(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】紙シート及びこれを作製する方法
(51)【国際特許分類】
D21H 13/00 20060101AFI20240712BHJP
D21H 13/08 20060101ALI20240712BHJP
D21H 11/00 20060101ALI20240712BHJP
A24D 3/10 20060101ALI20240712BHJP
A24D 3/08 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
D21H13/00
D21H13/08
D21H11/00
A24D3/10
A24D3/08
(21)【出願番号】P 2021532067
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2019084041
(87)【国際公開番号】W WO2020115305
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-07
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518100443
【氏名又は名称】エスダブリュエム・ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジアイ・パン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ギルシェ
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-031546(JP,A)
【文献】特開平11-061612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0329707(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H11/00-27/42
A24D 1/00- 3/18
B01D39/00-41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維と疎水性繊維とを含む紙シートであって、前記セルロース繊維が、前記紙シートの乾燥物質の10質量%~90質量%に相当し、前記疎水性繊維が、前記紙シートの乾燥物質の10質量%~90質量%に相当し、前記セルロース繊維と前記疎水性繊維とが、前記紙シートの乾燥物質の少なくとも50質量%に相当し、
前記疎水性繊維が疎水性ビスコース繊維である、紙シート。
【請求項2】
前記疎水性繊維が、前記紙シートの乾燥物質の少なくとも30質量%に相当し、前記セルロース繊維と前記疎水性繊維とが、前記紙シートの乾燥物質の少なくとも70質量%に相当する、請求項1に記載の紙シート。
【請求項3】
疎水性繊維のセルロース繊維に対する質量比が、2:3~3:2である、請求項1又は2に記載の紙シート。
【請求項4】
前記疎水性ビスコース繊維が、ビスコース繊維と、アルキルケテンダイマー、アルケニルケテンダイマー、アルキル無水コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アルキルグルタル酸無水物、アルケニルグルタル酸無水物、アルキルイソシアネート、アルケニルイソシアネート、脂肪酸無水物、及びこれらの混合物からなる群から選択される疎水性物質とで得られる混合物であり、
前記疎水性ビスコース繊維中の疎水性物質の含有量が、ビスコース繊維に基づいて0.1質量%~13質量%である、
請求項1に記載の紙シート。
【請求項5】
前記セルロース繊維が微細化されており、9°SR~90°SRのショッパーリーグラ度(SR度)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の紙シート。
【請求項6】
結合剤を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の紙シート。
【請求項7】
前記結合剤が、繊維の形状を有する、請求項6に記載の紙シート。
【請求項8】
前記結合剤が、ポリビニルアルコール繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、酢酸セルロース繊維、ナイロン、セルロースエステル繊維、及びこれらの混合物から選択される、請求項7に記載の紙シート。
【請求項9】
70°超の水接触角を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の紙シート。
【請求項10】
ISO 8787:1986に従って、10mm/10分未満の毛管上昇を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の紙シート。
【請求項11】
15g・m
-2~60g・m
-2の坪量を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の紙シート。
【請求項12】
添加剤を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の紙シート。
【請求項13】
フィルタ要素における、請求項1から12のいずれか一項に記載の紙シートの使用。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の紙シートを含む、フィルタ材料。
