(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】電子タバコ及び電子タバコ用カプセル
(51)【国際特許分類】
A24F 40/42 20200101AFI20240712BHJP
A24F 40/46 20200101ALI20240712BHJP
A24F 40/48 20200101ALI20240712BHJP
【FI】
A24F40/42
A24F40/46
A24F40/48
(21)【出願番号】P 2021504816
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2019071456
(87)【国際公開番号】W WO2020030792
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-07
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100210398
【氏名又は名称】横尾 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ピファ,シェン
(72)【発明者】
【氏名】アデイア,カイル
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0073692(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0258132(US,A1)
【文献】特表2017-532011(JP,A)
【文献】特表2018-504926(JP,A)
【文献】国際公開第2011/122474(WO,A1)
【文献】特表2017-513465(JP,A)
【文献】特表2014-525237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0251725(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0213065(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00 - 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器本体及び取り外し可能なカプセルを含む電子タバコであって、前記吸入器本体は、電力ユニット、制御回路、及び前記カプセルと接続するように構成されたカプセル台座を含み、
前記カプセルは、
気化される液体を収容するように構成されている液体貯蔵部と、
気化チャンバと、
蒸気出口と、
加熱要素及び流体移送要素を備える気化ユニットであって、前記流体移送要素が、前記液体貯蔵部内に配置された液体取込み部分及び前記気化チャンバ内において前記
加熱要素と接触する液体送達部分を有する、気化ユニットと、
前記気化チャンバから前記蒸気出口まで延びる主蒸気流チャネルと、
前記気化チャンバと前記主蒸気流チャネルとを密閉接続するように構成された第1のシールであって、前記第1のシールは、前記気化チャンバの中への液体の流れを制御するために、前記流体移送要素を前記流体移送要素の半径方向に圧縮するように更に構成されている、第1のシールと、
を備え、
前記第1のシールは、前記第1のシールの半径方向に延び、前記カプセルが組み立てられた状態で、前記流体移送要素を押すように構成されたタブを有する、
電子タバコ。
【請求項2】
前記電子タバコは、0.7~1.0ワット/mm2の実効的電力密度を供給するように、
前記加熱要素に電力を供給するように構成されている、
請求項1に記載の電子タバコ。
【請求項3】
前記加熱要素は加熱ワイヤであり、前記加熱ワイヤのゲージは、0.18mmより大きい、
請求項1又は2に記載の電子タバコ。
【請求項4】
前記流体移送要素と接触している前記加熱要素の表面積の実効的パーセンテージが、前記加熱ワイヤの表面積の20~40%である、
請求項2を引用する請求項3に記載の電子タバコ。
【請求項5】
前記気化ユニットは、吸入当たり少なくとも3.5mgの蒸気密度を有するエアロゾルを生成するように構成され、
前記吸入は55mlの体積に対応する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子タバコ。
【請求項6】
