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特許7519994発光デバイス、発光装置、電子機器および照明装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】発光デバイス、発光装置、電子機器および照明装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/16 20230101AFI20240712BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240712BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240712BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20240712BHJP
   H10K 101/25 20230101ALN20240712BHJP
【FI】
H10K50/16
H10K85/60
C09K11/06 690
H10K101:30
H10K101:25
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021517131
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 IB2020053875
(87)【国際公開番号】W WO2020222097
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019087091
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】川上 祥子
(72)【発明者】
【氏名】小松 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-212879(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0065317(KR,A)
【文献】特表2014-508130(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107879993(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に、発光層と、電子輸送層とを有し、
前記電子輸送層は前記発光層と、前記陰極との間に位置し、
前記発光層は、ホスト材料と、発光中心物質とを有し、
前記発光中心物質の吸収スペクトルにおける最も長波長側に位置する吸収帯と、前記ホスト材料の発光スペクトルにおけるピークとが重なりを有し、
前記電子輸送層は、下記一般式(G1)で表される有機化合物を有する発光デバイス。
【化1】

(ただし、上記一般式(G1)において、Arはベンゾキノリル基またはベンゾイソキノリル基を表し、Arはトリフェニレニルナフチレン基またはナフチレニルトリフェニレン-ジイル基を表す。)
【請求項2】
陽極と陰極との間に、発光層と、電子輸送層とを有し、
前記電子輸送層は前記発光層と、前記陰極との間に位置し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、発光中心物質とを有し、
前記第1の有機化合物と、前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成可能な組み合わせであり、
前記電子輸送層は、下記一般式(G1)で表される有機化合物を有する発光デバイス。
【化2】

(ただし、上記一般式(G1)において、Arはベンゾキノリル基またはベンゾイソキノリル基を表し、Arはトリフェニレニルナフチレン基またはナフチレニルトリフェニレン-ジイル基を表す。)
【請求項3】
請求項2において、
前記発光中心物質の吸収スペクトルにおける最も長波長側に位置する吸収帯と、前記励起錯体の発光スペクトルにおけるピークとが重なりを有する発光デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記Arが下記構造式(1-1)乃至(1-11)で表される基のいずれかである発光デバイス。
【化3】
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記Arが下記構造式(2-1)乃至(2-12)で表される基のいずれかである発光デバイス。
【化4】
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、
前記一般式(G1)で表される有機化合物が、下記構造式(100)で表される有機化合物である発光デバイス。
【化5】
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記発光中心物質がりん光発光物質である発光デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載発光デバイスと、センサ、操作ボタン、スピーカ、または、マイクと、
を有する電子機器。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の発光デバイスと、筐体と、を有する照明装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の発光デバイスと、トランジスタ、または、基板と、を有する発光装置。
【請求項11】
第1の発光デバイスと、第2の発光デバイスとを有する発光装置において、
前記第2の発光デバイスは、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の発光デバイスであり、
前記第1の発光デバイスは、蛍光発光層と前記蛍光発光層に接する電子輸送層とを有し、
前記電子輸送層は前記第1の発光デバイスと前記第2の発光デバイスとで連続している発光装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記蛍光発光層が、蛍光発光物質と、アントラセン骨格を有する有機化合物を有する発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光素子、発光デバイス、ディスプレイモジュール、照明モジュール、表示装置、発光装置、電子機器及び照明装置に関する。なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を用いたエレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用する発光デバイス(有機EL素子)の実用化が進んでいる。これら発光デバイスの基本的な構成は、一対の電極間に発光材料を含む有機化合物層(EL層)を挟んだものである。この素子に電圧を印加して、キャリアを注入し、当該キャリアの再結合エネルギーを利用することにより、発光材料からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光デバイスは自発光型であるためディスプレイの画素として用いると、液晶に比べて視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、液晶に代わるフラットパネルディスプレイ素子として好適である。また、このような発光デバイスを用いたディスプレイは、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
また、これらの発光デバイスは発光層を二次元に連続して形成することが可能であるため、面状に発光を得ることができる。これは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
このように発光デバイスを用いたディスプレイや照明装置はさまざまな電子機器に適用好適であるが、より良好な効率、寿命を有する発光デバイスを求めて研究開発が進められている。
【0006】
特許文献1では電子輸送材料として用いることが可能な含窒素縮環芳香族基を有する環状アジン化合物について開示されている。
【0007】
発光デバイスの特性は、目覚ましく向上してきたが効率や耐久性をはじめ、あらゆる特性に対する高度な要求に対応するには未だ不十分と言わざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-111548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の一態様では、新規発光デバイスを提供することを目的とする。または、発光効率の良好な発光デバイスを提供することを目的とする。または、寿命の良好な発光デバイスを提供することを目的とする。または、駆動電圧の低い発光デバイスを提供することを目的とする。
【0010】
または、本発明の他の一態様では、信頼性の高い発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することを目的とする。または、本発明の他の一態様では、消費電力の小さい発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することを目的とする。
【0011】
本発明は上述の目的のうちいずれか一を達成すればよいものとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、陽極と、陰極と、EL層とを有し、前記EL層は前記陽極と前記陰極との間に位置し、前記EL層は、発光層と、電子輸送層とを有し、前記電子輸送層は前記発光層と、前記陰極との間に位置し、前記発光層は、ホスト材料と、発光中心物質とを有し、前記発光中心物質の吸収スペクトルにおける最も長波長側に位置する吸収帯と、前記ホスト材料の発光スペクトルにおけるピークとが重なりを有し、前記電子輸送層は、下記一般式(G1)で表される有機化合物を有する発光デバイスである。
【0013】
【化1】
【0014】
ただし、上記一般式(G1)において、Arはベンゾキノリル基またはベンゾイソキノリル基を表し、Arはトリフェニレニルナフチレン基またはナフチレニルトリフェニレン-ジイル基を表す。
【0015】
または、本発明の他の一態様は、陽極と、陰極と、EL層とを有し、前記EL層は前記陽極と前記陰極との間に位置し、前記EL層は、発光層と、電子輸送層とを有し、前記電子輸送層は前記発光層と、前記陰極との間に位置し、前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、発光中心物質とを有し、前記第1の有機化合物と、前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成可能な組み合わせであり、前記電子輸送層は、下記一般式(G1)で表される有機化合物を有する発光デバイスである。
【0016】
【化2】
【0017】
ただし、上記一般式(G1)において、Arはベンゾキノリル基またはベンゾイソキノリル基を表し、Arはトリフェニレニルナフチレン基またはナフチレニルトリフェニレン-ジイル基を表す。
【0018】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記発光中心物質の吸収スペクトルにおける最も長波長側に位置する吸収帯と、前記励起錯体の発光スペクトルにおけるピークとが重なりを有する発光デバイスである。
【0019】
または、本発明の他の一態様は、前記Arが下記構造式(1-1)乃至(1-11)で表される基のいずれかである発光デバイスである。
【0020】
【化3】
【0021】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記Arが下記構造式(2-1)乃至(2-12)で表される基のいずれかである発光デバイスである。
【0022】
【化4】
【0023】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記一般式(G1)で表される有機化合物が、下記構造式(100)で表される有機化合物である発光デバイスである。
【0024】
【化5】
【0025】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記発光中心物質がりん光発光物質である発光デバイスである。
【0026】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の有機化合物は、電子輸送性を有する有機化合物であり、前記第2の有機化合物は、正孔輸送性を有する有機化合物である発光デバイスである。
【0027】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、センサ、操作ボタン、スピーカ、または、マイクの少なくとも一つ、を有する電子機器である。
【0028】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、トランジスタ、または、基板と、を有する発光装置である。
【0029】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、筐体を有する照明装置である。
【0030】
なお、本明細書中における発光装置とは、発光デバイスを用いた画像表示デバイスを含む。また、発光デバイスにコネクター、例えば異方導電性フィルム又はTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は発光デバイスにCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも、発光装置に含む場合がある。さらに、照明器具等は、発光装置を有する場合がある。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様では、新規発光デバイスを提供することができる。または、寿命の良好な発光デバイスを提供することができる。または、発光効率の良好な発光デバイスを提供することができる。
【0032】
または、本発明の他の一態様では、信頼性の高い発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することができる。または、本発明の他の一態様では、消費電力の小さい発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することができる。
【0033】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A図1B、および図1Cは発光デバイスの概略図である。
図2Aおよび図2Bは長寿命化を説明する図である。
図3Aおよび図3Bは輝度上昇を説明する図である。
図4Aおよび図4Bはアクティブマトリクス型発光装置の概念図である。
図5Aおよび図5Bアクティブマトリクス型発光装置の概念図である。
図6はアクティブマトリクス型発光装置の概念図である。
図7Aおよび図7Bはパッシブマトリクス型発光装置の概念図である。
図8Aおよび図8Bは照明装置を表す図である。
図9A図9B1図9B2および図9Cは電子機器の例を表す斜視図である。
図10A図10Bおよび図10Cは電子機器の例を表す斜視図である。
図11は照明装置の一例を表す斜視図である。
図12は照明装置の一例を表す模式図である。
図13は車載表示装置の例を表す模式図である。
図14Aおよび図14Bは電子機器の例を表す斜視図である。
図15A図15Bおよび図15Cは電子機器の例を表す斜視図である。
図16は発光デバイスにおける光の吸収と発光の関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0036】
(実施の形態1)
図1Aに、本発明の一態様の発光デバイスを表す図を示す。本発明の一態様の発光デバイスは、陽極101と、陰極102、EL層103を有しており、EL層103は、発光層113および電子輸送層114を有している。
【0037】
なお、図1AにおけるEL層103には、これらに加えて正孔注入層111、正孔輸送層112、電子注入層115が図示されているが、発光デバイスの構成はこれに限られることはない。上述の構成を有していれば、他の機能を有する層が含まれていても良い。
【0038】
正孔注入層111は、アクセプタ性を有する物質を含む層である。アクセプタ性を有する物質としては、電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物を用いることができ、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。アクセプタ性を有する物質としては以上で述べた有機化合物以外にも、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(CuPc)等のフタロシアニン系の錯体化合物、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。アクセプタ性を有する物質は、隣接する正孔輸送層(あるいは正孔輸送材料)から、電界の印加により電子を引き抜くことができる。
