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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】天吊り空調ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0317 20190101AFI20240712BHJP
   F24F 1/0047 20190101ALI20240712BHJP
   F24F 13/32 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
F24F1/0317
F24F1/0047
F24F13/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022171897
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2020201125の分割
【原出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022186951
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】込山 治良
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】中 悟史
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-76366(JP,A)
【文献】特開2018-204937(JP,A)
【文献】特開2013-152053(JP,A)
【文献】特開2010-249401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天吊り空調機本体と、
前記空調機本体に連結されるチャンバーと、
前記空調機本体と前記チャンバーとを一体的に保持する天吊り用のフレームと、を備え、前記天吊り空調機本体及び前記チャンバーが収まる大きさの全体的に直方体の外観を前記フレームによって形成する天吊り空調ユニットであって、
前記フレームは、
前記天吊り空調機本体と前記チャンバーが並ぶ方向に沿って延在しており、前記直方体の上面の一対の辺に相当する部位を形成する2本の上部第1フレーム材と、前記上部第1フレーム材から前記上部第1フレーム材の長手方向に対し横方向に沿って延在しており、2本の前記上部第1フレーム材同士を連結する上部第2フレーム材と、を有する上部フレーム部分と、
前記天吊り空調機本体と前記チャンバーが並ぶ方向に沿って延在しており、前記直方体の下面の一対の辺に相当する部位を形成する2本の下部第1フレーム材と、前記下部第1フレーム材から前記下部第1フレーム材の長手方向に対し横方向に沿って延在しており、2本の前記下部第1フレーム材同士を連結する下部第2フレーム材と、を有する下部フレーム部分と、
記直方体の上下方向に沿って延在しており、前記上部フレーム部分と前記下部フレーム部分とを連結する4本の第3フレーム材を有する上下連結フレーム部分と、
前記上部第1フレーム材と前記上部第2フレーム材、前記下部第1フレーム材と前記下部第2フレーム材、前記上部第1フレーム材と前記第3フレーム材、前記下部第1フレーム材と前記第3フレーム材、について各々連結するリブプレートと、を有し、
前記リブプレートの連結によって前記上部第1フレーム材と前記下部第1フレーム材と前記第3フレーム材とにより形成される長方形の部分は、前記直方体を形成する側面の長方形の部分よりも小さい、
天吊り空調ユニット。
【請求項2】
前記空調機本体は、前記上部フレーム部分から吊り下げられている、
請求項1に記載の天吊り空調ユニット。
【請求項3】
前記上部第1フレーム材と前記下部第1フレーム材は、各々の両端が前記長方形の部分
から横方向へ突出するような形態で前記リブプレートにより前記第3フレーム材と連結されることにより、前記天吊り空調機本体及び前記チャンバーが収まる前記直方体の外観を形成する、
請求項1又は2に記載の天吊り空調ユニット。
【請求項4】
前記空調機本体を、前記直方体の外観を形成する前記フレーム内において前記フレームに対する相対移動を規制する規制手段を更に備える、
請求項1からの何れか一項に記載の天吊り空調ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天吊り空調機、及び天吊り空調機の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天井裏に据え付ける隠蔽式の空調機の据え付けを容易にする各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1-2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5208841号公報
【文献】特開2019-207092号公報
【文献】特開2019-207095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天井裏に据え付ける隠蔽式の空調機は、通常、建物の構造材に固定された棒ネジ(「全ネジ」と呼ばれる場合もある)に取り付けられ、当該棒ネジによって吊り下げられたような形態で据え付けられる。よって、市販されている隠蔽式の空調機の取付部分は、このような吊り下げ状態で据え付けることを前提とした構造になっている。したがって、現場における空調機の据え付けを容易にするために、例えば、空調機本体と付帯部品を工場内においてフレームで一体化しておき、工場から遠隔の工事現場へ車両等で輸送する形態を採る場合、当該フレームに吊り下げ状態で取り付けられた空調機本体の取付部分が輸送中に不具合を起こすのを防ぐためには、当該空調機本体が当該フレームから吊り下げられた状態を維持するような姿勢で車両へ搭載することが好ましい。
【0005】