前記気化ユニットは、55mlの吸入当たり少なくとも5.5mgの蒸気密度を有するエアロゾルを生成するように構成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子タバコ。
【請求項7】
前記制御回路は、一定の電力が前記電力ユニットから、電力ユニット電圧レベルの所定の範囲にわたって生成されるように、パルス幅変調制御を提供するように構成されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子タバコ。
【請求項8】
前記吸入器本体は、120mm未満の軸方向長さを有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の電子タバコ。
【請求項9】
流体移送要素が、前記カプセルの長手方向に対して直角をなす長手方向延長部を有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の電子タバコ。
【請求項10】
前記加熱要素は、前記流体移送要素の外周に設けられている、
請求項9に記載の電子タバコ。
【請求項11】
前記加熱要素は、前記流体移送要素の周囲に巻かれている、
請求項10に記載の電子タバコ。
【請求項12】
前記気化チャンバへの液体入口は、前記流体移送要素を通してのみ、及び前記流体移送要素の多孔質構造から形成された液体送達チャネルを通してのみ提供される、
請求項11に記載の電子タバコ。
【請求項13】
電子タバコ用のカプセルであって、
前記カプセルは、電子タバコ装置と係合するための第1の端部と、蒸気出口を有するマウスピース部分として構成される第2の端部とを有し、
気化される液体を収容するように構成されている液体貯蔵部と、
気化チャンバと、
蒸気出口と、
加熱要素及び流体移送要素を備える気化ユニットであって、前記流体移送要素が、前記液体貯蔵部内に配置された液体取込み部分及び前記気化チャンバ内において前記
加熱要素と接触する液体送達部分を有する、気化ユニットと、
前記気化チャンバから前記蒸気出口まで延びる主蒸気流チャネルと、
前記気化チャンバと前記主蒸気流チャネルとを密閉して接続するように構成された第1のシールであって、前記第1のシールは、前記気化チャンバの中への液体の流れを制御するために、前記流体移送要素を前記流体移送要素の半径方向に圧縮するように構成されている、第1のシールと、
を更に備え、
前記第1のシールは、前記第1のシールの半径方向に延び、前記カプセルが組み立てられた状態で、前記流体移送要素を押すように構成されたタブを有する、
カプセル。
【請求項14】
前記加熱要素は加熱ワイヤであり、前記流体移送要素と接触している
前記加熱要素
の実効的円周が、前記加熱ワイヤの円周の20~40%である、
請求項13に記載のカプセル。
【請求項15】
前記蒸気出口は、前記カプセルのマウスピース部分として提供されている、
請求項13又は14に記載のカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子タバコなどの個人向けの気化装置に関する。特に、本発明は電子タバコ及びその使い捨てカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子タバコは、従来のタバコの代替品である。燃焼煙を生成させる代わりに、電子タバコは液体を気化させ、それをユーザが吸入することができる。液体は通常、蒸気を生成するグリセリン又はプロピレングリコールなどのエアロゾル形成物質を含む。液体中の他の一般的な物質としては、ニコチン及び様々な香料がある。
【0003】
電子タバコは手持ち式の吸入器システムであり、マウスピース部位、液体貯蔵部、電力供給ユニットを備える。気化は、加熱コイルの形状をした加熱要素と流体移送要素とを通常備える気化器又はヒーターユニットによって実現される。気化は、液体が蒸気に変わるまで、ヒーターが芯内の液体を加熱した時に発生する。電子タバコは、マウスピース部位内にチャンバを含んでもよく、このチャンバは、カプセルの形状の使い捨て消耗品を収容するように構成されている。液体貯蔵部及び気化器を備えるカプセルは、しばしば「カトマイザー」と呼ばれる。
【0004】
