(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 17/03 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
F16C17/03
(21)【出願番号】P 2021052735
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】桝田 翼
(72)【発明者】
【氏名】横山 真平
(72)【発明者】
【氏名】亀山 裕樹
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-523539(JP,A)
【文献】特開2020-016308(JP,A)
【文献】実公昭48-008520(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00-17/18,
17/26,
23/00-27/08,
33/00-33/10
F01D 13/00-15/12,
23/00-25/36
F02C 1/00- 9/58
F23R 3/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる回転軸を支持可能なパッド面と、前記パッド面の反対側に位置する背面と、前記パッド面及び前記背面を接続するとともに前記回転軸の回転方向前方側を向く前側面と、を有する軸受パッドと、
前記回転軸及び前記軸受パッドを外周側から囲う環状をなすとともに、前記軸受パッドを揺動可能に支持するハウジングと、
を備え、
前記軸受パッドの前記前側面が凸曲面状をなして
おり、
前記軸受パッドは、前記軸線に平行に延びる揺動基準軸線回りに揺動可能とされており、
前記軸受パッドの前記前側面は、前記揺動基準軸線を中心として前記揺動基準軸線からの距離を半径とする円筒面状をなしている軸受装置。
【請求項2】
軸線方向に延びる回転軸を支持可能なパッド面と、前記パッド面の反対側に位置する背面と、前記パッド面及び前記背面を接続するとともに前記回転軸の回転方向前方側を向く前側面と、を有する軸受パッドと、
前記回転軸及び前記軸受パッドを外周側から囲う環状をなすとともに、前記軸受パッドを揺動可能に支持するハウジングと、
を備え、
前記軸受パッドの前記前側面が凸曲面状をなして
おり、
前記軸受パッドは、前記背面側に位置する揺動基準点回りに揺動可能とされており、
前記軸受パッドの前記前側面は、前記揺動基準点を中心として前記揺動基準点からの距離を半径とする球面状をなしている軸受装置。
【請求項3】
前記軸受パッドは、前記背面から径方向内側に向かって凹む凹部を有し、
前記ハウジングの内周面から径方向内側に向かって突出しているとともに、前記凹部に挿入されていることで前記軸受パッドを揺動可能に位置決めするピボット軸をさらに備える請求項
1または2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記ハウジングから径方向内側に向かって延びるとともに、前記軸受パッドの前側面を前記回転方向前方側から覆うラム圧防止板をさらに備える請求項1から
3のいずれか一項に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンプレッサやタービン等の回転機械に用いられる軸受装置が開示されている。特許文献1の軸受装置では、軸受パッドの前縁の一部が切り欠かれる周溝をパッド面に設けている。これにより、軸受パッド前縁に生じるキャリーオーバ油の衝突圧力(ラム圧)をパッド面に設けられた周溝に分散させ、油膜反力を上昇させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回転機械の高速回転時は、軸受パッドの前縁にかかるラム圧が大きいため、該ラム圧が、軸受パッドを揺動させるモーメントを発生させる場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、軸受パッドを揺動させるモーメントを低減できる軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る軸受装置は、軸線方向に延びる回転軸を支持可能なパッド面と、前記パッド面の反対側に位置する背面と、前記パッド面及び前記背面を接続するとともに前記回転軸の回転方向前方側を向く前側面と、を有する軸受パッドと、前記回転軸及び前記軸受パッドを外周側から囲う環状をなすとともに、前記軸受パッドを揺動可能に支持するハウジングと、を備え、前記軸受パッドの前記前側面が凸曲面状をなしており、前記軸受パッドは、前記軸線に平行に延びる揺動基準軸線回りに揺動可能とされており、前記軸受パッドの前記前側面は、前記揺動基準軸線を中心として前記揺動基準軸線からの距離を半径とする円筒面状をなしている。
