(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】プラスチックレンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 39/24 20060101AFI20240712BHJP
B29D 11/00 20060101ALI20240712BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
B29C39/24
B29D11/00
G02B3/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196145
(22)【出願日】2022-12-08
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】10-2022-0040057
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522478455
【氏名又は名称】エムエル テック シーオー., エルティーディ.
【氏名又は名称原語表記】ML TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】64, Geumhoseonmal-gil, Bugang-myeon, Sejong-si 30077, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ボンヒ
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-119912(JP,A)
【文献】特開2008-80766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/24
B29D 11/00
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で離隔している2個のモールドの外周にテープを巻いて形成されたモールド内のキャビティにモノマー溶液を注入した後に重合硬化させてプラスチックレンズを製造する方法であって、
2個のモールドの外周に該外周の一部が開放された状態で1次にテープを巻く段階と;
開放された部分からモノマー溶液をキャビティ内に注入する段階と;
モノマー溶液が注入されたモールドの開放された部分を別個のテープで2次に巻いて密封する段階;を含んでな
り、
1次テーピング段階は、開放された部分の幅が5~15mmであり、
2次テーピング段階は、開放部の外側の1次テープと開放部の幅以上でオーバーラップし、
プラスチックレンズを製造する方法は自動化設備を用いることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項2】
1次テーピング段階でモールドの外周を巻くテープの末端は直角に切断されたことを特徴とする、請求項
1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
【請求項3】
1次テーピング段階でモールドの外周を巻くテープの末端は斜線に切断されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載のプラスチックレンズの製造方法。
【請求項4】
2次テーピングのテープは、剥離のための無粘着層、又は粘着部が折り重なった剥離部が一側に形成されたことを特徴とする、請求項
1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メガネレンズなどの各種プラスチックレンズを製造する方法に関し、2個のモールドの外周に該外周の一部を除いてテーピングした状態でモノマーを注入した後、開放された部分を別個のテープで密封することによって、モノマー注入時にモールド内の空気を円滑に排出させると同時に、従来のようにオーバーラップしているテープを剥がしてから再び付着させる面倒で且つ長時間がかかる工程を大幅に短縮可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
光学材料のうち、プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて軽くて、よく破られず、加工性が良い、という長所から、ガラスレンズよりもプラスチックレンズの方を多く使用しているのが最近の傾向である。このようなプラスチックレンズは、モノマー(monomer)という高分子化合物をモールドに注入して固めた後、適当な後加工によって製作される。すなわち、レンズ形状の空の注入空間(キャビティ)を有するモールドにモノマー溶液を注入する方式で製作される。
【0003】
いわば「テープモールド法」は、2個のガラス型モールド成形面を所定の間隔をあけて対向させた状態で外周面を粘着テープで巻き回して内部にキャビティを形成し、内部空間に原料モノマーを注入した後に重合硬化させ、プラスチックレンズを成形する方法である。
【0004】
上述したテープモールド法では、2個のモールドの外周に巻き回した粘着テープの継ぎ合わせ部の一部を剥がして開放部を形成し、この開放部にモノマー溶液を注入した後、粘着テープの剥がされた部分をリテーピングする方法を用いている。しかし、この方法では、モノマー溶液を注入する時に、粘着テープを剥がした部分にモノマー溶液が付着して粘着テープの粘着力が低下或いは喪失する場合が発生することもあり、オーバーラップしている粘着テープを剥がしてモノマー溶液を注入した後に再び貼りつけるための機械パートの精密な制御に相当な時間がかかる他、動作不良が発生する可能性が高いという問題点もあった。