【請求項15】
a)セルロース繊維と、疎水性繊維と、水とを混合して、水性スラリーを得る工程;
b)傾斜ワイヤ抄紙機又はフラットワイヤ抄紙機上で、前記水性スラリーを湿潤紙に形成する工程; 及び
c)前記湿潤紙を乾燥させて紙シートを得る工程
を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の紙シートを製造するための製紙方法。
【請求項16】
請求項6に記載の紙シートを製造するための、請求項15に記載の製紙方法であって、工程a)の前に、9°SR~90°SRのSR度を有するように前記セルロース繊維が微細化される、製紙方法。
【請求項17】
請求項7又は8に記載の紙シートを製造するための、請求項15又は16に記載の製紙方法であって、結合剤が、工程a)の間若しくは後に水性スラリーに加えられ
るか、又は工程b)の後の湿潤紙若しくは工程c)の後の紙シートの一方の表面若しくは両方の表面に塗布される、製紙方法。
【請求項18】
工程c)の間、湿潤紙を、60℃~175℃の温度において乾燥させる、請求項15から17のいずれか一項に記載の製紙方法。
【請求項19】
工程c)の後、紙シートが、
ひだ寄せされること;
捲縮されること;
型押しされ、ひだ寄せされること;
捲縮され、型押しされ、ひだ寄せされること;
捲縮され、波型をつけられ、ひだ寄せされること、又は
型押しされ、波型をつけられ、ひだ寄せされること
によっても成形される、請求項15から18のいずれか一項に記載の製紙方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性紙シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シガレット等の喫煙用物品は、従来、円柱状のタバコをシガレット紙で巻くことによって作製される。一方の端部に、喫煙用物品は通常、タバコロッドの燃焼によって発生した煙が通過するフィルタ要素を含む。フィルタ要素は、巻き紙に接着されたチッピング紙を使用して、喫煙用物品に取り付けられる。
【0003】
いくつかの例外はあるが、従来のフィルタ要素は典型的には、酢酸セルロースのトウから形成される。しかしながら、酢酸セルロースによって作製されたフィルタは、生分解が非常に遅い。酢酸セルロースの生分解速度の遅さは、フィルタがタバコ製品の使用中に消費されないために、特に厄介である。その結果、捨てられたフィルタ要素は、とりわけ建物の外及び道路沿いなどの環境でよく見かけられる。
【0004】
上記を考慮して、当業者は、酢酸セルロースを他の材料によって置き換えることを試みてきた。例えば、米国特許第5,360,023号では、炭素質材料を組み込んだひだ寄せした紙のウェブから形成された、シガレットのためのフィルタ要素が開示されている。英国特許第2075328号は、ロッド形態において横方向にひだ寄せした、波型をつけた且つ/又はフィブリル化した紙のウェブを含む、タバコ煙フィルタ要素を開示している。
【0005】
当業者には、喫煙用物品のためのフィルタとして紙媒体を使用することによって、複数の利点を提供できることが知られている。例えば、紙製フィルタ要素は速やかに生分解し、紙製フィルタ要素の濾過特性を変化させ、制御することができる。都合の悪いことに、紙製フィルタ要素には複数の欠点がある。例えば、紙製フィルタ要素は、辛口の味(dry taste)を有し、且つ渋み、苦み、えぐみ(harsh)、及び/又は刺激がある煙を発生させることがある。加えて、ある種の煙構成成分を捕捉するには、効率的ではないことがある。これは、紙の強い親水性挙動に起因すると考えられる。これらの煙構成成分としては、フェノール類(例えば、フェノール、クレゾール、及び/又はレゾルシノール)、いくつかの酸、いくつかのアルデヒド(例えばクロトンアルデヒド)、いくつかのケトン、いくつかのエステル、いくつかのアルコール、いくつかのアミド、並びにいくつかのピロールが挙げられる。加えて、紙製フィルタ要素は、酢酸セルロースとは異なる程度で、煙成分を吸収する傾向を有し、この傾向は、焦げた紙の味を有する煙をもたらしうる。米国特許出願公開第2015/001148号は、速やかに生分解する疎水性添加剤によってコーティングされたセルロース繊維を含有するベースウェブを含む、紙製フィルタ要素を開示している。米国特許出願公開第2015/001148号の紙製フィルタ要素の濾過特性は、古典的な紙製フィルタ要素の濾過特性よりも良好であるが、しかしながら、完全に満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5,360,023号
【文献】英国特許第2075328号
【文献】米国特許出願公開第2015/001148号
【文献】米国特許出願公開第2015/0329707号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を考慮して、十分速やかに生分解し、ある種の煙構成成分を効率的に濾過し、酢酸セルロースフィルタに匹敵する官能プロファイルを有する煙を生成する、喫煙用物品又はタバコの非燃焼加熱式スティックのための、フィルタ要素用の紙シートの必要性が存在する。
【0008】
