(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】ベニノキ抽出物の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240712BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240712BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240712BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K36/185
A61P17/08
(21)【出願番号】P 2020568669
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 FR2019051350
(87)【国際公開番号】W WO2019239035
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-12
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500226948
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】BASF Beauty Care Solutions France S.A.S.
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean de Dieu, F-69007 Lyon, France
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ベルテレミー,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ダヌー,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】モセル,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】パン,サビーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ペルティエ,ニコラ
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-257058(JP,A)
【文献】米国特許第06043202(US,A)
【文献】特開2017-114892(JP,A)
【文献】特表2005-515174(JP,A)
【文献】Take It Away! Gel Cleanser,ID 2433573,Mintel GNPD[online],2014年6月,[検索日2023.04.19],インターネット<https://www.portal.mintel.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K36/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮脂分泌を予防し及び/若しくは減少させるため
のベニノキ抽出物の美容的使用であって
、
前記ベニノキ抽出物が、水性抽出によって得られる、使用(ただし、ヒトを治療する方法を除く)。
【請求項2】
前記ベニノキ抽出物が種子抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ベニノキ抽出物が、得られる粉末の総重量に対して20重量%~90重量%のマルトデキストリンの濃度の存在下で噴霧乾燥されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記ベニノキ抽出物が、美容的に許容される賦形剤も含む美容組成物の形態であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記美容組成物が、前記皮膚、及び/又は前記毛髪への局所適用が意図されることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記ベニノキ抽出物が、前記組成物の総重量に対して、1×10
-4重量%~10重量%の含有量で前記美容組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記皮膚が正常、油性、非常に油性及び/若しくは混合型、並びに/又は前記毛髪が正常及び/若しくは油性である、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
前記皮膚が白人若しくはアフリカ人若しくはアジア人のものであり、及び/又は前記毛髪が白人、アフリカ人若しくはアジア人のものである、請求項5~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記美容組成物が、セラム、ローション、クリーム、シャンプー、コンディショナー、オイル、ミルク、軟膏、ペースト、フォーム、エマルジョン、ヒドロゲル、シャワーゲル、マスク、ラッカー、スプレー及びワックスからなる群から選択されることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
皮脂分泌を予防し及び/若しくは減少させるた
めに、ベニノキ抽出物を皮膚の少なくとも1つの領域に局所適用することを含
む美容ケア方法であって
、
前記ベニノキ抽出物が、水性抽出によって得られる
ことを特徴とする、美容ケア方法(ただし、ヒトを治療する方法を除く)。
【請求項11】
前記ベニノキ抽出物が、請求項2~4及び6のいずれか一項に記載されていることを特徴とする、請求項10に記載の美容ケア方法。
【請求項12】
前記ベニノキ抽出物が、前記皮脂分泌が心地よくない及び/又は非審美的であり及び/又は不快である身体の少なくとも1つの領域に美容組成物の形態で適用され、この領域又はこれらの領域は、額、頬、鼻、こめかみ、Tゾーン(額、鼻及び顎)、外耳道及び/若しくは顎を含む顔の皮膚、頭皮、首、背中、肩、前腕、胸部、手並びに/又はバストから選択される前記身体の表面であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の美容ケア方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮脂分泌、並びに/又は皮脂分泌に関連した非審美的な、不快な及び/若しくは心地よくない徴候を予防し及び/又は減少させるためのベニノキ(Bixa orellana)抽出物の、特に美容又は医薬組成物、特に皮膚科組成物中での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮脂は、皮膚の皮脂腺によって産生され、脂質、特にトリグリセリド(30~50%)、遊離脂肪酸(15~30%)、ワックスエステル(26~30%)及びスクアレン(12~20%)の複合混合物からなる。
【0003】
皮脂腺は、皮膚に存在し、毛包と結合して毛包脂腺単位を形成する。皮脂腺は、頭皮と顔に多く存在し、400~900腺/cm2に達する。皮脂腺の主な機能は、成熟した脂腺細胞からの皮脂分泌である。分泌物は全分泌型であり、即ち、濾胞管(follicular duct)内に皮脂を排泄すると脂腺細胞は死滅する。末梢脂腺細胞は増殖し、その後、腺の中心部で成熟した脂腺細胞に分化する。後者は、高密度の細胞質脂肪滴を特徴とする。皮脂腺における完全な脂腺細胞の再生は、約4週間続く。
【0004】
皮脂の産生は、良好な皮膚の状態及び機能のために必須である。皮脂は、特に、皮膚を乾燥から保護し、酸性化によって微生物から保護し、その柔軟性を保存することが意図される。抗菌及びフェロモン輸送の役割は皮脂に起因し、また、特にビタミンE産生に関連した抗酸化剤の役割にも起因している。
【0005】
従って、皮脂産生レベルが低すぎると、乾燥した、より脆弱な皮膚が発生し、また毛包機能が失われ、毛髪が失われる可能性がある。
【0006】
皮脂分泌は、皮膚上のこれらの保護機能に基づき有用であるが、それが過剰である場合、例えば、しばしば光沢がある、厚い、油性と表現される外観、孔の拡張及び/又は黒色面皰の形成、並びに皮膚の過角化などの、皮膚上の欠陥を付与し、これらの全ては、しばしば非審美的及び/又は不快及び/又は心地よくないと認識される徴候である。これらの徴候は、「油性皮膚」と呼ばれる皮膚を特徴付ける。
【0007】
分泌される皮脂の量及び質は、皮膚のタイプ、例えば白人、アジア人及びアフリカ人によって変化するが、油性皮膚現象は、世界中の個体の80%に影響を及ぼすと考えられ、従って、真の多民族美容問題を構成する。
【0008】
さらに、この脂漏症は、脂漏性湿疹、及び/又は新生児における過剰分泌(一般的に「乳痂」と呼ばれる)のような実際の病理学的状態の原因となり得る。
【0009】
