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特許7519939断続シーム溶接測定装置及び断続シーム溶接測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】断続シーム溶接測定装置及び断続シーム溶接測定方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/06 20060101AFI20240712BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20240712BHJP
   B23K 11/25 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
B23K11/06 101
B23K31/00 K
B23K11/25
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021044333
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143683
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】矢野 貴洋
【審査官】齋藤 健児
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-085457(JP,A)
【文献】特開平7-016759(JP,A)
【文献】特開平9-052181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/06
B23K 31/00
B23K 11/24
B23K 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接対象物に溶接電流を流す溶接時間と前記溶接電流を流さない溶接休止時間とを繰り返すことにより前記溶接対象物を溶接する際の断続シーム溶接測定装置における、
断続シーム溶接装置へ設定する前記溶接時間及び前記溶接休止時間の各々と同じ値である測定時間及び測定休止時間を設定する測定設定部と、
前記溶接電流の電流値を検出して溶接測定開始トリガを得る電流トリガ回路と、
前記電流トリガ回路で得られた溶接測定開始トリガの時刻から前記測定設定部で設定された測定時間が経過するまでの間、前記溶接電流の電流値を測定する測定回路と、
前記測定時間の経過後から前記測定休止時間が経過するまでの間、前記測定回路で測定された測定値の演算処理を行う演算処理部と、
前記演算処理部で得られた演算値に基づき前記溶接対象物の溶接状態を判定する判定出力部と、
を備える、断続シーム溶接測定装置。
【請求項2】
前記溶接電流の電流値のアナログ電流微分波形を積分して電流波形を復元する波形復元回路を備え、
前記測定回路は、前記溶接測定開始トリガの時刻から前記測定時間が経過するまでの間、前記波形復元回路で復元された電流波形をデジタル信号に変換して、前記溶接電流を測定する、請求項1記載の断続シーム溶接測定装置。
【請求項3】
前記判定出力部は、前記溶接対象物の溶接状態が不良である場合に、断続シーム溶接が終了した後に判定不良出力を行う、請求項1又は2記載の断続シーム溶接測定装置。
【請求項4】
前記判定出力部は、前記溶接対象物の溶接状態が不良である場合に判定不良出力を行い、前記判定不良出力を継続する、請求項1又は2記載の断続シーム溶接測定装置。
【請求項5】
前記判定出力部は、前記溶接対象物の溶接状態が不良時に判定不良出力を行い、その後、前記溶接対象物の溶接状態が良好となった時には前記判定不良出力を停止する、請求項1又は2記載の断続シーム溶接測定装置。
【請求項6】
当該断続シーム溶接測定装置が通信網により前記断続シーム溶接装置に接続されている場合に、前記断続シーム溶接装置から前記溶接時間及び前記溶接休止時間を示す信号を、前記通信網を介して受信する、
請求項1乃至5のいずれか1項記載の断続シーム溶接測定装置。
【請求項7】
溶接対象物に溶接電流を流す溶接時間と前記溶接電流を流さない溶接休止時間とを繰り返すことにより前記溶接対象物を溶接する断続シーム溶接する際の断続シーム溶接測定方法における、
断続シーム溶接装置へ設定する前記溶接時間及び溶接休止時間の各々と同じ値である測定時間及び測定休止時間を設定し、