【0039】
また、正孔注入層111として、正孔輸送性を有する物質に上記アクセプタ性を有する物質を含有させた複合材料を用いることもできる。なお、正孔輸送性の物質にアクセプタ性を有する物質を含有させた複合材料を用いることにより、仕事関数によらず電極を形成する材料を選ぶことができる。つまり、第1の電極101として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料も用いることができるようになる。
【0040】
複合材料に用いる正孔輸送性を有する物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる正孔輸送性を有する物質としては、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。以下では、複合材料における正孔輸送性の物質として用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0041】
複合材料に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。カルバゾール誘導体としては、具体的には、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニルアントラセン-9-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3,5,6-テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。なお、本発明の一態様の有機化合物も用いることができる。
【0042】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0043】
複合材料に用いられる正孔輸送性の物質としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら第2の有機化合物が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。以上のような第2の有機化合物としては、具体的には、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(4;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(5;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-フェニル-4’-(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(1,1’-ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-ジフェニル-4’-(2-ナフチル)-4’’-{9-(4-ビフェニリル)カルバゾール)}トリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル] -N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ(9H-フルオレン)-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス(4-ビフェニリル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N,N-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:BBASF(4))、N-(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ(9H-フルオレン)-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(4-ビフェニル)-N-(ジベンゾフラン-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-4-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-3-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-2-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-1-アミン等を挙げることができる。
【0044】
なお、複合材料に用いられる正孔輸送性の物質はそのHOMO準位が-5.7eV以上-5.4eV以下の比較的深いHOMO準位を有する物質であることがさらに好ましい。複合材料に用いられる正孔輸送性の物質が比較的深いHOMO準位を有することによって、正孔輸送層112への正孔の注入が容易となり、また、寿命の良好な発光デバイスを得ることが容易となる。
【0045】
正孔輸送層112は、正孔輸送材料を含んで形成される。正孔輸送材料としては、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有していることが好ましい。
【0046】
上記正孔輸送性を有する材料としては、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、4-(9-9H-カルバゾリル)-4’-(4-ジベンゾフラニル)-4’’-(1,1’-ビフェニル-4-イル)トリフェニルアミンなどの芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。なお、正孔注入層111の複合材料に用いられる正孔輸送性を有する材料として挙げた物質も正孔輸送層112を構成する材料として好適に用いることができる。
【0047】
正孔輸送層112は、複数の層に分かれて形成されていても良く、その場合、第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層を有することが好ましい。第1の正孔輸送層は第2の正孔輸送層よりも陽極101側に位置するものとする。なお、第2の正孔輸送層は電子ブロック層の機能を同時に担う場合もある。
【0048】
正孔注入層111に含まれる正孔輸送材料のHOMO準位と第1の正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料のHOMO準位では、第1の正孔輸送層に含まれる正孔輸送性を有する材料のHOMO準位の方が深く、その差が0.2eV以下になるように各々材料を選択することが好ましい。
【0049】
また、第1の正孔輸送層に含まれる正孔輸送性を有する材料と、第2の正孔輸送層に含まれる正孔輸送層のHOMO準位では、第2の正孔輸送層に含まれる正孔輸送性を有する材料のHOMO準位の方が深いほうが好ましい。さらに、その差が0.2eV以下になるように各々材料を選択するとよい。HOMO準位が以上のような関係であることによって、各層にスムーズに正孔が注入され、駆動電圧の上昇や発光層における正孔の過少状態を防ぐことができる。
【0050】
なお、これら正孔輸送性を有する材料は、各々正孔輸送性骨格を有することが好ましい。当該正孔輸送性骨格としては、これら有機化合物のHOMO準位が浅くなりすぎないカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格が好ましい。また、これら正孔輸送性骨格が隣り合う層同士の材料(例えば第2の有機化合物と第3の有機化合物または第3の有機化合物と第4の有機化合物)で共通していると、正孔の注入がスムーズになるため好ましい。特にこれらの正孔輸送性骨格としては、ジベンゾフラン骨格が好ましい。
【0051】
また、隣り合う層に含まれる材料が同じ材料であると、正孔の注入がよりスムーズとなるため好ましい構成である。
【0052】
発光層113は、ホスト材料と、発光中心物質とを有する。この際、ホスト材料が発光中心材料の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈することが好ましい。なお、この重なりは大きい方がより好ましい。
【0053】
また、ホスト材料は、単独の材料で構成されていてもよいが、複数の有機化合物で構成されていることが好ましい。
【0054】
ホスト材料が複数の有機化合物で構成されている場合、第1の有機化合物と、第2の有機化合物とを有することが好ましい。また、第1の有機化合物と第2の有機化合物は一方が電子輸送性を有する有機化合物であり、他方が正孔輸送性を有する有機化合物であることがキャリアバランスの調整や、再結合領域の制御が容易であることなどから好ましい。
【0055】
また、第1の有機化合物と第2の有機化合物とは励起錯体を形成する組み合わせであることが駆動電圧の低減、発光効率の向上などの観点から好ましい。なお、第1の有機化合物と第2の有機化合物とが励起錯体を形成する場合は、当該励起錯体が発光材料の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈することが好ましい。なお、この重なりは大きい方がより好ましい。
【0056】
上記発光中心物質は蛍光発光物質であっても、りん光発光物質であっても、構わない。また、単層であっても、異なる材料を含む層や組成の異なる層など、複数の層からなっていても良い。なお、本発明の一態様は、発光層113がりん光を呈する層、である場合により好適に適用することができる。
【0057】
発光層113において、蛍光発光物質として用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
【0058】
5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-(tert-ブチル)ペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン、(略称:DPQd)、ルブレン、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1,6-ピレン-ジイル)ビス[(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)、3,10-ビス[N-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、3,10-ビス[N-(ジベンゾフラン-3-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)-02)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrnや1,6mMemFLPAPrn、1,6BnfAPrn-03のようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率や信頼性に優れているため好ましい。
【0059】
発光層113において、りん光発光物質として用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0060】
トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)])、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz-3b)])のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac-トリス[(1-2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpmi)])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CFppy)(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。これらは青色のりん光発光を示す化合物であり、440nmから520nmに発光のピークを有する化合物である。
【0061】
また、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色のりん光発光を示す化合物であり、500nm~600nmに発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0062】
また、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)(acac)])、[2-d3-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(5-d3-メチル-2-ピリジル-κN2)フェニル-κ]イリジウム(III)のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、赤色のりん光発光を示す化合物であり、600nmから700nmに発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
【0063】
また、以上で述べたりん光性化合物の他、公知のりん光性発光材料を選択し、用いてもよい。
【0064】
発光層113のホスト材料としては、正孔輸送性を有する材料、電子輸送性を有する材料、バイポーラ性を有する材料のいずれを用いることも可能である。
【0065】
正孔輸送性を有する材料としては、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、9-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PCCzBP)、9-(1,1’-ビフェニル-3-イル)-9’-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)、などのビカルバゾール骨格(3,3’-ビカルバゾール骨格)を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。
【0066】
また、正孔注入層111や正孔輸送層112の説明において、上記正孔輸送性を有する材料の例として挙げた有機化合物も用いることもできる。
【0067】
電子輸送性を有する材料としては、例えば、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体や、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)などのポリアゾール骨格を有する複素環化合物や、2-[3’-(トリフェニレン-2-イル)-1,1’-ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mTpBPTzn)、11-(4-[1,1’-ジフェニル]-4-イル-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-11,12-ジヒドロ-12-フェニル-インドロ[2,3-a]カルバゾール(略称:BP-Icz(II)Tzn)、5-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2イル)フェニルl]-7,7-ジメチル-5H,7H-インデノ[2,1-b]カルバゾール(略称:mINc(II)PTzn)、2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-1,1’-ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mFBPTzn)などのトリアジン骨格を有する複素環化合物や、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス〔3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル〕ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物が挙げられる。上述した中でも、トリアジン骨格を有する複素環化合物とジアジン骨格を有する複素環化合物やピリジン骨格を有する複素環化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、トリアジン骨格を有する複素環化合物とジアジン(ピリミジンやピラジン)骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0068】
なお、本発明の一態様の発光デバイスにおいて、正孔輸送性を有する材料と電子輸送性を有する材料の二種類の物質がホスト材料として発光層113に用いられている場合、正孔輸送性を有する材料と電子輸送性を有する材料の含有量の重量比は、正孔輸送性を有する材料:電子輸送性を有する材料=1:19乃至9:1とすればよい。また、二種類の物質がホスト材料として発光層113に用いられている場合において正孔輸送性の材料が3,3’-ビカルバゾール骨格を有する場合、正孔輸送材料と電子輸送材料の混合比(wt%)は、重量比として正孔輸送材料:電子輸送材料=11:1乃至6:4と正孔輸送材料が多い方がキャリアバランスの観点から好ましい。また、正孔輸送材料と電子輸送材料の混合比(wt%)は、重量比として正孔輸送材料:電子輸送材料=5:5程度でもよい。