しかし、隠蔽式の空調機は、狭い天井裏の空間へ収める必要がある。よって、上記フレームは、通常、空調機本体と同様、基本的に鉛直方向の寸法よりも水平方向の寸法の方が長い横長の外観形状となるように設計される。したがって、このように空調機本体と付帯部品をフレームで一体化したものを車両に搭載する場合、荷台の床面積を占有する割に、荷台の上部空間が空く状態となる。
【0006】
そこで、例えば、車両による輸送を効率的に行うために、空調機本体と付帯部品を一体化したフレームを横倒しの状態、すなわち、建物へ据え付けられた空調機の吊り下げ方向に対して傾けた状態で車両へ搭載することで、荷台の上部空間を有効活用する場合がある。また、運搬時に狭い空間等を通過するために一時的に傾ける場合がある。しかし、空調機本体や付帯部品を一体化したフレームを傾けると、上述したように、フレームに吊り下げ状態で取り付けられた空調機本体の取付部分が輸送中に不具合を起こす可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、空調機本体を吊り下げ状態でフレームに取り付けたものであっても、当該フレームを傾けた状態で運搬することが可能な天吊り空調ユニット及び施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた場合に、フレームに対する空調機本体の相対移動を規制するための規制手段を設けることにした。
【0009】
詳細には、本発明は、天吊り空調ユニットであって、天吊り空調機本体と、天吊り空調機本体に連結される付帯部品と、空調機本体と付帯部品とを一体的に保持する天吊り用のフレームと、を備え、空調機本体が有する天吊り用の取付部分は、フレームに取り付けられていると共に、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた場合に、フレームに対する空調機本体の相対移動を規制するための規制手段を有する。
【0010】
ここで、規制手段とは、フレームに対する空調機本体の相対移動を規制するための手段であり、例えば、空調機本体に自ら接触することによって当該空調機本体の移動を制限する形態や、空調機本体をフレームに取り付けるための部材自身が当該空調機本体の移動を制限する形態を含む概念である。
【0011】
上記の天吊り空調ユニットであれば、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた場合であっても、フレームに対する空調機本体の相対移動が規制手段によって規制されるため、空調機本体が有する天吊り用の取付部分付近に空調機本体の自重が加わることによる破損を防ぐことができる。このため、空調機本体を吊り下げ状態で取り付けたフレームを天吊り時の姿勢から傾けた状態で輸送することが可能である。
【0012】
なお、取付部分は、フレームに対して防振用の部材を介して取り付けられており、規制手段は、防振用の部材の変形によるフレームに対する空調機本体の相対移動を規制する仮止め部品を含むものであってもよい。このような規制手段であれば、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた場合であっても、当該防振用の部材に空調機本体の自重が加わることによる破損を防ぐことができる。このため、空調機本体を吊り下げ状態で取り付けたフレームを天吊り時の姿勢から傾けた状態で輸送することが可能である。
【0013】
また、取付部分は、フレームに設けられた吊り下げ金具に取り付けられていてもよい。上記の天吊り空調ユニットであれば、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた場合であっても、フレームに対する空調機本体の相対移動が規制手段によって規制されるため、空調機本体が有する天吊り用の取付部分と、フレームに設けられた吊り下げ金具に、空調機本体の自重が加わることによる破損を防ぐことができる。このため、空調機本体を吊り下げ状態で取り付けたフレームを天吊り時の姿勢から傾けた状態で輸送することが可能である。
【0014】
また、フレームには、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた場合に、フレームに対して相対移動する空調機本体を相対移動の反対方向へ支持する支持部材が設けられていてもよい。このような支持部材であれば、フレームに対して相対移動する空調機本体へ当該支持部材が接触することで、当該空調機本体が当該支持部材に支持されて相対移動が規制されるため、空調機本体が有する天吊り用の取付部分付近に空調機本体の自重が加わることによる破損を防ぐことができる。このため、空調機本体を吊り下げ状態で取り付けたフレームを天吊り時の姿勢から傾けた状態で輸送することが可能である。
【0015】
また、規制手段は、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた状態で移送用の車両に搭載された際に、フレームに対して鉛直方向へ移動する空調機本体の相対移動を規制するものであってもよい。このような規制手段であれば、空調機本体を吊り下げ状態で取り付けたフレームを横倒しにして車両で輸送することが可能である。
【0016】
また、本発明は、施工方法の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、工事現場の建物に取付け可能な天吊り空調機の施工方法であって、上記何れかの天吊り空調ユニ
ットを工事現場外で組み立てて一体化する組立作業工程と、天吊り空調ユニットを工事現場に運搬する運搬工程と、工事現場に運搬された天吊り空調ユニットを建物の所定の場所に取り付ける取付け工程と、を有するものであってもよい。上記の天吊り空調ユニットであれば、横倒しにして輸送することが可能であるため、例えば、天吊り空調ユニットを車両に複数まとめて搬送することにより、効率的な施工を行うことが可能である。
【0017】
また、運搬工程では、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた姿勢で車両に搭載された状態で、天吊り空調ユニットを工事現場に運搬するものであってもよい。上記の天吊り空調ユニットであれば、横倒しにして輸送することが可能であるため、例えば、天吊り空調ユニットを車両に複数まとめて搬送することにより、搬送効率を上げることが可能である。