前記溶接電流の電流値を検出して溶接測定開始トリガを取得し、
得られた溶接測定開始トリガの時刻から前記設定された測定時間が経過するまでの間、前記溶接電流の電流値を測定し、
前記測定時間の経過後から前記測定休止時間が経過するまでの間、前記測定された測定値の演算処理を行い、
得られた演算値に基づき前記溶接対象物の溶接状態を判定する、
断続シーム溶接測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断続シーム溶接測定装置及び断続シーム溶接測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
断続シーム溶接は、回転電極に通電を行う溶接と通電を行わない休止とのサイクルを繰り返し続ける溶接工法である。溶接時間は、1~5サイクル(例えば3サイクル)又は5~200ms程度であり、休止時間は、1~3サイクル(例えば1サイクル)又は5~60ms程度である。繰り返し時間は数分間に亘る場合もある。
【0003】
従来の測定器は、溶接範囲の、溶接回路の電流値(以下溶接電流値と呼ぶ)や回転電極間の電圧値を測定する(以下、溶接電流値と回転電極間の電圧値を合わせて溶接電流値等と呼ぶ)。この場合、通電時間帯と休止時間帯の各区間を指定しないで溶接電流値等を測定するため、溶接範囲で溶接電流値等を測定した後に、通電を行わない区間の最初の0.5サイクル又は1msで溶接電流値等を測定し、通電が終わったと判断する時間を測定して、測定終了判定を行う。
【0004】
さらに、溶接電流値等の測定値から溶接電流値等の実効値、相加平均実効値、ピーク値を演算する。相加平均実効値は、0.5サイクル又は1ms単位で溶接電流値の実効値を演算し、その結果を溶接範囲で平均して求めたものである。得られた溶接電流値の実効値、相加平均実効値、ピーク値が判定範囲内かどうかの確認を行い、判定出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5305172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通電が終わったと判断する時間と、溶接電流値の実効値等の演算時間と、判定出力時間との合計時間が、休止時間よりも長くなる場合がある。この場合、次の溶接の溶接電流値等を測定できなくなる。
【0007】
また、測定毎に判定出力を行うので、断続シーム溶接の全体を通した判定結果を出すことができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、測定設定部と、電流トリガ回路と、測定回路と、演算処理部と、判定出力部とを備えるシーム溶接測定装置を提供する。測定設定部は、溶接対象物に溶接電流を流す溶接時間と溶接電流を流さない溶接休止時間とを繰り返すことにより溶接対象物を溶接する際の断続シーム溶接測定装置における、断続シーム溶接装置へ設定する溶接時間及び溶接休止時間の各々と同じ値である測定時間及び測定休止時間を設定する。電流トリガ回路は、溶接電流の電流値を検出して、溶接測定開始トリガを得る。測定回路は、電流トリガ回路で得られた溶接測定開始トリガの時刻から測定設定部で設定された測定時間が経過するまでの間、溶接電流の電流値を測定する。演算処理部は、測定時間の経過後から測定休止時間が経過するまでの間、測定回路で測定された測定値の演算処理を行う。判定出力部は、演算処理部で得られた演算値に基づき溶接対象物の溶接状態を判定する。
【0009】
測定設定部は、溶接対象物に溶接電流を流す溶接時間と溶接電流を流さない溶接休止時間とを繰り返すことにより溶接対象物を溶接する際の断続シーム測定溶接装置における、断続シーム溶接装置へ設定する溶接時間及び溶接休止時間の各々と同じ値である測定時間及び測定休止時間を設定する。測定回路は、溶接測定開始トリガの時刻から測定設定部で設定された測定時間が経過するまでの間、溶接電流の電流値を測定する。演算処理部は、測定時間の経過後から測定休止時間が経過するまでの間、測定値の演算処理を行う。即ち、予め設定された測定休止時間内に測定値の演算を行うので、全溶接を測定し、演算できる。このため、個々の溶接電流値等の測定値の判定を行い、更に全体の溶接電流値等の測定値の判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、断続シーム溶接の全溶接の溶接電流値等を測定し、個々の溶接電流値による溶接の良不良判定を漏れなく行い、更に全体の溶接電流値による溶接の良不良判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係る断続シーム溶接測定装置と溶接電源との構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る溶接電源による断続シーム溶接の通電と休止とを繰り返すタイミングチャートである。
