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特許7520092コアシェル粒子およびリチウムイオン電池
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  • 特許-コアシェル粒子およびリチウムイオン電池 図1
  • 特許-コアシェル粒子およびリチウムイオン電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】コアシェル粒子およびリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   C01G 33/00 20060101AFI20240712BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240712BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20240712BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240712BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240712BHJP
【FI】
C01G33/00 A
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/36 C
H01M4/36 D
H01M4/485
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022191932
(22)【出願日】2022-11-30
(65)【公開番号】P2024070761
(43)【公開日】2024-05-23
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】111143108
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柯冠宇
(72)【発明者】
【氏名】曾俊棋
(72)【発明者】
【氏名】劉佳兒
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-053945(JP,A)
【文献】特開2020-105063(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111354923(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105047871(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109428066(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 33/00
H01M 4/485
H01M 4/36
H01M 4/131
H01M 4/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学構造Ti(1-x)M1xNb(2-y)M2y(7-z)zを有するコア(式中、M1はMgであり、M2はCuであり、Qはであり、xは0から 0.15であり、yは0から0.15であり、zは0から2である。)と、
前記コアの表面の少なくとも一部を覆う、Cu、Nb、Ti、およびOを含むシェル層と、
を含むコアシェル粒子であって、
前記シェル層のCu含有量が5原子%以上15原子%以下、Nb含有量が0原子%より大きく5.87原子%以下、Ti含有量が0原子%より大きく6原子%以下、O含有量が70原子%以上90原子%以下である
コアシェル粒子
【請求項2】
前記コアと前記シェル層の重量比が1:0.004から1:0.02である、請求項1に記載のコアシェル粒子。
【請求項3】
前記シェル層の厚さが5nmから50nmである、請求項1に記載のコアシェル粒子。
【請求項4】
前記シェル層がアモルファス構造である、請求項1に記載のコアシェル粒子。
【請求項5】
前記シェル層は前記コア表面の一部が前記シェル層から露出している不連続膜である、請求項1に記載のコアシェル粒子。
【請求項6】
前記コアシェル粒子のメディアン一次粒子径(D50)が100nmから400nmである、請求項1に記載のコアシェル粒子。
【請求項7】
負極と、
正極と、
前記負極と前記正極との間に配置された電解質と、
を含むリチウムイオン電池であって、
前記負極が請求項1に記載のコアシェル粒子を含む、リチウムイオン電池。
【請求項8】