【0069】
また、これら混合された材料同士で励起錯体を形成する場合、第1の有機化合物と第2の有機化合物として、図16のように当該励起錯体の発光スペクトルにおけるピークが発光材料の最も低エネルギー側に位置する吸収帯の波長と重なるような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため好ましい。なお300が発光材料の吸収スペクトル、301が励起錯体の発光スペクトル、302が第2の有機化合物の発光スペクトル、303が第1の有機化合物の発光スペクトルである。また、以上のような構成を用いることで駆動電圧も低下するため好ましい。
【0070】
効率よく励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性を有する材料のHOMO準位が電子輸送性を有する材料のHOMO準位以上であると好ましい。また、正孔輸送性を有する材料のLUMO準位が電子輸送性を有する材料のLUMO準位以上であると好ましい。なお、LUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される化合物の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0071】
なお、励起錯体の形成は、例えば第1の有機化合物の発光スペクトル、第2の有機化合物の発光スペクトル、およびこれら化合物を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各化合物の発光スペクトルよりも長波長シフトする(あるいは長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。あるいは、第1の有機化合物の過渡フォトルミネッセンス(PL)、第2の有機化合物の過渡PL、及びこれら化合物を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各化合物の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、あるいは遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、第1の有機化合物の過渡EL、第2の有機化合物の過渡EL及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0072】
電子輸送層114は、発光層113に接して設けられる。また、電子輸送層114は、電子輸送性を有する材料を有している。当該電子輸送性を有する材料としては、下記一般式(G1)で表される材料であることが好ましい。
【0073】
【化6】
【0074】
ただし、上記一般式(G1)において、Arはベンゾキノリニル基またはベンゾイソキノリル基を表し、Arはトリフェニレニルナフチレン基またはナフチレニルトリフェニレン-ジイル基を表している。
【0075】
なお、上記一般式(G1)においては、Arは下記構造式(1-1)乃至(1-11)で表される基のいずれかであることが好ましい。
【0076】
【化7】
【0077】
また、上記一般式(G1)においては、Arが下記構造式(2-1)乃至(2-12)で表される基のいずれかであることが好ましい。
【0078】
【化8】
【0079】
上記一般式(G1)で表される有機化合物の具体的な構造の例としては、以下のようなものを上げることができる。
【0080】
【化9】
【0081】
【化10】
【0082】
【化11】
【0083】
【化12】
【0084】
【化13】
【0085】
【化14】
【0086】
【化15】
【0087】
【化16】
【0088】
【化17】
【0089】
【化18】
【0090】
【化19】
【0091】
【化20】
【0092】
【化21】
【0093】
また、上記一般式(G1)で表される有機化合物の中でも、ビピリジン構造を有する(100)乃至(127)、(136)乃至(143)、(152)乃至(155)は電子輸送性に優れ好ましく、中でも下記構造式(100)で表される有機化合物が特に好ましい。
【0094】
【化22】
【0095】
なお、上記一般式(G1)で表される有機化合物は、蛍光発光物質を発光中心物質として用いた発光層に隣接する電子輸送層と、りん光発光物質を発光中心物質として用いた発光層に隣接する電子輸送層の双方に用いることが可能である。そのため、りん光発光デバイスと、蛍光発光デバイスの双方を用いて作製された発光装置において、すべての発光デバイスに共通して用いる共通層(共通の電子輸送層)とすることが可能となる。これにより、塗分けを行う回数を減らすことができ、歩留まりやコスト的に有利な発光装置を製造することが可能となる。なお、蛍光発光物質を発光中心物質として用いた発光層はホスト材料として、アントラセン骨格を有する有機化合物を用いることが好ましい。アントラセン骨格を有する有機化合物はT1準位(三重項励起準位)が低い骨格であるが、上記一般式(G1)で表される有機化合物を用いることで、T1準位が低い有機化合物を用いた発光層を有する発光デバイスと、T1準位の高い有機化合物を用いた発光層を有する発光デバイスに共通した電子輸送層を形成することが可能となる。
【0096】
また、電子輸送層114はさらにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体、化合物および錯体のいずれかを含んでいても良い。すなわち、電子輸送層114は、上記一般式(G1)で表される有機化合物で構成されていても良いし、上記一般式(G1)で表される物質とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体、化合物および錯体のいずれかの混合材料から構成されていても良い。
【0097】
また、上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体、化合物および錯体としては、8-ヒドロキシキノリナト構造を含むことが好ましい。具体的には、例えば8-ヒドロキシキノリナト-リチウム(略称:Liq)、8-ヒドロキシキノリナト-ナトリウム(略称:Naq)などを挙げることができる。特に、一価の金属イオンの錯体、中でもリチウムの錯体が好ましく、Liqがより好ましい。なお、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む場合、そのメチル置換体(例えば2-メチル置換体や5-メチル置換体)などを用いることもできる。
【0098】
また、電子輸送層114を構成する材料はその電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下であることが好ましい。
【0099】
また、電子輸送層114を構成する材料の電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度がホスト材料または発光層113に含まれる電子輸送性を有する材料の電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度よりも小さいことが好ましい。電子輸送層における電子の輸送性を落とすことにより発光層への電子の注入量を制御することができ、発光層が電子過多の状態になることを防ぐことができる。
【0100】
発光層が電子過多の状態になると、図2Aに示したように発光領域113-1が一部に限定されることによりその部分の負担が大きくなり、劣化が促進されてしまう。また、再結合できずに発光層を電子が通過してしまうことでも、寿命や発光効率が低下する。本発明の一態様では、電子輸送層114における電子の輸送性を落とすことにより、図2Bのように発光領域113-1を広げ、発光層113を構成する材料への負担を分散させることで、寿命が長く発光効率の良好な発光デバイスを提供することができる。なお、図2Bに示すように、本発明の一態様の発光デバイスにおいては、発光層ではなく、ホール注入層または電子注入層のキャリアバランスを調整することで、発光領域113-1、すなわち再結合領域の位置を調整することが可能な構成となる。なお、本明細書等において、当該構成をRecombination-Site Tailoring Injection(ReSTI、レスティ)と呼称する場合がある。
【0101】
また、このような構成を有する発光デバイスでは、電流密度一定の条件における駆動試験によって得られた輝度の劣化曲線において、極大値を有する形状を示す場合がある。すなわち、本発明の一態様の発光デバイスの劣化曲線は、時間の経過に従って輝度が上昇する部分を有する形状となる場合がある。このような劣化挙動を示す発光デバイスは、いわゆる初期劣化と呼ばれる駆動初期の急激な劣化を当該輝度上昇により相殺することが可能となり、初期劣化が小さく、且つ非常に良好な駆動寿命を有する発光デバイスとすることが可能となる。
【0102】
なおこのような、極大値を有する劣化曲線の微分を取ると、その値が0である部分が存在するため、換言すると、劣化曲線の微分に0となる部分が存在する本発明の一態様の発光デバイスは初期劣化が小さく、非常に寿命が良好な発光デバイスとすることができる。
【0103】
上述のような劣化曲線の挙動は、図3Aに示したように、電子輸送層114における電子移動度が小さいことによって発光に寄与しない再結合が非発光再結合領域120で生じることが原因で現れる現象と考えられる。上述の構成を有する本発明の発光デバイスでは、駆動初期では正孔の注入障壁が小さいことなどにより、発光領域113-1(すなわち再結合領域)が電子輸送層114側に寄った状態で形成される。また、電子輸送層114に含まれる第2の電子輸送性材料のHOMO準位が-6.0eV以上と比較的高いことから、正孔が一部電子輸送層114まで達しており、電子輸送層114でも再結合が起こり、非発光再結合領域120が形成される。
【0104】
ここで、本発明の一態様の発光デバイスでは駆動時間が経過するにしたがって、キャリアバランスが変化し、図3Bのように発光領域113-1(再結合領域)が正孔輸送層112側に移動してゆく。非発光再結合領域120が減少することで、再結合したキャリアのエネルギーを有効に発光に寄与させることが可能となり、輝度の上昇が起こる。この輝度上昇が発光デバイスの駆動初期に現れる急激な輝度低下、いわゆる初期劣化を相殺することで初期劣化が小さく、また駆動寿命の長い発光デバイスを提供することが可能となるのである。
【0105】
なお、初期劣化を抑えることが可能であることで、有機ELデバイスの大きな弱点の一つとして未だ論われる焼き付きの問題、その低減のためになされる出荷前のエイジングの手間を大きく低減することが可能となる。
【0106】
以上のような構成を有する本発明の一態様の発光デバイスは、寿命の良好な発光デバイスとすることが可能である。
【0107】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した一般式(G1)で表される有機化合物の合成方法の例を詳しく説明する。なお、下記反応スキームにおいて、ArおよびArは上記一般式(G1)と同様であるため説明を省略する。
【0108】
<一般式(G1)の合成方法>
一般式(G1)で表される有機化合物は、下記反応スキーム(a-1)及び(a-2)のように合成することができる。
【0109】
【化23】
【0110】
まず、反応スキーム(a-1)に示したように2-フェニル-1,3,5-トリアジン化合物(化合物1)とベンゾキノリン化合物又はベンゾイソキノリン化合物(化合物2)と、をカップリングすることにより、ベンゾキノリニル基又はベンゾイソキノリニル基を有する2-フェニル-1,3,5-トリアジン化合物(化合物3)を得ることができる。続いて、反応スキーム(a-2)に示したように、化合物3とナフチル基を有するトリフェニレン化合物、又は、トリフェニレニル基を有するナフタレン化合物(化合物4)とをカップリングすることにより、目的物である一般式(G1)で表される化合物を得ることができる。
【0111】
反応スキーム(a-1)及び(a-2)において、X乃至Xはそれぞれ独立に塩素、臭素、ヨウ素、トリフラート基、有機ホウ素基、ボロン酸を表す。反応スキーム(a-1)及び(a-2)で表される反応は、パラジウム触媒を用いた鈴木-宮浦クロスカップリング反応を行うことができる。
【0112】
鈴木-宮浦クロスカップリング反応では、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等のパラジウム化合物と、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(n-ヘキシル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル、トリ(オルトートリル)ホスフィン等の配位子を用いる事ができる。
【0113】
また、当該反応では、ナトリウム tert-ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等を用いることができる。当該反応では、溶媒として、トルエン、キシレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エタノール、メタノール、水、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等を用いることができる。当該反応で用いることができる試薬類は、前記試薬類に限られるものではない。
【0114】
反応スキーム(a-1)及び(a-2)の反応は、鈴木・宮浦カップリング反応でのみ可能となるものではなく、有機錫化合物を用いた右田・小杉・スティルカップリング反応、グリニヤール試薬を用いた熊田・玉尾・コリューカップリング反応、有機亜鉛化合物を用いた根岸カップリング反応等によっても行うことができる。右田・小杉・スティルカップリング反応を用いる場合、X乃至Xはそれぞれクロスカップリングを行う組み合わせにおいてどちらか一方が有機錫基を表し、もう一方が、ハロゲン又はトリフラート基を表す。すなわち、化合物1及び化合物2のうちどちらか一方を有機錫化合物、もう一方の化合物をハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物とし、化合物3及び化合物4のうちどちらか一方を有機錫化合物、もう一方の化合物をハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物として反応を行う。熊田・玉尾・コリューカップリング反応を用いる場合、X乃至Xは、それぞれクロスカップリングを行う組み合わせにおいてどちらか一方がハロゲン化マグネシウム基を表し、もう一方が、ハロゲン又はトリフラート基を有する化合物を表す。すなわち、化合物1及び化合物2のうちどちらか一方をグリニヤール試薬、もう一方がハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物とし、化合物3及び化合物4のうちどちらか一方をグリニヤール試薬とし、もう一方がハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物として反応を行う。根岸カップリング反応を用いる場合、X乃至Xは、それぞれクロスカップリングを行う組み合わせにおいてどちらか一方が有機亜鉛基を表し、もう一方が、ハロゲン又はトリフラート基を表す。すなわち、化合物1及び化合物2のうちどちらか一方を有機亜鉛化合物、もう一方をハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物とし、化合物3及び化合物4のうちどちらか一方を有機亜鉛化合物、もう一方をハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物として反応を行う。
【0115】
一般式(G1)で表される有機化合物は、下記反応スキーム(b-1)及び(b-2)のようにも合成することができる。
【0116】
【化24】
【0117】
まず、反応スキーム(b-1)に示したように、2フェニル-1,3,5-トリアジン化合物(化合物1)とナフチル基を有するトリフェニレン化合物又は、トリフェニレニル基を有するナフタレン化合物(化合物4)と、をカップリングすることにより、ナフチル基を有するトリフェニレン-ジイル基、又は、トリフェニレニル基を有するナフタレン-ジイル基を有する2-フェニル-1,3,5-トリアジン化合物(化合物5)を得ることができる。続いて、反応スキーム(b-2)に示したように、化合物5とベンゾキノリン化合物又はベンゾイソキノリン化合物(化合物2)とをカップリングすることにより、目的物である一般式(G1)で表される化合物を得ることができる。
【0118】