図3図3は、本発明の実施形態に係る断続シーム溶接測定装置の測定設定部による測定時間と休止時間の設定を示すタイミングチャートである。
図4図4は、本発明の実施形態に係る断続シーム溶接測定装置の測定回路による溶接対象物の溶接状態の測定と演算処理を繰り返すタイミングチャートである。
図5図5は、図4に示す測定と演算処理を繰り返した後の判定不良時と判定良時の判定出力を示すタイミングチャートである。
図6図6は、本発明の実施形態に係る溶接電源の処理を示すフローチャートである。
図7図7は、本発明の実施形態に係る断続シーム溶接測定装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の断続シーム溶接測定装置及び断続シーム溶接測定方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
(断続シーム溶接測定装置の基本構成)
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る断続シーム溶接測定装置と溶接電源との構成図である。図1を参照して本実施形態について説明する。
【0014】
溶接電源1は、断続シーム溶接するための電源であり、図1に示すように、溶接電流設定部11、溶接電流制御部12、点弧パルス発生回路13、サイリスタ14a,14b、表示部15を備える。トランスTの一次巻線Pの一端は、図示しない単相交流電源(以下、交流電源と略称する。)の一端に接続され、一次巻線Pの他端は、サイリスタ14a,14bを介して交流電源の他端に接続されている。溶接電源1と、トランスT、回転電極4a,4bは、溶接対象物5を断続シーム溶接するための断続シーム溶接装置を構成している。
【0015】
トランスTの二次巻線Sの両端には、回転電極4a,4bが接続されている。交流電源からトランスTとサイリスタ14a,14bとを介して回転電極4a,4bに溶接電流が供給される。
【0016】
断続シーム溶接は、溶接対象物5を円板状の回転電極4a,4bで挟んで加圧した状態で、回転電極4a,4bを回転しながら溶接電流を流し、その電気抵抗によって溶接対象物5を加熱する。さらに、回転電極4a,4bを移動させることで、溶接する箇所をずらしながら、溶接対象物5を連続的に接合する。
【0017】
溶接電流設定部11は、断続シーム溶接を行うための溶接電流の大きさや溶接電流の溶接時間(通電時間)、溶接休止時間を設定する。溶接電流制御部12は、溶接電流設定部11で設定された溶接電流の大きさや溶接電流の溶接時間(通電時間)、溶接休止時間を制御し、制御信号を点弧パルス発生回路13に出力する。
【0018】
点弧パルス発生回路13は、溶接電流制御部12からの制御信号に基づき点弧パルスを発生し、点弧パルスをサイリスタ14a,14bのゲートに出力する。サイリスタ14a,14bは、点弧パルス発生回路13からの点弧パルスに従ってオンすることにより、溶接電流を流す。表示部15は、溶接電流の大きさや溶接電流の溶接時間(通電時間)、溶接休止時間を表示する。
【0019】
トランスTは、電磁結合された一次巻線Pと二次巻線Sとを有し、交流電源の交流電圧を変圧して二次巻線S側に出力する。電流センサ3は、トロイダルコアにコイルが巻回され、トロイダルコアをトランスTの二次巻線Sが貫通して構成され、二次巻線Sに流れる溶接電流を検出し、検出された溶接電流を電流トリガ回路23に出力する。
【0020】
測定器2は、測定設定部21、主演算処理部22、電流トリガ回路23、電流センサ3、波形復元回路24、2次電流測定回路25、2次電圧測定回路26、判定出力部27、表示部28を備える。
【0021】