前記負極がチタン酸リチウム粒子をさらに含み、前記コアシェル粒子と前記チタン酸リチウム粒子の重量比が90:10から10:90である、請求項7に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記正極が、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄マンガンリチウム、またはこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、電池のリチウムイオン電池、および電池の負極組成物に用いられるコアシェル粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炭素負極に用いられている主な材料は、容量に優れる(~350mA/g)が、 依然としてサイクル寿命、安全性、高速充電等に関し依然として問題を有する。チタン酸リチウム(Lithium titanate, Li4Ti512)は、長寿命および高安全性の高速再充電可能な負極材料であるが、その容量は低い(~165mAh/g)。ニオブ酸チタン(titanium niobate)(TiNb27,TNO)は、理論容量がより高い(~380mAh/g)ことから、次世代の高速充電可能な負極として用いるのに適しており、デンドライトの成長を抑制できる1.6Vの作動電位、優れた安全性、長いサイクル寿命、および高いタップ密度を有する。従来のリチウム電池は高エネルギー密度を有するが、充電レートが低い(<5C、50%の充電容量)。チタン酸リチウム電池は高速な充電レート(>5C、少なくとも80%の充電容量)を有するが、エネルギー密度が充分でないため、その応用が制限を受ける。チタン酸リチウムlithium titanateに比べ、ニオブ酸チタン は容量およびエネルギー密度がより高く、高速再充電リチウム電池のエネルギー密度を大幅に高めることができる。故に、ニオブ酸チタンは、電動車両の耐久性および充電レートの改善、エネルギー貯蔵システムのエネルギー貯蔵密度の向上、および家電機器の充電時間の短縮のために広く用いることができる。加えて、ニオブ酸チタンは、低温で優れた特性を示し、これにより各種の過酷な環境に適応できるようになる。しかしながら、ニオブ酸チタン は導電性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2020/0140339A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワーリチウム電池における活物質として利用できるようにし、かつ例えば充放電容量およびサイクル寿命等の性能をより高めるため、ニオブ酸チタンにはさらなる改善が要される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態は、化学構造Ti(1-x)M1xNb(2-y)M2y(7-z)z(式中、M1はLiまたはMgであり、M2はFe、Mn、V、Ni、Cr、またはCuであり、QはF、Cl、Br、I、またはSであり、xは0から0.15であり、yは0から0.15であり、zは0から2である。)を有するコアと、コア表面の少なくとも一部を覆う、Cu、Nb、Ti、およびOを含むシェル層と、を含むコアシェル粒子を提供する。
【0006】
一実施形態は、負極、正極、および負極と正極との間に配置された電解質とを含むリチウム電池であって、負極が、化学構造Ti(1-x)M1xNb(2-y)M2y(7-z)z(式中、M1はLiまたはMgであり、M2はFe、Mn、V、Ni、Cr、またはCuであり、QはF、Cl、Br、I、またはSであり、xは0から0.15であり、yは0から0.15であり、zは0から2である。)を有するコアと、コア表面の少なくとも一部を覆う、Cu、Nb、Ti、およびOを含むシェル層とを含むコアシェル粒子、を含むリチウム電池を提供する。
【発明の効果】
【0007】
銅含有のシェルを有するコアシェル粒子は、充放電容量が高く、サイクルタイムが長い。
【0008】
添付の図面を参照にしながら、以下の実施形態において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下の詳細な説明および例を添付の図面を参照としながら読むことによって、本開示をより十分に理解することができる。
図1図1Aは、本開示の実施形態による、異なる充放電レートにおける電池の電圧-容量曲線を示している。図1Bは、本開示の実施形態による、充電および放電サイクル数に対応する容量を示している。
図2図2Aは、本開示の実施形態による、異なる充放電レートにおける電池の電圧-容量曲線を示している。図2Bは、本開示の実施形態による、充電および放電サイクル数に対応する容量を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な記載では、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう、多数の特定の詳細が示される。しかしながら、これら特定の詳細がなくとも1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であるということは、明らかであろう。また、図を簡潔にするため、周知の構造および装置は概略的に示される。
【0011】
