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  • 特許-ヒートシール可能な板紙 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】ヒートシール可能な板紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/82 20060101AFI20240712BHJP
   D21H 19/84 20060101ALI20240712BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20240712BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20240712BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
D21H19/82
D21H19/84
B32B27/10
B32B29/00
B65D65/40 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021541169
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 IB2020050553
(87)【国際公開番号】W WO2020152635
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】1950089-1
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナイフレット、オーサ
(72)【発明者】
【氏名】ボンネラップ、クリス
(72)【発明者】
【氏名】エクベリ、マグナス
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0348318(US,A1)
【文献】特開2009-244591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H11/00-27/42
B32B 1/00-43/00
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール可能な板紙であって、
- 第1の面および第2の面を含む板紙基材(1)、
- 板紙基材(1)の第1の面上に配置された第1の分散液コーティング層(2)、および
- 第1の分散液コーティング層(2)上に配置された第2の分散液コーティング層(3)を含み、
第1の分散液コーティング層(2)がラテックスおよび顔料を含み、第2の分散液コーティング層(3)がポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーを含むことを特徴とする、ヒートシール可能な板紙。
【請求項2】
前記ラテックスが、スチレン-アクリラートラテックス、スチレン-ブタジエンラテックス、またはそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の板紙。
【請求項3】
前記第1の分散液コーティング層(2)が、層の乾燥固形分に基づいて30重量%以上から70重量%以下の範囲の量のラテックスを含む、請求項1または2に記載の板紙。
【請求項4】
前記第1の分散液コーティング層(2)が、層の乾燥固形分に基づいて30重量%以上から70重量%以下の範囲の量の顔料を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の板紙。
【請求項5】
前記顔料が、クレーおよび/またはタルクから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の板紙。
【請求項6】
前記第2の分散液コーティング層(3)が、層の乾燥固形分に基づいて90重量%以上から100重量%以下の範囲の量のポリオレフィンを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の板紙。
【請求項7】
前記第2の分散液コーティング層(3)が、層の乾燥固形分に基づいて0重量%以上から5重量%以下の範囲の量の共バインダーを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の板紙。
【請求項8】
前記共バインダーがラテックスである、請求項7に記載の板紙。
【請求項9】
前記板紙基材(1)が、第2の面上に第3の分散液コーティング層(4)を含み、この第3の分散液コーティング層(4)が、層の乾燥固形分に基づいて50重量%以上から100重量%以下の範囲の量のポリオレフィンを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の板紙。
【請求項10】
前記第3の分散液コーティング層(4)が、層の乾燥固形分に基づいて0重量%以上から50重量%以下の範囲の量で、一緒に存在するラテックスおよび顔料を含む、請求項9に記載の板紙。
【請求項11】
前記板紙基材(1)が、第2の面上に第3の分散液コーティング層(4)を含み、この第3の分散液コーティング層(4)が、層の乾燥固形分に基づいて90重量%以上から100重量%以下の範囲の量のポリオレフィンを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の板紙。
【請求項12】
前記板紙基材(1)が、第2の面上に第3の分散液コーティング層(4)を含み、かつ第3の分散液コーティング層上に第4の分散液コーティング層(5)を含み、この第3の分散液コーティング層(4)がラテックスおよび顔料を含み、この第4の分散液コーティング層(5)がポリオレフィンを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の板紙。
【請求項13】
前記板紙が以下の特性を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の板紙:
- 5%以上の破断点伸び(CD、ISO1924-2に従う引張強度により測定)、および/または
- 10g/m下の吸水率(COBB600、SCAN試験P12:64に従って測定)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のヒートシール可能な板紙を含むか、またはそれから作製された包装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされた紙または板紙に関するものであり、特に、液体または冷凍食品用の包装材料として使用され得るヒートシール可能な板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
