(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】医療用支持装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/12 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
A61F2/12
(21)【出願番号】P 2021574187
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(86)【国際出願番号】 SE2020050579
(87)【国際公開番号】W WO2020251454
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-03-31
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】521544621
【氏名又は名称】ドクター ヘーデン アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】DR HEDEN AB
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】ヘーデン,ペア
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/137394(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0032962(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0055624(US,A1)
【文献】特表2014-511229(JP,A)
【文献】特表2017-528225(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル化された材料を備えないインプラントとして女性の乳房に使用される医療用支持装置(1)であって、
平面(4)から膨らみを示す第1の側面(3)を有する壁状の部分(
2)を少なくとも備え、
前記壁状の部分の第2の側面(5)は、
前記膨らみに対応する
形状の空洞を有し、
前記医療用支持装置は、エラストマーを備え、
前記
医療用支持装置は、組織に取り付けられることにより、所定の位置に内在性組織および/または内在性脂肪を支持するよう配置され、
前記医療用支持装置の前記空洞は、内在性組織で充填可能であり、
前記医療用支持装置は、女性の乳房(10)の深部腺組織の内部に位置付け可能であり、
前記深部腺組織および/または脂肪がこれにより前記医療用支持装置の前記空洞内に提供され
、
前記医療用支持装置は、前記平面から前記空洞に向かって開放している
ことを特徴とする医療用支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用支持装置であって、
マトリックス(9)が構成されている、ことを特徴とする医療用支持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療用支持装置であって、
前記壁状の部分の前記空洞のエッジ(7)に沿って、平面上のリム(6)が少なくとも部分的に存在する、ことを特徴とする医療用支持装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医療用支持装置
(1)の製造方法であって、
所望の形状を有するマンドレルを、未硬化エラストマーに1回または数回浸漬して硬化させ、前記医療用支持装置を成形
し、
前記浸漬後に、前記マンドレルまたは前記医療用支持装置上に、マトリックスの少なくとも一部を配置する、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の一部に使用する医療用支持装置、その製造方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンジェルや生理食塩水などの充填物で満たされたインプラントが知られている。充填物の漏れやインプラントのカプセル化(被包化)のリスクが常にある。
【0003】
また、人体の一部でインプラントを支えるためにマトリックスを使用することも知られており、このマトリックスは人体に吸収されるものであってもよく、吸収されなくてもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来のような欠点がなく、人体の一部を支持および/または補強できるようにすることである。
【課題を解決する手段】
【0005】
本発明の第1の側面によれば、人体の一部に使用するための医療用支持装置が提供される。この装置は、平面からの膨らみを示す第1の側面を有する壁状部分を少なくとも備え、前記壁状部分の第2の側面は、例えばドーム形状としての対応する空洞を有し、前記医療用支持装置は、エラストマーを備える。前記壁形状部は、2つ以上の軸の周りに湾曲しているか、またはドレープ形状を有している。前記医療用支持装置は、前記平面から前記空洞に向かって開放しており、すなわち、例えば、液体のシリコンゲルや生理食塩水で満たされた一般的な乳房インプラントのように閉止していることはない。
