(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】タップ音検出によって車内通信システムを制御するためのシステム、方法、およびコンピューター読取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
G10L 25/51 20130101AFI20240712BHJP
【FI】
G10L25/51
(21)【出願番号】P 2022518017
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2020075764
(87)【国際公開番号】W WO2021052958
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-05-17
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520074734
【氏名又は名称】パイカー、アクスティック、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PEIKER ACUSTIC GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】アンドルー、ドレイパー
(72)【発明者】
【氏名】アーロン、クバート
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-342799(JP,A)
【文献】特開2011-221702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0096036(US,A1)
【文献】国際公開第2019/077859(WO,A1)
【文献】特開2017-030671(JP,A)
【文献】特表2016-526815(JP,A)
【文献】特開2015-071320(JP,A)
【文献】特開2019-068237(JP,A)
【文献】特開2015-023499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 25/00-25/93
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内通信システムにおける複数のスピーカーを制御するための方法であって、
処理回路によって、複数のマイクロフォンのうち音響取入口を有した第1のマイクロフォンによって生成される第1音声信号を受信することと、
前記処理回路によって、受信した前記第1音声信号における音響擾乱を検出することであって、前記受信した第1音声信号において検出された前記音響擾乱は、前記第1のマイクロフォンにおける前記音響取入口の直近での触覚的な相互作用に由来するものであることと、
前記処理回路によって、前記検出された音響擾乱が所定の音響シグネチャーと相関関係にあるかどうかを判定することと、
前記処理回路によって、前記検出された音響擾乱が前記所定の音響シグネチャーと相関関係にあることの判定に基づいて前記所定の音響シグネチャーに対応した制御信号を生成することであって、生成された前記制御信号は、前記車内通信システムにおける前記複数のスピーカーのうちの1つないし複数を制御するものであることと、
前記制御信号が前記複数のスピーカーからの前記第1音声信号の除外を指示しているときに、前記処理回路によって、前記検出された音響擾乱を出力音声信号から分離することであって、前記出力音声信号が前記車内通信システムにおける前記複数のスピーカーのうち1つないし複数のスピーカーへの出力であることと、
を備
え、
前記処理回路によって前記受信した第1音声信号における音響擾乱を検出することは、前記受信した音声信号の変化率が、ある基準を満たしているかどうかを判定することを含んでいる、方法。
【請求項2】
前記処理回路によって、少なくとも前記受信した第1音声信号と前記複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号とに基づいて、第2音響出力を生成することであって、第2音響出力は、前記車内通信システムにおける前記複数のスピーカーのうち第2のスピーカーへの出力であること、を更に備え、
前記複数のスピーカーのうち第1のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち前記第1のマイクロフォンとが、車両における車室の第1領域と関連付けられ、
前記複数のスピーカーのうち前記第2のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンとが、前記車両における車室の第2領域と関連付けられ、
前記複数のスピーカーのうち第3のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち前記第3のマイクロフォンとが、前記車両における車室の第3領域と関連付けられ、
前記生成された制御信号は、前記複数のマイクロフォンのうち前記第1のマイクロフォンが作動状態にあることを指示する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理回路によって、少なくとも前記複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号に基づいて、第2音響出力を生成することであって、前記第2音響出力は、前記複数のスピーカーのうち第2のスピーカーへの出力であることと、
前記処理回路によって、前記複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンに対応した第2音声信号と前記複数のマイクロフォンのうち前記第3のマイクロフォンに対応した前記第3音声信号とを除外した第1音響出力を生成することであって、生成された前記第1音響出力は、前記複数のスピーカーのうち第1のスピーカーへの出力であることと、
を更に備え、
前記複数のスピーカーのうち前記第1のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち前記第1のマイクロフォンとが、車両における車室の第1領域と関連付けられ、
前記複数のスピーカーのうち前記第2のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンとが、前記車両における車室の第2領域と関連付けられ、
前記複数のスピーカーのうち第3のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち前記第3のマイクロフォンとが、前記車両における車室の第3領域と関連付けられ、
前記生成された制御信号は、前記複数のスピーカーからの前記第1音声信号の除外を指示する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処理回路によって、前記生成された制御信号に基づいて視覚的表示器のステータスを変更すること、を更に備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記視覚的表示器は、車両における車室の第1領域内に設置された発光ダイオードであって、前記複数のマイクロフォンのうち前記第1のマイクロフォンのステータスを表示する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生成された制御信号が、前記車内通信システムにおける前記複数のスピーカーの音響出力を調節する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生成された制御信号が、前記複数のマイクロフォンのうち前記第1のマイクロフォンから受信した前記第1音声信号を増幅することによって、前記車内通信システムにおける前記複数のスピーカーのうち少なくとも1つの音響出力を調節する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のスピーカーのうち第1のスピーカーの音響出力の調節が、前記複数のスピーカーのうち第2のスピーカーの音響出力の調節とは無関係に行われる、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記触覚的な相互作用は、タップ、フリック、ブラッシング、または、それらの連続である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
