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  • 特許-X線検査装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20240712BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240712BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021086199
(22)【出願日】2021-05-21
(65)【公開番号】P2022179006
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 直也
(72)【発明者】
【氏名】野田 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】岡野 恵至
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-520374(JP,A)
【文献】特開2002-005866(JP,A)
【文献】特表2016-521367(JP,A)
【文献】特開2018-155550(JP,A)
【文献】特開2015-192803(JP,A)
【文献】特開2006-277129(JP,A)
【文献】特開2001-137224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0280286(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N
G01T 1/00-G01T 7/12
G01B15/00-G01B15/08
A61B 6/00-A61B 6/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物(2)に照射して透過したX線(3)を検出することにより前記被検査物の検査を行うX線検査装置(1)において、
筐体(4)内に配置され、冷却手段により局所的に冷却される半導体チップを搭載したX線検出部(6)と、
前記筐体内の前記X線検出部の近傍の湿度を監視する湿度センサ(15)と、
前記筐体内を除湿する除湿手段と、
前記湿度センサによる湿度が所定値以下のときに前記X線検出部へ電源の供給を行うよう制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線検査装置であって、
前記冷却手段がエアコン(9)をさらに含み、
前記エアコンは、前記除湿手段となる除湿機能を備えていることを特徴とするX線検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線検査装置であって、
前記筐体内には、前記X線検出部前記X線を発生するX線発生源(5)が設けられるとともに、前記筐体内の温度を監視する温度センサが設けられ、
前記制御部は、前記X線発生源への電源供給の後に、前記温度センサによる温度が所定値以上の場合、前記エアコンによる冷却機能の運転を開始することを特徴とするX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば生肉,魚,加工食品,医薬などの各品種の被検査物中(表面も含む)の異物(金属,骨,ガラス,石,合成樹脂材等)を検出するためにX線検査装置が用いられている。X線検査装置では、X線源やX線検出器などをはじめとして種々の電子部品の駆動による熱が生じる。これらの熱が筐体内にこもると電子部品の仕様温度(例えば40℃)を越えてしまうことがあることから、筐体内を冷却して温度を下げる必要がある。特許文献1に開示されるX線検査装置では、筐体の背面にエアコンディショナー(エアコン)を取り付け、その冷却部により筐体内の冷却が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-155550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線検査装置では、X線源やX線検出器などを冷却するために様々な構成があり、上記のようなエアコンを備えるものもある。エアコンを備えることにより、外気を取り入れる必要がなくなり、使用される環境における防水性や防塵性を維持しながら、X線検査装置を構成する電気ユニットから発せられる熱による温度上昇を抑えることができる。