg/kg体重である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物、あるいは請求項5または6に記載の医薬品。
【請求項13】
経口投与の場合、用量が0.01~20mg/kg体重である、請求項12に記載の医薬組成物または医薬品。
【請求項14】
経口投与の場合、用量が0.1~10mg/kg体重である、請求項12に記載の医薬組成物または医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体(MR)およびミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト(MRアンタゴニスト、MRA)の薬理学に関する。特に、本発明は、筋疾患または神経筋疾患を予防および/または治療するため、特にデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を治療するための医薬品を調製するための、単独および併用での、好ましくはsGC刺激剤および/またはsGC活性化因子と組み合わせたMRAの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、筋線維しょうたんぱく質ジストロフィンの欠如が骨格筋および心筋の変性を引き起こす、5000人の新生男児のおよそ1人に発症するX連鎖劣性遺伝障害である。DMDの男性は心筋症を発症し、典型的には、人生の30年または40年で死亡する。重要なことに、左心室(LV)機能が異常になるずっと前にDMD患者で心筋疾患が発症している。したがって、現在のガイドラインでは、明らかな左心室収縮機能障害が見られたら、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)などの十分に確立された心不全薬を投与することを推奨している。しかしながら、これらの治療にもかかわらず、歩行能力はティーンエイジャーで既に失われ、車椅子が必要な場合がある。呼吸困難および心疾患が20歳までに通常始まり、現在の平均余命は約30年である。筋ジストロフィーおよびDMDの患者の寿命を改善し、延長するための治療法はなく、満たされていない実質的な医学的要求がある。
【0003】
環状ヌクレオチドである、環状アデノシン一リン酸(cAMP)および環状グアノシン一リン酸(cGMP)は、数十年前に発見され、細胞内で最も重要な二次メッセンジャー経路の1つを表す。細胞内cGMPプールの調節が生理学および病態生理学に実質的な影響を及ぼし、薬理学的介入の1つの基本原則であることが十分に確立されている[EvgenovらNat Rev Drug Discov.2006年9月;5(9):755-68;Schmidt HHらHandbook of Experimental Pharmacology 2009(191)]。
【0004】
したがって、細胞内cGMPレベルを上昇させ得る硝酸塩およびPDE5阻害剤(PDE5i)は、それぞれ、狭心症、および肺高血圧症(PAH)または勃起不全(ED)の既に承認された治療法である。最近発見されたsGC刺激剤は、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を直接刺激することによって、硝酸塩およびPDE5iの重大な制限を克服することができる。リオシグアトなどのsGC刺激剤は、肺高血圧症(PAH)および慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療で承認されている、または心不全(HFrEF)の治療のための後期第III相臨床開発段階にある。さらに、追加のsGC刺激剤が、例えば、高血圧(HTN)、慢性腎臓病(CKD)、全身性硬化症(SSc)、嚢胞性線維症(CF)、鎌状赤血球症(SCD)などを含む臨床開発および前臨床試験の初期段階にある。sGC刺激剤のこの非常に幅広い治療の可能性は、様々な疾患に対するこの非常に有効で幅広い薬理学的介入戦略を支持している。sGC刺激剤は、酸化されていないヘム含有sGCのαサブユニットに結合し、細胞内cGMPのNO非依存性形成および増加をもたらす。さらに、sGC刺激剤は、NOがsGCに結合している場合に、cGMPに対するNO効果を増強する[Stasch JPら、Nature 2001、410:212~215;Stasch JPおよびHobbs AJ.Handb.Exp.Pharmacol.2009、191、277~308]。ヘム基が可溶性グアニル酸シクラーゼから除去されると、ヘム欠失型酵素の残りの触媒的基礎活性を、sGC刺激剤によって刺激することができず、NOによっても刺激することができない[Evgenov OV、Pacher P、Schmidt PM、Hasko G、Schmidt HH、Stasch JP.Nat Rev Drug Discov.2006年9月;5(9):755-68]。ヘム欠失型および酸化型のsGCは、虚血性および低酸素状態ならびに酸化ストレスに関連する疾患で優先的に存在するため、この所見は重要である。現在の理解では、酸化ストレス条件下では、ヘム基のFe2+鉄原子がFe3+に酸化され、ヘム基のβサブユニットへの結合が不安定になり、酵素がヘム欠失型になる。BAY 58-2667(シナシグアト)の発見により、ヘム欠失型sGCを活性化することができる新たな化学物質が識別された。したがって、BAY 58-2667は、このクラスのsGC活性化因子のプロトタイプである。これらの物質の共通の特徴は、酸化型またはヘム欠失型の酵素の活性化がヘム含有酵素の活性化よりも著しく高いこと、およびNOと組み合わせて、酵素活性化に対する相加効果を有することである[Evgenovら、同上;J.P.Staschら、Br.J.Pharmacol.136(2002)、773;J.P.Staschら、J.Clin.Invest.116(2006)、2552]。より最近では、化学構造が異なり、薬物動態および薬力学プロファイルが異なり、臓器分布も異なる、他のクラスのsGC活性化因子も発見された。
【0005】
sGC刺激剤によるcGMPの増加が血管平滑筋細胞の弛緩および血圧の低下をもたらすことが十分に確立されている。しかしながら、血管拡張を超えた、血管平滑筋細胞を標的とする他の作用様式は部分的にしか理解されておらず、現在調査中である。近年、cGMPの増加が心筋細胞および骨格筋細胞の機能にも影響を及ぼす可能性があることが明らかになった。さらに、NOS(NOシンターゼ)によって駆動されるNO/cGMP系の変化は、神経筋障害および筋ジストロフィーの病理学に関与している可能性がある。これと一致して、すなわち、NOドナーおよびPDE5阻害剤が筋ジストロフィーの非臨床動物モデルにおいて有益な効果を示すこと[Thomas GDら、PLoS One.2012;7(11):e49350;Ramachandran Jら、Biochem J.2013年1月1日;449(1):133-42;Thomas GDら、Front Physiol.2013年12月18日;4:381;Adamo CMらProc Natl Acad Sci.2010年11月2日;107(44):19079-83;Percival JMら、J Pathol.2012年9月;228(1):77-87]、またはすなわち、PDE5阻害剤治療がデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)[Nelson MDらNeurology.2014年6月10日;82(23):2085-91]およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)[Martin EAら、Sci Transl Med.2012年11月28日;4(162):162ra155]患者に有益であることが以前に発表された。しかしながら、sGC刺激剤が使用された前臨床モデルを含む前臨床結果が有望であるにもかかわらず(国際公開第2015/106268号パンフレット)、最近の臨床試験では相反する結果が得られ、PDE5阻害剤治療は患者で有益な効果を示すことができなかった[Leung DGら、Ann Neurol.2014年10月;76(4):541-9;Victor RGら、Neurology.2017年10月24日;89(17):1811~1820]。これは、PDE5阻害剤およびsGC刺激剤が、十分なNO/cGMPが産生され(PDE5i)、十分なヘム含有sGCが発現されている場合にのみ有効となり得るという事実に起因し得る。十分な内因性cGMP産生とヘム含有sGC発現の両方が、筋ジストロフィーで損なわれている可能性がある。さらに、NO/cGMP/PDE軸の調節不全が、筋ジストロフィーの発症および進行を部分的にのみ担っている可能性がある。他の経路も、筋ジストロフィーの疾患表現型および疾患重症度に有意に寄与している可能性がある。最近では、Ironwood PharmaceuticalsがDMDを治療するためのsGC刺激剤の使用を主張し(国際公開第2015/106268号パンフレット)、Johns HopkinsがDMDを治療するためのsGC活性化因子の使用を主張した(国際公開第2014/190250号パンフレット)。
【0006】
アルドステロンは、遠位ネフロンの上皮で、ナトリウム保持およびカリウム分泌を促進し、よって細胞外液量を一定に保ち、よって血圧を調節することに寄与することによって、体液および電解質の恒常性を維持する上で重要な役割を果たす。これに加えて、アルドステロンは、心臓および血管系の構造および機能に対する直接的効果を示すが、その根底にある機序はまだ完全には説明されていない[R.E.Booth、J.P.Johnson、J.D.Stockand、Adv.Physiol.Educ.26(1)、8~20(2002)]。
【0007】
アルドステロンは、副腎皮質で形成されるステロイドホルモンである。その産生は、極めて実質的に腎血流量に応じて間接的に調節されている。腎血流量が減少すると、腎臓で酵素レニンが循環血液に放出される。これにより、一方では動脈血管に対する収縮効果を有するが、他方では副腎皮質でのアルドステロンの形成も刺激するアンジオテンシンIIの形成が活性化される。したがって、腎臓は血圧センサー、よって、循環血液の間接的な体積センサーとして作用し、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を介して、一方では血圧を上昇させ(アンジオテンシンII効果)、他方では、腎臓でのナトリウムおよび水の再吸収の増加によって血管系の充満状態を再調整することによって(アルドステロン効果)、体積の重大な損失を相殺する。
【0008】
この制御系は、様々な方法で病理学的に損なわれ得る。例えば、腎血流の慢性的な減少(例えば、心不全およびそれによって引き起こされる静脈系の血液のうっ血の結果として)は、アルドステロンの慢性的な過剰放出につながる。今度は、これに続いて血液量が拡大し、それによって心臓への過剰な量の供給を通して心臓の衰弱が増加する。息切れおよび四肢での浮腫形成を伴う肺の血液のうっ血、ならびに腹水および胸水が結果として生じる可能性があり、腎血流量がさらに低下する。さらに、過剰なアルドステロン効果は、血中および細胞外液中のカリウム濃度の低下をもたらす。以前に損傷を受けた心筋では、臨界最小レベルを下回る偏位があると、致命的な結果を伴う心不整脈が誘発される可能性がある。これは、心不全の患者で頻繁に発生する心臓突然死の主因の1つである可能性がある。
【0009】
