(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】MEK阻害剤治療によって惹起される皮膚反応を治療するBRAF阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/517 20060101AFI20240712BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240712BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20240712BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240712BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/4523 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/275 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
A61K31/517
A61P17/00
A61P17/10
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/519
A61K31/4523
A61K31/4184
A61K31/166
A61K31/275
A61K31/437
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022194738
(22)【出願日】2022-12-06
(62)【分割の表示】P 2020506904の分割
【原出願日】2018-08-08
【審査請求日】2022-12-14
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン ニール
(72)【発明者】
【氏名】シェラハ ノア
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-514866(JP,A)
【文献】Nature communications,2016年,Vol. 7, Article No. 12348
【文献】Australasian Journal of Dermatology,2014年,Vol.55, pp.250-254
【文献】JEADV,2013年,Vol.27, pp.11-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象動物においてMEK阻害剤関連皮膚症状を治療または予防するための、LUT197またはLUT195の有効量を含む医薬組成物であって、前記MEK阻害剤がトラメチニブ(GSK1120212)、コビメチニブ(XL518)、ビニメチニブ(MEK162)、セルメチニブ、PD-325901、CI-1040、PD035901、UO126、TAK-733、およびこれらの任意の組合せから成る群から選択さ
れ、前記MEK阻害剤関連皮膚症状がケラチノサイトで生じる、前記医薬組成物。
【請求項2】
医薬組成物の投与が、投与前の対象動物で観察されるMAPK活性化と比較して、当該対象動物においてMAPK活性化の増加をもたらす、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
MEK阻害剤関連皮膚症状が、ざ瘡様発疹
(丘疹膿疱性発疹)である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)の徴候または症候が、肉色の丘疹、拡張した小胞、外分泌の開口部、掻痒症、紅斑、膿疱または丘疹の1つ以上を含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
対象動物が医薬組成物の投与前にMEK阻害剤で治療される、請求項1-
4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
局所的に投与するための
請求項1記載の医薬組成物であって、
対象動物の皮膚に局所的に投与するための、
前記医薬組成物。
【請求項7】
有効量のLUT197またはLUT156を含む、対象動物におけるざ瘡様発疹を治療または予防するための医薬組成物であって、前記ざ瘡様発疹がMEK阻害剤で対象動物を治療することによって引き起こされる副作用であり、前記MEK阻害剤がトラメチニブ(GSK1120212)、コビメチニブ(XL518)、ビニメチニブ(MEK162)、セルメチニブ、PD-325901、CI-1040、PD035901、UO126、TAK-733、およびこれらの任意の組合せから成る群から選択される、前記医薬組成物。
【請求項8】
局所的に投与するための、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
クリーム、軟膏、ローション、ゲル、フォーム、懸濁物、水溶液または共溶媒溶液、膏薬、噴霧可能な液体形、エマルジョン、ムース、ローションまたは血清の形態である、請求項8記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互引用)本出願は、米国仮特許出願No.62/542,682(2017年8月8日出願)(その完全な内容は参照によって本明細書に含まれる)の利益および優先権を主張する。
(技術分野)
本技術は、BRAF阻害剤を含む組成物並びに対象動物のMEK阻害剤関連皮膚症状の治療および予防のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術の背景に関する以下の記載は単に本技術の理解の一助として提供され、本技術に対する先行技術の記載または構成することを容認するものではない。
MEK(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAP2K、MEKおよびMAPKKとしても知られている))は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)をリン酸化するキナーゼ酵素である。マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPKまたはMAPキナーゼ)は、セリン/スレオニン特異的タンパク質キナーゼであり、前記は、多様な細胞シグナリング経路で必要とされ、細胞機能(分裂増殖(proliferation)、遺伝子発現、分化、有糸分裂、細胞生存およびアポトーシスを含む)を調節する。p38(MKK3およびMKK6)、JNK(MKK4およびMKK7)およびERK(MEK1およびMEK2)の活性化因子は、独自のMAPキナーゼシグナルトランスダクション経路を規定する。
これらの経路を標的とする多様な治療薬剤が関連する様々な疾患(例えばメラノーマ、肺癌、結腸直腸癌、脳の癌、多発性骨髄腫、膵臓癌、および神経線維腫症)の治療で用いられる。治療薬剤(阻害剤)にはキナーゼ阻害剤、例えばトラメチニブおよびコビメチニブが含まれる。
癌の無制御な細胞分裂を駆動する特異的な分子経路を封鎖するMEK阻害剤の能力は、化学療法に付きものの重篤な全身性有害事象の発生減少をもたらした。しかしながら、MEK阻害剤によって引き起こされる皮膚有害事象が報告され、それらにはざ瘡様(丘疹膿疱性)発疹、異常な頭皮、顔面の毛および/またはまつ毛の増殖、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および毛細血管拡張症が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はMEK阻害剤関連皮膚症状を治療する方法および医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある特徴では、本開示は、MEK阻害剤関連皮膚症状をその必要がある対象動物で治療または予防する方法を提供し、前記方法は、少なくとも1つのBRAF阻害剤の有効量を前記対象動物に投与し、それによってMEK阻害剤関連皮膚症状を治療する工程を含む。加えて或いはまた別に、本技術の方法のいくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤の投与は、投与前の対象動物で観察されるMAPK活性化と比較して、当該対象動物でMAPK活性化の増加をもたらす。
加えて或いはまた別に、本技術の方法のいくつかの実施態様では、MEK阻害剤関連皮膚症状は、ざ瘡様発疹、丘疹膿疱性発疹、異常な頭皮毛増殖、異常な顔面毛増殖、異常な毛の増殖、異常なまつ毛増殖、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および毛細血管拡張症から成る群から選択される。加えて或いはまた別に、本技術の方法のいくつかの実施態様では、MEK阻害剤関連皮膚症状はざ瘡様発疹である。
加えて或いはまた別に、本技術の方法のいくつかの実施態様では、対象動物は、少なくとも1つのBRAF阻害剤の投与前にMEK阻害剤で治療されている。加えて或いはまた別に、本技術の方法のいくつかの実施態様では、MEK阻害剤は、トラメチニブ(GSK1120212)、コビメチニブ(XL518)、ビニメチニブ(MEK162)、セルメチニブ、PD-325901、CI-1040、PD035901、UO126、TAK-733、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択される。
加えて或いはまた別に、本技術の方法のいくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は、BAY43-9006(ソラフェニブ)、LGX818(エンコラフェニブ)、PLX4032(ベムラフェニブ)、GSK2118436(ダブラフェニブ)、ARQ197(チバチニブ)、GSK1120212(トラメチニブ)、ARQ736、ARQ680、AZ628、CEP-32496、GDC-0879、NMS-P186、NMS-P349、NMS-P383、NMS-P396、NMS-P730、PLX3603(RO5212054)、PLX4720(ジフルオロフェニル-スルホンアミン)、PF-04880594、PLX4734、RAF265、RO4987655、SB590885、BMS908662、WYE-130600、TAK632、MLN 2480、XL281、LUT001、LUT156、LUT192、LUT195、LUT197、およびそれらの組合せから成る群から選択される。
