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  • 特許-ガラスフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】ガラスフィルム
(51)【国際特許分類】
   C03C 23/00 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
C03C23/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021501976
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2020006016
(87)【国際公開番号】W WO2020175207
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019036550
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 淳一
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敏広
(72)【発明者】
【氏名】村重 毅
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102606899(CN,A)
【文献】特開2016-222396(JP,A)
【文献】特開2009-155158(JP,A)
【文献】特開2011-255343(JP,A)
【文献】特開2015-089546(JP,A)
【文献】特開2003-234320(JP,A)
【文献】特表2015-518813(JP,A)
【文献】特開2008-062349(JP,A)
【文献】特開2013-123833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み150μm以下であり、可撓性を有するガラスフィルムであって、
第一主面と第二主面を有し、
第一主面において、5μm以上の付着異物の数が130個/m以上であり、100μm以上の付着異物の数が10個/m以下である、ガラスフィルム。
【請求項2】
第一主面において、5μm以上100μm未満の付着異物の数が130~1200個/mである、請求項1に記載のガラスフィルム。
【請求項3】
第一主面において、5μm以上50μm以下の付着異物の数が100個/m以上である、請求項1または2に記載のガラスフィルム。
【請求項4】
第一主面において、50μmを超え100μm未満の付着異物の数が300個/m以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガラスフィルム。
【請求項5】
長さが100m以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラスフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性のガラスフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置、照明装置、太陽電池等の光デバイスは、軽量、薄型化が進んでいる。これらの要求を満たすために、ガラス材料からプラスチック材料への置き換えも進んでいるが、プラスチック材料は、ガラスのような高い耐衝撃性および光沢性(グレア感)を実現することは困難である。
【0003】
そこで、ガラスの利点を活かしつつ、デバイスの軽量化および薄型化を図るために、可撓性を有する薄ガラスフィルムを用いることが提案されている(例えば特許文献1参照)。可撓性を有するガラスフィルムは、ロールトゥーロールプロセスにも適用可能であるため、デバイスの薄型化および軽量化に加えて、デバイスやその構成部材の生産性向上や低コスト化も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-16708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラスフィルムの製造プロセスは、板ガラスの製造プロセスと同様、溶融、成形および冷却を要し、設備が大きいため、清浄度を高めることが困難である。また、ガラスは絶縁性であり帯電しやすい。そのため、ガラスフィルムには、製造プロセスに起因する多数の異物が付着している。
【0006】
ガラスフィルムに異物が付着した状態で、ガラスフィルムの表面に接着剤や樹脂層等を設けると、界面に噛み込んだ異物が光学的な欠点となり得る。また、ロールトゥーロールプロセスでは、搬送ロールとの接触時や他の部材との貼り合わせ時に、異物が付着している部分に局所的に力が加わり、ガラスフィルムが割れる場合がある。
【0007】
上記の特許文献1の実施例では、枚葉のガラスフィルムの表面を溶媒で洗浄したことが記載されている。しかし、ガラスはプラスチック材料に比べて表面自由エネルギーが高いため、溶媒による洗浄のみでは十分に異物を除去できない場合がある。