本発明者らは、生分解性材料として使用するのに好適な、酢酸セルロースフィルタ要素を基準として許容される濾過効率及び官能特性を有する、セルロース繊維と疎水性繊維とを含む紙シートを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、セルロース繊維と疎水性繊維とを含む紙シートであって、セルロース繊維が、紙シートの乾燥物質の10質量%~90質量%に相当し、疎水性繊維が、紙シートの乾燥物質の10質量%~90質量%に相当し、セルロース繊維と疎水性繊維とが、紙シートの乾燥物質の少なくとも50質量%に相当する、紙シートを記載する。
【0010】
有利には、本発明の紙シートは、生分解性である。更に、本発明の紙シートは、製紙プロセスによって容易に生産することができ、改善された製紙機械加工性及びフィルタ作製機械加工性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において使用する場合、「疎水性」という用語は、撥水特性を呈する材料又は表面を指す。下により詳細に記載するように、疎水性を決定する1つの有用な方法は、水接触角を測定することである。「水接触角」とは、従来、液体を通じて測定される、液体/蒸気の界面が固体表面に交わる角度である。この角度は実質的に、ヤング式によって記載される、液体による固体表面の濡れ性を定量化する。
【0012】
本明細書において使用する場合、「セルロース繊維」という表現は、例えばアマ又はタバコ等の木材パルプ又は一年生植物のパルプのような、化学的、機械的、又は熱機械的パルプ化プロセスによって得られる、漂白された、又は未漂白のセルロース系植物繊維を指す。「セルロース繊維」という表現はまた、これらの漂白された、又は未漂白のセルロース系植物繊維の混合物を意味することも意図しうる。
【0013】
特定の一実施形態によれば、疎水性繊維のセルロース繊維に対する質量比は、2:3~3:2、特に2:1~1:2、より特定的には1:1である。
【0014】
Svf、すなわち、疎水性繊維の、紙シート内における乾燥物質の質量百分率をSvfmin≦Svf≦Svfmaxとすると、百分率Svfmin及びSvfmaxは、互いに独立に選択され、Svfminは、値10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、及び50%から選択され、Svfmaxは、値50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、及び90%から選択される。
【0015】
好ましくは、Svfminは、値30%、35%、40%、45%、及び50%から選択され、Svfmaxは、値60%、65%、70%から選択される。最も好ましくは、Svfは50%前後である。
【0016】
Scf、すなわち、セルロース繊維の、紙シート内における乾燥物質の質量百分率をScfmin≦Scf≦Scfmaxとすると、百分率Scfmin及びScfmaxは、互いに独立に選択され、Scfminは、値10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、及び50%から選択され、Scfmaxは、値50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、及び90%から選択される。
【0017】
好ましくは、Scfminは25%に等しく、Scfmaxは60%に等しい。最も好ましくは、Scfは50%前後である。
【0018】
Sf、すなわち、セルロース繊維及び疎水性ビスコースの、紙シート内における乾燥物質の質量百分率をSfmin≦Sf≦Sfmaxとすると、百分率Sfmin及びSfmaxは、互いに独立に選択され、Sfminは、値55%、60%、65%、70%、及び75%から選択され、Sfmaxは、値80%、85%、90%、95%、99%、及び100%から選択される。
【0019】
好ましくは、Sfminは54%に等しく、Sfmaxは99.5%に等しい。最も好ましくは、Sfは95%前後である。
【0020】
特定の一実施形態によれば、Svfminは30%、35%、40%、45%、及び50%であり、Sfminは70%である。
【0021】
この特定の実施形態によれば、本発明の紙シートは、疎水性である。有利には、疎水性紙シートから作製されたフィルタ要素は、良好な濾過特性を有し、消費者に許容される味を有する煙を生成する。
【0022】
典型的には、特定の実施形態による紙シートの毛管上昇は、ISO 8787:1986に従って、10mm/10分未満、特に5mm/10分未満、より特定的には0.5mm/10分未満である。
【0023】
典型的には、この特定の実施形態による紙シートによって、1滴の水が吸収されるために必要な時間は、TAPPI T432 (1964)に従って、60秒超、特に120秒超、より特定的には180秒超である。
【0024】
典型的には、この特定の実施形態による紙シートの水接触角は、70°超であり、特に75°~140°であり、より特定的には80°~120°である。
【0025】
本明細書において使用する場合、紙シートの水接触角は、以下のように決定される:
- 紙シートの各面について、TAPPI/ANSI T 558 om-15 (2015)に従って、まず水接触角を0.1秒、1秒、及び10秒の接触時間において測定し、
- 次いで、これら3つの測定した水接触角を平均して、各面についての平均値を得て、
- 紙シートの各面についての平均値を平均することによって、紙シートの水接触角を決定する。
【0026】
典型的には、疎水性繊維のタイターは、0.5dtex~40dtex、特に1dtex~6dtex、より特定的には1.7dtex~3.3dtexである。
【0027】
