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特許7519916中間積層体、中間積層体の製造方法および製品積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】中間積層体、中間積層体の製造方法および製品積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240712BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240712BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J201/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020569483
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2020000679
(87)【国際公開番号】W WO2020158349
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2019016820
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】仲野 武史
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢一
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-017109(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006604(WO,A1)
【文献】特開2009-147251(JP,A)
【文献】特開2012-222002(JP,A)
【文献】特開2004-300333(JP,A)
【文献】特開2018-044165(JP,A)
【文献】特開2014-110366(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0160300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 7/38,201/00
H01L 21/52, 21/58,
21/68, 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する基材および前記基材の一方面に配置される粘着層を備えた粘着シートと、前記粘着シートの一方面に配置される被着体とを備え
前記粘着層が、粘着力が高い状態から粘着力が低い状態に、不可逆的に状態変化可能な第1粘着性組成物からなり、
前記粘着層は、状態変化前の粘着力が高い状態の前記第1粘着性組成物からなる高粘着領域と、状態変化後の粘着力が低い状態の前記第1粘着性組成物からなる低粘着領域とを備え、
前記第1粘着性組成物は、第1ポリマーと第1光硬化剤とを含み、
前記第1ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび窒素含有ビニルモノマーを含むモノマー成分の重合体であり、
前記第1光硬化剤は、官能基数4以上6以下の多官能(メタ)アクリレートであり、
前記高粘着領域をポリイミドフィルムに25℃で貼着し、剥離速度300mm/分で180度ピール試験により測定される粘着力が、5N/25mm以上であり、
前記低粘着領域をポリイミドフィルムに25℃で貼着し、剥離速度300mm/分で180度ピール試験により測定される粘着力が、4N/25mm以下であることを特徴とする、中間積層体。
【請求項2】
透明性を有する基材および前記基材の一方面に配置される粘着層を備えた粘着シートと、前記粘着シートの一方面に配置される被着体とを備え、
前記粘着層が、粘着力が低い状態から粘着力が高い状態に、不可逆的に状態変化可能な第2粘着性組成物からなり、
前記粘着層は、状態変化後の粘着力が高い状態の前記第2粘着性組成物からなる高粘着領域と、状態変化前の粘着力が低い状態の前記第2粘着性組成物からなる低粘着領域とを備え、
前記第2粘着性組成物は、第2ポリマーと第2光硬化剤とを含み、
前記第2ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー成分の重合体であり、
前記第2光硬化剤は、官能基数2以上3以下の多官能(メタ)アクリレートであり、
前記高粘着領域をポリイミドフィルムに25℃で貼着し、剥離速度300mm/分で180度ピール試験により測定される粘着力が、5N/25mm以上であり、
前記低粘着領域をポリイミドフィルムに25℃で貼着し、剥離速度300mm/分で180度ピール試験により測定される粘着力が、4N/25mm以下であることを特徴とする、中間積層体。
【請求項3】
明性を有する基材および前記基材の一方面に配置され、粘着力が高い状態から粘着力が低い状態に、光照射により不可逆的に状態変化可能な第1粘着性組成物からなる粘着層を備えた粘着シートを準備する工程、
前記粘着シートの一方面に被着体を配置する工程、および、
前記粘着層の一部に光照射し、前記粘着層に、光照射された照射部分と、光照射されていない非照射部分とを形成することにより、前記非照射部分は、粘着力が高い状態の前記第1粘着性組成物からなる高粘着領域となり、前記照射部分は、粘着力が低い状態の前記第1粘着性組成物からなる低粘着領域となる工程とを備え、
前記第1粘着性組成物は、第1ポリマーと第1光硬化剤とを含み、
前記第1ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび窒素含有ビニルモノマーを含むモノマー成分の重合体であり、
前記第1光硬化剤は、官能基数4以上6以下の多官能(メタ)アクリレートであり、
前記高粘着領域をポリイミドフィルムに25℃で貼着し、剥離速度300mm/分で180度ピール試験により測定される粘着力が、5N/25mm以上であり、
前記低粘着領域をポリイミドフィルムに25℃で貼着し、剥離速度300mm/分で180度ピール試験により測定される粘着力が、4N/25mm以下であることを特徴とする、中間積層体の製造方法。
【請求項4】
透明性を有する基材および前記基材の一方面に配置され、粘着力が低い状態から粘着力が高い状態に、光照射により不可逆的に状態変化可能な第2粘着性組成物からなる粘着層を備えた粘着シートを準備する工程、
前記粘着シートの一方面に被着体を配置する工程、および、
前記粘着層の一部に光照射し、前記粘着層に、光照射された照射部分と、光照射されていない非照射部分とを形成することにより、前記照射部分は、粘着力が高い状態の前記第2粘着性組成物からなる高粘着領域となり、前記非照射部分は、粘着力が低い状態の前記第2粘着性組成物からなる低粘着領域となる工程とを備え、
前記第2粘着性組成物は、第2ポリマーと第2光硬化剤とを含み、
前記第2ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー成分の重合体であり、
前記第2光硬化剤は、官能基数2以上3以下の多官能(メタ)アクリレートであり、
前記高粘着領域をポリイミドフィルムに25℃で貼着し、剥離速度300mm/分で180度ピール試験により測定される粘着力が、5N/25mm以上であり、
前記低粘着領域をポリイミドフィルムに25℃で貼着し、剥離速度300mm/分で180度ピール試験により測定される粘着力が、4N/25mm以下であることを特徴とする、中間積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の中間積層体の製造方法により製造される中間積層体を準備する工程と、
前記粘着層における前記低粘着領域を取り除く工程とを備えることを特徴とする、製品積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間積層体、中間積層体の製造方法および製品積層体の製造方法に関し、詳しくは、中間積層体、その中間積層体を製造する方法、および、その中間積層体を用いて得られる製品積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスなどの各種デバイスの組み立て、加工、輸送などの工程がなされる前に、デバイスの表面に粘着性フィルムを仮着することにより、表面保護や耐衝撃性付与を図ることが知られている。
【0003】
このような粘着性フィルムとして、プラスチックフィルムと粘着層の積層体を含む応力分散フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、このような粘着性フィルムとして、加熱前または紫外線の照射前には、粘着力が弱く、加熱や紫外線を照射することにより粘着性を発揮する硬化性接着シートが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、このような粘着性フィルムとして、紫外線照射後に、糊残りなく剥離できる半導体基板加工用粘着テープが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
特許文献3の半導体基板加工用粘着テープは、デバイスに貼着し、組み立てや加工などの工程を終了した後に、紫外線照射をすることで、粘着力を低下でき、デバイスから剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-132977号公報
【文献】特開2011-127054号公報
【文献】特開2005-050953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、デバイスを補強する観点から、仮着した粘着性フィルムの一部を剥離せず、デバイスに貼着したまま残存させたい要望がある。
【0009】
しかし、特許文献1の応力分散フィルムは、被着体を補強するために貼着されることを前提としているため、粘着力が強く、この応力分散フィルムの一部のみを容易に取り除くことができないという不具合がある。
【0010】
また、特許文献2の硬化性接着シートでは、加熱前または紫外線の照射前に、硬化性接着シートの一部を切断して除去すると、粘着力が弱いため、切断部分の周辺に浮きが生じて剥離するという不具合がある。
【0011】
また、特許文献3の加熱剥離型粘着シートは、上記の工程が終了した後に取り除かれることを前提とした工程材であり、デバイスに対する糊残りが生じないように粘着力が調整されている。
【0012】
そのため、特許文献3の加熱剥離型粘着シートは、デバイスの補強という観点からは、粘着力が十分でないという不具合がある。
【0013】