【0008】
ディスプレイ等に用いられる板ガラスの洗浄方法として、強アルカリにより板ガラスの表層を溶解して、付着異物ごと除去する方法が知られている。この方法は、付着異物の除去能力に優れている。しかし、ガラスフィルムにこの方法を適用すると、ガラスフィルムのロール搬送が困難となったり、ガラスフィルムをロール状に巻き取った際にブロッキングが生じる等の問題があることが判明した。
【0009】
本発明は、光デバイスの作製に使用した際にも光学的な欠点が生じ難く、かつハンドリング性に優れるガラスフィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記に鑑み本発明者らが検討の結果、付着異物数が所定範囲内である場合に、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明は、厚み150μm以下であり、可撓性を有するガラスフィルムに関する。ガラスフィルムは第一主面と第二主面を有する。ガラスフィルムは長さが100m以上の長尺状であってもよい。
【0012】
ガラスフィルムの第一主面において、5μm以上の付着異物の数は130個/m以上であり、100μm以上の付着異物の数は10個/m以下である。ガラスフィルムの第一主面において、5μm以上100μm未満の付着異物の数は130~1200個/mが好ましい。
【0013】
ガラスフィルムの第一主面において、5μm以上50μm以下の付着異物の数は100個/m以上が好ましく、50μmを超え100μm未満の付着異物の数は300個/m以下が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
少なくとも一方の面の付着異物数が所定範囲内であることにより、付着異物に起因する光学的な欠点の発生や、ガラスフィルムの割れを抑制できるとともに、ガラスフィルムに滑り性を付与して良好なハンドリング性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】光学積層体の積層構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ガラスフィルムは、可撓性を有するシート状のガラス材料である。ガラスフィルムを構成するガラス材料としては、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。ガラス材料のアルカリ金属成分(例えば、NaO、KO、LiO)の含有量は、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0017】
可撓性を持たせるために、ガラスフィルムの厚みは150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。強度を持たせるために、ガラスフィルムの厚みは10μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましく、50μm以上が特に好ましい。ガラスフィルムの波長550nmにおける光透過率は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。ガラスフィルムの密度は、一般的なガラス材料と同様、2.3~3g/cm程度である。
【0018】
ガラスフィルムの形成方法は特に限定されず、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、シリカやアルミナ等の主原料と、芒硝や酸化アンチモン等の消泡剤と、カーボン等の還元剤とを含む混合物を、1400~1600℃の温度で溶融し、シート状に成形した後、冷却することにより、ガラスフィルムが作製される。ガラスをシート状に成形する方法としては、スロットダウンドロー法、フュージョン法、フロート法等が挙げられる。
【0019】
ガラスフィルムは、枚葉でもよく長尺状でもよい。ロールトゥーロールプロセスへの適用が可能であり、デバイスやその構成部材(例えば後述の光学積層体)の生産性を向上する観点から、ガラスフィルムは、長尺状であることが好ましい。ガラスフィルムは可撓性を有しているため、長尺状のガラスフィルムは、ロール状の巻回体として提供される。長尺状のガラスフィルムの長さは、100m以上が好ましく、300m以上がより好ましく、500m以上がさらに好ましい。長尺状のガラスフィルムの幅は、例えば50~3000mmであり、好ましくは100~2000mmである。
【0020】
ガラスフィルムとして、市販の薄ガラスを用いてもよい。市販の薄ガラスとしては、コーニング社製「7059」、「1737」または「EAGLE2000」、旭硝子社製「AN100」、NHテクノグラス社製「NA-35」、日本電気硝子社製「OA-10」、ショット社製「D263」または「AF45」等が挙げられる。
【0021】