測定設定部21は、タッチパネル、操作パネル等の入力部からなり、溶接対象物5に電流を流す溶接時間と前記電流を流さない溶接休止時間とを繰り返すことにより溶接対象物5を溶接する際の断続シーム溶接測定装置における、断続シーム溶接装置へ設定する溶接時間及び溶接休止時間の各々と同じ値である測定時間及び測定休止時間を設定する。溶接電源の溶接時間が図2に示すように、3サイクルであるので、測定時間も図3に示すように、3サイクルを設定する。溶接電源の溶接休止時間が図2に示すように、1サイクルであるので、測定休止時間も図3に示すように、1サイクルを設定する。測定時間は、トランスTの二次巻線S側に流れる溶接電流の電流値を測定するための時間である。
【0022】
主演算処理部22は、CPU(中央処理装置)からなり、測定設定部21で設定された測定時間と測定休止時間を図示しないメモリに記憶するとともに、測定時間と測定休止時間を2次電流測定回路25に出力する。
【0023】
電流トリガ回路23は、電流センサ3で検出される誘起電圧から成る測定電流の時間微分値出力から得られるアナログの電流微分波形を以て、電流の流れ始めである溶接測定開始トリガを得る。
【0024】
波形復元回路24は、演算増幅回路、及び積分回路を備え、電流センサ3で検出されたアナログの電流微分波形を演算増幅回路により増幅し、増幅された電流微分波形を積分回路により積分して、電流波形を復元する。
【0025】
2次電流測定回路25は、本発明の測定回路に対応し、A/D変換器(アナログ/デジタル変換器)を備え、電流トリガ回路23で得られた溶接測定開始トリガと主演算処理部22からの測定設定部21で設定された測定時間とを入力する。
【0026】
2次電流測定回路25は、溶接測定開始トリガの時刻から測定時間が経過するまでの間、波形復元回路24で復元された電流波形をA/D変換器によりデジタル信号に変換して、二次巻線Sに流れる電流値を測定する。即ち、溶接対象物5の溶接状態を測定する処理を繰り返し行う。
【0027】
2次電圧測定回路26は、回転電極4a,4b間の電圧値を測定し、測定電圧値を主演算処理部22に出力する。
【0028】
主演算処理部22は、測定時間の経過後から測定休止時間が経過するまでの間、2次電流測定回路25で測定された電流測定値に基づき、電流実効値、電流相加平均実効値、電流ピーク値を演算する処理を行う。主演算処理部22は、測定時間の経過後から測定休止時間が経過するまでの間、2次電圧測定回路26で測定された電圧測定値に基づき電圧実効値、電圧相加平均実効値、電圧ピーク値を演算する処理を行う。
【0029】
判定出力部27は、主演算処理部22で得られた電流実効値、電流相加平均実効値、電流ピーク値、電圧実効値、電圧相加平均実効値、電圧ピーク値に基づき溶接対象物5の溶接状態を判定する。表示部28は、主演算処理部22の演算結果を表示し、判定出力部27の判定結果を表示する。
【0030】
次にこのように構成されたシーム溶接測定機及び溶接電源の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0031】
まず、図2に示す溶接電源1による断続シーム溶接の通電と休止とを繰り返すタイミングチャートと、図6に示す溶接電源1の処理を示すフローチャートを参照しながら、溶接電源1の動作を説明する。
【0032】
まず、溶接電流設定部11は、断続シーム溶接を行うための溶接電流の大きさや溶接電流の溶接時間(通電時間)、溶接休止時間を設定する(ステップS11)。
【0033】
溶接電流制御部12は、溶接電流設定部11で設定された溶接電流の大きさや溶接電流の溶接時間(通電時間)、溶接休止時間を制御する。点弧パルス発生回路13は、発生した点弧パルスをサイリスタ14a,14bに出力する。
【0034】
サイリスタ14a,14bは、点弧パルスに従って交流電源からトランスTの一次巻線Pに溶接電流を流す。さらに、トランスTの二次巻線Sに溶接電流が流れて、この溶接電流が円板状の回転電極4a,4bに流れる。これにより、断続シーム溶接が開始される(ステップS13)。
【0035】
この場合、図2に示すように、溶接電流は、時刻t0~t6に溶接時間(通電時間)、時刻t6~t8に溶接休止時間、時刻t8~t14に溶接時間、時刻t14~t16に溶接休止時間…が繰り返された電流値の増減遷移状態となる。
【0036】
次に、溶接電流制御部12と点弧パルス発生回路13が断続シーム溶接を停止させて、溶接を休止する(ステップS15)。
【0037】
