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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】スライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
B60N2/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021025454
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127356
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(73)【特許権者】
【識別番号】517251797
【氏名又は名称】株式会社TF-METAL
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】黒田 俊介
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-52839(JP,A)
【文献】特開2007-230333(JP,A)
【文献】特開2012-25243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートのシート本体をスライド可能に支持するスライド装置において、
乗物に対して固定される固定レールと、
前記固定レールに対してスライド可能に装着され、前記シート本体が固定される可動レールであって、前記シート本体が固定される帯板状の天板部、及び当該天板部の幅方方向一端側及び他端側それぞれに設けられ、互いに対向する帯板状の側板部を有する可動レールと、
前記可動レールのスライドを規制するロック位置と当該規制が解除された非ロック位置との間で変位可能なロック部材と、
前記ロック部材をロック位置に保持するための保持力を当該ロック部材に作用させる保持バネと、
前記ロック部材を非ロック位置に変位させるための解除レバーであって、前記可動レールの長手方向に略沿って前記ロック部材側に向けて延びているとともに、前記ロック部材を下向きに押圧して当該ロック部材を非ロック位置とするための解除位置と当該ロック部材をロック位置とするための初期位置との間で揺動変位可能な解除レバーと、
前記解除レバーを初期位置に保持するとともに、解除位置にある前記解除レバーを初期位置に復帰させるための弾性力を当該解除レバーに作用させる復帰バネと、
前記可動レールの長手方向と略平行な方向であって、前記ロック部材側に向かう向きを荷重の向きとしたとき、前記解除レバーが当該荷重の向きに予め決められた寸法を超えて変位することを規制する規制部とを備え
前記規制部は、前記天板部に設けられた貫通穴の外縁から前記ロック部材側に突出した突起部により構成され、
さらに、前記解除レバーの先端は、前記貫通穴の下方に位置しているとともに、前記規制部は、前記荷重の向きにおいて前記解除レバーと対向しているスライド装置。
【請求項2】
前記規制部は、当該規制部の下端が当該規制部の基端に比べて、前記解除レバーの先端に近接するように傾いている請求項1に記載のスライド装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記解除レバーの先端から離間した位置に設けられており、
さらに、前記解除レバーが荷重の向きに変位したときに、前記規制部と前記解除レバーの先端とが接触して当該解除レバーの変位が規制される請求項1又は2に記載のスライド装置。
【請求項4】
前記規制部から荷重の向きにずれた位置であって、前記解除レバーの先端と対向する位置には、前記保持バネの一部が存在する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスライド装置。
【請求項5】
前記復帰バネに設けられ、前記解除レバーに係止された被係止部と、
前記可動レールに設けられ、前記解除レバーに対して前記被係止部と反対側から当該解除レバーに接触して当該解除レバーの揺動中心位置を構成する支持部とを備え、
前記被係止部は、前記解除レバーを初期位置に復帰させるための弾性力を当該解除レバーに作用させるとともに、当該解除レバーが荷重の向きに変位することを規制している請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスライド装置。
【請求項6】
前記支持部から前記規制部までの寸法は、前記支持部から前記解除レバーの先端までの寸法より大きい請求項5に記載のスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートのシート本体をスライド可能に支持するスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スライド装置は、特許文献1に記載されているように、固定レール、可動レール、ロック部材、解除レバー及びバネ等を備える。可動レールは、シート本体が固定されるスライド可能な部材である。ロック部材は、可動レールのスライドを規制するための部材である。