本発明のガラスフィルムは、少なくとも一方の主面の付着異物数が所定範囲内である。ガラスフィルムの表面に付着した5μm以上の異物数は、130個/m以上であり、ガラスフィルムの表面に付着した100μm以上の異物数は、10個/m以下である。ガラスフィルム表面の光学顕微鏡観察により付着異物数をカウントし、異物の最大径を異物の大きさとする。
【0022】
100μm以上の異物は、ガラスフィルムを他の部材と貼り合わせた際に、光学的な欠点として視認される。また、100μm以上の異物がガラスフィルムの表面に付着していると、ロールトゥーロールプロセスによるガラスフィルムの搬送時や、他の部材との積層時に、異物が付着している部分に局所的に力が加わり、ガラスフィルムに割れやクラックを生じさせ、破損の原因となり得る。そのため、100μm以上の異物の数はできる限り少ないことが好ましい。100μm以上の付着異物数は、7個/m以下が好ましく、5個/m以下がより好ましく、3個/m以下がさらに好ましく、2個/m以下が特に好ましい。100μm以上の付着異物数は小さいほど好ましく、理想的には1個/m未満である。150μm以上の付着異物数は、2個/m以下が好ましく、1個/m未満が好ましく、理想的には0個/mである。
【0023】
光学欠点や搬送時の割れ防止等の観点からは、100μm未満の付着異物の数も小さい方が好ましい。一方、ガラスフィルムの表面は樹脂フィルムに比べて平滑性が高いため、ガラスフィルムの表面に異物が付着していない場合は、ガラスフィルムを重ねた場合や、ロール状に巻き取った際に、ガラスフィルムのブロッキングが生じやすい。ロール状巻回体でブロッキングが生じると、巻回体からガラスフィルムを巻き出す際に、局所的に応力が付与されて、ガラスフィルムが破断する場合がある。また、ガラスフィルムの表面に異物が付着していない場合は、滑り性が低いため、ロールトゥーロールによるガラスフィルムの搬送が困難となる場合がある。
【0024】
本発明においては、ガラスフィルムの表面に130個/m以上の付着異物が存在する。付着異物によりガラスフィルムの表面に微細な凹凸が形成されるため、ガラスフィルムに滑り性が付与され、ブロッキング、搬送不良、巻き取り不良等を防止できる。滑り性付与の観点から、ガラスフィルム表面の5μm以上の付着異物数は、150個/m以上が好ましく、200個/m以上がより好ましく、230個/m以上がさらに好ましい。
【0025】
5μm以上の付着異物数の上限は特に限定されない。ただし、付着異物数の総数が多くなると、100μm以上の粗大な異物の数も大きくなる傾向がある。100μm以上の付着異物数を前述の範囲内とするためには、5μm以上の付着異物数は、1200個/m以下が好ましく、1000個/m以下がより好ましく、800個/m以下がさらに好ましく、600個/m以下が特に好ましい。また、100μm以下の付着異物であっても、存在密度が高い場合は、光学的な欠点やガラスフィルムの破断の原因となり得ることからも、付着異物数は上記範囲内であることが好ましい。
【0026】
上記のように、本発明のガラスフィルムは、100μm以上の粗大な付着異物数が少ないために、光学欠点の発生やハンドリング時のガラスフィルムの破断を抑制し、5μm以上の付着異物数が所定範囲であるため、滑り性が付与され、ガラスフィルムのハンドリング性を確保できる。100μm以上の付着異物数を低減し、かつ5μm以上の付着異物数を所定範囲とする観点から、5μm以上100μm未満の付着異物数は、130~1200個/mが好ましく、150~1000個/mがより好ましく、200~800個/mがさらに好ましく、230~600個/mが特に好ましい。
【0027】
5μm以上100μm未満の付着異物の中でも、微細凹凸の形成によりガラスフィルムに滑り性を付与しつつ、搬送時等における付着異物に起因するガラスフィルムの割れを防止する観点においては、5~50μmの付着異物の寄与が特に大きい。ガラスフィルム表面の5~50μmの付着異物数は、100個/m以上が好ましく、150個/m以上がより好ましく、200個/m以上がさらに好ましい。50μmを超え100μm未満の付着異物数は、300個/m以下が好ましく、200個/m以下がより好ましく、150個/m以下がさらに好ましい。50μmを超え100μm未満の付着異物数は、30個/m以上、40個/m以上、または50個/m以上であり得る。
【0028】
<付着異物数の制御>
ガラスフィルムの製造は、表示装置等の光デバイスの製造や、光デバイス用部材の製造に比べて清浄度の低い環境で行われる場合が多い。そのため、製造直後のガラスフィルムには多数の異物が付着している。100μm以上の付着異物数を、10個/m以下とするためには、クリーン環境でガラスフィルムの洗浄を行うことが好ましい。
【0029】
ガラスフィルムの洗浄方法は、付着異物数を上記範囲に低減可能であれば特に限定されず、乾式法および湿式法のいずれでもよい。乾式法としては、エアの吹き付け、UVやオゾン等の照射による異物の分解、粘着ロールや粘着シートによる異物の除去、ブラシ洗浄、ブラスト洗浄等が挙げられる。ウェット洗浄としては、純水、酸もしくはアルカリ、または有機溶媒等の洗浄液による洗浄、洗浄液等の液体をガラスフィルムの表面に付着させた状態、またはガラスフィルムを液体に浸漬した状態でのブラシもしくはスポンジによる洗浄、超音波洗浄、二流体洗浄等が挙げられる。