しかしながら、高湿環境でX線検査装置を使用する場合、保守作業等により通常閉鎖されているカバーなどを開けることがあるため、装置内部に高湿の外気が取り込まれることとなり、そのままエアコンで冷却すると、装置内部の電気ユニットを構成する電気部品、例えば半導体チップの表面に水滴が付着して、故障の原因となる。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、エアコンなどの装置内部を冷却する冷却手段による温度低下に伴って生じ得る電気部品の表面および周囲の局所的な結露を防止し、電気部品の故障を抑制できるX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のX線検査装置1は、被検査物2に照射して透過したX線3を検出することにより前記被検査物2の検査を行うX線検査装置1において、
筐体4内に配置され、冷却手段により局所的に冷却される半導体チップを搭載したX線検出部6と、
前記筐体4内の前記X線検出部6の近傍の湿度を監視する湿度センサ15と、
前記筐体4内を除湿する除湿手段と、
前記湿度センサ15による湿度が所定値以下のときに前記X線検出部6へ電源の供給を行うよう制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
このX線検査装置1では、筐体4内の湿度が、湿度センサ15により監視される。制御部は、湿度センサ15の検出値に基づき、各電気部品への電源の供給を制御する。主電源がONの状態であっても、湿度センサ15による湿度が所定値以上であったならモジュール群を有するX線検出部6はONしない。これにより多湿状態でX線検出部6におけるモジュール群に備えられているペルチェ素子などの冷却手段が駆動されることで、半導体チップに結露による水滴が付着することによるモジュール群の故障を抑制することができる。制御部は、湿度センサ15の検出値が所定値以下のとき、モジュール群、すなわち、X線検出部6へ電源の供給を行う。このため、X線検査装置1では、例えば、運転開始時に、筐体4内に高湿の外気が取り込まれた状態となったままX線検出部6が駆動されることによるモジュール群の結露を有効に抑制することができる。その結果、X線検査装置1によれば、エアコン9など冷却手段による局所的な電気部品の結露を防止し、電気部品の故障を抑制することができる。
【0008】
本発明の請求項2記載のX線検査装置1は、請求項1に記載のX線検査装置1であって、
前記冷却手段がエアコン9をさらに含み、
前記エアコン9は、前記除湿手段となる除湿機能を備えていることを特徴とする。
【0009】
このX線検査装置1では、冷却手段がエアコン9を含む。エアコン9は、除湿機能を備える。除湿は、水分の除去が目的となるが、冷房と同じように蒸発器から冷気が吹き出される。また、X線検査装置1において、X線発生部は安定してX線を照射するために所定の温度まで温めたい。しかし高温にはしたくない。また、半導体チップを有するモジュール群は、自己発熱により温まるがノイズ低減や寿命の観点で所定温度まで冷やしたい、というような筐体4に内蔵される電気ユニットごとに相異なる要請がある。そのため、運転開始時に暖気運転により内部の各電気ユニットの動作温度を安定させるとともに、エアコン9は、除湿運転のみならず、冷房運転も行う。その結果、X線検査装置1は、エアコン9の機能を使うことで、筐体4内の冷却と、筐体4内の除湿とを切り換えて、モジュール群をより結露しにくい雰囲気にできる。
【0010】
本発明の請求項3記載のX線検査装置1は、請求項2に記載のX線検査装置1であって、
前記筐体4内には、前記X線検出部6前記X線3を発生するX線発生源5が設けられるとともに、前記筐体4内の温度を監視する温度センサが設けられ、
前記制御部は、前記X線発生源5への電源供給の後に、前記温度センサによる温度が所定値以上の場合、前記エアコン9による冷却機能の運転を開始することを特徴とする。
【0011】