油性皮膚の主な起源は、脂腺細胞の活動亢進であり、皮脂腺による過剰な皮脂分泌及び排泄を伴うが、複数の内因性因子(年齢、ホルモン、ストレスなど)及び/又は外因性因子(温度、湿度、汚染物質などの攻撃的因子)が、分泌される皮脂の質及び/又は量に影響を及ぼす。従って、思春期に産生されるアンドロゲンホルモンと過剰な成長因子は、油性皮膚の発生に関与する主要な因子である。さらに、成長因子インスリン様成長因子1型(IGF1)の過剰は、一方では、皮脂過剰産生をもたらす脂腺細胞過剰増殖と関連し、他方では、過角化、ひいては厚い皮膚をもたらす角化細胞過剰増殖及び分化と関連する。
【0010】
皮脂分泌を直接予防し及び/又は減少させるために、美容及び皮膚科学の分野において多数の活性剤が存在する。これらの「皮脂調節」剤(例えば、グルコン酸亜鉛及びアゼライン酸、サルコシン及び/又はネコノヒゲ(Orthosiphon stamineus)抽出物)は、皮脂腺による皮脂産生を直接減少させる。他の薬剤、特に皮脂吸収による剥脱剤、細胞再生刺激剤、収斂剤及び/又はテカリ防止剤(matifying agent)も、皮脂分泌に対するそれらの間接的作用のために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平8-12563号公報
【文献】FR2555447号明細書
【文献】FR2798591号明細書
【文献】FR2863893号明細書
【文献】国際公開第2014027163 A2号パンフレット
【文献】FR0654316号明細書
【文献】欧州特許第1119344 B1号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2893252 A1号明細書
【文献】FR2855968号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】Greenspan P et al.(Nile red: a selective fluorescent stain for intracellular lipid droplets. J Cell Biol. 100(3):965-73,(1985))
【文献】Daxhelet et al(Spectrofluorometry of dyes with DNAs of different base composition and conformation; Analytical Biochemistry Volume 179,Issue 2,June 1989,Pages 401-403 Analytical Biochemistry 179:401-403(1989))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、皮脂分泌を減少させることができ、また皮膚の保湿を保つことができる新規な活性剤が常に必要とされており、前記減少は、視認可能であり、且つ長持ちし、リバウンド効果、又は皮膚のいかなる刺激も引き起こさず、皮膚の輝きの損失もない。また、皮膚及び/若しくは毛髪の光沢のある油性の外観、孔の可視性及び/若しくは黒色面皰の形成、並びに/又は皮膚の過角化、特にその厚い外観などの皮脂分泌の非審美的な及び/又は不快な及び/又は心地よくない徴候を予防し及び/又は減少させることもできる新規な活性剤も必要とされている。
【0014】
従って、本発明は、市場で入手可能な活性剤の代替物として有用な新規な皮脂分泌阻害剤によって、これらの必要性を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、実際に、特に驚くべきことに、そして予想外に、ベニノキ抽出物がこれらの技術的問題の全てを解決できることが発見された。実際に、本発明によるベニノキ抽出物は、特にIGF-1の活性を阻害することによって、及び/又はIGF-1活性の阻害剤であるIGBP3タンパク質(IGF1結合タンパク質3)の合成を刺激することによって、頭皮を含む皮膚の脂腺細胞による脂質、特に総脂質及び/又は中性脂質の分泌を非常に効果的に防止し及び/又は減少させることを可能にする。従って、本発明による抽出物は、脂腺細胞増殖を減少させることを可能にする。この効果は、リバウンド効果を引き起こすことなく、視認可能であり、且つ長持ちする。
【0016】
本発明による抽出物はまた、皮膚の保湿及び輝きを保つという利点を有する。
【0017】
IGF1活性を直接阻害することにより、及び/又はIGBP3タンパク質(IGF1結合タンパク質3)の合成を刺激することにより、ベニノキ抽出物は、皮膚及び/又は毛髪の光沢及び/又は油性の外観などの皮脂分泌の非審美的な及び/又は不快な及び/又は心地よくない徴候を予防し及び/又は減少させることを可能にする。角化細胞の過剰増殖及び分化を制限することによって、本発明による抽出物は、皮膚の過角化、ひいては皮膚の厚い外観を減少させることを可能にする。本発明による抽出物は、角化細胞によるIV型コラーゲンの合成及び/又は活性を刺激するという利点を有し、従って、皮膚の孔を締め付けること、並びに/又は拡張した孔の数を減少させること、並びに/又は皮膚の孔の拡張及び/若しくは皮膚の孔の可視性を防止すること、並びに/又は黒色面皰の形成を減少させることを可能にする。従って、一般に、皮膚のきめ(skin grain)は、微細化される。
【0018】
さらに、本発明による抽出物は、脂腺細胞の分泌活性を完全に停止させることなく低下させることを可能にし、従って、皮膚及び/又は毛髪のホメオスタシスに必須の、最小レベルの皮脂分泌を維持する。従って、長期的には、本発明による抽出物は、皮膚を乾燥させない。
【0019】
従って、その完全な作用及びこれらの追加の活性のため、並びに化粧品市場における特定の製品の欠点がないため、本発明による抽出物は、皮脂分泌並びにその非審美的な及び/又は不快な及び/又は心地よくない徴候を阻害するための優れた薬剤である。従って、本発明による抽出物は、正常な、油性の、非常に油性の、及び/若しくは混合型の皮膚、並びに/又は正常な及び/若しくは油性の毛髪の処置及び/又は美容ケアに特に有用である。
【0020】
同様に、従って、本発明による抽出物は、白人、アジア人及び/若しくはアフリカ人の皮膚、並びに/又は白人、アジア人及び/若しくはアフリカ人の毛髪の処置及び/又は美容ケアに特に有用である。
【0021】
ベニノキは、ベニノキ科(Bixaceae)に属するベニノキ属(Bixa)に属する低木である。ベニノキは、一般的には、「ベニノキ(roucou)」又はリップスティックツリーとして知られている。この低木の抽出物は、白化効果のための美容用途において既に記載されている(特許文献1)。種子の油性抽出物も、光保護剤(特許文献2)及び保湿剤(特許文献3)として記載されている。
【0022】
それにもかかわらず、この抽出物の既知の特性のいずれも、本発明において発見された皮脂分泌及び/又は皮脂分泌の非審美的徴候を予防及び/又は制限するその効果を示唆していなかった。
【0023】
ベニノキ抽出物は、直接的に、また長期的に持続する効果で、脂腺細胞に作用する利点を有する。さらに、本発明による抽出物は、高い皮脂産生に関連した皮膚の欠陥を予防し及び/又は減少させる。特に、本発明による抽出物は、孔の可視性を低下させることによって、特に孔サイズを低下させることによって、及びきめをより均一且つより滑らかにすることによって、皮膚のきめを微細化することが観察された。
【0024】
本発明によるベニノキ抽出物のこれらの特性のいくつかは、特に、以下に提供される実施例においてより詳細に実証される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
従って、本発明の主題は、皮脂分泌を予防し及び/若しくは減少させるための、並びに/又は皮脂分泌に関連した非審美的な及び/若しくは不快な及び/若しくは心地よくない徴候を予防し及び/若しくは減少させるための、特に、皮膚の孔の可視性及び/若しくは黒色面皰の形成、並びに/又は皮膚及び/若しくは毛髪の光沢及び/若しくは油性の外観、並びに/又は皮膚の厚い外観を予防し及び/又は減少させるための、ベニノキ抽出物の美容的使用である。
【0026】
本発明の主題はまた、皮脂過剰産生に関連した少なくとも1つの病的状態、特に病的過脂漏性症、脂漏性湿疹及び/又は新生児における過剰分泌、及び/又はそれらの任意の組み合わせの処置及び/又は予防における、単独での又は医薬組成物、特に皮膚科組成物中での使用のためのベニノキ抽出物である。
【0027】
本発明の主題はまた、皮脂調節剤、好ましくはサルコシン、サリチル酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アゼライン酸、ネコノヒゲ抽出物及び/若しくはその誘導体から選択される少なくとも1つの薬剤、並びに/又は剥脱剤、保湿剤若しくは角質溶解剤、フィブロネクチン合成を刺激するための薬剤、線維芽細胞増殖因子(FGF2)を保護するための薬剤、線維芽細胞増殖を刺激するための薬剤、抗菌剤、皮脂吸収剤、面皰溶解剤(comedolytic agent)、局所抗生物質、及びそれらの任意の混合物から選択される追加の特性を有する少なくとも1つの薬剤と組み合わせてベニノキ抽出物を含む、美容又は医薬組成物、特に皮膚科組成物の本発明による使用である。