本開示に係る軸受装置は、軸線方向に延びる回転軸を支持可能なパッド面と、前記パッド面の反対側に位置する背面と、前記パッド面及び前記背面を接続するとともに前記回転軸の回転方向前方側を向く前側面と、を有する軸受パッドと、前記回転軸及び前記軸受パッドを外周側から囲う環状をなすとともに、前記軸受パッドを揺動可能に支持するハウジングと、を備え、前記軸受パッドの前記前側面が凸曲面状をなしており、前記軸受パッドは、前記背面側に位置する揺動基準点回りに揺動可能とされており、前記軸受パッドの前記前側面は、前記揺動基準点を中心として前記揺動基準点からの距離を半径とする球面状をなしている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の軸受装置によれば、軸受パッドを揺動させるモーメントを低減できる軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る軸受装置の回転軸の軸線に直交する断面図である。
【
図2】
図1の要部拡大図であり、第一実施形態の構成を示したものである。
【
図3】
図1の要部拡大図であり、第二実施形態の構成を示したものである。
【
図4】
図1の要部拡大図であり、その他の実施形態の構成を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第一実施形態]
(軸受装置)
以下、本開示の実施形態に係る軸受装置10について、図面を参照して説明する。
本実施形態の軸受装置10は、遠心圧縮機やギアド圧縮機、駆動用タービン等の回転機械に用いられる軸受装置である。軸受装置10は、軸線О方向に延びる回転軸1を回転可能に支持するラジアル軸受である。
図1に示すように、軸受装置10は、軸受パッド20と、ハウジング30と、ピボット軸40と、給油孔50と、を備えている。
【0011】
(軸受パッド)
軸受パッド20は、回転軸1を外周側から支持する部材である。本実施形態においては、5つの軸受パッド20が回転軸1の周りに等間隔に設けられている。
図2に示すように、軸受パッド20は、パッド面21と、背面22と、前側面23と、を有している。
図2は、
図1の要部を拡大した図である。
【0012】
パッド面21は、軸線О方向から見て径方向外側に凹む円弧形状をなしており、当該円弧形状を維持したまま軸線О方向に延在している内周面である。パッド面21は、回転軸1の外周面と対向している。本実施形態において、回転軸1の回転時には、パッド面21と回転軸1の外周面との間に区画される隙間には潤滑油が供給され、油膜が形成される。パッド面21は、当該油膜を介して回転軸1を外周側から摺動可能(回転可能)に支持している。
【0013】
本実施形態において、軸受パッド20は、外周側の部分が鋼材等から形成された軸受パッド20の基部とされており、該基部から径方向内側に向かって例えばホワイトメタル等の軸受鋼が積層されることで形成されている。
【0014】
背面22は、パッド面21の反対側に位置しており、所定の寸法(R2)を曲率半径とする一様な円弧形状をなすとともに、当該円弧形状を維持したまま軸線О方向に延在している円筒面状の外周面である。背面22の略中央には、径方向内側に向かって凹む凹部24が形成されている。
【0015】
前側面23は、パッド面21及び背面22を接続するとともに、回転軸1の回転方向T前方側を向く凸曲面状をなしている側面である。
本実施形態における前側面23の詳細な構成については後述する。
軸受パッド20は、軸線Оに直交する断面視で周方向に円弧状に延びるとともに、パッド面21から背面22にかけての径方向の寸法(L)が一様な湾曲板形状をなしている。
【0016】
(ハウジング)
ハウジング30は、軸線Оを囲う環状をなし、回転軸1及び軸受パッド20を外周側から覆うとともに軸受パッド20を外周側から揺動可能に支持している。ハウジング30は、軸受パッド20の背面22よりも小さい一様な曲率で形成された円筒面状の内周面31を有する。内周面31は、軸受パッド20の背面22と線的に接触している。
【0017】
本実施形態においては、ハウジング30の内周面31と軸受パッド20の背面22とが線的に接触することで生じる、軸線Оに平行に延びる接触部分を含む仮想軸線を揺動基準軸線Pと称する。したがって、ハウジング30は、内周面31上で揺動基準軸線P回りに軸受パッド20が揺動可能となるように支持している。これにより、いわゆるティルティング機構が構成されている。
【0018】
(ピボット軸)