このX線検査装置1では、温度センサによる検出温度が所定値以上となった場合、エアコン9による冷却機能の運転が開始される。すなわち、例えばX線発生源5などが通電により温められて、そのあとエアコン9の冷却機能や除湿機能がONされる。これにより、暖気運転で安定させた筐体4内の温度を維持することが可能となり、温度変化により生じる電気ユニットの性能変化が抑制でき、もってX線検査装置の性能が安定する。X線発生源5は、タンクを有し、このタンクに冷却用の油を充填してX線源を収容した構成となっている。タンクの上面に設けられたタンク冷却部は、カバーに覆われた放熱用のフィンを有する。運転開始時、X線検査装置1では、このX線源を所定の温度にするために暖気運転が必要となる。しかし温かくなりすぎること、すなわち、高温状態は避けるために、エアコン9による冷却が必要となる。その結果、暖気運転を行うことができるとともに、筐体4内の除湿も行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る請求項1記載のX線検査装置によれば、冷却手段の冷却による結露に弱い半導体チップを搭載したX線検出部の結露を防止し、半導体チップの故障を抑制できる。
【0013】
本発明に係る請求項2記載のX線検査装置によれば、エアコンの機能を使うことで、筐体内の冷却と、筐体内の除湿とを切り換えて、X線検出部をより結露しにくい雰囲気にできる。
【0014】
本発明に係る請求項3記載のX線検査装置によれば、暖気運転を行うことができるとともに、筐体内の除湿も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るX線検査装置の筐体部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係るX線検査装置1の側面図である。
本実施形態に係るX線検査装置1は、被検査物2に照射して透過したX線3を検出することにより被検査物2の検査を行う。被検査物2としては、例えば生肉,魚,加工食品,医薬などが挙げられる。
【0017】
X線検査装置1は、筐体4に、X線3を発生するX線発生源5と、X線発生源5からのX線3を受けるX線検出部6と、X線発生源5とX線検出部6との間で被検査物2を搬送する搬送手段7と、を有する。そして、X線検査装置1が食品や薬品などの生産ラインの検査工程で用いられるときには、例えば、上流の製造工程や加工工程から被検査物2が順次搬入され、所定の検査を繰り返し行うと、その検査結果を操作パネル17に表示するとともに他の機器に信号出力する。検査された被検査物2は、下流の選別工程や包装工程に順次搬出される。
【0018】
本実施形態において、筐体4は、X線発生源5を収納する上部筐体Aと、X線検出部6を収納する下部筐体Bと、被検査物2にX線3を照射する照射領域を形成するように上部筐体Aと下部筐体BとをX線検査装置1の背面側で結合する背部筐体Cと、で構成され、脚部Dにより支持されている。
【0019】
X線発生源5は、循環して移動する搬送ベルトを備えた搬送手段7により搬送される被検査物2にX線3を照射する。X線発生源5は、タンクを有し、このタンクに冷却用の油を充填してX線源となるX線管を収容した構成となる。タンクの上面に設けられたタンク冷却部は、カバーに覆われた放熱フィン8を有する。X線発生源5は、筐体4の上部筐体Aに配置され、下方に向けてX線3を照射させる。X線3は、X線管から下方に広がる略円錐状に照射し、その後、X線発生源5の底部に形成された長穴を介して、下方に広がる面状となる。X線発生源5では、X線3を発生した際に生じる熱を放熱フィン8にて放熱する。
【0020】
X線検出部6は、筐体4の下部筐体B内で、かつ搬送ベルトの下側に配置されて被検査物2を透過したX線3を検出する。X線検出部6は、スリットを有し、X線発生源5から照射された面状のX線3を通す。スリットを通ったX線3は、X線検出部6のセンサ部分で受ける。センサ部は、検出素子である半導体チップが、ペルチェ素子により局所的に冷却される。X線検出部6では、このX線3を光変換し、不図示のX線処理部に出力する。
【0021】
筐体4は、背部に、冷却手段としてのエアコン9を備える。エアコン9は、冷凍サイクルを有する。すなわち、エアコン9は、筐体4内を循環するエアを蒸発器に通すことにより、筐体4内を冷却する冷却機能、蒸発器に微弱なエアを通すことにより、蒸発器に生じた結露水を排水して筐体4内を除湿する除湿機能を有する。
【0022】
エアコン9は、温度センサを内蔵しており、この温度センサの出力に基づいて高温側の作動開始温度に達すると冷房運転をONし、低温側の設定温度に達すると冷房運転をOFFするコントローラを有している。このコントローラは、また、エアコン9の冷房運転と除湿運転を切り換えることができる。
【0023】
このエアコン9は、冷却対象となる空間の体積や、その空間内で発生する発熱量から決まる最高温度上昇に基づき冷房性能の強弱が設定され、もしくは所定の冷房性能を有するものが選定される。特に、X線発生源5の発熱量が大きく、高い冷却性能が要求される場合、大型のエアコン9が筐体4の背部筐体Cに取り付けられる。
