IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社熊谷組の特許一覧

<>
  • 特許-格子状構造物の風騒音低減構造 図1
  • 特許-格子状構造物の風騒音低減構造 図2
  • 特許-格子状構造物の風騒音低減構造 図3
  • 特許-格子状構造物の風騒音低減構造 図4
  • 特許-格子状構造物の風騒音低減構造 図5
  • 特許-格子状構造物の風騒音低減構造 図6
  • 特許-格子状構造物の風騒音低減構造 図7
  • 特許-格子状構造物の風騒音低減構造 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】格子状構造物の風騒音低減構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/82 20060101AFI20240712BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20240712BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20240712BHJP
   E04F 11/18 20060101ALI20240712BHJP
   E04H 17/14 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
E04B1/82 J
E04B1/82 W
E04B1/86 Z
E04B1/00 501K
E04F11/18
E04H17/14 102Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021057418
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154394
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優輝
(72)【発明者】
【氏名】黒木 拓
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-193936(JP,A)
【文献】特開2011-190644(JP,A)
【文献】特開2004-019376(JP,A)
【文献】特開2013-234443(JP,A)
【文献】特開2008-297857(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0109025(US,A1)
【文献】米国特許第2969955(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04B 1/00
E04F 11/18
E04H 17/00 -17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の手摺り子を有する、手摺り又は柵からなる格子状構造物の風騒音低減構造であって、
各手摺り子に少なくとも1点で固定され各手摺り子の表面上を該手摺り子の伸長方向へ伸びる少なくとも1つの板部材を備える、風騒音低減構造。
【請求項2】
前記板部材は各手摺り子の表面に接している、請求項1に記載の風騒音低減構造。
【請求項3】
前記板部材は、前記格子状構造物が設置された状態で見て、風上側に位置する、請求項2に記載の風騒音低減構造。
【請求項4】
複数の中空の手摺り子を有する、手摺り又は柵からなる格子状構造物の風騒音低減構造であって、
各手摺り子の内部に配置されかつ該手摺り子に少なくとも1点で固定され、各手摺り子の伸長方向へ伸びる少なくとも1つの板部材を備える、風騒音低減構造。
【請求項5】
前記板部材は前記手摺り子に接している、請求項4に記載の風騒音低減構造。
【請求項6】
前記板部材は各手摺り子の全長にわたって伸び、その両端部上の2点において前記手摺り子に固定されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の風騒音低減構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の窓、ベランダ、バルコニー、屋上、非常階段等に設置される手摺又は土地、家屋等の境界に設置される柵からなる格子状構造物が風を受けて発する騒音(以下、風騒音という。)の大きさを低減するための風騒音低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
前記格子状構造物は、縦、横又は斜めに互いに間隔をおいて一方向へ伸びる複数の手摺り子を有する。前記格子状構造物にあっては、風の卓越周波数と手摺り子の固有振動数とが一致したときに手摺り子が共振し、風騒音が発生する。
【0003】