ピボット軸40は、軸受パッド20を揺動可能に位置決めしている柱状の部材である。ピボット軸40は、ハウジング30内部においてピボット軸線Aに沿って延在するように設けられている。ピボット軸線Aは、径方向に延びるとともにピボット軸40の中心を通る仮想軸線である。ピボット軸線Aは、回転機械が静止している状態、即ち軸受パッド20に外力が生じていない状態において、揺動基準軸線Pと直交している。
【0019】
ピボット軸40の端部40aは、ハウジング30の内周面31から径方向内側に向かって突出しているとともに、背面22に形成されている凹部24に挿入されている。凹部24に挿入されているピボット軸40の端部40aの側面と該凹部24の壁面との間にはクリアランスが存在している。したがって、回転機械運転中に軸受パッド20を揺動させる力が働いた際、軸受パッド20は、該クリアランス分、ハウジング30の内周面31において揺動することが可能である。即ち、揺動基準軸線Pは、回転機械が静止している状態を初期位置として、軸受パッド20の揺動に伴い、該クリアランス分、ハウジング30の内周面31において変動する。
【0020】
(前側面)
前側面23は、揺動基準軸線Pを中心として揺動基準軸線Pからの距離を半径とする円筒面状をなしている。より詳しくは、本実施形態において、前側面23は、回転機械が静止している状態、即ち軸受パッド20に外力が生じていない状態における揺動基準軸線Pからの距離(R1)を曲率半径とする一様な円筒面状をなしている。
【0021】
前側面23の曲率を規定する距離(R1)は、軸受パッド20のパッド面21から背面22にかけての径方向の寸法(L)と、軸受パッド20の背面22の曲率を規定する寸法(R2)との間の関係において、以下の不等式(1)を成立させる。
L/2<R1<R2 …(1)
【0022】
(給油孔)
ハウジング30には、複数の給油孔50が周方向に等間隔に形成されている。本実施形態において、給油孔50は、ハウジング30の外周面から内周面31にかけて該ハウジング30を径方向に貫通している。給油孔50は、軸受パッド20と同じ数が形成されている。給油孔50の径方向内側を向く開口部は、ハウジング30と回転軸1との間の軸受パッド20同士の間に存在する空間に開口している。つまり、給油孔50は、例えば回転機械の運転中に、軸受装置10の外部に存在する給油装置(図示無し)から該給油孔50を介してパッド面21へ潤滑油が供給される際、潤滑油が背面22に衝突することがない位置に設けられている。
【0023】
(作用効果)
続いて、本実施形態に係る軸受装置10の動作について説明する。回転機械の運転に伴って回転軸1が回転すると、回転軸1と軸受パッド20との間には、給油孔50を介して軸受装置10の外部から潤滑油が供給される。これにより、回転軸1の外周面と軸受パッド20のパッド面21とが区画する隙間が潤滑油で満たされ、油膜が形成される。これにより、回転軸1は、当該油膜を介してパッド面21に摺動可能に支持される。
【0024】
ここで、回転軸1の回転に伴って、一の軸受パッド20と回転軸1との間に存在する潤滑油は、回転方向T後方側へと移動することがある。つまり、移動した潤滑油はキャリーオーバ油として一の軸受パッド20と回転方向T後方側に隣接する他の軸受パッド20との間に形成されている空間に移動する。このキャリーオーバ油は、回転方向T前方側へ向かう運動エネルギーを持っているため、他の軸受パッド20の前側面23に衝突する。このため、他の軸受パッド20には、回転方向T後方側へ向かうラム圧が生じる。
【0025】
上記第一実施形態に係る軸受装置10は、軸線О方向に延びる回転軸1を支持可能なパッド面21と、パッド面21の反対側に位置する背面22と、パッド面21及び背面22を接続するとともに回転軸1の回転方向T前方側を向く前側面23と、を有する軸受パッド20と、回転軸1及び軸受パッド20を外周側から囲う環状をなすとともに、軸受パッド20を揺動可能に支持するハウジング30と、を備え、軸受パッド20の前側面23が凸曲面状をなしている。
【0026】
これにより、前側面23に作用するラム圧の前側面23の垂直方向成分の向きは、ハウジング30の軸受パッド20を支持している部分へ近づく。したがって、前側面23が凸曲面をなしていない場合と比較して、軸受パッド20を揺動させるモーメントを低減できる。したがって、回転軸1を含むロータの振れ回りが発生する可能性を低減できる。
【0027】
また、軸受パッド20は、軸線Оに平行に延びる揺動基準軸線P回りに揺動可能とされており、軸受パッド20の前側面23は、揺動基準軸線Pを中心として揺動基準軸線Pからの距離を半径とする円筒面状をなしている。