【0005】
一方、このような問題点を解決する方法として、粘着テープを剥がさず、注射針のように鋭い先端形状を有する注入ノズルで粘着テープを刺してモノマー溶液を注入した後、注入口を密封する方法が知られているが、このような方法では、キャビティ内の空気を外部に排出させるための別個の排気ノズルが必要であり、そのため、断面積の小さい排気ノズルからキャビティ内の空気を排出させる過程で比較的時間が長くかかる他にも、キャビティ内に空気が残留してモノマー溶液の緩衝が不可能になったり、気泡の形成によって不良率が増加したりする問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-108217号公報(2000.04.18.公開)
【文献】韓国登録特許第10-2046260号公報(2019.11.12.登録)
【文献】韓国登録特許第10-2081498号公報(2020.02.19.登録)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、公知のテープモールド法を改良し、自動注入装備の機械的な単純化及びモノマー溶液の注入にかかる時間の短縮と共に空気の効果的な排出を可能にすることにより、モノマー溶液の迅速で正確な定量注入を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、所定の間隔で離隔している2個のモールドの外周にテープを巻いて形成されたモールド内のキャビティにモノマー溶液を注入した後に重合硬化させてプラスチックレンズを製造する方法であって、2個のモールドの外周に、該外周の一部が開放された状態で1次にテープを巻く段階と;開放された部分からモノマー溶液をキャビティ内に注入する段階と;モノマー溶液が注入されたモールドの開放された部分を別個のテープで2次に巻いて密封する段階;を含んでなるプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モールドの外周に一部の開放部を残した状態で1次テーピングを行った後、この開放部から注入ノズルを挿入してモノマー溶液をキャビティ内に注入することにより、モノマー溶液の注入時にモールド内の空気が円滑に排出されることが可能になり、よって、モノマー溶液の単位時間当たりの注入量を増加させ、注入にかかる時間を大幅に短縮させることができる他、広い開放部からキャビティ内の空気が迅速に排出されて空気が残留しないので、気泡発生などの不良率を減らすことができ、従来のようにオーバーラップしているテープを剥がしてから再び付着させるための複雑な設備と面倒な工程を省略することが可能になり、自動化設備の実質的な生産性を向上させることができる有用な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施例によって1次テーピングされたモールドの斜視図である。
【
図2】モールド内のキャビティにモノマー溶液の注入のためにノズルが下降する状態を示す図である。
【
図3】モノマー溶液が注入される状態を示す図である。
【
図4】モノマー溶液の注入完了後にノズルが上昇する状態を示す図である。
【
図5】モールドに2次テーピングをする状態を示す図である。
【
図6】モールドに2次テーピングが完了した状態を示す図である。
【
図7】本発明のレンズ製造工程を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2実施例に係る1次テーピングされたモールドに2次テーピングをする状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を限定しない好ましい実施例を、添付の図面によって詳細に説明する。
【0012】
図1~
図7には、本発明の第1実施例に係るプラスチックレンズの製造方法が示されるが、本実施例では、所定の間隔で離隔している2個のモールドの外周にテープを巻いて形成されたモールド内のキャビティにモノマー溶液を注入した後に重合硬化させてプラスチックレンズを製造する方法であって、2個のモールドの外周に該外周の一部が開放された状態で1次にテープを巻く段階と;開放された部分からモノマー溶液をキャビティ内に注入する段階と;モノマー溶液が注入されたモールドの開放された部分を別個のテープで2次に巻いて密封する段階;を含んでなる。
【0013】
図1には、所定の間隔で離隔している2個のモールドM1,M2の外周にテープT1を巻いて内部にキャビティを形成した状態が示されているが、本実施例では、2個のモールドM1,M2の外周に一部の開放部Oが形成されるように、テープT1の長さがモールドM1,M2の円周長よりも短く付着している。
【0014】
本実施例において、1次テーピング段階では、開放部Oの開放幅が5~15mmを形成しているが、これは、モノマー溶液L(