【0018】
また、フレームには、建物の天井から垂下する吊り下げ金具に対応する位置に挿通孔を設けた吊り下げ部が設けられており、取付け工程では、天吊り空調ユニットを、挿通孔に天井から垂下する吊り下げ金具を挿通した状態で取り付けるものであってもよい。これによれば、吊り下げ金具を吊り下げ部の挿通孔に通すことで、天吊り空調ユニットの取り付けが可能となる。
【0019】
また、本発明は、天吊り空調機に複数設けられた吊り下げ用の吊り下げ部の位置を示すゲージで、建物の天井から垂下する各吊り下げ金具の下端を位置決めし、位置決めした状態で吊り下げ金具に振れ止めの取り付けを行う取付け前工程を有する天吊り空調機の施工方法であってもよい。これによれば、振れ止めと天吊り空調ユニットを効率的に取り付けることが可能となる。
【0020】
また、運搬工程では、天吊り空調ユニットをカバーで覆った状態で運搬し、取付け工程では、天吊り空調ユニットをカバーで覆った状態のままで取り付けるものであってもよい。これによれば、当該カバーで天吊り空調ユニットを運搬工程と天井への取り付け後の何れにも保護することができる。
【発明の効果】
【0021】
上記の天吊り空調ユニット及び施工方法であれば、空調機本体を吊り下げ状態でフレームに取り付けたものであっても、当該フレームを傾けた状態で運搬することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、天吊り空調ユニットを斜め上から見た状態を示した図である。
図2図2は、天吊り空調ユニットを真横から見た状態を示した図である。
図3図3は、天吊り空調ユニットを車両に搭載する方法を示した図である。
図4図4は、横倒しの状態で車両の荷台に積まれた天吊り空調ユニットの一例を示した図である。
図5図5は、台車に載せた天吊り空調ユニットを示した図である。
図6図6は、天吊り空調ユニット内に発生する荷重の一例を示した図である。
図7図7は、天吊り空調ユニットに設けられている部材を示した図である。
図8図8は、仮止めを示した図である。
図9図9は、仮止めの取り付け状態を示した図である。
図10図10は、吊り下げ部の部分を斜め上から示した図である。
図11図11は、吊り下げ部の部分を斜め下から示した図である。
図12図12は、吊りボルトの下端を位置決めするゲージの第1例を示した図である。
図13図13は、吊りボルトの下端を位置決めするゲージの第2例を示した図である。
図14図14は、ゲージを使った天吊り空調ユニットの取り付け方法を解説した図である。
図15図15は、支持部材の追加例を示した図である。
図16図16は、フレームを解体する様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0024】
図1は、天吊り空調ユニット1を斜め上から見た状態を示した図である。また、図2は、天吊り空調ユニット1を真横から見た状態を示した図である。図1では、天吊り空調ユニット1が天井から吊りボルトKによって吊り下げられた状態を示している。説明の便宜上、本実施形態では、図1及び図2においてZ軸方向を天吊り空調ユニット1の上方向と定義し、X軸とY軸によって確定されるXY平面に沿った方向を天吊り空調ユニット1の横方向と定義する。また、天吊り空調ユニット1を建物の天井から吊り下げる吊りボルトKには、通常、図1に示されるような振れ止めFが設けられているが、吊りボルトKに設けられる振れ止めはこのような形態に限定されるものではない。振れ止めFに設けられる振れ止めは、例えば、上面視において対角線状に交差するクロス式の形態であってもよい。また、振れ止めは、例えば、天吊り空調ユニット1が天井に直付けされている場合や、天吊り空調ユニット1を吊り下げる吊りボルトKが極めて短い場合、吊りボルトKよりも強固な金具で天吊り空調ユニット1が天井に剛接続される場合には、省略される。また、振れ止めは、吊りボルトKの上部と下部とに取り付ける形態に限定されるものでなく、例えば、上端が天井へ埋め込まれ、下端が天吊り空調ユニット1に連結されるものであってもよい。
【0025】
天吊り空調ユニット1は、図1及び図2に示されるように、フレーム2に空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5を組み付けて一体化した空調ユニットである。給気チャンバー4と還気チャンバー5は、本願でいう「付帯部品」の一例である。本願でいう「付帯部品」とは、空調機本体3と共に用いられる空調関連の部品全般であり、このような給気チャンバー4と還気チャンバー5の他、例えば、各種チャンバー、冷媒配管、水配管、ドレン配管、ドレンポンプ、ダンパー、吸排気グリル、フィルター、その他各種の空調関連部品が挙げられる。天吊り空調ユニット1は、建物の上部階あるいは屋上の床面を構成する床と、天吊り空調ユニット1が設置される階の天井面を構成する化粧用の天井パネルとの間にある狭小の天井裏空間に設置される。よって、天吊り空調ユニット1は、図1に示されるように、基本的に鉛直方向の寸法よりも水平方向の寸法の方が長い横長の外観形状となっている。
【0026】
また、天吊り空調ユニット1が天井パネルの裏側に設置される場合、天吊り空調ユニット1は隠蔽状態となる。しかし、天吊り空調ユニット1は、このように隠蔽状態で設置される形態に限定されるものではない。例えば、天井に化粧用の天井パネルが設置されない場合、天吊り空調ユニット1は、居室の人から視認できる状態となる。
【0027】
また、吊りボルトKは、床を構成する床コンクリートに埋め込まれた吊りボルト支持用のナットに螺合されていてもよいが、代わりに、梁を構成するH鋼等の構造材に取り付けられたハンガー等の各種部材に螺合されていてもよい。
【0028】
天吊り空調ユニット1は、図1及び図2に示されるように、空調機本体3の排気口側に給気チャンバー4を連結し、空調機本体3の吸気口側に還気チャンバー5を連結している。よって、天吊り空調ユニット1は、空調機本体3をフレーム2の中心部に配置し、給気