加えて或いはまた別に、本技術の方法のいくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は、経口的に、局所的に、鼻内に、全身的に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、皮内に、眼内に、イオン導入で、経粘膜的に、または筋肉内に投与される。加えて或いはまた別に、本技術の方法のいくつかの実施態様では、局所投与は、対象動物の皮膚への局所投与を含む。
【0005】
別の特徴では、本開示は、MEK阻害剤関連皮膚症状をその必要がある対象動物で治療または予防するための少なくとも1つのBRAF阻害剤および指示を含むキットを提供する。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、MEK阻害剤関連皮膚症状は、ざ瘡様発疹、丘疹膿疱性発疹、異常な頭皮毛増殖、異常な顔面毛増殖、異常な毛の増殖、異常なまつ毛増殖、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および毛細血管拡張症から成る群から選択される。
加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は、経口、局所、鼻内、全身、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、眼内、イオン導入、経粘膜、または筋肉内投与のために処方される。
加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は、錠剤、カプセル、液体、懸濁物、散剤、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、香油、フォーム、スプレー、ローション、リキッドおよび皮膚パッチから成る群から選択される剤形で処方される。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤の投与は、投与前の対象動物で観察されるMAPK活性化と比較して、対象動物でMAPK活性化の増加をもたらす。
別の特徴では、本開示は、ざ瘡様発疹をその必要がある対象動物で治療または予防する方法を提供し、前記方法は、少なくとも1つのBRAF阻害剤の有効量を対象動物に投与する工程を含む。ざ瘡様発疹は、MEK阻害剤による対象動物の治療によって引き起こされる副作用であり得る。
加えて或いはまた別に、本技術の方法のいくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は、BAY43-9006(ソラフェニブ)、LGX818(エンコラフェニブ)、PLX4032(ベムラフェニブ)、GSK2118436(ダブラフェニブ)、ARQ197(チバチニブ)、GSK1120212(トラメチニブ)、ARQ736、ARQ680、AZ628、CEP-32496、GDC-0879、NMS-P186、NMS-P349、NMS-P383、NMS-P396、NMS-P730、PLX3603(RO5212054)、PLX4720(ジフルオロフェニル-スルホンアミン)、PF-04880594、PLX4734、RAF265、RO4987655、SB590885、BMS908662、WYE-130600、TAK632、MLN 2480、XL281、LUT001、LUT156、LUT192、LUT195、LUT197、およびそれらの組合せから成る群から選択される。
加えて或いはまた別に、本技術の方法のいくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は、経口的に、局所的に、鼻内に、全身的に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、皮内に、眼内に、イオン導入で、経粘膜的に、または筋肉内に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】0.3μMの濃度のC1、LUT001、LUT156、LUT192、LUT195、およびLUT197による処理に続くHEKaにおけるERKの活性化を示す。
【
図1B】1μMの濃度のLUT001、ベムラフェニブ、LUT156、LUT192、LUT195、およびLUT197による処理に続くHEKaにおけるERKの活性化を示す。
【
図1C】0.3μMの濃度のC1、LUT001、LUT156、LUT192、LUT195、およびLUT197による処理に続くホスホ-ERK1/2対比総ERK1/2を示す。
【
図1D】1μMの濃度のLUT001、ベムラフェニブ、LUT156、LUT192、LUT195、およびLUT197による処理に続くホスホ-ERK1/2対比総ERK1/2を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
BRAFは、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPKまたはERK)シグナリング経路の調節に関与するシグナルトランスダクションタンパク質キナーゼである。BRAFの変異は、MAPK経路を介する構成的シグナリングを誘発することができ、それは制御不能の細胞分裂増殖をもたらし得る。BRAF阻害剤の使用は、リン酸化ERK(BRAFの下流エフェクター)レベルの抑制または低下によって決定されるように、MAPKシグナリングの阻害と密接に関係することが示されている。
本開示は、BRAF阻害剤は予想に反して、BRAF野生型細胞でMAPKシグナリングを活性化するという反対の作用を誘発することができることを明らかにする(リン酸化ERKの増加したレベルによって決定)。例えば、
図1A-Dは、LUT156、LUT197(
図1Aおよび1C)またはベムラフェニブ(
図1Bおよび1D)BRAF阻害剤による処理後のヒト初代ケラチノサイト(HEKa)におけるERKの有意な活性化(リン酸化ERKの相対量の増加によって決定)を示し、一方、LUT001、LUT192およびLUT195はHEKaで中程度の効果をもたらした。これらの結果は、ケラチノサイト細胞における下流MAPK(ERK)の活性化に関して、種々のBRAF阻害剤の予想外の逆説的効果を示す。さらにまた、これらの結果は、ERK活性化に関して、多様な投薬量(濃度)における種々のBRAFの異なる効能を示す。
【0008】
定義
特段の規定がなければ、本明細書で用いられる技術用語および学術用語はいずれも、本技術が属する分野の業者の誰もが一般的に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈が明らかにそうではないことを示していないかぎり複数の対応語を含む。例えば、“a cell(細胞)”と言えば2つ以上の細胞の組合せなどを含む。概して、本明細書で用いられる用語体系、並びに下記に記載する細胞培養、分子遺伝学、有機化学、分析化学および核酸化学、並びにハイブリダイゼーションにおける研究室手順は、周知であり当業界で通常的に用いられるものである。
本明細書で用いられるように、数に関して“約”という用語は、そうでないことが記載されていないかまたは文脈からそうでないことが明白でないかぎり、どちらの方向(多い方または少ない方)でも当該数の1%、5%または10%の範囲内に含まれる数を含むと考えられる(ただしそのような数があり得る値の0%未満または100%を超える場合を除く)。
本明細書で用いられるように、薬剤または薬物の対象動物への“投与”は、その意図する機能を果たすために、対象動物へ化合物を導入またはデリバリーする一切の経路を含む。投与は適切な任意の経路によって実施することができ、経口、鼻内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、腫瘍内、または局所投与を含む。投与は、自己投与または他者による投与を含む。
【0009】
本明細書で用いられるように、“BRAF”、“B-Raf”、“Braf”、および“BRaf”は互換的に用いられ得る。これら用語はセリン/スレオニンタンパク質キナーゼBRAFに関し、前記は細胞シグナリング経路で必要とされる。BRAFに関して阻害剤という用語は、野生型(WT)または変異BRAFタンパク質の活性および/または発現に影響を及ぼすことができる任意の1つ以上の薬剤(薬物)、化合物または分子を指す。阻害剤は選択的でも非選択的でもよい。いくつかの実施態様では、阻害剤は逆説的作用を提示することができ、その場合、阻害剤は、増加したMAPK活性を例えば標的BRAFがWT BRAFである細胞で誘発する。BRAF阻害剤は当業界で公知である。いくつかの実施態様では、BRAF阻害剤は、化合物、その誘導体、許容できるその塩および/またはその溶媒和物を含むことができる。
本明細書で用いられるように、“コントロール”は、比較の目的のために実験で用いられる代替サンプルである。コントロールは“陽性”または“陰性”であることができる。例えば、実験の目的が、特定のタイプの疾患または症状の治療について治療薬剤の有効性の相関性を決定することである場合、陽性コントロール(所望の治療効果を提示することが判明している化合物または組成物)および陰性コントロール(治療を与えられないまたはプラセボを与えられる対象動物もしくはサンプル)が典型的には用いられる。
本明細書で用いられるように、“皮膚反応”、“皮膚有害反応”、“皮膚有害事象”および“皮膚症状”という用語は互換的に用いられ、MEK阻害剤による治療の結果として発達した、生じた、始まった、誘発された、引き起こされた、または出現した皮膚(skin, cutaneous)症状を指す。いくつかの実施態様では、皮膚症状は、MEK阻害剤による治療の副作用である。
【0010】
本明細書で用いられるように、“有効な量”という用語は、所望の治療的および/または予防的効果を達成するために十分な量、例えば本明細書に記載する疾患もしくは症状、または本明細書に記載する疾患もしくは症状に関連する1つ以上の徴候もしくは症候の予防または減少をもたらす量を指す。治療的または予防的適用に関して、対象動物に投与される組成物の量は、組成物、疾患の程度、タイプおよび重篤度、並びに個体の特徴(例えば一般的健康状態、年齢、性別、体重および薬剤耐性)に応じて変動するであろう。当業者は、これらの要件およびその他の要件に応じて適切な投薬量を決定することができるであろう。組成物はまた1つ以上の付加的な治療化合物と併用して投与され得る。本明細書に記載する方法では、治療組成物は、本明細書に記載する疾患または症状の1つ以上の徴候または症候を有する対象動物に投与され得る。本明細書で用いられるように、組成物の“治療的に有効な量”は、疾患または症状の生理学的作用が緩和または除去される組成物レベルを指す。治療的に有効な量は1回以上の投与で実施することができる。