さらに、アルドステロンはまた、心不全で典型的に観察されるいくつかの心筋リモデリングプロセスを担うと考えられている。よって、高アルドステロン症は、心不全の病因および予後における重要な構成要素であり、これは、元々、例えば、心筋梗塞、心筋炎症または高血圧などの様々なタイプの損傷によって誘発され得る。この仮定は、MRAの使用を通して慢性心不全および心筋梗塞後の患者群に関する広範な臨床試験で全体的な死亡率が著しく減少したという事実によって裏付けられる[B.Pitt、F.Zannad、W.J.Remmeら、N.Engl.J.Med.341、709~717(1999);B.Pitt、W.Remme、F.Zannadら、N.Engl.J.Med.348、1309~1321(2003)]。とりわけ、心臓突然死の発生率を減少させることよってこれを達成することが可能であった。
【0010】
アルドステロンの効果は、標的細胞で細胞内位置を有するミネラルコルチコイド受容体によって媒介される。現在までに入手可能なMRAは、アルドステロン自体と同様に、基本的なステロイド構造を有する。このようなステロイド性アンタゴニストの有用性は、他のステロイドホルモンの受容体との相互作用によって制限され、女性化乳房およびインポテンスなどのかなりの副作用をもたらし、治療の中止につながる場合がある[M.A.Zaman、S.Oparil、D.A.Calhoun、Nature Rev.Drug Disc.1、621~636(2002)]。
【0011】
ミネラルコルチコイド受容体に対してより選択的である強力な非ステロイド性MRAの使用は、この副作用のプロファイルを回避し、よって明確な治療上の利点を達成する可能性を提供する。さらに、利用可能なステロイド性MRAと比較して、非ステロイド性構造は、薬理学的な下流効果に対して少なくとも2つの重要な結果を有する:
【0012】
1.)ステロイド性MRAスピロノラクトンおよびエプレレノンとは対照的に、非ステロイド性MRAフィネレノンは、「かさ高い」アンタゴニストである(Barfackerら2012)。「かさ高い」非ステロイド性MRAの結合は、おそらくMRのC末端活性化機能2ドメインでヘリックス12の突出を引き起こし、結果として、ステロイド性MRAと比較して転写補因子の異なる動員を引き起こす(AmazitらJ Biol Chem.2015;290(36):21876-89、GruneらJ Cardiovasc Pharmacol.2016;67(5):402-11;GruneらHypertension.2018;71(4):599~608)。次いで、この特異的な補因子動員が、ステロイド性MRAと比較して異なる遺伝子発現プロファイルをもたらし得る(GruneらJ Cardiovasc Pharmacol.2016;67(5):402-11;GruneらHypertension.2018;71(4):599~608)。
【0013】
2.)非ステロイド性化学構造は、MR内の結合様式に影響を及ぼすだけでなく、特に、血漿タンパク質の結合、輸送、組織浸透および分布に強い影響を及ぼす親油性および極性などの物理化学的特性を決定する。一例として、ステロイド性MRAは、非ステロイド性MRAフィネレノンよりも6~10倍親油性が高いのに対し、後者はステロイド性MRAよりも高い極性を示す(KolkhofらCurr Opin Nephrol Hypertens.2015;24(5):417-24)。[14C]標識フィネレノンを用いた定量的全身オートラジオグラフィーは、ラットの心臓および腎臓組織へのフィネレノンの釣り合いの取れた分布を実証し、これは、げっ歯類におけるスピロノラクトンおよびエプレレノンのそれぞれの分布パターンとは明らかに対照的である(KolkhofらJ Cardiovasc Pharmacol.2014;64(1):69~78)。まとめると、構造的に異なるMRAは、異なる薬理学をもたらすことができる。
【0014】
ジストロフィン欠損マウスを使用した前臨床試験は、4~20週齢でステロイド性MRAスピロノラクトンに加えて投与されたアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤リシノプリルが、進行中の骨格筋損傷の予防および呼吸筋と四肢筋の両方での有意に改善された筋力生成に有効であることを示した(Rafael-FortneyらCirculation.2011;124(5):582~588;Loweら、J Neuromuscul Dis.2016;3(3):395~404)。さらに、DMDの少年での無作為化二重盲検プラセボ対照試験は、ステロイド性MRAエプレレノンをバックグラウンドACE阻害剤またはアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)療法に加えると、12ヶ月で左室周方向ストレイン(収縮不全の尺度)によって決定される左室収縮機能の進行的な低下を減弱することを実証した[Ramanら、Lancet Neurology 2015年2月;14(2):153-61]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第2015/106268号パンフレット
【文献】国際公開第2014/190250号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【文献】EvgenovらNat Rev Drug Discov.2006年9月;5(9):755-68
【文献】Schmidt HHらHandbook of Experimental Pharmacology 2009(191)
【文献】Stasch JPら、Nature 2001、410:212~215
【文献】Stasch JPおよびHobbs AJ.Handb.Exp.Pharmacol.2009、191、277~308
【文献】Evgenov OV、Pacher P、Schmidt PM、Hasko G、Schmidt HH、Stasch JP.Nat Rev Drug Discov.2006年9月;5(9):755-68
【文献】J.P.Staschら、Br.J.Pharmacol.136(2002)、773
【文献】J.P.Staschら、J.Clin.Invest.116(2006)、2552
【文献】Thomas GDら、PLoS One.2012;7(11):e49350
【文献】Ramachandran Jら、Biochem J.2013年1月1日;449(1):133-42
【文献】Thomas GDら、Front Physiol.2013年12月18日;4:381
【文献】Adamo CMらProc Natl Acad Sci. 2010年11月2日;107(44):19079-83
【文献】Percival JMら、J Pathol.2012年9月;228(1):77-87
【文献】Nelson MDらNeurology.2014年6月10日;82(23):2085-91
【文献】Martin EAら、Sci Transl Med.2012年11月28日;4(162):162ra155
【文献】Leung DGら、Ann Neurol.2014年10月;76(4):541-9
【文献】Victor RGら、Neurology.2017年10月24日;89(17):1811~1820
【文献】R.E.Booth、J.P.Johnson、J.D.Stockand、Adv.Physiol.Educ.26(1)、8~20(2002)
【文献】B.Pitt、F.Zannad、W.J.Remmeら、N.Engl.J.Med.341、709~717(1999)
【文献】B.Pitt、W.Remme、F.Zannadら、N.Engl.J.Med.348、1309~1321(2003)
【文献】M.A.Zaman、S.Oparil、D.A.Calhoun、Nature Rev.Drug Disc.1、621~636(2002)
【文献】AmazitらJ Biol Chem.2015;290(36):21876-89
【文献】GruneらJ Cardiovasc Pharmacol.2016;67(5):402-11
【文献】GruneらHypertension.2018;71(4):599~608
【文献】KolkhofらCurr Opin Nephrol Hypertens.2015;24(5):417-24
【文献】KolkhofらJ Cardiovasc Pharmacol.2014;64(1):69~78
【文献】Rafael-FortneyらCirculation.2011;124(5):582~588
【文献】Loweら、J Neuromuscul Dis.2016;3(3):395~404
【文献】Ramanら、Lancet Neurology 2015年2月;14(2):153-61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための適切な化合物および化合物の組み合わせを提供することが本発明の目的である。さらに、小児DMD患者への潜在的な投薬負担を軽減するために、ACE阻害剤またはARBとスピロノラクトンまたはエプレレノン(ステロイド性MRA)などの2つの投薬を単一化合物に置き換えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
非ステロイド性MRA単剤療法は、ACE阻害剤とステロイド性MRAスピロノラクトンの併用療法で以前に観察されたのと同様の構造的および機能的改善を提供し、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に、好ましくはDMDと診断された小児集団の治療および/または予防に使用することができることが分かった。DMDと診断された小児集団の進行の遅延に特に好ましい。sGC刺激剤および/またはsGC活性化因子と組み合わせた非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストは、それだけに限らないが、例えば心臓、横紋筋および平滑筋の筋肉機能の改善など、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防のために相乗的に作用することが分かった。
【0019】
本発明によると、フィネレノン単剤療法の結果は、投薬の負担を単一化合物に減らすことができるので、特に小児DMD患者のためのフィネレノンの使用を支持する。
【0020】
定義
「筋疾患または神経筋疾患」という用語は、筋肉および/またはそれらの直接的な神経系制御に影響を及ぼす医学的状態を指す。これらは後天的であっても遺伝的起源のものであってもよい。特に、筋疾患または神経筋疾患は、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、先天性筋ジストロフィー、三好型ミオパチー、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー、重症筋無力症、ランバート-イートン筋無力症候群およびシャルコー・マリー・トゥース病によって特徴付けられる。
【0021】
ほとんどの形態の筋疾患または神経筋疾患の典型的な症状には、進行性の筋肉消耗、平衡障害、眼瞼下垂、萎縮、脊柱側弯症(脊椎および背中の湾曲)、歩行不能、頻繁な転倒、動揺性歩行、腓腹変形、運動範囲の制限、呼吸困難、関節拘縮、心筋症、不整脈および筋痙攣が含まれる。