本発明の目的は、被着体を補強するために、被着体に貼着したまま残存させる領域と、被着体から取り除く領域とを併有する中間積層体、その中間積層体を製造する方法、および、その中間積層体を用いて得られる製品積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明[1]は、基材および前記基材の一方面に配置される粘着層を備えた粘着シートと、前記粘着シートの一方面に配置される被着体とを備え、前記粘着層が、粘着力が高い状態と粘着力が低い状態とに、不可逆的に状態変化可能な粘着性組成物からなり、前記粘着層は、粘着力が高い状態の粘着性組成物からなる高粘着領域と、粘着力が低い状態の粘着性組成物からなる低粘着領域とを備える、中間積層体である。
【0015】
本発明[2]は、前記粘着層が、粘着力が高い状態から粘着力が低い状態に、不可逆的に状態変化可能な第1粘着性組成物からなり、前記高粘着領域は、状態変化前の前記第1粘着性組成物からなり、前記低粘着領域は、状態変化後の前記第1粘着性組成物からなる、上記[1]に記載の中間積層体を含んでいる。
【0016】
本発明[3]は、前記粘着層が、粘着力が低い状態から粘着力が高い状態に、不可逆的に状態変化可能な第2粘着性組成物からなり、前記高粘着領域は、状態変化後の前記第2粘着性組成物からなり、前記低粘着領域は、状態変化前の前記第2粘着性組成物からなる、上記[1]に記載の中間積層体を含んでいる。
【0017】
本発明[4]は、前記高粘着領域をポリイミドフィルムに25℃で貼着し、剥離速度300mm/分で180度ピール試験により測定される粘着力が、5N/25mm以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の中間積層体を含んでいる。
【0018】
本発明[5]は、前記低粘着領域をポリイミドフィルムに25℃で貼着し、剥離速度300mm/分で180度ピール試験により測定される粘着力が、4N/25mm以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の中間積層体を含んでいる。
【0019】
本発明[6]は、基材および前記基材の一方面に配置され、粘着力が高い状態と粘着力が低い状態とに、光照射により不可逆的に状態変化可能な粘着性組成物からなる粘着層を備えた粘着シートを準備する工程、前記粘着シートの一方面に被着体を配置する工程、および、前記粘着層の一部に光照射し、前記粘着層に、光照射された照射部分と、光照射されていない非照射部分とを形成することにより、前記照射部分および前記非照射部分のうちいずれか一方が、粘着力が高い状態の粘着性組成物からなる高粘着領域となり、他方が粘着力が低い状態の粘着性組成物からなる低粘着領域となる工程とを備える、中間積層体の製造方法である。
【0020】
本発明[7]は、前記粘着層が、粘着力が高い状態から粘着力が低い状態に、光照射により不可逆的に状態変化可能な第1粘着性組成物からなり、前記照射部分が、前記低粘着領域となり、前記非照射部分が、前記高粘着領域となる、上記[6]に記載の中間積層体の製造方法を含んでいる。
【0021】
本発明[8]は、前記粘着層が、粘着力が低い状態から粘着力が高い状態に、光照射により不可逆的に状態変化可能な第2粘着性組成物からなり、前記照射部分が、前記高粘着領域となり、前記非照射部分が、前記低粘着領域となる、上記[6]に記載の中間積層体の製造方法を含んでいる。
【0022】
本発明[9]は、上記[6]~[8]のいずれか一項に記載の中間積層体の製造方法により製造される中間積層体を準備する工程と、前記粘着層における前記低粘着領域を取り除く工程とを備える、製品積層体の製造方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の中間積層体の粘着層は、粘着力が高い状態と粘着力が低い状態とに、不可逆的に状態変化可能な粘着性組成物からなる。
【0024】
そのため、状態変化によって、粘着力が高い状態の粘着性組成物からなる高粘着領域、および、粘着力が低い状態の粘着性組成物からなる低粘着領域を形成することができる。
【0025】
すなわち、この中間積層体は、粘着力が高い粘着性組成物から高粘着領域を形成し、粘着力が低い粘着性組成物から低粘着領域を形成することにより、高粘着領域と低粘着領域とを併有させるものではなく、同一組成の粘着性組成物から、高粘着領域および低粘着領域を形成することにより、これらを併有させることができる。
【0026】
そして、中間積層体の粘着層は、高粘着領域および低粘着領域を備えるため、高粘着領域は、被着体に貼着したまま残存させ、対応する基材とともに被着体の補強に利用できる一方、低粘着領域は、対応する基材とともに被着体から取り除くことができる。
【0027】
その結果、被着体が補強された製品積層体を得ることができる。
【0028】
本発明の中間積層体の製造方法は、粘着力が高い状態と粘着力が低い状態とに、光照射により不可逆的に状態変化可能な粘着性組成物からなる粘着層の一部に光照射し、粘着層に、光照射された照射部分と、光照射されていない非照射部分とを形成することにより、照射部分および非照射部分のうちいずれか一方が、粘着力が高い状態の粘着性組成物からなる高粘着領域となり、他方が粘着力が低い状態の粘着性組成物からなる低粘着領域となる工程を備える。
【0029】
そのため、高粘着領域および低粘着領域を備える粘着層を備える中間積層体を製造することができる。
【0030】
また、この中間積層体の製造方法では、光照射により、粘着性組成物を部分的に光硬化させ、高粘着領域および低粘着領域を形成している。
【0031】
そのため、加熱により、粘着性組成物を熱硬化させる場合と比べて、被着体の熱による損傷を抑制することができる。
【0032】
本発明の製品積層体の製造方法は、本発明の中間積層体の製造方法により製造される中間積層体における粘着層の低粘着領域を取り除く工程を備える。
【0033】
低粘着領域における粘着力は低いため、低粘着領域を、対応する基材とともに中間積層体から容易に取り除くことができる。一方、高粘着領域は、中間積層体に残存させて、対応する基材とともに被着体の補強に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の中間積層体の一実施形態の概略図を示す。
図2図2は、粘着シートの製造方法の一実施形態を示す概略図であって、図2Aは、基材を準備する第1工程を示し、図2Bは、基材の一方面に、粘着層を積層する第2工程を示し、図2Cは、粘着層一方面に、剥離フィルムを積層する工程を示す。
図3図3は、粘着層が第1粘着性組成物によって形成された場合における本発明の中間積層体の製造方法の一実施形態を示す概略図であって、図3Aは、粘着シートを準備する第3工程を示し、図3Bは、粘着シートの一方面に被着体を配置する第4工程を示し、図3Cは、粘着層の一部に光照射し、高粘着領域および低粘着領域を形成する第5工程を示す。
図4図4は、粘着層が第2粘着性組成物によって形成された場合における本発明の中間積層体の製造方法の一実施形態を示す概略図であって、図4Aは、粘着シートを準備する第3工程を示し、図4Bは、粘着シートの一方面に被着体を配置する第4工程を示し、図4Cは、粘着層の一部に光照射し、高粘着領域および低粘着領域を形成する第5工程を示す。
図5図5は、本発明の製品積層体の製造方法の一実施形態を示す概略図であって、図5Aは、中間積層体を準備する第6工程を示し、図5Bは、粘着層における低粘着領域を取り除く第7工程を示す。
図6図6は、低粘着領域が十字型である場合における本発明の製品積層体の製造方法の一実施形態を示す概略図であって、図6Aは、中間積層体を準備する第6工程を示し、図6Bは、粘着層における低粘着領域を取り除く第7工程を示す。
図7図7は、低粘着領域が丸型である場合における本発明の製品積層体の製造方法の一実施形態を示す概略図であって、図7Aは、中間積層体を準備する第6工程を示し、図7Bは、粘着層における低粘着領域を取り除く第7工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の中間積層体の一実施形態を、図1を参照して説明する。
1.中間積層体
図1に示すように、中間積層体1は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有し、厚み方向と直交する方向(面方向)に延び、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0036】
具体的には、中間積層体1は、基材2および基材2の一方面に配置される粘着層3を備えた粘着シート4と、粘着シート4の一方面に配置される被着体5とを備える。
【0037】
詳しくは後述するが、中間積層体1は、粘着シート4を被着体5に貼付することにより得られる。
【0038】
また、中間積層体1は、製品積層体12(後述)の中間部品である。
【0039】
以下、各層について詳述する。
2.粘着シート
粘着シート4は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有し、厚み方向と直交する方向(面方向)に延び、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0040】
具体的には、粘着シート4は、基材2と、基材2の一方面に配置される粘着層3とを備える。
【0041】
以下、粘着シート4を構成する各層について、説明する。
2-1.基材
基材2は、粘着シート4の下層である。基材2は、粘着シート4の機械強度を確保する支持層(支持材)である。また、基材2は、中間積層体1において、被着体5を補強するための補強材である。また、基材2は、面方向に延びるフィルム形状を有しており、平坦な平面および平坦な下面を有する。
【0042】
基材2は、可撓性のプラスチック材料からなる。
【0043】
このようなプラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、例えば、ポリメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー(COP)などのポリオレフィン樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、例えば、ポリエーテルスルフォン樹脂、例えば、ポリアリレート樹脂、例えば、メラミン樹脂、例えば、ポリアミド樹脂、例えば、ポリイミド樹脂、例えば、セルロース樹脂、例えば、ポリスチレン樹脂、例えば、ノルボルネン樹脂の合成樹脂などが挙げられる。
【0044】
詳しくは後述するが、基材2側から光を照射して粘着層3を硬化させる場合には、好ましくは、基材2は、光に対する透明性を有する。
【0045】