本明細書で用いられるように、“MEK”、“ERK”、“MAPKK”は互換的に用いられ得る。前記用語はセリン/スレオニンタンパク質キナーゼMEKに関係し、前記は細胞のシグナリング経路に必要とされる。MEKに関して阻害剤という用語は、WTまたは変異MEKタンパク質の活性および/または発現に影響を及ぼすことができる任意の1つ以上の薬剤(薬物)、化合物または分子を指す。
【0011】
本明細書で用いられるように、“発現”は以下の1つ以上を含む:前駆体mRNAへの遺伝子の転写;成熟mRNAの生成のための前駆体mRNAのスプライシングおよびその他のプロセッシング;成熟mRNAのタンパク質への翻訳(コドン使用頻度およびtRNA利用可能性を含む);および翻訳生成物のグリコシル化および/またはその他の改変(適切な発現および機能のために要求される場合)。
本明細書で用いられるように、“個体”、“患者”または“対象動物”という用語は互換的に用いられ、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物、または人間を指す。ある種の実施態様では、個体、患者または対象動物は人間である。
本明細書で用いられるように、“医薬組成物”は、適切な(許容できる)希釈剤、保存料、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、担体または他の医薬的に許容できる賦形剤と一緒になった治療的に有効な量の本技術の活性薬剤を指す。
本明細書で用いられるように、“医薬的に許容できる担体”は希釈剤またはビヒクルを指し、前記は、一緒に処方される医薬的に活性な薬剤のデリバリーおよび/または薬物動態特性の強化のために用いられるが、それ自身の治療作用を持たず、目につく望ましくないもしくは不都合な効果または有害な反応を対象動物で全く誘発または惹起しない。加えて、そのような医薬的に許容できる担体は、水性もしくは非水性溶液、懸濁物、ゲルまたは乳濁物であり得る。
【0012】
本明細書で用いられるように、異常または症状の“予防”(prevention, preventing)は、統計的サンプルにおいて、無処理コントロールサンプルと対比して処理サンプルで異常または症状の発生を低下させるか、または無処理コントロールサンプルと対比して異常または症状の1つ以上の症候の開始を遅らせる1つ以上の化合物を指す。
本明細書で用いられるように、“サンプル”または“生物学的サンプル”は、対象動物から単離された体液または組織サンプルを指す。いくつかの事例では、生物学的サンプルは、全血、血小板、赤血球、白血球、血漿、血清、尿、糞便、上皮サンプル、膣サンプル、皮膚サンプル、頬部スワブ、精液、羊水、培養細胞、骨髄サンプル、腫瘍生検、吸引物および/または絨毛膜絨毛、培養細胞、内皮細胞、関節液、リンパ液、腹水、間質または細胞外液などから成るか、または前記を含み得る。“サンプル”という用語はまた細胞間空所の液体を包含し、歯肉溝滲出液、骨髄、脳脊髄液(CSF)、唾液、粘液、喀痰、精液、汗、尿、または任意の他の体液が含まれる。サンプルは対象動物から任意の手段によって入手でき、前記手段には、静脈穿刺、排泄、射精、マッサージ、生検、穿刺吸引、洗浄、剥離、外科的切開、もしくはインターベンション、または当分野で公知の他の手段が含まれるが、ただしそれらに限定されない。血液サンプルは、全血またはその任意の画分(血液細胞(赤血球、白血球、および血小板)、血清および血漿を含む)であり得る。
本明細書で用いられる“治療”(treating, treat, treatment)は、本明細書に記載する疾患または異常の対象動物(例えば人間)における治療をカバーし、以下を含む:(i)疾患または異常の抑制、すなわちその発達を停止させる;(ii)疾患または異常の緩和、すなわち異常の後戻りを惹起する;(iii)異常の進行を遅らせる;および/または(iv)疾患または異常の1つ以上の症候の進行の抑制、緩和、または遅速。いくつかの実施態様では、治療は、疾患関連症候を緩和、軽減、治癒すること、または緩解状態に置くことを意味する。
記載する医療的な疾患および症状の多様な方式の治療または予防が“実質的”を意味することは理解されよう。実質的とは、完全だけでなく完全未満の治療または予防を含み、前記では生物学的または医療的に相応の結果が達成される。治療は、慢性的疾患のための連続的な長期治療でも、急性症状の治療のための単回または数回の投与でもよい。
【0013】
BRAF阻害剤を含む組成物
本明細書の任意の実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は、BRAFの活性または発現を阻害することができる任意の適切な活性薬剤または薬物を含むか、または前記から成ることができる。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、BRAF阻害剤は、BAY43-9006(ソラフェニブ)、LGX818(エンコラフェニブ)、PLX4032(ベムラフェニブ)、GSK2118436(ダブラフェニブ)、ARQ197(チバチニブ)、GSK1120212(トラメチニブ)、ARQ736、ARQ680、AZ628、CEP-32496、GDC-0879、NMS-P186、NMS-P349、NMS-P383、NMS-P396、NMS-P730、PLX3603(RO5212054)、PLX4720(ジフルオロフェニル-スルホンアミン)、PF-04880594、PLX4734、RAF265、RO4987655、SB590885、BMS908662、WYE-130600、TAK632、MLN 2480、XL281、LUT001、LUT156、LUT192、LUT195、LUT197、およびそれらの組合せから成る群から選択され得る。各々の実施可能性は別々の実施態様である。
本明細書の任意の実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤の投与は、投与前の対象動物で観察されるMAPK活性化と比較して、MAPK活性化の増加をもたらす。
本明細書の任意の実施態様では、MEK阻害剤は、MEKの活性および/または発現を阻害することができる任意の適切な活性薬剤または薬物を含むか、または前記から成ることができる。いくつかの実施態様では、MEK阻害剤はMEK1阻害剤である。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、MEK阻害剤はMEK2阻害剤である。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、MEK阻害剤は、トラメチニブ(GSK1120212)、コビメチニブ(XL518)、ビニメチニブ(MEK162)、セルメチニブ、PD-325901、CI-1040、PD035901、UO126、TAK-733、およびそれらの任意の組合せから選択できる。
理論に拘束されないが、予想外にMAPK活性化を促進するBRAF阻害剤は、MEK阻害剤による治療によって惹起される皮膚反応の治療または予防の適切な薬物候補であると考えられる。単なる例示として、ケラチノサイトがMEK阻害剤関連皮膚副作用部位の可能性が高く、ケラチノサイトにおけるMEKおよび/またはその下流エフェクターの阻害がこの副作用の主要メカニズムであるかもしれない。本開示は、BRAF阻害剤化合物LUT001、LUT156、LUT192、LUT195、およびLUT197を提供する(下記の構造を参照されたい):
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
本明細書の任意の実施態様では、本技術のBRAF阻害剤は予想外のMAPK作用を提示し、MEK阻害剤による治療によって惹起される皮膚反応の治療または予防に適切である。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、MEK阻害剤治療は、癌を罹患する対象動物に施される抗癌治療である。
本明細書の任意の実施態様では、本開示で使用される組成物は、少なくとも1つのBRAF阻害剤の治療的に有効な量および医薬的に許容できる担体を含む。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、医薬組成物は、少なくとも1つのBRAF阻害剤および医薬的に許容できる担体を含む。
本明細書の任意の実施態様では、医薬組成物は、全身、経腸、非経口または局所投与用処方を含む多数の形態のいずれかとして処方することができる。本明細書の任意の実施態様では、本技術で使用される組成物は、少なくとも1つのBRAF阻害剤の治療的に有効な量および医薬的に許容できる担体を含み、場合によって全身投与または局所投与することができる。
本明細書の任意の実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は、包接体、ナノエマルジョンおよびミクロエマルジョンとして適切に処方できる。本明細書の任意の実施態様では、医薬組成物は、皮膚科用、局所投与および/または部分投与に適した多数の形態のいずれか、例えばゲル、懸濁物、軟膏、ローション、リキッド、溶液、エマルジョンまたはミクロエマルジョン、フィルム、セメント、散剤、グルー、エーロゾル、スプレー、フォーム、貼り薬、包帯など、およびそれらの組合せで処方できる。各々の実施可能性は別々の実施態様である。
【0020】
本明細書の任意の実施態様では、投与される投薬量および/または投薬レジメンは、対象動物の年齢、健康状態、体重、皮膚症状の重篤度、MEK阻害剤による治療の使用、治療頻度および所望される作用の特質に左右される。各々の実施可能性は別々の実施態様である。
本明細書の任意の実施態様では、任意のユニット剤形のBRAF阻害剤の量および特質は治療的に有効な量を含み、前記は、受容対象動物、投与頻度、MEK阻害剤治療、皮膚症状の部位および重篤度などにしたがって変動し得る。各々の実施可能性は別々の実施態様である。本明細書の任意の実施態様では、組成物中の少なくとも1つのBRAF阻害剤の濃度、量またはパーセンテージは、組成物の体積、粘度、剤型などとともに投与レジメンに左右され得る。
本明細書の任意の実施態様では、医薬組成物はさらにまた、皮膚症状を治療または緩和することができる少なくとも1つの追加の活性薬剤を含むことができる。
本明細書の任意の実施態様では、本技術の医薬組成物は、それ自体当業者に公知の態様で、例えば通常的な混合、顆粒化、糖衣錠製造、軟質ゲルカプセル化、溶解、抽出、または凍結乾燥プロセスの手段によって製造することができる。
本明細書の任意の実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は、単一組成物としてまたは別々の組成物として1つ以上の活性薬剤により与えることができる。各々の実施可能性は別々の実施態様である。