【0022】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の主な症状は、最初に影響を受ける随意筋、特に腰、骨盤領域、大腿、肩および腓腹筋での筋消耗に関連する筋衰弱である。筋衰弱は、腕、首およびその他の領域でも発生するが、下半身ほど早くは発生しない。腓腹はしばしば肥大する。症状は通常6歳より前に現れ、乳児期に現れることもある。上半身の筋肉(例えば、肋間筋および横隔膜)の問題は、一般的に呼吸困難として現れる。DMDの他の身体的症状には、それだけに限らないが、歩行、足踏みまたはランニングのぎこちない方法(腓腹緊張が高まるため、患者は前肢で歩く傾向がある;つま先歩きは膝伸筋衰弱に対する代償的な適応である);頻繁な転倒;疲労;運動技能の困難(例えば、ランニング、ホッピングおよび跳躍);姿勢全体および歩行、足踏みまたはランニングの方法に影響を及ぼす股関節屈筋の短縮をもたらす腰椎前彎の増加;アキレス腱およびハムストリングスの筋拘縮;筋線維が短くなり、結合組織で線維症が発生するための、機能障害;進行性の歩行困難;筋線維変形;舌および腓腹筋の偽肥大または肥大(腓腹肥大は通常、5~15歳の間で起こり、脚の使用が少なくなるにつれて、筋肉組織が最終的に脂肪および結合組織に置き換わる、したがって、偽肥大という用語が使用される);床から起き上がるためのガワー手技の使用;脳内のジストロフィンの欠如または機能不全の結果であると考えられている神経行動障害(例えば、ADHD)、学習障害(失読症)、および特定の認知スキル(特に短期の言語記憶)の非進行性衰弱の高いリスク;歩行能力の最終的な喪失(通常、12歳までに);骨格変形(脊柱側弯症を含む);ならびに心筋症が含まれる。
【0023】
本発明の意味の範囲内で、「防止」、「予防」および「妨害」という用語は本発明の文脈において同義的に使用され、疾患、状態、障害、傷害または健康問題に、あるいはこのような状態および/またはこのような状態の症状の発達または進行に罹患する、を経験する、を患うまたはこれらを有するリスクの回避または減少を指す。
【0024】
本発明の意味の範囲内で、障害または疾患に関する「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、障害または疾患の原因および/または効果または症状を軽減することまたは抑止することを指す。本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」および「治療すること」という用語は、1つまたは複数の治療法(例えば、単独でのまたは少なくとも1つのsGC刺激剤と組み合わせた、少なくとも1つの非ステロイド性MRAまたはその薬学的に許容される塩)の投与の結果としての、筋疾患および/または神経筋疾患(例えば、筋ジストロフィー)の進行、重症度および/または持続時間の減少または改善または減速、あるいは状態の1つまたは複数の症状(好ましくは、1つまたは複数の測定可能な症状)の進行、重症度および/または持続時間の減少、改善または減速を指す。いくつかの実施形態では、「治療する」、「治療」および「治療すること」という用語が、症状もしくは一連の症状の発症を遅延させること、または一定の身体機能(例えば、筋肉機能、歩行)の喪失の発症を遅延させることを指す。いくつかの実施形態では、「治療する」、「治療」および「治療すること」という用語が、筋疾患および/または神経筋疾患(例えば、筋ジストロフィー)の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。他の実施形態では、「治療する」、「治療」および「治療すること」という用語が、例えば、測定可能な症状(例えば、疲労)の安定化による、物理的な、または例えば、測定可能なパラメータ(例えば、骨格トロポニンIレベル)の安定化による、生理学的な、またはその両方による、前記状態の進行の減少、阻害または減速を指す。本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療する」または「治療」という用語はまた、疾患または障害または疾患もしくは障害が完全に表れる前に疾患もしくは障害の結果として発症する症状の1つの原因および/または効果を避けることを指す。疾患、状態、障害、傷害または健康問題の治療または予防は、部分的であっても完全であってもよい。
【0025】
本発明の意味の範囲内で、「sGC活性化因子」という用語は、ヘム欠失型アポsGCを活性化することができる分子を指す。これらは、NO非依存性およびヘム非依存性のsGC活性化因子として定義される。これらの物質の共通の特徴は、NOと組み合わせて、酵素活性化に対する相加効果しか有さないこと、および酸化型またはヘム欠失型酵素の活性化がヘム含有酵素の活性化よりも著しく高いことである(Evgenovら2006;Stasch JPら2002;Stasch JPら2006)。
【0026】
本発明の意味の範囲内で、「非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト」という用語は、ステロイド性、より具体的にはステランまたは部分的不飽和ステランの化学構造に基づかない合成の小分子ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストを指す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための非ステロイド性MRアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩である。
【0028】
さらなる実施形態によると、本発明は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための非ステロイド性MRアンタゴニストであって、
・(4S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミド、
・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチル-N-(4-(メチルスルホニル)フェニル)-5-(2-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド、
・N-(4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-7-イル)メタンスルホンアミド、
・(3S,3aR)-2-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-3-シクロペンチル-3,3a,4,5-テトラヒドロ-2H-ベンゾ[g]インダゾール-7-カルボン酸、
・(R)-6-(1-(4-シアノ-3-メチルフェニル)-5-シクロペンチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-3-イル)-2-メトキシニコチン酸、
・KBP-5074、
・2-クロロ-4-[(3S,3aR)-3-シクロペンチル-7-(4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボニル)-3,3a,4,5-テトラヒドロ-2H-ピラゾロ[3,4-f]キノリン-2-イル]ベンゾニトリル、
・(S)-N-{3-[1-シクロプロピル-1-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-エチル]-1H-インドール-7-イル}-メタンスルホンアミド、
・SM-368229、
・LY2623091
・LY3045697、
・MT-3995、
・CS-3150および
・AZD9977
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される非ステロイド性MRアンタゴニストを提供する。
【0029】
別の好ましい実施形態では、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための非ステロイド性MRアンタゴニストが、式(I)によるフィネレノン(Finerenone)、(S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミド)
【化1】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0030】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療に使用するための、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩と少なくとも1つのさらなる追加の治療薬である。
【0031】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療に使用するための、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つのさらなる追加の治療薬とを含む医薬組成物である。
【0032】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、少なくとも1つのsGC刺激剤と組み合わせた、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩である。
【0033】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、少なくとも1つのsGC活性化因子と組み合わせた、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩である。
【0034】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、少なくとも1つのsGC刺激剤と組み合わせて、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物である。
【0035】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、少なくとも1つのsGC活性化因子と組み合わせて、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物である。
【0036】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、少なくとも1つのsGC刺激剤と組み合わせて、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストを含む医薬組成物であって、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストが、式(I)による(S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミド
【化2】
、
またはその薬学的に許容される塩であり、少なくとも1つのsGC刺激剤が、
・2-[1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]-5-(4-モルホリニル)-4,6-ピリミジンジアミン、
・2-[1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]-5-(4-ピリジニル)-4-ピリミジンアミン、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(ベリシグアト、式(III)の化合物、国際公開第2011/147809号パンフレット、実施例1から知られている)、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}メチルカルバメート、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}(2,2,2-トリフルオロエチル)カルバメート、