液体または冷凍食品用の包装(パッケージ)またはカップに使用される繊維ベースの材料は、通常、包装された品物に面する内面上と、包装の印刷面を提供する外面上の両方にバリアコーティングが施されている。内面上にバリアコーティングが施されていることによって、その材料は、例えば液体、グリース、酸素および/または芳香に耐久性を有するものとなり、包装材料上での被包装物の影響に耐えることが可能になる。バリアコーティングはまた、ヒートシール(熱封止)可能である必要がある。板紙のバリアコーティングとしては、長い間、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの低コストで入手が容易なポリオレフィンとのラミネート加工が主流であった。今日、ポリ乳酸(PLA)などの他のバイオベースのポリマーを含む、ポリオレフィンのバイオベースのバージョンも使用されている。液体包装板は、通常、両面にラミネートポリマーコーティングが施され、多くの場合、内面上に追加のアルミニウムコーティング層が与えられている。
【0003】
ポリオレフィンとアルミニウム箔のいくつかの層を含む押出コーティングされた包装材料は、板紙からプラスチックコーティングを分離する際の問題のために再パルプ化するのが難しい。これにより、ポリマー微粒子の水性分散液が板紙の表面上に適用されている、分散液バリアコーティング処理された板紙への関心が高まっている。これらのコーティングは、例えば、スチレン-アクリラート(SA)もしくはスチレン-ブタジエン(SB)ラテックスまたはポリオレフィン分散液に基づくものであり得る。バリア特性を提供する再パルプ化可能な材料に関して、様々な分散液コーティング処理された板紙材料が開示されてきた。例えば、WO2015/155413Alは、少なくとも一方の面上に厚紙層およびコーティング層を含み、バインダーおよびスレート様鉱物顔料を含む厚紙とコーティング層との間にバリア層が配置されたコーティング食品用厚紙を開示している。このコーティング層は、光屈折顔料または顔料およびバインダーの混合物を含み、これは、例えば、ブタジエン-スチレン系コポリマーなどのポリマーの合成ラテックスであり得る。米国特許第9771688号は、それぞれがバインダーおよび顔料を含むベースコートおよびトップコートを含むコーティングされた板紙を開示している。この教示は、バインダーとしてスチレン-アクリラートコポリマーまたはスチレン-ブタジエンコポリマーに言及している。EP2358942は、水性ポリマー分散液から形成された第1および第2のコーティング層でコーティングされたリサイクル可能なコーティング板紙を開示し、ここで、各層は、約70~約90重量%のポリマーエマルジョンおよび10~約30重量%の顔料からなる。この教示は、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、スチレンおよびブタジエンのコポリマー、酢酸ビニルポリマー、ポリビニルアルコール、またはポリエチレン酢酸ビニルであって顔料を含むもののコーティングのみに言及している。WO2018/116118A1は、印刷面上に第1および第2の分散液バリア層を含むヒートシール可能な包装材料を開示し、ここで、両方の分散液バリア層は、ラテックス、好ましくはスチレン-ブタジエンまたはスチレン-アクリラートラテックスを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分散液バリアコーティングが施された板紙に関連する1つの問題は、包装への転化中にコーティングに亀裂が入り、それにより折りたたみ線の箇所でバリアが劣化する可能性があることである。したがって、再パルプ化可能であり、湿分および液体に対する必要なバリアを提供し、良好な機械的特性を有する、液体または食品用の包装またはカップの製造に好適なコーティングされた板紙の必要性が未だに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、ヒートシール可能な板紙、ヒートシール可能な板紙を製造する方法、および本発明の独立請求項によるヒートシール可能な板紙を含むか、またはヒートシール可能な板紙から作製された包装を提供することである。従属請求項は、好ましい実施形態に関連している。文脈で明確に示されていない限り、これらは自由に組み合わせることができる。
【0006】
本発明は以下を提供する:
ヒートシール可能な板紙であって、
- 第1の面および第2の面を含む板紙基材、
- 板紙基材の第1の面上に配置された第1の分散液コーティング層、および
- 第1の分散液コーティング層上に配置された第2の分散液コーティング層を含み、
第1の分散液コーティング層がラテックスおよび顔料を含み、第2の分散液コーティング層がポリオレフィンを含む、ヒートシール可能な板紙。
【0007】
ヒートシール可能な板紙は、基板(ベースボード)と接触するラテックスおよび顔料を含む第1のコーティング、ならびに、それから形成された包装の内面を成す面上に分散液コーティングされたポリオレフィンを含む第2のコーティングを包含する二重コーティングを含む。第1および第2の分散液コーティング層のこの組み合わせは、いくつかの利点を達成する。板紙は、良好なヒートシール性、良好なバリア性、および優れた機械的特性を与える。驚くべきことに、板紙は、コーティング内に形成された亀裂の問題を軽減するか、またはそのような問題を生じることさえなく、包装に転化され得ることが見出された。これは、高い破断点伸びを含めた有利な機械的特性によって可能になると考えられる。特定の理論に拘束されることなく、ラテックスおよび顔料の第1の分散液コーティング層のプレコーティングは、ポリオレフィン分散液の第2の層が板紙基材の内部に浸透するのを妨げ、それによって均一な厚みの平滑なコーティングが達成されると想定され、これが高い機械的特性に寄与すると考えられる。
【0008】
ヒートシール可能な板紙の表面が低摩擦性を示し、それによって、その板紙から形成された包装またはカップの転化および取り扱いが容易になることは更に重要な利点である。これは、包装やカップの積み重ねに特に有利である。さらに、板紙は再パルプ化可能であり、板紙またはそれから作製された包装の再パルプ化における不合格品(reject:拒絶品)の割合は、乾燥重量に基づいて10重量%未満であり得る。板紙はさらに食品の安全基準を充足させる。
【0009】
本明細書で使用される場合、「板紙基材」または「基板」(“baseboard”:ベースボード)は、少なくとも部分的に、野菜(植物)、木材、および/または合成繊維を包含し得る繊維の融合体の紙ベースの基材を指す。板紙基材は、好ましくはセルロース繊維を含む。包装材料に使用される典型的な板紙基材は、少なくとも1つの層、好ましくはいくつかの層を含む。板紙基材は、好ましくは、裏面層(バックプライ)および頂部層(トッププライ)の少なくとも2つの層を含む多層板紙である。板紙基材は、1つまたは複数の中間層をさらに含み得る。板紙基材は、例えば、頂部層、裏面層および中間層を含み得る。