【0003】
解除レバーは、着席者等の利用者により操作力されることにより、ロック部材を非ロック位置に変位させるための部材である。バネは、解除レバーを初期位置に保持するための保持力を発揮する。なお、特許文献1に記載のスライド装置では、上記バネとロック部材とが一体化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-156032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解除レバーに大きな力が作用すると、ロック部材が変位して可動レールのスライド変位を規制することができなくなるおそれがある。本開示は、当該点に鑑み、可動レールのスライド変位を規制することができなくなることを抑制可能なスライド装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
乗物用シートのシート本体(2)をスライド可能に支持するスライド装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0007】
すなわち、当該構成要件は、乗物に対して固定される固定レール(11)と、固定レール(11)に対してスライド可能に装着された可動レール(12)であって、シート本体(2)が固定される可動レール(12)と、可動レール(12)のスライドを規制するロック位置と当該規制が解除された非ロック位置との間で変位可能なロック部材(13)と、ロック部材(13)をロック位置に保持するための保持力を当該ロック部材(13)に作用させる保持バネ(14B、14C)と、ロック部材(13)を非ロック位置に変位させるための解除レバー(16)であって、可動レール(12)の長手方向に略沿ってロック部材(13)側に向けて延びているとともに、ロック部材(13)を押圧して当該ロック部材(13)を非ロック位置とするための解除位置と当該ロック部材(13)をロック位置とするための初期位置との間で揺動変位可能な解除レバー(16)と、解除レバー(16)を初期位置に保持するとともに、解除位置にある前記解除レバー(16)を初期位置に復帰させるための弾性力を当該解除レバー(16)に作用させる復帰バネ(14D)と、可動レール(12)の長手方向と略平行な方向であって、ロック部材(13)側に向かう向きを荷重の向き(Fd)としたとき、解除レバー(16)が当該荷重の向き(Fd)に予め決められた寸法を超えて変位することを規制する規制部(17、18)とである。
【0008】
これにより、当該スライド装置では、解除レバー(16)が荷重の向き(Fd)に大きくずれてしまうことが抑制される。したがって、解除レバー(16)が荷重の向き(Fd)に大きくずれてしまうことに起因して、ロック部材(13)がロック位置から非ロック位置に変位してしまうことが抑制され得る。
【0009】
延いては、当該スライド装置によれば、荷重の向きの大きな力が解除レバー(16)に作用した場合であっても、ロック部材(13)がロック位置から非ロック位置に変位してしまうことが抑制され得る。
【0010】
また、組立作業者又は組立ロボット(以下、作業者等という。)が解除レバー(16)を荷重の向き(Fd)に挿入しながら、スライド装置を組み立てる際に、解除レバー(16)を必要以上に挿入してしまうことが規制され得る。したがって、スライド装置の組立不良の発生が抑制され得る。
【0011】
なお、当該スライド装置は、例えば、以下の構成であってもよい。
【0012】
すなわち、規制部(17)は、可動レール(12)の内壁面から突出した突起部により構成されていることが望ましい。
【0013】
規制部(17、18)は、解除レバー(16)の先端(16D)から離間した位置に設けられており、さらに、解除レバー(16)が荷重の向き(Fd)に変位したときに、規制部(17、18)と解除レバー(16)の先端(16D)とが接触して当該解除レバー(16)の変位が規制されることが望ましい。
【0014】
これにより、解除レバー(16)が揺動する際、つまり利用者が解除レバー(16)を操作する際に、解除レバー(16)が規制部(17、18)と干渉してしまうことが抑制され得る。
【0015】
規制部(17、18)から荷重の向き(Fd)にずれた位置であって、解除レバー(16)の先端(16D)と対向する位置には、保持バネ(14B、14C)の一部(14G)が存在する構成に当該スライド装置(10)が適用されると効果的である。
【0016】
復帰バネ(14D)に設けられ、解除レバー(16)に係止された被係止部(14E)と、可動レール(12)に設けられ、解除レバー(16)に対して被係止部(14E)と反対側から当該解除レバー(16)に接触して当該解除レバー(16)の揺動中心位置を構成する支持部(12K)とを備え、被係止部(14E)は、解除レバー(16)を初期位置に復帰させるための弾性力を当該解除レバー(16)に作用させるとともに、当該解除レバー(16)が荷重の向き(Fd)に変位することを規制する構成が望ましい。