従来のタバコの煙は、ニコチン、並びに植物材料の部分燃焼及び/又は熱分解の生成物として生成される他の多数の化学化合物を含む。一方、電子タバコは、主にニコチンと、プロピレングリコールやグリセリンなどの様々な食品安全物質とを含む初期開始eリキッド(e-liquid)組成物のエアロゾル化されたバージョンを送達するが、ユーザに所望のニコチン用量を送達するのにも効率的である。電子タバコによって生成されるエアロゾルは、一般に蒸気と称される。電子タバコは、十分な量の蒸気を送達する必要がある。送達される蒸気の量は、TPM(総粒子状物質:Total Particulate Matter)で測定できる。しかしながら、気化前のeリキッドに含まれる化合物以外の化合物の量を依然として低く維持しながら大量の蒸気を供給する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、望ましくない化学化合物を低減させながら、高いTPMを有する蒸気を送達することによって、最適化された蒸気生成を提供することである。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、吸入器本体及び取り外し可能なカプセルを含む電子タバコが提供され、吸入器本体は、電力ユニット、制御回路、及びカプセルと接続するように構成されたカプセル台座を備え、カプセルは、
- 気化される液体を収容するように構成されている液体貯蔵部と、
- 気化チャンバと、
- 蒸気出口と、
- ヒーター及び流体移送要素を備える気化ユニットであって、流体移送要素が、液体貯蔵部内に配置された液体取込み部分及び気化チャンバ内においてヒーターと接触する液体送達部分を有する、気化ユニットと、
- チューブ又はチムニー部を介して気化チャンバから蒸気出口まで延びる主蒸気流チャネルと、
- 気化チャンバとチューブ又はチムニー部とを密閉して接続して蒸気流チャネルを形成するように構成された第1のシールであって、シールは、気化チャンバの中への液体の流れを制御するために、流体移送要素を流体移送要素の半径方向に圧縮するように更に構成されている、第1のシールと、を備える。
【0007】
本発明は、気化ユニットに最適な液体供給を提供することによって、大量の蒸気又はTMPを生成することができるという認識に基づいている。第1のシールは、流体移送要素の周囲を密閉するように構成されており、それにより、気化する液体が(流体移送要素の周囲で、すなわち流体移送要素の縁部と第1のシールとの間の小さな間隙を通して漏れる代わりに)、流体移送要素の内部でのみ輸送され得る。それゆえ、シールは、加熱要素への液体の分配を制御する。このようにして、他の望ましくない化合物を低レベルに保ちながら高いTPMを実現することができるように、一定の液体分布を確保することが可能である。
【0008】
例示的実施形態では、電子タバコは、0.7~1.0ワット/mm2、好ましくは0.80~0.85ワット/mm2、より好ましくは約0.847ワット/mm2の実効的電力密度を供給するように、加熱要素に電力を供給するように構成されている。本発明との関連において、電力密度は、抵抗加熱要素に送達される総電力量を抵抗加熱ワイヤの総表面積で割ったものに対応する。総表面積は、抵抗加熱ワイヤの円周に、抵抗加熱ワイヤの軸方向長さを乗じたものに対応する。
【0009】
加熱要素に関する電力密度の値のこの範囲は、適切に構成された流体移送要素及び加熱要素の構成と連係して、気化プロセスの副生成物を過剰に生成することなく、55mlのパフ当たり5mgを超える良好なTPMを提供することができる。
【0010】
一実施形態では、加熱ワイヤのゲージは、0.18mmより大きい、好ましくは0.18~0.22mmである、最も好ましくは約0.2mmである。
【0011】
これにより、気化プロセスの生成物による不要な化学物質の生成を引き起こす可能性のある局所的なホットスポットのリスクが最小限に抑えられるが、流体移送要素と接触する加熱要素の十分に大きな有効表面積を提供して、良好なTPMを生成できる(例えば、55mlのパフあたり5mgを超える)。
【0012】
例示的実施形態では、流体移送要素と接触している加熱要素の表面積の実効的パーセンテージは、加熱ワイヤの表面積の20%よりも大きく、例えば20~40%、好ましくは30~35%、最も好ましくは約30%である。
【0013】
例示的実施形態では、気化ユニットは、吸入当たり少なくとも3.5mgの蒸気密度を有するエアロゾルを生成するように構成されている。この吸入は55mlの体積に対応する。別の実施形態では、気化ユニットは、55mlの吸入当たり少なくとも5mg、最も好ましくは55mlの吸入当たり5.5mgを超える蒸気密度を有するエアロゾルを生成するように構成されている。