【0010】
紙層またはコーティング層の坪量は、平方メートルあたりのグラム数、gsmまたはg/mとして表される重量を指す。本明細書で用いられるとき、gsmおよびg/mは交換可能に使用され得る。
【0011】
本明細書で使用される場合、「分散液コーティング層」は、板紙基材上に分散液コーティングによって適用(塗布)された層を指す。本明細書で使用される場合、「分散液コーティング」は、ポリマー微粒子の水性分散液が紙または板紙の表面に適用されて、乾燥後に固体の実質的に非多孔質のフィルムが形成されるコーティング技術を指す。分散液コーティング層は、ローラーコーティング、スプレーコーティング、カーテン、ブレードコーティング、スロットコーティング、浸漬コーティング、グラビアロールコーティング、リバースダイレクトグラビアコーティング、ロッドコーティング、ソフトチップブレードコーティング、および/またはそれらの組み合わせを使用することによって適用され得る。好ましいコーティング方法は、ブレードコーティングおよびロッドコーティングである。分散液コーティングはリサイクルされ得る。本明細書で使用される場合、「分散液コーティングされたポリオレフィン」(“dispersion coated polyolefin”)は、分散液コーティングによって適用されたポリオレフィンを指す。
【0012】
分散液コーティングは、板紙基材にバリア特性を与える層を適用するために使用され得る。本明細書で使用される場合、「バリアコーティング層」または「バリア層」は、透過性、例えば、材料を通る酸素などのガスの透過性および/または繊維構造における液体の吸収を低減または排除することによって板紙基材にバリア特性を与えるコーティング層を指す。液体などの被包装製品の流出を防ぎ、被包装製品の品質を低下させる可能性のある酸素、湿分、グリース、オイルまたはその他の混入物質の包装内への侵入を防ぐために、バリアコーティングが必要とされる。
【0013】
「印刷面」は、印刷に適合した表面を定義することを意味する。したがって、板紙の「印刷面」とは、板紙から形成された包装の外側面を指す。板紙の「内面」層(“inside” layer:「内側」層)とは、板紙から形成された包装の内容物と接触することを意図した面(側)を指す。第1の面および第2の面を含む板紙基材に言及するとき、第1の面は板紙基材から形成された包装の「内面」または「裏面」を指し、第2の面は「印刷面」を指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、「顔料」は、製紙業界で通常言及されるように、製紙に使用される粘土(クレー)、チョークまたはカオリンなどの増量剤、充填剤およびコーティングを指す。
【0015】
特に明記しない限り、与えられた%は重量%であり、それは、層、プライまたは包装などのそれぞれの対象物の100重量%の乾燥重量に基づいて計算される。層、プライまたは包装の全ての成分の合計量は100重量%を超えない。
【0016】
本明細書で表される板紙の機械的特性の尺度を与える破断点伸び(CD)は、ISO1924-2に従った引張強度によって測定される。
【0017】
吸水率(COBB600)は、SCAN試験P12:64(1964)に従って測定される。
【0018】
包装材料の再パルプ化から得られた不合格品(reject:拒絶品)の割合は、PTS試験方法RH021/97に従って測定される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態によるヒートシール可能な板紙の概略図である。
図2図2は、本発明の別の実施形態によるヒートシール可能な板紙の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、様々な実施形態および他の態様に関連してさらに説明される。文脈で明確に示されていない限り、これらは自由に組み合わせることができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「ラテックス」は、スチレン-ブタジエンラテックス、スチレン-アクリラートラテックス、アクリラートラテックス、酢酸ビニルラテックス、酢酸ビニル-アクリラートラテックス、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルラテックス、スチレン-アクリラート-アクリロニトリルラテックス、スチレン-ブタジエン-アクリラート-アクリロニトリルラテックス、スチレン-無水マレイン酸ラテックス、スチレン-アクリラート-無水マレイン酸ラテックス、またはこれらのラテックスの混合物を含む群から選択されるポリマー粒子の水性懸濁液から適用またはコーティングされたポリマーを指す。ラテックスは、天然ポリマー、合成ポリマー、バイオマス由来の合成ポリマーまたはそれらの組み合わせであり得る。ラテックスは、バイオベース、すなわち、バイオマスに由来するものであってよく、例えばバイオベースのスチレン-アクリラートラテックスまたはスチレン-ブタジエンラテックスであってよい。バイオベースのラテックスは、同様の性能を与え、カーボンフットプリントを改善することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の分散液コーティング層のラテックスは、スチレン-アクリラート(SA)ラテックス、スチレン-ブタジエン(SB)ラテックス、またはそれらの混合物から選択される。好ましくは、第1の分散液コーティング層は、唯一のバインダーとしてラテックスを含み得る。ヒートシール可能な板紙のいくつかの実施形態では、第1の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分に基づいて、30重量%以上から70重量%以下の範囲の量のラテックスを含む。第1の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分に基づいて、約40重量%の量のラテックスを含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分に基づいて30重量%以上から70重量%以下の範囲の量の顔料を含む。第1の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分に基づいて、55重量%以上から70重量%以下の範囲の量の顔料または約60重量%の量の顔料を含み得る。顔料は、分散液コーティング層のバリア特性を改善することができる。顔料の量が多いと、低いコーティング重量で効率的なバリア形成が可能になる。いくつかの実施形態では、顔料は、粘土(クレー)および/またはタルクから選択される。これらの顔料は、食品の安全性の理由から好まれる。粘土はカオリンクレーであり得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の分散液コーティング層は、5g/m以上から15g/m以下の範囲の坪量を有する。好ましくは、第1の分散液コーティング層は、5g/m以上から10g/m以下の範囲の坪量を有する。基板に接触するラテックスおよび大量の顔料を含む層は、低いコーティング重量にて好適なバリア特性を与えることができる。