従来、前記格子状構造物の1つである縦格子手摺における前記風騒音の大きさを低減するための風騒音低減構造として、複数の手摺り子を互いに連結する上下2つの板状又は棒状の横部材を有するものが提案されている。上下の両横部材は、風を受けることによって各手摺り子が発する風騒音の大きさを低減する働きをなす。
【0004】
ところで、前記格子状構造物は、その設置場所が人の生活や、行動に関わる身近な場所であることから、その外観が重視される。前記従来の風騒音低減構造にあっては、その横部材が、縦方向へ伸びる複数の手摺り子の整然とした配列の形態を害し、このために縦格子手摺の外観を損ねるおそれがある。また、建物内からの眺望を阻害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-265543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の実情に鑑み、格子状構造物における外観の毀損を回避し得る風騒音低減構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は複数の手摺り子を有する、手摺又は柵からなる格子状構造物の風騒音低減構造に係る。前記風騒音低減構造は、各手摺り子に少なくとも1点で固定され各手摺り子の表面上を該手摺り子の伸長方向へ伸びる少なくとも1つの板部材を備える。ここに、手摺り子の「表面」とは、外気に曝される面である周面を言う。
【0008】
本発明にあっては、前記格子状構造物が設置された状態において、風圧力を受けて各手摺り子に振動が生じるとき、各板部材が各手摺り子からその振動に起因する外力を受けて振動する。ここにおいて、各手摺り子の振動パラメータ(手摺り子の質量、剛性、減衰係数)及び前記風圧力と、各板部材の振動パラメータ(板部材の質量、剛性、減衰係数)及び前記外力とは、大きさを異にする。このことから、各板部材を振動させるためのエネルギーが必要となる。エネルギーの総和は手摺り子にかかる外力とほぼ等しいので、板部材を設置しない場合に比べ手摺り子を振動させるエネルギーが低減するため、振動を抑えることができる。これにより、各手摺り子の振動による風騒音の大きさが低減される。各板部材は、各手摺り子の表面上を該手摺り子の伸長方向へ伸びている。すなわち、各板部材は各手摺り子の幅の範囲内において又は互いに隣接する2つの手摺り子相互間の空間に僅かに張り出す程度においてその伸長方向へ伸びている。このため、複数の手摺り子の整然とした配列形態が維持され、前記配列形態が規定する前記格子状構造物の外観が維持される。また、前記板部材は建物からの眺望の妨げとならない。さらに、前記格子状構造物が特に建物に設置される手摺からなる場合、前記風騒音を生じさせる前記手摺り子の振動が前記建物の躯体に伝搬し、室内に騒音が発生することがある。本発明によれば、前記手摺り子の振動を抑えることにより、前記室内に生じる騒音の低減を図ることができる。
【0009】
前記板部材は各手摺り子の表面に接するものとすることができる。これによれば、各手摺り子に対する各板部材の振動時、前記位相の相違のために各手摺り子と各板部材との間に摩擦力が生じ、該摩擦力によって各手摺り子が発する風騒音の大きさをより一層低減することができる。また、各板部材は、前記格子状構造物が設置された状態で見て、風上側に配置することができる。これによれば、各板部材が風圧力を受けるため、各手摺り子に対する各板部材の摩擦力の大きさがより増大され、各手摺り子の風騒音の大きさがさらに低減される。
【0010】
各板部材は、これを各手摺り子の表面上に配置することに代えて、中空の各手摺り子の内部に配置することができる。すなわち、少なくとも1つの板部材が中空の各手摺り子に少なくとも1点で固定され、各手摺り子の伸長方向へ伸びるものとすることができる。これによれば、各板部材の各手摺り子の外部への露出を回避した状態での、また、風の影響を受けないようにした状態での、各手摺り子の振動による風騒音の大きさの低減、又は、前記振動及び前記摩擦力の双方による風騒音の大きさの低減を図ることができる。
【0011】
前記板部材は、各手摺り子のほぼ全長にわたって伸び、その両端部上の2点において前記手摺り子に固定されたものとすることができる。これによれば、前記2点間に比較的長い間隔を確保することができ、これにより各手摺り子と各板部材との間により大きい摩擦力を生じさせ、各手摺り子の風騒音の大きさについてより高い低減効果を発揮させることができる。前記板部材は、例えば金属製、ガラス製、木製、合成樹脂製又はゴム製の板材からなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】風騒音低減構造が適用された格子状構造物の一例である縦格子手摺の斜視図である。
図2図1の一部を拡大して示す部分拡大図である。
図3】矩形の断面を有する手摺り子の表面上に配置された板部材の一例を概略的に示す断面図である。
図4】矩形の断面を有する手摺り子の表面上に配置された板部材の他の一例を概略的に示す断面図である。