・4-アミノ-2-[5-クロロ-3(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-インダゾール-1-イル]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-2[5-クロロ-3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)-1H-インダゾール-1-イル]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-5,5-ジメチル-2-[3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)1H-チエノ[3,4-c]ピラゾール-1-イル]-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-5,5-ジメチル-2-[3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)-1H-チエノ[2,3-d]ピラゾール-1-イル]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-5,5-ジメチル-2-[7-(2,3,6-トリフルオロベンジル)イミダゾ[1,5-b]ピリダジン-5-イル]-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-2-[6-クロロ-3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)イミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル]]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-2-[6-フルオロ-3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)イミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル]]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-2-[6-フルオロ-3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)6-フルオロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-5,5-ジメチル-2-[3-(2,4,6-トリフルオロベンジル)イミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル]]-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-2-[3-(2-シクロペンチルエチル)イミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・3-(4-アミノ-5-シクロプロピルピリミジン-2-イル)-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン(BAY 41-2272、式(II)の化合物)、
【化3】
、
・2-{5-フルオロ-1-[(3-フルオロピリジン-2-イル)メチル]-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル}-5-メチル-5-(トリフルオロメチル)-4-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノ]-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・ent-N-[(2S)-アミノ-2-メチルブチル]-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーA、式(IV)の化合物)、国際公開第2014/068099号パンフレット、実施例200から知られている)、
・ent-N-(2-アミノ-2-メチルブチル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーB)、
・ent-N-(2-アミノ-5,5,5-トリフルオロ-2-メチルペンチル)-2,6-ジメチル-8-[(2,3,6-トリフルオロベンジル)オキシ]イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーB)、
・ent-N-(2-アミノ-5,5,5-トリフルオロ-2-メチルペンチル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーB)、
・ent-N-(2-アミノ-5,5,5-トリフルオロ-2-メチルペンチル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーA)、
・ent-N-(2-アミノ-3-フルオロ-2-メチルプロピル)-2,6-ジメチル-8-[(2,3,6-トリフルオロベンジル)オキシ]イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーB)、
・ent-N-(2-アミノ-3-フルオロ-2-メチルプロピル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーB)、
・ent-N-(2-アミノ-3-フルオロ-2-メチルプロピル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーA)、
・rac-N-(2-アミノ-3-フルオロ-2-メチルプロピル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミドホルメート、
・ent-N-(2-アミノ-3-フルオロ-2-メチルプロピル)-2,6-ジメチル-8-[(2,3,6-トリフルオロベンジル)オキシ]イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーA)、
・ent-N-(2-アミノ-3-フルオロ-2-メチルプロピル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-6-(ジフルオロメチル)-2-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーB)、
・ent-N-(2-アミノ-3-フルオロ-2-メチルプロピル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-6-(ジフルオロメチル)-2-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーA)、
・ent-N-(2-アミノ-3-フルオロ-2-メチルプロピル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-6-(フルオロメチル)-2-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド、
・1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-[({5-フルオロ-2-[1-(2-フルオロベンジル)-5-(1,2-オキサゾール-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]-4-ピリミジニル}アミノ)メチル]-2-プロパノール(プラリシグアト)、
・5-フルオロ-2-[1-(2-フルオロベンジル)-5-(1,2-オキサゾール-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]ピリミジン-4-オール(IWP-051)、
・IWP-121、IWP-427、IWP-953、IW-1701およびIW-6463、
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される、医薬組成物である。
【0037】
本発明のさらなる実施形態によると、本発明により使用するためのsGC刺激剤が、
・2-[1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]-5-(4-モルホリニル)-4,6-ピリミジンジアミン、
・2-[1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]-5-(4-ピリジニル)-4-ピリミジンアミン
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(ベリシグアト、式(III)の化合物)、
・ent-N-[(2S)-アミノ-2-メチルブチル]-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーA、式(IV)の化合物)、
・ent-N-(2-アミノ-2-メチルブチル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーB)、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}メチルカルバメート、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}(2,2,2-トリフルオロエチル)カルバメート、
・4-アミノ-2-[5-クロロ-3(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-インダゾール-1-イル]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-2[5-クロロ-3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)-1H-インダゾール-1-イル]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-5,5-ジメチル-2-[3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)1H-チエノ[3,4-c]ピラゾール-1-イル]-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-5,5-ジメチル-2-[3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)-1H-チエノ[2,3-d]ピラゾール-1-イル]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-5,5-ジメチル-2-[7-(2,3,6-トリフルオロベンジル)イミダゾ[1,5-b]ピリダジン-5-イル]-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-2-[6-クロロ-3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)イミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル]]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-2-[6-フルオロ-3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)イミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル]]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-2-[6-フルオロ-3-(2,3,6-トリフルオロベンジル)6-フルオロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-5,5-ジメチル-2-[3-(2,4,6-トリフルオロベンジル)イミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル]]-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・4-アミノ-2-[3-(2-シクロペンチルエチル)イミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル]-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン、