本開示の一実施形態は、化学構造Ti(1-x)M1xNb(2-y)M2y(7-z)zを有するコア(式中、M1はLiまたはMgであり、M2はFe、Mn、V、Ni、Cr、またはCuであり、Q は F、Cl、Br、I、またはSであり、xは0から0.15であり、yは0から0.15であり、zは0から2である。)と、コア表面の少なくとも一部を覆う、Cu、Nb、Ti、およびOを含むシェル層と、を含むコアシェル粒子を提供する。いくつかの実施形態において、コアシェル粒子の形成方法は、ニオブ源(source)、チタン源、および他の任意のドーパント(例えば、任意でフッ素源)を混合した後に、焼結してコアを形成するステップを含む。次いで、そのコアを銅源と混合し、コア上に銅含有シェル層を形成して、コアシェル粒子を得る。なお、銅源は、焼結ステップより前に、ニオブ源、チタン源、およびその他のドーパントと予混合しておくのではないという点に注目すべきである。銅源、ニオブ源、チタン源を焼結前に混合すると、銅含有シェル層およびニオブ酸チタン コアを有するコアシェル粒子ではなくて、銅ドープニオブ酸チタン材料が得られる。コアシェル粒子では、シェル層中のCuの一部がコア中に拡散する一方で、コア中のNbおよびTiの一部がシェル層中に拡散する。それにもかかわらず、シェル層とコアとの間にははっきりとした境界面があり、シェル層がアモルファス構造である一方、コアは結晶構造である。加えて、コアの主要な金属組成がTiおよびNbである一方、シェル層の主要な金属組成はCuである。
【0012】
一実施形態において、コアとシェル層の重量比は1:0.004から1:0.02である。シェル層の重量比が大きすぎると、リチウムイオンのインターカレーションとデインターカレーション(intercalation and de-intercalation )が妨げられる可能性がある。シェル層の重量比が小さすぎると、コアシェル粒子材料が 、シェル層を有さないものと似たような振る舞いをする。
【0013】
いくつかの実施形態において 、シェル層のCu含有量は5から15原子%、Nb含有量は0から5原子%、Ti含有量は0から6原子%、O含有量は70から90原子%である。シェル層中のNbおよびTiの含有量は、銅含有シェル層を形成するための焼結温度および焼結時間によって決まる。焼結温度が高すぎる、または焼結時間が長すぎると、シェル層の厚さが、リチウムイオンのインターカレーションとデインターカレーションを妨げ得るほどに厚くなりすぎてしまう。焼結温度が低すぎる、または焼結時間が短すぎると、反応が不完全となって残留硫酸銅が残り、表面抵抗が高まってしまう。
【0014】
いくつかの実施形態において、シェル層の厚さは5nmから50nmである。シェル層が薄すぎると、コアシェル粒子材料が、シェル層を備えないものと似たような振舞いをする。シェル層が厚すぎると、リチウムイオンのインターカレーションとデインターカレーションが妨げられる可能性がある。
【0015】
いくつかの実施形態において、シェル層は不連続膜である。例えば、コア表面の一部がシェル層から露出していてよい。一方、他の実施形態では、シェル層がコア表面を完全に被覆していてよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、コアシェル粒子のメディアン一次粒子径(D50)は100nmから400nmである。コアシェル粒子の一次粒子径が大きすぎると、電子およびリチウムイオンの伝導経路(conducting paths)が増えると共に、伝導時間の尺度が長くなるため、レート能力が低下する可能性がある。コアシェル粒子のメディアン一次粒子径(D50)が小さすぎると、材料の比表面積が増大して、混合時に分散性が悪くなり、電極における材料の密度および均一性が低下する可能性がある。
【0017】
本開示の実施形態は、負極と、正極と、負極と正極との間に配置された電解質とを含むリチウムイオン電池であって、負極がコアシェル粒子を含む、リチウムイオン電池を提供する。負極は、導電性カーボンブラック、バインダー、またはその他の適した組成物をさらに含んでいてよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、負極はチタン酸リチウム粒子をさらに含み、かつ負極のレート性能の改善および材料コストの低減のため、コアシェル粒子とチタン酸リチウム粒子の重量比は90:10から10:90とする。チタン酸リチウムの量が少なすぎると、負極は、チタン酸リチウム粒子を有さないものと似たような振舞いをする。チタン酸リチウムの量が多すぎると、複合材のグラム容量(gram capacitance)が大幅に低下する。例えば、チタン酸リチウムの化学構造はLi4Ti5aであり、8≦a≦12である。
【0019】