図5】矩形の断面を有する手摺り子の内部に配置された板部材の一例を概略的に示す断面図である。
図6】矩形の断面を有する手摺り子の内部に配置された板部材の他の一例を概略的に示す断面図である。
図7】風洞実験による一の検証結果を示すグラフである。
図8】風洞実験による他の検証結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、建物の窓、ベランダ、バルコニー、屋上、非常階段等に設置される縦格子手摺、横格子手摺、斜め格子手摺等の手摺、又は、土地、家屋等の境界に設置される柵からなる格子状構造物に適用される。
【0014】
前記格子状構造物は、互いに間隔をおいて一方向へ伸びる複数の手摺り子を有する。前記手摺り子は、通常、多角形又は円形の横断面形状を有し、また、中空又は中実のものからなる。
【0015】
図1は前記格子状構造物の一例である縦格子手摺10と、これに取り付けられた風騒音低減構造12とを示す。
【0016】
図示の縦格子手摺10は、縦方向(上下方向)へ伸びる一対の支柱14と、両支柱14に固定され横方向へ伸びる上下2つの弦部材16、18と、両弦部材16、18間に互いに間隔を置いて配置された中空のすなわち管状の複数の手摺り子20とを備える。複数の手摺り子20はそれぞれこれらの上端部及び下端部において上弦部材16及び下弦部材18に固定されている。各支柱14、各弦部材16、18及び各手摺り子20は、一例として、アルミニウムの押出形材からなる。
【0017】
図示の例において、各手摺り子20は矩形の断面形状を有し、互いに直交する4つの側板部22、24すなわち対向する2つの側板部22及び対向する2つの側板部24を備える(図2図6参照)。4つの側板部22、24は前記矩形の横断面形状を規定する、手摺り子20の外部の4つの側面(外側面)A、B及び手摺り子20の内部の4つの側面(内側面)A、Bを有する。より詳細には、一方の側板部22が外側面A及び内側面Aを有し、また、他方の側板部24が外側面B及び内側面Bを有する。ここに、外側面A及びBはそれぞれ外気に曝される面である、手摺り子20の表面をなす。各外側面A、B及び各内側面A、Bはそれぞれ細長い矩形の平面形状を有する。側板部22の外側面A及び内側面Aはそれぞれ幅寸法a及びa図3参照)を有し、また、各側板部24の外側面B及び内側面Bがそれぞれ幅寸法b及びb(a<b、a<b)(図4参照)を有する。図示の例では、各手摺り子20の両外側面Aがそれぞれ縦格子手摺10の正面及び背面に向けられている。縦格子手摺10の手摺り子20は、図示の矩形の断面形状を有するもののほか、三角形、正方形、五角形等の他の多角形の断面形状を有するものであってもよい。
【0018】
縦格子手摺10に取り付けられた風騒音低減構造12は、複数の板部材26を備える。各板部材26は各手摺り子20の外部に配置され(図1図4)、あるいは、各手摺り子20の内部に配置される(図5図6)。
【0019】
板部材26はアルミニウム製や鋼製のような金属製の平板、ガラス製、木製、合成樹脂製又はゴム製の平板からなる。図示の板部材26は細長い矩形の平面形状を有し、その両端部からなる上端部26a及び下端部26bを有する。また、図示の板部材26は、上下の両弦部材16、18の相互間隔よりわずかに短い長さ寸法(上下方向長さ)を有し、0.5~3.0mmの厚さ寸法を有する。但し、板部材26の長さ寸法及び厚さ寸法は任意の大きさに定めることができる。
【0020】
各板部材26は各手摺り子20に少なくとも1点(図示の例では上端部26a上の1点及び下端部26b上の1点からなる2点)において固定され各手摺り子20に沿って上下方向へ伸びている。より詳細には、各板部材26はその上端部26a及び下端部26bにおいて、タッピングビス28を用いて、各手摺り子20にその4つの側板部22、24のうちの少なくとも1つの側板部に固定され、当該1の側板部22、24の外側面A、B上又は内側面A、B上を上下方向へ伸びている。但し、手摺り子20の内部に配置された板部材26については、風の影響を受けないことから、任意の1点例えば上端部26a上の1点のみにおいて、側板部22、24に固定することが可能である。手摺り子20に対する板部材26の固定は、タッピングビス28に代えて、例えばリベットや、ボルト及びナットのような締結具を用いて、又は接着剤を点状に付して、あるいは、金属製の板材からなる板部材26については溶接により行うことができる。板部材26は、例えば、その長手方向における端部上の1点又は中央部上の1点において、あるいは、その長手方向に互いに間隔をおいた複数の点において、手摺り子20に固定することができる。
【0021】