【0028】
本発明の主題はまた、皮脂分泌を予防し及び/若しくは減少させるための、並びに/又は皮脂分泌に関連した非審美的な及び/若しくは不快な及び/若しくは心地よくない徴候を予防し及び/若しくは減少させるための、特に、皮膚の孔の可視性及び/若しくは黒色面皰の形成、並びに/又は皮膚及び/若しくは毛髪の光沢及び/若しくは油性の外観、並びに/又は皮膚の厚い外観を予防し及び/又は減少させるための、このような美容組成物の使用である。
【0029】
最後に、本発明の主題は、皮脂分泌を予防し及び/若しくは減少させるための、並びに/又は皮脂分泌に関連した非審美的な及び/若しくは不快な及び/若しくは心地よくない徴候を予防し及び/若しくは減少させるための、特に、皮膚の孔の可視性及び/若しくは黒色面皰の形成、並びに/又は皮膚及び/若しくは毛髪の光沢及び/若しくは油性の外観、並びに/又は皮膚の厚い外観を予防し及び/又は減少させるための、本発明によるベニノキ抽出物又は本発明による美容組成物の、皮膚、有利には頭皮の少なくとも1つの領域への局所適用、特に毎日の適用を含む美容ケア及び/又は処置方法である。
【0030】
本発明の主題は、皮脂分泌を予防し及び/又は減少させるための、優先的には美容組成物の形態での、ベニノキ抽出物の美容的使用である。
【0031】
従って、本発明の主題は、皮脂分泌、並びに/又は皮脂分泌に関連した非審美的な及び/若しくは不快な及び/若しくは心地よくない徴候を予防し及び/又は減少させるためのベニノキ抽出物の使用である。
【0032】
「皮脂分泌を予防し及び/又は減少させる」という表現は、頭皮を含む皮膚の脂腺細胞によって分泌される皮脂の量の増加を低下させ若しくは防止すること、有利には皮脂、特にスクアレンの総脂質及び/若しくは中性脂質を減少させ又は防止すること、並びに/又は頭皮を含む皮膚の脂腺細胞増殖を低下させ若しくは防止することを意味することが意図される。
【0033】
脂腺細胞によって分泌される皮脂の量は、実施例2に記載されているように、(非特許文献1)によって記載されている方法に従って、培養物中の脂腺細胞で産生される細胞脂質の量を、ナイルレッド染色を用いてアッセイすることによって、インビトロで測定することができる。
【0034】
分泌される皮脂の量はまた、従来の方法によるSebutape(商標)パッチなどのサンプル上の皮脂分泌サンプルの臨床的及び機器的分析によって、並びに/又は問題の皮膚の領域への皮脂測定器、優先的にはCourage+Khazaka Electronic GmbHによって販売されているSebumeter(商標)デバイス、さらに優先的にはSM815モデルの適用によって、インビボで測定することができる。
【0035】
有利には、本発明による抽出物は、実施例2で実証されるように、抽出物の非存在下での対照と比較して、分泌される皮脂の量を少なくとも5%、優先的には少なくとも10%、より優先的には20%減少させることを可能にする。
【0036】
皮膚における脂腺細胞増殖は、(非特許文献2)に記載され、実施例2に提示される方法に従って、Hoechst試薬でDNAを染色することによって、脂腺細胞を本発明による抽出物の存在下で計数することによって評価することができる。
【0037】
有利には、本発明による抽出物は、優先的には実施例2で実証されるように、抽出物の非存在下での対照と比較して、脂腺細胞増殖を少なくとも5%、優先的には少なくとも10%、より優先的には少なくとも15%減少させることを可能にする。
【0038】
「皮脂分泌に関連した非審美的な及び/又は不快な及び/又は心地よくない徴候」という表現は、皮膚及び/若しくは毛髪の光沢及び/若しくは油性の外観、皮膚の孔の可視性及び/若しくは黒色面皰の形成、並びに/又は皮膚の厚い外観を意味することが意図される。本発明の特定の一実施形態によれば、皮脂分泌の非審美的な及び/又は不快な及び/又は心地よくない徴候は、皮膚及び/又は毛髪の光沢及び/又は油性の外観、黒色面皰の形成、並びに皮膚の厚い外観から選択される。
【0039】
本発明の目的のために、「皮膚の孔の可視性を減少させる」という表現は、皮膚の孔を締め付けること、即ち、孔の開口部の直径、及び/若しくは皮膚の表面における孔の密度及び/若しくは面積を減少させること、並びに/又は皮膚の孔の拡張を防止することを意味することが意図される。従って、本発明による抽出物は、皮膚の表面における孔の開口部及び/又は密度を減少させることを可能にする。
【0040】
皮膚の孔の可視性は、特に実施例5に記載される本発明による抽出物を含む組成物の適用後に、皮膚科医による所定の領域上の「スコアリング」と呼ばれる評価によって、インビボで実証され得る。また、本発明による抽出物を含む組成物の適用の前後に採取されたボランティアの顔の、交差偏光構成における高解像度写真から特定のパラメーターを抽出及び定量化することを可能にする、画像解析による客観的な機器による方法によって実証することもできる。
【0041】
皮膚の孔の密度はまた、曲率と呼ばれるパラメーターを測定することによって、画像化によって、特に縞投影技術によって、インビボで測定され得る。
【0042】
本発明の好ましい一実施形態では、本発明によるベニノキ抽出物は、本発明によるベニノキ抽出物、好ましくは種子抽出物、より優先的には実施例1a)に記載の条件下で調製された、優先的には実施例5に記載の美容組成物の形態で処方されたベニノキ抽出物を含むクリームの適用の28日後に、皮膚の孔の可視性を少なくとも10%、優先的には少なくとも20%減少させるのに有効な量で存在する。
【0043】
本発明によれば、「皮膚の厚い外観」という表現は、皮膚の過角化を意味することが意図される。皮膚の過角化の減少は、特に実施例3に提示するように、本発明による抽出物の存在下で、培養物中の正常ヒト角化細胞上のIGF1-BP3タンパク質の量を測定することによって測定することができる。有利には、本発明による抽出物は、本発明による抽出物の存在下で合成されるIGF1-BP3タンパク質の量を、少なくとも5%、優先的には少なくとも10%、より優先的には少なくとも20%増加させるのに有効な量で存在する。
【0044】
本発明によれば、「非常に油性の皮膚」という表現は、評価される皮膚の領域に直接適用される皮脂測定器(sebumeter)を使用して測定される、1cm2当たり150マイクログラム以上の皮脂の皮脂指数を有する皮膚を意味することが意図される。
【0045】
本発明によれば、「正常皮膚」という表現は、評価される皮膚の領域に直接適用される皮脂測定器を使用して測定される、厳密に1cm2当たり120マイクログラム未満の皮脂、優先的には1cm2当たり100マイクログラム以上の皮脂の皮脂指数を有する皮膚を意味することが意図される。
【0046】
本発明によれば、「油性又は脂漏性皮膚」という表現は、評価される皮膚の領域に直接適用される皮脂測定器を使用して測定される、1cm2当たり120~149マイクログラムの範囲の皮脂の脂質指数を有する皮膚を意味することが意図される。
【0047】
「混合型皮膚」という表現は、以下のいくつかのプロファイルを有する皮膚を意味することが意図される:検討中の顔の領域の関数として、油性、非常に油性、及び/又は正常、特にTゾーン上の油性皮膚、及び顔の残りの部分上の通常から乾燥した皮膚。
【0048】
本発明によれば、「正常な毛髪」という表現は、評価される頭皮の領域に直接適用される皮脂測定器を使用して測定される、1cm2当たり100マイクログラム以下の皮脂の皮脂指数を有する頭皮を意味することが意図される。
【0049】
本発明によれば、「油性毛髪」という表現は、評価される頭皮の領域に直接適用される皮脂測定器を使用して測定される、厳密に1cm2当たり100マイクログラムを超える皮脂の脂質指数を有する頭皮を意味することが意図される。
【0050】
優先的には、「皮脂測定器デバイス」という表現は、Courage+Khazaka Electronic GmbHによって販売されているSebumeter(商標)デバイス、さらにより優先的にはSM815モデルを意味することが意図される。
【0051】
本発明の目的のために、「美容的使用」という表現は、優先的には健康な皮膚、特に健康な頭皮、及び/又は健康な毛髪に対する本発明による抽出物の非治療的、非医薬的使用、特に皮膚、優先的には頭皮の全部若しくは一部、及び/又は「健康な」と呼ばれる皮膚、優先的には頭皮の領域、特に「健康な」皮膚の領域及び/又は「健康な」頭皮の領域が意図される使用を意味することが意図される。
【0052】