光に対する透明性および機械強度を両立させる観点から、プラスチック材料として、好ましくは、ポリエステル樹脂、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0046】
基材2の厚みは、例えば、4μm以上、被着体5(後述)を補強する観点から、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、30μm以上、さらに好ましくは、45μm以上であり、また、例えば、500μm以下、可撓性およびハンドリング性の観点から、好ましくは、300μm以下、より好ましくは、200μm以下、さらに好ましくは、100μm以下である。
2-2.粘着層
粘着層3は、基材2の一方面の全面に配置され、粘着層3は、粘着シート4の上層である。
【0047】
粘着層3は、粘着シート4を、被着体5に接着させるための感圧接着層である。また、粘着層3は、面方向に延びるフィルム形状を有しており、平坦な平面および平坦な下面を有する。
【0048】
粘着層3は、粘着力が高い状態と粘着力が低い状態とに、不可逆的に状態変化可能な粘着性組成物からなる。
【0049】
このような粘着性組成物としては、粘着力が高い状態から粘着力が低い状態に、不可逆的に状態変化可能な第1粘着性組成物と、粘着力が低い状態から粘着力が高い状態に、不可逆的に状態変化可能な第2粘着性組成物とが挙げられる。
【0050】
第1粘着性組成物は、ポリマーと、第1光硬化剤と、光重合開始剤とを含む。
【0051】
ポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ゴム系ポリマーなどが挙げられ、光学的透明性、接着性、および、貯蔵弾性率の制御の観点から、アクリル系ポリマーが挙げられる。
【0052】
アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として含むモノマー成分の重合により得られる。
【0053】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルであって、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの直鎖状または分岐状の、(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルなどが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、より好ましくは、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、が挙げられる。
【0054】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独使用または2種以上併用できる。
【0055】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、(メタ)アクリル酸ブチルの単独使用が挙げられる。
【0056】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、ガラス転移温度および剪断貯蔵弾性率G’を調整する観点から、好ましくは、メタクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸C4-12アルキルエステルとの併用、より好ましくは、メタクリル酸メチルとアクリル酸2-エチルヘキシルとの併用が挙げられる。
【0057】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、メタクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸C4-12アルキルエステルとを併用する場合には、メタクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸C4-12アルキルエステルの総量100質量部に対して、メタクリル酸メチルの配合割合は、例えば、5質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下であり、また、(メタ)アクリル酸C4-12アルキルエステルの配合割合は、例えば、80質量部以上であり、また、例えば、95質量部以下である
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、モノマー成分に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0058】
また、モノマー成分は、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な官能基含有ビニルモノマーを含んでいる。
【0059】
官能基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有ビニルモノマー、窒素含有ビニルモノマー、シアノ基含有ビニルモノマー、グリシジル基含有ビニルモノマー、スルホ基含有ビニルモノマー、リン酸基含有ビニルモノマー、芳香族ビニルモノマー、ビニルエステルモノマー、ビニルエーテルモノマーなどが挙げられる。
【0060】
ヒドロキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル)メチルなどが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、より好ましくは、アクリル酸2-ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0061】
カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、カルボキシペンチル(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸、より好ましくは、アクリル酸が挙げられる。
【0062】
また、カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマーも挙げられる。
【0063】
窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、N-ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。
【0064】
シアノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0065】
グリシジル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0066】
スルホ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸などが挙げられる。
【0067】
リン酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどが挙げられる。
【0068】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0069】
ビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
【0070】
ビニルエーテルモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0071】
官能基含有ビニルモノマーは、単独使用または2種以上併用できる。架橋剤(後述)が配合される場合には、ポリマーに架橋構造を導入する観点から、好ましくは、ヒドロキシル基含有ビニルモノマーが挙げられ、また、凝集力の向上の観点から、好ましくは、窒素含有ビニルモノマーが挙げられ、より好ましくは、ヒドロキシル基含有ビニルモノマーと窒素含有ビニルモノマーとを併用する。
【0072】
ヒドロキシル基含有ビニルモノマーおよび窒素含有ビニルモノマーを併用する場合には、ヒドロキシル基含有ビニルモノマーおよび窒素含有ビニルモノマーの総量100質量部に対して、ヒドロキシル基含有ビニルモノマーの配合割合は、例えば、40質量部以上であり、また、例えば、60質量部以下であり、また、窒素含有ビニルモノマーの配合割合は、例えば、40質量部以上であり、また、例えば、60質量部以下である。
【0073】
官能基含有ビニルモノマーの配合割合は、モノマー成分に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、15質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0074】
そして、アクリル系ポリマーは、上記したモノマー成分を重合してなる重合体である。
【0075】
モノマー成分を重合させるには、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、必要により、官能基含有ビニルモノマーとを配合してモノマー成分を調製し、これを、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知の重合方法により調製する。
【0076】
重合方法としては、好ましくは、溶液重合が挙げられる。
【0077】
溶液重合では、例えば、溶媒に、モノマー成分と、重合開始剤とを配合して、モノマー溶液を調製し、その後、モノマー溶液を加熱する。
【0078】
溶媒としては、例えば、有機溶媒などが挙げられる。
【0079】
有機溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、例えば、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどケトン系溶媒、例えば、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、例えば、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒が挙げられ、好ましくは、エステル系溶媒、より好ましくは、酢酸エチルが挙げられる。
【0080】
溶媒は、単独使用または2種以上併用できる。
【0081】
溶媒の配合割合は、モノマー成分100質量部に対して、例えば、100質量部以上、好ましくは、200質量部以上であり、また、例えば、500質量部以下、好ましくは、300質量部以下である。
【0082】
重合開始剤としては、例えば、パーオキサイド系重合開始剤、アゾ系重合開始剤などが挙げられる。
【0083】
パーオキサイド系重合開始剤としては、例えば、パーオキシカーボネート、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルなどの有機過酸化物が挙げられる。