次に、測定器2は断続シーム溶接が終了したかどうかを判定する(ステップS17)。ステップS17において、断続シーム溶接が終了しない場合には、測定器2はステップS11に戻り、ステップS11からステップS15の処理を行う。断続シーム溶接が終了した場合には、測定器2は処理を終了する。
【0038】
次に、図3図4図5に示すタイミングチャート、図7に示す測定器2のフローチャートを参照しながら、測定器2の動作を説明する。
【0039】
まず、測定設定部21は、溶接対象物5に電流を流す溶接時間と前記電流を流さない溶接休止時間とを繰り返すことにより溶接対象物5を溶接する断続シーム溶接における、溶接時間及び溶接休止時間の各々と同じ値である測定時間及び測定休止時間を設定する(ステップS21)。
【0040】
この場合、測定設定部21は、図3に示すように、時刻t0~t6に測定時間、時刻t6~t8に測定休止時間、時刻t8~t14に測定時間、時刻t14~t16に測定休止時間…を繰り返し設定する。即ち、測定器2には溶接電源1で設定される溶接時間、溶接休止時間に同期し且つ同じ時間だけ、測定時間、測定休止時間が設定される。
【0041】
次に、主演算処理部22は、測定設定部21で設定された測定時間と測定休止時間を記憶装置に記憶するとともに、測定時間と測定休止時間に基づく測定タイミングを設定する(ステップS23)。主演算処理部22は、測定タイミング情報を2次電流測定回路25に出力する。
【0042】
電流トリガ回路23は、電流センサ3で検出された電流微分波形から溶接電流の流れ始めを検出したかどうかを判定する(ステップS25)。電流トリガ回路23は、溶接電流の流れ始め(溶接電流値の立ち上がり)を検出した場合には、溶接電流の流れ始めとして溶接測定開始トリガを得る。
【0043】
次に、波形復元回路24、2次電流測定回路25、2次電圧測定回路26、主演算処理部22は、溶接電流値、溶接電圧値の測定を開始する(ステップS27)。
【0044】
具体的には、波形復元回路24は、電流センサ3で検出されたアナログの電流微分波形を演算増幅回路により増幅し、増幅された電流微分波形を積分回路により積分して、電流波形を復元する。
【0045】
2次電流測定回路25は、電流トリガ回路23で得られた溶接測定開始トリガと測定設定部21で設定された測定時間とを入力する。2次電流測定回路25は、図4に示すように、溶接測定開始トリガの時刻(例えば時刻t0)から測定時間(例えば時刻t6)が経過するまでの間、波形復元回路24で復元された電流波形をA/D変換器によりデジタル信号に変換して、二次電流値(溶接電流値)を測定する処理を行う。また、2次電流測定回路25は、溶接時間を計測する(ステップS29)。
【0046】
2次電流測定回路25は、図4に示すように、時刻t0~t6の測定時間が経過するまでの間、電流値を測定し、時刻t8~t14の測定時間が経過するまでの間、電流値を測定する。
【0047】
溶接時間(測定時間)が経過したら、測定器2は、波形復元回路24、2次電流測定回路25、2次電圧測定回路26を停止させる(ステップS31)。即ち、測定の休止時間時刻t6~t8、時刻t14~t16となる。
【0048】
主演算処理部22は、測定時間の経過後から測定休止時間が経過するまでの間(例えば図4の時刻t78)、2次電流測定回路25で測定された電流測定値に基づき実効値等を演算する(ステップS33)。
【0049】
主演算処理部22は、図4に示すように、時刻t6~t8の測定時間の経過後から測定休止時間が経過するまでの間、測定時間t0~t6内の電流実効値等の演算を行い、時刻t14~t16の測定時間の経過後から測定休止時間が経過するまでの間、時刻t8~t14内の電流実効値等の演算を行う。
【0050】
ここでは、主演算処理部22は、測定時間毎に、溶接電流値等の測定値から溶接電流値等の実効値、相加平均実効値、ピーク値を演算する。
【0051】
判定出力部27は、主演算処理部22で得られた演算結果に基づき溶接対象物5の良品不良品の個別判定を行う(ステップS35)。溶接対象物5の良品不良品の判定は、例えば、以下のようにして行う。図5に示すように、電流値のピーク値が所定値の範囲以内の場合には、「良品」とする(時刻t0~t6)。電流のピーク値が所定値の範囲よりも大きい第1閾値になった場合には、「不良品」と判定する(時刻t8~t14)。
【0052】