各板部材26は各手摺り子20に接する状態におかれている。より詳細には、手摺り子20の外部に配置された図1図3に示す板部材26及び図4に示す板部材26は、それぞれ、側板部22の外側面A及び側板部24の外側面Bに接する状態におかれている。また、手摺り子20の内部に配置された図5に示す板部材26及び図6に示す板部材は、それぞれ、側板部22の内側面A及び側板部24の内側面Bに接する状態におかれている。なお、手摺り子20の外部に配置された板部材26については、これを手摺り子20に固定することに代えて、その上端部26a及び下端部26bにおいて、上下の両弦部材16、18に固定することができる(図示せず)。ここにおいて、板部材26は、好ましくは、その上端部26aが上弦部材16からその上方に突出せずかつその下端部26bが下弦部材18からその下方に突出しない長さ寸法を有するものが選択される。
【0022】
板部材26は、図示の例に代えて、例えばその上下両端部26a、26bと手摺り子20の側板部22、24との間にスペーサ(図示せず)介在させることにより、上下両端部26a、26bの間において手摺り子20の1の外側面A、Bに対して非接触状態にあるものとすることができる。また、板部材26をその上端部26aにおいてのみ固定する例においても、同様にして、上端部26aより下方の部分において手摺り子20の1の外側面A、Bに対して非接触状態にあるものとすることができる。
【0023】
風騒音低減構造12によれば、縦格子手摺10が所要の箇所に設置された状態において、風圧力(F)を受けて各手摺り子20に振動が生じるとき、より詳細には、風の卓越周波数と手摺り子の固有振動数とが一致したときに手摺り子が共振し、風騒音が発生する。このとき、各板部材26が各手摺り子20からその振動に起因する外力(F’)を受け、その上下両端部26a、26b間において振動する。ここにおいて、各手摺り子20の振動パラメータ(手摺り子の質量(m)、剛性(k)、減衰係数(c))及び前記風圧力(F)と、各板部材26の振動パラメータ(板部材26の質量(m’)、剛性(k’)、減衰係数(c’))及び前記外力(F’(=m、a:手摺り子20の振動加速度))とは、大きさを異にする。
【0024】
このことから、各板部材26を振動させるためのエネルギーが必要となる。エネルギーの総和は手摺り子20にかかる外力とほぼ等しいので、板部材26を設置しない場合に比べ手摺り子20を振動させるエネルギーが低減するため、振動を抑えることができる。これにより、各手摺り子20の振動による風騒音の大きさが低減される。また、板部材26の振動は各手摺り子20の振動とは位相を異にする。板部材26が各手摺り子20の1の外側面A1、B1に対して、あるいは、1の内側面A2、B2に対して接触した状態におかれている場合には、各手摺り子20に対する各板部材26の振動と共に、前記位相の相違により各手摺り子20と各板部材26との間に摩擦力が生じる。前記摩擦力によって各手摺り子20が発する風騒音の大きさがより一層低減される。
【0025】
このことを検証するために行った3つの縦格子手摺についての風洞実験の結果を図7のグラフに示す。前記風洞実験は、17本の管状の手摺り子を有する縦格子手摺を用いて行った。ここに、前記手摺り子の幅、奥行、厚み及び長さは、それぞれ、20mm、40mm、1.1mm及び1165mmである。また、前記板部材はアルミニウム製のものを使用した。前記板部材の幅、長さ及び板厚は、それぞれ、20mm、1150mm及び2.0mmである。前記グラフには、5~20m/sの風速に対するA特性音圧レベルが示されている。図上、風騒音低減構造12が取り付けられていない縦格子手摺について「なし」と標記されている。また、風騒音低減構造12が取り付けられた縦格子手摺であってその板部材26がその上下両端部26a、26bにおいて手摺り子20の1の側板部22に取り付けられ該側板部の外側面Aに接する縦格子手摺について「対策(上下端止め)」と標記されている。さらに、板部材26がその全面において手摺り子20の1の側板部22の外側面Aに接着され、このために1の側板部22に対する振動が不可能である縦格子手摺について「対策(全面止め)」と標記されている。
【0026】
図7の示すところによれば、「対策(上下端止め)」の音圧レベルが、風速5~20m/sのほぼ全域において、「なし」の音圧レベルより低く、また、比較的大きい風速13~17m/sにおいて、「対策(全面止め)」の音圧レベルより低く、「対策(上下端止め)」おける風騒音の大きさの低減効果が比較的高いことが見て取れる。特に、風速13~17m/sにおいて「対策(上下端止め)」の風騒音低減効果が顕著に見て取れる。
【0027】
矩形状の板部材26の幅寸法は、板部材26が面する1の外側面A、Bの幅寸法a、b以下、好ましくは外側面A1、B1の幅寸法a、bの50~100%の大きさに設定され、また、1の内側面A、Bの幅寸法a、b以下、好ましくは内側面A、Bの幅寸法a、bの50~100%の大きさに設定される。板部材26はこれが面する1の外側面A、B上を該外側面内において、また、板部材26が面する1の内側面A、B上を該内側面内において、上下方向へ伸びている。
【0028】