【0025】
第1の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分100重量%に基づいて、30~70重量%の量のラテックスおよび70~30重量%の量の顔料、好ましくは約60重量%の量の顔料を含み得る。第1の分散液コーティング層は、ラテックスおよび顔料を含む内側バリア層を提供し、これは一方の面上で板紙に接触し、他方の面上で第2の分散液コーティング層に接触する。ラテックスおよび顔料のプレコーティングは、有利には、ポリオレフィン分散液の追加の層が板紙基材中に浸透するのを妨げることができる。それにより、第2の内側層の均一な厚みを有する平滑なコーティングを達成することができ、これは、コーティングされた板紙の高い機械的特性に寄与すると考えられる。
【0026】
第2の分散液コーティング層は、分散液コーティングされたポリオレフィンを含む。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、および/またはポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーの群から選択される。これらのポリマーは、高い耐湿性や低いヒートシール温度などの望ましい特性を与える。好ましい実施形態では、第2の分散液コーティング層は、ポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーを含む。特にポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーは、食品用包装に有利なヒートシール性を与える。
【0027】
いくつかの実施形態では、第2の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分に基づいて90重量%以上から100重量%以下の範囲、好ましくは90重量%以上から98重量%以下の範囲の量のポリオレフィンを含む。第2の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分に基づいて、95重量%以上から100重量%以下の範囲の量のポリオレフィンを含み得る。ポリオレフィンの量が多いと、ヒートシール性にさらに寄与する。
【0028】
第2の分散液コーティング層は、好ましくは顔料を含まない。第2の分散液コーティング層は、好ましくは少量の共バインダー(補助結合剤)を含み得る。共バインダーは、デンプン、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびラテックスから選択され得る。好ましくは、共バインダーはラテックスである。好ましくは、ラテックスは、スチレン-ブタジエンラテックス、スチレン-アクリラートラテックス、またはそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態では、第2の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分に基づいて、0重量%以上から5重量%以下の範囲、好ましくは1重量%以上から5重量%以下の範囲の共バインダーを含む。
【0029】
第2の分散液コーティング層は、添加剤を含み得る。添加剤は、保水剤、レオロジー調整剤、消泡剤、脱泡剤、pH調整添加剤、架橋剤、増粘剤、分散助剤、スリップ添加剤、充填剤、離型剤、防腐剤およびブロッキング防止剤の群から選択することができる。好ましくは、添加剤は、保水剤、レオロジー調整剤、消泡剤、架橋剤、pH調整添加剤または増粘剤から選択される。第2の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分に基づいて、0重量%以上から5重量%以下の範囲、好ましくは1重量%以上から5重量%以下の範囲の添加剤を含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、第2の分散液コーティング層は、5g/m以上から15g/m以下の範囲の坪量を有する。好ましくは、第2の分散液コーティング層は、5g/m以上から10g/m以下の範囲の坪量を有する。有利なことに、内側のポリオレフィン層は、低いコーティング重量で適用することができる。
【0031】
したがって、それから形成された包装の内面(内側)を形成する側で、板紙は、基板と接触するラテックスおよび顔料を含む第1の層、ならびに、分散液コーティングされたポリオレフィンを含む第2の層の二重コーティングを含む。有利なことに、それ以上の内側層は必要ない。第1および第2の分散液コーティング層は、好ましくは、板紙の内面上の唯一のコーティング層である。第2の内面コーティングは、好ましくは、それから形成された包装またはカップの内容物と接触している。
【0032】
板紙基材は、第2の面を含む。コーティングされた板紙から形成された包装では、この第2の面が外側を向き、包装の印刷面を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態では、板紙基材は、第2の面上に第3の分散液コーティング層を含み、この第3の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分に基づいて50重量%以上から100重量%以下の範囲の量の分散液コーティングされたポリオレフィンを含む。ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、および/またはポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーから選択することができる。内面上と印刷面上で使用されるポリマーは同じでもよいし、異なるポリマーも使用され得る。この実施形態では、印刷面層は、ラテックスおよび顔料をさらに含み得る。この実施形態では、第3の分散液コーティング層はラテックスおよび顔料を含み、これらは合計で層の乾燥固形分に基づいて0重量%以上から50重量%以下の範囲の量で存在する。