【0084】
アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチルなどのアゾ化合物が挙げられる。
【0085】
重合開始剤として、好ましくは、アゾ系重合開始剤、より好ましくは、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
【0086】
重合開始剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0087】
重合開始剤の配合割合は、モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、また、例えば、1質量部以下、好ましくは、0.5質量部以下である。
【0088】
加熱温度は、例えば、50℃以上、80℃以下であり、加熱時間は、例えば、1時間以上、8時間以下である。
【0089】
これによって、モノマー成分を重合して、アクリル系ポリマーを含むアクリル系ポリマー溶液を得る。
【0090】
アクリル系ポリマー溶液の固形分濃度は、例えば、20質量%以上であり、また、例えば、80質量%以下である。
【0091】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば、100000以上、好ましくは、300000以上、500000以上であり、また、例えば、5000000以下、好ましくは、3000000以下、より好ましくは、2000000以下である。
【0092】
なお、上記の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値である。
【0093】
光硬化性組成物において、ポリマーの配合割合は、ポリマーと第1光硬化剤と光重合開始剤との総量に対して、例えば、70質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下である。
【0094】
第1光硬化剤としては、光照射により粘着層3の粘着力を十分に低下させる観点から、官能基数4以上、好ましくは、5以上、また、6以下の多官能(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的は、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能(メタ)アクリレート、例えば、ジペンタエリストールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能(メタ)アクリレートが挙げられ、好ましくは、6官能(メタ)アクリレート、より好ましくは、ジペンタエリストールヘキサアクリレートが挙げられる。
【0095】
第1光硬化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0096】
また、第1光硬化剤の官能基当量は、例えば、50g/eq以上であり、また、例えば、500g/eq以下である。
【0097】
第1光硬化剤の25℃における粘度は、例えば、100mPa・s以上、好ましくは、400mPa・s以上、より好ましくは、1000mPa・s以上、さらに好ましくは、3000mPa・s以上、とりわけ好ましくは、4000mPa・s以上、最も好ましくは、5000mPa・s以上、さらに、6000mPa・s以上であり、また、通常、8000mPa・s以下である。
【0098】
なお、上記の粘度は、B型粘度計により測定することができ、具体的には、東機産業 VISCOMETER(BH型)を用いて、測定温度25℃、ローター3号、回転数10rpm、測定時間5分の条件で測定することができる。
【0099】
第1光硬化剤の分子量は、相溶性の観点から、例えば、1500以下、好ましくは、1000以下であり、また、例えば、100以上である。
【0100】
また、第1光硬化剤は、好ましくは、ポリマーと相溶するものが選択される。
【0101】
第1光硬化剤が、ポリマーと相溶すれば、光が照射されない粘着層3の粘着力(後述)を高くすることができる。
【0102】
具体的には、ポリマーのハンセン溶解度パラメータ(HSP)と第1光硬化剤のハンセン溶解度パラメータ(HSP)との差が、例えば、4以下、好ましくは、3.5以下であれば、第1光硬化剤とポリマーとが相溶し、その結果、光が照射されない粘着層3の粘着力(後述)を高くすることができる。
【0103】
なお、ポリマーのハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、ポリマーを構成するモノマーのハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づいて算出される。
【0104】
第1光硬化剤の配合割合は、ポリマー100質量部に対して、例えば、10質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0105】
また、第1光硬化剤の配合割合は、ポリマーと第1光硬化剤と光重合開始剤との総量に対して、例えば、5質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下である。
【0106】
光重合開始剤は、第1光硬化剤の硬化反応を促進し、第1光硬化剤の種類などに応じて適宜選択され、例えば、光カチオン開始剤(光酸発生剤)、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾフェノン類、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体などの光ラジカル開始剤、例えば、光アニオン開始剤(光塩基発生剤)などが挙げられる。
【0107】
光重合開始剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0108】
このような光重合開始剤のうち、第1光硬化剤として多官能(メタ)アクリレートが用いられる場合には、好ましくは、光ラジカル開始剤、より好ましくは、ヒドロキシケトン類が採用される。
【0109】
光重合開始剤の光吸収域は、例えば、300nm以上であり、また、例えば、450nm以下である。
【0110】
光重合開始剤の配合割合は、ポリマー100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上であり、また、例えば、1質量部以下、好ましくは、0.5質量部以下である。
【0111】
また、光重合開始剤の配合割合は、ポリマーと第1光硬化剤と光重合開始剤との総量に対して、例えば、0.01質量%以上であり、また、例えば、1質量%以下、好ましくは、0.5質量部以下である。
【0112】
そして、第1粘着性組成物を調製するには、ポリマー(溶液重合によりポリマーを調製した場合は、ポリマー溶液)と、第1光硬化剤と、光重合開始剤とを上記の割合で配合し、混合する。
【0113】
第1粘着性組成物には、ポリマーに架橋構造を導入させる観点から、好ましくは、架橋剤を配合する。
【0114】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等など挙げられ、好ましくは、イソシアネート系架橋剤が挙げられる。
【0115】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0116】
また、イソシアネート系架橋剤として、上記のイソシアネートの誘導体(例えば、イソシアヌレート変性体、ポリオール変性体など)も挙げられる。
【0117】
イソシアネート系架橋剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、コロネートL(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、東ソー製)、コロネートHL(へキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、東ソー製)、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)、タケネートD110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、三井化学製)などが挙げられる。
【0118】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンなどが挙げられる。
【0119】
エポキシ系架橋剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、テトラッドC(三菱瓦斯化学製)などが挙げられる。
【0120】
エポキシ系架橋剤としては、好ましくは、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンが挙げられる。
【0121】
架橋剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0122】
第1粘着性組成物に、架橋剤を配合すれば、ポリマー中のヒドロキシル基などの官能基と、架橋剤とが反応し、ポリマーに架橋構造が導入される。
【0123】
架橋剤の官能基当量は、例えば、50g/eq以上であり、また、例えば、500g/eq以下である。
【0124】
架橋剤の配合割合は、ポリマー100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1.0質量部以上、より好ましくは、1.5質量部以上、さらに好ましくは、2.0質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、4質量部以下である。
【0125】
また、第1粘着性組成物に架橋剤を配合する場合には、架橋反応を促進させるために、架橋触媒を配合することもできる。
【0126】
架橋触媒としては、例えば、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレートなどの金属系架橋触媒などが挙げられる。
【0127】
架橋触媒は、単独使用または2種以上併用できる。
【0128】
架橋触媒の配合割合は、ポリマー100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、また、例えば、0.05質量部以下である。
【0129】
また、第1粘着性組成物には、必要に応じて、例えば、シランカップリング剤、粘着性付与剤、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、蛍光灯下または自然光下での安定化の観点から、紫外線吸収剤、蛍光灯下または自然光下での安定化の観点から、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤などの各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で、含有させることができる。