これによれば、手摺り子20の外部に配置された板部材26にあっては、板部材26が各手摺り子20の1の外側面A、B外にはみ出さず、また、このために互いに隣接する2つの手摺り子20相互間の空間30(図2参照)に張り出すことなく、各手摺り子20と共にその伸長方向へ伸びる状態におくことができる。但し、手摺り子20の外部に配置される矩形状の板部材26については、該板部材が面する1の外側面A、Bの幅寸法a、bより僅かに大きい幅寸法、例えば外側面A1、B1の幅寸法a、bより10%大きい幅寸法を有するものの使用が可能である。
【0029】
これによれば、複数の手摺り子20の整然とした配列形態が維持され、前記配列形態が規定する縦格子手摺10の外観が維持される。また、手摺り子20の内部に配置された板部材26にあっては、各板部材26が各手摺り子20の外部に露出しない状態におかれていることから、複数の手摺り子20の整然とした配列形態が維持され、前記配列形態が規定する縦格子手摺10の外観が維持される。
【0030】
また、板部材26が手摺り子20の外部に配置された縦格子手摺10においては、縦格子手摺10が設置された状態で見て、板部材26が風上側に位置するように配置することができる。これによれば、板部材26が風圧力を受けて手摺り子20に押し付けられるため、1の側板部22、24に対する板部材26の摩擦力の大きさがより増大され、各手摺り子20が発する風騒音の大きさがさらに低減される。
【0031】
このことを検証するために行った3つの縦格子手摺についての風洞実験の結果を図8のグラフに示す。前記風洞実験は、前記したと同様、17本の管状の手摺り子を有する縦格子手摺を用いて行った。前記手摺り子の幅、奥行、厚み及び長さは、それぞれ、20mm、40mm、1.1mm及び1165mmである。また、前記板部材はアルミニウム製のものを使用した。前記板部材の幅、長さ及び板厚は、それぞれ、20mm、1150mm及び1.0mmである。前記グラフには、5~20m/sの風速に対する1/3オクターブバンド2000Hz帯域の音圧レベルが示されている。図上、風騒音低減構造12が取り付けられていない縦格子手摺について「なし」と標記され、風騒音低減構造12が取り付けられその板部材26が風上側に位置するように設置された縦格子手摺10について「対策(風上設置)」と標記され、また、風騒音低減構造12が取り付けられその板部材26が風下側に位置するように設置された縦格子手摺10について「対策(風下設置)」と標記されている。
【0032】
図8の示すところによれば、「対策(風上設置)」の音圧レベルが、風速5~20m/sのほぼ全域にわたって、「なし」についての音圧レベルより低い。また、1/3オクターブバンド2000Hz帯域におけるような高音域では、風速12m/s以上において、「対策(風上設置)」の音圧レベルが「対策(風下設置)」の音圧レベルより低く、「対策(風上設置)」おける風騒音低減効果が比較的高いことが見て取れる。
【0033】
前記したところでは、風騒音抑制構造12の取付対象として多角形の断面形状を有する手摺り子20を挙げ、これに平板からなる板部材26を取り付けることを例示したが、前記手摺り子が円形の断面形状を有する場合にあっては、前記板部材として、円弧状の湾曲板を用いる。より詳細には、中実の手摺り子については、前記手摺り子の表面を規定する周面の曲率にほぼ等しい曲率を有する少なくとも1つの湾曲板を、前記したところに準じて、前記周面に相対しかつ前記手摺り子の伸長方向へ伸びるように配置し、少なくとも1点において前記手摺り子に固定する。前記湾曲板の数が複数であるときは、複数の湾曲板を周方向に互いに間隔をおいて配置する。また、中空の手摺り子については、その表面である外周面上に、前記中実の手摺り子におけると同様に配置し、固定する。また、前記中空の手摺り子の内部に配置する前記板部材については、これを、前記手摺り子の内周面の曲率にほぼ等しい曲率を有する湾曲板とする。この湾曲板も、また、その少なくとも1つが前記外周面におけると同様にして内周面上に配置され、固定される。
【0034】
また、縦方向に伸びる複数の手摺り子を有する柵、横方向に伸びる複数の手摺り子を有する手摺及び柵、並びに斜め方向へ伸びる複数の手摺り子を有する手摺及び柵についても、前記縦格子手摺の手摺り子及び前記円形断面の手摺り子に対するのと同様にして、前記板部材の取り付けを行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
10 縦格子手摺
12 風騒音低減構造
16、18 縦格子手摺の上弦部材及び下弦部材
20 手摺り子
22、24 手摺り子の側板部
26 板部材
26a、26b 手摺り子の上端部及び下端部
28 タッピングビス
30 手摺り子相互間の空間
、A 一の側板部の外側面及び内側面
、B 他の側板部の外側面及び内側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8