【0014】
制御回路は、一定の電力が電力ユニットから、電力ユニット電圧レベルの所定の範囲にわたって生成されるように、パルス幅変調制御を提供するように構成されていてもよい。
【0015】
このことは、装置の一貫した性能(生成される蒸気の量と、生成される不要な副生成物の化合物の量との両方の観点から)を確保するのに役立ち得る。なぜなら、電力供給ユニットは放電するにつれて出力電圧が自然に低減するからである。
【0016】
吸入器本体は、120mm未満、好ましくは110~90mmの軸方向長さを有してもよい。
【0017】
このサイズの装置は、最大350mAhの容量を有する電池に対応でき、いくつかの実施形態では、電池の1回の充電から200回を超えるパフを提供し、パフの各々が5mgを超えるTPMを提供することができる。
【0018】
例示的実施形態では、流体移送要素は、カプセルの長手方向に対して直角をなす長手方向延長部を有する。加熱要素は、好ましくは、流体移送要素の外周上に設けられる。一実施形態では、加熱要素は、流体移送要素の周囲に巻かれている。
【0019】
好ましくは、流体移送要素の周囲の加熱要素ワイヤの巻き付けは、ワイヤに所定の張力を加えて実施され、それにより、流体移送要素は、その弛緩した直径から、所定の量だけ、好ましくは少なくとも30%又は1mmのうちの小さい値だけ圧縮される。以下でより詳細に説明するように、これにより、加熱要素に向かう液体の流れが改善し、更には流体移送要素と接触している加熱要素の実効的表面積が増加する。加えて、電力が生成される体積は、流体移送要素の所与の直径に対して低減され、これにより、単位体積当たりに生成される電力が増加し、加えて、これが不要なホットスポットを低減させることに役立つ可能性がある。
【0020】
例示的実施形態では、気化チャンバへの液体入口は、流体移送要素を介してのみ、及び流体移送要素の多孔質構造から形成された液体送達チャネルを介してのみ提供される。これは、気化チャンバからの液体の不要な漏れを防ぐのに役立つ。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、電子タバコ用のカプセルが提供され、このカプセルは、電子タバコ装置と係合するための第1の端部と、蒸気出口を有するマウスピース部分として構成される第2の端部とを有し、このカプセルは更に、
- 気化される液体を収容するように構成されている液体貯蔵部と、
- 気化チャンバと、
- 蒸気出口と、
- ヒーター及び流体移送要素を備える気化ユニットであって、流体移送要素が液体貯蔵部内に配置された液体取込み部分及び気化チャンバ内においてヒーターと接触する液体送達部分を有する、気化ユニットと、
- 気化チャンバから蒸気出口まで延びる主蒸気流チャネルと、
- 気化チャンバと蒸気流チャネルとを密閉して接続するように構成された第1のシールであって、シールは、気化チャンバの中への液体の流れを制御するために、流体移送要素を流体移送要素の半径方向に圧縮するように構成されている、第1のシールと、を備える。
【0022】
例示的実施形態では、流体移送要素と接触している、加熱要素の加熱ワイヤの実効的円周は、加熱ワイヤの円周の20~40%、好ましくは30~35%、最も好ましくは約30%である。
【0023】
一実施形態では、蒸気出口は、カプセルのマウスピース部分として提供される。しかしながら、マウスピースなしでカプセルを提供することも可能である。例えば、カプセルは、電子タバコの本体の内部に導入された部品として提供されてもよく、それにより、本体はマウスピース部分も含む。
【0024】
ここで、本発明について添付の図面を参照して説明する。図面では、本発明の実施形態が一例として例示され、同様の特徴が同じ参照符号で表されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1a】本発明の例示的実施形態による電子タバコの概略斜視図である。
【
図1b】
図1aの電子タバコの概略斜視側面図である。
【
図2a】
図1a及び
図1bの電子タバコの概略斜視図であり、カプセルは吸入器本体から切り離されている。
【
図2b】本発明の例示的実施形態によるカプセル台座の概略斜視図である。
【
図3a】本発明の実施形態によるカプセルシールの概略図である。
【
図4】本発明の実施形態によるカプセルの分解概略図である。
【