【0006】
本発明による医療用支持装置では、内在性の組織および/または脂肪および/またはヒアルロン酸などの添加物を人体部分の所定の位置に保持することが可能となる。この解決手段の利点は、内在性の組織および/または脂肪で満たされたときに、X線放射に対して透過性になることであり、これは安全なマンモグラフィにとって重要である。
【0007】
一実施形態によれば、壁の厚さ、すなわち、第1の側面と第2の側面との間の厚さは、壁状の部分にわたってほぼ同じである。好ましくは、医療用支持装置は予備成形されている。
【0008】
一実施形態によれば、平面上のリムが、前記空洞の縁に沿って少なくとも部分的に存在する。リムは、医療用支持装置を身体の一部の組織に固定する際に、縫合糸を適用することを容易にする。医療用支持装置を取り付けることで、ひいては、インプラントの回転、横方向および底面方向の動きなどの不正配置の問題が少なくなる。また、医療用支持装置の空洞内の材料が所定の位置に留まるようになる。
【0009】
一実施形態によれば、この装置はエラストマーから構成され、少なくともリムの部分にマトリクスが設けられている。
【0010】
一実施形態によれば、この装置はエラストマーから構成され、壁状部分の第2の側面(空洞側)に少なくとも部分的にマトリクスを備えている。
【0011】
一実施形態によれば、この装置は乳房に、好ましくは女性の乳房に使用される。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、医療用支持装置を製造する方法であって、所望の形状を有するマンドレルを未硬化エラストマーに浸漬して前記装置を成形する方法が提供される。好ましくは、少なくともマトリックスの一部が、浸漬の前にマンドレル上に配置されるか、浸漬後に前記装置上に配置される。
【0013】
本発明の第3の側面によれば、このような医療用支持装置を使用する方法が提供される。カプセル化されていないインプラントが形成されており、医療用支持装置は、内在性の組織および/または脂肪および/またはヒアルロン酸などの添加物を人体部分の所定の位置に保持する。
以下、添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1a~
図1cは、それぞれ本発明の一実施形態を示す断面図、平面図、側面図である。
【
図2】
図2a~
図2dは、それぞれ断面図と2つの平面図で、リムを有する異なる実施形態を示す。
【
図3】
図3a~
図3gは、本発明の異なる実施形態を断面図で示す。
【
図4】
図4aおよび
図4bは異なる形状の実施形態を側面図で示す。
【
図5】
図5aおよび
図5bは、形状の異なる実施形態を平面図で示す。
【
図6】
図6a~
図6cは、本発明の実施形態の製造に用いるマンドレルの異なる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1a~
図1cは、本発明の医療用支持装置1の一実施形態を示す。医療用支持装置1は、少なくとも壁状の部分2を有している。壁状部分2は、平面4からの膨らみを示す第1の側面3と、対応する空洞を有する第2の側面5とを有する。例えば、壁状部分2は、人体における支持の目的に応じて任意の特定の形状を有することが可能であるが、ドーム形状を有していてもよい。
【0016】
壁状部分2は、少なくとも2つの異なる想定軸にわたって湾曲しているか、またはドレープ状であり、すなわち部分的な円筒の形状を有していない。好ましくは、第1の側面3と第2の側面5と間の厚さが、膨らみ/空洞部にわたってほぼ同じである。
図1bでは、医療用支持装置1が、第1の側面2からの平面図で示されている。示された実施形態では、この装置はほぼ円形のフットプリントを有するが、任意の形状が可能であろう。
図1cでは、
図1aおよび
図1bの実施形態が側面から示されている。
【0017】
医療用支持装置1は、内在性の組織および/または脂肪を人間の身体部位の所定の位置に支持するためのものである。任意の適切な身体部位が、医療用支持装置1を受容することができ、例えば、臀部や乳房などであるが、おそらくほとんどが女性の乳房で使用されるであろう。医療用支持装置1は、内在性の組織または脂肪またはその両方を重力に抗して支持する。また、ヒアルロン酸のような、人体にあるのに適した他の材料を加えることも考えられる。あるいは、医療用支持装置1の空洞部分にのみ、他の材料または素材を使用する。
【0018】
医療用支持装置1は、エラストマーとマトリックスのいずれか、または両方を含んで構成される。エラストマー材料は、人体に使用するのに適した、柔軟性のある任意の種類のものでよい。エラストマーは、例えば、シリコンゴムであってもよく、好ましくは、乳房インプラントに使用されるタイプのものである。マトリックスは、生物学的材料、合成材料、またはそれらの組み合わせによって構成されてよい。マトリックスは、吸収性および/または非吸収性の材料で構成されてよい。例えば、無細胞皮膚マトリックスでもよい。
【0019】