典型的には、疎水性繊維の長さは、20mm未満、特に1mm~12mm、より特定的には2mm~5mmである。
【0028】
有利には、本発明の紙シートは、疎水性繊維の長さが上記範囲内であるため、より容易に製造することができる。
【0029】
一実施形態によれば、疎水性繊維は疎水性ビスコース繊維である。
【0030】
本明細書において使用する場合、「疎水性繊維」という用語は、撥水特性を呈する繊維を指し、この撥水特性は、沈降試験によって測定される。沈降試験は、特定の量の水中に繊維が沈むまでの時間である。この時間は典型的には、撥水特性を有しないビスコース繊維については、5秒未満である。この時間は典型的には、疎水性ビスコース繊維については、24時間超である。
【0031】
疎水性ビスコース繊維は、例えば米国特許出願公開第2015/0329707号に記載されている。米国特許出願公開第2015/0329707号によれば、この疎水性ビスコース繊維は典型的には、ビスコース繊維と、アルキルケテンダイマー、アルケニルケテンダイマー、アルキル無水コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アルキルグルタル酸無水物、アルケニルグルタル酸無水物、アルキルイソシアネート、アルケニルイソシアネート、脂肪酸無水物、及びこれらの混合物からなる群から選択される疎水性物質とで得られる混合物であり、疎水性ビスコース繊維中の疎水性物質の含有量は、ビスコース繊維に対して0.1質量%~13質量%であり、特に、ビスコース繊維に対して1質量%~ビスコース繊維に対して7.5質量%である。
【0032】
疎水性ビスコース繊維の例は、Kelheim Fibres GmbH社のOLEA(登録商標)ビスコース繊維である。
【0033】
典型的には、セルロース繊維の直径は、0.015mm~0.045mm、特には0.02mm~0.04mmである。
【0034】
典型的には、セルロース繊維の長さは、20mm未満、特に1mm~12mm、より特定的には2mm~5mmである。
【0035】
有利には、本発明の紙シートは、セルロース繊維の長さが上記範囲内であるため、より容易に製造することができる。
【0036】
一実施形態によれば、セルロース繊維は微細化されてもよい。典型的には、微細化セルロース繊維は、9°SR~90°SR、特に10°SR~40°SR、より特定的には15°SR~25°SR、いっそうより特定的には15°SRのショッパーリーグラ度(SR度)を有する。
【0037】
有利には、上記範囲内のSR度を有する微細化セルロース繊維によって、紙シートが下に指定する引張強度を有することができる。
【0038】
典型的には、SR度はISO 5267-1 (2000年7月)に従って測定される。
【0039】
一実施形態によれば、紙シートは、結合剤を更に含んでもよい。
【0040】
結合剤は、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロース、セルロースエステル、アルキル無水コハク酸、ロジン、アクリル系コポリマー、例えばスチレンアクリル系コポリマー、加工デンプン、親水コロイド、例えばゼラチン、及びこれらの混合物から選択されうる。
【0041】
一実施形態によれば、結合剤は繊維の形状を有しうる。典型的には、繊維の形状を有する結合剤は、ポリビニルアルコール(PVOH)繊維、ポリ酢酸ビニル(PVA)繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、酢酸セルロース繊維、ナイロン、セルロースエステル繊維、及びこれらの混合物から選択される。
【0042】
典型的には、結合剤は、本発明の紙シートの乾燥物質の20質量%以下に相当し、特に、本発明の紙シートの乾燥物質の5~15質量%に相当する。
【0043】
有利には、結合剤は、本発明の紙シートの引張強度MD及びCDを上昇させる。したがって、本発明の紙シートのフィルタ作製機械加工性は、結合剤によって更に改善する。
【0044】
更に、結合剤を含む紙シートは一般に、より小さい摩擦をもたらす、より平滑な表面を有する。
【0045】
一実施形態によれば、紙シートは、添加剤を更に含んでもよい。
【0046】
典型的には、添加剤は、本発明の紙シートの乾燥物質の45質量%未満、特に、本発明の紙シートの乾燥物質の22質量%~26質量%に相当する。
【0047】
米国特許出願公開第2015/001148号に記載されているように、添加剤は典型的には、サイジング剤、湿潤剤、選択的濾過剤、及びこれらの混合物から選択される。
【0048】
サイジング剤は、アルキルケテンダイマー、アルケニルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、ロジン(rozine)、及びこれらの混合物でありうる。
【0049】
典型的には、サイジング剤は、本発明の紙シートの乾燥物質の30質量%未満、特に、本発明の紙シートの乾燥物質の5質量%~10質量%に相当する。
【0050】
有利には、サイジング剤は、本発明の紙シートの疎水性、表面強度、及び印刷適正を改善しうる。
【0051】
湿潤剤はポリエーテル、例えば、約500g/mol超、特に500g/mol~3000g/mol、より特定的には500g/mol~1000g/molの平均分子量を有するポリアルキレングリコールでありうる。湿潤剤はまた、モノプロピレングリコール、ソルビトール、グリセリン、トリアセチン、及びこれらの混合物であってもよい。一実施形態では、湿潤剤は、ポリエチレングリコール、又はポリエチレンオキシド、又はメトキシポリエチレングリコール、又はPEG誘導体であってもよい。