・3-(4-アミノ-5-シクロプロピルピリミジン-2-イル)-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン、
・2-{5-フルオロ-1-[(3-フルオロピリジン-2-イル)メチル]-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル}-5-メチル-5-(トリフルオロメチル)-4-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノ]-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オンおよび
・1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-[({5-フルオロ-2-[1-(2-フルオロベンジル)-5-(1,2-オキサゾール-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]-4-ピリミジニル}アミノ)メチル]-2-プロパノール(プラリシグアト)、
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される。
【0038】
本発明のさらなる実施形態によると、本発明により使用するためのsGC刺激剤が、
・2-[1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]-5-(4-モルホリニル)-4,6-ピリミジンジアミン、
・2-[1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]-5-(4-ピリジニル)-4-ピリミジンアミン
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(ベリシグアト、式(III)の化合物)、
・ent-N-[(2S)-アミノ-2-メチルブチル]-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーA、式(IV)の化合物)、
・ent-N-(2-アミノ-2-メチルブチル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーB)、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}メチルカルバメート、
・3-(4-アミノ-5-シクロプロピルピリミジン-2-イル)-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン、
・2-{5-フルオロ-1-[(3-フルオロピリジン-2-イル)メチル]-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル}-5-メチル-5-(トリフルオロメチル)-4-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノ]-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オンおよび
・1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-[({5-フルオロ-2-[1-(2-フルオロベンジル)-5-(1,2-オキサゾール-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]-4-ピリミジニル}アミノ)メチル]-2-プロパノール(プラリシグアト)、
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される。
【0039】
本発明のさらなる実施形態によると、本発明により使用するためのsGC刺激剤が、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(ベリシグアト、式(III)の化合物)、
・ent-N-[(2S)-アミノ-2-メチルブチル]-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーA、式(IV)の化合物)、
・ent-N-(2-アミノ-2-メチルブチル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーB)、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}メチルカルバメート、
・2-{5-フルオロ-1-[(3-フルオロピリジン-2-イル)メチル]-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル}-5-メチル-5-(トリフルオロメチル)-4-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノ]-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オンおよび
・1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-[({5-フルオロ-2-[1-(2-フルオロベンジル)-5-(1,2-オキサゾール-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]-4-ピリミジニル}アミノ)メチル]-2-プロパノール(プラリシグアト)、
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される。
【0040】
本発明のさらなる実施形態によると、本発明により使用するためのsGC刺激剤が、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(ベリシグアト、式(III)の化合物)、
・ent-N-[(2S)-アミノ-2-メチルブチル]-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーA、式(IV)の化合物)、
・ent-N-(2-アミノ-2-メチルブチル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーB)、
・1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-[({5-フルオロ-2-[1-(2-フルオロベンジル)-5-(1,2-オキサゾール-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]-4-ピリミジニル}アミノ)メチル]-2-プロパノール(プラリシグアト)および
・3-(4-アミノ-5-シクロプロピルピリミジン-2-イル)-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン(BAY 41-2272、式(II)の化合物)
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される。
【0041】
本発明のさらなる実施形態によると、本発明により使用するためのsGC刺激剤が、
・メチル4,6-ジアミノ-2-[1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]-5-ピリミジニル(メチル)カルバメート(リオシグアト)、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(ベリシグアト)、
・3-(4-アミノ-5-シクロプロピルピリミジン-2-イル)-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン(BAY 41-2272)および
・1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-[({5-フルオロ-2-[1-(2-フルオロベンジル)-5-(1,2-オキサゾール-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]-4-ピリミジニル}アミノ)メチル]-2-プロパノール(プラリシグアト)
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される。
【0042】
本発明のさらなる実施形態によると、本発明により使用するためのsGC刺激剤が、3-(4-アミノ-5-シクロプロピルピリミジン-2-イル)-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン(BAY 41-2272)またはその薬学的に許容される塩である。
【0043】
本発明のさらなる実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための
・(4S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミド、
・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチル-N-(4-(メチルスルホニル)フェニル)-5-(2-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド、
・N-(4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-7-イル)メタンスルホンアミド、
・(3S,3aR)-2-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-3-シクロペンチル-3,3a,4,5-テトラヒドロ-2H-ベンゾ[g]インダゾール-7-カルボン酸、
・(R)-6-(1-(4-シアノ-3-メチルフェニル)-5-シクロペンチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-3-イル)-2-メトキシニコチン酸、
・KBP-5074、
・2-クロロ-4-[(3S,3aR)-3-シクロペンチル-7-(4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボニル)-3,3a,4,5-テトラヒドロ-2H-ピラゾロ[3,4-f]キノリン-2-イル]ベンゾニトリル、
・(S)-N-{3-[1-シクロプロピル-1-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-エチル]-1H-インドール-7-イル}-メタンスルホンアミド、