【0024】
筐体4は、エアコン9の吹出口からのエア(冷気)を、上部筐体AのX線発生源5へ供給する上部分岐ダクト10と、下部筐体BのX線検出部6へ供給する下部分岐ダクト11とを有する。これらX線発生源5と、X線検出部6とに供給されたエアコン9からエアは、筐体4内を仕切板12により仕切って画成されたリターンチャンバー13に配置される吸込みダクト14からエアコン9の吸込口へと戻されて筐体4内を循環し、これによりX線発生源5およびX線検出部6がともに冷却される。
【0025】
筐体4内には、種々の電気部品が電気ユニットとして複数設けられている。その中には、水滴の付着に対する耐久性が低いすなわち結露に弱い電気部品を搭載したモジュール群がある。このモジュール群としては、X線検出部6に採用されている半導体チップを備えたラインセンサユニット等が挙げられる。ラインセンサユニットは、熱にも弱く、すなわち動作温度の許容範囲が狭く、動作時の上限温度を規定する最高動作温度が他の電気ユニットよりも20℃乃至30℃程度低いため、ラインセンサユニット用の冷却手段としてのペルチェ素子が半導体チップに接触して設けられ、主に熱伝導により局所的に半導体チップの排熱を行い温度上昇を抑えて熱から保護する。このような、局所的な冷却手段は、冷却対象の電気部品の発熱量と動作温度範囲に基づき冷却性能の強弱が設定され、もしくは所定の冷却性能を有するものが選定される。例えば、ペルチェ素子など小型の冷却手段が選定されると、ペルチェ素子の低温面を電気部品側に接触させて接触面から吸熱し、高温面へと熱移動が行われる。高温面の温度上昇は、エアコン9によるエアの循環によってX線検出部6内で拡散され、放熱される。
【0026】
X線検査装置1には、筐体4内の湿度を監視する湿度センサ15が設けられている。この湿度センサ15は、局所的な冷却手段である上記ペルチェ素子の冷却により生じる温度低下が及ぶ空間であって、結露に弱い電気部品を搭載したモジュール群、すなわち、X線検出部6の近傍である筐体4の下部筐体Bもしくは背部筐体Cの下部に配置されるとよい。これにより、X線検出部6の故障を招く結露が発生しやすい高湿状態を的確に検出できる。
【0027】
X線検査装置1は、筐体4内を除湿する除湿手段を備える。本実施形態において、この除湿手段は、上述のエアコン9の除湿運転により実現される。なお、除湿手段は、エアコン9の除湿運転に代えて、除湿専用の除湿機が用いられてもよい。
【0028】
X線検査装置1は、第1制御部16を備える。第1制御部16は、中央演算装置(CPU),記憶部,各種センサ類の接続ポートや通信インターフェースなどを備える。第1制御部16は、湿度センサ15により検出した湿度が所定値以下のときに、モジュール群へ電源を供給する制御、または検出した湿度が所定値以上のときに、モジュール群への電源の供給を停止する制御を行う。第1制御部16には、筐体4の正面に設けられる操作パネル17が接続される。
【0029】
筐体4内には、結露に弱いモジュール群とは別に、結露の影響を受けない、すなわち結露が発生して故障しにくい構造を有しているか結露自体が発生しにくいモジュール群(非結露モジュール群という)が設けられている。非結露モジュール群としては、例えば、絶縁油が満たされた金属製のケースに電気部品が収納され、発熱源ともなるX線発生源5が挙げられる。また、X線検査装置1は、筐体4内の温度を監視する温度センサを備えている。この温度センサは、例えばX線発生源5のように発熱源となるユニットの近傍のほか、熱に弱い電気部品を有する操作パネル17の近傍など複数の位置に設けられ、第1制御部16に接続されていて、所定の基準値以上の温度で高温アラームが出力されてもよい。
【0030】
第1制御部16は、モジュール群に対して制御信号を出力する。ここでいう制御信号とは、例えばハイレベルまたはローレベルで規定される電圧信号であり、また他の例では、所定のコマンドをシリアル通信で送受信するコマンド信号である。このような制御信号には、各電気ユニットへの電源供給を制御する電源制御信号が含まれる。この電源制御信号によるスイッチのOFFにより、特定の電気ユニットに供給される電源を遮断することができる。
【0031】
第1制御部16は、X線発生源5にX線の照射を開始させた後に、温度センサ(図示略)による温度が所定値以上の場合、エアコン9による冷却機能の運転を開始する制御を行ってもよい。
【0032】