【0052】
典型的には、湿潤剤は、本発明の紙シートの乾燥物質の30質量%未満、特に、本発明の紙シートの乾燥物質の5質量%~25質量%、より特定的には、本発明の紙シートの乾燥物質の15質量%~20質量%に相当する。
【0053】
典型的には、選択的濾過剤は、アミノ酸又はアミノ酸塩、特に塩基性アミノ酸又は塩基性アミノ酸塩、及びこれらの組み合わせである。特定の実施形態によれば、選択的濾過剤は、ポリエチレンイミン、ポリ尿素、ポリアミド、官能化繊維、又はアミノ基を有する充填剤でありうる。
【0054】
一実施形態によれば、アミノ酸はグリシン酸塩であってもよい。グリシン酸塩は、塩基性形態であってもよく、グリシン酸ナトリウム等のアルカリ性グリシン酸塩を含んでもよい。使用してもよい他のアミノ酸又はペプチド(アミノ酸の鎖)としては、疎水性側鎖を有するアミノ酸、例えば、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン; 電荷を帯びた側鎖を有するアミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、グルタミン酸; 無電荷の側鎖を有するアミノ酸、例えば、グルタミン、セリン; 非タンパク質性アミノ酸、例えば、シトルリン、オルニチン; 及び任意の他の好適なペプチド又はタンパク質抽出物が挙げられる。これらのアミノ酸はまた、アルカリ形態であってもよく、これらの混合物等であってもよい。
【0055】
別の実施形態によれば、塩基性形態においてアミノ酸を使用するために、アミノ酸は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と反応した塩を含んでもよい。
【0056】
典型的には、選択的濾過剤は本発明の紙シートの乾燥物質の30質量%未満、特に、本発明の紙シートの乾燥物質の10質量%~20質量%に相当する。
【0057】
選択的濾過剤を含む、本発明の紙シートで作製されたフィルタ要素は、様々な構成成分を主流煙から選択的に除去して、煙の味を改善することもできる。例えば、主流煙中に存在しうる様々な煙の毒物、特にフェノール系化合物及び/又はカルボニルを除去することができる。例えば、フィルタ要素によって主流煙から選択的に除去されうるフェノール系化合物としては、フェノール、及びクレゾール等が挙げられうる。
【0058】
有利には、本発明の紙シートの生分解の速度(kinetic)を、添加剤によって加速することができる。
【0059】
具体的な実施形態によれば、本発明の紙シートは、37%~39%の微細化セルロース繊維、37%~39%の疎水性ビスコース繊維、7%~8%のサイジング剤、及び15%~18%の湿潤剤を含んでもよい(%は、本発明の紙シートの乾燥物質の質量による)。
【0060】
別の具体的な実施形態によれば、本発明の紙シートは、27%~29%のセルロース繊維、27%~29%の疎水性ビスコース繊維、15%~25%の結合剤、7%~8%のサイジング剤、及び15%~18%の湿潤剤を含んでもよい(%は、本発明の紙シートの乾燥物質の質量による)。
【0061】
典型的には、本発明の紙シートの引張強度MD(機械方向)は、1500cN/30mm超、特に2000cN/30mm~3500cN/30mm、より特定的には2510cN/30mm~3200cN/30mmである。
【0062】
典型的には、本発明の紙シートの引張強度CD(機械横断方向)は、100cN/30mm超、特に500cN/30mm~2000cN/30mm、より特定的には900cN/30mm~1750cN/30mmである。
【0063】
引張強度は、以下のことを除いて、ISO 1924-2 (2008年12月)に従って測定される:
- 10mm/分(機械方向において)及び30mm/分(機械横断方向において)であり、20mm/分(機械方向及び機械横断方向において)ではない、速度、
- 試験試料の幅は30mmであり、15mmではない。
【0064】
有利には、本発明の紙シートは上記引張強度を有するため、改善されたフィルタ作製機械加工性を有する。
【0065】
典型的には、本発明の紙シートの坪量は、15g・m-2~60g・m-2、特に20g・m-2~50g・m-2、より特定的には25g・m-2~40g・m-2である。
【0066】
典型的には、本発明の紙シートの空隙率は、1000コレスタ単位~50000コレスタ単位、特に5000コレスタ単位~40000コレスタ単位、より特定的には10000コレスタ単位~35000コレスタ単位である。空隙率は、ISO 2965:2009に従って測定される。
【0067】
典型的には、本発明の紙シートの厚さは、0.025mm~0.2mm、特に0.05mm~0.175mm、より特定的には0.07mm~約0.16mmである。
【0068】
その物理的特性のため、本発明の紙シートは有利には、フィルタ要素、特に燃焼式シガレット、タバコの非燃焼加熱式スティック、又は吸入用エアロゾルを発生させることを意図して燃やされる若しくは加熱される、任意の製品のフィルタ要素において使用するように適合される。実際に、本発明の紙シートから作製されたフィルタ要素は、良好な濾過特性を有し、消費者に許容される味を有する煙を生成する。
【0069】
したがって、本発明の紙シートは、フィルタ要素、特に燃焼式シガレット、タバコの非燃焼加熱式スティック、又は吸入用エアロゾルを発生させることを意図して燃やされる若しくは加熱される、任意の製品のフィルタ要素として使用することができる。