・SM-368229、
・LY2623091
・LY3045697、
・MT-3995、
・CS-3150および
・AZD9977
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される少なくとも1つの非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストと組み合わせた、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(ベリシグアト、式(III)の化合物)、
・ent-N-[(2S)-アミノ-2-メチルブチル]-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーA、式(IV)の化合物)、
・ent-N-(2-アミノ-2-メチルブチル)-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーB)、
・1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-[({5-フルオロ-2-[1-(2-フルオロベンジル)-5-(1,2-オキサゾール-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]-4-ピリミジニル}アミノ)メチル]-2-プロパノール(プラリシグアト)および
・3-(4-アミノ-5-シクロプロピルピリミジン-2-イル)-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン(BAY 41-2272、式(II)の化合物)
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される少なくとも1つのsGC刺激剤である。
【0044】
本発明のさらなる実施形態によると、本発明により使用するためのsGC刺激剤が、
・メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(ベリシグアト、式(III)の化合物)
【化4】
、
またはその薬学的に許容される塩
である。
【0045】
本発明のさらなる実施形態によると、本発明により使用するためのsGC刺激剤が、
・ent-N-[(2S)-アミノ-2-メチルブチル]-8-[(2,6-ジフルオロベンジル)オキシ]-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボキサミド(エナンチオマーA)(式(IV)の化合物)
【化5】
、
またはその薬学的に許容される塩
である。
【0046】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、少なくとも1つのsGC活性化因子と組み合わせた、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストである。
【0047】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、少なくとも1つのsGC活性化因子と組み合わせて、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストを含む医薬組成物である。
【0048】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、少なくとも1つのsGC活性化因子と組み合わせて、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストを含む医薬組成物であって、少なくとも1つの非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストが、式(I)による(S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミド
【化6】
またはその薬学的に許容される塩であり、少なくとも1つのsGC活性化因子が、
・4-({(4-カルボキシブチル)[2-(2-{[4-(2-フェニルエチル)ベンジル]オキシ}フェニル)エチル]アミノ}メチル)安息香酸;(INN:シナシグアト)、
・ナトリウム塩としての5-クロロ-2-(5-クロロチオフェン-2-スルホニルアミノ-N-(4-(モルホリン-4-スルホニル)フェニル)ベンズアミド、
・2-(4-クロロフェニルスルホニルアミノ)-4,5-ジメトキシ-N-(4-(チオモルホリン-4-スルホニル)フェニル)ベンズアミド、
・1-{6-[5-クロロ-2-({4-トランス-4-}トリフルオロメチル)シクロヘキシル]ベンジル}オキシ)フェニル]ピリジン-2-イル}-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸、
・1-[6-(2-(2-メチル-4-(4-トリフルオロメトキシフェニル)ベンジルオキシ)フェニル)ピリジン-2-イル]-5-トリフルオロメチルピラゾール-4-カルボン酸、
・1[6-(3,4-ジクロロフェニル)-2-ピリジニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
・1-({2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]-5-メチル-1,3-チアゾール-4-イル}メチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸、
・4-({2-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,3-チアゾール-4-イル}メチル)安息香酸
・1-({2-[2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5-メチル-1,3-チアゾール-4-イル}メチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸、
・3-(4-クロロ-3-{[(2S,3R)-2-(4-クロロフェニル)-4,4,4-トリフルオロ-3-メチルブタノイル]アミノ}フェニル)-3-シクロプロピルプロパン酸、
・5-{[2-(4-カルボキシフェニル)エチル][2-(2-{[3-クロロ-4’-(トリフルオロメチル)ビフェニル-4-イル]メトキシ}フェニル)エチル]アミノ}-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-2-カルボン酸、
・5-{(4-カルボキシブチル)[2-(2-{[3-クロロ-4’-(トリフルオロメチル)ビフェニル-4-イル]メトキシ}フェニル)エチル]アミノ}-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-2-カルボン酸、
・(1R,5S)-3-[4-(5-メチル-2-{[2-メチル-4-(ピペリジン-1-イルカルボニル)ベンジル]オキシ}フェニル)-1,3-チアゾール-2-イル]-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸、
・1-[6-(5-メチル-2-{[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル]メトキシ}フェニル)ピリジン-2-イル]-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸、
・BI-703704および
・BI-684067
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される医薬組成物である。
【0049】
本発明のさらなる実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、少なくとも1つのsGC活性化因子と組み合わせて、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストを含む医薬組成物であって、少なくとも1つの非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストが、式(I)による(S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミド
【化7】
またはその薬学的に許容される塩であり、少なくとも1つのsGC活性化因子が、
・3-(4-クロロ-3-{[(2S,3R)-2-(4-クロロフェニル)-4,4,4-トリフルオロ-3-メチルブタノイル]アミノ}フェニル)-3-シクロプロピルプロパン酸、
・5-{[2-(4-カルボキシフェニル)エチル][2-(2-{[3-クロロ-4’-(トリフルオロメチル)ビフェニル-4-イル]メトキシ}フェニル)エチル]アミノ}-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-2-カルボン酸、
・5-{(4-カルボキシブチル)[2-(2-{[3-クロロ-4’-(トリフルオロメチル)ビフェニル-4-イル]メトキシ}フェニル)エチル]アミノ}-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-2-カルボン酸、
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される医薬組成物である。
【0050】
本発明のさらなる実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、
・(4S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミド、
・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチル-N-(4-(メチルスルホニル)フェニル)-5-(2-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド、
・N-(4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-7-イル)メタンスルホンアミド、
・(3S,3aR)-2-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-3-シクロペンチル-3,3a,4,5-テトラヒドロ-2H-ベンゾ[g]インダゾール-7-カルボン酸、
・(R)-6-(1-(4-シアノ-3-メチルフェニル)-5-シクロペンチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-3-イル)-2-メトキシニコチン酸、
・KBP-5074、
・2-クロロ-4-[(3S,3aR)-3-シクロペンチル-7-(4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボニル)-3,3a,4,5-テトラヒドロ-2H-ピラゾロ[3,4-f]キノリン-2-イル]ベンゾニトリル、
・(S)-N-{3-[1-シクロプロピル-1-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-エチル]-1H-インドール-7-イル}-メタンスルホンアミド、
・SM-368229、
・LY2623091
・LY3045697、
・MT-3995、
・CS-3150および
・AZD9977
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストと組み合わせて、