第3の分散液コーティング層のラテックスは、スチレン-アクリラートラテックス、スチレン-ブタジエンラテックス、またはこれらの混合物から選択することができる。第1および第3の分散液コーティング層のラテックスは同じであってもよいし、または異なるラテックスをそれぞれの層に使用することもできる。顔料は、好ましくは、クレー(粘土)および/またはタルクから選択される。この実施形態では、第3の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分に基づいて0重量%以上から10重量%以下の範囲の添加剤を含み得る。添加剤は、保水剤、消泡剤、架橋剤、pH調整添加剤または増粘剤から選択することができる。この実施形態では、印刷面を形成するための第3の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分100重量%に基づいて、50%~100重量%の範囲の分散液コーティングされたポリオレフィン、50%~0重量%の範囲のラテックスおよび顔料、ならびに0~10重量%の範囲の添加剤を含み得る。このコーティングは、印刷に好適な表面を提供する。このコーティングは、低温の液体の包装に使用される場合、結露に対するバリアをさらに提供する。有利なことに、それ以上の印刷面層は必要ない。この実施形態では、第3の分散液コーティング層は、好ましくは、板紙の印刷面上の唯一のコーティング層である。この実施形態では、第3の分散液コーティング層は、好ましくは最も外側の印刷可能なコーティングを形成する。
【0034】
代替の一実施形態では、板紙基材は、第2の面上に第3の分散液コーティング層を含み、この第3の分散液コーティング層は、層の乾燥固形分に基づいて90重量%以上から100重量%以下の範囲、好ましくは95重量%以上から100重量%以下の範囲の量のポリオレフィンを含む。この実施形態では、印刷面上の第3の分散液コーティング層は、好ましくは、第1の面上の第2の分散液コーティング層と同様に設計されるか、またはそれに対応する。この実施形態の第3の分散液コーティング層の説明については、上記の第2の分散液コーティング層の説明を参照されたい。ポリオレフィンは、第2の分散液コーティング層のポリオレフィンと同じであっても異なっていてもよく、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、および/またはポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーから選択され得る。ポリオレフィンは、好ましくはポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーであり、この第3の分散液コーティング層は、好ましくは顔料を含まない。
【0035】
この実施形態では、ヒートシール可能な板紙は、板紙基材を含み得、紙板基材の第1の面は、40重量%のラテックスおよび60重量%の顔料を含む第1の分散液コーティング層、ならびに第1の分散液コーティング層上の第2の分散液コーティング層でコーティングされ、この第2の分散液コーティング層は95重量%以上から100重量%以下のポリオレフィンを含み、かつ好ましくは顔料を含まず、ここで、板紙基材の第2の面すなわち印刷面は、95重量%以上から100重量%以下のポリオレフィンを含み、かつ好ましくは顔料を含まない第3の分散液コーティング層でコーティングされる(ここでの全ての重量%はそれぞれの層の乾燥固形分に基づく)。このような実施形態は、ヒートシール可能な板紙から形成されたカップなどの包装の面材料として特に有用である。
【0036】
さらなる代替の実施形態では、板紙基材は、第2の面上に、第3の分散液コーティング層および第3の分散液コーティング層上の第4の分散液コーティング層を含み、ここで、第3の分散液コーティング層はラテックスおよび顔料を含み、第4の分散液コーティング層はポリオレフィンを含む。この実施形態では、印刷面上の第3の分散液コーティング層は、好ましくは、第1の面上の第1の分散液コーティング層と同様に設計されるか、またはそれに対応する。同様に、第4の分散液コーティング層は、好ましくは、第1の面上の第2の分散液コーティング層と同様に設計されるか、またはそれに対応する。従って、この実施形態は、好ましくは、板紙基材の両面上に分散液コーティング層の対称的な配置を提供する。この実施形態の第3および第4の分散液コーティング層の説明は、それぞれ、第1および第2の分散液コーティング層について上述された事項を参照されたい。
【0037】
この実施形態では、ヒートシール可能な板紙は、好ましくは板紙基材を含み得、ここで紙板基材の第1の面は、40重量%のラテックスおよび60重量%の顔料を含む第1の分散液コーティング層、ならびに第1の分散液コーティング層上の第2の分散液コーティング層でコーティングされ、この第2の分散液コーティング層は95重量%以上から100重量%以下のポリオレフィンを含み、好ましくは顔料を含まず、板紙基材の第2の面は、40重量%のラテックスおよび60重量%の顔料を含む第3の分散液コーティング層、ならびに第3の分散液コーティング層上の第4の分散液コーティング層でコーティングされ、この第4の分散液コーティング層は、95重量%以上から100重量%以下のポリオレフィンを含み、好ましくは顔料を含まない(ここでの全ての重量%はそれぞれの層の乾燥固形分に基づく)。
【0038】
したがって、それから形成された包装の内面を成す面上に、この実施形態の板紙は、基板と接触するラテックスおよび顔料を含む第1の層、ならびに分散液コーティングされたポリオレフィンを含む第2の層の二重コーティングを含み得る。第1および第2の分散液コーティング層は、好ましくは、板紙の内面上の唯一のコーティング層である。第2の内面コーティングは、好ましくは、それから形成された包装またはカップ中の内容物と接触する。したがって、それから形成された包装の外面を成す面上に、この実施形態の板紙はまた、基板と接触するラテックスおよび顔料を含む第3の層、ならびに分散液コーティングされたポリオレフィンを含む第4の層の二重コーティングを含む。第3および第4の分散液コーティング層は、好ましくは、板紙の外面上の唯一のコーティング層である。このような実施形態は、ヒートシール可能な板紙から形成されたカップなどの包装の底部材料として特に有用である。
【0039】