反応スキーム(b-1)及び(b-2)において、X乃至Xはそれぞれ独立に塩素、臭素、ヨウ素、トリフラート基、有機ホウ素基、ボロン酸を表す。反応スキーム(b-1)及び(b-2)で表される反応は、パラジウム触媒を用いた鈴木-宮浦クロスカップリング反応を用いて行うことができる。
【0119】
鈴木-宮浦クロスカップリング反応では、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等のパラジウム化合物と、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(n-ヘキシル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル、トリ(オルトートリル)ホスフィン等の配位子を用いる事ができる。
【0120】
また、当該反応では、ナトリウム tert-ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等を用いることができる。当該反応では、溶媒として、トルエン、キシレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エタノール、メタノール、水、DMF、DMSO等を用いることができる。当該反応で用いることができる試薬類は、前記試薬類に限られるものではない。
【0121】
反応スキーム(b-1)及び(b-2)において行う反応は、鈴木・宮浦カップリング反応でのみ可能となるものではなく、有機錫化合物を用いた右田・小杉・スティルカップリング反応、グリニヤール試薬を用いた熊田・玉尾・コリューカップリング反応、有機亜鉛化合物を用いた根岸カップリング反応等も行うことができる。右田・小杉・スティルカップリング反応を用いる場合、X及び乃至Xはそれぞれクロスカップリングを行う組み合わせにおいてどちらか一方が有機錫基を表し、もう一方が、ハロゲン基又はトリフラート基を表す。すなわち、化合物1及び化合物4のうちどちらか一方を有機錫化合物、もう一方の化合物をハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物とし、化合物2及び化合物3のうちどちらか一方を有機錫化合物、もう一方の化合物をハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物として反応を行う。熊田・玉尾・コリューカップリング反応を用いる場合、X及び乃至Xは、それぞれクロスカップリングを行う組み合わせにおいてどちらか一方がハロゲン化マグネシウム基を表し、もう一方が、ハロゲン又はトリフラート基を有する化合物基を表す。すなわち、化合物1及び化合物4のうちどちらか一方をグリニヤール試薬、もう一方をハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物とし、化合物2及び化合物3のうちどちらか一方をグリニヤール試薬、もう一方をハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物として反応を行う。根岸カップリング反応を用いる場合、X及び乃至Xは、それぞれクロスカップリングを行う組み合わせにおいてどちらか一方が有機亜鉛基を表し、もう一方が、ハロゲン又はトリフラート基を表す。すなわち、化合物1及び化合物4のうちどちらか一方を有機亜鉛化合物、もう一方をハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物とし、化合物3及び化合物4のうちどちらか一方を有機亜鉛化合物、もう一方をハロゲン化物又はトリフラート基を有する化合物として反応を行う。
【0122】
(実施の形態3)
続いて、上述の発光デバイスの詳細な構造や材料の例について説明する。本発明の一態様の発光デバイスは、上述のように陽極101と陰極102の一対の電極間に複数の層からなるEL層103を有し、当該EL層103は少なくとも陽極101側より、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113および電子輸送層を含む。
【0123】
EL層103に含まれるそれ以外の層については特に限定はなく、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、キャリアブロック層、励起子ブロック層、電荷発生層など、様々な層構造を適用することができる。
【0124】
陽極101は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル-ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例としては、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1~20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5~5wt%、酸化亜鉛を0.1~1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。グラフェンも用いることができる。なお、ここでは仕事関数が大きく、陽極を形成する材料として代表的な物質を列挙したが、本発明の一態様では、正孔注入層111に、正孔輸送性を有する有機化合物と、当該有機化合物に対し電子受容性を示す物質とを含む複合材料を用いるため、仕事関数に関わらず電極材料を選択することができる。
【0125】
正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113および電子輸送層114に関しては、実施の形態1で詳述したため、繰り返しとなる記載を省略する。実施の形態1の記載を参照されたい。
【0126】
電子輸送層114と陰極102との間に、電子注入層115として、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含む層を設けてもよい。電子注入層115は、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたものや、エレクトライドを用いてもよい。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。
【0127】
また、電子注入層115の代わりに電子輸送層114と陰極102との間に電荷発生層116を設けてもよい(図1B)。電荷発生層116は、電圧をかけることによって当該層の陰極側に接する層に正孔を、陽極側に接する層に電子を注入することができる層のことである。電荷発生層116には、少なくともP型層117が含まれる。P型層117は、上述の正孔注入層111を構成することができる材料として挙げた複合材料を用いて形成することが好ましい。またP型層117は、複合材料を構成する材料として上述したアクセプタ材料を含む膜と正孔輸送材料を含む膜とを積層して構成しても良い。P型層117に電圧をかけることによって、電子輸送層114に電子が、陰極である陰極102に正孔が注入され、発光デバイスが動作する。
【0128】
なお、電荷発生層116はP型層117の他に電子リレー層118及び電子注入バッファ層119のいずれか一又は両方がもうけられていることが好ましい。
【0129】
電子リレー層118は少なくとも電子輸送性を有する物質を含み、電子注入バッファ層119とP型層117との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。電子リレー層118に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、P型層117における電子受容性物質のLUMO準位と、電子輸送層114における電荷発生層116に接する層に含まれる物質のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー層118に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は-5.0eV以上、好ましくは-5.0eV以上-3.0eV以下とするとよい。なお、電子リレー層118に用いられる電子輸送性を有する物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属-酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0130】
電子注入バッファ層119には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0131】
また、電子注入バッファ層119が、電子輸送性を有する物質と電子供与性物質を含んで形成される場合には、電子供与性物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性を有する物質としては、先に説明した電子輸送層114を構成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0132】
陰極102を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、陰極102と電子輸送層との間に、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を陰極102として用いることができる。
これら導電性材料は、真空蒸着法やスパッタリング法などの乾式法、インクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。また、ゾル-ゲル法を用いた湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いた湿式法で形成してもよい。
【0133】
また、EL層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。
【0134】
また上述した各電極または各層を異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0135】
なお、陽極101と陰極102との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。しかし、発光領域と電極やキャリア注入層に用いられる金属とが近接することによって生じる消光が抑制されるように、陽極101および陰極102から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成が好ましい。
【0136】
また、発光層113に接する正孔輸送層や電子輸送層、特に発光層113における再結合領域に近いキャリア輸送層は、発光層で生成した励起子からのエネルギー移動を抑制するため、そのバンドギャップが発光層を構成する発光材料もしくは、発光層に含まれる発光材料が有するバンドギャップより大きいバンドギャップを有する物質で構成することが好ましい。
【0137】
続いて、複数の発光ユニットを積層した構成の発光デバイス(積層型素子、タンデム型素子ともいう)の態様について、図1Cを参照して説明する。この発光デバイスは、陽極と陰極との間に、複数の発光ユニットを有する発光デバイスである。一つの発光ユニットは、図1Aで示したEL層103とほぼ同様な構成を有する。つまり、図1Cで示す発光デバイスは複数の発光ユニットを有する発光デバイスであり、図1A又は図1Bで示した発光デバイスは、1つの発光ユニットを有する発光デバイスであるということができる。
【0138】
図1Cにおいて、陽極501と陰極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されており、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には電荷発生層513が設けられている。陽極501と陰極502はそれぞれ図1Aにおける陽極101と陰極102に相当し、図1Aの説明で述べたものと同じものを適用することができる。また、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよい。
【0139】
電荷発生層513は、陽極501と陰極502に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。すなわち、図1Cにおいて、陽極の電位の方が陰極の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層513は、第1の発光ユニット511に電子を注入し、第2の発光ユニット512に正孔を注入するものであればよい。
【0140】
電荷発生層513は、図1Bにて説明した電荷発生層116と同様の構成で形成することが好ましい。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層513に接している場合は、電荷発生層513が発光ユニットの正孔注入層の役割も担うことができるため、発光ユニットは正孔注入層を設けなくとも良い。
【0141】
また、電荷発生層513に電子注入バッファ層119を設ける場合、当該電子注入バッファ層119が陽極側の発光ユニットにおける電子注入層の役割を担うため、陽極側の発光ユニットには必ずしも電子注入層を形成する必要はない。
【0142】
図1Cでは、2つの発光ユニットを有する発光デバイスについて説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光デバイスについても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光デバイスのように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層513で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な素子を実現できる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
【0143】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光デバイス全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光デバイスにおいて、第1の発光ユニットで赤と緑の発光色、第2の発光ユニットで青の発光色を得ることで、発光デバイス全体として白色発光する発光デバイスを得ることも可能である。また、3つ以上の発光ユニットを積層した発光デバイスの構成としては、例えば、第1の発光ユニットが第1の青色の発光層を有し、第2の発光ユニットが黄色または黄緑色の発光層と、赤色の発光層とを有し、第3の発光ユニットが第2の青色の発光層を有するタンデム型デバイスとすることができる。当該タンデム型デバイスは、上述の発光デバイスと同様に、白色の発光を得ることができる。
【0144】
また、上述のEL層103や第1の発光ユニット511、第2の発光ユニット512及び電荷発生層などの各層や電極は、例えば、蒸着法(真空蒸着法を含む)、液滴吐出法(インクジェット法ともいう)、塗布法、グラビア印刷法等の方法を用いて形成することができる。また、それらは低分子材料、中分子材料(オリゴマー、デンドリマーを含む)、または高分子材料を含んでも良い。
【0145】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを用いた発光装置について説明する。
【0146】
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを用いて作製された発光装置について図4を用いて説明する。なお、図4Aは、発光装置を示す上面図、図4B図4AをA-BおよびC-Dで切断した断面図である。この発光装置は、発光デバイスの発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース線駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0147】
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路601及びゲート線駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0148】
次に、断面構造について図4Bを用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース線駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0149】
素子基板610はガラス、石英、有機樹脂、金属、合金、半導体などからなる基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いて作製すればよい。
【0150】
画素や駆動回路に用いられるトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、逆スタガ型のトランジスタとしてもよいし、スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート型のトランジスタでもボトムゲート型トランジスタでもよい。トランジスタに用いる半導体材料は特に限定されず、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、窒化ガリウム等を用いることができる。