また、溶接対象物5の良品不良品の判定は、多段階に、例えば、「良品」、「不良品NG1」、「不良品NG2」に、第1閾値、第2閾値に基づいて分類することができる。さらに、溶接対象物5の良品不良品の判定は、多段階に、例えば、「良品」、「不良品NG1」、「不良品NG2」、「不良品NG3」に、第1閾値、第2閾値、第3閾値に基づいて分類することができる。
【0053】
その後、判定出力部27は、個別判定結果即ち、測定時間毎の判定結果を記憶装置に記憶する(ステップS37)。
【0054】
次に、判定出力部27は、断続シーム溶接が終了したかどうかを判定する(ステップS39)。ステップS39において、断続シーム溶接が終了しない場合には、判定出力部27は、ステップS25に戻り、ステップS25からステップS37の処理を行う。
【0055】
断続シーム溶接が終了した場合には、判定出力部27は、個別判定をまとめた全体の判定を行う(ステップS41)。その後、判定出力部27は、全体判定結果を記憶装置に記憶する(ステップS43)。
【0056】
次に、溶接対象物5の不良判定時の判定出力のいくつかの例を図5のタイミングチャートを参照しながら、説明する。
【0057】
第1の例は、判定出力部27が、溶接対象物5が不良である場合には、断続シーム溶接が終了した後に不良判定出力を行う。これにより、溶接全体の判定を出力することができる。
【0058】
第2の例は、判定出力部27が、溶接対象物5が不良である場合に、不良判定出力(Low:NG)を行い、不良判定出力を継続する。即ち、溶接対象物5の溶接不良と判定したら、すぐに不良判定を出力し、溶接を止めることができる。
【0059】
第3の例は、判定出力部27が、溶接対象物5が不良である場合に、不良判定出力(Low:NG)を行い、その後、溶接対象物5の溶接状態が良好となった時には(High:判定範囲内)不良判定出力を止める。これにより、溶接不良と判断した箇所を判断することができる。
【0060】
第4の例は、判定出力部27が、溶接対象物5の判定良時には溶接終了後に判定出力を行う。
【0061】
このように実施形態に係る断続シーム溶接測定装置によれば、測定設定部21は、溶接対象物5に電流を流す溶接時間と前記電流を流さない溶接休止時間とを繰り返すことにより溶接対象物5を溶接する際の断続シーム溶接測定装置における、断続シーム溶接装置へ設定する溶接時間及び溶接休止時間の各々と同じ値である測定時間及び測定休止時間を設定する。
【0062】
2次電流測定回路25は、溶接測定開始トリガの時刻から測定時間が経過するまでの間、電流値を測定する。主演算処理部22は、測定時間の経過後から測定休止時間が経過するまでの間に測定値の演算処理を行う。
【0063】
即ち、主演算処理部22は、予め設定された休止時間、即ち、測定時間の経過後から測定休止時間が経過するまでの間、測定値の演算を行うので、全溶接を測定し、演算できる。このため、個々の溶接電流値による溶接の良不良判定を行い、更に全体の溶接電流値による溶接の良不良判定を行うことができる。
【0064】
また、2次電流測定回路25は、溶接測定開始トリガの時刻から測定時間が経過するまでの間、波形復元回路24で復元された電流波形をデジタル信号に変換して、電流値を測定するので、2次電流である溶接電流値を測定時間だけ、正確に繰り返し測定できる。
【0065】
また、測定器2が、溶接装置へ電流を供給する溶接電源1に、通信網により接続されている場合に、つまり、断続シーム溶接装置と断続シーム溶接測定器とが通信網で情報伝達できる場合に、測定器2は、溶接電源1から溶接時間及び溶接休止時間を示す信号を、通信網を介して受信する。測定設定部21は、通信網を介して溶接電源1から受信した溶接時間及び溶接休止時間と同じ値である測定時間及び測定休止時間を設定することができる。
【0066】
本発明は以上説明した実施形態に係る断続シーム溶接測定装置に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 溶接電源
2 測定器
3 電流センサ
4a,4b 回転電極
5 溶接対象物
11 溶接電流設定部
12 溶接電流制御部
13 点弧パルス発生回路
14a,14b サイリスタ
15,28 表示部
21 測定設定部
22 主演算処理部
23 電流トリガ回路
24 波形復元回路
25 2次電流測定回路
26 2次電圧測定回路
27 判定出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7