いくつかの実施形態において、正極は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、三元系正極材料、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄マンガンリチウム、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、電解質はその形態(morphology)によって、液体、コロイド、固体状に分類できる。液体電解質はリチウム塩、溶媒、またはイオン性液体からなる。通常用いられるリチウム塩はLiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiBF4、LiTFSI、またはLiCF3SO3等であり、また通常用いられる溶媒は、環状カーボネート(例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート)、直鎖状カーボネート(例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート)、またはエーテル成分(例えばジメチルエーテル、1、3-ジオキソラン)および類似のものである。固体電解質はポリマーとガラスセラミックスに分けられる。また、コアシェル粒子を有する負極の性能を測定する際は、負極をリチウム金属正極および典型的な電解質と組み合わせて、リチウム正極および電解質を有するハーフセルを形成することができる。
【0020】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、添付の図面を参照にしながら、例示的な実施形態について詳細に説明する。本発明概念は、ここに示されるこれら例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形式で具体化され得る。明確とするために周知の部分についての記載は省き、かつ全体を通して類似する参照数字は類似する構成要素を指すものとする 。
【実施例
【0021】
比較例1
【0022】
化学量論比の酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素源(Mg2F)を、分散剤PVABP-05を含む脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れて1015℃で3時間焼結し、フッ素ドープニオブ酸チタン材料Mg0.02Ti0.98Nb26.960.04を得た。
【0023】
そのフッ素ドープニオブ酸チタン85重量部、KS4(TIMCAL TIMREXより入手可能)6重量部、Super P(TIMCAL TIMREXより入手可能)4重量部、およびPVDF(Solefより入手可能)5重量部を均一に混合してペーストを作製し、次いでそのペーストをアルミニウム箔に塗布し、厚さ150マイクロメーター未満のコーティング層を形成した。そのコーティング層をカレンダー装置によりロールで伸ばし、元の厚さの65%にして、負極板を形成した。その負極板を直径12mmの円形にカットした。その円形負極板、リチウム金属正極板、および電解質を組み合わせてCR2032ハーフセルを形成し、それらの電気化学特性をテストした。電解質組成物は1M LiPF6溶液とし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)(EC:DMC=1:2,v/v)とした。図1Aは、異なる充放電レートにおける電池の電圧-容量の曲線を示しており、充電レート1Cで、放電を定電流-定電圧(constant current-constant voltage)で行い、充電を定電流(constant current)で行ったものである。図1Bは、電池の容量-充放電サイクル数の曲線を示している。表1は、異なる充放電レートにおける電池の容量-電圧、および50サイクル後の電池の容量保持率を示している。
【0024】
実施例1
【0025】
比較例1で作製したフッ素およびマグネシウムドープニオブ酸チタン材料Mg0.02Ti0.98Nb26.960.0420gをCuSO4・5H2O水溶液0.3139gに加え、室温で均一に撹拌した後、100℃まで昇温し水を蒸発させて乾燥粉末を得た。次いで、その乾燥粉末をアルミナ製のるつぼに入れ、700℃で2時間焼結した後、表面被覆シェル層(銅含有)に覆われた、フッ素およびマグネシウムコアがドープされたニオブ酸チタンを有するコアシェル粒子を得た。
【0026】
フッ素ドープニオブ酸チタン85重量部、KS4(TIMCAL TIMREXより入手可能)6重量部、Super P(TIMCAL TIMREXより入手可能)4重量部、およびPVDF(Solefより入手可能)5重量部を均一に混合してペーストを作製し、次いでそのペーストをアルミニウム箔に塗布し、厚さ150マイクロメーター未満のコーティング層を形成した。そのコーティング層をカレンダー装置によりロールで伸ばし、元の厚さの65%にして、負極板を形成した。その負極板を直径12mmの円形にカットした。その円形負極板、リチウム金属正極板、および電解質を組み合わせてCR2032ハーフセルを形成し、それらの電気化学特性をテストした。電解質組成物は1M LiPF6溶液とし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)(EC:DMC=1:2,v/v)とした。図2Aは、異なる充放電レートにおける電池の電圧-容量の曲線を示しており、充電レート1Cで、放電を定電流-定電圧(constant current-constant voltage)で行い、充電を定電流(constant current)で行ったものである。図2Bは、電池の容量-充放電サイクル数の曲線を示している。表1は、異なる充放電レートにおける電池の容量-電圧、および50サイクル後の電池の容量保持率を示している。