【0030】
ガラスは表面自由エネルギーが高く、付着異物の密着性が高いため、液体との接触のみでは異物が十分に除去できない場合がある。また、ガラスフィルムの製造環境に起因する付着異物には、多種多様な物質が含まれているため、有機溶媒等により異物を溶解させる方法でも異物を十分に除去できない場合がある。表示装置用のガラス板の洗浄においては、強アルカリによりガラスの表層を溶解することにより、付着異物を除去する方法が知られている。この方法は、異物の除去効果が大きいものの、微小な異物に対する除去率も高いため、付着異物数が過度に減少して、ガラスフィルムの滑り性の低下を招く場合がある。
【0031】
ガラスフィルムはプラスチックフィルムに比べて硬度が高く、傷が生じ難いため、ガラスフィルムの洗浄には物理的な衝撃力により付着異物を除去する方法を適用できる。中でも、付着異物を適度に除去可能であることから、ドライ洗浄としてはブラシ洗浄またはブラスト洗浄が好ましく、ウェット洗浄としては二流体洗浄が好ましい。
【0032】
ブラシ洗浄には、回転ブラシを備える接触式ウェブクリーナー等が用いられる。ガラスフィルムをロールトゥーロール搬送しながら連続的に表面洗浄を行う場合は、洗浄品質を一定に保つ観点から、吸引方式等によりブラシに付着した異物を除去するための機構を備えていることが好ましい。
【0033】
ブラスト洗浄としてはドライアイスブラストが好ましい。ドライアイスブラストでは、ガラスフィルムに高速でドライアイスペレットを吹き付ける。ガラスフィルムと付着異物との間にドライアイスが入り込んで急激に気化すると、体積が急激に膨張し、この体積変化によって、付着した異物を剥離除去できる。また、ドライアイスは気化するため、ブラスト粒が異物として残存することはない。
【0034】
二流体洗浄は、気体と液体を混合した混合流体を、二流体ノズルからガラスフィルムの表面に供給する処理である。混合流体中の液滴がガラスフィルムの表面に衝突し、その衝撃によってガラスフィルムの表面に付着した異物を除去できる。二流体洗浄の液体および気体としては、一般に、水および空気が用いられる。気体(キャリアガス)として、窒素、酸素、二酸化炭素、水素、オゾン、アルゴン等を用いてもよい。二流体ノズルのキャリアガス圧は0.1~0.6MPa程度、液圧は0.05~0.5MPa程度が好ましい。
【0035】
洗浄は、ガラスフィルムをロールトゥーロールで搬送しながら連続的に行うことが好ましい。洗浄は、ガラスフィルムの片面のみに対して実施してもよく、ガラスフィルムの両面を洗浄してもよい。ガラスフィルムの両面を洗浄する場合、一方の面の洗浄方法と他方の面の洗浄方法は、同一でも異なっていてもよい。
【0036】
ロールトゥーロールにより洗浄を行う場合、洗浄はオフラインで行ってもよく、インラインで行ってもよい。インライン洗浄では、ガラスフィルムを洗浄後、ロール状に巻き取るまでの間に、洗浄後のガラスフィルムの表面に樹脂層等が形成される。オフライン洗浄では、洗浄後のガラスフィルムを一旦ロール状に巻き取る。洗浄後のガラスフィルムをロール状に巻き取る前に、洗浄面への異物の再付着防止等を目的として、保護フィルムを仮着してもよい。前述のように、ガラスフィルム表面の付着異物数を制御することにより、ガラスフィルムのブロッキングが抑制されるため、保護フィルム等を仮着することなくガラスフィルムを単体(単層)でロール状に巻き取ることもできる。
【0037】
ガラスフィルムは硬度が高く耐衝撃性に優れる反面、端部(端面)に微小なクラックが発生しやすい。ガラスフィルムに曲げ応力が掛ると、クラックに応力が集中するため、クラックが伸展し、ガラスフィルムが破損する場合がある。ロールトゥーロールによる光学積層体の作製においては、ガラスフィルムまたはガラスフィルムを含む積層体が搬送ロール上を通過する際に、搬送ロールの外周に沿って曲げられるため、ガラスフィルムに曲げ応力が掛かる。また、ガラスフィルムまたは積層体のロール状巻回体では、ガラスフィルムに曲げ応力が掛かった状態が保持される。そのため、ロールトゥーロールによる搬送時、およびロール状巻回体の保管時に、ガラスフィルムの曲げ応力に起因して、幅方向に沿ってクラックが伸展しやすく、ガラスフィルムの破損が生じる場合がある。
【0038】
100m以上の長尺のガラスフィルムを得るためには、付着異物数の制御に加えて、曲げに起因する破損を防止することが好ましい。曲げに起因するガラスフィルムの破損を防止するためには、長手方向の全体にわたって連続的に、端面のクラックが少なく、ガラスフィルムをロール状に巻回した際の端面品質が良好であることが好ましい。ガラスフィルムの端面における長さ3μm以上のクラック数は、長手方向1mあたり5個以下が好ましく、1個以下がより好ましく、0.5個以下がさらに好ましい。なお、クラックの長さは、ガラスフィルムの端面からクラックの先端までの幅方向の距離である。