【0070】
したがって、本開示は、上に定義した本発明の紙シートを含むフィルタ材料にも関する。
【0071】
一実施形態は、
a)セルロース繊維と、疎水性繊維と、水とを混合して、水性スラリーを得る工程;
b)傾斜ワイヤ抄紙機又はフラットワイヤ抄紙機(flat wire paper machine)上で、水性スラリーを湿潤紙に形成する工程; 及び
c)湿潤紙を乾燥させて紙シートを得る工程
を含む、上に定義した本発明の紙シートを製造するための製紙方法に関する。
【0072】
当業者には、本発明の製紙方法を、上に定義した本発明の紙シートを製造するために適合させる方法は公知である。
【0073】
工程a)の間、セルロース繊維と疎水性繊維とは、従来、水と混合される。
【0074】
工程b)の間、水性スラリーは、フラットワイヤ抄紙機又は傾斜ワイヤ抄紙機の多孔質形成表面上に、特に傾斜ワイヤ抄紙機の多孔質形成表面上に堆積する。多孔質形成表面によって排水され、それによって湿潤紙が形成される。
【0075】
一実施形態によれば、多孔質形成表面は、形成されている湿潤紙にテクスチャを組み込む、織物パターンを含んでもよい。
【0076】
工程c)の間、湿潤紙を、60℃~175℃、特に70℃~150℃、より特定的には80℃~130℃の温度において乾燥させる。
【0077】
本発明の紙シートが微細化セルロース繊維を含む場合、セルロース繊維は、工程a)の前に微細化され、9°SR~90°SR、特に10°SR~40°SR、より特定的には15°SRのSR度を有する。
【0078】
典型的には、セルロース繊維は、紙パルプのための古典的な微細化プロセス、並びに古典的なリファイナー、例えば、ディスクリファイナー及びコニカルリファイナー等を使用して微細化される。
【0079】
当業者には、微細化セルロース繊維が上述のSR度を有するように、微細化プロセス及びリファイナーを適合させる方法は公知である。
【0080】
本発明の紙シートが上に定義した結合剤を含む場合、結合剤は、工程a)の間若しくは後に水性スラリーに加えられるか、又は工程b)若しくは工程c)の後、紙の一方の表面若しくは両方の表面に、すなわち、工程b)の後の湿潤紙若しくは工程c)の後の紙シートに塗布される。
【0081】
典型的には、繊維の形状を有する結合剤は、工程a)の間に水性スラリーに加えられる。
【0082】
当業者には、工程a)の間に水性スラリーに加えられた、繊維の形状を有する結合剤が、乾燥工程c)の間に溶融して、繊維の形状を失いうることは公知である。
【0083】
結合剤を紙に塗布するために、任意の好適な技法を使用してよい。例えば、結合剤は、サイズプレス、噴霧、ナイフコーティング、Meyerロッドコーティング、ダスティング、転写ロールコーターによって、又は任意の好適な印刷プロセスを通じて塗布してもよい。使用してもよい印刷プロセスとしては、フレキソ印刷、及びグラビア印刷等が挙げられる。一実施形態では、結合剤は、紙の片面又は両面の表面積のうち、100%を被覆してもよい。
【0084】
一実施形態では、結合剤を、紙の片面又は両面に印刷することができる。そのパターンが、交互に並ぶ線、又はチェッカーボードのような交互に並ぶ四角形を含んでもよい。この様式では、紙をコーティングするためにより少ない結合剤が使用されるが、利点はすべて依然として残る。例えば、結合剤を、紙の10%~100%の表面積、特に紙の表面積の20%~90%、より特定的には紙の表面積の40%~60%を被覆するように、紙の一方の表面に塗布してもよい。別の実施形態では、結合剤を、紙の厚さ中に分散させて、反応性領域を増加させることができる。
【0085】
紙シートが上に定義した添加剤を含む場合、添加剤は、工程a)の間の水性スラリーにおける水性スラリーに、工程a)の後の水性スラリーに、工程b)の後の湿潤紙に、又は工程c)の後の紙シートに加えられる。
【0086】
典型的には、サイジング剤は、工程a)の間、工程a)の後及び工程b)の前に水性スラリーに適用される、又は工程b)の間に湿潤紙が形成された後、及び工程c)の間のいずれかの有意な乾燥の前に塗布される。
【0087】
典型的には、サイジング剤は、バスサイジングを使用して、サイズプレスを使用して、噴霧を通じて、平滑化プレスの使用を通じて、ゲートロールサイズプレスの使用を通じて、カレンダーサイジングを使用して、又はブレードコーティングを通じて等で湿潤紙に加えられる。サイズプレスを使用してサイジング剤を塗布する場合、サイジング剤を紙シートに押し付け、任意選択で過剰な添加剤又はサイジングを除去するローラーに、新たに形成された湿潤紙を通過させることができる。
【0088】
サイズプレスを使用してサイジング剤を塗布することには、特定の利点がありうる。例えば、サイジング剤は、湿潤紙をより疎水性にすることができ、且つ/又は表面強度若しくは耐水性を改善することができる。この様式では、湿潤紙は、より容易に脱水されうる。
【0089】
当業者には、本発明の製紙方法を、上に定義した、サイジング剤を含む紙シートを製造するために適合させる方法は公知である。
【0090】
典型的には、湿潤剤は、工程b)又は工程c)の後、紙の一方の表面又は両方の表面に、すなわち、工程b)の後の湿潤紙又は工程c)の後の紙シートに塗布される。湿潤剤を紙に塗布するために、任意の好適な技法を使用してよい。例えば、湿潤剤は、サイズプレス、噴霧、ナイフコーティング、Meyerロッドコーティング、ダスティング、転写ロールコーターによって、又は任意の好適な印刷プロセスを通じて塗布してもよい。使用してもよい印刷プロセスとしては、フレキソ印刷、及びグラビア印刷等が挙げられる。一実施形態では、湿潤剤は、紙の片面又は両面の表面積のうち、100%を被覆してもよい。