図5a】流体移送要素の断面の概略図であり、流体移送要素の周囲に加熱要素が巻かれている。
【
図5b】流体移送要素と加熱要素との間の接触面を示す
図5aの詳細である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で使用する場合、「吸入器」又は「電子タバコ」という用語は、喫煙用のエアロゾルを含む、エアロゾルをユーザに送達するように構成されている電子タバコを含み得る。喫煙用のエアロゾルは、0.5~7マイクロメートルの粒径のエアロゾルを指す場合がある。粒径は、10又は7マイクロメートル未満であり得る。電子タバコは携帯可能であり得る。
【0027】
図面、特に
図1a~
図1c、
図2a及び
図2bを参照すると、液体Lを気化させるための電子タバコ2が示されている。電子タバコ2は、従来のタバコの代替品として使用することができる。電子タバコ2は、電力供給ユニット6、電気回路8、及びカプセル台座12を備える本体4を有する。
【0028】
カプセル台座12は、気化液体Lを含む取り外し可能なカプセル16を収容するように構成されている。液体Lは、プロピレングリコール及び/又はグリセロールなどのエアロゾル形成物質を含んでもよく、ニコチン及び酸などの他の物質を含有してもよい。液体Lはまた、例えばタバコ、メントール、又は果物香料などの、香料を含んでもよい。
カプセル台座12は、好ましくは、カプセル16を収容するように構成された空洞の形状をしている。カプセル台座12には、カプセル16をカプセル台座12に強固に保持するように構成された接続部分21が設けられている。接続部分21は、例えば、締まり嵌め、スナップ嵌め、ねじ嵌め、差込み嵌め、又は磁気嵌めとすることができる。カプセル台座12は、カプセル16の電力端子45と係合するように構成された対応する一対の電気コネクタ14を更に備える。
【0029】
図3a及び
図3bから最もよく分かるように、カプセル16は、ハウジング18、液体貯蔵部32、気化ユニット34、及び電力端子45を備える。ハウジング18は、蒸気出口28が設けられたマウスピース部分20を有する。マウスピース部分20は、ユーザの口の人間工学に対応する先端形状を有することができる。マウスピース部分20の反対側には、接続部分21が配置されている。接続部分21は、カプセル台座12内のコネクタと接続するように構成されている。カプセル16にある接続部分21は、カプセル台座12内の磁気表面に磁気的に接続するように構成された金属板を備えてもよい。カプセルハウジング18は、透明材料であってもよく、それにより、カプセル16の液体水位がユーザに、はっきりと見える。ハウジング18は、ポリエステルなどのポリマー材料又はプラスチック材料で形成されていてもよい。
【0030】
図4で分かるように、カプセル16は、複数の異なる部品から組み立てることができる。しかしながら、図示した実施形態は概略図であり、当業者には明らかとなる単一のユニットに、いくつかの部品を組み合わせることも可能である。複数の様々な部品の現在の構成は、カプセル16の効率的な組み立てを可能にする。
【0031】
カプセルハウジング18は、上部ハウジング18aと、下部ハウジング18b又はベース18bとから形成されてもよい。部品は、上部ハウジング18aと下部ハウジング18bとの間の摩擦嵌めによって一緒に組み立てることができる。加えて又は代替として、上部ハウジング18a及び下部ハウジング18bを、超音波溶接によって一緒に結合させることができる。任意選択で、図示するように、上部ハウジング18aは、カプセルの上部ハウジング18aに組み立てられる別個の部品としてマウスピース部分20を備えてもよい。
【0032】
図3aを
図4と併せると最もよく分かるように、気化チャンバ30は、カプセル16の、マウスピース部分20とは反対側の遠位端に配置され、気化ユニット34を収容する。気化チャンバ30からマウスピース部分20内の蒸気出口28まで主蒸気チャネルが画定され、これは管状の断面を有してもよい。主蒸気チャネル24は、マウスピースから遠位方向に離れるように延びるチューブ又はチムニー部24から形成されることができ、それが気化チャンバ30に密閉して接続されてもよい。好都合には、チューブ又はチムニー部24を、上部ハウジングと一体に形成することができる。この部品を、例えば、射出成形又は成形によって生産することができる。いったんチューブ又はチムニー部24が気化チャンバ30に接続されると、主蒸気蒸気チャネルが形成される。