【0039】
ガラスフィルムの幅方向端部のクラック数が小さい場合でも、クラック長さが大きい場合は、クラックの伸展による破損が生じやすい。そのため、ガラスフィルムの端面にクラックが生じている場合であっても、長手方向の10m以上にわたって、長さ300μmを超えるクラックが存在しないことが好ましく、長手方向の100m以上にわたって長さ300μmを超えるクラックが存在しないことが好ましい。ガラスフィルムの端面を長手方向10mにわたって観察した際のクラック長さの最大値は、300μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
【0040】
クラックが少なく端面品質の良好なガラスフィルムを得るためには、クラックの発生防止もしくはクラック発生部分の除去を行うことが好ましい。クラックの発生防止またはクラックの除去手法としては、レーザ、スクライブカット、ウォータジェット若しくはダイシングによる連続一時切断、ポリシング等に代表される研磨加工が挙げられる。ガラスと光学積層体との組合せ等に応じて、上記手法から2以上を適宜選択して組み合わせて、クラックの発生防止および/または除去を行ってもよい。
【0041】
クラックの伸展に起因するガラスフィルムの破損を防止するために、クラックの伸展防止策を講じてもよい。例えば、ガラスフィルムの端部に長さの大きいクラックが存在している場合でも、クラック伸展防止策を講じることにより、クラックに起因するガラスフィルムの破損を防止できる。上記のクラックの発生防止および/または除去と、クラックの伸展防止とを併用してもよい。
【0042】
ガラスフィルムの端面に生じたクラックの伸展を防止するためには、ガラスフィルムの表面にクラック伸展防止手段を設けることが好ましい。例えば、ガラスフィルムの表面に接着剤を介して樹脂フィルムを貼り合わせることにより、曲げに起因する幅方向へのクラックの伸展を抑制できる。ガラスフィルムの端部から幅方向にクラックが伸展した場合でも、クラック伸展の先端に樹脂フィルムが接着剤を介して接着されていれば、接着剤の弾性によりクラックの伸展が食い止められる。
【0043】
本発明のガラスフィルムは、半導体素子等の基板材料や、表示装置、照明装置、太陽電池等の光デバイスに適用できる。光デバイスにおいて、ガラスフィルムは、素子等を形成するための基板材料として利用してもよく、デバイスの表面を保護するためのカバーガラスとして利用することもできる。
【0044】
ガラスフィルムをデバイスのカバーガラスとする場合、ガラスフィルムは単層で用いてもよく、他の樹脂層やフィルム等との積層体として用いてもよい。ガラスフィルムと積層する樹脂層としては、粘着剤、接着剤等が挙げられる。ガラスフィルムと積層するフィルムとしては、偏光子や各種の透明樹脂フィルム等が挙げられる。
【0045】
図1は、ガラスフィルムを用いた光学積層体の積層構成例を示す断面図であり、ガラスフィルム10の一方の面に、透明樹脂フィルム20、偏光子30および粘着剤層80を備える。
【0046】
偏光子30としては、可視光領域のいずれかの波長で吸収二色性を示すフィルムが用いられる。偏光子30の単体透過率は、40%以上が好ましく、41%以上がより好ましく、42%以上がさらに好ましく、43%以上が特に好ましい。偏光子30の偏光度は、99.8%以上が好ましく、99.9%以上がより好ましく、99.95%以上がさらに好ましい。
【0047】
偏光子30としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。また、米国特許5,523,863号等に開示されている二色性物質と液晶性化合物とを含む液晶性組成物を一定方向に配向させたゲスト・ホストタイプの偏光子や、米国特許6,049,428号等に開示されているリオトロピック液晶を一定方向に配向させたE型偏光子等も用いることができる。
【0048】
これらの偏光子の中でも、高い偏光度を有することから、ポリビニルアルコールや、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて所定方向に配向させたポリビニルアルコール(PVA)系偏光子が好ましく用いられる。例えば、PVA系フィルムに、ヨウ素染色および延伸を施すことにより、PVA系偏光子が得られる。
【0049】
偏光子30の厚みは、例えば、1~80μm程度である。偏光子30の厚みは3μm以上または5μm以上であってもよい。偏光子30として、厚みが25μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型偏光子を用いることにより、薄型の光学積層体が得られる。
【0050】
図1に示す光学積層体101は、ガラスフィルム10と偏光子30との間に透明樹脂フィルム20を備える。偏光子30の表面に透明樹脂フィルム20が積層されることにより、偏光子の耐久性が向上する傾向がある。また、ガラスフィルムと偏光子との間に透明樹脂フィルムが設けられることにより、ガラスフィルムの表面からの衝撃に対する耐久性が向上する傾向がある。