図3参照)を注入するためのノズルNの太さによって様々な幅に設定でき、開放部Oの幅は、ノズルの太さによることはもとより、複数のノズルを用いて同時に多量のモノマー溶液を注入することも想定できる。また、ノズルNを用いてモノマー溶液Lを注入する過程でモールドM1,M2内のキャビティ(空いている空間)中の空気が開放部Oから円滑に排出されるので、キャビティ内の空気が完全に排出されずに残留する場合の気泡状態による不良品の生産を防止することができる。したがって、既存のテーピング後に注入ノズルと排気ノズルでテープを穿孔してモノマー溶液を注入し、空気は排気ノズルから排出させる過程における排気不良の問題を効果的に防止できるとともに、既存のオーバーラップしているテープを投入後にテープの一部分を剥がしてモノマー溶液を注入した後に、剥がしたテープを再び付着させて密封する工程にかかる時間を大幅に短縮させることができるという利点がある。
【0015】
すなわち、本実施例では、開放部を残した状態で1次テーピングをしてモノマー溶液注入設備に投入した後、開放部からモノマー溶液を迅速に注入し、別個のテープを用いて開放部を2次テーピングする簡単な工程を採択することにより、設備の単純化を図ることができることはもとより、熟練した作業者が手作業で注入時にモールドを整列して注入した後に再びテーピングをするのに12~13秒程度がかかるので、既存の自動化された注入設備において手作業に比べて却って長い45秒程度がかかる慢性的な問題を解消し、モールドの整列とモノマー溶液の注入及び2次テーピングによる密封までにかかる時間を8~13秒以内とし、プラスチックレンズの製造のための自動化設備の生産性を実質的に向上させることができるという利点がある。
【0016】
また、本実施例では、1次テーピング段階においてモールドM1,M2の外周を巻くテープT1の末端は直角に切断されているが、本発明は、これに限定されず、
図8に示す第2実施例のように、モールドM1,M2の外周を巻くテープT1の末端を斜線に切断することによって、開放部OでモールドM1,M2間の間隔変化が発生することを最小化することもできることは勿論である。
【0017】
図2には、1次テーピングが完了したモールドがモノマー注入装置側に投入されて注入ノズルNと整列された状態、すなわち、注入ノズルNの直下部にモールドが位置している状態で注入ノズルNが下降する状態を示しており、
図3には、注入ノズルNが開放部Oからキャビティの内部に挿入された状態でモノマー溶液Lを注入している状態を示しており、
図4には、モノマー溶液Lの注入を完了した後に注入ノズルNが上部から離脱した状態を示している。
【0018】
上述したモノマー溶液をモールドのキャビティの内部に注入する注入ノズル及びこれを含む注入装置と適正量を注入するための方法は、特許文献2及び特許文献3などに開示されているので、それに関する具体的な説明は省略する。
【0019】
図5及び
図6には2次テーピング段階が示されており、2次テーピング段階は、開放部Oの左右外側の1次テープT1とオーバーラップするように、開放部Oの幅以上に切断された状態で付着して密封される。
【0020】
2次テーピングにおけるテープT2は、1次テーピング用テープT1と同じ幅及び厚さを有するものを使用することが好ましく、より好ましくは、
図8の第2実施例のように、2次テーピング用テープT2の一側に、剥離のための無粘着層又は粘着部が折り重なった剥離部Taが形成されたものを使用することにより、重合硬化後にテープ(T2及びT1)の剥離をしやすくする。
【0021】
図7には、本発明のプラスチックレンズの製造工程が示されており、これを説明すると、一対のモールドM1,M2をテーピング装置に投入するモールドローディング段階(S10)と、テーピング装置で、開放部Oを残した状態で、一対のモールドを所定の間隔で離隔した状態で外周をテーピングする段階(S20)と、1次テーピングされたモールドをモノマー注入装置に投入して整列した後に注入ノズルを下降させる段階(S30)と、モノマー溶液を注入する段階(S40)と、モノマー溶液が充填完了したか否かを判断する段階(S50)と、モノマー溶液の充填が完了した後に注入ノズルが上昇する段階(S60)と、カバーテープT2で2次テーピングをする段階(S70)とを含んでなり、後続工程としてはモノマー溶液を重合硬化する段階(S80)、及び硬化されたプラスチックレンズをモールドから分離する段階(S90)を経てプラスチックレンズを生産し、プラスチックレンズが分離されたモールドは洗浄過程後に再使用される。
【0022】
以上説明したように、本発明に係るテーピング法を用いたプラスチックレンズの製造方法では、モールドの外周の一部に開放部を残した状態で1次テーピングを行った後、この開放部から注入ノズルを挿入してモノマー溶液をキャビティ内に注入することによって、モノマー溶液の注入時にモールド内の空気が円滑に排出されることはもとより、従来のようにオーバーラップしているテープを剥がしてから再び付着させるための複雑な設備と面倒な工程が省略され、単に、開放部上に2次テーピングのためのカバーテープをオーバーラップするようにテーピングすることによって密封可能になるところ、モノマー溶液の自動注入設備において空気の排出を勘案して注入速度を遅くすること及びテープ剥離とリテーピング工程で相当な時間がかかる問題を簡単に解消させ、工程時間の大幅な短縮が可能になるという利点がある。
【符号の説明】
【0023】
L モノマー溶液
M1,M2 モールド
N 注入ノズル
O 開放部
T1 テープ(1次テーピング用)
T2 テープ(2次テーピング用)
Ta 剥離部(又は、無粘着層)