【0151】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0152】
ここで、上記画素や駆動回路に設けられるトランジスタの他、後述するタッチセンサ等に用いられるトランジスタなどの半導体装置には、酸化物半導体を適用することが好ましい。特にシリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を適用することが好ましい。シリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ状態における電流を低減できる。
【0153】
上記酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)又は亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、In-M-Zn系酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記される酸化物を含む酸化物半導体であることがより好ましい。
【0154】
ここで、本発明の一態様に用いることができる酸化物半導体について、以下に説明を行う。
【0155】
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nano crystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などがある。
【0156】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0157】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0158】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0159】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損(V:oxygen vacancyともいう)など)の少ない酸化物半導体ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。
【0160】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0161】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する酸化物半導体の一種である、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(以下、IGZO)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
【0162】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0163】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0164】
また、上述の酸化物半導体以外として、CAC(Cloud-Aligned Composite)-OSを用いてもよい。
【0165】
CAC-OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSに付与することができる。CAC-OSにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0166】
また、CAC-OSは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0167】
また、CAC-OSにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0168】
また、CAC-OSは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0169】
すなわち、CAC-OSは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0170】
半導体層として上述の酸化物半導体材料を用いることで、電気特性の変動が抑制され、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0171】
また、上述の半導体層を有するトランジスタはその低いオフ電流により、トランジスタを介して容量に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。このようなトランジスタを画素に適用することで、各表示領域に表示した画像の階調を維持しつつ、駆動回路を停止することも可能となる。その結果、極めて消費電力の低減された電子機器を実現できる。
【0172】
トランジスタの特性安定化等のため、下地膜を設けることが好ましい。下地膜としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などの無機絶縁膜を用い、単層で又は積層して作製することができる。下地膜はスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD(Metal Organic CVD)法など)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、塗布法、印刷法等を用いて形成できる。なお、下地膜は、必要で無ければ設けなくてもよい。
【0173】
なお、FET623は駆動回路部601に形成されるトランジスタの一つを示すものである。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成すれば良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0174】
また、画素部602はスイッチング用FET611と、電流制御用FET612とそのドレインに電気的に接続された陽極613とを含む複数の画素により形成されているが、これに限定されず、3つ以上のFETと、容量素子とを組み合わせた画素部としてもよい。
【0175】
なお、陽極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成することができる。
【0176】
また、後に形成するEL層等の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm~3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0177】
陽極613上には、EL層616、および陰極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2~20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0178】
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。EL層616は、実施の形態1および実施の形態3で説明したような構成を含んでいる。また、EL層616を構成する他の材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
【0179】
さらに、EL層616上に形成された陰極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物(MgAg、MgIn、AlLi等)等)を用いることが好ましい。なお、EL層616で生じた光が陰極617を透過させる場合には、陰極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2~20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0180】
なお、陽極613、EL層616、陰極617でもって、発光デバイスが形成されている。当該発光デバイスは実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスである。なお、画素部は複数の発光デバイスが形成されてなっているが、本実施の形態における発光装置では、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスと、それ以外の構成を有する発光デバイスの両方が含まれていても良い。
【0181】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光デバイス618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材で充填される場合もある。
【0182】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0183】
図4には示されていないが、陰極上に保護膜を設けても良い。保護膜は有機樹脂膜や無機絶縁膜で形成すればよい。また、シール材605の露出した部分を覆うように、保護膜が形成されていても良い。また、保護膜は、一対の基板の表面及び側面、封止層、絶縁層、等の露出した側面を覆って設けることができる。
【0184】
保護膜には、水などの不純物を透過しにくい材料を用いることができる。したがって、水などの不純物が外部から内部に拡散することを効果的に抑制することができる。
【0185】
保護膜を構成する材料としては、酸化物、窒化物、フッ化物、硫化物、三元化合物、金属またはポリマー等を用いることができ、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムシリケート、酸化ランタン、酸化珪素、チタン酸ストロンチウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化スカンジウム、酸化エルビウム、酸化バナジウムまたは酸化インジウム等を含む材料や、窒化アルミニウム、窒化ハフニウム、窒化珪素、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化モリブデン、窒化ジルコニウムまたは窒化ガリウム等を含む材料、チタンおよびアルミニウムを含む窒化物、チタンおよびアルミニウムを含む酸化物、アルミニウムおよび亜鉛を含む酸化物、マンガンおよび亜鉛を含む硫化物、セリウムおよびストロンチウムを含む硫化物、エルビウムおよびアルミニウムを含む酸化物、イットリウムおよびジルコニウムを含む酸化物等を含む材料を用いることができる。
【0186】
保護膜は、段差被覆性(ステップカバレッジ)の良好な成膜方法を用いて形成することが好ましい。このような手法の一つに、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法がある。ALD法を用いて形成することができる材料を、保護膜に用いることが好ましい。ALD法を用いることで緻密な、クラックやピンホールなどの欠陥が低減された、または均一な厚さを備える保護膜を形成することができる。また、保護膜を形成する際に加工部材に与える損傷を、低減することができる。
【0187】
例えばALD法を用いて保護膜を形成することで、複雑な凹凸形状を有する表面や、タッチパネルの上面、側面及び裏面にまで均一で欠陥の少ない保護膜を形成することができる。
【0188】
以上のようにして、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを用いて作製された発光装置を得ることができる。
【0189】
本実施の形態における発光装置は、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスは寿命の長い発光デバイスであるため、信頼性の良好な発光装置とすることができる。また、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを用いた発光装置は発光効率が良好なため、消費電力の小さい発光装置とすることが可能である。
【0190】
図5には白色発光を呈する発光デバイスを形成し、着色層(カラーフィルタ)等を設けることによってフルカラー化した発光装置の例を示す。図5Aには基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光デバイスの陽極1024W、1024R、1024G、1024B、隔壁1025、EL層1028、発光デバイスの陰極1029、封止基板1031、シール材1032などが図示されている。
【0191】
また、図5Aでは着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)は透明な基材1033に設けている。また、ブラックマトリクス1035をさらに設けても良い。着色層及びブラックマトリクスが設けられた透明な基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及びブラックマトリクス1035は、オーバーコート層1036で覆われている。また、図5Aにおいては、光が着色層を透過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光が出る発光層とがあり、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、緑、青となることから、4色の画素で映像を表現することができる。
【0192】
図5Bでは着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する例を示した。このように、着色層は基板1001と封止基板1031の間に設けられていても良い。
【0193】
また、以上に説明した発光装置では、FETが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。トップエミッション型の発光装置の断面図を図6に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。FETと発光デバイスの陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の発光装置と同様に形成する。その後、第3の層間絶縁膜1037を、電極1022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第2の層間絶縁膜と同様の材料の他、他の公知の材料を用いて形成することができる。
【0194】
発光デバイスの陽極1024W、1024R、1024G、1024Bはここでは陽極であるが、陰極として形成しても構わない。また、図6のようなトップエミッション型の発光装置である場合、陽極を反射電極とすることが好ましい。EL層1028の構成は、実施の形態1および実施の形態3においてEL層103として説明したような構成とし、且つ、白色の発光が得られるような素子構造とする。
【0195】
図6のようなトップエミッションの構造では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するようにブラックマトリクス1035を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)やブラックマトリックスはオーバーコート層1036によって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いることとする。また、ここでは赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行う例を示したが特に限定されず、赤、黄、緑、青の4色や赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行ってもよい。
【0196】
トップエミッション型の発光装置では、マイクロキャビティ構造の適用が好適に行える。マイクロキャビティ構造を有する発光デバイスは、陽極を反射電極、陰極を半透過・半反射電極とすることにより得られる。反射電極と半透過・半反射電極との間には少なくともEL層を有し、少なくとも発光領域となる発光層を有している。
【0197】
なお、反射電極は、可視光の反射率が40%乃至100%、好ましくは70%乃至100%であり、かつその抵抗率が1×10-2Ωcm以下の膜であるとする。また、半透過・半反射電極は、可視光の反射率が20%乃至80%、好ましくは40%乃至70%であり、かつその抵抗率が1×10-2Ωcm以下の膜であるとする。
【0198】
EL層に含まれる発光層から射出される発光は、反射電極と半透過・半反射電極とによって反射され、共振する。
【0199】