これにより、前側面23に作用するラム圧の前側面23の垂直方向成分は、揺動基準軸線P又は揺動基準軸線P近傍へ向かう。したがって、軸受パッド20を揺動させるモーメントをより低減できる。
【0028】
また、軸受パッド20は、背面22から径方向内側に向かって凹む凹部24を有し、ハウジング30の内周面31から径方向内側に向かって突出しているとともに、前記凹部24に挿入されていることで前記軸受パッド20を揺動可能に位置決めするピボット軸40をさらに備えている。
これにより、軸受パッド20がハウジング30に対して揺動可能に位置決めされるため、軸受パッド20の揺動する範囲を規制できる。したがって、軸受パッド20と回転軸1とが該軸受パッド20の揺動により、接触してしまう可能性を低減できる。
【0029】
[第二実施形態]
以下、本開示の第二実施形態の軸受装置10の構成について
図3を参照して説明する。第二実施形態の軸受装置10は、ラム圧防止板60をさらに備える。第一実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図3は、
図1の要部を拡大した図である。
【0030】
(ラム圧防止板)
ラム圧防止板60は、給油孔50よりも回転方向T後方側、及び軸受パッド20の前側面23よりも回転方向T前方側のハウジング30の内周面31に設けられている板状の部材である。ラム圧防止板60は、ハウジング30の内周面31から径方向内側に向かって延びるとともに、軸受パッド20の前側面23を回転方向T前方側から覆っている。
【0031】
(作用効果)
第二実施形態に係る軸受装置10は、ハウジング30の内周面31から径方向内側に向かって延びるとともに、軸受パッド20の前側面23を回転方向T前方側から覆うラム圧防止板60をさらに備える。
これにより、前側面23にキャリーオーバ油が直接衝突することを抑制できる。したがって、前側面23にかかるラム圧を抑制でき、軸受パッド20を揺動させるモーメントを低減できる。したがって、回転軸1を含むロータの振れ回りが発生する可能性を低減できる。
【0032】
[その他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は各実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本開示は実施形態によって限定されることはない。
【0033】
なお、軸受パッド20の背面22は、所定の寸法(R2)を曲率半径とする一様な球面状をなしており、該背面22よりも小さい曲率で一様に形成されたハウジング30の円筒面状の内周面31と点的に接触していてもよい。この構成では、内周面31と背面22とが点的に接触することで生じる接触部分を揺動基準点と称する。したがって、ハウジング30は、内周面31上で揺動基準点回りに軸受パッド20が3次元的に揺動可能となるように支持している。
この場合、前側面23は、揺動基準点を中心として揺動基準点からの距離を半径とする球面状をなしている。より詳しくは、前側面23は、回転機械が静止している状態、即ち軸受パッド20に外力が生じていない状態における揺動基準点からの距離(R3)を曲率半径とする一様な球面状をなしている。
これにより、前側面23に作用するラム圧の前側面23の垂直方向成分の向きは揺動基準点又は揺動基準点近傍へ向かう。したがって、上記同様の作用効果を実現できる。
【0034】
また、
図4に示すように、軸受パッド20は、凹部24に挿入されるピボット軸40の端部40aによって揺動可能に支持され、軸受パッド20の背面22はハウジング30の内周面31と接触していなくてもよい。この構成では、ピボット軸線A上において、内周面31よりも背面22側に生じる支点を揺動基準点Qと称する。つまり、ハウジング30は、ピボット軸40を介して、揺動基準点Q回りに軸受パッド20が揺動可能となるように支持している。
この場合、前側面23は、揺動基準点Qを中心として揺動基準点Qからの距離を半径とする球面状をなしている。より詳しくは、前側面23は、回転機械が静止している状態、即ち軸受パッド20に外力が生じていない状態における揺動基準点Qからの距離(R3)を曲率半径とする一様な球面状をなしている。
これにより、前側面23に作用するラム圧の前側面23の垂直方向成分の向きは揺動基準点Q又は揺動基準点Q近傍へ向かう。したがって、上記同様の作用効果を実現できる。
【0035】
また、上記その他の実施形態において、前側面23の曲率を規定する距離(R3)は、軸受パッド20のパッド面21から背面22にかけての径方向の寸法(L)と、軸受パッド20の背面22の曲率を規定する寸法(R2)との間の関係において、以下の不等式(2)を成立させてもよい。
L/2<R3<R2 …(2)