板紙基材は、好ましくは、頂部層および裏面層ならびに1つまたは複数の中間層を含む多層板紙である。中間層はバルクを提供することができる。好ましくは、基板とも称される板紙基材は、頂部層、中間層および裏面層を含む3層板紙である。板紙基材は、約150gsm、好ましくは約200gsm、または約300gsmの坪量を有し得る。多層板紙は、液体および/または食品用の包装に特に好適である。1つまたは複数の中間層は、有利なことには、バルクを提供する硫酸塩/クラフトパルプおよびCTMPを含むことができる。パルプは、漂白されていなくても、漂白されていてもよい。中間層は、化学熱機械パルプ(CTMP)または熱機械パルプ(TMP)に由来する繊維を含み得る。好ましくは、中間層は、硫酸塩パルプおよびCTMPを含む。頂部層および裏面層は、好ましくは硫酸塩パルプを含む。頂部層および裏面層は、好ましくは、CTMP繊維を含まない。板紙基材の第1の面は内面/裏面になることができ、一方、第2の面はそれから形成された包装の印刷面になることができる。
【0040】
基板は表面サイジングされていてよい。特に、板紙基材の頂部層および/または裏面層は、未処理であるか、または、片面上または両面上にて、例えばデンプンの薄層により表面サイジングされていてよい。表面サイジングは、コーティング層を適用する前に適用される。表面サイジングは、加工デンプンを含むか、それからなるか、またはアクリルコポリマーなどの表面サイジング剤を含み得る。表面サイジングは、分散液コーティングのバリア特性をさらに増進させる。
【0041】
ヒートシール可能な板紙は、有利なことには優れた機械的特性を与える。
いくつかの実施形態では、板紙は以下の特性を有する:
- 5%以上、好ましくは6%以上もしくは7%以上の、ISO1924-2に従う引張強度によって測定された破断点伸び(CD)、および/または
- 10g/m以下、好ましくは5g/m以下の、SCAN試験P12:64に従って測定された吸水率(COBB600)。
吸水率は、板紙のコーティングされた第1の面上で、すなわち、それから形成された包装の裏面/内面を形成する面の上で測定される。
【0042】
高い破断点伸びを含むこれらの機械的特性により、コーティングに亀裂が生じる問題を起こすことなく、板紙を包装に転化することが可能になる。
【0043】
さらに、構造物の表面は、有利なことに低摩擦を示す。いくつかの実施形態では、板紙は、印刷面に対する内面上の測定により5未満の静摩擦係数(平均)を与える。静摩擦係数は、傾斜面を使用したスライド角度の測定を指し、コーティングされた板紙の場合ISO15359:1999に従って測定され得る。低い静摩擦係数は、例えば、包装またはカップの積み重ねのために、板紙から形成された包装またはカップの取り扱いを容易にする。
【0044】
板紙または板紙から作製された包装は、一般的な再パルプ化技術を使用して他の紙製品にリサイクルすることができる。再パルプ化では、セルロース繊維が分離され、洗浄後にリサイクルされ得る。再パルプされていない画分は、不合格品(拒絶品)と称される。不合格品は、廃棄または燃焼のために取り除く必要がある。PTS試験方法RH021/97に従って測定される、板紙の再パルプ化から生じた不合格品の割合は、板紙の乾燥重量100重量%基づいて、12重量%未満、好ましくは10重量%未満、好ましくは7重量%未満または5重量%未満であり得る。板紙は、非常に良好な再パルプ化性を示す。したがって、当該板紙は再パルプ化可能な板紙を提供する。
【0045】
板紙は、有利なことにバリア特性を提供し、ヒートシール可能であり、再パルプ化可能であり、転化のための良好な機械的特性を与える。したがって、板紙は、冷凍食品用だけでなく、低温および高温の液体または食品用の両方の包装に使用するのに好適である。板紙はさらに、積み重ねられたときに、それから形成された包装の取り扱いを容易にし、食品の安全要件を満たす。
【0046】
本発明はさらに以下に関する:
ヒートシール可能な板紙を製造する方法であって、
- 第1の面および第2の面を含む板紙基材を提供するステップ、
- 板紙基材の第1の面上に第1の分散液コーティング層を適用するステップ、
- 第1の分散液コーティング層上に第2の分散液コーティング層を適用するステップ、および
- 任意選択で、板紙基材の第2の面上に第3の分散液コーティング層を適用するステップを含み、
第1の分散液コーティング層がラテックスおよび顔料を含み、第2の分散液コーティング層がポリオレフィンを含む、ヒートシール可能な板紙を製造する方法。
【0047】
この方法は、第3の分散液コーティング層上に第4の分散液コーティング層を適用することをさらに含み得る。この分散液コーティング層の説明については、上記の説明を参照されたい。分散液コーティング層は、分散液コーティングによって形成される。分散液層は、ローラーコーティング、スプレーコーティング、カーテン、ブレードコーティング、スロットコーティング、浸漬コーティング、グラビアロールコーティング、リバースダイレクトグラビアコーティング、ロッドコーティング、ソフトチップブレードコーティング、および/またはそれらの組み合わせの使用などの一般的な方法によって適用することができる。好ましくは、コーティング方法は、ブレードコーティングまたはロッドコーティングである。この方法は、上述のようにヒートシール可能な板紙を製造するために使用可能である。
【0048】
本発明はさらに、上記のヒートシール可能な板紙を含むか、またはそれから作製された包装に関する。包装は、好ましくは、上記の板紙のヒートシール(熱封止)を使用することによって作製される。ヒートシール可能な板紙は、ヒートシール以外の方法でシールすることもできるが、食品用包装の分野ではヒートシールが広く使用されている。特に、包装は、冷凍食品用だけでなく、低温の液体または食品および高温の液体または食品用の両方の容器として使用可能である。包装は、カップなどの飲料用容器として使用することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、包装は、上記のヒートシール可能な板紙の2つの異なる実施形態から製造することができる。カップなどの包装の底部は、上記の第1、第2、第3および第4の分散液コーティング層を含むヒートシール可能な板紙から製造することができる一方、側面の材料は、第1、第2および第3の分散液コーティング層を含むヒートシール可能な板紙から製造することができ、ここで第3の分散液コーティング層は、95重量%以上から100重量%以下のポリオレフィンを含み、顔料を含まない。
【0050】
本発明のさらなる特徴は、以下の例および図面から明らかになるであろう。
図1は、本発明の一実施形態によるヒートシール可能な板紙の概略図である。
図2は、本発明の別の実施形態によるヒートシール可能な板紙の概略図である。
【0051】
図1に示されたヒートシール可能な板紙は、3つの層、中間層1a、頂部層1bおよび裏面層1cを含む板紙基材1を含む。中間層1aには、CTMPと硫酸塩パルプが含まれている。頂部層lbと裏面層lcは硫酸塩パルプを含む。板紙基材は、第1の面と第2の面とを含み、頂部層1bが第2の面上に配置され、裏面層1cが第1の面上に配置されている。第1の面はヒートシール可能な板紙から作製された容器などの包装の内面を指し、第2の面はそのような包装の印刷面を指す。