【0027】
比較例2
【0028】
比較例1で作製したフッ素およびマグネシウムドープニオブ酸チタン材料Mg0.02Ti0.98Nb26.960.04 20gを、AgNO3水溶液0.315gに加え、室温で均一に撹拌した後、90℃まで昇温し水を蒸発させて乾燥粉末を得た。次いで、その乾燥粉末をアルミナ製のるつぼに入れ、700℃で1時間焼結した後、表面被覆シェル層(銀含有)に覆われた、フッ素およびマグネシウムコアがドープされたニオブ酸チタンを有するコアシェル粒子を得た。
【0029】
コアシェル粒子85重量部、KS4(TIMCAL TIMREXより入手可能)6 重量部、Super P(TIMCAL TIMREXより入手可能)4重量部 、およびPVDF(Solefより入手可能)5重量部を均一に混合してペーストを作製し、次いでそのペーストをアルミニウム箔に塗布し、厚さ150マイクロメーター未満のコーティング層を形成した。そのコーティング層をカレンダー装置によりロールで伸ばし、元の厚さの65%にして、負極板を形成した。その負極板を直径12mmの円形にカットした。その円形負極板、リチウム金属正極板、および電解質を組み合わせてCR2032ハーフセルを形成し、それらの電気化学特性をテストした。電解質組成物は1M LiPF6溶液とし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)(EC:DMC=1:2,v/v)とした。表1は、異なる充放電レートにおける電池の容量-電圧、および50サイクル後の電池の容量保持率を示している。
【0030】
【表1】
【0031】
シェル材料を有さないものや銀含有シェルを有するコアシェル粒子と比較して、銅含有シェルを有するコアシェル粒子は、充放電容量がより高く、サイクル時間がより長い。
【0032】
比較例3
【0033】
化学量論比の酸化ニオブと酸化チタンを、PVA BP-05分散剤を含む脱イオン水に加えてから、18時間かけて均一に混合し、均一に分散したスラリーペーストを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をアルミニウム製のるつぼに入れて1100℃で12時間焼結し、ニオブ酸チタン材料TiNb27を得た。
【0034】
ニオブ酸チタン85重量部、KS4(TIMCAL TIMREXより入手可能)6重量部、Super P(TIMCAL TIMREXより入手可能)4重量部、およびPVDF(Solefより入手可能)5重量部を均一に混合してペーストを作製し、次いでそのペーストをアルミニウム箔に塗布し、厚さ150マイクロメーター未満のコーティング層を形成した。そのコーティング層をカレンダー装置によりロールで伸ばし、元の厚さの65%にして、負極板を形成した。その負極板を直径12mmの円形にカットした。その円形負極板、リチウム金属正極板、および電解質を組み合わせてCR2032ハーフセルを形成し、それらの電気化学特性をテストした。電解質組成物は1M LiPF6溶液とし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)(EC:DMC=1:2,v/v)とした。表3は、異なる充放電レートにおける電池の容量を示している。
【0035】
実施例2
【0036】
比較例3で作製したニオブ酸チタン材料TiNb27 20gを、CuSO4・5H2O水溶液0.3139gに加え、室温で均一に撹拌した後、100℃まで昇温し水を蒸発させて乾燥粉末を得た。次いで、その乾燥粉末をアルミナ製のるつぼに入れ、600℃で1時間焼結した後、表面被覆シェル層(銅含有)に覆われた、ニオブ酸チタンコアを有するコアシェル粒子を得た。表2に示されるように、シェル層およびコアにおける異なる位置の元素組成が、X線エネルギー分散型アナライザー(X-ray energy dispersive analyzer,EDX)により分析されている。
【0037】
【表2】
【0038】
表2からわかるように、シェル層中には 、コアからシェル層に一部拡散したTiおよびNbが存在し、コア中には、シェル層からコアにCuが一部拡散している。しかし、シェル層は主にCuを含有し、一方コアは主にNbおよびTiを含有している。
【0039】
ニオブ酸チタン85重量部、KS4(TIMCAL TIMREXより入手可能)6重量部、Super P(TIMCAL TIMREXより入手可能)4重量部、およびPVDF(Solefより入手可能)5重量部を均一に混合してペーストを作製し、次いでそのペーストをアルミニウム箔に塗布し、厚さ150マイクロメーター未満のコーティング層を形成した。そのコーティング層をカレンダー装置によりロールで伸ばし、元の厚さの65%にして、負極板を形成した。その負極板を直径12mmの円形にカットした。その円形負極板、リチウム金属正極板、および電解質を組み合わせてCR2032ハーフセルを形成し、それらの電気化学特性をテストした。電解質組成物は1M LiPF6溶液とし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)(EC:DMC=1:2,v/v)とした。表3は、異なる充放電レートにおける電池の容量を示している。