【0130】
これにより、第1粘着性組成物が得られる。
【0131】
ポリマーの配合割合は、第1粘着性組成物に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、80質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下である。
【0132】
第1光硬化剤の配合割合は、第1粘着性組成物に対して、例えば、10質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下である。
【0133】
光重合開始剤の配合割合は、第1粘着性組成物に対して、例えば、0.01質量%以上であり、また、例えば、0.5質量%以下、好ましくは、0.1質量%以下である。
【0134】
第2粘着性組成物は、上記したポリマーと、第2光硬化剤と、上記した光重合開始剤とを含む。
【0135】
ポリマーとしては、上記した第1粘着性組成物に配合されるポリマーと同様のものが挙げられ、好ましくは、アクリル系ポリマーが挙げられる。
【0136】
ポリマーは、単独使用または2種以上併用できる。
【0137】
ポリマーの配合割合は、上記した第1粘着性組成物に配合されるポリマーの配合割合と同様である。
【0138】
第2光硬化剤は、光照射により粘着層3の粘着力を十分に向上させる観点から、例えば、官能基数2以上3以下の多官能(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどの2官能(メタ)アクリレート、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレートなどが挙げられ、好ましくは、2官能(メタ)アクリレート、より好ましくは、ポリプロピレングリコールジアクリレートが挙げられる。
【0139】
第2光硬化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0140】
また、第2光硬化剤の官能基当量は、例えば、50g/eq以上であり、また、例えば、500g/eq以下である。
【0141】
第2光硬化剤の25℃における粘度は、例えば、5mPa・s以上であり、また、例えば、1000mPa・s以下である。
【0142】
第2光硬化剤の分子量は、相溶性の観点から、例えば、200以下であり、また、例えば、1000以上である。
【0143】
また、第2光硬化剤は、好ましくは、ポリマーと相溶しないものが選択される。
【0144】
第2光硬化剤が、ポリマーと相溶しなければ、光が照射されない粘着層3の粘着力(後述)を低くすることができる。
【0145】
具体的には、ポリマーのハンセン溶解度パラメータ(HSP)と第2光硬化剤のハンセン溶解度パラメータ(HSP)との差が、例えば、3以上、好ましくは、4以上であれば、第2光硬化剤とポリマーとが相溶せず、その結果、光が照射されない粘着層3の粘着力(後述)を低くすることができる。
【0146】
第2光硬化剤の配合割合は、上記した第1粘着性組成物に配合される第1光硬化剤の配合割合と同様である。
【0147】
光重合開始剤としては、上記した第1粘着性組成物に配合される光重合開始剤と同様のものが挙げられ、第2光硬化剤として多官能(メタ)アクリレートが用いられる場合には、好ましくは、光ラジカル開始剤、より好ましくは、ヒドロキシケトン類が採用される。
【0148】
光重合開始剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0149】
光重合開始剤の配合割合は、上記した第1粘着性組成物に配合される光重合開始剤の配合割合と同様である。
【0150】
そして、第2粘着性組成物を調製するには、ポリマー(溶液重合によりポリマーを調製した場合は、ポリマー溶液)と、第2光硬化剤と、光重合開始剤とを、上記の割合で配合し、混合する。
【0151】
第2粘着性組成物には、ポリマーに架橋構造を導入させる観点から、好ましくは、架橋剤を配合する。
【0152】
架橋剤としては、上記した第1粘着性組成物に配合される架橋剤と同様のものが挙げられ、好ましくは、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が挙げられる。
【0153】
架橋剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0154】
架橋剤の配合割合は、上記した第1粘着性組成物に配合される架橋剤の配合割合と同様である。
【0155】
また、第2粘着性組成物に架橋剤を配合する場合には、架橋反応を促進させるために、架橋触媒を配合することもできる。
【0156】
架橋触媒としては、上記した第1粘着性組成物に配合される架橋触媒と同様のものが挙げられる。
【0157】
架橋触媒は、単独使用または2種以上併用できる。
【0158】
架橋触媒の配合割合は、上記した第1粘着性組成物に配合される架橋触媒の配合割合と同様である。
【0159】
また、第2粘着性組成物には、必要に応じて、上記した第1粘着性組成物に配合される各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で、含有させることができる。
【0160】
これにより、第2粘着性組成物が得られる。
【0161】
第2粘着性組成物に対するポリマーの配合割合、第2光硬化剤の配合割合および光重合開始剤の配合割合は、上記した第1粘着性組成物に対するポリマーの配合割合、第1光硬化剤の配合割合および光重合開始剤の配合割合と同様である。
【0162】
すなわち、第1粘着性組成物および第2粘着性組成物は、ポリマーと、光重合開始剤と、必要により配合される架橋剤、架橋触媒および各種添加剤とを含む点で共通し、第1粘着性組成物は、官能基数4以上の多官能(メタ)アクリレートである第1光硬化剤を含む一方、第2粘着性組成物は、官能基数3以下の多官能(メタ)アクリレートである第2光硬化剤を含む点で異なる。
【0163】
つまり、第1光硬化剤および第2光硬化剤のうち、いずれを配合するかによって、第1粘着性組成物または第2粘着性組成物を選択的に調製することができる。
【0164】
そして、後述する方法により、第1粘着性組成物または第2粘着性組成物から粘着層3を形成する。
【0165】
粘着層3の厚みは、粘着性の観点から、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、15μm以上、さらに好ましくは、20μm以上であり、また、ハンドリング性の観点から、例えば、300μm以下、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、50μm以下、さらに好ましくは、40μm以下、とりわけ好ましくは、30μm以下である。
2-3.粘着シートの製造方法
次に、粘着シート4を製造する方法を、図2を参照して説明する。
【0166】
この粘着シート4を製造する方法は、基材2を準備する第1工程と、基材2の一方面に、粘着層3を配置する第2工程とを備える。
【0167】
第1工程では、図2Aに示すように、基材2を準備する。
【0168】
第2工程では、図2Bに示すように、基材2の一方面に、粘着層3を配置する。
【0169】
基材2の一方面に、粘着層3を配置するには、例えば、基材2の一方面に、上記の第1粘着性組成物または第2粘着性組成物を塗布し、必要により溶媒を乾燥除去する。
【0170】
第1粘着性組成物または第2粘着性組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコートなどが挙げられる。
【0171】
乾燥条件として、乾燥温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上、より好ましくは、100℃以上であり、また、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下、より好ましくは、150℃以下であり、乾燥時間は、例えば、5秒以上、好ましくは、10秒以上であり、また、例えば、20分以下、好ましくは、15分以下、より好ましくは、10分以下である。
【0172】
これにより、基材2の一方面に、粘着層3が形成され、基材2と、基材2の一方面に配置される粘着層3とを備えた粘着シート4が得られる。
【0173】
なお、第1粘着性組成物または第2粘着性組成物が架橋剤を含む場合には、乾燥除去と同時、または、溶媒の乾燥後(粘着層3の一方面に、剥離フィルム6(後述)を積層した後)に、好ましくは、エージングにより架橋を進行させる。
【0174】
エージング条件は、架橋剤の種類によって適宜設定され、エージング温度は、例えば、20℃以上であり、また、例えば、160℃以下、好ましくは、50℃以下であり、また、エージング時間は、1分以上、好ましくは、12時間以上、より好ましくは、1日以上であり、また、例えば、7日以下である。
【0175】
上記したように、粘着シート4における粘着層3は、第1粘着性組成物または第2粘着性組成物のいずれかによって形成されている。
【0176】
第1粘着性組成物は、粘着力が高い状態から粘着力が低い状態に、不可逆的に状態変化可能である。具体的には、第1粘着性組成物は、光照射によって、粘着力が高い状態から粘着力が低い状態に、不可逆的に状態変化可能である。
【0177】
つまり、このような第1粘着性組成物から形成される粘着層3に光照射すると、光硬化後の粘着層3の粘着力が、光硬化前の粘着層3の粘着力よりも小さくなる。
【0178】
そのため、後述する第5工程において、粘着層3の一部に光を照射すると、光が照射されない第1粘着性組成物からなる粘着層3が、高粘着領域10となり、光が照射される第1粘着性組成物からなる粘着層3が、低粘着領域11となる。これにより、粘着層3は、高粘着領域10と低粘着領域11とを備える。
【0179】
そして、光が照射されない粘着層3の粘着力(高粘着領域10の粘着力)は、例えば、5N/25mm以上、好ましくは、8N/25mm以上、より好ましくは、10N/25mm以上、さらに好ましくは、12N/25mm以上である。
【0180】
また、光が照射される粘着層3の粘着力(低粘着領域11の粘着力)は、例えば、4N/25mm以下、好ましくは、3N/25mm以上である。
【0181】
高粘着領域10の粘着力が、上記下限以上であれば、高粘着領域10を被着体5に貼着したまま残存させ、対応する基材2とともに被着体5の補強に利用できる。
【0182】