図2aは、医療用支持装置1の一実施形態を断面図で示し、平面4の空洞または膨らみのエッジ7に、リム6の少なくとも一部分が設けられている。リム6の少なくとも一部分は、エッジ7のみを取り付けるよりも、人体の組織により容易に取り付けることができる。好ましくは、このために、吸収性であるか否かを問わず、任意の縫合糸を使用することができる。
【0020】
図2bは、一実施形態を平面図で示し、ここで、複数のリム6の部分が設けられており、
図2cは、エッジ7を囲む完全なリム6が示されている。
図2dは、他の実施形態を示し、ここで、人体の組織に取り付けられたときにポケットが形成されるように、壁状部分2がその上部で切断され(8)、平面4に残されたエッジ7の周りにリム6が設けられている。
図2に示したすべての実施形態は、エラストマーおよび/またはマトリックスで構成されてよい。
【0021】
次に、エラストマーとマトリックスの組み合わせ方の異なる実施形態を、
図3a~
図3gに例示する。
図3aでは、エラストマーで作られたドーム型の医療用支持装置1が示されており、第2の側面5の下部領域にマトリクス9の部分が設けられている。当然のことながら、マトリックス9は、第2の側面5全体にわたって設けられていてもよいし、
図3bに示すように、第1の側面3全体に設けられていてもよいし、第1の側面3の一部に設けられていてもよい。
図3cでは、壁状部分2の第2の側面5と同じ側のリム6にマトリクス9が設けられた、リム6を有する医療用支持装置1が示されている。また、
図3fに示すように、他方の側にマトリックス9を設けることも考えられるし、両方の側に設けることも考えられる。
図3dでは、マトリックス9は、空洞、第2の側面5、およびリム6の両方に設けられている。
図3eおよび
図3gでは、マトリクス9は、空洞および膨らみの下部にそれぞれ設けられており、また、リム6に沿って設けられている。
【0022】
当然のことながら、医療用支持装置1の形状は、その用途や目的に応じて異なり得る。
図4aではほぼドーム型、好ましくは部分的な球体が示され、
図4bでは解剖学的な形状が示されている。突出は、突出点12の高さと同様に、異なっていてもよい。また、医療用支持装置1のフットプリントは、その用途や目的に応じて異なっていてもよい。
図5aおよび
図5bには、2つの異なる例が示されており、それぞれ、幅と同じ高さを有する円形、または、幅と比較して異なる高さを有する円形である。高さは幅より長くてもよいし、逆でもよい。例えば、フットプリントは楕円形であったり、
図5bに示すようにドロップ型であったりする。
【0023】
ここで、医療用支持装置1がどのように製造されるかの例を説明する。
図6a、
図6b、
図6cには、3つの異なるマンドレルが示されている。マンドレルは、流れている状態のエラストマーに浸漬される。その後、マンドレルは、取り上げられ、エラストマーが硬化して可撓性のある状態になる。これは、例えば、熱や添加物によって実現することができる。浸漬は通常、所望の回数だけ繰り返される。エラストマーは、マンドレルから取り出され、必要に応じて所望の形状に切断される。裏返しにすることも可能であり、すなわち、マンドレルに最も近いエラストマーの表面が、代わりに膨らみ側、第1側面3となる。
【0024】
また、表面にテクスチャーを施すなど、特殊な表面にしたい場合には、第1側面3か第2側面5にそれぞれ設けることも、両面に設けることも可能である。マンドレルに表面構造を持たせることで、細かいものから粗いものまで異なる粗さを提供することができる。また、硬化前の最外層にテクスチャーを刻印することも可能である。例えば、ポリウレタンや塩などを用いて打刻することも可能である。
【0025】
リム6が必要な場合は、
図6bおよび
図6cのマンドレルを使用することができる。エラストマーとマトリックスの組み合わせが必要な場合は、浸漬の前に、マトリックスの一部をマンドレルの所望の位置に配置したり、マンドレルの表面全体に配置したりすることができる。また、浸漬後、硬化前にマトリックスを配置することも可能である。
【0026】
医療用支持装置1は、様々なサイズで提供されており、各患者の特定のニーズに適したサイズを見つけることが可能である。
【0027】
図7は、医療支援装置1の使用例を示している。医療支援装置1は、人体の一部10、この場合は女性の乳房の内部に配置される。本実施例では、深部腺組織および/または脂肪が分離され、その一部が空洞の内部、すなわち医療用支持装置1の第2の側面5に設けられる。医療用支持装置は、縫合糸11で取り付けられる。縫合糸は、好ましくは吸収可能なタイプのものである。医療用支持装置は、例えば、筋肉(図示の例では乳房の筋肉)に取り付けられてもよい。また、腺組織に加えて、脂肪や他の組織、好ましくは内在性の組織を医療用支持装置の空洞内に設けることも考えられるし、脂肪のみ、あるいは他の組織のみを設けることも考えられる。また、空洞内にヒアルロン酸や他の医療用注入材料を、単独で、または任意のまたは複数の種類の内在性組織と混合して加えることも考えられる。
【0028】
図8は、人体の一部10に既に設置されている医療支持装置の空洞に、注射器を用いて、例えばヒアルロン酸や脂肪を加えることができることを示している。この穿刺は、シリコンゲルで充填された一般的な乳房インプラントのように、有害物質が漏れ出すことがないので、何の害もない。