本発明の目的のために、「皮膚、優先的には頭皮の一部、及び/又は「健康な」と呼ばれる皮膚、優先的には頭皮の領域」という表現は、皮膚科医によって非病的と呼ばれる、即ち、毛包炎、カンジダ症、乾癬、魚鱗癬などの皮膚の感染、炎症、瘢痕、疾患又は病気、白斑、湿疹、座瘡、光線角化症、癌腫、黒色腫、おでき又は皮膚炎、特に脂漏性皮膚炎、脱毛症又は創傷若しくは傷害などのメラニン形成に関連した病的状態を示さない、皮膚、優先的には頭皮の一部、及び/又は皮膚、優先的には頭皮の領域を意味することが意図される。特に、「皮膚、優先的には頭皮の一部」及び/又は「健康な」と呼ばれる皮膚、優先的には頭皮の領域」という表現は、医師、特に皮膚科医によって「正常な」と呼ばれる、即ち「正常な」細胞、即ち非病的、より具体的には非癌性細胞からなる、皮膚、優先的には頭皮の一部、及び/又は皮膚、優先的には頭皮の領域を意味することが意図される。
【0053】
特に指示がない限り、「正常な」皮膚、「正常な」細胞、「正常な」角化細胞、「正常な」脂腺細胞という用語は、疾患のない皮膚又は細胞を意味することが意図される。
【0054】
本発明による抽出物は、ベニノキ抽出物である。それは、植物全体から、又は植物の1つ以上の部分から抽出されてもよく、特に、根、茎、樹皮、花、種子、胚芽及び/又は葉、及びそれらの混合物から選択される。本発明による抽出物は、優先的にはベニノキ種子抽出物である。
【0055】
抽出物は、浸軟、煎じ出し、超音波粉砕を含む粉砕、ミキサーの使用から選択される、当業者に公知の様々な抽出方法によって得ることができ、或いは、抽出物は、亜臨界条件又は超臨界条件(二酸化炭素)下で水中で抽出することによって得ることができる。優先的には、抽出は、浸軟によって行われる。
【0056】
抽出は、乾燥又は新鮮な物質、有利には乾燥物質を、物質及び抽出溶媒の総重量に対して0.1重量%~20重量%、有利には1重量%~20重量%、非常に有利には5重量%~15重量%、より有利には10重量%~15重量%、さらにより有利には約10重量%の量で使用して行うことができる。
【0057】
抽出は、4℃~300℃、優先的には4℃~100℃の範囲の温度で行うことができる。本発明の優先的な一実施形態では、抽出は、60℃~90℃、優先的には70℃~85℃の範囲の温度、より優先的には約80℃の温度で行われるであろう。
【0058】
代替的な一実施形態によれば、抽出は、4℃~20℃の範囲の温度、より有利には周囲温度、即ち約20℃で行われるであろう。
【0059】
本発明の別の代替的な実施形態では、抽出は、亜臨界条件下で、100℃~300℃、有利には120℃~250℃の範囲、より有利には120℃の温度で水中で行われるであろう。抽出は、単一の所与の温度で、又は連続的に上昇する温度で行うことができる。本発明の有利な一実施形態では、抽出は、120℃の単一温度で行われるであろう。代替的な実施形態では、抽出は、120℃、140℃、次いで160℃、又は110℃、130℃、次いで150℃、或いは120℃、145℃、次いで170℃など、100℃と200℃の間の3つの増加する温度の勾配に従って行われるであろう。
【0060】
「亜臨界条件」下での抽出という用語は、100℃を超える温度及び221バール未満の圧力の条件下で、水が液体状態のままであるが、周囲温度での水の粘度及び表面張力よりも低い粘度及び表面張力を有し、その誘電率を増加させる、水の存在下での抽出を意味することが意図される。
【0061】
従って、抽出圧力は、有利には圧力抽出オートクレーブ中で、150バール~250バール、優先的には200~221バールであろう。
【0062】
一般に、抽出は、30分~24時間、優先的には30分~12時間、より優先的には1時間~5時間、より有利には1時間~2時間行うことができる。非常に有利には、抽出は、1時間行われるであろう。
【0063】
本発明による抽出物は、溶媒又は溶媒混合物、好ましくはプロトン性極性溶媒中、有利には水、アルコール、グリコール、ポリオール、水/アルコール、水/グリコール又は水/ポリオール混合物(例えば、エタノール、グリセロール及び/又はブチレングリコール及び/又は他のグリコール、例えばキシリトール及び/又はプロパンジオールなどと混合した水)中(99/1~1/99(w/w))、有利には単独の溶媒としての水中での抽出により得ることができる。
【0064】
優先的な一実施形態では、抽出物は、水性抽出によって得られる。本発明の目的のために、「水性抽出によって得られる抽出物」という表現は、水溶液の総重量に対して、60重量%を超える、有利には少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%、より具体的には少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%の水を含み、さらにより有利にはグリコールを含まず、特にアルコールを含まず、より具体的には水のみを含む水溶液を用いた抽出によって得られる任意の抽出物を意味することが意図される。
【0065】
さらに別の代替的な実施形態では、抽出は、ヘプタンを伴うC6~C16炭酸ジアルキル溶媒の存在下で行われるであろう。この実施形態によれば、本発明による抽出物は、抽出されるベニノキの一部、優先的には種子(植物/溶媒比=1/10)を、炭酸ジアルキル(より優先的には炭酸ジオクチル及び炭酸ジエチルヘキシルの中からの)を含む抽出溶媒に、80℃で2時間撹拌しながら添加することによって得ることができる。
【0066】
別の実施形態によれば、抽出は、ココナッツ水を含む溶媒を用いて行われてもよい。この実施形態によれば、本発明による抽出物は、ベニノキの一部、優先的には種子(植物/溶媒比=1/10)を、pHが3又は4に調整されている抽出溶媒(水/ココナッツ水混合物)に、溶媒の蒸発を避けるために閉鎖環境内で80℃で1時間、撹拌しながら添加することによって得ることができる。次いで、抽出物を冷却し、遠心分離し、0.45μmで濾過する。
【0067】
本発明の別の代替的な実施形態では、抽出物は、共溶媒の存在下、超臨界条件下(CO2)での抽出によって得ることができる。有利には、共溶媒はエタノールであろう。
【0068】
本発明の別の代替的な実施形態では、抽出は、BASFによりPlantacare(登録商標)1200UPの名称で販売されているラウリルグリコシド、或いはカプリリル/カプリルグリコシド(Plantacare(登録商標)810 UP)、優先的にはカプリリル/カプリルグリコシド(Plantacare(登録商標)810 UP)から優先的に選択される非イオン性界面活性剤の存在下で行うことができる。非イオン性界面活性剤の重量濃度は、抽出物の総重量に対して0.5%~5%、有利には0.5~1%であってもよく、より有利には重量濃度は1重量%であろう。
【0069】
有利には、本発明によれば、抽出工程後に得られる抽出物は、0.45μmのカットオフ閾値で濾過されるであろう。さらなる脱色及び/又は脱臭工程が、抽出の任意の段階で、当業者に公知の技術に従って、抽出物に対して行われ得る。特に、抽出物は、活性炭で脱色され得る。
【0070】
さらに、抽出後に得られた抽出物は、次いで溶媒の蒸発によって濃縮されるか、又は例えば凍結乾燥によって、若しくは例えばマルトデキストリンなどの噴霧乾燥支持体の存在下での噴霧乾燥によって乾燥され得る。このとき、抽出物は粉末形態である。本発明の有利な一実施形態によれば、優先的には種子の、ベニノキ抽出物は、得られる粉末の総重量に対して、20重量%~90重量%、優先的には40~80重量%、より優先的には約60重量%のマルトデキストリンの重量濃度の存在下で噴霧乾燥されるであろう。
【0071】
有利には、本発明による抽出物は、水溶性である。
【0072】
本発明による抽出物は、優先的には、以下に記載の実施形態の1つに従って得られる:
- 本発明の第1の実施形態では、抽出物は、溶媒及び材料の重量に対して10重量%の量の粉砕種子を、溶媒としての水中で80℃の温度で1時間浸軟することによって得られる。実施例1a)に記載の条件下で、粗抽出物を遠心分離し、デカントし、次いで濾過し、次いで最終抽出物の総重量に対して60重量%のマルトデキストリンの最終量のマルトデキストリンの存在下で噴霧乾燥した。
- 本発明の第2の実施形態では、抽出物は、溶媒及び材料の総重量に対して10重量%量の粉砕種子を、溶媒としての水中で20℃の温度で2時間浸漬することによって得られる。実施例1b)に記載の条件下で、粗抽出物を遠心分離し、デカントし、次いで濾過した。
- 本発明の第3の実施形態では、抽出物は、20%の量の粉砕種子を溶媒としての水中で20℃で2時間浸軟することによって得られる。次いで、抽出物を、実施例1c)に記載の条件下で遠心分離し、デカントし、濾過する。
- 第4の実施形態では、抽出物は、材料及び溶媒の総重量に対して10重量%の量の粉砕種子を、エタノール:水混合物(80:20;v/v)中で80℃で1時間浸軟することによって得られる。次いで、実施例1d)に記載の条件下で、抽出物を遠心分離し、デカントし、濾過し、次いで最終抽出物の総重量に対して80重量%のマルトデキストリンの最終量のマルトデキストリンの存在下で噴霧乾燥する。