また、低粘着領域11の粘着力が、上記上限以下であれば、低粘着領域11を対応する基材2とともに中間積層体1から容易に取り除くことができる。
【0183】
なお、上記の粘着力は、詳しくは、後述する実施例で述べるが、粘着シート4をポリイミドフィルムに25℃で貼着し、剥離速度300mm/分で180度ピール試験することにより測定される。
【0184】
また、光が照射されない粘着層3の25℃における剪断貯蔵弾性率G’は、例えば、6×10Pa以上、好ましくは、7×10Pa以上であり、また、例えば、9×10Pa以下、好ましくは、8×10Pa以下である。
【0185】
また、光が照射される粘着層3の25℃における剪断貯蔵弾性率G’は、2.00×10Pa以上、好ましくは、2.50×10Pa以上、より好ましくは、3.0×10Pa以上である。
【0186】
なお、上記の剪断貯蔵弾性率G’は、詳しくは、後述する実施例で述べるが、周波数1Hz、昇温速度5℃/分、温度範囲-50℃~150℃の条件における動的粘弾性測定により測定される。
【0187】
一方、第2粘着性組成物は、粘着力が低い状態から粘着力が高い状態に、不可逆的に状態変化可能である。具体的には、第2粘着性組成物は、光照射によって、粘着力が低い状態から粘着力が高い状態に、不可逆的に状態変化可能である。
【0188】
つまり、第2粘着性組成物から形成される粘着層3に光照射すると、光硬化後の粘着層3の粘着力が、光硬化前の粘着層3の粘着力よりも大きくなる。
【0189】
そのため、後述する第5工程において、粘着層3の一部に光を照射すると、光が照射されない第2粘着性組成物からなる粘着層3が、低粘着領域11となり、光が照射される第2粘着性組成物からなる粘着層3が、高粘着領域10となる。これにより、粘着層3は、高粘着領域10と低粘着領域11とを備える。
【0190】
そして、光が照射される粘着層3の粘着力(高粘着領域10の粘着力)は、例えば、5N/25mm以上、好ましくは、8N/25mm以上、より好ましくは、10N/25mm以上、さらに好ましくは、12N/25mm以上である。
【0191】
また、光が照射されない粘着層3の粘着力(低粘着領域11の粘着力)は、例えば、4N/25mm以下、好ましくは、1N/25mm以下である。
【0192】
高粘着領域10の粘着力が、上記下限以上であれば、高粘着領域10を被着体5に貼着したまま残存させ、対応する基材2とともに被着体5の補強に利用できる。
【0193】
また、低粘着領域11の粘着力が、上記上限以下であれば、低粘着領域11を対応する基材2とともに中間積層体1から容易に取り除くことができる。
【0194】
また、光が照射されない粘着層3の25℃における剪断貯蔵弾性率G’は、例えば、1×10Pa以上、好ましくは、5×10Pa以上であり、また、例えば、1.2×10Pa以下、好ましくは、1×10Pa以下である。
【0195】
また、光が照射される粘着層3の25℃における剪断貯蔵弾性率G’は、例えば、1.00×10Pa以上、好ましくは、1.3×10Pa以上、より好ましくは、1.5×10Pa以上であり、また、例えば、1.0×10Pa以下である。
【0196】
また、図2Cに示すように、粘着シート4は、必要により、粘着層3の一方面に、剥離フィルム6を積層してもよい。
【0197】
このような場合には、粘着シート4は、基材2と、粘着層3と、剥離フィルム6とを順に備える。
【0198】
剥離フィルム6としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどの可撓性のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0199】
剥離フィルム6の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、50μm以下である。
【0200】
剥離フィルム6には、好ましくは、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、脂肪酸アミド系などの離型剤による離型処理、または、シリカ粉による離型処理が施されている。
3.被着体
被着体5は、粘着シート4によって、補強される被補強体であって、例えば、光学デバイス、電子デバイスおよびその構成部品などが挙げられる。
【0201】
なお、図1において、被着体5は、平板形状を有するが、被着体5の形状は、特に限定されず、光学デバイス、電子デバイスおよびその構造部品の種類によって、種々の形状が選択される。
4.中間積層体の製造方法
中間積層体1の製造方法の一実施形態について、図3および図4を参照して説明する。
【0202】
この中間積層体1の製造方法は、粘着シート4を準備する工程(第3工程)、粘着シート4の一方面に被着体5を配置する工程(第4工程)、および、粘着層3の一部に光照射し、粘着層3に、光照射された照射部分7と、光照射されていない非照射部分8とを形成することにより、照射部分7および非照射部分8のうちいずれか一方が、粘着力が高い状態の粘着性組成物からなる高粘着領域10となり、他方が粘着力が低い状態の粘着性組成物からなる低粘着領域11となる工程(第5工程)を備える。
【0203】
第5工程では、照射部分7および非照射部分8のうち、一方が、高粘着領域10となり、他方が低粘着領域11となるが、粘着層3が、第1粘着性組成物または第2粘着性組成物のいずれかによって形成されたかによって、照射部分7および非照射部分8のうち、いずれが高粘着領域10または低粘着領域11となるかが決まる。
【0204】
そこで、第1粘着性組成物によって粘着層3が形成された場合と、第2粘着性組成物によって粘着層3が形成された場合とに分けて、以下説明する。
4-1.第1粘着性組成物によって粘着層を形成する中間積層体の製造方法
第1に、第1粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1の製造方法(製法1)について、図3を参照して説明する。
【0205】
第3工程では、図3Aに示すように、粘着シート4を準備する。
【0206】
次いで、第4工程では、図3Bに示すように、基材2の一方面に配置された粘着層3と、被着体5とが接触するように、被着体5に粘着シート4を貼着する。
【0207】
次いで、第5工程では、図3Cに示すように、粘着層3の一部に光を照射することによって、高粘着領域10と低粘着領域11とを形成する。
【0208】
なお、以下の説明では、粘着シート4を面方向に3分割したうちの両端部分の2ヶ所を非照射部分8(換言すれば、粘着シート4を面方向に3分割したうちの中央分の1ヶ所のみが照射部分7)として、説明する。
【0209】
第5工程では、粘着シート4において、照射部分7には、光を照射し、非照射部分8には、光を照射しない。
【0210】
具体的には、照射部分7には、マスク9を配置せず、非照射部分8に、光を遮断するマスク9を配置する。
【0211】
上記したように、第1粘着性組成物から形成された粘着層3に光照射し、光硬化させると、光硬化後の粘着層3の粘着力が、光硬化前の粘着層3の粘着力よりも小さくなる。
【0212】
つまり、照射部分7における粘着層3は、粘着力が低下する一方、非照射部分8における粘着層3には、粘着力の低下が起こらず、粘着力は強いままで残る。
【0213】
そうすると、照射部分7は、非照射部分8に対して、相対的に粘着力が低くなるため、照射部分7(具体的には、状態変化後(光硬化後)の第1粘着性組成物からなる粘着層3)は、低粘着領域11となり、非照射部分8(具体的には、状態変化前(光硬化前)の第1粘着性組成物からなる粘着層3)は、高粘着領域10となる。
【0214】
これにより、高粘着領域10と低粘着領域11とを備える粘着層3が得られる。また、粘着シート4と被着体5とを順に備える(換言すれば、基材2と粘着層3と被着体5とを順に備える)中間積層体1が得られる。
【0215】
図3では、基材2は、平板形状を有するため、基材2の上面の任意の部分にマスク9を配置することができるが、基材2の形状によっては、特定の部分にマスク9を配置しづらい場合がある。そして、マスク9を配置しづらい部分を、取り除く場合がある。
【0216】
このような場合には、第2粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1では、マスク9を配置する非照射部分8が、低粘着領域11となり、つまり、マスク9を配置しづらい部分にマスク9を配置する必要があるため、作業が煩雑になるが、しかし、第1粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1では、マスク9を配置しない照射部分7が、低粘着領域11となり、つまり、マスク9を配置しづらい部分にマスク9を配置する必要がなく、それ以外の部分にマスク9を配置することができるので、作業が簡便になる。
4-2.第2粘着性組成物によって粘着層を形成する中間積層体の製造方法
第2に、第2粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1の製造方法(製法2)について、図4を参照して説明する。
【0217】
第3工程では、図4Aに示すように、粘着シート4を準備する。
【0218】
次いで、第4工程では、図4Bに示すように、基材2の一方面に配置された粘着層3と、被着体5とが接触するように、被着体5に粘着シート4を貼着する。
【0219】
次いで、第5工程では、図4Cに示すように、粘着層3の一部に光を照射することによって、高粘着領域10と低粘着領域11とを形成する。
【0220】
なお、以下の説明では、粘着シート4を面方向に3分割したうちの両端部分の2ヶ所を照射部分7(換言すれば、粘着シート4を面方向に3分割したうちの中央分の1ヶ所のみが非照射部分8)として、説明する。
【0221】
第5工程では、粘着シート4において、照射部分7には、光を照射し、非照射部分8には、光を照射しない。
【0222】
具体的には、照射部分7には、マスク9を配置せず、非照射部分8に、光を遮断するマスク9を配置する。
【0223】
上記したように、第2粘着性組成物から形成された粘着層3に光照射し、光硬化させると、光硬化後の粘着層3の粘着力が、光硬化前の粘着層3の粘着力よりも大きくなる。
【0224】
つまり、照射部分7における粘着層3は、粘着力が向上する一方、非照射部分8における粘着層3には、粘着力の向上が起こらない。
【0225】
そうすると、照射部分7は、非照射部分8に対して、相対的に粘着力が高くなるため、照射部分7(具体的には、状態変化後(光硬化後)の第2粘着性組成物からなる粘着層3)は、高粘着領域10となり、非照射部分8(具体的には、状態変化前(光硬化前)の第2粘着性組成物からなる粘着層3)は、低粘着領域11となる。
【0226】