【0036】
また、上記第二実施形態では、軸受パッド20の前側面23が回転軸1の回転方向T前方側を向く凸曲面状をなしていない構成であってもよい。
【0037】
[付記]
実施形態に記載の軸受装置10は、例えば以下のように把握される。
【0038】
(1)第1の態様に係る軸受装置10は、軸線О方向に延びる回転軸1を支持可能なパッド面21と、前記パッド面21の反対側に位置する背面22と、前記パッド面21及び前記背面22を接続するとともに前記回転軸1の回転方向T前方側を向く前側面23と、を有する軸受パッド20と、前記回転軸1及び前記軸受パッド20を外周側から囲う環状をなすとともに、前記軸受パッド20を揺動可能に支持するハウジング30と、を備え、前記軸受パッド20の前記前側面23が凸曲面状をなしている。
【0039】
これにより、前側面23に作用するラム圧の前側面23の垂直方向成分の向きは、ハウジング30の軸受パッド20を支持している部分へ近づく。したがって、前側面23が凸曲面をなしていない場合と比較して、軸受パッド20を揺動させるモーメントを低減できる。
【0040】
(2)第2の態様に係る軸受装置10は、(1)の軸受装置10であって、前記軸受パッド20は、前記軸線Оに平行に延びる揺動基準軸線P回りに揺動可能とされており、前記軸受パッド20の前記前側面23は、前記揺動基準軸線Pを中心として前記揺動基準軸線Pからの距離を半径とする円筒面状をなしていてもよい。
【0041】
これにより、前側面23に作用するラム圧の前側面23の垂直方向成分は、揺動基準軸線P及び揺動基準軸線P近傍へ向かう。したがって、軸受パッド20を揺動させるモーメントをより低減できる。
【0042】
(3)第3の態様に係る軸受装置10は、(1)の軸受装置10であって、前記軸受パッド20は、前記背面22側に位置する揺動基準点回りに揺動可能とされており、前記軸受パッド20の前記前側面23は、前記揺動基準点を中心として前記揺動基準点からの距離を半径とする球面状をなしていてもよい。
【0043】
これにより、前側面23に作用するラム圧の前側面23の垂直方向成分の向きは揺動基準点及び揺動基準点近傍へ向かう。したがって、軸受パッド20を揺動させるモーメントをより低減できる。
【0044】
(4)第4の態様に係る軸受装置10は、(2)または(3)の軸受装置10であって、前記軸受パッド20は、前記背面22から径方向内側に向かって凹む凹部24を有し、前記ハウジング30の内周面31から径方向内側に向かって突出しているとともに、前記凹部24に挿入されていることで前記軸受パッド20を揺動可能に位置決めするピボット軸40をさらに備えてもよい。
【0045】
これにより、軸受パッド20がハウジング30に対して揺動可能に位置決めされるため、軸受パッド20の揺動する範囲を規制できる。したがって、軸受パッド20と回転軸1とが該軸受パッド20の揺動により、接触してしまう可能性を低減できる。
【0046】
(5)第5の態様に係る軸受装置10は、(1)から(4)のいずれかの軸受装置10であって、前記ハウジング30から径方向内側に向かって延びるとともに、前記軸受パッド20の前側面23を前記回転方向T前方側から覆うラム圧防止板60をさらに備えてもよい。
【0047】
これにより、前側面23にキャリーオーバ油が直接衝突することを抑制できる。したがって、前側面23にかかるラム圧を抑制でき、軸受パッド20を揺動させるモーメントを低減できる。
【0048】
(6)第6の態様に係る軸受装置10は、軸線О方向に延びる回転軸1を支持可能なパッド面21と、前記パッド面21の反対側に位置する背面22と、前記パッド面21及び前記背面22を接続するとともに前記回転軸1の回転方向T前方側を向く前側面23と、を有する軸受パッド20と、前記回転軸1及び前記軸受パッド20を外周側から囲う環状をなすとともに、前記軸受パッド20が揺動可能となるように前記軸受パッド20の前記背面22が接触する内周面31を有するハウジング30と、前記ハウジング30から径方向内側に向かって延びるとともに、前記軸受パッド20の前側面23を前記回転方向T前方側から覆うラム圧防止板60と、を備える。
【0049】
これにより、前側面23にキャリーオーバ油が直接衝突することを抑制できる。したがって、前側面23にかかるラム圧を抑制でき、軸受パッド20を揺動させるモーメントを低減できる。
【符号の説明】
【0050】
1…回転軸 10…軸受装置 20…軸受パッド 21…パッド面 22…背面 23…前側面 24…凹部 30…ハウジング 31…内周面 40…ピボット軸 40a…端部 50…給油孔 60…ラム圧防止板 A…ピボット軸線 О…軸線 P…揺動基準軸線 T…回転方向