【0052】
ヒートシール可能な板紙の第1の面の裏面層1c上において、板紙基材1は、第1の分散液コーティング層2を含み、これが第1の内面層を形成する。第1の分散液コーティング層2は、ラテックスおよび顔料を含む。ラテックスは、好ましくは、スチレン-ブタジエンラテックス、スチレン-アクリラートラテックス、またはそれらの混合物から選択される。顔料は、好ましくは、クレー(粘土)またはタルクから選択される。ポリオレフィンを含む第2の分散液コーティング層3は、第1の分散液コーティング層2上にコーティングされる。第2の分散液コーティング層3は、第2の内面層を形成する。ポリマーは、好ましくはポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーである。ポリオレフィンは、層の乾燥固形分に基づいて90重量%以上から100重量%以下の範囲の量で存在し得る。第2の分散液コーティング層3は、顔料を含まなくてもよい。第2の分散液コーティング層3は、板紙から製造された容器の内容物と接触することになる。
【0053】
板紙の第2の面上では、頂部層1bが第3の分散液コーティング層4でコーティングされている。分散液コーティング層4は、ヒートシール可能な板紙の印刷面を形成する。板紙は、分散液コーティング層4上に直接印刷されてよい。第3の分散液コーティング層4は、層の乾燥固形分に基づいて、50重量%以上から100重量%以下の範囲の量のポリオレフィンを含む。第3の分散液コーティング層4はさらに、層の乾燥固形分に基づいて合計0重量%以上から50重量%以下の範囲の量で存在するラテックスおよび顔料を含み得る。
【0054】
代替的な一実施形態では、第3の分散液コーティング層4は、層の乾燥固形分に基づいて95重量%以上から100重量%以下の範囲の量でポリオレフィンを含み、好ましくは顔料を含まない。板紙は、そのような分散液コーティング層4上に直接印刷されてよい。そのような実施形態の材料は、低温および高温の液体または食品用、ならびに冷凍食品用のヒートシールされた製品包装の側面の製造に特に好適である。
【0055】
図2に示されたヒートシール可能な板紙は、板紙基材1、第1の内層を形成する第1の分散液コーティング層2および第2の分散液コーティング層3を含み、第2の分散液コーティング層3は、図1について記載されているように板紙から製造された容器の内容物と接触する。板紙の第2の面上では、頂部層1bが第3の分散液コーティング層4でコーティングされている。第3の分散液コーティング層4は、ラテックスおよび顔料を含む。ラテックスは、好ましくは、スチレン-ブタジエンラテックス、スチレン-アクリラートラテックス、またはそれらの混合物から選択される。顔料は、好ましくは、クレー(粘土)またはタルクから選択される。ポリオレフィンを含む第4の分散液コーティング層5は、第3の分散液コーティング層4上にコーティングされる。第4の分散液コーティング層5は、ヒートシール可能な板紙の外面を形成する。ポリマーは、好ましくは、ポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーである。ポリオレフィンは、層の乾燥固形分に基づいて90重量%以上から100重量%以下の範囲の量で存在し得る。第4の分散液コーティング層5は、顔料を含まなくてもよい。第2の分散液コーティング層3は、板紙から製造された容器の内容物と接触することになる。図2に示す材料は、低温および高温の液体または食品用、ならびに冷凍食品用のヒートシールされた製品包装の底部の製造に特に好適である。
【0056】
図1および図2に示された材料は、低温および高温の液体または食品用、ならびに冷凍食品用のヒートシールされた製品包装の製造に特に好適である。
【実施例
【0057】
例1
本発明の包装材料を評価するために、ロッドコーターを使用する実験室規模の試験で、本発明に従って製造された包装材料のバリア特性、破断点伸びおよび静摩擦係数を評価する一連の試験を実施した。
【0058】
表1に従って、第1の分散液コーティング組成物(分散液1)を調製した。全てのパーセンテージは乾燥固形分(wt%)として計算される。乾燥固形分で計算して100重量%のポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーを含む第2の分散液コーティング組成物(分散液2)を調製した。
【0059】
漂白されたクラフトパルプで形成された2つの外層と漂白されたクラフトパルプおよびCTMPを含む中間層とを備えた3層板紙である195~295gsmの異なる坪量を有する板紙Cupforma Natura(基板)上に、ロッドコーターを使用して上記コーティング組成物をコーティングした。全てのサンプル1~4において、板紙の第1の面(裏面)上に分散液1をコーティングして7gsmの坪量を有する第1の最内コーティング層を形成し、次いでこの第1の内側コーティング層上に分散液2をコーティングして7gsmの坪量を有する第2のコーティング層を形成した。サンプル1およびサンプル2は、基板の第2の面(印刷面)上に分散液2で更にコーティングし、5gsmの第3のコーティング層を形成した。サンプル3は、第2の面上に分散液1でさらにコーティングして7gsmの坪量の第3のコーティング層を形成し、次にこの第3のコーティング層上に分散液2をコーティングして7gsmの坪量の第4のコーティング層を形成した。
【0060】
このようにして、以下のコーティング構造を示すようにサンプルを調製した。
サンプル1および2:分散液2/基板/分散液1/分散液2
サンプル3:分散液2/分散液1/基板/分散液1/分散液2
サンプル4:基板/分散液1/分散液2
【0061】
【表1】
【0062】
参照として、板紙基板(Tambrite 240gsm)に分散液1をコーティングし、7gsmのコーティング層を与えることによって第1の参照サンプル(参照板紙1)を作製した。板紙基板(Tambrite 240gsm)に、分散液1の第1のコーティング層(5gsm)、および、この第1のコーティング層上の100重量%のスチレンアクリラートを含む第2の分散液コーティング層(10gsm)を与えることによって、第2の参照サンプル(参照板紙2)を作製した。
【0063】
本発明の包装材料および参照板紙の特性を表2に要約する。コーティングされた板紙サンプルの第1の面/裏面(RS)上にて、吸水率(COBB600)を測定する。
【0064】
【表2】
【0065】
表2に見られるように、本発明に従って製造された包装材料は、低い吸水率、高い破断点伸び、低い静摩擦係数、および低いPTS不合格品割合を示す。
なお、本発明に包含され得る諸態様または諸実施形態は、以下のとおり要約される。
[1].