【0051】
透明樹脂フィルム20の材料は特に限定されない。偏光子への耐久性付与や、光学積層体の耐衝撃性向上等の観点から、透明樹脂フィルムの材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性および水分遮断性等に優れる熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。このような樹脂材料の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
透明樹脂フィルム20の厚みは、5~100μmが好ましく、10~60μmがより好ましく、20~50μmがさらに好ましい。透明樹脂フィルム20は光学等方性フィルムであってもよく、光学異方性フィルムであってもよい。
【0053】
粘着剤層80は、光学積層体101を、デバイスを構成する他の部材と貼り合わせるために用いられる。例えば、粘着剤層80を介して、光学積層体101を有機ELセルや液晶セル等の画像表示セルと貼り合わせることができる。粘着剤層80を構成する粘着剤は特に制限されず、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系ポリマー、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤等の、透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性を示し、耐候性や耐熱性等に優れる粘着剤が好ましい。
【0054】
粘着剤層80は2層以上を積層したものでもよい。粘着剤層80の厚みは、例えば1~300μm程度であり、5~50μmが好ましく、10~30μmがより好ましい。
【0055】
粘着剤層80の表面には、セパレーター91が仮着されていることが好ましい。セパレーター91は、光学積層体を他の部材と貼り合わせるまでの間、粘着剤層80の表面を保護する。セパレーター91の構成材料としては、アクリル、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等のプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0056】
セパレーター91の厚みは、通常5~200μm程度であり、10~60μmが好ましく、15~40μmがより好ましく、20~30μmがさらに好ましい。セパレーター91の表面には、離型処理が施されていることが好ましい。離型剤としては、シリコーン系材料、フッ素系材料、長鎖アルキル系材料、脂肪酸アミド系材料等が挙げられる。粘着剤層80の形成用基材として用いたフィルムを、そのままセパレーターとしてもよい。
【0057】
図1に示すように、ガラスフィルム10の表面には、表面保護フィルム92が仮着されていてもよい。表面保護フィルム92は、光学積層体が使用に供されるまでの間、ガラスフィルム等を保護する。ガラスフィルム10の表面に表面保護フィルム92が仮着されていることにより、例えば、先端の尖った落下物に対してもキズ、穴等の発生を防止することができる。
【0058】
表面保護フィルム92の材料としては、上述のセパレーター91と同様のプラスチック材料が好ましく用いられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等が挙げられる。表面保護フィルム92は、ガラスフィルムの付設面に粘着層を有していることが好ましい。表面保護フィルム92として、フィルムを構成する樹脂層と粘着層とを共押出により積層した自己粘着フィルムを用いてもよい。表面保護フィルム92の厚みは、例えば20~1000μm程度であり、30~500μmが好ましく、40~200μmがより好ましく、50~150μmがさらに好ましい。
【0059】
光学積層体は、偏光子30と粘着剤層80との間に透明フィルム(不図示)を備えていてもよい。偏光子30と粘着剤層80との間に透明フィルムが設けられることにより、偏光子の耐久性をさらに向上できる。偏光子30と粘着剤層80との間に配置される透明フィルムの材料、厚み、光学特性等は、偏光子30とガラスフィルム10との間に配置される透明樹脂フィルム20と同様であってもよい。透明フィルムは、光学等方性フィルムでもよく、光学異方性フィルムでもよい。偏光子30と粘着剤層80との間に光学異方性フィルムを用いることにより、様々な機能を発現できる。
【0060】
例えば、有機ELセルの表面に光学積層体が貼り合わせられる場合は、透明フィルムと偏光子30とが円偏光板を構成することにより、有機EL素子のセルの金属電極等による外光の反射を遮蔽して、表示の視認性を向上できる。透明フィルムとして、斜め延伸フィルムを用いてもよい。
【0061】
液晶セルの表面に光学積層体が貼り合わせられる場合は、光学異方性フィルムにより各種の光学補償を行い得る。光学補償に用いられる光学異方性フィルムの種類は、液晶セルの方式等に応じて適宜に選択すればよい。
【0062】