・3-(4-クロロ-3-{[(2S,3R)-2-(4-クロロフェニル)-4,4,4-トリフルオロ-3-メチルブタノイル]アミノ}フェニル)-3-シクロプロピルプロパン酸、
・5-{[2-(4-カルボキシフェニル)エチル][2-(2-{[3-クロロ-4’-(トリフルオロメチル)ビフェニル-4-イル]メトキシ}フェニル)エチル]アミノ}-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-2-カルボン酸および
・5-{(4-カルボキシブチル)[2-(2-{[3-クロロ-4’-(トリフルオロメチル)ビフェニル-4-イル]メトキシ}フェニル)エチル]アミノ}-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-2-カルボン酸
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される少なくとも1つのsGC活性化因子を含む医薬組成物である。
【0051】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストと組み合わせて、少なくとも1つのsGC活性化因子を含む医薬組成物であって、少なくとも1つのsGC活性化因子が、3-(4-クロロ-3-{[(2S,3R)-2-(4-クロロフェニル)-4,4,4-トリフルオロ-3-メチルブタノイル]アミノ}フェニル)-3-シクロプロピルプロパン酸またはその薬学的に許容される塩であり、少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストが、式(I)による(S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩である医薬組成物である。
【0052】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、1つまたは複数の不活性で非毒性の薬学的に適切な助剤と組み合わせて、非ステロイド性MRアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬品である。
【0053】
本発明の一実施形態は、筋疾患または神経筋疾患の治療および/または予防に使用するための、1つまたは複数の不活性で非毒性の薬学的に適切な助剤と組み合わせて、本発明による医薬組成物を含む医薬品である。
【0054】
本発明の一実施形態は、有効量の少なくとも1つの非ステロイド性MRアンタゴニストもしくはその薬学的に許容される塩、または1つもしくは複数の不活性で非毒性の薬学的に適切な助剤と組み合わせて、非ステロイド性MRアンタゴニストもしくはその薬学的に許容される塩を含む医薬品を投与することによって、ヒトおよび動物の筋疾患または神経筋疾患を治療および/または予防する方法である。
【0055】
本発明の一実施形態は、有効量の非ステロイド性MRアンタゴニストもしくはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つのさらなる追加の治療薬とを含む医薬組成物、または1つもしくは複数の不活性で非毒性の薬学的に適切な助剤と組み合わせて、医薬組成物を含む医薬品を投与することによって、ヒトおよび動物の筋疾患または神経筋疾患を治療および/または予防する方法である。
【0056】
前記実施形態の意味の範囲内で、少なくとも1つのさらなる追加の治療薬は、好ましくは、上に定義されるsGC刺激剤またはsGC活性化因子である。
【0057】
前記実施形態の意味の範囲内で、「筋疾患または神経筋疾患」という用語は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、先天性筋ジストロフィー、三好型ミオパチー、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー、重症筋無力症、ランバート-イートン筋無力症候群およびシャルコー・マリー・トゥース病からなる医学的状態の群を指す。
【0058】
前記実施形態の意味の範囲内で、「筋疾患または神経筋疾患」という用語は、好ましくは筋ジストロフィー、特に好ましくはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。
【0059】
本発明者らは、筋疾患または神経筋疾患を治療および/または予防するための非ステロイド性MRAを識別した。
【0060】
本発明者らは、筋疾患または神経筋疾患を治療および/または予防するための、式(I)による(S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩を識別した。驚くべきことに、単剤療法としての式(I)による(S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩は、握力、基底心筋ストレインレート(myocardial strain rate)、および長指伸筋の収縮を延長した後の改善された力の測定に関して、ステロイド性MRアンタゴニスト、スピロノラクトンとACE阻害剤、リシノプリルの組み合わせと同じくらい有効である。
【0061】
本発明者らはさらに、sGC刺激剤または非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト単独と比較して相乗的有効性を有する、筋疾患または神経筋疾患を治療および/または予防するためのsGC刺激剤と組み合わせた非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストの組み合わせを識別した。相乗効果は、線維性組織の形成、遺伝子発現、心臓および筋肉の損傷、筋肉機能、心臓および心血管機能、筋力ならびに/あるいは身体能力に関して見出すことができる。
【0062】
本発明者らはさらに、sGC活性化因子または非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト単独と比較して相乗的有効性を有する、筋疾患または神経筋疾患を治療および/または予防するためのsGC活性化因子と組み合わせた非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストの組み合わせを識別した。相乗効果は、線維性組織の形成、遺伝子発現、心臓および筋肉の損傷、筋肉機能、心臓および心血管機能、筋力ならびに/あるいは身体能力に関して見出すことができる。
【0063】
sGC刺激剤と非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストの組み合わせでは、化合物の投与量が、sGC刺激剤およびミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト単独と比較して驚くほど低い。
【0064】
sGC活性化因子と非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストの組み合わせでは、化合物の投与量が、sGC活性化因子およびミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト単独と比較して驚くほど低い。
【0065】
本発明はさらに、典型的には1つまたは複数の不活性で非毒性の薬学的に適切な助剤と共に少なくとも1つの本発明による化合物または化合物による組み合わせを含む医薬品、および上記目的のためのその使用を提供する。
【0066】
本発明による化合物、組み合わせ、医薬組成物および医薬品は、全身的および/または局所的に作用し得る。この目的のために、これらを適当な様式で、例えば、経口、非経口、肺、経鼻、舌下、舌、頬側、直腸、真皮、経皮、結膜、耳経路により、またはインプラントもしくはステントとして投与することができる。
【0067】
本発明による化合物、組み合わせ、医薬組成物および医薬品をこれらの投与経路に適した投与形態で投与することができる。
【0068】
経口投与に適した投与形態は、先行技術により作用し、本発明による化合物、組み合わせ、医薬組成物および医薬品を速効性のおよび/または修正された様式で放出し、本発明による化合物を結晶および/または非晶質および/または溶解形態で含むもの、例えば、錠剤(非コーティングあるいは例えば、本発明による化合物の放出を制御する、胃液抵抗性または遅延溶解または不溶性コーティングによるコーティング錠)、口腔で急速に崩壊する錠剤またはフィルム/ウエハー、フィルム/凍結乾燥物、またはカプセル剤(例えば、硬質または軟質ゼラチンカプセル)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、散剤、乳剤、懸濁剤、エアゾール剤または液剤である。
【0069】
非経口投与は、吸収ステップを迂回することができる(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内)または吸収を含むことができる(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)。非経口投与に適した投与形態には、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥物または滅菌散剤の形態の注射および注入用製剤が含まれる。
【0070】
他の投与経路については、適当な例に、吸入医薬形態(粉末吸入器、ネブライザーを含む)、点鼻薬、液またはスプレー、舌、舌下または頬側投与のための錠剤、フィルム/ウエハーまたはカプセル剤、坐剤、耳または眼製剤、膣カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチ)、ミルク、ペースト、フォーム、粉剤、インプラントまたはステントがある。
【0071】
経口または非経口投与、特に経口および静脈内投与が好ましい。
【0072】
本発明による化合物、組み合わせ、医薬組成物および医薬品は、言及する投与形態に変換することができる。これは、不活性で非毒性の薬学的に適切な賦形剤と混合することによって、それ自体は既知の様式で行うことができる。これらの賦形剤には、担体(例えば、微結晶セルロース、乳糖、マンニトール)、溶媒(例えば、液体ポリプロピレングリコール)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えば、アルブミン)、安定剤(例えば、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸)、染料(例えば、無機顔料、例えば、酸化鉄)ならびに香味および/または臭気修正剤が含まれる。
【0073】
一般に、非経口投与の場合、有効な結果を達成するために、約0.001~1mg/kg、好ましくは約0.01~0.5mg/kg体重の量を投与することが有利であることが分かった。経口投与の場合、投与量は約0.01~100mg/kg、好ましくは約0.01~20mg/kg、最も好ましくは0.1~10mg/kg体重である。
【0074】
小児集団におけるフィネレノン投与の場合、成人の範囲(およそ70~80kg)の体重を有する子供について1日1回5~40mg、好ましくは10~20mgの用量が好ましい投与量範囲である。
【0075】
体重が少ない(70~80kg未満)子供については、1日1回5~40mg、10~20mgの用量で治療される成人で観察されるのと同様の曝露を達成するために、用量範囲が計算される。(Edginton AN、Schmitt W、Willmann S.Clin Pharmacokinet.2006;45(10):1013-34).