- 本発明の第5の実施形態では、抽出物は、溶媒及び材料の重量に対して10重量%の量の粉砕された葉を、溶媒としての水中で80℃で1時間浸軟することによって得られる。実施例1e)に記載の条件下で、粗抽出物を遠心分離し、デカントし、次いで濾過し、次いで最終抽出物の総重量に対して60重量%のマルトデキストリンの最終量のマルトデキストリンの存在下で噴霧乾燥した。
【0073】
本発明によれば、本発明によるベニノキ抽出物は、活性成分の形態で単独で、及び/又は優先的には局所適用が意図される美容組成物中で使用することができる。
【0074】
本明細書で使用される「局所適用」という用語は、任意選択的に活性成分及び/又は組成物の形態の本発明による抽出物を、特に直接適用又は噴霧によって、頭皮を含む皮膚の表面及び/又は毛髪に適用することを意味する。
【0075】
本発明による抽出物を含む活性成分及び/又は美容組成物は、特に、正常、油性、非常に油性及び/若しくは混合型と呼ばれる皮膚、並びに/又は、正常及び/若しくは油性と呼ばれる毛髪、特に油性、非常に油性及び/若しくは混合型の皮膚及び/又は油性の毛髪の美容ケア及び/又は処置が意図される。
【0076】
活性成分の形態で単独で使用される場合、本発明による抽出物は、優先的には、溶媒、特に極性溶媒、例えば水、アルコール、ポリオール、例えばペンチレングリコール及び/又はブチレングリコール及び/又はヘキシレングリコール及び/又はカプリリルグリコール及び/又はそれらの混合物、優先的には水性グリコール又は水性アルコール混合物、より優先的には、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール及びそれらの混合物から選択されるグリコールを含むものに可溶であり及び/又は希釈される。
【0077】
有利には、本発明による抽出物は、グリセロールを含む水溶液、有利には、水溶液の総重量に対して少なくとも10重量%、優先的には少なくとも15重量%のグリセロール、より有利には17.5重量%のグリセロールを含む溶液に可溶であり及び/又は可溶化される。
【0078】
代替的に、得られる抽出物は、カプリリルグリコールを含む水溶液、特に、水溶液の総重量に対して0.01~5重量%のカプリリルグリコール、優先的には0.1~1重量%のカプリリルグリコールを含む水溶液中に希釈され及び/又は可溶である。
【0079】
別の実施形態では、本発明による抽出物は、少なくとも1つの美容的に許容される賦形剤を含む美容組成物中に組み込むことができる。
【0080】
本発明の目的のために、用語「美容的に許容される」賦形剤は、局所的に許容される化合物及び/又は溶媒、即ち、ヒト頭皮を含む皮膚との接触で過度のアレルギー応答を誘導しない、非毒性である、不安定ではない又はその等価物の化合物及び/又は溶媒を意味することが意図される。
【0081】
本発明の目的のために、「美容組成物」という用語は、非治療組成物、即ち、皮膚科医によって「正常な」、即ち非病的と呼ばれる、頭皮を含む皮膚の予防及び/又はケアに意図される組成物を意味することが意図される。「正常な」皮膚又は頭皮という用語は、本明細書では、上記で定義されるような健康な皮膚又は頭皮を意味することが意図される。
【0082】
本発明の優先的な一実施形態では、本発明による抽出物は、組成物の総重量に対して、1×10-4重量%~10重量%、優先的には1×10-4重量%~5重量%、より有利には1×10-3重量%~3重量%、より優先的には0.001重量%~0.1重量%の含有量で美容組成物中に存在する。
【0083】
本発明による美容組成物は、液体若しくは固体の形態、又はさらには加圧液体の形態などの、頭皮を含む皮膚への局所適用に従来使用されている生薬形態のいずれかであり得る。本発明による美容組成物は、特に水性又は油性溶液、クリーム又は水性ゲル又は油性ゲル(特にポット又はチューブ中の)、特にシャワーゲル、シャンプー、コンディショナー、ミルク、オイル、エマルジョン、ヒドロゲル、ミクロエマルジョン又はナノエマルジョン、特に水中油又は油中水又は複数若しくはシリコーンベースのエマルジョン、セラム、ローション(特にガラス又はプラスチックボトル又は測定ボトル又はエアロゾル又はスプレー、バイアル中の)、液体又は固形石鹸、ペースト、軟膏、フォーム、マスク、ラッカー、パッチ、無水製品(好ましくは液体、ペースト状又は固体、例えば特にスティック形態のロッドの)の形態、又は粉末形態で処方されてもよい。また、本発明による美容組成物は、メイクアップ製品又はメイク落とし製品であってもよい。特に、美容組成物は、セラム、ローション、クリーム、シャンプー、コンディショナー、オイル、ミルク、軟膏、ペースト、フォーム、エマルジョン、ヒドロゲル、シャワーゲル、マスク、ラッカー、スプレー及びワックスからなる群から選択され、より優先的にはクリーム、セラム又はローションである。
【0084】
優先的には、抽出物は、脂漏腺、特に頭皮を含む皮膚を尊重するために、中性及びマイルドと呼ばれる組成物の製剤に特に適している。
【0085】
上述のように、本発明によるベニノキ抽出物は、美容又は医薬組成物、優先的には皮膚科組成物の形態で優先的に使用される。
【0086】
本発明による組成物は、任意の適切な溶媒及び/又は任意の適切な担体及び/又は任意の適切な賦形剤を、任意選択的に関心対象の他の化合物と組み合わせて含んでもよい。
【0087】
その結果、これらの組成物について、賦形剤は、例えば、保存剤、皮膚軟化剤、乳化剤、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、コンディショニング剤、テカリ防止剤、安定剤、抗酸化剤、テクスチャリング剤、光沢剤、フィルム形成剤、可溶化剤、顔料、染料、香料及び日焼け止め剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む。これらの賦形剤は、好ましくは、アミノ酸及びその誘導体、ポリグリセロール、エステル、セルロースポリマー及び誘導体、ラノリン誘導体、リン脂質、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、スクロース系安定剤、ビタミンE及びその誘導体、天然及び合成ワックス、植物油、トリグリセリド、不鹸化物、植物ステロール、植物エステル、シリコーン及びその誘導体、タンパク質加水分解物、ホホバ油及びその誘導体、脂溶性/水溶性エステル、ベタイン、アミンオキシド、植物抽出物、サッカロースエステル、二酸化チタン、グリシン、並びにパラベンからなる群から選択され、より好ましくはブチレングリコール、ステアレス-2、ステアレス-21、グリコール-15ステアリルエーテル、セテアリルアルコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ブチレングリコール、天然トコフェロール、グリセリン、ジヒドロキシセチルリン酸ナトリウム、イソプロピルヒドロキシセチルエーテル、ステアリン酸グリコール、トリイソノナノイン、ココ酸オクチル、ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス-7、カルボマー、プロピレングリコール、グリセロール、ビサボロール、ジメチコン、水酸化ナトリウム、PEG-30ジポリヒドロキシステアレート、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、オクタン酸セテアリル、アジピン酸ジブチル、ブドウ種子油、ホホバ油、硫酸マグネシウム、EDTA、シクロメチコン、キサンタンガム、クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、鉱物ワックス及び油、イソステアリン酸イソステアリル、ジペラルゴン酸プロピレングリコール(propylene glycol dipelargonate)、イソステアリン酸プロピレングリコール、PEG 8、蜜蝋、水素化パーム核油からのグリセリド、水素化パーム油からのグリセリド、ラノリン油、ゴマ油、乳酸セチル、ラノリンアルコール、ヒマシ油、二酸化チタン、ラクトース、サッカロース、低密度ポリエチレン、等張食塩水からなる群から選択される。
【0088】