ガラスフィルム、透明樹脂フィルム、偏光子等は、それぞれの層間に接着剤層(不図示)を介して積層することが好ましい。接着剤を構成する材料としては、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂等が挙げられる。このような樹脂の具体例としては、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。接着剤には、重合開始剤、架橋剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等が含まれていてもよい。
【0063】
接着剤層の厚みは、10μm以下が好ましく、0.05~8μmがより好ましく、0.1~7μmがさらに好ましい。ガラスフィルムと透明樹脂フィルムとの間、ガラスフィルムと偏光子との間、または偏光子と透明樹脂フィルムとの間貼り合わせに用いられる接着剤層の厚みが上記範囲であれば、ガラスフィルムの破損が抑制され、耐衝撃性に優れる光学積層体が得られる。透明樹脂フィルム同士の貼り合わせに接着剤を用いてもよい。
【0064】
光学積層体は、上記以外の各種の機能性付与層を有していてもよい。機能性付与層としては、例えば、反射防止層、防汚層、光拡散層、易接着層、帯電防止層等が挙げられる。
【0065】
ガラスフィルムには加飾印刷が施されていてもよい。加飾印刷の印刷厚みは、例えば5~100μm程度である。ガラスフィルムの表面に設けられた加飾印刷部の印刷段差周辺の空隙を埋めるために、ガラスフィルムと光学フィルムとの間には、接着剤層や粘着剤層(不図示)が設けられていてもよい。
【0066】
加飾印刷は、ガラスフィルムのいずれの面に施されていてもよい。また、ガラスフィルム以外の光学積層体の構成部材に加飾印刷が施されてもよい。例えば、偏光子30や透明樹脂フィルム20に加飾印刷を施してもよい。加飾印刷部が設けられた透明フィルム(加飾印刷フィルム)を、光学積層体の構成部材とロールトゥーロール方式で積層することにより、加飾印刷部を有する光学積層体を得ることもできる。
【0067】
ガラスフィルム10上に、透明樹脂フィルム20および偏光子30等を積層することにより光学積層体が得られる。ガラスフィルム10が長尺状である場合、ロールトゥーロールによりガラスフィルム搬送しながら、積層を行うことが好ましい。前述のように、本発明のガラスフィルムは、100μm以上の粗大な付着異物の数が少ない。そのため、ロールトゥーロールによる搬送時や、フィルム等との積層時に、異物付着箇所への局所的に力が加わることに起因するガラスフィルムの割れを防止できる。
【0068】
光学積層体を形成する際の積層順序は特に限定されない。例えば、ガラスフィルム10上に、透明樹脂フィルム20および偏光子30等を順に積層してもよく、予め複数のフィルムを積層した積層体とガラスフィルムとを積層してもよい。積層に際しては、必要に応じて接着剤が用いられ、積層後に接着剤の硬化が行われてもよい。
【0069】
接着剤の硬化方法は、接着剤の種類に応じて適切に選択され得る。接着剤が光硬化性接着剤である場合には、紫外線照射により硬化が行われる。紫外線の照射条件は、接着剤の種類、接着剤組成物の組成等に応じて適切に選択され得る。積算光量は、例えば100~2000mJ/cmである。接着剤が熱硬化型接着剤である場合には、加熱により硬化が行われる。加熱条件は、接着剤の種類、接着剤組成物の組成等に応じて適切に選択され得る。加熱条件は、例えば、温度が50℃~200℃、加熱時間が30秒~30分程度である。
【0070】
ガラスフィルム10の第一主面に透明樹脂フィルム20や偏光子30等が積層された光学積層体は、ガラスフィルムを備えるため、硬度が高い。また、光学積層体は、ガラスフィルム10の第一主面に透明樹脂フィルム20や偏光子30等の樹脂フィルムが積層されているため、ガラスフィルム10の破損が防止され、耐衝撃性に優れる。これは、ガラスフィルムの第二主面に与えられた衝撃を、第一主面側に有効に逃がすことができるためと考えられる。特に、ガラスフィルム10の第一主面上に、透明樹脂フィルム20を介して偏光子30が設けられている場合に、耐衝撃性が顕著に向上する。ガラスフィルムが破損し難いため、ガラスフィルムの厚みを小さくすることが可能であり、これに伴って光学積層体を軽量化できる。
【0071】
さらに、ガラス材料は、水分やガスの遮蔽性が高く、有機溶媒、酸、アルカリ等に対する耐久性が高く、かつ耐熱性に優れるため、ガラスフィルム10が表面に配置されることにより、樹脂フィルム20のみを有する場合に比べて、偏光子30に対する保護性能が向上し、偏光子の劣化を防止できる。
【0072】
ガラス材料は表面光沢を有するため、ガラスフィルムが画像表示装置等のデバイスの表面に配置されることにより、美しいグレア感が得られる。また、ガラス材料は光学等方性であるため、反射光の色付きが生じ難く、高い視認性を実現できる。さらに、ガラスフィルムは表面硬度が高く、耐衝撃性に優れる。そのため、光学積層体を、ガラスフィルムが視認側表面となるように配置した画像表示装置では、ガラスフィルムがフロントウインドウとしての機能を有するため、別途ウインドウ層を設ける必要がない。したがって、画像表示装置の製造工程を簡略化できるとともに、構成部材数の低減により、デバイスの薄型化および軽量化が可能となる。