チャンバー4と還気チャンバー5で空調機本体3を挟み込むような形態となっている。空調機本体3と給気チャンバー4との連結部分、及び、還気チャンバー5と給気チャンバー4との連結部分は、柔接続されており、多少の相対移動が可能なようになっている。すなわち、一方の開口部に嵌め込まれる他方の開口部がやや小さく製作されており、開口部同士の隙間を気密用の柔軟なスポンジパッキン等のシール材で埋める形態を採ることにより、多少の相対移動が可能な柔接続構造となっている。
【0029】
まず、空調機本体3について説明する。空調機本体3は、矩形の筐体31の内部に温度調整用の熱媒が流れるコイルと、送風用の電動ファンとを内蔵したパッケージユニットであり、筐体31の外部に補機32や付帯配管33も備わっている。補機32としては、例えば、コイルに流す熱媒が通る熱媒配管の流路を切り替える弁、コイルに凝縮した水を受けるドレンパンを排水するための排水ポンプ等が挙げられる。
【0030】
空調機本体3は、筐体31の外面に設けられた天吊り用取付部分34が、フレーム2に設けられた吊り下げ金具26に取り付けられることにより、支持される。空調機本体3は、建物に設けられた吊りボルトK等の吊り下げ金具によって吊り下げ状態で使用されることを想定した既製品の装置であるため、天吊り用取付部分34も吊りボルトKのような吊り下げ金具に取り付けられることを想定した設計となっている。よって、本実施形態の天吊り空調ユニット1では、フレーム2に設けている吊り下げ金具26を、このような吊り下げ金具に見立てた形態にすることで、空調機本体3がフレーム2内で吊り下げ状態となるように設計されている。また、空調機本体3が電動ファンを内蔵しているため、天吊り用取付部分34には防振ゴム35(本願でいう「防振用の部材」の一例である)が設けられており、空調機本体3からフレーム2へ伝達される振動を防振ゴム35で遮断する。これにより、空調機本体3が発する振動でフレーム2が共振することによる異音等の発生が可及的に抑制される。このような防振ゴム35には、防振のために動きを許容する防振許容方向が設計上定められているため、荷重を受けている状態で運搬される場合には防振許容方向と荷重の方向(重力の方向)とが概ね一致していることが望まれる。なお、空調機本体3の振動を遮断する手段としては、このようにフレーム2と空調機本体3との間に防振ゴム35を介する形態に限定されるものではない。例えば、フレーム2と吊りボルトKとの連結部分にバネあるいはゴムを設けてもよい。しかし、この場合、フレーム2は吊りボルトKに対して相対移動可能となるため、フレーム2自体は耐震性を有しないことになる。したがって、天吊り空調ユニット1全体の耐震性を確保する観点から、本実施形態では、フレーム2と吊りボルトKとの連結部分については剛接続することにより、フレーム2自体を耐震構造とし、その代わりにフレーム2と空調機本体3との間に防振ゴム35を介する形態にしている。
【0031】
次に、給気チャンバー4について説明する。給気チャンバー4は、空調機本体3から吹き出る空気調和された空気を、建物の各所に張り巡らせた複数の給気ダクトへ分流させるためのチャンバーである。よって、チャンバーの内部空間を形成する矩形の筐体41には、給気ダクトを連結するための連結用開口部42が複数設けられている。図1及び図2では、筐体41に連結用開口部42が6つ設けられているが、連結用開口部42の個数は、筐体41の大きさや連結用開口部42の口径等に応じて適宜変更される。また、給気チャンバー4は、6つの連結用開口部42全てに給気ダクトが連結される形態に限定されるものではない。給気チャンバー4に実際に接続される給気ダクトの本数は、天吊り空調ユニット1を設置する箇所に設けられる給気ダクトの本数に応じる。よって、天吊り空調ユニット1を設置する箇所に設けられる給気ダクトが例えば2本であれば、給気チャンバー4に6つある連結用開口部42のうちの4つについては、開口部分が閉止された状態で用いられる。したがって、このように開口部分が閉止される連結用開口部42を予め省略し、必要数の連結用開口部42だけを設けた給気チャンバー4を製作して天吊り空調ユニット1に組み込むことも考えられるが、本実施形態では、施工効率の向上や部材の製作期間の
短縮を図るべく、様々な設置箇所へ適用できる、共通化された天吊り空調ユニット1を多数用意することを提案する。しかし、本願で開示する天吊り空調ユニット1は、このように各所で共通に適用できる形態に限定されるものではない。天吊り空調ユニット1は、設置箇所に応じた数の連結用開口部42を有する給気チャンバー4を備えたものであってもよい。
【0032】
次に、還気チャンバー5について説明する。還気チャンバー5は、建物の各所に張り巡らせた複数の還気ダクトから流れる空気を合流させるためのチャンバーである。よって、還気チャンバー5についても給気チャンバー4と同様、還気ダクトを連結するための連結用開口部が複数設けられている。還気チャンバー5も給気チャンバー4と同様、様々な設置箇所へ適用できるように、連結用開口部を多数設けた形態を採るが、天吊り空調ユニット1は、上述したのと同様、設置箇所に応じた数の連結用開口部を有する還気チャンバー5を備えたものであってもよい。
【0033】
なお、給気チャンバー4と還気チャンバー5は、空調機本体3のように電動ファン等の駆動部を内蔵するものではないため、基本的に振動を発しない。よって、本実施形態において、給気チャンバー4と還気チャンバー5は、防振ゴムといった振動伝達を遮断する部品を介さずにフレーム2へ取り付けられている。しかし、天吊り空調ユニット1は、このような形態に限定されるものではない。天吊り空調ユニット1は、例えば、給気チャンバー4や還気チャンバー5を、防振ゴムを介してフレーム2に取り付けたものであってもよい。また、天吊り空調ユニット1は、例えば、給気チャンバー4や還気チャンバー5を空調機本体3と同様に吊り下げ構造の部材でフレーム2に取り付けた形態であってもよい。
【0034】