当該発光デバイスは、透明導電膜や上述の複合材料、キャリア輸送材料などの厚みを変えることで反射電極と半透過・半反射電極の間の光学的距離を変えることができる。これにより、反射電極と半透過・半反射電極との間において、共振する波長の光を強め、共振しない波長の光を減衰させることができる。
【0200】
なお、反射電極によって反射されて戻ってきた光(第1の反射光)は、発光層から半透過・半反射電極に直接入射する光(第1の入射光)と大きな干渉を起こすため、反射電極と発光層の光学的距離を(2n-1)λ/4(ただし、nは1以上の自然数、λは増幅したい発光の波長)に調節することが好ましい。当該光学的距離を調節することにより、第1の反射光と第1の入射光との位相を合わせ発光層からの発光をより増幅させることができる。
【0201】
なお、上記構成においては、EL層に複数の発光層を有する構造であっても、単一の発光層を有する構造であっても良く、例えば、上述のタンデム型発光デバイスの構成と組み合わせて、一つの発光デバイスに電荷発生層を挟んで複数のEL層を設け、それぞれのEL層に単数もしくは複数の発光層を形成する構成に適用してもよい。
【0202】
マイクロキャビティ構造を有することで、特定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能となるため、低消費電力化を図ることができる。なお、赤、黄、緑、青の4色の副画素で映像を表示する発光装置の場合、黄色発光による輝度向上効果のうえ、全副画素において各色の波長に合わせたマイクロキャビティ構造を適用できるため良好な特性の発光装置とすることができる。
【0203】
本実施の形態における発光装置は、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスは寿命の長い発光デバイスであるため、信頼性の良好な発光装置とすることができる。また、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを用いた発光装置は発光効率が良好なため、消費電力の小さい発光装置とすることが可能である。
【0204】
ここまでは、アクティブマトリクス型の発光装置について説明したが、以下からはパッシブマトリクス型の発光装置について説明する。図7には本発明を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置を示す。なお、図7Aは、発光装置を示す斜視図、図7B図7AをX-Yで切断した断面図である。図7において、基板951上には、電極952と電極956との間にはEL層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光デバイスの不良を防ぐことができる。また、パッシブマトリクス型の発光装置においても、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを用いており、信頼性の良好な発光装置、又は消費電力の小さい発光装置とすることができる。
【0205】
以上、説明した発光装置は、マトリクス状に配置された多数の微小な発光デバイスをそれぞれ制御することが可能であるため、画像の表現を行う表示装置として好適に利用できる発光装置である。
【0206】
また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0207】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを照明装置として用いる例を図8を参照しながら説明する。図8Bは照明装置の上面図、図8A図8Bにおけるe-f断面図である。
【0208】
本実施の形態における照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、陽極401が形成されている。陽極401は実施の形態3における陽極101に相当する。陽極401側から発光を取り出す場合、陽極401は透光性を有する材料により形成する。
【0209】
陰極404に電圧を供給するためのパッド412が基板400上に形成される。
【0210】
陽極401上にはEL層403が形成されている。EL層403は実施の形態1および実施の形態3におけるEL層103の構成、又は発光ユニット511、512及び電荷発生層513を合わせた構成などに相当する。なお、これらの構成については当該記載を参照されたい。
【0211】
EL層403を覆って陰極404を形成する。陰極404は実施の形態3における陰極102に相当する。発光を陽極401側から取り出す場合、陰極404は反射率の高い材料によって形成される。陰極404はパッド412と接続することによって、電圧が供給される。
【0212】
以上、陽極401、EL層403、及び陰極404を有する発光デバイスを本実施の形態で示す照明装置は有している。当該発光デバイスは発光効率の高い発光デバイスであるため、本実施の形態における照明装置は消費電力の小さい照明装置とすることができる。
【0213】
以上の構成を有する発光デバイスが形成された基板400と、封止基板407とをシール材405、406を用いて固着し、封止することによって照明装置が完成する。シール材405、406はどちらか一方でもかまわない。また、内側のシール材406(図8Bでは図示せず)には乾燥剤を混ぜることもでき、これにより、水分を吸着することができ、信頼性の向上につながる。
【0214】
また、パッド412と陽極401の一部をシール材405、406の外に伸張して設けることによって、外部入力端子とすることができる。また、その上にコンバーターなどを搭載したICチップ420などを設けても良い。
【0215】
以上、本実施の形態に記載の照明装置は、EL素子に実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを用いており、信頼性の良好な発光装置とすることができる。また、消費電力の小さい発光装置とすることができる。
【0216】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスをその一部に含む電子機器の例について説明する。実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスは寿命が良好であり、信頼性の良好な発光デバイスである。その結果、本実施の形態に記載の電子機器は、信頼性の良好な発光部を有する電子機器とすることが可能である。
【0217】
上記発光デバイスを適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を以下に示す。
【0218】
図9Aは、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、表示部7103は、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスをマトリクス状に配列して構成されている。
【0219】
テレビジョン装置の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0220】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0221】
図9B1はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、このコンピュータは、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスをマトリクス状に配列して表示部7203に用いることにより作製される。図9B1のコンピュータは、図9B2のような形態であっても良い。図9B2のコンピュータは、キーボード7204、ポインティングデバイス7206の代わりに第2の表示部7210が設けられている。第2の表示部7210はタッチパネル式となっており、第2の表示部7210に表示された入力用の表示を指や専用のペンで操作することによって入力を行うことができる。また、第2の表示部7210は入力用表示だけでなく、その他の画像を表示することも可能である。また表示部7203もタッチパネルであっても良い。二つの画面がヒンジで接続されていることによって、収納や運搬をする際に画面を傷つける、破損するなどのトラブルの発生も防止することができる。
【0222】
図9Cは、携帯端末の一例を示している。携帯電話機は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機は、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスをマトリクス状に配列して作製された表示部7402を有している。
【0223】
図9Cに示す携帯端末は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる構成とすることもできる。この場合、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0224】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0225】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0226】
また、携帯端末内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯端末の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0227】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0228】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0229】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0230】
図10Aは、掃除ロボットの一例を示す模式図である。
【0231】
掃除ロボット5100は、上面に配置されたディスプレイ5101、側面に配置された複数のカメラ5102、ブラシ5103、操作ボタン5104を有する。また図示されていないが、掃除ロボット5100の下面には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット5100は、その他に赤外線センサ、超音波センサ、加速度センサ、ピエゾセンサ、光センサ、ジャイロセンサなどの各種センサを備えている。また、掃除ロボット5100は、無線による通信手段を備えている。
【0232】
掃除ロボット5100は自走し、ゴミ5120を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
【0233】
また、掃除ロボット5100はカメラ5102が撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ5103に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ5103の回転を止めることができる。
【0234】
ディスプレイ5101には、バッテリーの残量や、吸引したゴミの量などを表示することができる。掃除ロボット5100が走行した経路をディスプレイ5101に表示させてもよい。また、ディスプレイ5101をタッチパネルとし、操作ボタン5104をディスプレイ5101に設けてもよい。
【0235】
掃除ロボット5100は、スマートフォンなどの携帯電子機器5140と通信することができる。カメラ5102が撮影した画像は、携帯電子機器5140に表示させることができる。そのため、掃除ロボット5100の持ち主は、外出先からでも、部屋の様子を知ることができる。また、ディスプレイ5101の表示をスマートフォンなどの携帯電子機器で確認することもできる。
【0236】
本発明の一態様の発光装置はディスプレイ5101に用いることができる。
【0237】
図10Bに示すロボット2100は、演算装置2110、照度センサ2101、マイクロフォン2102、上部カメラ2103、スピーカ2104、ディスプレイ2105、下部カメラ2106および障害物センサ2107、移動機構2108を備える。
【0238】
マイクロフォン2102は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ2104は、音声を発する機能を有する。ロボット2100は、マイクロフォン2102およびスピーカ2104を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
【0239】
ディスプレイ2105は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット2100は、使用者の望みの情報をディスプレイ2105に表示することが可能である。ディスプレイ2105は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、ディスプレイ2105は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット2100の定位置に設置することで、充電およびデータの受け渡しを可能とする。
【0240】
上部カメラ2103および下部カメラ2106は、ロボット2100の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ2107は、移動機構2108を用いてロボット2100が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット2100は、上部カメラ2103、下部カメラ2106および障害物センサ2107を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。本発明の一態様の発光装置はディスプレイ2105に用いることができる。
【0241】
図10Cはゴーグル型ディスプレイの一例を表す図である。ゴーグル型ディスプレイは、例えば、筐体5000、表示部5001、スピーカ5003、LEDランプ5004、接続端子5006、センサ5007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン5008、表示部5002、支持部5012、イヤホン5013等を有する。
【0242】
本発明の一態様の発光装置は表示部5001に用いることができる。
【0243】
図11は、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを、照明装置である電気スタンドに用いた例である。図11に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002としては、実施の形態4に記載の照明装置を用いても良い。
【0244】
図12は、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを、室内の照明装置3001として用いた例である。実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスは信頼性の高い発光デバイスであるため、信頼性の良い照明装置とすることができる。また、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスは大面積化が可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスは、薄型であるため、薄型化した照明装置として用いることが可能となる。
【0245】
実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスは、自動車のフロントガラスやダッシュボードにも搭載することができる。図13に実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを自動車のフロントガラスやダッシュボードに用いる一態様を示す。表示領域5200乃至表示領域5203は実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを用いて設けられた表示領域である。
【0246】
表示領域5200と表示領域5201は自動車のフロントガラスに設けられた実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを搭載した表示装置である。実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスは、陽極と陰極を透光性を有する電極で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示装置とすることができる。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラスに設置したとしても、視界の妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のためのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料による有機トランジスタや、酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