【0017】
支持部(12K)から規制部(17、18)までの寸法(L1)は、支持部(12K)から解除レバー(16)の先端(16D)までの寸法(L2)より大きいことが望ましい。これにより、解除レバー(16)が揺動する際、つまり利用者が解除レバー(16)を操作する際に、解除レバー(16)が規制部(17、18)と干渉してしまうことが確実に抑制され得る。
【0018】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
図2】第1実施形態に係るスライド装置の分解図である。
図3】第1実施形態に係る固定レールを示す図である。
図4】第1実施形態に係る可動レールを示す図である。
図5】第1実施形態に係るロックプレートの作動を示す図である。
図6】第1実施形態に係るロックプレートの作動を示す図である。
図7】第1実施形態に係るスライド装置の要部を示す図である。
図8】第1実施形態に係るバネ部材を示す図である。
図9】第1実施形態に係るバネ部材及びロックプレートを示す図である。
図10】第1実施形態に係る第2バネ部と可動レールとの固定構造を示す図である。
図11】規制部を備えていないスライド装置を示す図である。
図12】規制部を備えていないスライド装置を示す図である。
図13】第2実施形態に係るスライド装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るスライド装置が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載したものである。
【0022】
したがって、当該スライド装置は、各図に付された方向に限定されるものではない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は必ずしも断面図を示すものではない。
【0023】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シートは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素を備える。
【0024】
(第1実施形態)
<1.乗物用シートの概要(図1参照)>
本実施形態に係る乗物用シート1は、2つのスライド装置10及びシート本体2等を少なくとも備える。シート本体2は、シートクッション3及びシートバック5等を少なくとも有する。
【0025】
シートクッション3は、着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック5は着席者の背部を支持するための部位である。各スライド装置10は、乗物用シート1のシート本体2をスライド可能に支持するための装置である。
【0026】
シート本体2は、2つのスライド装置10によりスライド可能に支持される。具体的には、第1のスライド装置10は、シート本体2のシート幅方向一端側を支持する。第2のスライド装置10は、シート本体2のシート幅方向他端側を支持する。
【0027】
<2.スライド装置の構成>
<2.1 スライド装置の概要>
本実施形態では、2つのスライド装置10は同一構造である。以下の説明は、シート幅方向左端側に配置されたスライド装置10の説明である。スライド装置10は、図2に示されるように、固定レール11、可動レール12、ロックプレート13、バネ部材14及び解除レバー16等を少なくとも備える。
【0028】
<固定レール及び可動レール等>
固定レール11は、乗物に対して直接的又は間接的に固定される部材である。可動レール12は、シート本体2が固定されるとともに、固定レール11に対してスライド可能な部材である。
【0029】
可動レール12は、図4に示されるように、天板部12A及び2つの側板部12B、12C等を少なくとも有して構成されている。天板部12Aは、シート本体2が固定される帯板状の部位である。
【0030】
2つの側板部12B、12Cは、天板部12Aの幅方方向一端側及び他端側それぞれに設けられ、互いに対向する帯板状の部位である。そして、天板部12A及び2つの側板部12B、12Cはレール本体12Dを構成する。つまり、レール本体12Dの長手方向と直交する断面形状は、上方側が閉塞された略U字状又は略コの字状の断面形状を有する部位である。
【0031】
なお、レール本体12Dは、天板部12A及び2つの側板部12B、12Cが冷間圧延鋼板等の金属板に塑性加工が施されて形成された一体成形品である。当該レール本体12Dの幅方方向一端側及び他端側それぞれには、軌道部12E、12Fが設けられている。
【0032】
軌道部12E、12Fは、図2に示される複数の鋼球15と転がり接触する部位である。そして、可動レール12は、複数の鋼球15を介して固定レール11に支持されている。なお、複数の鋼球15は、転動体の一例である。
【0033】
複数の保持器15Aは、各鋼球15が可動レール12に対して移動することを規制する。これにより、複数の鋼球15が可動レール12に対して移動することなく、可動レール12及び固定レール11と転がり接触できるので、当該可動レール12は、固定レール11に対してスライドできる。