これにより、高粘着領域10と低粘着領域11とを備える粘着層3が得られる。また、粘着シート4と被着体5とを順に備える(換言すれば、基材2と粘着層3と被着体5とを順に備える)中間積層体1が得られる。
【0227】
図4では、基材2は、平板形状を有するため、基材2の上面の任意の部分にマスク9を配置することができるが、基材2の形状によっては、特定の部分にマスク9を配置しづらい場合がある。そして、マスク9を配置しづらい部分を、残存させる場合がある。
【0228】
このような場合には、第1粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1では、マスク9を配置しない非照射部分8が、高粘着領域10となり、つまり、マスク9を配置しづらい部分にマスク9を配置する必要があるため、作業が煩雑になるが、しかし、第2粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1では、マスク9を配置しない非照射部分8が、高粘着領域10となり、つまり、マスク9を配置しづらい部分にマスク9を配置する必要がなく、それ以外の部分にマスク9を配置することができるので、作業が簡便になる。
5.中間積層体および中間積層体の製造方法の作用効果
中間積層体1の粘着層3は、粘着力が高い状態と粘着力が低い状態とに、不可逆的に状態変化可能な粘着性組成物からなる。
【0229】
そのため、状態変化(光硬化)によって、粘着力が高い状態の粘着性組成物からなる高粘着領域10、および、粘着力が低い状態の粘着性組成物からなる低粘着領域11を形成することができる。
【0230】
すなわち、この中間積層体1は、粘着力が高い粘着性組成物から高粘着領域10を形成し、粘着力が低い粘着性組成物から低粘着領域11を形成することにより、高粘着領域10と低粘着領域11とを併有させるものではなく、同一組成の粘着性組成物から、高粘着領域10および低粘着領域11を形成することにより、これらを併有させることができる。
【0231】
そして、中間積層体1の粘着層3は、高粘着領域10と、低粘着領域11とを備えるため、高粘着領域10を、被着体5に貼着したまま残存させ、対応する基材2とともに被着体5の補強に利用できる一方、低粘着領域11を対応する基材2とともに被着体5から取り除くことができる。
【0232】
その結果、被着体5が補強された製品積層体12(後述)を得ることができる。
【0233】
中間積層体1の製造方法は、粘着層3の一部に光を照射することによって、高粘着領域10と低粘着領域11とを形成する第5工程を備える。
【0234】
そのため、高粘着領域10および低粘着領域11を備える粘着層3を得ることができる。その結果、このような粘着層3を備える中間積層体1を製造することができる。
【0235】
また、この中間積層体1の製造方法では、光照射により、粘着性組成物を部分的に光硬化させ、高粘着領域10および低粘着領域11を形成している。
【0236】
そのため、加熱により、粘着性組成物を熱硬化させる場合と比べて、被着体5の熱による損傷を抑制することができる。
6.製品積層体および製品積層体の製造方法
製品積層体12は、最終形態のデバイスまたはそのデバイスの構成部品である。
【0237】
製品積層体12は、上記の中間積層体1から、低粘着領域11を取り除くことにより製造される。
【0238】
具体的には、製品積層体12は、上記した中間積層体11の製造方法により製造される中間積層体1を準備する第6工程と、粘着層3における低粘着領域11を取り除く第7工程とを備える製品積層体の製造方法により製造される。
【0239】
製品積層体12の製造方法の一実施形態について、図5を参照して説明する。
【0240】
第6工程では、図5Aに示すように、第1粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1の製造方法(製法1)、または、第2粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1の製造方法(製法2)により中間積層体1を製造し、中間積層体1を準備する。
【0241】
第7工程では、図5Bに示すように、中間積層体1から低粘着領域11を取り除く。
【0242】
具体的には、高粘着領域10およびそれと対応する基材2からなる残存部分13と、低粘着領域11およびそれと対応する基材2からなる除去部分14とを、例えば、COレーザーなどで切断し、その後、除去部分14のみを、除去部分14の端を起点として、剥離する。
【0243】
このとき、除去部分14における低粘着領域11の粘着力は低下しているため、中間積層体1から除去部分14を容易に剥離することができる。
【0244】
一方、残存部分13における高粘着領域10の粘着力は低下しておらず、上記した高い粘着力を有するため、残存部分13は、中間積層体1に残存する。
【0245】
また、高粘着領域10は、上記した高い粘着力を有するため、除去部分14を剥離しても、除去部分14に接する残存部分13の端部が浮き上がることを抑制できる。
【0246】
そして、残存部分13は、そのまま、被着体5の補強に利用することができる。
【0247】
これにより、製品積層体12が得られる。
7.製品積層体の製造方法の作用効果
製品積層体12の製造方法は、上記の中間積層体の製造方法(第1粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1の製造方法(製法1)または第2粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1の製造方法(製法2))により製造される中間積層体1における粘着層3の低粘着領域11を取り除く第7工程を備える。
【0248】
低粘着領域11における粘着力は低いため、除去部分14を中間積層体1から容易に取り除くことができる。
【0249】
一方、残存部分13は、中間積層体1に残存させて、被着体5を補強することができる。
【0250】
また、残存部分13によって、適度な剛性が付与されるため、ハンドリング性が向上する。
【0251】
とりわけ、被着体5が電子デバイスである場合について、電子デバイスは、高度集積化、小型軽量化および構成部品の薄型化に伴って、電子デバイスの構成部品の厚みが小さくなる傾向がある。この薄型化により、構成部品の積層界面で応力に起因する湾曲やカールが生じやすくなる。また、薄型化により自重による撓みが生じやすくなる。
【0252】
このような場合においても、この粘着シート4によれば、残存部分13によって、電子デバイスに剛性を付与できるため、応力や自重などによる湾曲、カール、撓みなどを抑制し、ハンドリング性を向上させることができる。
【0253】
また、電子デバイスの製造工程において、自動化された装置による搬送や加工がなされる場合には、電子デバイスの構成部品が、搬送アームおよびピンなど部材と接触し、構成部品が破損する場合がある。
【0254】
とりわけ、高度集積化、小型軽量化および薄型化されたデバイスでは、搬送装置などの接触や切断加工の際に、局所的な応力の集中による破損や寸法変化が生じる場合がある。
【0255】
このような場合においても、この粘着シート4によれば、残存部分13によって、適度な剛性が付与されるとともに、応力が緩和・分散され、クラック、割れ、剥がれ、寸法変化などを抑制することができる。
8.変形例
低粘着領域11の形状は、特に限定されず、例えば、十字型(図6)、丸型(図7)でもよい。
【0256】
低粘着領域11が十字型(具体的には、粘着シート4の面の両端を含む十字形状)である場合について、図6を参照して説明する。
【0257】
第6工程では、図6Aに示すように、第1粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1の製造方法(製法1)、または、第2粘着性組成物によって粘着層3を形成する中間積層体1の製造方法(製法2)により中間積層体1を製造し、中間積層体1を準備する。
【0258】
図6Aに示すように、中間積層体1において、低粘着領域11が、十字型であり、高粘着領域10が、十字型以外の部分となる。
【0259】
次いで、第7工程では、図6Bに示すように、上記した方法により、中間積層体1から低粘着領域11(除去部分14)を取り除く。
【0260】
これにより、製品積層体12が得られる。
【0261】
また、上記した説明では、第7工程において、除去部分14の端を起点として、中間積層体1から除去部分14を剥離したが、とりわけ、除去部分14の端を起点にしづらい場合がある。
【0262】
具体的には、図7Aに示すように、低粘着領域11が、粘着シート4において、粘着シート4の中央部において、円形である場合には、除去部分14が粘着シート4の面の端を含まないので、除去部分14の端を起点として、除去部分14を剥離しづらい。
【0263】
しかし、このような場合には、図7Bに示すように、第7工程において、粘着ローラー15で、除去部分14を粘着させることによって、除去部分14を剥離することができる。
【0264】
このように、この中間積層体1によれば、任意の部分を取り除くことができる。
【実施例
【0265】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0266】
なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
1.成分の詳細
各実施例および各比較例で用いた各成分を以下に記載する。
タケネートD110N:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の75%酢酸エチル溶液、三井化学製
A-DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;官能基当量96g/eq
APG700:ポリプロピレングリコール#700(n=12)ジアクリレート;官能基当量404g/eq
A200:ポリエチレングリコール#200(n=4)ジアクリレート
テトラッドC:N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン(4官能のエポキシ化合物)、三菱瓦斯化学製)
イルガキュア184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF製
2.ポリマーの調製
合成例1