【0247】
表示領域5202はピラー部分に設けられた実施の形態1および実施の形態3に記載の発光デバイスを搭載した表示装置である。表示領域5202には、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。また、同様に、ダッシュボード部分に設けられた表示領域5203は車体によって遮られた視界を、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。見えない部分を補完するように映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0248】
表示領域5203はまたナビゲーション情報、速度計や回転計、エアコンの設定状況など、その他様々な情報を提供することができる。表示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目やレイアウトを変更することができる。なお、これら情報は表示領域5200乃至表示領域5202にも設けることができる。また、表示領域5200乃至表示領域5203は照明装置として用いることも可能である。
【0249】
また、図14A図14Bに、折りたたみ可能な携帯情報端末5150を示す。折りたたみ可能な携帯情報端末5150は筐体5151、表示領域5152および屈曲部5153を有している。図14Aに展開した状態の携帯情報端末5150を示す。図14Bに折りたたんだ状態の携帯情報端末を示す。
【0250】
表示領域5152は屈曲部5153により半分に折りたたむことができる。屈曲部5153は伸縮可能な部材と複数の支持部材とで構成されており、折りたたむ場合は、伸縮可能な部材が伸び、屈曲部5153は2mm以上、好ましくは3mm以上の曲率半径を有して折りたたまれる。
【0251】
なお、表示領域5152は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。本発明の一態様の発光装置を表示領域5152に用いることができる。
【0252】
また、図15A図15Cに、折りたたみ可能な携帯情報端末9310を示す。図15Aに展開した状態の携帯情報端末9310を示す。図15Bに展開した状態又は折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末9310を示す。図15Cに折りたたんだ状態の携帯情報端末9310を示す。携帯情報端末9310は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
【0253】
表示パネル9311はヒンジ9313によって連結された3つの筐体9315に支持されている。なお、表示パネル9311は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。また、表示パネル9311は、ヒンジ9313を介して2つの筐体9315間を屈曲させることにより、携帯情報端末9310を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態様の発光装置を表示パネル9311に用いることができる。
【0254】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態5に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例
【0255】
本実施例では、下記化合物の合成方法を説明する。
【0256】
【化25】
【0257】
【化26】
【0258】
はじめに化合物(100)について合成方法を説明する。
【0259】
<ステップ1:2-(6-ブロモナフタレン-2-イル)トリフェニレンの合成>
10mmolの4,4,5,5-テトラメチル-2-(トリフェニレン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランと、10mmolの2,6-ジブロモナフタレンと、20mmolの炭酸カリウムと、10mLの水と、40mLのトルエンと、10mLのエタノールと、0.2mmolの2-ジシクロフォスフィノ-2‘、6’-ジメトキシビフェニルと、0.1mmolの酢酸パラジウム(II)を冷却管と3方コックと擦り栓を取り付けた3つ口フラスコへ入れ、フラスコ内を窒素置換し、室温から60℃で撹拌をすることで目的の6-ブロモナフタレン-2-イルトリフェニレンを得ることができる。この反応では、トリフェニレニル基が2つカップリングした不純物の生成を抑制するために、温度は室温が望ましい。一方でトリフェニレン骨格を有する原料は溶解性が悪いため、加熱することが望ましい。従って、前記トルエンの量をさらに加えることで収率の改善が見込める。ステップ1の反応スキームを下に示す。
【0260】
【化27】
【0261】
<ステップ2:4,4,5,5-テトラメチル-2-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフチル]-1,3,2-ジオキサボロランの合成>
ステップ1で得た10mmolの2-(6-ブロモナフタレン-2-イル)トリフェニレンと、10mmolのビス(ピナコレート)ジボランと、20mmolの酢酸カリウムと、50mLの1,4-ジオキサンと、0.1mmolの[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドとを冷却管と3方コックと擦り栓を取り付けた3つ口フラスコへ入れ、系内を窒素置換し、80℃から100℃で撹拌をすることで目的の4,4,5,5-テトラメチル-2-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフチル]-1,3,2-ジオキサボロランを得ることができる。この反応では、トリフェニレン骨格の溶解度が低いため、希釈した反応条件が好ましい。従って、溶媒であるキシレンは100mL程度(濃度が0.1M程度)になるようにしてもよい。ステップ2の反応スキームを下に示す。
【0262】
【化28】
【0263】
<ステップ3:4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランの合成>
10mmolの2-クロロベンゾ[h]キノリンと、10mmolのビス(ピナコレート)ジボランと、20mmolの酢酸カリウムと、50mLの1,4-ジオキサンと、0.1mmolの[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドとを冷却管と3方コックと擦り栓を取り付けた3つ口フラスコへ入れ、系内を窒素置換し、80℃から100℃で撹拌をすることで目的の4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを得ることができる。この反応では、ベンゾ[h]キノリン骨格の極性が高いことから、反応溶媒の極性も高いことが望まれるので、DMF等の高極性溶媒を用いる事で高い収率で目的物を得ることができる。ステップ3の反応スキームを下に示す。
【0264】
【化29】
【0265】
<ステップ4:2-クロロ-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジンの合成>
ステップ2で得られる10mmolの4,4,5,5-テトラメチル-2-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフチル]-1,3,2-ジオキサボロランと、10mmolの2,4-ジクロロ-1,3,5-トリアジンと、20mmolの炭酸セシウムと、50mLのキシレンと、0.1mmolのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を冷却管と3方コックと擦り栓を取り付けた3つ口フラスコへ入れ、系内を窒素置換し、80℃から150℃で撹拌をすることで目的の2-クロロ-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジンを得ることができる。この反応では、6-ブロモナフタレン-2-イルトリフェニレンが2つカップリングした不純物の生成を抑制するために、希釈条件でのカップリングを行うことが好ましい。従って、溶媒であるキシレンは100mL程度(濃度が0.1M程度)になるようにしてもよい。ステップ4の反応スキームを下に示す。
【0266】
【化30】
【0267】
<ステップ5:2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジン(化合物(100))の合成>
ステップ3で得られる10mmolの4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランと、のステップ4で得られる2-クロロ-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジンと、20mmolの炭酸セシウムと、50mLのキシレンと、0.1mmolのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を冷却管と3方コックと擦り栓を取り付けた3つ口フラスコへ入れ、系内を窒素置換し、80℃から150℃で撹拌をすることで目的の2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジン(化合物(100))を得ることができる。この反応では、目的物と原料がともに溶解度が低いと考えられるため、希釈条件でのカップリングを行うことが好ましい。従って、溶媒であるキシレンは100mL程度(濃度が0.1M程度)になるようにしてもよい。また、原料の4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランは高極性なヘテロ環であるので、DMF等の極性溶媒を用いてもよい。ステップ5の反応スキームを下に示す。
【0268】
【化31】
【0269】
以上、ステップ1乃至5に従って目的物(100)を合成することができる。なお、ステップ1乃至5は実施の形態1で示した反応スキーム(b-1)乃至(b-2)に従ったやり方と同様の合成方法である。化合物(100)の合成方法は、前記に限られるものではなく、例えば、実施の形態1で示した反応スキーム(a-1)乃至(a-2)に従って、始めに4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランと、2,4-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとのモル比1:1のクロスカップリング反応を行い、次いで前記反応で得られる目的物と、4,4,5,5-テトラメチル-2-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフチル]-1,3,2-ジオキサボロランとのクロスカップリング反応を行う事で目的物である化合物(100)を得る事もできる。
【0270】
同様の反応を行う事で化合物(116)、(130)、(105)、(158)、(128)、(121)、(156)についても合成することができる。例えば、ステップ1と同様に下記反応スキーム(1-2)乃至(1-3)を行う事で、任意の位置に置換基を有する2-(ブロモナフチル)トリフェニレンを得ることができる。具体的には、ステップ1において2,6-ジブロモナフタレンの代わりに1,4-ジブロモナフタレンを用いる事で2-(4-ブロモナフタレン-2-イル)トリフェニレンを得ることができ(反応スキーム(1-2))、2,6-ジブロモナフタレンの代わりに1,5-ジブロモナフタレンを用いる事で2-(5-ブロモナフタレン-2-イル)トリフェニレンを得ることができる(反応スキーム(1-3))。反応スキーム(1-2)および(1-3)を以下に示す。
【0271】
【化32】
【0272】
次に、ステップ2と同様に下記反応スキーム(2-2)および(2-3)に従って反応を行う事で、任意の位置に置換基を有する2-4,4,5,5-テトラメチル-2-(トリフェニレニルナフタレン-ジイル)-1,3,2-ジオキサボロランを得ることができる。具体的には、ステップ2において2-(6-ブロモナフタレン-2-イル)トリフェニレンの代わりに2-(4-ブロモナフタレン-2-イル)トリフェニレンを用いる事で4,4,5,5-テトラメチル-2-[4-(トリフェニレン-2-イル)ナフチル]-1,3,2-ジオキサボロランを得ることができ(反応スキーム(2-2)、2-(6-ブロモナフタレン-2-イル)トリフェニレンの代わりに2-(5-ブロモナフタレン-2-イル)トリフェニレンを用いる事で4,4,5,5-テトラメチル-2-[5-(トリフェニレン-2-イル)ナフチル]-1,3,2-ジオキサボロランを得ることができる(反応スキーム(2-3)。反応スキーム(2-2)および(2-3)を以下に示す。
【0273】
【化33】
【0274】
次に、ステップ3と同様に下記反応スキーム(3-2)乃至(3-6)に従って反応を行う事で、任意の位置に置換基を有する4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾキノリニル)-1,3,2-ジオキサボロラン又は、4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾイソキノリニル)-1,3,2-ジオキサボロランを得ることができる。具体的には、2-クロロベンゾ[h]キノリンの代わりに3-ヨードベンゾ[h]キノリンを用いる事で、4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-3-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを得ることができ(反応スキーム(3-2))、2-クロロベンゾ[h]キノリンの代わりに6-クロロベンゾ[h]キノリン又は6-ブロモベンゾ[h]キノリンを用いる事で4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-6-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを得ることができ(反応スキーム(3-3)および(3-4))、2-クロロベンゾ[h]キノリンの代わりに6-クロロフェナントリジン又は6-ブロモフェナントリジンを用いる事で、4,4,5,5-テトラメチル-2-(フェナントリジン-6-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを得ることができる(反応スキーム(3-5)および(3-6))。反応スキーム(3-2)乃至(3-6)を以下に示す。
【0275】
【化34】
【0276】
次に、ステップ4と同様に下記反応スキーム(4-2)および(4-3)に従って反応を行う事で、任意の位置に置換基を有する2-クロロ-4-フェニル-6-(2-トリフェニレニル)ナフチル-1,3,5-トリアジンを得ることができる。具体的には、ステップ4において、4,4,5,5-テトラメチル-2-[6-(2-トリフェニレニル)ナフチル]-1,3,2-ジオキサボロランの代わりに4,4,5,5-テトラメチル-2-[4-(2-トリフェニレニル)ナフチル]-1,3,2-ジオキサボロランを用いる事で2-クロロ-4-フェニル-6-[4-(2-トリフェニレニル)ナフチル-1-イル]-1,3,5-トリアジンを得ることができ(反応スキーム(4-2))、4,4,5,5-テトラメチル-2-[6-(2-トリフェニレニル)ナフチル]-1,3,2-ジオキサボロランの代わりに4,4,5,5-テトラメチル-2-[5-(2-トリフェニレニル)ナフチル]-1,3,2-ジオキサボロランを用いる事で2-クロロ-4-フェニル-6-[5-(2-トリフェニレニル)ナフチル-1-イル]-1,3,5-トリアジンを得ることができる(反応スキーム(4-3))。反応スキーム(4-2)乃至(4-3)を以下に示す。
【0277】
【化35】
【0278】