【0034】
図3に示されるように、固定レール11の部位11A、11Bには、櫛状部11Cが設けられている。各櫛状部11Cは、固定レール11の長手方向に沿って、複数の凸部及び凹部が交互に直列に設けられた部位である。なお、部位11A、11Bは、可動レール12の側板部12B、12Cと対向する帯板状の部位である。
【0035】
側板部12B、12Cのうち可動レール12の長手方向中間部12G(図2参照)には、図4に示される櫛状部12H、12Jが設けられている。各櫛状部12H、12Jは、可動レール12の長手方向に沿って、凸部と凹部とが交互に直列に設けられた部位である。
【0036】
櫛状部11C及び櫛状部12H、12Jの凸部は、下向きに突出した凸部により構成されている。換言すれば、櫛状部11C及び櫛状部12H、12Jの凹部は、下側が開放された凹部にて構成されている。そして、櫛状部11Cが設けられている範囲は、櫛状部12H、12Jが設けられている範囲より大きい。
【0037】
<ロックプレート>
ロックプレート13は、図5に示されるように、可動レール12に保持され、当該可動レール12と共に固定レール11に対してスライド可能な部材である。当該ロックプレート13は、可動レール12に対して、スライド方向と略直交する方向(本実施形態では、上下方向)に変位可能である。
【0038】
すなわち、ロックプレート13は、ロック位置(図5参照)と非ロック位置(図6参照)との間で変位可能である。当該ロックプレート13は、当該変位方向(本実施形態では、上下方向)と交差する板面13Aを有する板状の部材である。
【0039】
ロック位置は、固定レール11と係合して可動レール12のスライドを規制する位置である。非ロック位置は、当該規制が解除され、可動レール12がスライド可能となる位置である。つまり、ロックプレート13は、ロック部材の一例である。
【0040】
具体的には、ロックプレート13には、複数の貫通穴13Bが設けられている。それら貫通穴13Bには、櫛状部11C及び櫛状部12H、12Jの凸部が貫通可能である。そして、ロックプレート13がロック位置に位置すると(図5参照)、櫛状部11Cのいずれかの凸部及び櫛状部12H、12Jの凸部が複数の貫通穴13Bを貫通した状態となる。
【0041】
ロックプレート13がロック位置から下方側に変位して非ロック位置に位置すると(図6参照)、当該ロックプレート13が櫛状部11C及び櫛状部12H、12Jから離間した状態となる。このため、可動レール12は、固定レール11に対してスライド可能となる。
【0042】
<バネ部材及び解除レバーの概要>
バネ部材14は、図7に示されるように、ロックプレート13をロック位置に保持する弾性力(以下、保持力という。)を発揮する。当該バネ部材14は、ロックプレート13の板面13Aに保持力を作用させる。
【0043】
本実施形態に係るバネ部材14は、ロックプレート13に設けられた上下2つの板面13Aのうち非ロック位置側の板面13Aに保持力を作用させる。つまり、当該バネ部材14は、ロックプレート13の下側板面に上向きの弾性力を作用させる。
【0044】
解除レバー16は、可動レール12、つまりレール本体12D内に挿入されて当該可動レール12の長手方向に沿って延びているとともに、ロックプレート13をロック位置から非ロック位置に変位させる部材である。
【0045】
すなわち、解除レバー16は、操作力を受けて初期位置(図7で示される位置)から解除位置に変位する部材である。解除位置にある解除レバー16は、操作力をロックプレート13に作用させることにより、当該ロックプレート13を非ロック位置に変位させる。
【0046】
初期位置は、図7に示されるように、ロック位置にあるロックプレート13に対して解除レバー16が離間した位置、又はロック位置にあるロックプレート13と解除レバー16とが接触した位置をいう。
【0047】
解除位置は、初期位置から非ロック位置側(本実施形態では、下側)にずれた位置である。なお、本実施形態では、解除位置にある解除レバー16は、ロック位置側(本実施形態では、上側)からロックプレート13に接触する。
【0048】
<バネ部材の詳細>
バネ部材14は、図8に示されるように、連結部14A、第1バネ部14B、第2バネ部14C及び復帰バネ部14D等を少なくとも有する。連結部14Aは、図7に示されるように、ロックプレート13が連結された部位である。
【0049】
第1バネ部14B及び第2バネ部14Cは、上記保持力を発揮する保持バネを構成する。第1バネ部14Bは、図8に示されるように、連結部14Aから可動レール12の長手方向一方の向きに延びて、当該延び方向先端側14Jが可動レール12に固定された部位である。
【0050】
第2バネ部14Cは、連結部14Aから可動レール12の長手方向他方の向きに延びて、当該延び方向先端側14Hが可動レール12に固定された部位である。第1バネ部14B及び第2バネ部14Cそれぞれは、図7に示されるように、部位14F、14Gを介して連結されている。