このように、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5を一体化した天吊り空調ユニット1は、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5のそれぞれの単体と比べると、当然に重量が大きい。よって、屋内用の高所作業車で持ち上げて建物の天井付近へ取り付け可能にするためには軽量化が求められる。そこで、本実施形態の天吊り空調ユニット1では、フレーム2をアルミニウム製の部材で構成している。このため、フレーム2を構成するアングル材21同士を締結する部分においても、リブプレート22,23とボルトで締結することにより、アングル材21同士を溶接する場合よりも十分な強度が発揮されるようにしている。また、フレーム2の端部付近の強度を強化するため、アングル材21の端部同士をフレーム2の角に相当する部位で互いに締結する棒ネジ25が設けられている。また、フレーム2に複数あるアングル材21同士の締結部分の中でも、リブプレートの板面に沿った方向(面方向)へ荷重が加わる部位(符号23の部位)については1箇所につき1枚のリブプレート23を設けているのに対し、リブプレートを曲げる方向の荷重が加わる部位(符号22の部位)については1箇所につき2枚のリブプレート22を設けている。2枚のリブプレート22でアングル材21を挟み込むような状態でアングル材21同士を締結することにより、荷重によるリブプレート22の変形や破損を防いでいる。例えば、図1を見ると判るように、天吊り空調ユニット1を吊り下げる吊りボルトKへ取り付けるためにフレーム2に設けられている吊り下げ部24が、横方向に延在するアングル材21の途中に設けられているため、天吊り空調ユニット1が吊りボルトKによって吊り下げられると、当該アングル材21の端部には天吊り空調ユニット1全体の荷重が加わる。よって、このような箇所に2枚のリブプレート22を設けることは、フレーム2の強度を確保するうえで有効である。
【0035】
図3は、天吊り空調ユニット1を車両に搭載する方法を示した図である。上述したように、天吊り空調ユニット1は、床と天井パネルとの間にある狭小の天井裏空間に設置するために、鉛直方向の寸法よりも水平方向の寸法の方が長い横長の外観形状となっている。そして、空調機本体3は、フレーム2に設けられた吊り下げ金具26によってフレーム2内で吊り下げられた状態となっている。このため、例えば、工場で組み立てた天吊り空調
ユニット1を工事現場へ運搬する場合、通常であれば、図3(A)に示されるように、天吊り空調ユニット1を横倒しせずに車両Vの荷台へそのまま平積みすることになる。しかし、この場合、天吊り空調ユニット1の荷台の上部空間が有効活用されず、天吊り空調ユニット1を効率的に搬送できない。そこで、例えば、図3(B)に示されるように、天吊り空調ユニット1を横倒しの状態で車両Vの荷台に積むことが考えられる。天吊り空調ユニット1を横倒しにして天吊り空調ユニット1の荷台に積めば、車両Vの荷台の上部空間を有効活用できる。
【0036】
図4は、横倒しの状態で車両Vの荷台に積まれた天吊り空調ユニット1の一例を示した図である。鉛直方向(Z軸方向)の寸法よりも水平方向(XY平面沿いの方向)の寸法の方が長い天吊り空調ユニット1を横倒しにして車両Vの荷台に積むと、車両Vの荷台の上部空間を有効活用できる。そして、天吊り空調ユニット1を横倒しにする際は、例えば、図4に示すように、略矩形のフレーム2から突き出している補機32や付帯配管33が上に位置する状態で天吊り空調ユニット1を横倒しにすると、補機32や付帯配管33が荷台の床面や壁面に干渉しないため、天吊り空調ユニット1を荷台に積みやすい。また、天吊り空調ユニット1を以下のような台車に載せた状態で車両Vの荷台に搭載すれば、車両Vへの積み下ろしが更に容易である。
【0037】
図5は、台車Dに載せた天吊り空調ユニット1を示した図である。台車Dは、天吊り空調ユニット1を載せる平板状の台座D1の下面に車輪D2を4つ有する。また、台車Dは、台座D1の縁から上方へ向けて立設された補助棒D3を4本有する。よって、天吊り空調ユニット1を運搬する作業者は、天吊り空調ユニット1を台車Dの台座D1に載せた後、天吊り空調ユニット1や補助棒D3を手で押すことにより、車輪D2を転がして天吊り空調ユニット1をスムーズに移動することができる。また、補助棒D3が天吊り空調ユニット1を囲むように立設されているため、例えば、台車Dに載った状態で車両Vの荷台へ搭載された天吊り空調ユニット1が車両Vの走行中に揺れても、天吊り空調ユニット1が台座D1の上面で位置ずれを生じて台車Dから天吊り空調ユニット1が落ちることもない。
【0038】
しかしながら、天吊り空調ユニット1を上記のように横倒しで運搬すると、以下のような荷重が天吊り空調ユニット1内に発生する。図6は、天吊り空調ユニット1内に発生する荷重の一例を示した図である。例えば、図6に示すように、X軸方向が下を向くような姿勢となるように天吊り空調ユニット1を横倒しにすると、天吊り空調ユニット1に備わっているフレーム2や空調機本体3、給気チャンバー4には、X軸方向の重力が働く。そして、空調機本体3は、上述したように、吊り下げ金具26によってZ軸方向沿いに吊り下げた状態でフレーム2に取り付けられている。よって、天吊り空調ユニット1を横倒しにすると、吊り下げ金具26の吊り下げ方向に対して横向きの方向、すなわち、図6の矢印が示す方向へ空調機本体3がフレーム2に対して相対移動する可能性がある。空調機本体3が吊り下げ金具26の吊り下げ方向に対して横向きの方向に相対移動すると、フレーム2と空調機本体3とを連結している吊り下げ金具26が変形したり、天吊り用取付部分34と吊り下げ金具26との間にある防振ゴム35が破損したりする可能性がある。
【0039】