【0033】
気化チャンバ30は、液体貯蔵部32に取り囲まれている。液体貯蔵部は、液体送達チャネル33を通してのみ液体を受け取り、空気入口35からのみ吸気を受け取り、(チューブ又はチムニー部24を介して)主蒸気チャネルを通してのみ蒸気を送達するように密閉されている。この趣旨で、気化ユニット34は、管状気化器ハウジング40の内部に収容されている。気化器ハウジングには、上部リム42a及び下部リム42bが設けられている。上部リム42aは第1のシール50と接触しており、下部リム42bは第2のシール44又は下部ガスケットと接触している。シール44及び50は、接続部を通る漏れを最小限に抑えるために、好ましくは弾性材料又は圧縮性材料でできている。材料は、例えばシリコーンであってもよい。下部ガスケット44は、管状気化器ハウジング40の外周の周囲を密閉するように構成されている。
【0034】
気化ユニット34は、加熱要素36及び流体移送要素38を含む。流体移送要素38は、毛管作用によって液体Lを液体貯蔵部32から加熱要素36へと移動させるように構成されている。流体移送要素38は、対になった綿又はシリカから作製される芯などの繊維質の又は多孔質の要素とすることができる。代替として、流体移送要素38は任意の他の適切な多孔質要素であり得る。
【0035】
気化チャンバ30は、流体移送要素38によって液体貯蔵部32に流体的に接続されている。それゆえ、気化チャンバ30への液体入口は、流体移送要素38を介してのみ、及び流体移送要素38の多孔質構造から形成された液体送達チャネル33を介してのみ提供される。
【0036】
流体移送要素38は、第1の端部38a及び第2の端部38bを有する。流体移送要素38は、細長く実質的に真っ直ぐな形状を備え、好ましくは、その長手方向延長部がカプセル16の長手方向に垂直に又は長手方向を横切るように置かれている。流体移送要素38は、液体貯蔵部32内に配置された液体取込み部分39a、及び気化チャンバ30内において加熱要素36と接触する液体送達部分39bを有する。
【0037】
液体取込み部分39aは、流体移送要素38の第1の端部38a及び第2の端部38bに対応する。加熱要素36は、流体移送要素38の液体送達部分39b上に置かれている。液体送達部分39bは、細長い流体移送要素38の中央部分に対応する。図に示す実施形態では、加熱要素36は、流体移送要素38の外周に設けられている。
【0038】
気化器ハウジング40には、一対の切り欠き48が更に設けられ、そこを通して流体移送要素38の第1の端部38a及び第2の端部38bが収容される。第1のシール50は、気化チャンバ30と流体移送要素38との間の接続部に配置されている。第1のシール50は、気化器ハウジング40の上部リム42aの形状に対応する接触面S1を有する。第1のシール50には開口部51が更に設けられ、そこを通して蒸気が気化チャンバ30から主蒸気流チャネルへと流れ得る。第1のシール50には、好ましくは、半径方向に延びるタブ52が設けられ、タブは切り欠き48内に収容され、カプセル16が組み立てられる時に流体移送要素38を押すように構成されている。第1のシール50は、流体移送要素38を流体移送要素38の半径方向に圧縮するように構成されている。流体移送要素38を圧縮することにより、液体貯蔵部32から気化チャンバ30への液体の流れは、流体移送要素38を通って導かれる。それゆえ、流体移送要素38の周囲の漏れが防止される。
【0039】
図5で最もよく分かるように、加熱要素36は、流体移送要素38の周囲に巻かれている。加熱ワイヤ36には、流体移送要素38の外径Dよりも小さい内部ボアBが設けられている。
【0040】
加熱ワイヤ36は、抵抗加熱によって流体移送要素38を加熱するように構成されている。有利な実施形態では、加熱ワイヤ36の材料はチタンであり得る。チタンは、例えば、ステンレス鋼又はニッケルと比較して、温度曲線に対して急な抵抗を有する。それゆえ、加熱ワイヤ36の抵抗は、コイル温度の上昇と共に比較的急速に増加する。しかしながら、ステンレス鋼、ニッケル、クロム、アルミニウム、又はそれらの合金などの他の材料も可能である。
【0041】
加熱コイル36はワイヤゲージ(すなわち、ワイヤ直径)dを備える。ワイヤ直径dは加熱コイル38の抵抗に影響を与える。ゲージdが大きくなると、電気抵抗は低くなる。加熱コイル36は、定められたピッチPで構成された巻数Nを備える。巻数N及び選択されたピッチPは、流体移送要素38に沿った加熱要素36からの温度及び熱分布に影響を与える。