また、X線検査装置1は、第2制御部18を備える。第2制御部18は、外部機器との通信等を制御するようになっており、第1制御部と協働して、X線検査装置1の動作状態や検査結果などに応じた電気信号を他の機器や上位の管理システムとの間で送受信する。
【0033】
第1制御部16によるX線検査装置1の制御は、先ず、装置の始動により、主電源がONされると、記憶部に記憶された制御プログラムが中央演算装置(CPU)に読み込まれて起動シーケンスが開始される。起動シーケンスでは、各電気ユニットの初期化や湿度センサや温度センサなど各種センサ類の出力が取り込まれて暖気運転が開始される。このような暖機運転により、電気ユニットの動作温度が安定し、温度変化に依存する電気的な特性変化が抑えられ、性能が安定する。暖機時間を短縮するため、ファン付きの暖気ヒータを設けてもよい。
【0034】
第1制御部16は、暖気運転が終了すると検査開始の待機状態となり、操作パネル17の操作により検査が開始できるようになる。そして、操作パネル17により検査開始の操作がされると、X線発生手段5に所定の強度のX線を照射させ、また搬送手段7の運転を開始させるために図示しないコントローラに運転開始信号を出力して、駆動源としてのモータを動作させる。
搬送手段7が運転開始すると、第2制御部18は、他の機器や上位の管理システムに対し、X線検査装置1が検査可能となったことを表す信号を出力する。
【0035】
X線検査装置1は、順次搬入される被検査物2を検査する。検査の結果は、操作パネル17に表示されるとともに、第2制御部18から他の機器や上位の管理システムに出力される。
【0036】
次に、第1制御部16は、温度センサによる温度が所定値以上のとき、例えば照射されるX線3の強度が強い場合などでX線発生源5からの発熱での周囲温度が急激に上昇すると、エアコン9の冷房運転をONし、筐体4内温度の上昇を抑制する。また、第1制御部16は、湿度センサ15からの検出値と予め設定した閾値とを比較する。このとき、湿度センサ15の検出湿度が閾値よりも高い、すなわち高湿状態のとき、結露の発生を抑えるため、筐体4内の温度を下げずに湿度を下げるように、まずエアコン9の除湿運転またはこれに代わる除湿機をONし、筐体4内を除湿する。そして、第1制御部16は、湿度センサ15からの検出値と閾値とを比較し、筐体4内の検出湿度が閾値よりも低くなれば、エアコン9の除湿運転を停止し、冷房運転をONする。除湿機が用いられるときには、除湿機を停止する。
【0037】
また、第1制御部16は、エアコン9または除湿機が除湿している間、すなわち湿度センサ15により高湿状態が検出されている間、結露しやすいモジュール群への電源供給をOFFするように、このモジュール群への電源供給を遮断する電源制御信号を出力するとともに高湿アラームを出力してX線検査を停止する。
【0038】
そして、第1制御部16は、X線検査を停止した後、前後の他の機器に対する検査可能を表す信号を停止する。エアコン9の除湿運転により高湿状態でなくなると、結露しやすいモジュール群に対して再び電源供給をONして検査が開始される。
【0039】
第1制御部16は、温度センサと湿度センサ15との検出値を勘案して、エアコン9の冷房運転と除湿運転とを切り換え制御するのがよい。例えば、温度センサで検出した温度が、エアコン9の作動開始温度以下であって湿度センサ15で検出した湿度が高いときには除湿運転し、温度と湿度ともに高い場合には冷房運転とする。
【0040】
なお、エアコン9の冷房運転と除湿運転とは、ともに熱交換器において水蒸気が液化して排出されるため除湿作用がある。したがって、エアコン9に除湿機能がない場合であっても、湿度センサ15の検出値により、第1制御部16が、モジュール群の結露抑制を筐体4内の温度上昇が冷房運転を必要とする条件に優先してエアコン9の制御を行うようにしてもよい。第1制御部16は、閾値を例えば相対湿度60%とした場合、湿度を監視して、この相対湿度60%以下になったら、モジュール群の電源をONにする。相対湿度が60%を超えたらモジュール群の電源OFFする制御を行う。
【0041】
ここで、例えば、高温蒸気を用いた洗浄が日常的に行われる食肉加工ラインにX線検査装置1が設置される例を説明する。
【0042】
雰囲気の温度が30℃、相対湿度が80%の場合、絶対湿度は、湿り空気線図より約0.022kg/kg(DA)となる。このときの空気の持つ水蒸気量は約22g/m3 に相当する。エアコン9の除湿機能により筐体4内雰囲気の温度が25℃、相対湿度60%となった場合、絶対湿度は、湿り空気線図より約0.012kg/kg(DA)となる。このときの空気の持つ水蒸気量は約12g/m3 に相当する。したがって、筐体4内は、約10g/m3 が除湿されて、モジュール群が結露しにくい雰囲気となる。