そこで、本実施形態の天吊り空調ユニット1には、このような不具合を防止するための以下の処置が講じられている。図7は、天吊り空調ユニット1に設けられている部材を示した図である。図7に示すように、本実施形態の天吊り空調ユニット1には、天吊り用取付部分34に仮止め6が設けられている。また、フレーム2に対する空調機本体3の相対移動を所定範囲に制限する支持部材27がフレーム2に設けられている。支持部材27はフレーム2に対する空調機本体3の相対移動を所定範囲に制限するものであるため、天吊り空調ユニット1が通常の姿勢をとっている場合、支持部材27はフレーム2に接触しない。よって、X軸方向が下を向くような姿勢で天吊り空調ユニット1が横倒しにされて、
空調機本体3がX軸方向へ自重で移動すると、フレーム2に設けられている支持部材27に空調機本体3が接触し、空調機本体3が支持部材27によって下側から支持されたような状態になる。また、本来はZ軸沿いの方向に荷重が加わることを前提に組付けられている防振ゴム35についても、フレーム2に対する空調機本体3のX軸方向への荷重が加わらないように、仮止め6が吊り下げ金具26と天吊り用取付部分34との相対移動を規制している。仮止め6は、天吊り空調ユニット1の運搬完了後は取り外される。
【0040】
図8は、仮止め6を示した図である。仮止め6は、断面視コの字型の金物であり、平坦で矩形の天板部61と、天板部61に2つある長辺沿いにそれぞれ設けられる側壁部62とを有する。天板部61には、吊り下げ金具26の外径よりもやや大きい切り欠き部63が設けられている。仮止め6は、天吊り空調ユニット1を搬送する際に装着される搬送用の仮止めである。このような仮止め6が、以下のような状態で天吊り用取付部分34に取り付けられる。
【0041】
図9は、仮止め6の取り付け状態を示した図である。仮止め6は、吊り下げ金具26に螺合されているナットによって天板部61の上面が押圧される。そして、天板部61の長辺沿いにある2つの側壁部62の下端が、天板部61の上面を押圧するナットの押圧力で天吊り用取付部分34を押圧することにより、吊り下げ金具26と天吊り用取付部分34が防振ゴム35の変形によって相対移動するのを防ぐ。また、仮止め6の側壁部62が天吊り用取付部分34へ加える押圧力は、防振ゴム35の設計上想定されている荷重の方向に一致している。よって、天板部61の上面を押圧するナットを過度に締め付けない限り、当該押圧力が防振ゴム35を破壊する可能性は極めて低い。
【0042】
以上に述べたように、天吊り空調ユニット1には仮止め6や支持部材27が設けられているため、天吊り空調ユニット1を車両Vの荷台へ載せるために横向きにしても、フレーム2に対する空調機本体3の相対移動が制限される。このため、フレーム2に吊り下げ状態で取り付けられている空調機本体3であっても、吊り下げ金具26や天吊り用取付部分34、防振ゴム35が空調機本体3の自重で破損しない。したがって、本実施形態の天吊り空調ユニット1であれば、車両Vの荷台という限られたスペースに効率的に搭載することが可能となる。なお、図3(A)では、天吊り空調ユニット1が積み重ならない形態で図示されていたが、本実施形態の天吊り空調ユニット1は、積み重ね不能なものに限定されるものではない。本実施形態の天吊り空調ユニット1は、平積みの状態で複数段に積み重ねられてもよい。天吊り空調ユニット1が複数段に積み重ね可能であっても、例えば、車両Vからの積み下ろし時や建物内における運搬時において、一時的に天吊り空調ユニット1を傾ける場合はあり得るため、上述したように天吊り空調ユニット1が横へ傾け可能なものであれば、施工作業が容易である。
【0043】
ところで、上記実施形態では、フレーム2に設けられた吊り下げ金具26によって空調機本体3が吊り下げられる形態を採っていたが、天吊り空調ユニット1は、このような形態に限定されるものではない。天吊り空調ユニット1は、例えば、吊り下げ金具26よりも太くて強固な部材で空調機本体3をフレーム2に非吊り下げ状態で固定したものであってもよい。このような場合、当該部材が、フレーム2に対する空調機本体3の相対移動を規制し得る。よって、当該部材が、上述した仮止め6や支持部材27の代替として、フレーム2に対する空調機本体3の相対移動を規制する規制手段と捉えることができる。
【0044】
また、上記実施形態では、略矩形のフレーム2から補機32や付帯配管33が突き出す形態となっていたため、フレーム2には支持部材27が1つしか設けられていなかったが、天吊り空調ユニット1をX軸方向が上向きと下向きの何れの姿勢においても横向き可能にする場合は、支持部材27をフレーム2に2つ以上設けてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、天吊り空調ユニット1を横倒しの状態で車両Vの荷台へ載せる形態を例示していたが、天吊り空調ユニット1は、このような姿勢で車両Vの荷台へ載せる形態への適用に限定されるものではない。車両Vの荷台にスペースの余裕があれば、天吊り空調ユニット1を平積みの状態で運搬することも当然に可能である。但し、このような平積みの状態であっても、運搬中は天吊り空調ユニット1が揺れたり傾いたりする場合があるため、上記実施形態のようにフレーム2に対する空調機本体3の相対移動を規制する規制手段を設けることは有効である。
【0046】
ところで、建物に設けられている吊りボルトKの位置精度は、工事現場に応じてばらつきがある。よって、上記実施形態の天吊り空調ユニット1では、吊りボルトKの位置精度が低くても天吊り空調ユニット1を工事現場でスムーズに取り付け可能にするために、フレーム2に設けられている吊り下げ部24の位置を微調整できるようにしている。図10は、吊り下げ部24の部分を斜め上から示した図である。また、図11は、吊り下げ部24の部分を斜め下から示した図である。図10及び図11に示すように、吊り下げ部24は、アングル材24aに挿通孔24bと調整孔24cを設けたものである。挿通孔24bには吊りボルトKが挿通される。また、調整孔24cには高力ボルト24dが挿通される。高力ボルト24dは、位置の微調整を可能にするためにアングル材21へ複数設けられた適宜の孔に挿通された状態でナット24eと螺合されることにより、アングル材24aをアングル材21の適宜の位置に固定する。また、吊り下げ部24の位置調整をより自在にするため、図11に示されるように、調整孔24cは細長い孔となっている。このため、吊り下げ部24をアングル材21に固定するための高力ボルト24dとナット24eは、アングル材24aをアングル材21へ強固に固定する必要がある。そこで、本実施形態では、アングル材24aをアングル材21へ固定するためのボルトに、ボルト軸周りの回転方向も同時に拘束するいわゆるハイテンボルトと呼ばれる高力ボルト24dを用いている。