皮膚の健康及び/又は外観を改善するための多くの美容的活性成分が当業者に知られている。当業者は、最良の効果を得るために美容又は皮膚科組成物をどのように処方するかを知っている。また、本発明に記載の化合物は、互いに組み合わせた場合に相乗効果を奏することができる。これらの組み合わせも本発明に含まれる。CTFA化粧品成分ハンドブック、第2版(1992)は、特に局所使用に適した、美容及び医薬産業において一般的に使用される様々な美容及び医薬成分を記載する。これらの種類の成分の例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない:研磨剤、吸収剤、香料、顔料、精油、収斂剤などのような美的目的のための化合物(例えば、クローブ油、メントール、樟脳、ユーカリ油、オイゲノール、乳酸メンチル、ウィッチヘーゼル留出物)、抗にきび剤、抗凝集剤、消泡剤、抗菌剤(例えば、ヨードプロピルブチルカルバメート)、抗酸化剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、膨潤剤、キレート化剤、添加剤、殺生物剤、変性剤、増粘剤、及びビタミン、及びその誘導体又は等価物、フィルム形成材料、ポリマー、乳白剤、pH調整剤、還元剤、脱色素剤又は淡色化剤(lightening agent)(例えば、ヒドロキノン、コウジ酸、アスコルビン酸、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビルグルコサミン)、コンディショニング剤(例えば、保湿剤)。
【0089】
特に有利には、本発明によるベニノキ抽出物は、任意選択的に、優先的には上記の記載の美容又は医薬組成物、優先的には皮膚科組成物中に、唯一の活性剤として、特に唯一の皮脂調節活性剤として、又は以下から選択される1つ以上の他の活性剤と組み合わせて、使用され得る:
1)別の美容及び/若しくは皮膚科皮脂調節剤、優先的にはMAT-XS(商標)Clinicalという名称で出願人によって販売されているサルコシン、MAT-XS(商標)Brightという名称で出願人によって販売されているネコノヒゲ抽出物、グルコン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、アゼライン酸、及び/若しくはそれらの誘導体、及び/若しくはそれらの混合物を、有利にはグルコン酸亜鉛と組み合わせて。
並びに/又は
2)剥離剤及び/若しくは角質溶解剤、皮脂吸収剤、微生物叢に対する作用を有する薬剤、面皰溶解剤及び/若しくは保湿剤から選択される、追加の特性を有する薬剤。
【0090】
特に、優先的な例として以下に言及することができる:
- 剥離剤及び/又は角質溶解剤:α-ヒドロキシ酸(AHA)、特に、任意選択的にアカシアタンパク質と組み合わせたサリチル酸、任意選択的にアーモンドタンパク質と組み合わせたリンゴ酸、グリコール酸;乳酸、及び/又はその誘導体;及び/又はそれらの混合物;
- 皮脂吸収剤:タルク及び/又は吸収性ポリマー;
- 微生物叢、特に皮膚微生物叢に対して作用を有する薬剤:
- 特許出願(特許文献4)に記載されている抗菌剤、特にボルド(Peumus boldus)抽出物(このような抽出物は、Betapur(商標)の名称で出願人によって特に販売されている)、及び/又は局所抗生物質、特にエリスロマイシン及び/又はリン酸クリンダマイシン、
- 微生物叢を平衡させる薬剤、例えば、特許出願(特許文献5)に記載されている、PatcH20(商標)の名称で出願人によって販売されているプルラン、アルギン酸ナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムの混合物、特にセリン、トレハロース及び尿素と組み合わせたもの、並びに/又はRelipidium(商標)の名称で出願人によって販売されている皮膚及び/若しくは粘膜共生微生物叢を増加させるための出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)抽出物;
- 面皰溶解剤:レチノイン酸又はその誘導体、例えばイソトレチノイン、アダパレン及び/又は13-シス-レチノイン酸及び過酸化ベンゾイル;
- 保湿剤:保湿を促進する1つ以上の薬剤、例えば、センナ(Cassia angustifolia)種子から抽出され、出願人によってHyalurosmooth(商標)の名称で販売されている多糖、又は出願人によってPatcH2O(商標)の名称で販売されているプルラン、ヒアルロン酸ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムを含む組み合わせのうちの1つから選択される薬剤、或いは天然保湿因子化合物(天然保湿因子)、若しくは出願人によってMelhydran(商標)の名称で販売されている天然蜂蜜抽出物の1つ以上、並びに/又はグルコシルグリセリドのファミリーの化合物、特にヘキソシルグリセリド、出願人によってLitchiderm(商標)の名称で販売されているレイシ(Litchi chinensis)果皮抽出物。
【0091】
優先的には、本発明による抽出物を含む美容組成物は、サルコシン及びネコノヒゲ抽出物、グルコン酸亜鉛及びそれらの混合物、センナ種子抽出物、ヘキソシルグリセリド、プルラン、ヒアルロン酸ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムを含む混合物から選択される保湿剤、並びにそれらの混合物から選択される別の皮脂調節剤を含むであろう。有利には、本発明による抽出物を含む組成物はまた、ボルド抽出物、プルラン、アルギン酸ナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムの混合物、出芽酵母抽出物、並びにそれらの混合物から選択される、細菌叢に作用する薬剤を含むであろう。
【0092】
本発明による抽出物を含む美容組成物は、特に以下から選択される、美容組成物の従来の活性剤を含むことができる:
- フィブロネクチン合成を刺激するための薬剤、特にトウモロコシ抽出物、このような抽出物は、特にDeliner(商標)という名称で出願人によって販売されている;
- 細胞外マトリックスの線維芽細胞増殖因子(FGF2)をその分解及び/若しくは変性から保護するための薬剤、特に、出願人の名義で(特許文献6)で出願された特許出願に記載されているハイビスカス・アベルモスクス(Hibiscus abelmoschus)抽出物、並びに/又は線維芽細胞増殖を刺激するための薬剤、例えば、出願人によって販売されているPhytokine(商標)の名称で知られており、特許出願(特許文献7)(Laboratoires Expanscience)にも記載されているペプチドを含む発酵大豆含有の抽出物、並びに優先的にはこれら2つの抽出物の組み合わせ;
- ラミニン合成を刺激するための薬剤、特にバイオテクノロジー改変モルト抽出物、このような抽出物は、特に、Basaline(商標)という名称で出願人によって販売されている;
- ヒアルロナンシンターゼ2(HAS2)の発現及び/又は活性を刺激するための薬剤、例えば、特許出願(特許文献8)に記載されている植物抽出物、及び特にガランガ(Galanga)(ナンキョウ(Alpinia galanga))の水性抽出物;
- 特許出願(特許文献9)に記載されているようなリシルオキシダーゼ様(LOXL)合成を刺激するための薬剤、特にディル抽出物;
- Arganyl(商標)の名称で販売されているアルガンノキ(Argania spinosa)葉抽出物、又は出願人によってPurisoft(商標)の名称で販売されているワサビノキ(Moringa oleifera)種子抽出物、或いはEperuline(商標)の名称で販売されているエペルア・ファルカタ(Eperua falcata)根抽出物などの1つ以上の汚染防止剤;
- 細胞内ATP合成を刺激するための薬剤、特に藻類ラミナリア・ディギタータ(Laminaria digitata)の抽出物;
- 全体的な老化防止作用を有する薬剤、特に抗色素斑点剤(anti-pigment spot agent)、特にナイアシンアミド又はビタミンB3;
並びにこれらの混合物。
【0093】
本発明によれば、本発明によるベニノキ抽出物の使用は、その使用が任意の種類の皮膚及び/又は毛髪、特に白人若しくはアフリカ若しくはアジアの皮膚、並びに/又は白人、アフリカ人若しくはアジア人の毛髪、特に白人若しくはアジアの皮膚及び/又は白人若しくはアジアの毛髪、より具体的には、アジア人の皮膚及び/又はアジア人の毛髪に対して、完全で効率的且つ長期持続性の皮脂調節作用を可能にする点で特に有利である。
【0094】
優先的には、本発明によるベニノキ抽出物は、優先的には本発明による美容組成物の形態で、皮脂分泌が心地よくない及び/又は非審美的及び/又は不快である身体の少なくとも1つの領域に適用され、この領域又はこれらの領域は、優先的には、額、頬、鼻、こめかみ、Tゾーン(額、鼻及び顎)、外耳道及び/若しくは顎を含む顔の皮膚、頭皮、首、背中、肩、前腕、胸部、手並びに/又はバストから選択される身体の表面である。
【0095】
本発明の主題はまた、優先的には皮脂分泌を予防し及び/若しくは減少させ、並びに/又は皮脂分泌の非審美的な及び/若しくは心地よくない及び/若しくは不快な作用を予防し及び/若しくは減少させるために、本発明によるベニノキ抽出物が身体の少なくとも一部、優先的には額、頬、鼻、こめかみ、Tゾーン(額、鼻及び顎)、外耳道及び/若しくは顎を含む顔の皮膚、頭皮、首、背中、肩、前腕、胸部、手並びに/又はバストから選択される表面に適用される美容ケア方法である。