【0043】
X線検査装置1は、食肉加工ラインの停止直後に、筐体4の表面や搬送手段7が高温蒸気により洗浄される。付着した食肉の脂分が高温蒸気により洗い流されるのに加え、装置周辺が多湿状態となる。食肉加工ラインは再稼働するまでの間静置されるが、筐体4は内部の温度低下による気圧低下により、カバーや扉のわずかな隙間から多湿状態の外気を吸い込む。このようにして、多湿状態の空気が筐体4内に取り込まれる。
【0044】
X線検査装置1は、再稼働のために主電源がONされると、暖機運転が開始される。
【0045】
X線検査装置1の検査動作中は、X線発生源5が高温になり、頻繁にエアコン9が作動していることになるので、ある一定の除湿状態となる。X線検査装置1の設置される雰囲気にもよるが、X線発生源5が所定レベル以上の強度でX線を照射しているときには発熱量が大きくなるため、常時エアコン9の冷房運転により除湿され続けていることにより、概ね閾値以下の湿度となることが知見されている。しかしながら、暖機運転が終了して検査開始した直後などで筐体4内に多湿状態の空気が存在していると、局所的な低温部分すなわち局所的に冷却されるX線検出部6で結露が発生することがある。なお、検査動作中、例えば検出湿度が閾値を超えたら、結露アラームを発するようにしてもよい。
【0046】
上記した例では、X線検査装置1の主電源がONして暖機運転が完了した後、X線検出部6の周囲に多湿状態の空気が存在し、X線検出部6を構成するラインセンサユニットの半導体チップを局所的に冷却するペルチェ素子付近が結露しやすい状態となる例を示している。
【0047】
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0048】
本実施形態に係るX線検査装置1では、筐体4内に、冷却手段が設けられる。冷却手段は、電気部品を熱から保護するために、例えばX線発生源5やX線検出部6に冷風を送り、冷気を筐体4内で循環搬送することによる熱伝達により冷却を行い、電気部品からの放熱を促す。また、X線検査装置1では、被検査物2に照射して透過したX線3をX線検出部6により検出する。このX線検出部6には、局所的な冷却手段としてのペルチェ素子が接触して設けられて主に熱伝導によりラインセンサユニットの半導体チップを熱から保護する。すなわち、X線検出部6は、冷えた状態で動作するモジュール群となる。このため、X線検出部6は、局所的な冷却手段の冷却により結露が生じやすく、また結露した水滴の付着により故障が懸念される結露に弱い電気部品を搭載したモジュール群と言える。
【0049】
従来、X線検査装置1の主電源がONされて検査が開始できる待機状態において、同時にペルチェ素子を備えたモジュール群が作動すると、局所的な温度差(相対湿度)によってはモジュール群に結露が発生し、水滴が電気部品の表面に付着してしまうことで半導体チップの故障の原因となっていた。
【0050】
本実施形態のX線検査装置1では、筐体4内の結露に弱いモジュール群の近傍の湿度が、湿度センサ15により監視される。第1制御部16は、湿度センサ15の検出値に基づき、各電気ユニットへの電源の供給を制御する。湿度センサ15による湿度が所定値以上であったなら結露に弱いモジュール群を有するX線検出部6はONしない。これにより、高湿時に、X線検出部6におけるモジュール群に備えられているペルチェ素子が駆動され、例えばラインセンサユニットの半導体チップに水滴が付着することによるラインセンサユニットの故障を抑制することができる。第1制御部16は、湿度センサ15の検出値が所定値以下の場合となったとき、モジュール群、すなわち、X線検出部6へ電源の供給を行う。このため、X線検査装置1では、局所的な冷却手段が一体的に備えられたモジュール群の結露を有効に抑制することができる。
【0051】
X線検出部6を構成するラインセンサユニットの半導体チップだけで考えると、X線検査装置1の主電源をONし、暖気運転が終了すると、半導体チップおよびその周辺回路に供給される電源だけをOFFした状態で、まず、第1制御部16が湿度センサ15の検出値の監視をし、閾値以上となり湿度が高ければ除湿手段(エアコン9)の除湿運転で筐体4内を除湿する。湿度センサ15の検出値が閾値を下回った場合、例えば最初の相対湿度90%の状態で主電源をONし、除湿をして内部の相対湿度が70%~60%を下回ったら、第1制御部16により半導体チップおよびその周辺回路への電源供給がONされる。すなわち、湿度をある程度に抑えてから、結露に弱いモジュール群の電源をONする。これにより、X線検査装置1は、特に、運転開始時に、モジュール群が結露してしまうという課題を解決することができる。その後、装置としての運用すなわち検査が始まることになる。