ヒートシール可能な板紙であって、
- 第1の面および第2の面を含む板紙基材(1)、
- 板紙基材(1)の第1の面上に配置された第1の分散液コーティング層(2)、および
- 第1の分散液コーティング層(2)上に配置された第2の分散液コーティング層(3)を含み、
第1の分散液コーティング層(2)がラテックスおよび顔料を含み、第2の分散液コーティング層(3)がポリオレフィンを含むことを特徴とする、ヒートシール可能な板紙。
[2].
前記ラテックスが、スチレン-アクリラートラテックス、スチレン-ブタジエンラテックス、またはそれらの混合物から選択される、上記項目1に記載の板紙。
[3].
前記第1の分散液コーティング層(2)が、層の乾燥固形分に基づいて30重量%以上から70重量%以下の範囲の量のラテックスを含む、上記項目1または2に記載の板紙。
[4].
前記第1の分散液コーティング層(2)が、層の乾燥固形分に基づいて30重量%以上から70重量%以下の範囲の量、好ましくは60重量%の量の顔料を含む、上記項目1~3のいずれか1項に記載の板紙。
[5].
前記顔料が、クレーおよび/またはタルクから選択される、上記項目1~4のいずれか1項に記載の板紙。
[6].
前記第2の分散液コーティング層(3)が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、および/またはポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーの群から選択されるポリオレフィンを含む、上記項目1~5のいずれか1項に記載の板紙。
[7].
前記第2の分散液コーティング層(3)が、層の乾燥固形分に基づいて90重量%以上から100重量%以下の範囲の量、好ましくは90重量%以上から98重量%以下の範囲の量のポリオレフィンを含む、上記項目1~6のいずれか1項に記載の板紙。
[8].
前記第2の分散液コーティング層(3)が、層の乾燥固形分に基づいて0重量%以上から5重量%以下の範囲の量、好ましくは1重量%以上から5重量%以下の範囲の量の共バインダーを含み、この共バインダーが好ましくはラテックスである、上記項目1~7のいずれか1項に記載の板紙。
[9].
前記板紙基材(1)が、第2の面上に第3の分散液コーティング層(4)を含み、この第3の分散液コーティング層(4)が、層の乾燥固形分に基づいて50重量%以上から100重量%以下の範囲の量のポリオレフィンを含む、上記項目1~8のいずれか1項に記載の板紙。
[10].
前記第3の分散液コーティング層(4)が、層の乾燥固形分に基づいて0重量%以上から50重量%以下の範囲の量で、一緒に存在するラテックスおよび顔料を含む、上記項目11に記載の板紙。
[11].
前記板紙基材(1)が、第2の面上に第3の分散液コーティング層(4)を含み、この第3の分散液コーティング層(4)が、層の乾燥固形分に基づいて90重量%以上から100重量%以下の範囲の量のポリオレフィンを含む、上記項目1~8のいずれか1項に記載の板紙。
[12].
前記板紙基材(1)が、第2の面上に第3の分散液コーティング層(4)を含み、かつ第3の分散液コーティング層上に第4の分散液コーティング層(5)を含み、この第3の分散液コーティング層(4)がラテックスおよび顔料を含み、この第4の分散液コーティング層(5)がポリオレフィンを含む、上記項目1~8のいずれか1項に記載の板紙。
[13].
前記板紙が以下の特性を有する、上記項目1~12のいずれか1項に記載の板紙:
- 5%以上、好ましくは6%以上もしくは7%以上の破断点伸び(CD、ISO1924-2に従う引張強度により測定)、および/または
- 10g/m 以下、好ましくは5g/m 以下の吸水率(COBB600、SCAN試験P12:64に従って測定)。
[14].
ヒートシール可能な板紙を製造する方法であって、
- 第1の面および第2の面を含む板紙基材(1)を提供するステップ、
- 板紙基材(1)の第1の面上に第1の分散液コーティング層(2)を適用するステップ、
- 第1の分散液コーティング層(2)上に第2の分散液コーティング層(3)を適用するステップ、および
- 任意選択で、板紙基材(1)の第2の面上に第3の分散液コーティング層(4)を適用するステップを含み、
第1の分散液コーティング層(2)がラテックスおよび顔料を含み、第2の分散液コーティング層(3)がポリオレフィンを含むことを特徴とする、ヒートシール可能な板紙を製造する方法。
[15].
上記項目1~13のいずれか1項に記載のヒートシール可能な板紙を含むか、またはそれから作製された包装。
図1
図2