【0091】
一実施形態では、湿潤剤を、紙の片面又は両面に印刷することができる。そのパターンが、交互に並ぶ線、又はチェッカーボードのような交互に並ぶ四角形を含んでもよい。この様式では、紙をコーティングするためにより少ない湿潤剤が使用されるが、利点はすべて依然として残る。例えば、湿潤剤を、紙の10%~100%の表面積、特に紙の表面積の20%~90%、より特定的には紙の表面積の40%~60%を被覆するように、紙の一方の表面に塗布してもよい。別の実施形態では、湿潤剤を、紙の厚さ中に分散させて、反応性領域を増加させることができる。
【0092】
典型的には、選択的濾過剤は、工程c)の後の紙シートに、サイジング剤として塗布され、又は局所的に塗布することができる。これに関して、選択的濾過剤を、サイジング剤と組み合わせて湿潤紙に塗布することができ、且つ/又は湿潤剤若しくは結合剤と組み合わせて、湿潤紙若しくは工程c)の後の紙シートに塗布してもよい。
【0093】
一実施形態によれば、工程c)の後、紙シートは、ひだ寄せされること(gathered); 捲縮されること(crimped); 型押しされ、ひだ寄せされること; 捲縮され、型押しされ、ひだ寄せされること; 捲縮され、波型をつけられ、ひだ寄せされること; 又は型押しされ、波型をつけられ、ひだ寄せされることによって、成形されてもよい。具体的には、紙を連続的に、横にひだ寄せしてロッド形態にし、所望の長さに切断することができる。有利には、これらの成形する工程は、フィルタ要素の製造につながってもよい。
【0094】
紙シートは、様々な技法を使用して、捲縮され、若しくは型押しされ、且つ/又は波型をつけられてもよい。波型パターンは様々であってよく、波状、方形波、又は鋸歯状の構成(saw tooth configuration)を有することができる。一実施形態では、紙シートを型押しする、捲縮する、且つ/又は波型をつける前に、加湿してもよい。
【実施例】
【0095】
(実施例1)
本発明の紙シートの製造
実施例1-1: 50%の微細化漂白軟材繊維と、50%の疎水性ビスコース繊維とを含み、36g・m-2の乾燥坪量を有する紙シート
疎水性ビスコース繊維は、Kelheim Fibres GmbH社によって製造された、DANUFIL OLEA(登録商標)ビスコース繊維である。これらの繊維は、1.7dtexのタイター及び5mmの長さを有する。
【0096】
漂白軟材繊維を、従来のディスクリファイナーを使用して微細化する。微細化軟材繊維のSR度は、15°SRである。
【0097】
微細化軟材繊維と疎水性ビスコース繊維とを、水とともに混合して、水性スラリーを得る。次いで、水性スラリーを、傾斜ワイヤ抄紙機の多孔質形成表面上に堆積させて、湿潤紙を形成する。次いで、湿潤紙を80℃~100℃で乾燥させて、実施例1-1の紙シートを得る。
【0098】
実施例1-2: 40%の微細化漂白軟材繊維と、60%の疎水性ビスコース繊維とを含み、37g・m-2の乾燥坪量を有する紙シート
疎水性ビスコース繊維は、Kelheim Fibres GmbH社によって製造された、DANUFIL OLEA(登録商標)ビスコース繊維である。これらの繊維は、3.3dtexのタイター及び5mmの長さを有する。
【0099】
漂白軟材繊維を、従来のディスクリファイナーを使用して微細化する。微細化セルロース繊維のSR度は、15°SRである。
【0100】
プロセスは、実施例1-1において記載したものと同じである。
【0101】
実施例1-3: 50%の微細化未漂白軟材繊維と、50%の疎水性ビスコース繊維とを含み、37g・m-2の乾燥坪量を有する紙シート
疎水性ビスコース繊維は、Kelheim Fibres GmbH社によって製造された、DANUFIL OLEA(登録商標)ビスコース繊維である。これらの繊維は、1.7dtexのタイター及び5mmの長さを有する。
【0102】
未漂白軟材繊維を、従来のディスクリファイナーを使用して微細化する。微細化セルロース繊維のSR度は、15°SRである。
【0103】
プロセスは、実施例1-1において記載したものと同じである。
【0104】
実施例1-4: 50%の微細化漂白軟材繊維と、50%の疎水性ビスコース繊維とを含み、26g・m-2の乾燥坪量を有する紙シート
疎水性ビスコース繊維は、Kelheim Fibres GmbH社によって製造された、DANUFIL OLEA(登録商標)ビスコース繊維である。これらの繊維は、1.7dtexのタイター及び5mmの長さを有する。
【0105】
漂白軟材繊維を、従来のディスクリファイナーを使用して微細化する。微細化セルロース繊維のSR度は、15°SRである。
【0106】
プロセスは、実施例1-1において記載したものと同じであるが、26g・m-2の坪量を有する紙シートを得るために、わずかに適合させる。
【0107】
実施例1-5: 49.925%の微細化セルロース繊維と、49.925%の疎水性ビスコース繊維と、0.15%の添加剤を含み、26 g・m-2の乾燥坪量を有する紙シート
漂白セルロース繊維を、従来のディスクリファイナーを使用して微細化する。微細化セルロース繊維のSR度は、15°SRである。
【0108】