本明細書の任意の実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤(または前記を含む医薬組成物)は、追加の活性薬剤(または前記を含む医薬組成物)の投与前、投与と同時に、または投与後に投与することができる。各々の実施可能性は別々の実施態様である。本明細書の任意の実施態様では、医薬組成物は制御放出系でデリバリーすることができる。
【0021】
本明細書の任意の実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は、通常的な薬物のデリバリーに適した任意の利用可能な通常の方法および経路(全身性または局所性経路を含む)を用いて投与できる。一般的には、本技術によって意図される投与経路には、経腸、非経口または吸入経路が含まれるが、必ずしもそれらに限定されない。
本明細書の任意の実施態様では、吸入投与以外の非経口投与経路には、局所、経皮、皮下、筋肉内、眼内、関節包内、脊髄内、胸骨内、および静脈内経路(すなわち消化管以外の他の任意の投与経路)が含まれるが、必ずしもそれらに限定されない。非経口投与は全身性または局所性デリバリーを達成するために実施できる。全身性デリバリーが所望される場合は、投与は典型的には、医薬調製物の侵襲的投与または全身的に吸収される局所投与もしくは粘膜投与を含むことができる。
本明細書の任意の実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤はまた経腸投与によって対象動物にデリバリーすることができる。経腸投与経路には、経口および直腸(例えば座薬を用いる)デリバリーが含まれるが、必ずしもそれらに限定されない。
加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、組成物は身体表面への局所投与のために処方される。局所使用のための処方の非限定的な例には、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、フォーム、懸濁物、共溶媒溶液、膏薬および噴霧可能な液体形が含まれる。本技術の組成物のための他の適切な局所投与製品形には、例えばエマルジョン、ムース、フォーム、ローション、溶液および血清が含まれる。追加の適切な局所投与製品形にはパッチ、包帯などが含まれる。
【0022】
本明細書の任意の実施態様では、医薬組成物は、固体または液体形、例えば錠剤、散剤、カプセル、ペレット、溶液、懸濁物、エリキシル、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、香油または座薬であり得る。医薬的に許容できる担体には、ゴム、デンプン、糖類、セルロース物質、およびそれらの混合物が含まれる。組成物はまた、液体調製物の静脈内、動脈内または筋肉内注射、液体または固体調整物の経口投与、または局所塗布によって投与できる。投与はまた直腸座薬の使用によって達成することができる。
本明細書の任意の実施態様では、活性薬剤を含む医薬組成物の調製は当業界では周知である。そのような組成物は、典型的には、鼻咽頭にデリバリーされる活性薬剤のエーロゾルとして、または液状溶液もしくは懸濁物として注射可能なものとして調製される。しかしながら、注射前には溶液または懸濁物のために適切である液体中の固体形もまた調製できる。調製物はまた乳化することができる。活性な治療成分はしばしば賦形剤と混合され、前記賦形剤は医薬的に許容され活性薬剤に適合し得る。適切な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せである。
本明細書の任意の実施態様では、所望するならば、組成物は加えて微量の賦形剤、例えば湿潤剤もしくは乳化剤および/またはpH緩衝剤を含むことができ、前記は活性成分の有効性を強化する。
【0023】
本明細書の任意の実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤および/または追加の活性薬剤は、実現可能であれば医薬的に許容できる中和塩の形として組成物に処方することができる。医薬的に許容できる塩には酸付加塩が含まれ、前記は、無機酸(例えば塩酸またはリン酸)または有機酸(例えば酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)により形成される。遊離カルボキシル基から形成される塩もまた、無機塩基(例えば水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、カルシウム、鉄)および有機塩基(例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど)から誘導することができる。
加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、医薬組成物は、小胞(例えばリポソーム)でデリバリーすることができる。本明細書の任意の実施態様では、体表面(例えば皮膚)への局所投与のために、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、溶液、コソルベント溶液、懸濁物、パッチ、包帯、リキッド、フォームなどのような組成物を用いることができる。少なくとも1つのBRAF阻害剤またはそれらの医薬的に許容できる誘導体(例えば塩、水和物など)が都合よく調製され、医薬担体とともにまたは医薬担体無しに医薬的に許容できる希釈在中の溶液、懸濁物またはエマルジョンとして塗布される。
適切なBRAF阻害剤の単位用量(例えば経口用量、注射用量、または局所用量)を有するキットもまた本明細書に開示される。本明細書の任意の実施態様では、単位用量を含む容器に加えて、キットは情報提供パッケージ封入物を含むことができ、これには、少なくとも1つのBRAF阻害剤の使用とMEK阻害剤関連皮膚症状の治療または予防における予想される効能が記載される。
【0024】
治療的方法
以下の考察は単に例示として提供され、限定を意図するものではない。
本技術の1つの特徴は、BRAFの上昇した発現レベルおよび/または増加した活性を特徴とする疾患または症状を治療する方法を含む。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、本技術は、MEK阻害剤関連皮膚症状、例えばざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および/または毛細血管拡張症を治療する方法を含む。
ある特徴では、本開示は、MEK阻害剤関連皮膚症状をその必要がある対象動物で治療する方法を提供し、前記方法は、少なくとも1つのBRAF阻害剤の有効量を対象動物に投与する工程を含み、前記BRAF阻害剤は、BAY43-9006(ソラフェニブ)、LGX818(エンコラフェニブ)、PLX4032(ベムラフェニブ)、GSK2118436(ダブラフェニブ)、ARQ197(チバチニブ)、GSK1120212(トラメチニブ)、ARQ736、ARQ680、AZ628、CEP-32496、GDC-0879、NMS-P186、NMS-P349、NMS-P383、NMS-P396、NMS-P730、PLX3603(RO5212054)、PLX4720(ジフルオロフェニル-スルホンアミン)、PF-04880594、PLX4734、RAF265、RO4987655、SB590885、BMS908662、WYE-130600、TAK632、MLN 2480、XL281、LUT001、LUT156、LUT192、LUT195、LUT197、およびこれらの組合せから成る群から選択される。
いくつかの実施態様では、対象動物は、少なくとも1つのBRAF阻害剤の投与前にMEKで治療されている。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、MEK阻害剤は、トラメチニブ(GSK1120212)、コビメチニブ(XL518)、ビニメチニブ(MEK162)、セルメチニブ、PD-325901、CI-1040、PD035901、UO126、TAK-733、およびこれらの任意の組合せから成る群から選択される。
いくつかの実施態様では、対象動物は、BRAFの上昇した発現レベルおよび/または増加した活性を特徴とする疾患または症状を有すると、それらを有する疑いがあると、またはそれらを有するリスクがあると診断される。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、対象動物は、MEK阻害剤関連皮膚症状、例えばざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および/または毛細血管拡張症を有すると診断される。いくつかの実施態様では、対象動物は、BRAF、KRASおよびMEKに1つ以上の変異を提示することがあり、それらは当業界で公知の技術を用いて検出できる。
【0025】
治療のための適用では、本明細書に開示する少なくとも1つのBRAF阻害剤を含む組成物または医薬は、そのような疾患の疑いがあるか、または既に罹患している対象動物に、当該疾患(その合併症および発達中の疾患に介在する病理学的表現型を含む)の症状を治癒させるか、または少なくとも部分的に停止させるために十分な量で投与される。前記対象動物は、例えばBRAFの上昇した発現レベルおよび/または増加した活性を特徴とする疾患または症状を有すると診断された対象動物、および/またはMEK阻害剤関連皮膚症状(例えばざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および/または毛細血管拡張症)を有すると診断された対象動物である。
BRAFの上昇した発現レベルおよび/または増加した活性を特徴とする疾患または症状を罹患する対象動物、および/またはMEK阻害剤関連皮膚症状(例えばざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および/または毛細血管拡張症)を有すると診断される対象動物は、当業界で公知の診断アッセイまたは予後アッセイのいずれかまたは組合せによって識別することができる。例えば、MEK阻害剤関連皮膚症状(例えばざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および/または毛細血管拡張症)の典型的な症候には、異常な頭皮毛増殖、異常な顔面毛増殖、異常な毛の増殖、異常なまつ毛の増殖、肉色の丘疹、拡張した小胞または外分泌の開口部、掻痒症、紅斑、膿疱、丘疹、紅斑性爪甲、蓄膿爪甲、腫脹爪甲、肥厚爪甲、痒み、皮膚の細長く赤い印、痛み、鼻血、血便、息切れ、痙攣(seizures)、軽微卒中(small strokes)、ポートワイン母斑、および貧血が含まれるが、ただしそれらに限定されない。