【0047】
天吊り空調ユニット1を建物の天井に取り付ける際は、高力ボルト24dとナット24eを緩めたままの状態で天吊り空調ユニット1を天井付近へ持ち上げ、吊り下げ部24の挿通孔24bに吊りボルトKを挿通させる。そして、吊りボルトKの下端にナットを螺合させて吊り下げ部24を吊りボルトKに固定すると共に、高力ボルト24dとナット24eを締めて吊り下げ部24をアングル材21に固定する。天吊り空調ユニット1を天井付近へ持ち上げて挿通孔24bに吊りボルトKを挿通させる際、吊りボルトKの位置精度が低すぎるために挿通孔24bに吊りボルトKを挿通させることができない場合は、高力ボルト24dを挿通しているアングル材21の孔の位置を適宜変更する。
【0048】
天吊り空調ユニット1には、このように、吊りボルトKを挿通する挿通孔24bの位置を自在に変更可能にする吊り下げ部24が備わっているため、工事現場から遠隔の地にある工場で組み立てられた天吊り空調ユニット1であっても、工事現場でスムーズな取り付けが可能となる。しかし、天吊り空調ユニット1は、このような吊り下げ部24を備える形態に限定されるものではない。吊りボルトKの位置精度が高い工事現場に適用する場合であれば、吊り下げ部24を省略し、アングル材21に設けられた孔に吊りボルトKを挿通して天吊り空調ユニット1を取り付けてもよい。
【0049】
また、工場で組み立てた天吊り空調ユニット1を工事現場の吊りボルトKへスムーズに取り付けるための手段としては、上述した吊り下げ部24をフレーム2に設ける手段の他に、例えば、以下のような手段が挙げられる。
【0050】
図12は、吊りボルトKの下端を位置決めするゲージの第1例を示した図である。吊りボルトKの下端の位置は、吊りボルトKへの振れ止めFの取り付けによって確定する。よって、上記実施形態の天吊り空調ユニット1における吊り下げ部24のように、吊りボル
トKを挿通させるための孔の位置がある程度確定している空調機器を取り付ける場合、吊りボルトKの下端同士の位置関係を規定するための位置決め孔72を、板材からなるゲージ本体71の四隅に設けたゲージ7を用意しておき、このゲージ7で吊りボルトKの下端同士を位置合わせした状態で振れ止めFを吊りボルトKに取り付けておけば、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへスムーズに組付け可能である。また、ゲージ7に人孔73を設けておけば、ゲージ7で吊りボルトKの下端同士を位置合わせした状態で振れ止めFを吊りボルトKに容易に取り付け可能である。なお、ゲージ7は板材で作ったものに限定されない。図13は、吊りボルトKの下端を位置決めするゲージの第2例を示した図である。ゲージ7は、例えば、4本のアングル材を矩形に接合したゲージ本体71で形成したものであってもよい。以下、ゲージ7を使った天吊り空調ユニット1の取り付け方法について解説する。
【0051】
図14は、ゲージ7を使った天吊り空調ユニット1の取り付け方法を解説した図である。ゲージ7を使うと、以下のような順序で施工作業をすることができる。すなわち、図14(A)に示されるように、振れ止めFが吊りボルトKに取り付けられていない状態において、作業者Mは、振れ止めFとゲージ7を用意する。そして、高所作業車Sを使って天井Tに近づく。次に、図14(B)に示されるように、作業者Mは、ゲージ7に設けられている4つの位置決め孔72に各吊りボルトKの下端を挿通し、ナット等で仮止めする。そして、作業者Mは、ゲージ7の人孔73を通じてゲージ7の上に上半身を出し、吊りボルトKに振れ止めFを取り付ける。吊りボルトKに振れ止めFが取り付けられると、吊りボルトKの下端の位置が振れ止めFによって固定されるため、ゲージ7を取り外しても吊りボルトKの下端の位置は保たれる。振れ止めFの取り付けが完了した後は、図14(C)に示されるように、吊りボルトKからゲージ7を取り外し、代わりに天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ近づける。そして、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKに取り付ける。これにより、図14(D)に示されるように、天吊り空調ユニット1の取り付けが完了する。
【0052】
ゲージ7を使わずに天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付ける場合、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ実際に取り付けてみないと、吊りボルトKの下端を天吊り空調ユニット1の吊り下げ部24へ位置合わせすることができない。よって、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付ける前に振れ止めFを吊りボルトKへ取り付けることはできない。そして、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付けた後に振れ止めFを吊りボルトKへ取り付ける場合、図14(B)において示したように、4つある吊りボルトKに囲まれる位置に上半身を置いて振れ止めFを吊りボルトKへ取り付けるということが不可能である。したがって、作業者Mは、吊りボルトKに取り付けられた天吊り空調ユニット1の周りを周回するように高所作業車Sを少しずつ移動させながら振れ止めFの取り付け作業を行う必要がある。このため、振れ止めFの取り付けに要する作業時間が大きい。また、ゲージ7によって下端が位置決めされていない吊りボルトKへ天吊り空調ユニット1を取り付ける必要があるため、吊りボルトKを天吊り空調ユニット1へ取り付ける作業の際にも、天吊り空調ユニット1を高所作業車Sで天井付近へ持ち上げてから吊り下げ部24の位置を変更する等の調整作業が必要となり、吊りボルトKへの天吊り空調ユニット1の取り付けも容易でない。