【0096】
有利には、本発明によるベニノキ抽出物は、優先的には本発明による美容組成物の形態で、規則的な局所適用によって、優先的には少なくとも1日に1回、有利には1日に2回、少なくとも10日間、優先的には20日間、より優先的には少なくとも40日間使用される。優先的には、美容組成物は、濯がずに、マッサージによって皮膚に適用される。
【0097】
有利には、本発明の主題はまた、それを必要とする/それを所望する個体の皮脂分泌を予防し及び/又は減少させるための美容処置方法であり、該方法は以下の工程を含む:
a)皮脂分泌並びに/又は皮脂分泌に関連した非審美的な及び/若しくは不快な及び/若しくは心地よくない徴候を減少させることが所望される皮膚の領域の個体についての特定、並びに
b)この皮膚の領域上の皮脂分泌を予防し及び/又は減少させるのに有効な量、即ち、組成物の総重量に対して1×10-4%~10重量%、優先的には1×10-4%~5重量%、より有利には1×10-3%~3重量%、より優先的には0.001%~0.1重量%の抽出物含有量での、本発明によるベニノキ抽出物を含む美容組成物のこの皮膚の領域への局所適用。
【0098】
本発明によるベニノキ抽出物は、皮脂過剰産生に関連した病的状態、特に、病的過脂漏症、脂漏性湿疹及び/又は新生児における過剰分泌、及び/又はそれらの任意の組み合わせの処置及び/又は予防のために使用され得る。
【0099】
優先的には、優先的には本発明による医薬組成物の形態の、本発明によるベニノキ抽出物は、皮脂分泌が過剰であり、皮脂分泌が誘導され、及び/又は少なくとも1つの病的状態と関連した身体の少なくとも1つの領域、特に病的過脂漏症を示す身体の少なくとも1つの領域に適用され、この領域又はこれらの領域は、優先的には、額、頬、鼻、こめかみ、Tゾーン(額、鼻及び顎)、外耳道及び/又は顎を含む顔の皮膚、頭皮、首、背中、肩、前腕、胸部、手並びに/又はバストから選択される身体の表面である。
【0100】
本発明の優先的な一実施形態では、本発明による抽出物は、組成物の総重量に対して、1×10-4重量%~10重量%、優先的には1×10-4重量%~5重量%、より有利には1×10-3重量%~3重量%、より優先的には0.001重量%~0.1重量%の含有量で医薬組成物中に存在する。
【0101】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、単に例示として与えられ、本発明の範囲をいか様にも限定するものではない実施例を参照する説明的記載を読めば、当業者に明らかになるであろう。
【0102】
実施例は、本発明の不可欠な部分を形成し、実施例を含む本発明の全体の説明から、いかなる先行技術に対しても新規であるように見える任意の特徴は、その機能及びその一般的な性質において本発明の不可欠な部分を形成する。
【0103】
従って、各実施例は、一般的な範囲を有する。
【0104】
さらに、実施例において、特に指示がない限り全てのパーセンテージは重量基準で与えられ、特に指示がない限り温度は摂氏で表され、特に指示がない限り圧力は大気圧である。
【実施例】
【0105】
実施例1:本発明によるベニノキ抽出物を調製するための異なる方法
実施例1a):粉砕したベニノキ種子の10%(水及び種子の全混合物に対してw/w)の量を、80℃の温度で1時間、溶媒としての水中で浸軟した。粗抽出物を遠心分離し、デカントし、次いで濾過し、次いでマルトデキストリンの存在下で、最終抽出物の総重量に対して60重量%のマルトデキストリンの最終量で噴霧乾燥した。
【0106】
実施例1b):粉砕した種子の10重量%(水及び種子の総重量に対して)の量を、20℃の温度で2時間、水中で浸軟した。粗抽出物を遠心分離し、デカントし、次いで濾過した。
【0107】
実施例1c):粉砕した種子の20重量%(水及び種子の総重量に対して)の量を、20℃の温度で2時間、水中で浸軟した。次いで、抽出物を遠心分離し、デカントし、濾過した。
【0108】
実施例1d):粉砕した種子の10重量%(種子及び溶媒の総重量に対して)の量を、80℃の温度で1時間、エタノール:水混合物(80:20;v/v)からなる溶媒中で浸軟した。次いで、抽出物を遠心分離し、デカントし、濾過し、次いでマルトデキストリンの存在下で、最終抽出物の総重量に対して80重量%のマルトデキストリンの最終量で噴霧乾燥した。
【0109】
実施例1e):粉砕した葉の10重量%(水及び葉の総重量に対して)の量を、80℃の温度で1時間、水中で浸軟した。粗抽出物を遠心分離し、デカントし、次いで濾過し、次いでマルトデキストリンの存在下で、最終抽出物の総重量に対して60重量%のマルトデキストリンの最終量で噴霧乾燥した。
【0110】
実施例2:皮脂分泌に対する本発明によるベニノキ抽出物の特性。
方法
ヒト脂腺細胞を完全培養培地(10%(培地中w/w)のウシ胎仔血清(FCS)を含むDMEM/HAM F12培地)に2500細胞/cm2で播種し、37℃、CO25%、95%を超える相対湿度で5日間インキュベートした。次いで、増殖培養培地を、1%のヒト血清(HS)又は100ng/mlのIGF1を含む標準培養培地(DMEM)で置き換えた。マルトデキストリンと混合する工程の前に得られた実施例1a)で得られたベニノキ抽出物を、培地と抽出物の混合物に対して0.02%又は0.05%(重量/重量)で37℃で5日間インキュベートした。細胞をPBS緩衝液(リン酸緩衝食塩水)で濯ぎ、ホルムアルデヒド溶液で固定する。Hoechst試薬を用いたDNA染色によって脂腺細胞の数を測定し、蛍光を465nm(356nmでの励起)で記録し、一方、細胞脂質の量をナイルレッド染色(11)で測定する。総脂質の蛍光を625nmの波長(520nmでの励起)で測定し、一方、中性脂質の蛍光を530nmの波長(475nmでの励起)で測定する。結果は、ベニノキ抽出物を含まない対照(1%のHS又は100ng/mLのIGF1を有する平均基礎発現)に対するパーセンテージで表し、平均+/-標準偏差(SD)として提示する。統計は、SigmaPlot(商標)ソフトで評価した。
【0111】
結果
1. 1% HSによる活性化
25歳のアジア人の脂腺細胞。
N=3
【0112】
【0113】
本発明によるベニノキ抽出物は、1% HSで処理した脂腺細胞の増殖と脂腺細胞における総脂質の合成とを有意に減少させた。
【0114】
2. IGF-1 100ng/mlによる活性化。
2.1. 25歳の白人の脂腺細胞。
【0115】
【0116】
本発明によるベニノキ抽出物は、0.05%の濃度で、IGF-1で処理された脂腺細胞の増殖と脂腺細胞における総脂質及び中性脂質の合成とを有意に減少させた。同様の結果が、0.02%の本発明による抽出物で得られた。
【0117】
2.2. 25歳のアジア人の脂腺細胞。
【0118】
【0119】
本発明によるベニノキ抽出物は、0.05%の濃度で、IGF-1で処理された脂腺細胞の増殖と脂腺細胞における総脂質の合成とを有意に減少させる。
【0120】
実施例3:IGF1結合タンパク質:IGFBP3タンパク質の誘導。
BP3タンパク質は、IGF-1の対応する受容体IGF1Rへの結合を遮断することに特化している;従って、BP3タンパク質はIGF1-IGF1R経路を遮断し、それにより角化細胞の過剰増殖及び分化を妨げるであろう。このタンパク質を活性化することによって、ベニノキ抽出物は、油性皮膚において観察される過角化を遅らせる。本発明によるベニノキ抽出物は、IGFBP3タンパク質の合成を増加させる。
【0121】
材料及び方法
正常ヒト角化細胞を70%コンフルエンスまで培養し、次いで100ng/mlのIGF-1又は実施例1a)に従って得られたベニノキ抽出物で24時間処理した後、マルトデキストリンと混合し、0.1%又は0.05%(総媒体におけるw/w)で24時間噴霧乾燥した。DNAをアッセイするために細胞を溶解し、上清を使用して、ELISAキット(LSBio Human IGFBP3 ELISA Kit ref LS-F24538 ロット103180)の供給者のプロトコールに従って、ELISAによりIGFBP3タンパク質を定量化した。
【0122】
結果
結果を非処理細胞と関連付ける。統計的t検定試験を行い、平均を比較する。
【0123】
【0124】
本発明によるベニノキ抽出物は、IGFBP3タンパク質の量を増加させた。
【0125】
実施例4:本発明による抽出物によるコラーゲンIV合成の増加。
方法:
健康な24歳のドナーの乳房に由来する「正常な」ヒト角化細胞を、実施例1a)に従って調製した3つの異なる最終濃度のベニノキ抽出物の存在下で、コンフルエンス(100%)まで、規定培地(KSFM)中で48時間培養した後、混合及び噴霧乾燥した。次いで培養培地を除去する。次いで、得られた細胞層を水酸化アンモニウム溶液で溶解する。溶解物の一部を使用してDNAをアッセイした。コラーゲンIVを、ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBS緩衝液中で1/2500に希釈した抗コラーゲンIV抗体(Acris、R1041)でアッセイした。60分後、1/25000に希釈した二次抗体(PerkinElmer、AD0105)を暗所内で1時間適用する。蛍光を測定した(ENVision、PerkinElmer)。