【実施例
【0073】
ガラスフィルムの洗浄に関する実施例について以下に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
[参考例]
厚み100μmのガラスフィルムのロール状巻回体から、100mm×100mmの試料を切り出して、表面を光学顕微鏡により観察し、観察範囲における5μm以上の付着異物の総数をカウントした。また、付着異物の中で大きさが100μm以上のものの数をカウントした。この作業を100枚の試料(合計面積:1m)について行い、異物数の合計を求めた。
【0075】
[実施例および比較例]
ガラスフィルムのロール状巻回体からガラスフィルムを巻き出し、搬送速度5m/分で一方向に搬送しながら、ガラスフィルム表面の洗浄を行った。洗浄後のガラスフィルムは一旦ロール状に巻き取った後、上記の参考例と同様に、光学顕微鏡観察により、1mあたりの異物数を求めた。
【0076】
<実施例1:ブラシ洗浄>
回転ブラシとバキュームクリーナーを備えるウェブクリーナー(伸興製「TURBO-SS」)によりガラスフィルム表面の洗浄を行った。運転条件は以下の通りであった。
ブラシ:ナイロン製、長さ20mm、太さ75μm
ブラシ回転数:500rpm(ガラスフィルム搬送方向に対して逆回転)
ブラシとガラスフィルムの距離:1mm
ブロア運転条件:-3kPa
【0077】
<実施例2:ドライアイスブラスト洗浄>
幅方向(搬送方向と直交する方向)に複数のノズルを備えるドライアイスブラスト装置(エア・ウォーター製「QuickSnow」)により、ガラスフィルム表面の洗浄を行った。運転条件は以下の通りであった。
ドライアイス粒径:100μmφ
エア圧力:0.4MPa
ノズルとガラスフィルムの距離:20cm
【0078】
<実施例3:二流体洗浄>
幅方向に複数の二流体ノズル(スプレーイングシステムジャパン製)を備える二流体洗浄装置により、ガラスフィルム表面の洗浄を行った。運転条件は以下の通りであった。
液体:水
気体:圧縮空気
水圧:0.2MPa
エア圧:0.2MPa
ノズルとガラスフィルムの距離:1cm
【0079】
<比較例1:超音波洗浄>
超音波洗浄装置(ブランソン製「8510J-MTH」)を用いて、常温の水中で10分間洗浄を行った。
【0080】
<比較例2:粘着ロール>
粘着ロール(明和ゴム工業製「ベタロン」)をラミ圧0.2MPaでガラスフィルムの表面に押し当て、ガラスフィルム表面の洗浄を行った。
【0081】
<比較例3:アルカリ洗浄>
ガラスフィルムの表面に5重量%の水酸化ナトリウム水溶液をスプレーし、5分後に水洗および乾燥を行った。
【0082】
[評価]
<製品歩留まり>
ガラスフィルムを画面サイズ15インチ(332mm×187mm)のディスプレイに使用する場合に、面内に100μm以上の異物が存在せず、正常品として利用できる割合(=製品歩留まり)を、1mあたりの異物数に基づいて算出した。
<ブロッキング>
洗浄後のガラスフィルムのロール状巻回体から、ガラスフィルムを100m巻き出し、ブロッキングによる破断が生じなかったものを〇、100m巻き出すまでにブロッキングによる破断が生じたものを×とした。
【0083】
上記の参考例、実施例1~3および比較例1~3のガラスフィルムの異物数、ならびに歩留まりおよびブロッキング試験の結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、未洗浄のガラスフィルムには、100μm以上の異物が多数付着しており、15インチサイズにおいて、100μm以上の異物が1個以上存在するため、製品歩留まりの計算値は0となる。超音波洗浄を行った比較例1および粘着ロールにより付着異物の除去を行った比較例2では、参考例に比べると付着異物数は減少していた。しかし、異物の除去効果が十分ではなく、15インチサイズの製品における歩留まりの計算値は参考例と同様0であった。
【0086】
強アルカリによりガラスフィルムの表層を溶解した比較例3では、異物数が大幅に減少しており、1mの範囲で100μm以上の異物は観察されなかった。しかし、表層の溶解に伴って、サイズの小さい付着異物も大幅に減少したため、ロール状巻回体に巻き取った際にガラスフィルムのブロッキングが生じ、巻回体からガラスフィルムを巻き出す際に破断が生じた。
【0087】
実施例1~3では、100μm以上の付着異物が適切に除去され、かつ付着異物が適正に残存しているため、ロール状巻回体に巻き取った際にもガラスフィルムのブロッキングが生じず、ハンドリング性が良好であった。以上の結果から、ガラスフィルムの付着異物数が所定範囲であることにより、光学的な欠点が生じ難く製品の歩留まりを向上可能であり、かつガラスフィルムがハンドリング性に優れることが分かる。
図1