【0026】
いくつかの実施態様では、BRAFの上昇した発現レベルおよび/または増加した活性を特徴とする疾患または症状を有する対象動物、および/またはMEK阻害剤関連皮膚症状(例えばざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および/または毛細血管拡張症)を罹患する対象動物であって、少なくとも1つのBRAF阻害剤で治療される動物は、以下の症候の1つ以上の緩和または除去を示すであろう:異常な頭皮毛増殖、異常な顔面毛増殖、異常な毛の増殖、異常なまつ毛の増殖、肉色の丘疹、拡張した小胞または外分泌の開口部、掻痒症、紅斑、膿疱、丘疹、紅斑性爪甲、蓄膿爪甲、腫脹爪甲、肥厚爪甲、痒み、皮膚の細長く赤い印、痛み、鼻血、血便、息切れ、痙攣、軽微卒中、ポートワイン母斑、および貧血。
ある種の実施態様では、BRAFの上昇した発現レベルおよび/または増加した活性を特徴とする疾患または症状を有する対象動物、および/またはMEK阻害剤関連皮膚症状(例えばざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および/または毛細血管拡張症)を罹患する対象動物であって、少なくとも1つのBRAF阻害剤で治療される動物は、MEK阻害剤関連皮膚症状(例えばざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および/または毛細血管拡張症)を罹患する無処置対象動物と比較して、増加したMAPK活性化を示すであろう。
【0027】
予防的方法
ある特徴では、本技術は、BRAFの上昇した発現レベルおよび/または増加した活性を特徴とする疾患または症状の開始を予防または遅らせる方法を提供する。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、本技術は、MEK阻害剤関連皮膚症状(例えばざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および/または毛細血管拡張症)の開始を予防または遅らせる方法を含む。
BRAFの上昇した発現レベルおよび/または増加した活性を特徴とする疾患または症状のリスクがあるかまたは前記に感受性の対象動物、および/またはMEK阻害剤関連皮膚症状のリスクがあるかまたは前記に感受性の対象動物は、MEK阻害剤療法を受ける癌患者を含む。そのような対象動物は、例えば当業界で公知の診断アッセイまたは予後アッセイのいずれかまたは組合せによって識別することができる。
予防的適用では、本明細書に開示する少なくとも1つのBRAF阻害剤を含む医薬組成物または医薬は、BRAFの上昇した発現レベルおよび/または増加した活性を特徴とする疾患または症状に感受性であるか或いはそうでなければリスクがある対象動物に、および/またはMEK阻害剤関連皮膚症状(例えばざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および/または毛細血管拡張症)に感受性であるか或いはそうでなければリスクがある対象動物に、当該リスクを除去または減少させるために、または当該疾患(その生化学的、組織学的および/または行動上の症候、当該疾患の発達中に提示される合併症および介在する病理学的表現型を含む)の開始を遅らせるために十分な量で投与される。予防的BRAF阻害剤の投与は、当該疾患または異常を予防しまた別にはその進行を遅らせるよう、当該疾患または異常に特徴的な症候が明らかになる前に実施することができる。
【0028】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤による治療は、以下の症候の1つ以上を予防するかまたはその開始を遅らせるであろう:異常な頭皮毛増殖、異常な顔面毛増殖、異常な毛の増殖、異常なまつ毛の増殖、肉色の丘疹、拡張した小胞または外分泌の開口部、掻痒症、紅斑、膿疱、丘疹、紅斑性爪甲、蓄膿爪甲、腫脹爪甲、肥厚爪甲、痒み、皮膚の細長く赤い印、痛み、鼻血、血便、息切れ、痙攣、軽微卒中、ポートワイン母斑、および貧血。ある種の実施態様では、(a)BRAFの上昇した発現レベルおよび/または増加した活性を特徴とする疾患または症状を有する対象動物、および/または(b)MEK阻害剤関連皮膚症状(例えばざ瘡様発疹(丘疹膿疱性発疹)、化膿性肉芽腫を伴うまたは伴わない爪周囲炎、および/または毛細血管拡張症)を有する対象動物であって、少なくとも1つのBRAF阻害剤で治療されるものは、健康なコントロール対象動物で観察されるBRAF発現レベルと類似する発現レベルを示すであろう。
【0029】
治療的および/または予防的適用のために、本明細書に開示する少なくとも1つのBRAF阻害剤を含む組成物が対象動物に投与される。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤が、毎日1回、2回、3回、4回、または5回投与される。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤が毎日5回よりも多く投与される。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤が、毎日、2日毎に、3日毎に、4日毎に、5日毎に、または6日毎に投与される。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤が、毎週、2週間毎、3週間毎、または毎月投与される。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤が、1、2、3、4、または5週間の期間投与される。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤が、6週間以上の間投与される。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤が、12週間以上の間投与される。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤が、1年未満の期間投与される。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤が、1年を超える期間投与される。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤が、対象動物の生涯を通して投与される。
本技術の方法のいくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は1週間以上の間毎日投与される。本技術の方法のいくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は2週間以上の間毎日投与される。本技術の方法のいくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は3週間以上の間毎日投与される。本技術の方法のいくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は4週間以上の間毎日投与される。本技術の方法のいくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は6週間以上の間毎日投与される。本技術の方法のいくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は12週間以上の間毎日投与される。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのBRAF阻害剤は対象動物の生涯にわたって毎日投与される。
【0030】
本技術のBRAF阻害剤の生物学的効果の決定
多様な実施態様では、適切なin vitroまたはin vivoアッセイを実施して、特定のBRAF阻害剤の効果およびその投与を治療のために必要か否かが決定される。多様な実施態様において、代表的な動物モデルを用いてin vitroアッセイを実施し、所与のBRAF阻害剤が、MEK阻害剤関連皮膚症状の徴候および/または症候の軽減または除去で所望の効果を示すか否かを決定することができる。治療方法で使用される化合物は、ヒト対象で試験する前に、適切な動物モデル系(ラット、マウス、ニワトリ、乳牛、サル、ウサギなどを含むがただしこれらに限定されない)で試験することができる。同様に、in vivo試験のために、ヒト対象への投与前に当業界で公知の動物モデル系のいずれかを用いることができる。いくつかの実施態様では、in vitroまたはin vivo試験は、1つ以上のBRAF阻害剤の生物学的機能に向けられる。
MEK阻害剤関連皮膚症状の動物モデルは、当業界で公知の技術を用いて作製することができる。そのようなモデルを用いて、特定の遺伝子の崩壊により生じる症状の予防および治療におけるBRAF阻害剤の生物学的効果を明示し、さらに本明細書に開示する1つ以上のBRAF阻害剤の治療的に有効な量を含むものを所与の環境で決定することができる。
【0031】
投与方式および有効薬量
細胞、器官または組織を本明細書に開示する少なくとも1つ以上のBRAF阻害剤と接触させるために、当業者に公知の任意の方法を用いることができる。適切な方法にはin vitro、ex vivoまたはin vivoの方法が含まれる。in vivoの方法は典型的には、少なくとも1つ以上のBRAF阻害剤を哺乳動物(適切には人間)に投与することを含む。治療のためにin vivoで用いられるとき、本明細書に開示する少なくとも1つ以上のBRAF阻害剤は、対象動物に有効な量(すなわち所望の治療効果を有する量)で投与される。用量および投薬レジメンは、対象動物の病状の程度、用いられる具体的なBRAF阻害剤の特徴(例えばその治療指数)、および対象動物の病歴に左右されるであろう。
有効量は、前臨床試験および臨床試験中に、医師および臨床従事者の周知の方法によって決定され得る。本方法で有用な1つ以上のBRAF阻害剤の有効量が、医薬化合物の投与のために良く知られた多数の方法のいずれかによって、その必要がある哺乳動物に投与され得る。BRAF阻害剤は全身的にまたは局所的に投与できる。
本明細書に記載する1つ以上のBRAF阻害剤は、MEK阻害剤関連皮膚症状の治療または予防のために対象動物に投与される医薬組成物に、単独または組み合わせて取り込むことができる。そのような組成物は典型的には活性薬剤および医薬的に許容できる担体を含む。本明細書で用いられるように、“医薬的に許容できる担体”という用語には、食塩水、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等剤並びに吸収遅延剤など、医薬の投与に適合するものが含まれる。補助的活性化合物もまた組成物に取り込むことができる。