【0126】
結果
蛍光結果を、ベニノキ抽出物の非存在下で同じ細胞培地(対照)で得られた蛍光に対して標準化し、各条件下で得られたDNAのパーセンテージに関連付けた。提示された結果は、アッセイの平均に対応する。(SD:標準偏差)。
【0127】
【0128】
本発明によるベニノキ抽出物は、角化細胞におけるコラーゲンIV合成を増加させ、それにより皮膚の孔を締め付けることを可能にする。
【0129】
実施例5:皮脂分泌に関する本発明によるベニノキ抽出物の臨床試験。
方法:
臨床試験を、半顔面試験において、一部はプラセボを用いて、一部は、実施例1a)で得られ、以下に記載する組成物に処方した0.25%の本発明のベニノキ抽出物(本発明による処方物)を用いて二重盲検で実施した。
【0130】
本研究は、脂質指数が皮脂測定器(Sebumeter(登録商標)SM 815)を使用して測定して、1cm2当たり≧150マイクログラムの皮脂(非常に油性の皮膚)である20~45歳のアジア人女性35人に対して実施され、脂質指数が皮脂測定器(Sebumeter(登録商標)SM 815)を使用して測定して、1cm2当たり120~149マイクログラムの範囲の皮脂(油性の皮膚)である最大10人のボランティアを含んでいた。処置を1日2回、56日間適用した。
【0131】
【0132】
組成物は、当業者に公知の方法に従って混合することによって調製した。
【0133】
Sebutape(登録商標)パッチを使用してサンプルを採取し、処置前(D0)及び処置後の28日目及び56日目の皮脂の量を測定することにより、皮脂腺の活性を測定することができた。2~4日の開始時に評価された頬の孔のサイズは、訓練された指示対象個体によって実施された臨床計算によって評価された。皮膚の保湿は、皮膚水分量測定法(corneometry method)を用いて測定した。質問票は、28日目及び56日目にボランティアによって記入された。
【0134】
結果:
0.25%の本発明によるベニノキ抽出物を用いた処置の28日目に、斑点(分泌皮脂)の数は、D0に対して22%有意に減少し、プラセボに対して14%有意に減少する。
【0135】
0.25%の本発明によるベニノキ抽出物を用いた処置の56日目に、斑点(分泌皮脂)の数は、D0に対して37%有意に減少し、プラセボに対して25%有意に減少する。
【0136】
0.25%の本発明によるベニノキ抽出物を用いた処置の28日目に、斑点の面積は、D0に対して46%有意に減少し、プラセボに対して31%有意に減少する。
【0137】
0.25%の本発明によるベニノキ抽出物を用いた処置の56日目に、斑点(分泌皮脂)の数は、D0に対して62%有意に減少し、プラセボに対して36%有意に減少する。
【0138】
0.25%の本発明によるベニノキ抽出物を用いた処置の28日目に、孔のサイズは、D0に対して視覚的に有意に3%減少する。0.25%の本発明によるベニノキ抽出物を用いた処置の56日目に、孔のサイズは、D0に対して9%、プラセボに対して3%有意に減少する。
【0139】
処置の28日及び56日後、0.25%の本発明によるベニノキ抽出物は、皮膚水分量計値をD0に対して3%有意に増加させる。
【0140】
実施例6:本発明による美容組成物
使用した抽出物は、粉末形態の実施例1a)で得られたものである(マルトデキストリンと混合し、噴霧乾燥した後)。
【0141】
実施例6a):皮膚のきめを微細化するためのトニックケア
【0142】
【0143】
トニックケアは、当業者に周知の当該分野における通常の方法によって、3相を混合することによって、及び組成物をpH5.1に調整することによって調製される。
【0144】
実施例6b):テカリ防止クリーム
【0145】
【0146】
このクリームは、当業者に周知の当該分野における通常の方法によって、75℃に予熱した相A及びBを混合した後、混合しながら、且つ組成物を相EでpH6.2に調整し、粘度を15000mPas(ブルックフィールド機器(RVT;23℃、スピンドルTC;20回転/分)で測定)に調整しながら相C及びDを添加することによって調製される。
【0147】
実施例6c):シャンプー
【0148】
【0149】
シャンプーは、当業者に周知の当該分野における通常の方法によって、4相を混合し、組成物をpH5.2及び粘度2200mPas(ブルックフィールド機器(RVT;23℃、スピンドル5;50回転/分)で測定)に調整することによって調製される。
本開示の態様として、以下のものを挙げることができる。
[1]
皮脂分泌を予防し及び/若しくは減少させるための、並びに/又は皮脂分泌に関連した非審美的な及び/若しくは不快な及び/若しくは心地よくない徴候を予防し及び/若しくは減少させるための、ベニノキ抽出物の美容的使用。
[2]
前記皮脂分泌の非審美的な及び/又は不快な及び/又は心地よくない徴候が、皮膚の孔の可視性及び/若しくは黒色面皰の形成、並びに/又は前記皮膚及び/若しくは毛髪の光沢及び/若しくは油性の外観、並びに/又は前記皮膚の厚い外観であることを特徴とする、態様1に記載の使用。
[3]
前記ベニノキ抽出物が種子抽出物であることを特徴とする、態様1又は2に記載の使用。
[4]
前記ベニノキ抽出物が、プロトン性極性溶媒中での抽出によって、有利には水性抽出によって得られることを特徴とする、態様1~3のいずれか一つに記載の使用。
[5]
前記ベニノキ抽出物が、得られる粉末の総重量に対して20重量%~90重量%、優先的には40~80重量%、より優先的には60重量%のマルトデキストリンの濃度の存在下で噴霧乾燥されることを特徴とする、態様4に記載の使用。
[6]
前記ベニノキ抽出物が、美容的に許容される賦形剤も含む美容組成物の形態であることを特徴とする、態様1~5のいずれか一つに記載の使用。
[7]
前記美容組成物が、前記皮膚、特に頭皮及び/又は前記毛髪への局所適用が意図されることを特徴とする、態様6に記載の使用。
[8]
前記ベニノキ抽出物が、前記組成物の総重量に対して、1×10
-4
重量%~10重量%、優先的には1×10
-4
重量%~5重量%、より有利には1×10
-3
重量%~3重量%、より優先的には0.001重量%~0.1重量%の含有量で前記美容組成物中に存在することを特徴とする、態様7に記載の使用。
[9]
前記皮膚が正常、油性、非常に油性及び/若しくは混合型、並びに/又は前記毛髪が正常及び/若しくは油性である、態様7又は8に記載の使用。
[10]
前記皮膚が白人若しくはアフリカ人若しくはアジア人であり、及び/又は前記毛髪が白人、アフリカ人若しくはアジア人である、態様7~9のいずれか一つに記載の使用。
[11]
前記美容組成物が、セラム、ローション、クリーム、シャンプー、コンディショナー、オイル、ミルク、軟膏、ペースト、フォーム、エマルジョン、ヒドロゲル、シャワーゲル、マスク、ラッカー、スプレー及びワックスからなる群から選択され、前記美容組成物が、有利にはクリーム、セラム又はローションであることを特徴とする、態様6~10のいずれか一つに記載の使用。
[12]
皮脂分泌を予防し及び/若しくは減少させるため、並びに/又は皮脂分泌に関連した非審美的な及び/若しくは不快な及び/若しくは心地よくない徴候を予防し及び/若しくは減少させるために、ベニノキ抽出物を皮膚、有利には頭皮の少なくとも1つの領域に局所適用することを含むことを特徴とする美容ケア方法。
[13]
前記ベニノキ抽出物が、態様3~6及び8のいずれか一つに記載されていることを特徴とする、態様12に記載の美容ケア方法。
[14]
前記ベニノキ抽出物が、前記皮脂分泌が心地よくない及び/又は非審美的であり及び/又は不快である身体の少なくとも1つの領域に美容組成物の形態で適用され、この領域又はこれらの領域は、優先的には額、頬、鼻、こめかみ、Tゾーン(額、鼻及び顎)、外耳道及び/若しくは顎を含む顔の皮膚、頭皮、首、背中、肩、前腕、胸部、手並びに/又はバストから選択される前記身体の表面であることを特徴とする、態様13に記載の美容ケア方法。
[15]
病的過脂漏症及び脂漏性湿疹及び/又はそれらの任意の組み合わせから選択される皮脂過剰産生に関連した病的状態の処置及び/又は予防に使用するためのベニノキ抽出物。
[16]
前記抽出物が、態様3~5のいずれか一つに記載されていることを特徴とする、態様15に記載の使用のためのベニノキ抽出物。
[17]
前記抽出物が、組成物の総重量に対して、1×10
-4
重量%~10重量%、優先的には1×10
-4
重量%~5重量%、より有利には1×10
-3
重量%~3重量%、より優先的には0.001重量%~0.1重量%の含有量で医薬組成物中に存在することを特徴とする、態様15又は16に記載の使用のためのベニノキ抽出物。