【0051】
部位14Fは、連結部14Aと第1バネ部14Bと繋ぐ部位である。部位14Gは、連結部14Aと第2バネ部14Cと繋ぐ部位である。部位14F、14Gは、ロックプレート13の変位方向(本実施形態では、上下方向)に延びている。
【0052】
本実施形態では、部位14F、14Gは、ロックプレート13を板厚方向に貫通し、かつ、連結部14Aは、非ロック位置側(本実施形態では、下側)からロックプレート13に接触している。
【0053】
そして、部位14Fと部位14Gとは、略矩形板状に構成されたロックプレート13の対角の位置にある。このため、連結部14Aとロックプレート13との接触部位は、当該ロックプレート13の対角線と略平行である。
【0054】
復帰バネ部14Dは、解除レバー16を初期位置に保持するとともに、解除位置にある解除レバー16を初期位置に復帰させるための弾性力を発揮する。つまり、バネ部材14は、解除レバー16を初期位置に向けて変位させる弾性力Fs(図10参照)を当該解除レバー16に作用させる。
【0055】
具体的には、復帰バネ部14Dは、図9に示されるように、解除レバー16と略同一な方向に延びている。当該復帰バネ部14Dの延び方向先端には、被係止部14Eが設けられている。
【0056】
被係止部14Eは、復帰バネ部14Dの延び方向と交差する方向に当該復帰バネ部14Dから突出し(図8参照)、かつ、解除レバー16に設けられた係止部16C(図9参照)に係止された部位である。
【0057】
なお、本実施形態では、バネ部材14は、連結部14A(部位14F、14Gを含む)、第1バネ部14B、第2バネ部14C及び復帰バネ部14D(被係止部14Eを含む。)が、1本の金属製線材が所定形状に折り曲げられて成形された一体成形品である。
【0058】
<解除レバーの詳細>
解除レバー16は、操作力を受けて初期位置(図7参照)から解除位置(本実施形態では、下向き)に揺動変位可能である。解除レバー16の先端側には、図10に示されるように、押圧部16Aが設けられている。
【0059】
そして、解除レバー16が解除位置にあるときには、押圧部16Aはロックプレート13と接触した状態となる。つまり、押圧部16Aは、解除レバー16が解除位置にあるときに、ロックプレート13に操作力を作用させて当該ロックプレート13を非ロック位置とする。
【0060】
可動レール12の内壁には、支持突起部12Kが設けられている。支持突起部12Kは、解除レバー16に対して被係止部14Eと反対側から当該解除レバー16に接触して当該解除レバー16の揺動中心位置を構成する。
【0061】
具体的には、支持突起部12Kは、天板部12Aから下方に向けて突出して解除レバー16の揺動中心部を支持する。そして、解除レバー16の下面に被係止部14Eが設けられ、解除レバー16の上面に支持突起部12Kとの接触部16Bが位置する。
【0062】
このため、解除レバー16は、復帰バネ部14Dから初期位置側に向けた(本実施形態では、上向きの)弾性力Fsを受けるため、常に、支持突起部12Kに押し付けられた状態となる。したがって、解除レバー16と支持突起部12Kとが接触した状態が維持される。
【0063】
そして、係止部16Cには、被係止部14Eが係止されているので、解除レバー16が可動レール12の長手方向に変位することが規制される。このため、解除レバー16は、当該長手方向にずれることなく、接触部16Bを中心に揺動できる。
【0064】
さらに、係止部16Cは、接触部16Bに対して押圧部16A側にずれている。このため、復帰バネ部14Dの弾性力Fsは、解除レバー16を初期位置側に揺動させるモーメントを当該解除レバー16に作用させる。なお、支持突起部12Kは、可動レール12の一部が切り起こされた切り起こし片により構成されている。
【0065】
<2.2 解除レバーの変位規制>
本実施形態に係る可動レール12には、図7に示されるように、規制部17が設けられている。規制部17は、解除レバー16が荷重の向きFdに予め決められた寸法を超えて変位することを規制する部位である。
【0066】
荷重の向きFdとは、可動レール12の長手方向と略平行な方向であって、ロックプレート13側に向かう向きをいう。なお、本実施形態に係る荷重の向きFdは、前方から後方に向かう向きである。
【0067】
規制部17は、図10に示されるように、可動レール12の内壁面からロックプレート13側に突出した突起部により構成されている。なお、本実施形態に係る規制部17は、天板部12Aの一部が切り起こされた切り起こし片により構成されている。
【0068】
当該規制部17は、解除レバー16の先端16Dから離間した位置に設けられている。このため、支持突起部12Kから規制部17までの寸法L1は、支持突起部12Kから解除レバー16の先端16Dまでの寸法L2より大きい寸法に設定されている。
【0069】
このため、解除レバー16が荷重の向きFdに変位したときに、規制部17と解除レバー16の先端16Dとが接触して当該解除レバー16の変位が規制される。換言すれば、規制部17は、解除レバー16が揺動する際に先端16Dが描く円弧状の軌跡を挟んで支持突起部12Kと反対側に位置する。