【0032】
医薬組成物は、典型的にはその意図する投与経路に適合するように処方される。投与経路の例には、非経口(例えば静脈内、皮内、腹腔内または皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオン導入、および経粘膜投与が含まれる。非経口、皮内または皮下適用に用いられる溶液または懸濁物は以下の成分を含むことができる:無菌的希釈剤(例えば注射水、食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌剤(例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム);キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸);緩衝剤(例えば酢酸、クエン酸またはリン酸);および張度調整のための薬剤(例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは、酸または塩基(例えば塩酸または水酸化ナトリウム)で調整できる。非経口用調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、またはマルチ用量バイアルに封入することができる。患者または治療する医師に都合が良いように、計量用量処方物をキットで提供でき、前記キットは、治療過程(例えば7日間治療)のために必要な全ての装置(例えば薬物バイアル、希釈剤バイアル、注射器および注射針)を含む。
注射に使用される適切な医薬組成物は、無菌的な注射可能溶液または分散液の即席調製のために、無菌的な水性溶液(水溶性の場合)または分散液および無菌的粉体を含むことができる。静脈内投与のために適切な担体には、生理食塩水、制菌水、CREMOPHOR ELTM(BASF, Parsippany, N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。全ての事例で、非経口投与用組成物は無菌的でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流動的であるべきである。前記組成物は、製造および保存条件下で安定であるべきで、微生物(例えば細菌および真菌)の汚染作用に対して保護されねばならない。
【0033】
本明細書に開示する1つ以上のBRAF阻害剤を有する医薬組成物は担体を含むことができる。前記担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および流動ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。適当な流動性は、例えばコーティング(例えばレシチン)の使用によって、分散物の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、多様な抗菌剤および抗真菌剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チオメラソールなど)によって達成できる。グルタチオンおよび他の抗酸化剤を加えて酸化を防ぐことができる。多くの事例で、等張剤、例えば糖類、多価アルコール(例えばマンニトール、ソルビトール)、または塩化ナトリウムを組成物に加えることが有益であろう。注射可能組成物の延長吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチン)を組成物に加えることによって生じ得る。
無菌的な注射可能溶液は、適切な溶媒に必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたは組合せと一緒に取り込み、続いてろ過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散物は活性化合物を無菌的ビヒクルに取り込むことによって調製され、前記ビヒクルは、基本的な分散媒体および上記に列挙されたものから必要とされる他の成分を含む。無菌的な注射可能溶液の調製のための無菌的散剤の場合、典型的な調製方法は真空乾燥および凍結乾燥を含み、これにより、活性成分に加えて以前にろ過滅菌された当該溶液に由来する任意の所望された追加成分を生じさせることができる。
【0034】
経口組成物は一般的には不活性希釈剤または食用担体を含む。経口的な治療的投与の目的のためには、活性化合物は賦形剤と一緒に取り込むことができ、錠剤、トローチ、またはカプセル(例えばゼラチンカプセル)の形態で用いられ得る。経口組成物はまた、口内洗浄液として使用するために液体の担体を用いて調製することができる。医薬的に適合し得る結合剤および/または補助物質を組成物の部分として加えることができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分または同様な性質の化合物のいずれかを含むことができる:結合剤(例えば微結晶セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン);賦形剤(例えばデンプンまたはラクトース);崩壊剤(例えばアルギン酸、プリモゲルまたはトウモロコシデンプン);滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウムまたはステロート);滑剤(例えばコロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えばシュクロースまたはサッカリン);または香料(例えばペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料)。
吸入による投与のために、化合物は、加圧容器もしくはディスペンサー(噴射剤、例えば気体(例えば二酸化炭素)を含む)またはネブライザーからエーロゾルスプレーの形態でデリバリーされ得る。そのような方法には米国特許No. 6,468,798に記載されたものが含まれる。
本明細書に記載する治療化合物の全身的投与はまた、経粘膜または経皮手段によることができる。経粘膜または経皮投与のためには、浸透されるべき障壁に適切な浸透剤が処方に用いられる。そのような浸透剤は当業界で一般的に知られており、例えば、経粘膜投与用には洗剤、胆汁塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は鼻内スプレーの使用によって達成できる。経皮投与のために、活性化合物は、当業界で公知のように軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに処方される。ある実施態様では、経皮投与はイオン導入によって実施され得る。
【0035】
治療薬剤は担体系中で処方することができる。担体はコロイド系であることができる。コロイド系はリポソーム、リン脂質二重層ビヒクルであることができる。ある実施態様では、治療薬剤はリポソーム中に被包化され、一方、薬剤の構造的完全性は維持される。当業者は、多様なリポソーム調製方法が存在することを理解していよう(以下を参照されたい:Lichtenberg, et al., Methods Biochem. Anal., 33:337-462, 1988;Anselem, et al., Liposome Technology, CRC Press, 1993)。リポソーム処方物はクリアランスを遅らせ、細胞による取り込みを増加させることができる(以下を参照されたい:Reddy, Ann. Pharmacother., 34(7-8):915-923, 2000)。活性薬剤はまた、医薬的に許容できる成分から調製された粒子中にローディングすることができる(前記成分には可溶性、不溶性、浸透性、非浸透性、生物分解性または胃内保持性ポリマーもしくはリポソームが含まれるが、ただしこれらに限定されない)。そのような粒子には、ナノ粒子、生物分解性ナノ粒子、ミクロ粒子、生物分解性ミクロ粒子、ナノ球体、生物分解性ナノ球体、ミクロ球体、生物分解性ミクロ球体、カプセル、エマルジョン、リポソーム、ミセルおよびウイルスベクター系が含まれるが、ただしそれらに限定されない。
担体はまた、ポリマー、例えば生物分解性、生物適合性ポリマーマトリックスであることができる。ある実施態様では、治療薬剤はポリマーマトリックスに包埋することができ、一方、薬剤の構造的完全性は維持される。ポリマーは、天然の、例えばポリペプチド、タンパク質もしくは多糖類、または合成の、例えばポリα-ヒドロキシ酸であり得る。例には、例えばコラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、多糖類、フィブリン、およびこれらの組合せが含まれる。ある実施態様では、ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)またはコポリ乳酸/グリコール酸(PGLA)である。ポリマーマトリックスは、ミクロ球体およびナノ球体を含む、多様な形態およびサイズで製造し単離することができる。ポリマー処方物は治療薬の作用期間の延長をもたらすことができる(以下を参照されたい:Reddy, Ann. Pharmacother., 34(7-8):915-923, 2000)。ヒト成長因子(hGH)のためのポリマー処方物が臨床試験で用いられている(以下を参照されたい:Kozarich and Rich, Chemical Biology, 2:548-552, 1998)。
【0036】
ポリマーミクロ球体の持続放出処方物の例は以下に記載されている:PCT公報WO 99/15154(Tracy, et al.)、米国特許No. 5,674,534およびNo. 5,716,644(ともにZale, et al.)、PCT公報WO 96/40073(Zale, et al.)、並びにPCT公報WO 00/38651(Shah, et al.)。米国特許No. 5,674,534およびNo. 5,716,644並びにPCT公報WO 96/40073は、塩による凝集に対して安定化されたエリスロポエチン粒子を含むポリマーマトリックスを記載する。
いくつかの実施態様では、治療化合物は、例えばインプラントおよびミクロ被包化デリバリー系を含む制御放出処方物のような、当該化合物が身体から迅速に排除されるのを防ぐ担体と一緒に調製される。生物分解性、生物適合性ポリマー、例えば酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を用いることができる。そのような処方物は、公知の技術を用いて調製できる。材料はまた市場から、例えばアルザ社(Alza Corporation)およびノバ社(Nova Pharmaceuticals, Inc.)から入手できる。リポソーム懸濁物(細胞特異的抗原に対するモノクローナル抗体を有する特定細胞標的リポソームを含む)もまた、医薬的に許容できる担体として用いることができる。これらは、当業者に公知の方法にしたがって、例えば米国特許No. 4,522,811に記載されたように調製することができる。