【0042】
加熱ワイヤ36の全長Lは、ピッチP及び巻数Nと共に増加する。この結果、加熱要素36と流体移送要素38との間の接触表面積Cが増加する。しかしながら、流体移送要素38と加熱要素36との間の増加した接触面積Cはまた、加熱要素36を冷却する。その上、加熱ワイヤの抵抗は、ワイヤ長が増加するにつれて増加する。
【0043】
図5bで分かるように、加熱ワイヤ36の全円周Otの一部のみが流体移送要素38と接触している。この部分を、接触長さLcと称し得る。したがって、流体移送要素38と接触している加熱要素36の接触表面積Cは、接触長さLcに、流体移送要素38と接触している加熱ワイヤ36の全軸方向長さLaを乗じたものとして定義することができる。
【0044】
本体4は、カプセルの加熱要素36に電力を供給し、気化の動作全体を制御するように構成されている。本体4は、ほとんどの従来技術の電子タバコと比較して、コンパクトな装置として構成することができる。これは、電力ユニット6又は電池6のサイズが比較的小さいことを意味する。本発明の一実施形態では、電池は、約350mAhの出力を有するリチウム電池である。
【0045】
本体4の電気回路8は、電子タバコ2を動作させるように構成されており、流量センサ10又は手動作動スイッチ、メモリ11、及びコントローラ13を備えてもよい。電気回路8は、有利には、主回路基板上にグループ化されてもよい。
【0046】
コントローラ13は、電池出力のパルス幅変調を可能にするように構成されている。パルス幅変調は、加熱要素36の温度を制御し、電池電力の節約を可能にする。出力電力は、電池6が満充電されているか又は枯渇に近いかどうかに関係なく、出力電力が時間にわたって一定となるように変調される。現在の電池はサイズと出力電圧が比較的小さいので、これは有利である。
【0047】
吸入器本体は、好ましくは150mm未満の軸方向長さと20mm未満の厚さとを有するコンパクトな形状を備えていることが好ましい。好ましくは、装置は、手のひらに収まるであろう寸法を備えている。本電子タバコの特に好ましい寸法は、110mm未満であり、厚さは2cm未満である。電子タバコが小さくなるほど、電子タバコの中に収まるであろう電源又は電池は小さくなる。本発明者らは、効率的な電力供給及び効率的な気化を確実にすることによって、高いTPMが依然として実現可能であることを見出した。しかしながら、本発明の第1の実施形態のいくつかは十分な性能をもたらさなかった。
図1a及び
図1bに示すように、電子タバコのカプセル16及び吸入器本体は、軸方向に回転対称ではない形状を有する場合がある。したがって、カプセル16は平坦な長辺と短辺を有する矩形の基部を有する場合がある。
【0048】
加熱要素の温度は効率的な気化が起こる温度であることを確実にすることが望ましい。これは、加熱コイルの温度が不十分な場合には、液体Lは、所望の気化状態ではなく、沸騰段階に入る傾向があるからである。液体が直接、気化状態に変化するように、加熱要素の温度を確実に充分に高くすることが望ましい。それにより、望ましくない液体吐出を軽減することができる。更に、望ましくない化学化合物の量を低レベルに保ちながら、高いTPM(総粒子状物質)を有する大量の蒸気を提供することが望ましいであろう。
【0049】
本発明者らは、高い蒸気送達能力を備えるコンパクトな電子タバコの開発の任務が課せられている。この要件に基づいて、比較的高い電力密度が必要であると想定して、第1のプロトタイプを開発した。大部分が植物性グリセリン(VG)とプロピレングリコール(PG)の混合物であって、その比率がVG:PG=50:50であり、ニコチン1.59%、風味剤1%を含む試験液を使用した。
【実施例】
【0050】
実施例1に従う第1のプロトタイプは、以下の通りに寸法設定されている:
実施例1
抵抗(Ω):1.96
幅(mm):4.40~4.80
ボア(mm):2.10~2.20
巻数:4.5
加熱ワイヤゲージ(mm):0.15
ピッチ(mm):1.0
TPM測定値(mg/パフ):3.3
電池出力、Vrms(V):3.55
電力密度1.3ワット/mm2
流体移送要素
流体移送要素の材料:綿
流体移送要素の密度(g/m):1.0
流体移送要素の長さ(mm):12.0
流体移送要素の直径(mm):3
【0051】