【0070】
<3.本実施形態に係るスライド装置の特徴>
荷重の向きFdの大きな力(以下、荷重Fという。)が解除レバー16に作用すると、バネ部材14の被係止部14Eが解除レバー16の係止部16Cから離脱し、当該解除レバー16が荷重の向きFdに変位してしまうおそれがある。
【0071】
そして、本実施形態に係るスライド装置10では、図7及び図9に示されように、規制部17から荷重の向きFdにずれた位置であって、解除レバー16の先端16Dと対向する位置には、バネ部材14の部位14Gが存在する。
【0072】
このため、仮に、規制部17が設けられていない場合には、図11に示されるように、荷重Fにより解除レバー16が大きく荷重の向きFdに変位してしまう。
【0073】
具体的には、先端16D又は押圧部16Aが部位14Gと接触するとともに、解除レバー16が第1バネ部14Bと天板部12Aとの間に食い込むように、解除レバー16が荷重の向きFdに変位してしまう。
【0074】
このため、バネ部材14(特に、連結部14A)が非ロック位置側に変位してしまうため、押圧部16Aがロックプレート13から離間した状態のままロックプレート13がロック位置から非ロック位置にずれしまう。
【0075】
これに対して、本実施形態に係るスライド装置10では、荷重Fにより解除レバー16が荷重の向きFdに変位した場合には、規制部17に解除レバー16が接触するので、解除レバー16が荷重の向きFdに大きくずれてしまうことが抑制される。
【0076】
したがって、解除レバー16が荷重の向きFdに大きくずれてしまうことに起因して、ロックプレート13がロック位置から非ロック位置に変位してしまうことが抑制され得る。延いては、大きな荷重Fが解除レバー16に作用した場合であっても、ロックプレート13がロック位置から非ロック位置に変位してしまうことが抑制され得る。
【0077】
また、組立作業者又は組立ロボット(以下、作業者等という。)が解除レバー16を荷重の向きFdに挿入しながら、スライド装置10を組み立てる際に、解除レバー16を必要以上に挿入してしまうことが規制され得る。したがって、スライド装置10の組立不良の発生が抑制され得る。
【0078】
なお、ロックプレート13がロック位置から非ロック位置に変位してしまう現象は、上記の構成、つまりバネ部材14の部位14Gが解除レバー16の先端16Dと対向している構成に限定されない。
【0079】
すなわち、例えば、図12に示される構成においても、ロックプレート13がロック位置から非ロック位置に変位してしまう現象が発生し得る。
【0080】
なお、図12に示される構成とは、「規制部17から荷重の向きFdと反対向きにずれた位置であって、ロックプレート13と対向する位置に解除レバー16の一部16Eが存在し、かつ、当該一部16Eが荷重の向きFdに対して傾いた状態で非ロック位置側からロック位置側に延びている構成」である。
【0081】
すなわち、当該構成では、当該一部16Eが傾いているため、解除レバー16が荷重の向きFdに大きく変位すると、当該一部16Eとロックプレート13との接触部において、ロックプレート13をロック位置から非ロック位置に変位させる力Fuが発生する。
【0082】
なお、図12示される構成では、第1バネ部14B及び部位14Gは、解除レバー16に対して左右方向にずれているため、解除レバー16とバネ部材14とは干渉しない。つまり、図12に示す例は、解除レバー16の変位がロックプレート13を直接的に変位させる例である。
【0083】
本実施形態では、規制部17は、解除レバー16の先端16Dから離間した位置に設けられ、かつ、解除レバー16が荷重の向きFdに変位したときに、規制部17と解除レバー16の先端16Dとが接触して当該解除レバー16の変位が規制される。
【0084】
これにより、解除レバー16が揺動する際、つまり利用者が解除レバー16を操作する際に、解除レバー16が規制部17と干渉してしまうことが抑制され得る。
【0085】
本実施形態では、支持突起部12Kから規制部17までの寸法L1は、支持突起部12Kから解除レバー16の先端16Dまでの寸法より大きい。これにより、解除レバー16が揺動する際、つまり利用者が解除レバー16を操作する際に、解除レバー16が規制部17と干渉してしまうことが確実に抑制され得る。
【0086】
ところで、解除レバー16が荷重の向きFdに変位するときに、解除レバー16は天板部12Aに案内されるように変位する。そして、本実施形態に係る規制部17は、天板部12Aに設けられている。
【0087】
これにより、解除レバー16が荷重の向きFdに変位したときに、規制部17と解除レバー16とが確実に接触する。したがって、本実施形態では、解除レバー16の変位、つまりロックプレート13の変位が確実に抑制され得る。
【0088】
本実施形態に係る規制部17は、天板部12Aの一部が切り起こされた切り起こし片により構成されている。これにより、規制部17が側板部12B又は側板部12Cの一部が切り起こされた切り起こし片により構成された場合に比べて、可動レール12の剛性低下が抑制され得る。