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、モノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)9重量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)63重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)13重量部、N-ビニルピロリドン(NVP)15重量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、ならびに溶媒として酢酸エチル233重量部を投入し、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換した。その後、60℃に加熱し、7時間反応させて、重量平均分子量(Mw)が1200000のアクリル系ポリマーの溶液を得た。
【0267】
合成例2
モノマーを、アクリル酸ブチル95重量部、アクリル酸5重量部に変更した以外は合成例1と同様に重合し、重量平均分子量(Mw)が600000のアクリル系ポリマーの溶液を得た。
3.粘着性組成物の調製
調製例1(第1粘着性組成物の調製)
合成例1のアクリル系ポリマー溶液に、架橋剤として、タケネートD110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の75%酢酸エチル溶液、三井化学製)をポリマーの固形分100重量部に対して2.5質量部、光硬化剤として、A-DPH(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を、ポリマーの固形分100重量部に対して20質量部、光重合開始剤として、イルガキュア184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製)を、ポリマーの固形分100重量部に対して0.1質量部、添加し、均一に混合して、第1粘着性組成物を調製した。
【0268】
調製例2(第2粘着性組成物の調製)
光硬化剤を、APG700(ポリプロピレングリコール#700(n=12)ジアクリレート)に変更した以外は、調製例1と同様にして、第2粘着性組成物を調製した。
【0269】
調製例3(第2粘着性組成物の調製)
合成例2のアクリル系ポリマー溶液に、架橋剤として、テトラッドC(N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン(4官能のエポキシ化合物、三菱瓦斯化学製))をポリマーの固形分100重量部に対して0.5質量部、光硬化剤として、A200(ポリエチレングリコール#200(n=4)ジアクリレート)を、ポリマーの固形分100重量部に対して30質量部、光重合開始剤として、イルガキュア184を、ポリマーの固形分100重量部に対して0.1質量部添加し、均一に混合して、第2粘着性組成物を調製した。
4.粘着シートの製造
製造例1
表面処理がされていない厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製「ルミラーS10」)を基材とし、その基材上に、調製例1の光硬化性組成物を、乾燥後の厚みが25μmとなるように、ファウンテンロールにより塗布した。130℃で1分間乾燥して溶媒を除去した。これにより、基材の一方面に粘着層を形成した。さらに、粘着層の一方面に、剥離フィルム(表面がシリコーン離型処理された厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型処理面を貼り合わせた。その後、25℃の雰囲気で4日間のエージング処理をし、ポリマーと架橋剤との架橋反応を進行させた。これにより、粘着シートを製造した。
【0270】
製造例2
粘着性組成物を、調製例2の第2粘着性組成物に変更した以外は、製造例1と同様にして、粘着シートを製造した。
【0271】
製造例3
粘着性組成物を、調製例3の第2粘着性組成物に変更した以外は、製造例1と同様にして、粘着シートを製造した。
5.中間積層体の製造
実施例1
製造例1の粘着シートから剥離フィルムを剥離した後、この粘着シートを厚み12.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製「カプトン50EN」)に貼付した。
【0272】
次いで、粘着層の一部に光を照射した。
【0273】
具体的には、粘着シートを面方向に3分割したうちの両端部分の2ヶ所(非照射部分)には、マスクを配置することで、光を照射せず、粘着シートを面方向に3分割したうちの中央分の1ヶ所(照射部分)には、マスクを配置せず、光を照射した。
【0274】
後述する粘着力の評価から明らかなように、製造例1の粘着シートにおいて、光硬化後の粘着力は、光硬化前の粘着力に比べて小さい。
【0275】
このことから、照射部分は、非照射部分に対して、相対的に粘着力が低くなり、照射部分は、低粘着領域になり、非照射部分は、高粘着領域になったとわかる。
【0276】
これにより、中間積層体を製造した。
【0277】
実施例2
製造例2の粘着シートから剥離フィルムを剥離した後、この粘着シートを厚み12.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製「カプトン50EN」)に貼付した。
【0278】
次いで、粘着層の一部に光を照射した。
【0279】
具体的には、粘着シートを面方向に3分割したうちの両端部分の2ヶ所(照射部分)には、マスクを配置せず、光を照射し、粘着シートを面方向に3分割したうちの中央分の1ヶ所(非照射部分)には、マスクを配置することで、光を照射しなかった。
【0280】
後述する粘着力の評価から明らかなように、製造例2の粘着シートにおいて、光硬化後の粘着力は、光硬化前の粘着力に比べて高い。
【0281】
このことから、照射部分は、非照射部分に対して、相対的に粘着力が高くなり、照射部分は、高粘着領域になり、非照射部分は、低粘着領域になったとわかる。
【0282】
これにより、中間積層体を製造した。
【0283】
実施例3
製造例3の粘着シートから剥離フィルムを剥離した後、この粘着シートを厚み12.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製「カプトン50EN」)に貼付した。
【0284】
次いで、粘着層の一部に光を照射した。
【0285】
具体的には、粘着シートを面方向に3分割したうちの両端部分の2ヶ所(照射部分)には、マスクを配置せず、光を照射し、粘着シートを面方向に3分割したうちの中央分の1ヶ所(非照射部分)には、マスクを配置することで、光を照射しなかった。
【0286】
後述する粘着力の評価から明らかなように、製造例3の粘着シートにおいて、光硬化後の粘着力は、光硬化前の粘着力に比べて高い。
【0287】
このことから、照射部分は、非照射部分に対して、相対的に粘着力が高くなり、照射部分は、高粘着領域になり、非照射部分は、低粘着領域になったとわかる。
【0288】
これにより、中間積層体を製造した。
【0289】
比較例1
粘着シートとしてピックアップテープを用い、このピックアップテープを厚み12.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製「カプトン50EN」)に貼付した。
【0290】
これにより、中間積層体を製造した。
6.評価
(剪断貯蔵弾性率)
各調製例の光硬化性組成物を乾燥後の厚みが25μmとなるように、離形処理がほどこされたPETフィルムに塗工し、その後、乾燥およびエージングすることにより、粘着層を得た。同様の手順で、粘着層を60枚準備し、この粘着層を積層し、1.5mmのせん断貯蔵弾性率測定用のサンプル(光硬化前)を作製した。また、上記のようにして得られたせん断貯蔵弾性率測定用のサンプル(光硬化前)に、ケミカルランプを用いて照度5mW/cmの紫外線を360秒間照射することによりにより、せん断貯蔵弾性率測定用のサンプル(光硬化後)を調製した。
【0291】
せん断貯蔵弾性率測定用のサンプル(光硬化前)およびせん断貯蔵弾性率測定用のサンプル(光硬化後)を、Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を用いて、以下の条件により、剪断貯蔵弾性率を測定した。その結果を表1に示す。
(測定条件)
変形モード:ねじり
測定周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度:-50~150℃
形状:パラレルプレート 8.0mmφ
(粘着力)
厚み12.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製「カプトン50EN」)を、両面接着テープ(日東電工製「No.531」)を介してガラス板に貼付し、測定用ポリイミドフィルム基板を得た。幅25mm×長さ100mmに切り出した各製造例の粘着シートから剥離フィルムを除去し、粘着シートと、測定用ポリイミドフィルム基板とを、ハンドローラを用いて、25℃で貼り合わせ、光硬化前の測定用試料を調製した。
【0292】
別途、上記と同様の手順で、光硬化前の粘着シートを調製し、光硬化前の粘着シートの基材側から、紫外線を照射して粘着層を光硬化させ、光硬化後の測定用試料を調製した。
【0293】
この光硬化前の測定用試料および光硬化後の測定用試料を、それぞれについて、粘着力を測定した。
【0294】
具体的には、光硬化前の測定用試料および光硬化後の測定用試料の端部(粘着シートの端部)をチャックで保持して、引張速度300mm/分で、補強フィルムの180°ピールを実施し、ピール強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0295】
(剥離後の外観)
各実施例の中間積層体において、高粘着領域および低粘着領域を、切断し、その後、低粘着領域のみを、低粘着領域の端を起点として、剥離した。
【0296】
また、比較例1について、ピックアップテープの面方向に3分割したうちの中央分を、切断し、この部分を剥離した。
【0297】
剥離後の外観について、目視によって評価した。
【0298】
剥離後の外観に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表1に示す
○:中間積層体に残存する粘着シートに、剥がれが観測されなかった。
×:中間積層体に残存する粘着シートに、剥がれが観測された。
【0299】
【表1】
【0300】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0301】
本発明の中間積層体、中間積層体の製造方法および製品積層体の製造方法は、各種デバイスの製造において、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0302】
1 中間積層体
2 基材
3 粘着層
4 粘着シート
5 被着体
7 照射部分
8 非照射部分
10 高粘着領域
11 低粘着領域
12 製品積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7