【0076】
それにもかかわらず、該当する場合には、具体的には体重、投与経路、活性化合物に対する個体の反応、製剤の性質および投与が行われる時間または間隔の関数として言及する量から逸脱することが必要となり得る。例えば、いくつかの場合、上記最小量未満で十分となり得る一方、他の場合では、言及する上限を超過しなければならない。比較的多量を投与する場合、これらを1日にわたって数回の個別の用量に分割することが得策であり得る。
【0077】
実験部
略語:
Ecc 伸張性収縮
het. ヘテロ接合型
Hz ヘルツ
ms ミリ秒
n (実験単位の)数
ND 未決定
P/V 圧力/体積
RT/PCR 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
SEM 平均の標準誤差
【0078】
治療有効性の調査:
単剤療法治療としての、あるいはsGC刺激剤および/またはsGC活性化因子と組み合わせた非ステロイド性MRAの効果を調査するために、広範囲のインビトロ、エキソビボおよびインビボ試験を使用した。
【0079】
優先的にマウス、特にトランスジェニックマウス(B6.Cg-Terctm1Rdp Dmdmdx-4Cv/BlauJ;Jackson Laboratories、系統番号:023535;ジストロフィン欠損、ユートロフィンハプロ不全(utrn+/-;mdx))を使用した。これらのいわゆるMDXマウスは、筋ジストロフィー患者の表現型および臨床状況を反映するジストロフィン遺伝子の突然変異を保有している(Saccoら;Cell.2010年12月23日;143(7):1059-71、MourkiotiらNat Cell Biol.2013年8月;15(8):895~904)。
【0080】
読み出しとして、以下を優先的に使用した:
・線維性組織を評価するためのインビトロヒドロキシプロリン測定。組織試料中のコラーゲン含有量を分析するために、ヒドロキシプロリンアッセイを実施した。組織(例えば、心臓および筋肉)を6M HCl中120℃で3時間消化した後、クロラミンT(0.06M)を添加し、試料を混合し、室温で20分間インキュベートした。3.15M過塩素酸および20%p-ジメチルアミノベンズアルデヒドを添加し、試料を60℃でさらに20分間インキュベートした。吸光度を557nmで測定した。
【0081】
・インビトロ半定量的RT/PCR(TaqMan PCR)を使用して遺伝子発現を評価した。マウスを安楽死させ、心臓および筋肉(例えば、EDL=長指伸筋、横隔膜)を回収した。TaqManポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介した逆転写(RT)反応後、全RNAを単離し、遺伝子発現を半定量化した。
【0082】
・心臓および筋肉の損傷を評価するためのインビトロ組織病理学。マウスを安楽死させ、心臓および筋肉(例えば、EDL、横隔膜)を回収した。凍結切片を調製し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色して、全体的な組織病理学を評価した。
【0083】
・筋肉の機能および収縮性を評価するための、分離した筋肉(例えば、EDL、横隔膜)の筋肉収縮のエキソビボ収縮性測定。分離した筋肉を、(単一の4msパルスによって誘発される)単収縮を使用して最適な長さに伸ばした。10分後、強縮を実施した(150Hzで250ms)。さらに5分間の休息期間の後、6回の伸張性収縮(150Hzで450ms、最後の200msの収縮については3%伸張に供する)を行い、最初の5回の刺激の間に2分間の休息時間を設け、5番目の刺激と6番目の刺激との間に15分間の休息時間を設けた。
【0084】
・心臓および心血管機能を評価するためのインビボ非侵襲的心エコー検査およびコンピューター断層撮影。マウスに麻酔し、心エコー装置型Vevo2100を使用して心臓の構造および機能を非侵襲的に評価した。さらに、心機能を、標準的な心電図(ECG)と合わせて、9.4または11.7テスラ30mmボアシステム(Bruker Biospin)で磁気共鳴画像法(MRI)技術を使用して、麻酔したマウスで調査した。心筋ストレインおよびストレインレートを、ベクターベースの追跡ソフトウェア(Vector Velocity Imaging、Siemens)を使用して評価した。
【0085】
・心臓および心血管機能を評価するための、インビボ侵襲性左心室機能および圧力-体積の関係。侵襲的左心室血行動態を、圧力カテーテルおよびP/Vループカテーテルを使用して麻酔したマウスで実施した。
【0086】
・筋機能を評価するための筋力のインビボ評価(ハンギングワイヤー試験、四肢吊り試験、握力試験)。ハンギングワイヤー試験および四肢吊り試験では、意識のあるマウスを格子に自由に吊り下げ、吊り下げ時間を記録し、マウスの体重について補正する。前脚筋力を調査するための握力(GS)測定は、握力計(Columbus Instruments)を使用して意識のあるマウスで実施した。マウスを、前足を金網グリッド上で保持するように訓練し、慎重に後方に引っ張った。この手順を、測定と測定の間に1分間の休憩を入れて最大5回繰り返し、ニュートン(N)単位での最大力を記録した。ニュートンで最も高い握力値(GS)を報告し、これはmg単位の体重(BW)に関連していた。各試験についての全ての握力測定は、試験官固有の変動を回避するために同じ調査者によって行い、[N/mg]単位でGS/BWとして示した(表1)。
【0087】
・身体能力のインビボ評価を評価した。最大走行速度および走行距離を評価するために、ランニングホイール(トレッドミル)を備えた単一のマウスケージでマウスを飼育した。
【0088】
実施例:
【0089】
【0090】
これらの結果は、驚くべきことに、フィネレノン単剤療法による処置が、ステロイド性MRアンタゴニストとACE阻害剤(後者はDMDの標準治療の一部である)の組み合わせによる処置よりも優れていることを示している(Loweら、J Neuromuscul Dis.2016;3(3):395~404、LoweらJ Neuromuscul Dis.2018;5(3):295~306)。
【0091】
治療有効性の調査:
単剤療法治療としての、またはsGC刺激剤および/またはsGC活性化因子と組み合わせた非ステロイド性MRAの効果を調査するために、広範囲のインビトロ、エキソビボおよびインビボ試験を使用した。
【0092】
優先的にマウス、特にトランスジェニックマウス(B6.Cg-Terctm1Rdp Dmdmdx-4Cv/BlauJ;Jackson Laboratories、系統番号:023535)を使用した。これらのいわゆるMDXマウスは、筋ジストロフィー患者の表現型および臨床状況を反映するジストロフィン遺伝子の突然変異を保有している。(Saccoら;Cell.2010年12月23日;143(7):1059-71、MourkiotiらNat Cell Biol.2013年8月;15(8):895~904)。
【0093】
プラセボ固形飼料、または150ppm sGC刺激剤BAY41-2272を補充した固形飼料、または100ppm非ステロイド性MRアンタゴニスト、フィネレノンを補充した固形飼料で16週間処置したWTマウスおよびMDXマウスにおける握力(GS)/体重(BW)比([N/mg])。握力測定:それぞれ連続の間に1分の休止を設けて、5連続の5回引っ張りを実施した。最初の試験の最高値を、安静時マウスから得られる最大の力とみなし、5回目の試験の最高値を、疲労したマウスから得られる最大の力とみなした。これらのデータは、sGC刺激剤BAY 41-2272単独、および非ステロイド性MRアンタゴニスト、フィネレノン単独による処置後の筋力の改善を示している。
【0094】
プラセボ固形飼料、または150ppm sGC刺激剤BAY41-2272を補充した固形飼料、または100ppm非ステロイド性MRアンタゴニスト、フィネレノンを補充した固形飼料で16週間処置したWTマウスおよびMDXマウスにおける、心底から決定される収縮期ストレインレートの心内膜円周ピークの平均(Base_PeakSysSR_Mean(心内膜円周S-1))を測定した。デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、ストレインレート低下が心筋損傷を示す。これらのデータは、sGC刺激剤および非ステロイド性MRアンタゴニストによる処置後の心機能低下の減弱を示している。
【0095】
プラセボ固形飼料、または150ppm sGC刺激剤BAY41-2272を補充した固形飼料、または100ppm非ステロイド性MRアンタゴニスト、フィネレノンを補充した固形飼料で16週間処置したWTマウスおよびMDXマウスにおけるEDL伸張性収縮(Ecc)を測定した。このプロトコルは、5と6を合わせた偏心性収縮を比較することによって、損傷による力の減少および疲労による力の減少を評価する。ジストロフィーで見られる膜損傷による力の減少は、1回目または2回目の伸張性収縮後に発生し始める。これらのデータは、sGC刺激剤および非ステロイド性MRアンタゴニストによる処置後の筋力の改善を示している。