【0089】
すなわち、解除レバー16と側板部12B、12Cとは隙間を介して離間しているのに対して、解除レバー16と天板部12Aとは滑り接触可能に接触している。このため、仮に、側板部12B、12C一部が切り起こされて規制部17が構成された場合には、天板部12Aの一部が切り起こされて規制部17が構成された場合に比べて、切り起こしに伴って発生する貫通穴が大きくなる。
【0090】
したがって、天板部12Aの一部が切り起こされて規制部17が構成された場合には、側板部12B、12C一部が切り起こされて規制部17が構成された場合に比べて、切り起こしに伴って発生する貫通穴が小さくなるので、可動レール12の剛性低下が抑制され得る。
【0091】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る規制部17は可動レール12に設けられていた。これに対して、本実施形態に係る規制部18は、図13に示されように、ロックプレート13に設けられている。規制部18と規制部17との主な相違点は、設けられた部位である。
【0092】
因みに、規制部18は、ロックプレート13に設けられているため、突出の向きが規制部17と逆向きである。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0093】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、バネ部材14は、第1バネ部14B、第2バネ部14C、連結部14A及び復帰バネ部14Dが、1本の金属製線材が所定形状に折り曲げられて成形された一体成形品であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、復帰バネ部14Dとそれ以外とが別々の部品であってもよい。
【0094】
上述の第1実施形態では、規制部17が天板部12Aに設けられ、かつ、天板部12Aの一部が切り起こされて規制部17が構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0095】
すなわち、当該開示は、例えば、規制部17が側板部12B、12Cに設けられた構成、規制部17を構成する部材が溶接にて可動レール12に固定された構成、又は天板部12Aのコイニングが施されて突起状の規制部17が設けられた構成等であってもよい。
【0096】
上述の実施形態では、バネ部材14とロックプレート13とが別部材であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、バネ部材14とロックプレート13とが一体部品にて構成されていてもよい。なお、当該構成においては、線材にてロック部材が構成されていてもよい。
【0097】
上述の実施形態では、規制部17、18は、解除レバー16の先端16Dから離間した位置に設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、規制部18と解除レバー16の先端16Dとが常に接触した構成であってよい。
【0098】
上述の実施形態では、解除レバー16の先端16Dと対向する位置には、バネ部材14の一部14Gが存在する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、図12に示される構成では、先端16Dと対向する位置に部位14Gが存在しなくてもよい。
【0099】
上述の実施形態では、復帰バネ14Dに被係止部14Eが設けられ、可動レール12に支持突起部12Kが設けられ、被係止部14Eは、解除レバー16を初期位置に復帰させるための弾性力を当該解除レバー16に作用させるとともに、当該解除レバー16が荷重の向きFdに変位することを規制していた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0100】
上述の実施形態では、支持突起部12Kから規制部17、18までの寸法L1は、支持突起部12Kから解除レバー16の先端16Dまでの寸法L2より大きい構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0101】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0102】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
10… スライド装置 11…固定レール 12… 可動レール
12A… 天板部 12B…側板部 13… ロックプレート
14… バネ部材 14A…連結部 14B… 第1バネ部
14C… 第2バネ部 14D…復帰バネ部 14E… 被係止部
16… 解除レバー 16C…係止部 16A… 押圧部
17、18… 規制部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13