【0040】
実施例3
【0041】
比較例1で作製したニオブ酸チタン材料TiNb27 20gを、CuSO4・5H2O水溶液0.3139gに加え、室温で均一に撹拌した後、100℃まで昇温し水を蒸発させて乾燥粉末を得た。次いで、その乾燥粉末をアルミナ製のるつぼに入れ、700℃で1時間焼結した後、表面被覆シェル層(銅含有)に覆われた、ニオブ酸チタンコアを有するコアシェル粒子を得た。
【0042】
ニオブ酸チタン85重量部 、KS4(TIMCAL TIMREXより入手可能)6重量部 、Super P(TIMCAL TIMREXより入手可能))4重量部、およびPVDF(Solefより入手可能)および5重量部を均一に混合してペーストを作製し、次いでそのペーストをアルミニウム箔に塗布し、厚さ150マイクロメーター未満のコーティング層を形成した。そのコーティング層をカレンダー装置によりロールで伸ばし、元の厚さの65%にして、負極板を形成した。その負極板を直径12mmの円形にカットした。その円形負極板、リチウム金属正極板、および電解質を組み合わせてCR2032ハーフセルを形成し、それらの電気化学特性をテストした。 電解質組成物は1M LiPF6溶液とし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)(EC:DMC=1:2,v/v)とした。表3は、異なる充放電レートにおける電池の容量を示している。
【0043】
実施例4
【0044】
比較例3で作製したニオブ酸チタン材料TiNb27 20gを、CuSO4・5H2O水溶液0.6278gに加え、室温で均一に撹拌した後、100℃まで昇温し水を蒸発させて乾燥粉末を得た。次いで、その乾燥粉末をアルミナ製のるつぼに入れ、600℃で1時間焼結した後、表面被覆シェル層(銅含有)に覆われた、ニオブ酸チタンコアを有するコアシェル粒子を得た。
【0045】
ニオブ酸チタン85重量部、KS4(TIMCAL TIMREXより入手可能)6重量部、Super P(TIMCAL TIMREXより入手可能)4重量部、およびPVDF(Solefより入手可能) 5重量部を均一に混合してペーストを作製し、次いでそのペーストをアルミニウム箔に塗布し、厚さ150マイクロメーター未満のコーティング層を形成した。そのコーティング層をカレンダー装置によりロールで伸ばし、元の厚さの65%にして、負極板を形成した。その負極板を直径12mmの円形にカットした。その円形負極板、リチウム金属正極板、および電解質を組み合わせてCR2032ハーフセルを形成し、それらの電気化学特性をテストした。 電解質組成物は1M LiPF6溶液とし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)(EC:DMC=1:2,v/v)とした。表3は、異なる充放電レートにおける電池の容量を示している。
【0046】
比較例4
【0047】
酸化ニオブ5.38g、酸化チタン4.72g、およびCuSO4・5H2O 0.6278gを、分散剤PVA BP-05を含む脱イオン水に加えてから、18時間かけて均一に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をアルミニウム製のるつぼに入れて1015℃で3時間焼結し、銅ドープニオブ酸チタンを得た。本例では、ニオブ酸チタンコアを覆うシェル層が形成されるのではなく、銅がニオブ酸チタン中に均一にドープされる。
【0048】
ニオブ酸チタン85重量部、KS4(TIMCAL TIMREXより入手可能)6重量部、Super P(TIMCAL TIMREXより入手可能)4重量部、およびPVDF(Solefより入手可能) 5重量部を均一に混合してペーストを作製し、次いでそのペーストをアルミニウム箔に塗布し、厚さ150マイクロメーター未満のコーティング層を形成した。そのコーティング層をカレンダー装置によりロールで伸ばし、元の厚さの65%にして、負極板を形成した。その負極板を直径12mmの円形にカットした。その円形負極板、リチウム金属正極板、および電解質を組み合わせてCR2032ハーフセルを形成し、それらの電気化学特性をテストした。電解質組成物は1M LiPF6溶液とし、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)(EC:DMC=1:2,v/v)とした。表3は、異なる充放電レートにおける電池の容量を示している。
【0049】
【表3】
【0050】
当業者には、開示された方法および材料に各種修飾および変更を加え得るということが明らかであろう。本明細書および例は単に例示とみなされるように意図されており、本開示の実際の範囲は以下の請求項およびそれらの均等物により示される。
図1
図2