治療化合物はまた細胞内デリバリーを強化するために処方することができる。例えば、リポソームデリバリー系は当業界で公知である。例えば以下を参照されたい:Chonn and Cullis, “Recent Advances in Liposome Drug Delivery Systems,” Current Opinion in Biotechnology 6:698-708, 1995;Weiner, “Liposomes for Protein Delivery: Selecting Manufacture and Development Processes,” Immunomethods, 4(3):201-9, 1994;およびGregoriadis, “Engineering Liposomes for Drug Delivery: Progress and Problems,” Trends Biotechnol., 13(12):527-37, 1995。ミズグチら(Mizguchi, et al., Cancer Lett., 100:63-69, 1996)は、細胞にタンパク質をデリバリーするために融合性リポソームのin vivoおよびin vitroの双方での使用を記載した。
【0037】
いずれの治療薬剤の投薬量、毒性および治療効果も、細胞培養または実験動物における標準的な医薬手順、例えばLD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)の決定のための手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表される。高い治療指数を提示する化合物が有益である。有毒な副作用を提示する化合物を用いることができるが、非罹患細胞への潜在的損傷を最小限にし、それによって副作用を軽減するために、罹患組織部位にそのような化合物を誘導するデリバリー系を考案する配慮がとられるべきである。
人間で使用される投薬量範囲の定式化に、細胞培養アッセイおよび動物試験から入手したデータを用いることができる。そのような化合物の投薬量は、ほとんどまたは全く毒性を示さない、ED50を含む循環濃度範囲内であり得る。投薬量は、用いられる剤形および利用される投与経路に左右される範囲内で変動し得る。本方法で用いられるいずれの化合物についても、治療的に有効な用量は最初に細胞培養アッセイから概算することができる。用量を動物モデルで定式化して、細胞培養で決定されるIC50(すなわち、症状の最大半減阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度を得ることができる。そのような情報を用いて、人間で有用な用量を正確に決定できる。血漿中レベルを、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0038】
典型的には、治療的または予防的効果を達成するために十分な、本明細書に開示する少なくとも1つ以上のBRAF阻害剤の有効量は、約0.000001mg/キログラム体重/日から約10,000mg/キログラム体重/日の範囲である。適切には、投薬量範囲は、約0.0001mg/キログラム体重/日から約100mg/キログラム体重/日である。例えば、投薬量は、毎日、2日毎もしくは3日毎に約1mg/kg体重または10mg/kg体重/日、または毎週、2週間毎もしくは3週間毎に1-10mg/kgの範囲内であり得る。ある実施態様では、治療化合物の単回投薬量は0.001-10,000マイクログラム/kg体重の範囲である。ある実施態様では、担体中の少なくとも1つ以上のBRAF阻害剤の濃度は、0.2から2000マイクログラム/mLデリバリーの範囲である。例示的な治療レジメンは、1日1回または1週間に1回の投与を伴う。治療的適用では、疾患の進行が軽減されるかまたは停止するまで、または対象動物が疾患の症候の部分的もしくは完全な緩和を示すまで、相対的に短い間隔で相対的に高い用量が時どき要求される。その後で、患者に予防的レジメンが施される。
いくつかの実施態様では、1つ以上のBRAF阻害剤の治療的に有効な量は、標的組織における阻害剤濃度10-32から10-6モル濃度、例えば約10-7モル濃度として明示され得る。この濃度は、0.001から100mg/kgの全身的用量、または体表面積での等価用量によってデリバリーされ得る。用量スケジュールを最適化して、例えば毎日もしくは毎週一回投与して標的組織における治療濃度が維持されようが、ただし持続的投与(例えば非経口輸液または経皮投与)もまたスケジュールに含まれる。
ある種の要件が対象動物の効果的な治療に要求される投薬量およびタイミングに影響を与え得ることは当業者には理解されるであろう。それら要件には、疾患または異常の重篤度、以前の治療、対象動物の一般的な健康状態および/または年齢、並びに存在する他の疾患が含まれるが、ただしそれらに限定されない。さらにまた、本明細書に記載する治療化合物の治療的に有効な量による対象動物の治療は、単回治療または一連の治療を含むことができる。
本方法にしたがって治療される哺乳動物は任意の哺乳動物であり、例えば農場動物(例えばヒツジ、ブタ、乳牛、およびウマ)、ペット動物(例えばイヌおよびネコ)、実験動物(例えばラット、マウスおよびウサギ)が含まれ得る。いくつかの実施態様では、哺乳動物は人間である。
【0039】
キット
本開示は、MEK阻害剤による治療によって引き起こされるかまたは前記に関連する皮膚症状の治療または予防で使用されるキットを提供し、前記キットは、少なくとも1つのBRAF阻害剤の治療的に有効な量を含む組成物および使用のための指示を含む。いくつかの実施態様では、組成物は医薬組成物である。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、医薬組成物は適切な剤形で提供される。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、剤型は全身用および局所用から選択される。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、局所用剤型は、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、香油、スプレー、皮膚パッチ、ローション、包帯、リキッド、またはこれらの任意の組合せ(ただしそれらに限定されない)から選択され得る。各々の実施可能性は別々の実施態様である。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、全身用剤型は経口形であり、錠剤、カプセル、液体、懸濁物、および散剤、またはこれらの任意の組合せ(ただしこれらに限定されない)から選択される。各々の実施可能性は別々の実施態様である。本技術のキットの上記に記載の成分を適切な容器に詰め、MEK阻害剤関連皮膚症状の治療および/または予防のための付箋を添付することができる。
【0040】
上述の成分は、単位用量またはマルチ用量容器(例えば封入アンプル、バイアル、ビン、注射器および試験管)に、水性(好ましくは無菌的)溶液としてまたは再構成のための凍結乾燥(好ましくは無菌的)処方物として保存され得る。キットはさらにまた第二の容器を含むことができ、前記容器はより大きな体積に医薬組成物を希釈するために適切な希釈剤を保持する。適切な希釈剤には、医薬組成物の医薬的に許容できる賦形剤および食塩水溶液が含まれるが、ただしそれらに限定されない。さらにまた、キットは、医薬組成物を希釈するための指示、および/または希釈するか否かにかかわらず医薬組成物を投与するための指示を含むことができる。容器は、多様な材料(例えばガラスまたはプラスチック)から形成することができ、無菌的なアクセス口を有することができる(例えば、容器は静脈内用溶液バッグまたはストッパー付きバイアルで、前記は皮下注射針によって穿刺できる)。キットはさらにまたより多くの容器を含むことができ、それら容器は、医薬的に許容できる緩衝剤(例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液)を含む。キットはさらにまた、商業的および使用者の観点から所望される他の物質を含み、それらには、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、注射器、1つ以上の適切な宿主のための培養媒体が含まれる。場合によってキットは、治療用製品の商品パッケージに習慣的に含まれる指示を含むことができる。前記指示は、例えば、そのような治療用または診断用製品の適応症、用途、投薬量、製造、投与、禁忌および/または使用に関する警告についての情報を含む。
キットはまた、例えば緩衝性薬剤、保存料または安定化剤を含むことができる。キットはまた1つのコントロールサンプルまたは一連のコントロールサンプルを含むことができ、それらをアッセイして試験サンプルと比較することができる。キットの各成分を個々の容器内に封入し、さらに、キットを用いて実施されるアッセイの結果を解釈するための指示と一緒に、それら多様な容器の全てを単一パッケージに収めることができる。本技術のキットは、キット上にまたはキット内に文書を含むことができ、前記文書はキットに含まれる試薬の使用態様を説明する。ある種の実施態様では、試薬の使用は本技術の方法にしたがことができる。
実施例
以下の実施例によって本技術はさらに例証され、本実施例は如何なる態様においても限定と解釈されてはならない。
【実施例1】
【0041】
初代ヒトケラチノサイトにおけるERKリン酸化を検出するための材料と方法
正常なヒトケラチノサイトHEKa(業者(Gibco Rhenium)から購入)を10cmディッシュに播種し(300,000細胞/ディッシュ)、37°C、5%CO2で一晩インキュベートした。続いて培養液を飢餓培養液に2時間置き換え、その後細胞をさらに2時間試験化合物(すなわちBRAF阻害剤)で処理した。実験に用いたBRAF阻害剤には、LUT001、LUT156、LUT192、LUT195、LUT197、またはコントロールとしてベムラフェニブが、0.3mMまたは1mMの濃度で含まれていた。
インキュベーション後、細胞をRIPA緩衝液で溶解し、タンパク質抽出物をウェスタンブロットで分析し、適切な抗体を用いてホスホ-ERKおよび総ERKを検出した。無処理細胞および0.1%DMSO処理細胞を陰性コントロールとして用い、ヒトケラチノサイト増殖サプリメント(HKGS)(Gibco)を陽性コントロールとして用いた。