次に、ステップ5と同様に反応スキーム(5-2)乃至(5-12)に従って反応を行う事で、目的の化合物(130)、(158)、(116)、(105)、(128)、(156)、(121)、(106)、(129)、(157)、(123)を得ることができる。具体的には、4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランの代わりに4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-3-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを用いることで目的の化合物(130)を得ることができ(反応スキーム(5-2))、4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランの代わりに4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-6-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを用いることで目的の化合物(158)を得ることができ(反応スキーム(5-3))、4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランの代わりに4,4,5,5-テトラメチル-2-(フェナントリジン-6-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを用いることで目的の化合物(116)を得ることができ(反応スキーム(5-4))、2-クロロ-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジンの代わりに2-クロロ-4-フェニル-6-[4-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-1-イル]-1,3,5-トリアジンを用いる事で化合物(105)を得ることができ(反応スキーム(5-5))、2-クロロ-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジンの代わりに2-クロロ-4-フェニル-6-[4-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-1-イル]-1,3,5-トリアジンを用い同時に4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランの代わりに4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-3-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを用いる事で化合物(128)を得ることができ(反応スキーム(5-6))、2-クロロ-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジンの代わりに2-クロロ-4-フェニル-6-[4-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-1-イル]-1,3,5-トリアジンを用い同時に4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランの代わりに4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-6-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを用いる事で化合物(156)を得ることができ(反応スキーム(5-7))、2-クロロ-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジンの代わりに2-クロロ-4-フェニル-6-[4-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-1-イル]-1,3,5-トリアジンを用い同時に4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランの代わりに4,4,5,5-テトラメチル-2-(フェナントリジン-6-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを用いる事で化合物(121)を得ることができ(反応スキーム(5-8))、2-クロロ-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジンの代わりに2-クロロ-4-フェニル-6-[5-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-1-イル]-1,3,5-トリアジンを用いる事で化合物(106)を得ることができ(反応スキーム(5-9))、2-クロロ-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジンの代わりに2-クロロ-4-フェニル-6-[5-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-1-イル]-1,3,5-トリアジンを用い同時に4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランの代わりに4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-3-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを用いる事で化合物(129)を得ることができ(反応スキーム(5-10))、2-クロロ-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジンの代わりに2-クロロ-4-フェニル-6-[5-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-1-イル]-1,3,5-トリアジンを用い同時に4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランの代わりに4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-6-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを用いる事で化合物(157)を得ることができ(反応スキーム(5-11))、2-クロロ-4-フェニル-6-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-2-イル]-1,3,5-トリアジンの代わりに2-クロロ-4-フェニル-6-[5-(トリフェニレン-2-イル)ナフタレン-1-イル]-1,3,5-トリアジンを用い同時に4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロランの代わりに4,4,5,5-テトラメチル-2-(フェナントリジン-6-イル)-1,3,2-ジオキサボロランを用いる事で化合物(123)を得ることができる(反応スキーム(5-12))。反応スキーム(5-2)乃至(5-12)を以下に示す。
【0279】
【化36】
【0280】
【化37】
【0281】
【化38】
【0282】
【化39】
【0283】
なお、化合物(116)、(130)、(105)、(158)、(128)、(121)、(156)についても、化合物(100)と同様に実施の形態1に示した反応スキーム(b-1)および(b-2)に従ったやり方と同様の合成方法である。化合物(116)、(130)、(105)、(158)、(128)、(121)、(156)の合成方法は、前記に限られるものではなく、例えば、実施の形態1に示した反応スキーム(a-1)および(a-2)に従って、始めに4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾキノリニル)-1,3,2-ジオキサボロラン又は4,4,5,5-テトラメチル-2-(ベンゾイソキノリニル)-1,3,2-ジオキサボロランと、2,4-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとをモル比1:1でクロスカップリング反応を行い、次いで当該反応で得られる目的物と、4,4,5,5-テトラメチル-2-[6-(トリフェニレン-2-イル)ナフチル]-1,3,2-ジオキサボロランとのクロスカップリング反応を行う事で目的物である化合物(116)、(130)、(105)、(158)、(128)、(121)、(156)を得る事もできる。
【0284】
以上の様に合成される化合物(100)、(116)、(130)、(105)、(158)、(128)、(121)、(156)は、シリカゲルクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、再結晶等により精製し高純度化した後、トレインサブリメーション法による昇華精製を行うことで有機EL素子に好適に用いることができる純度(99.9%以上)に精製することが可能である。本発明の化合物の精製方法はこれらに限られるものではない。
【0285】
続いて、化合物(100)、(116)、(130)、(105)、(158)、(128)、(121)、(156)のHOMO準位およびLUMO準位をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出する方法を以下に示す。
【0286】
測定装置としては電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いることができる。CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705-6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-Bu4NClO4)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製する。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC-3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いる。なお、測定は室温(20~25℃)で行う。また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一し、参照電極に対する酸化電位Ea[V]および還元電位Ec[V]を測定する。Eaは酸化-還元波の中間電位とし、Ecは還元-酸化波の中間電位とする。ここで、用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、-4.94[eV]であることが分かっているため、HOMO準位[eV]=-4.94-Ea、LUMO準位[eV]=-4.94-Ecという式から、HOMO準位およびLUMO準位をそれぞれ求めることができる。
【0287】
化合物(100)、(116)、(130)、(105)、(158)、(128)、(121)、(156)は、分子構造にホールを受け取りやすく酸化されやすい骨格を有さないため、そのHOMO準位は深い値を有すると考えられる。具体的には-6.0eV程度又はそれよりも深いと考えられ、前記CV測定において酸化波が観測されないことも予想される。酸化波が観測されない場合は、LUMO準位は-6.2eVよりも深いと考えられ、ホールブロック性に優れている。一方LUMO準位については、1,3,5-トリアジン骨格を由来とする、-3.0eV程度の値を示すと考えられ上記化合物は電子注入性、電子輸送性ともに非常に優れる。また、1,3,5-トリアジン骨格にベンゾキノリン骨格、又はベンゾイソキノリン骨格が結合することで、よりLUMO軌道が安定化するためLUMO準位は-3.0eVよりも深い値となることも考えられる。また、以上のことから上記化合物のHOMO-LUMOの差を考察すると、3.0eV以上の広いバンドギャップを有すると考えられる。
【0288】
従って、上記一般式(G1)で表される化合物を電子輸送層、電子注入層に用いた発光デバイスは、発光層への電子注入性に優れており、また、ホールブロック性にも優れている。電子輸送性に優れ、且つ発光層からホールが電子輸送層側へ抜けることを防ぐため、高い発光効率と低い駆動電圧を同時に達成することができる。また、本発明の化合物を電子輸送層、電子注入層に用いた発光デバイスの発光層は、発光層への電子注入性に優れているため、発光層のキャリアバランスの調整が重要になる。この場合、発光層の輸送性は1種類のバイポーラ-ホストを用いるより、電子輸送性ホストとホール輸送性ホストの両方を有し、その混合比により発光層のキャリアバランスを最適に調整することが好ましい。また、電子輸送性ホストはLUMO準位が深く、ホール輸送性ホストはHOMO準位が浅いため、これらの性質の材料を混合してホスト材料とすると、電子輸送性ホストのLUMO準位とホール輸送性ホストのHOMO準位との相互作用により、素子を駆動する際に発光層で励起錯体が形成される場合が多い。励起錯体のS1準位とT1準位は非常に近く逆項間交差が可能である。また、励起錯体のS1から発光層ゲスト(りん光発光物質)のT1に直接エネルギー移動が可能なため、励起エネルギーをロスすることなく、高い効率を維持したまま必要最低限の励起状態を経由して発光を得ることができるため駆動寿命の長い素子を得ることができる。
【0289】
従って、本発明の発光デバイスに用いられる発光層ゲスト(発光物質)は、ホストの励起エネルギーを効率よく発光に変換できるりん光発光物質であることが好ましい。また、混合ホストを用いず、バイポーラ-性のホストを用いる場合は、励起錯体と同様の性質を有するTADF(熱活性化遅延蛍光)性のホストを用いる事で、ホストのT1エネルギーを効率的に発光物質へ変換する素子を得ることもできる。以上のような発光層を有する素子は、シングル素子に限らず、タンデム素子においても実現可能である。従って、本発明の化合物は、タンデム素子の電荷発生層(中間層)にも好適に用いる事ができる。
【符号の説明】
【0290】
101:陽極、102:陰極、103:EL層、111:正孔注入層、112:正孔輸送層、113:発光層、113-1:発光領域、114:電子輸送層、114-1:非発光再結合領域、115:電子注入層、116:電荷発生層、117:P型層、118:電子リレー層、119:電子注入バッファ層、201:陽極、202:陰極、210:第1の層、211:第2の層、212:第3の層、300:発光材料の吸収スペクトル、301:励起錯体の発光スペクトル、302:第2の有機化合物の発光スペクトル、303:第1の有機化合物の発光スペクトル、400:基板、401:陽極、403:EL層、404:陰極、405:シール材、406:シール材、407:封止基板、412:パッド、420:ICチップ、501:陽極、502:陰極、511:第1の発光ユニット、512:第2の発光ユニット、513:電荷発生層、601:駆動回路部(ソース線駆動回路)、602:画素部、603:駆動回路部(ゲート線駆動回路)、604:封止基板、605:シール材、607:空間、608:配線、609:FPC(フレキシブルプリントサーキット)、610:素子基板、611:スイッチング用FET、612:電流制御用FET、613:陽極、614:絶縁物、616:EL層、617:陰極、618:発光デバイス、951:基板、952:電極、953:絶縁層、954:隔壁層、955:EL層、956:電極、1001:基板、1002:下地絶縁膜、1003:ゲート絶縁膜、1006:ゲート電極、1007:ゲート電極、1008:ゲート電極、1020:第1の層間絶縁膜、1021:第2の層間絶縁膜、1022:電極、1024W:陽極、1024R:陽極、1024G:陽極、1024B:陽極、1025:隔壁、1028:EL層、1029:陰極、1031:封止基板、1032:シール材、1033:透明な基材、1034R:赤色の着色層、1034G:緑色の着色層、1034B:青色の着色層、1035:ブラックマトリクス、1036:オーバーコート層、1037:第3の層間絶縁膜、1040:画素部、1041:駆動回路部、1042:周辺部、2001:筐体、2002:光源、2100:ロボット、2110:演算装置、2101:照度センサ、2102:マイクロフォン、2103:上部カメラ、2104:スピーカ、2105:ディスプレイ、2106:下部カメラ、2107:障害物センサ、2108:移動機構、3001:照明装置、5000:筐体、5001:表示部、5002:第2の表示部、5003:スピーカ、5004:LEDランプ、5005:操作キー、5006:接続端子、5007:センサ、5008:マイクロフォン、5012:支持部、5013:イヤホン、5100:掃除ロボット、5101:ディスプレイ、5102:カメラ、5103:ブラシ、5104:操作ボタン、5150:携帯情報端末、5151:筐体、5152:表示領域、5153:屈曲部、5120:ゴミ、5200:表示領域、5201:表示領域、5202:表示領域、5203:表示領域、7101:筐体、7103:表示部、7105:スタンド、7107:表示部、7109:操作キー、7110:リモコン操作機、7201:本体、7202:筐体、7203:表示部、7204:キーボード、7205:外部接続ポート、7206:ポインティングデバイス、7210:第2の表示部、7401:筐体、7402:表示部、7403:操作ボタン、7404:外部接続ポート、7405:スピーカ、7406:マイク、9310:携帯情報端末、9311:表示パネル、9313:ヒンジ、9315:筐体
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B1
図9B2
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16