疎水性ビスコース繊維は、Kelheim Fibres GmbH社によって製造された、DANUFIL OLEA(登録商標)ビスコース繊維である。これらの繊維は、1.7dtexのタイター及び5mmの長さを有する。
【0109】
紙シートを形成しながら、添加剤(サイジング剤はアルキルケテンダイマーである)を、サイズプレスによって湿潤紙に加えることを除いて、実施例1-1に記載したものと同じプロセスを使用する。
【0110】
実施例1-6: 50%のセルロース繊維と、50%の疎水性ビスコース繊維とを含み、35g・m-2の乾燥坪量を有する実験室規模の紙シート
実験室の機器を使用して、実施例1-6の紙シートを実験室規模において生産した。
【0111】
紙シートは、非微細化セルロース繊維と、実施例1のKelheim Fibres GmbH社により製造されたDANUFIL OLEA(登録商標)ビスコース繊維とによって作製する。
【0112】
実施例1-7: 40%のセルロース繊維と、40%の疎水性ビスコース繊維と、20%のPVA繊維とを含み、35g・m-2の乾燥坪量を有する実験室規模の紙シート
実験室の機器を使用して、実施例1-7の紙シートを実験室規模において生産した。
【0113】
紙シートは、非微細化セルロース繊維と、実施例1のKelheim Fibres GmbH社により製造されたDANUFIL OLEA(登録商標)ビスコース繊維と、1.1dtexのタイター及び4mmの長さを有するPVA繊維とによって作製する。
【0114】
実施例1-8: 50%の微細化未漂白軟材繊維と、50%の疎水性ビスコース繊維とを含み、30g・m-2の乾燥坪量を有する紙シート
- Kelheim Fibres GmbH社。これらの繊維は、1.7dtexのタイター及び5mmの長さを有する。
【0115】
漂白軟材繊維を、従来のディスクリファイナーを使用して微細化する。微細化セルロース繊維のSR度は、15°SRである。
【0116】
プロセスは、実施例1-1において記載したものと同じであるが、30 g・m-2の坪量を有する紙シートを得るために、わずかに適合させる。
【0117】
(実施例2)
実施例1の紙シートの特性評価
実施例1-1~1-5の紙シートの特徴を、下の表1に提示する。
【0118】
5種の紙シートはすべて、
- 5種の紙すべての引張強度MDが、2500cN/30mm超であり、
- 5種の紙すべての引張強度CDが、950cN/30mm超である
ため、フィルタ要素を製造するために容易に使用することができる。
【0119】
更に、これら5種の紙シートの物理的特性は、これらの紙シートを、フィルタ要素におけるフィルタ媒体として使用してもよいものである。
【0120】
実施例1-6~1-7の実験室規模の紙シートの特徴を、下の表2に提示する。
【0121】
【0122】
【0123】
実施例1-8の紙シートの特徴は、次の通りである。
坪量: 31g/m2; 空隙率: 15900コレスタ、引張強度MD: 2150cN/30mm; 引張強度CD: 900cN/30mm; 厚さ:91μm
【0124】
(実施例3)
実施例1の紙シート及び比較例の紙シートの疎水性特性の特性評価
比較例3-1~3-4
- 比較例3-1: 100%の非微細化軟材繊維を含む紙シート; 坪量: 36g/m2
- 比較例3-2: 50%の15°SRのSR度を有する微細化軟材繊維と、50%のビスコース繊維とを含む紙シート; 坪量: 36g/m2
- 比較例3-3: 50%の15°SRのSR度を有する微細化軟材繊維と、50%の酢酸セルロース繊維とを含む紙シート; 坪量: 36g/m2
- 比較例3-4: 不織酢酸セルロース繊維シート; 坪量25g/m2
【0125】
疎水性特性の特性評価
実施例1-1~1-5及び1-8、並びに比較例3-1~3-4の紙シートの疎水性特性を、下の表3に提示する。
【0126】
【0127】
紙シートの毛管上昇は、ISO 8787:1986によって測定される。
【0128】
ウォータードロップは、1滴の水が紙シートによって吸収されるために必要な時間に対応し、1964年のTAPPI T432によって測定される。
【0129】
水接触角は、上に記載したように決定される。
【0130】
比較例3-1~3-3の紙シートは、親水性である。
【0131】
対照的に、実施例1-1~1-5及び1-8の紙シートは、80超の水接触角を有する。これらの紙シートは、疎水性である。
【0132】
表3に提示するように、紙シートに疎水性ビスコース繊維を導入することによって、比較例3-4(100%酢酸セルロース繊維)のように、紙シートが疎水性となる。
【0133】
比較例3-1~3-3を比較することによって、酢酸セルロースの導入又はビスコース繊維の導入は、紙シートを疎水性にしないことがわかる。
【0134】
(実施例4)
実施例1-1の紙シートで作製されるフィルタ要素
実施例1-1の紙シートで作製されるフィルタ要素を製造する。このフィルタ要素をタバコロッドに組み合わせて、シガレットを形成する。
【0135】
比較例3-1の紙シートで作製されるフィルタ要素を製造する。このフィルタ要素をタバコロッドに組み合わせて、シガレットを形成する。
【0136】
2種のシガレットを、官能試験専門家が試験した。
【0137】
実施例1-1の紙シートで作製されたフィルタ要素は、比較例3-1の紙シートで作製されたフィルタ要素と比較して、優れた濾過特性を有し、優秀な官能評価を有する煙を生成する。特に、実施例1-1の紙シートで作製されたフィルタ要素によって生成する煙は、えぐみ及び辛口の味が少ない。