この第1のプロトタイプの分析は、生成された蒸気量とTPMに関して完全に満足のいくものとは見なされなかった。加えて、望ましくない化学化合物のレベルを更に高めることを試みることが望まれた。したがって、本発明者らは、望ましくない化学化合物を低減させながら、蒸気量(TPM)を更に増加させることを試みるという課題に直面した。本発明者らは、望ましくない化合物が、加熱要素に沿った不規則な加熱温度によって形成される可能性があることを認識した。この不規則な温度は、流体移送要素内の液体の不均一な吸収、並びに加熱要素と流体移送要素との間の接触面の変動によって引き起こされる可能性がある。
【0052】
これらの問題を克服するために、より均一な熱分布が必要であると、本発明者らは確信した。これは、加熱要素と流体移送要素との間の接触面の改善などの多くの手段によって実現することができる。この接触領域では、流体移送要素から加熱要素への流体分布の改善、並びに気化温度の最適化が必要であった。加えて、液体貯蔵部から加熱ワイヤの近傍への流体輸送は、有利な効果をもたらす可能性がある。同じ試験液を第2のプロトタイプに使用した。これらの認識に基づいて、実施例2の第2のプロトタイプは、以下の通りに寸法設定されている:
実施例2
抵抗(Ω):1.60
幅(mm):4.40
ボア(mm):2.0
巻数:7
加熱ワイヤゲージ(mm):0.2
ピッチ(mm):0.6
TPM測定値(mg/パフ):5.5
電池出力、Vrms(V):3.4
電力密度0.85ワット/mm2
流体移送要素
流体移送要素の材料:綿
流体移送要素の密度(g/m):1.0
流体移送要素の長さ(mm):12.0
流体移送要素の直径(mm):3
【0053】
加熱要素コイルのボアサイズを低減させることにより、ワイヤはまた、流体移送要素のより深い位置に置かれた。これにより、加熱要素と流体移送要素との間の接触面積は更に増加した。これは、加熱ワイヤの一部のみが、実際に流体移送要素と直接接触しているからである。加熱要素と流体移送要素との間の実効的接触面積は、流体移送要素と接触している加熱コイルの全表面積の30%であると決定された。
【0054】
好ましい実施形態では、加熱要素の内部ボアは、流体移送要素の外径の50~70%に対応する。より好ましくは、加熱要素の内部ボアは、流体移送要素の外径の66%に対応する。これにより、加熱要素と流体移送要素との間の接触面が増加することにより、加熱要素と流体移送要素との間の効率的な熱伝達が確実になる。その上、ヒーター付近で流体移送要素を局所的に圧縮することにより、毛細管現象が局所的に増加する。これはまた、加熱要素への液体輸送が強化されるという効果を有する。
【0055】
それゆえ、加熱要素の特性が変更された一方で、流体移送要素の特性は同じままであった。第2のプロトタイプの結果は満足であった。TPMは67%増加したが、一方でカルボニルの測定値は大幅に低減した。例えば、ホルムアルデヒドは30パフ当たり99μgから30パフ当たり1.5μgに減少した。
【0056】
更なる分析により、気化ユニットの有利な寸法は、次のようであり得ることが確認された:
電力密度は、0.7~1.0ワット/mm2、好ましくは0.80~0.85ワット/mm2、より好ましくは約0.847ワット/mm2である。
加熱ワイヤゲージは、0.18mmより大きい、好ましくは0.18~0.22mmである、最も好ましくは約0.2mmである。
【0057】
加熱ワイヤの表面積の20~40%、好ましくは30~35%、最も好ましくは約30%である、流体移送要素と接触している加熱要素の表面積の実効的パーセンテージ。
【0058】
当業者であれば、本発明は説明された例示的実施形態に決して限定されないことを理解するであろう。特定の対応策が互いに異なる従属請求項において挙げられているという単なる事実は、これらの対応策の組合せが有利に使用され得ないということを示すものではない。更に、「含む」という表現は他の要素又はステップを排除しない。他の非限定的な表現は、「1つの(a)」又は「1つの(an)」が複数を排除しないこと、及び単一のユニットがいくつかの手段の機能を満たし得ることを含む。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も範囲を限定すると解釈されるべきではない。最後に、本発明は図面及び前述の説明において詳細に例証されてきたが、そのような例証及び説明は、限定的ではなく例証的又は例示的なものと見なされ、本発明は開示された実施形態に限定されない。