【0052】
その結果、X線検査装置1では、局所的な冷却手段の冷却による電気部品の結露を防止し、電気部品の故障を抑制することができる。
【0053】
このX線検査装置1では、冷却手段がエアコン9を含む。エアコン9を含むとは、冷却手段としては上述のペルチェ素子も含んでいる意味である。冷却手段は、筐体4内に冷気を循環させて筐体4内の空間を冷やすエアコン9であり、モジュール群を局所的に冷やすために、特定のモジュール群に一体的に組み込まれたペルチェ素子などの冷却ユニットでもある。湿度センサ15は、X線検出部6におけるモジュール群の近傍であって、ペルチェ素子などの冷却ユニットによる冷却が及ぶ位置に配置されているとよい。
【0054】
エアコン9は、除湿機能を備える。エアコン9は、一般的な構造として熱交換器を構成するために、圧縮機,凝縮器,膨張弁,蒸発器などを配管接続し、冷媒を循環させる冷凍サイクルを有する。圧縮機より圧縮されて加熱蒸気となった冷媒は、凝縮器へ送られて冷却されることにより液体となる。この液状冷媒は、膨張弁を通過することにより、蒸発器内で蒸発し、気化熱を奪うことにより蒸発器を冷却する。この蒸発器に送風ファンからのエアを送ることにより、熱交換された冷気を筐体4内に供給する。
【0055】
エアコン9の除湿機能は、この低温となる蒸発器における結露を利用する。すなわち、送風ファンにより送られてきた筐体4内におけるエアの相対湿度に対し蒸発器が露点温度まで冷却されて水蒸気の水を結露水として装置外部に排出し除去することにより行う。
【0056】
除湿は、雰囲気中の水分の除去が目的となるが、冷房と同じように蒸発器から冷気が吹き出される。純粋に除湿のみを行ない、冷却を行ないたくない場合には、吹き出されるエアの再加熱を行う。これにより、筐体4内温度は変化させずに、相対湿度を大幅に低下させることができ、筐体4内を結露しにくい雰囲気とすることができる。また、X線検査装置1において、X線発生源5は温めたい。しかし高温にはしたくない。半導体チップを有するモジュール群は、温まるが冷やしたい、という相異なる要請がある。そのため、運転開始時に暖気運転により内部の各電気ユニットの動作温度を安定させるとともに、エアコン9は、除湿運転のみならず、冷房運転にも行われる。X線検査装置1は、エアコン9の機能を使うことで、筐体4内の冷却と、筐体4内の除湿とを行うことができる。
【0057】
さらに、X線検査装置1の筐体4内に冷気を循環させるエアコン9と、接触面を局所的に冷却するペルチェ素子などの冷却手段を併用して使うことで、筐体4内の冷却と除湿、結露に弱いモジュール群の冷却をそれぞれバランスよく実現できる。
【0058】
このX線検査装置1では、温度センサによる検出温度が所定値以上となった場合、エアコン9による冷却機能の運転が開始される。すなわち、例えばX線発生源5などが通電により温められて、そのあとエアコン9の冷却機能や除湿機能がONされる。これにより、暖気運転で安定させた筐体4内の温度を維持することが可能となり、温度変化により生じる電気ユニットの性能変化が抑制でき、もってX線検査装置の性能が安定する。X線発生源5は、タンクを有し、このタンクに冷却用の油を充填してX線源を収容した構成となっている。タンクの上面に設けられたタンク冷却部は、カバーに覆われた放熱用のフィンを有している。運転開始時、X線検査装置1では、このX線源を所定の温度にするために暖気運転が必要となる。しかし温かくなりすぎること、すなわち、高温状態は避けるために、エアコン9による冷却が必要となる。その結果、暖気運転を行うことができるとともに、筐体4内の除湿も行うことができる。
【0059】
従って、本実施形態に係るX線検査装置1によれば、筐体4内を冷却しつつ電気部品の結露を防止し、電気部品の故障を抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…X線検査装置
2…被検査物
3…X線
4…筐体
5…X線発生源(非結露モジュール群)
6…X線検出部(モジュール群)
9…エアコン(除湿手段,冷却手段)
15…湿度センサ
16…第1制御部(制御部)
図1