ウェスタンブロット:7.5μgの総抽出物を10%または12%アクリルアミドゲルにローディングした。移転後に、膜をTBST/5%脱脂乳でブロッキングし、続いてマウス抗ホスホ-ERK(TBST 5%BSAで1:1000、一晩、4°C)およびヤギ抗マウスHRP(TBST 5%BSAで1:10,000、1時間、RT)でインキュベートした。化学発光基質(SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate)を用いて膜を可視化した。
その後、0.5%アジ化ナトリウムとともに膜を1時間インキュベートすることによってHRPを不活化した。シグナルが存在しないことを担保するために洗浄しECL暴露した後で、膜をTBST/5%脱脂乳で15分間再ブロッキングし、続いてウサギ抗総ERK2(TBST 5%BSAで1:500、一晩、4°C)、ヤギ抗ウサギHRP(TBST 5%BSAで1:5,000、1時間、RT)でインキュベートし、最後に化学発光基質(SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate)を用いて膜を可視化した。フィルムをスキャンし、ImageJソフトウェアを用いてシグナルを定量した。ホスホ-ERK/総ERKとして結果を計算した。
【実施例2】
【0042】
正常ヒトケラチノサイト(HEKa)における種々のBRAF阻害剤によるMAPK(ERK)の活性化
この実験では、本明細書に開示するBRAF阻害剤化合物のヒトケラチノサイト(HEKa)におけるMAPK(ERK)リン酸化に対する作用を調べた。ERKのリン酸化をERK活性化の指標として役立てた。
種々のBRAF阻害剤の対応するケラチノサイト細胞におけるERK活性化に対する作用を決定するために、BRAF阻害剤による処理に応答する正常なヒトケラチノサイトでERKリン酸化レベルを測定した。
図1A-Dに示すように、有意なERK活性化(リン酸化ERKの相対量における増加によって決定)が、LUT156、LUT197(
図1Aおよび1C)またはベムラフェニブ(
図1Bおよび1D)BRAF阻害剤による処理に続いてヒト初代ケラチノサイト(HEKa)で観察された。LUT001、LUT192、およびLUT195による処理は、HEKaでERK活性化に対して穏やかな作用をもたらした。
これらの結果は、ケラチノサイト細胞における下流MAPK(ERK)の活性化に関して、多様なBRAF阻害剤の予想外の逆説的作用を示す。さらにまた、これらの結果は、ERK活性化に関して、多様な投薬量(濃度)における種々のBRAF阻害剤の異なる有効性を示す。したがって、本技術のBRAF阻害剤組成物は、対象動物でMEK阻害剤関連皮膚症状を治療または予防する方法で有用である。
【実施例3】
【0043】
MIA PaCa2 KRAS細胞の分裂増殖に対するBRAF阻害剤の作用
BRAF阻害剤が永続的作用を有するか否かを決定するために、KRAS変異を保持するMIA PaCa2細胞株を用いて分裂増殖アッセイが実施されるであろう。
材料:MIA PaCa2 KRAS細胞(ATCC, CRM-CRL1420);DMEM(ATCC 30-2002);FBS(Biol. Industries, Cat. 04-007-1A);ウマ血清(Biol. Industries, Cat. 04-004-1B);抗生物質(P/S, Biol. Industries, Cat. 03-031-2B);トリプシン(Biol. Industries, Cat. 03-050-1A);トリパンブルー(Sigma T8154);DMSO(Sigma D2650);BRAF阻害剤(C-1 MedChem Express(HY-14177);C-15;C-19;ベムラフェニブ(Royal Pharma));ATPlite(Perkin Elmer, Cat. 6016941)。
細胞増殖:1日目に細胞は下記培養液に置かれるであろう(DMED/FBS/ウマ血清および抗生物質)。その後で細胞は継代され、飢餓培養液(すなわち血清枯渇培養液)で24時間インキュベートされるであろう。試験化合物(BRAF阻害剤)が当該細胞に種々の濃度で添加され、細胞はさらに72時間インキュベートされるであろう(37°C、5%CO2)。分裂増殖アッセイは、ATIPlite試薬を製造業者のプロトコルにしたがって用いて実施されるであろう。結果は、CLARIOstar(BMG)リーダーを用いて読み取られるであろう(方式:ルミネセンス、プログラム:ATPlite TOP、測定間隔時間[s]:0.25-1)。
BRAF阻害剤による処理は、無処理MIA PaCa2 KRASコントロール細胞で観察される分裂増殖と比較して、MIA PaCa2 KRAS細胞のそれを増加させるであろうと予想される。
【実施例4】
【0044】
MEK阻害剤関連皮膚症状を治療するために対象動物でBRAF阻害剤を使用する
MEK阻害剤関連皮膚症状を有すると診断された対象動物(すなわち、MEK阻害剤で治療されたことがあるかまたは治療されている対象動物)がBRAF阻害剤で治療され、in vivo有効性が決定されるであろう。プラセボ処置グループ(ビヒクル)が陰性コントロールとして加えられるであろう。
簡単に記せば、治療プロトコルは以下の工程を含む:
対象動物は、MEK阻害剤で治療されたことがあり、かつ皮膚症状(ざ瘡様発疹を含む)を有すると診断されている患者である。対象動物は、適切な剤形のBRAF阻害剤で6-20週間、一方の体側、顔、首および胸部を処置される。剤型は局所用剤型を含むことができる。種々の濃度のBRAF阻害剤が試験されるであろう。コントロール対象動物は適切なプラセボ組成物で処置される(プラセボ組成物は活性物質としてBRAF阻害剤を含まない)。局所適用されるとき、プラセボ処置は、治療を受けていない他方の体側で実施される。治療期間中、多様なパラメーターが試験される。前記パラメーターには、皮膚症状における発疹の割合、発疹の重篤度、発疹の身体場所、および他の関連する皮膚病変。試験される身体場所には顔、首および胸部が含まれるであろう。
試験治療期間の終了時に、治療身体領域をプラセボ処置領域と比較するか(局所投与の場合)、または治療およびプラセボ処置間で比較する(全身投与の場合)ことによって試験パラメーターを決定して治療有効性を決定する。
BRAF阻害剤で治療された身体領域は、プラセボ処置領域で観察されるものと比較して、発疹の割合および/または重篤度および/または他の皮膚病変で緩和を示すであろう。したがって、本技術のBRAF阻害剤は、MEK阻害剤関連皮膚症状を対象動物で治療または予防する方法で有用である。
【実施例5】
【0045】
MEK阻害剤投与後のホスホ-ERKに対するBRAF阻害剤のin vitro作用
HEKa細胞が、実施例1に記載の方法を用いてBRAF阻害剤およびMEK阻害剤(例えばトラメチニブおよびコビメチニブ)で処理されるであろう。HKGS処理HEKa細胞は陽性コントロールとして機能し、DMSO処理HEKa細胞は無処理コントロールとして機能する。BRAF阻害剤およびMEK阻害剤のホスホ-ERKに対する作用が、実施例1に記載のウェスタンブロットによって測定されるであろう。MEK阻害剤投与後のホスホ-ERKに対するBRAF阻害剤の作用を比較するためのコントロールは下記に示される。
トラメチニブ(MEK阻害剤)のHKGS処理細胞への添加は、HKGS単独と比較してホスホ-ERKレベルを低下させると期待される。BRAF阻害剤は、DMSO処理細胞と比較して、ホスホ-ERKを約100%から約800%増加させると期待される。BRAF阻害剤は、HKGSおよびトラメチニブで処理された細胞に添加されるときホスホ-ERKレベルを増加させることが期待される。BRAF阻害剤は、HKGSおよびコビメチニブで処理された細胞に添加されるときホスホ-ERKレベルを増加させることが期待される。観察されるERK活性化の増加は、MEK阻害剤関連皮膚症状を治療または緩和するBRAF阻害剤の治療有効性と相関性を有するであろう。したがって、本技術のBRAF阻害剤組成物は、対象動物でMEK阻害剤関連皮膚症状を治療または予防する方法で有用である。
【0046】
等価物
本技術は、本明細書で記載した特定の実施態様に関して限定されるべきではなく、それら実施態様は、本技術の個々の特徴の単一の例示として意図される。当業者には明白であるように、本技術の趣旨および範囲を外れることなく、本技術の多くの改変および変型を成すことができる。本明細書に列挙したものの他に、本技術の範囲内で機能的に等価な方法および装置が前述の記載から当業者には明白であろう。そのような改変および変型は本技術の範囲内であることが意図される。本技術は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物学的な系に制限されず、当然それらは変動し得ることは理解されるべきである。本明細書で用いられる用語は特定の実施態様を説明する目的のためであり、制限することを意図しないこともまた理解されるべきである。
加えて、本開示の特色または特徴がマーカッシュグループに関して記載されている場合、当該開示はまた、それによってマーカッシュグループのメンバーの個々のメンバーまたはサブグループに関して記載されていることは当業者には理解されよう。
当業者には理解されるように、任意の目的および全ての目的のために、特に文書の説明を提供する場合には、本明細書に開示される全ての範囲はまた、任意のおよび全ての可能な部分範囲およびその部分範囲の組合せを包含する。列挙されたいずれの範囲も、十分に記載され、同じ範囲を少なくとも同じ半分、1/3、1/4、1/5、1/10などに分解することが可能であることは容易に理解されよう。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲は、下方の3/1、真ん中の1/3、上方の1/3などに容易に分解することができる。当業者にはまた理解されるように、例えば、“まで”、“少なくとも”、“を超える”、“未満”などの言葉はいずれも列挙された数を含み、さらに上記で考察したように続いて部分範囲に分解することができる範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲は個々のメンバーの各々を含む。したがって、例えば1-3つの細胞を含むグループは、1、2または3つの細胞を含むグループを指す。同様に、1-5つの細胞を含むグループは、1、2、3、4または5つの細胞を含むグループを指し、以下同様である。
本明細書で参照または引用した全ての特許、特許出願、仮特許出願、および公報は、参照によってその全体(全ての図および表を含む)が本明細書に、本出願の明快な教示と一致する範囲まで含まれる。