【0053】
この点、ゲージ7によって位置決めされ、振れ止めFによって位置が固定された吊りボルトKの下端に天吊り空調ユニット1を取り付ける図14の取り付け方法であれば、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付ける作業も、吊りボルトKへ振れ止めFを取り付ける作業も極めて容易に行うことができる。よって、例えば、同じ天吊り空調ユニット1を複数台取り付ける必要がある工事現場においては、天吊り空調ユニット1が工事現場へ到着する前であっても、吊りボルトKに振れ止めFを取り付ける作業を先行して行うことができる。そして、天吊り空調ユニット1の製作が完了して工場から工事現場へ到着次
第、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ次々に取り付けることができる。更に、上述したように、給気チャンバー4等が各所で共通に適用できる形態となっていれば、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ次々に取り付ける際に、天吊り空調ユニット1の取付け箇所を誤る恐れも無い。
【0054】
なお、ゲージ7を使ったこのような取り付け方法は、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5をフレーム2で一体化した天吊り空調ユニット1の取り付けに限定されるものではない。ゲージ7を使ったこのような取り付け方法は、例えば、空調機本体3や給気チャンバー4等の各種空調機器を単体で吊りボルトKに取り付ける場合であっても同様に適用できる。また、ゲージ7は、伸縮機能を有していて様々な位置関係に対応できるものであってもよいし、或いは、様々な種類の天吊り空調ユニット1に対応するために位置決め孔72が複数機種分設けられていてもよい。また、吊りボルトKを天井に固定する際に行う固定作業において、天井にアンカーナットを埋め込むインサート施工時のゲージとして用いてもよい。
【0055】
ところで、上記実施形態のように、工場で製作された天吊り空調ユニット1を車両Vで工事現場へ運搬して取り付ける形態を採る場合、搬送時に天吊り空調ユニット1が風雨等に晒されるのを防ぐため、天吊り空調ユニット1を養生用のカバーで覆った状態で運搬することが考えられる。この場合、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付ける際に当該カバーを天吊り空調ユニット1から取り除いてもよいが、当該カバーを天吊り空調ユニット1に取り付けた状態のままで天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付けてもよい。天吊り空調ユニット1が取り付けられる工事現場では、天吊り空調ユニット1の取り付けといった空調設備の工事の他にも、例えば、防音や断熱を目的とした各種材料の吹き付け作業や、内装の仕上げや各種工作作業等に伴う粉塵の飛散等があり得る。よって、このような飛散物から天吊り空調ユニット1を保護するためにも、カバーで覆った天吊り空調ユニット1をそのままの状態で吊りボルトKに取り付けると合理的である。天吊り空調ユニット1を覆うカバーとしては、各種のものが考えられるが、例えば、ビニール製のカバーであれば、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付ける際に吊りボルトKの下端で当該ビニール製のカバーを突き破ることができ、且つ、カバーの除去や廃棄も容易である。
【0056】
また、上記実施形態では、空調機本体3を側方から支持する部材として支持部材27を例示していたが、この他の支持部材を設けてもよい。図15は、支持部材の追加例を示した図である。天吊り空調ユニット1には、例えば、図15に示されるように、支持部材28を追加してもよい。支持部材28は、略L字型の金具であり、一端がフレーム2のアングル材21にボルトで固定され、他端が空調機本体3の側面に対向する位置関係となるように配置されている。このような支持部材28が追加されていれば、天吊り空調ユニット1を横倒しにした場合に、空調機本体3の側面が支持部材27,28の2点で支持されるため、吊り下げ部分の損傷を可及的に抑制することができる。
【0057】
また、上記実施形態において、天井Tに天吊り空調ユニット1を取り付けた後は、天吊り空調ユニット1のフレーム2を解体してもよい。図16は、フレーム2を解体する様子を示した図である。上記実施形態の天吊り空調ユニット1は、吊りボルトKに固定した後、フレーム2を構成するアングル材21等の各部材のうち、空調機本体3や給気チャンバー4、還気チャンバー5の支持に関わらない下側の部位(下部フレーム)を図16に示すように除去してもよい。これにより、除去した部分のアングル材21等を他に有効活用することができる。
【符号の説明】
【0058】
K・・吊りボルト
T・・天井
F・・振れ止め
V・・車両
S・・高所作業車
M・・作業者
D・・台車
1・・天吊り空調ユニット
2・・フレーム
3・・空調機本体
4・・給気チャンバー
5・・還気チャンバー
6・・仮止め
7・・ゲージ
21・・アングル材
22・・リブプレート
23・・リブプレート
24・・吊り下げ部
24a・・アングル材
24b・・挿通孔
24c・・調整孔
24d・・高力ボルト
24e・・ナット
25・・棒ネジ
26・・吊り下げ金具
27,28・・支持部材
31・・筐体
32・・補機
33・・付帯配管
34・・天吊り用取付部分
35・・防振ゴム
41・・筐体
42・・連結用開口部
51・・筐体
61・・天板部
62・・側壁部
63・・切り欠き部
71・・ゲージ本体
72・・位置決め孔
73・・人孔
D1・・台座
D2・・車輪
D3・・補助棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16