複数のスピーカーと、
複数のマイクロフォンと、
処理回路と、
を備えた、車内通信システムを制御するためのシステムであって、
前記処理回路は、
複数のマイクロフォンのうち音響取入口を有した第1のマイクロフォンによって生成される第1音声信号を受信することと、
受信した前記第1音声信号における音響擾乱を検出することであって、前記受信した第1音声信号において検出された前記音響擾乱は、前記第1のマイクロフォンにおける前記音響取入口の直近での触覚的な相互作用に由来するものであることと、
前記検出された音響擾乱が所定の音響シグネチャーと相関関係にあるかどうかを判定することと、
前記検出された音響擾乱が前記所定の音響シグネチャーと相関関係にあることの判定に基づいて前記所定の音響シグネチャーに対応した制御信号を生成することであって、生成された前記制御信号は、前記車内通信システムにおける前記複数のスピーカーのうちの1つないし複数を制御するものであることと、
前記制御信号が前記複数のスピーカーからの前記第1音声信号の除外を指示しているときに、前記検出された音響擾乱を出力音声信号から分離することであって、前記出力音声信号が前記車内通信システムにおける前記複数のスピーカーのうち1つないし複数のスピーカーへの出力であることと、
を行うように構成さ
れ、
前記処理回路によって前記受信した第1音声信号における音響擾乱を検出することは、前記受信した音声信号の変化率が、ある基準を満たしているかどうかを判定することを含んでいる、システム。
【請求項11】
前記処理回路は更に、少なくとも前記受信した第1音声信号と前記複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号とに基づいて、第2音響出力を生成するように構成され、第2音響出力は、前記車内通信システムにおける前記複数のスピーカーのうち第2のスピーカーへの出力であり、
前記複数のスピーカーのうち第1のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち前記第1のマイクロフォンとが、車両における車室の第1領域と関連付けられ、
前記複数のスピーカーのうち前記第2のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンとが、前記車両における車室の第2領域と関連付けられ、
前記複数のスピーカーのうち第3のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち前記第3のマイクロフォンとが、前記車両における車室の第3領域と関連付けられ、
前記生成された制御信号は、前記複数のマイクロフォンのうち前記第1のマイクロフォンが作動状態にあることを指示する、請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
前記処理回路は更に、
少なくとも前記複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号に基づいて、第2音響出力を生成し、
前記複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンに対応した第2音声信号と前記複数のマイクロフォンのうち前記第3のマイクロフォンに対応した前記第3音声信号とを除外した第1音響出力を生成する、
ように構成されており、
前記第2音響出力は、前記複数のスピーカーのうち第2のスピーカーへの出力であり、
生成された前記第1音響出力は、前記複数のスピーカーのうち第1のスピーカーへの出力であり、
前記複数のスピーカーのうち前記第1のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち前記第1のマイクロフォンとが、車両における車室の第1領域と関連付けられ、
前記複数のスピーカーのうち前記第2のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンとが、前記車両における車室の第2領域と関連付けられ、
前記複数のスピーカーのうち第3のスピーカーと、前記複数のマイクロフォンのうち前記第3のマイクロフォンとが、前記車両における車室の第3領域と関連付けられており、
前記生成された制御信号は、前記複数のスピーカーからの前記第1音声信号の除外を指示する、請求項
10に記載のシステム。
【請求項13】
コンピューター読取り可能な命令を記録しているコンピューター読取り可能な非一時的記録媒体であって、当該命令は、コンピューターによって実行されたとき、車内通信システムにおける複数のスピーカーを制御するための方法を前記コンピューターに遂行させるものであり、当該方法は、
複数のマイクロフォンのうち音響取入口を有した第1のマイクロフォンによって生成される第1音声信号を受信することと、
受信した前記第1音声信号における音響擾乱を検出することであって、前記受信した第1音声信号において検出された前記音響擾乱は、前記第1のマイクロフォンにおける前記音響取入口の直近での触覚的な相互作用に由来するものであることと、
前記検出された音響擾乱が所定の音響シグネチャーと相関関係にあるかどうかを判定することと、
前記検出された音響擾乱が前記所定の音響シグネチャーと相関関係にあることの判定に基づいて前記所定の音響シグネチャーに対応した制御信号を生成することであって、生成された前記制御信号は、前記車内通信システムにおける前記複数のスピーカーのうちの1つないし複数を制御するものであることと、
前記制御信号が前記複数のスピーカーからの前記第1音声信号の除外を示しているときに
、処理回路によって、前記検出された音響擾乱を出力音声信号から分離することであって、前記出力音声信号が前記車内通信システムにおける前記複数のスピーカーのうち1つないし複数のスピーカーへの出力であることと、
を備
え、
前記処理回路によって前記受信した第1音声信号における音響擾乱を検出することは、前記受信した音声信号の変化率が、ある基準を満たしているかどうかを判定することを含んでいる、記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の車内通信システムにおける動作および制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の乗客同士の間での通信(特に、中ないし高速度で走行しているとき)は、ロードノイズ、エンジンノイズ、オーディオ(音声)ノイズ、その他の種類の通常高まる環境音によって困難となってしまう可能性がある。その上、運転者が道路上に集中しつつ車両後部の乗客と会話しているときの場合のように、乗客同士が会話中に向き合うことはめったにないという事実が、他の乗客に受け答えする能力を更に悪化させてしまう。
【0003】
上記の「背景技術」の説明は、本開示の文脈を一般的に提示する目的のためのものである。別様に出願時において先行技術とみなされてはならない明細書中の諸態様はもちろん、本件発明者らの業績もまた、この背景技術欄で説明されてるという点においては、明示的にも暗示的にも本発明に対する先行技術とは認められない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、車内通信システムにおける複数のスピーカーを制御するための方法を遂行するように構成された処理回路を備えた、方法、システム、およびコンピューター読取り可能な記録媒体に関するものである。
【0005】
ある実施形態によれば、本開示は更に、車内通信システムにおける複数のスピーカーを制御するための方法であって、処理回路によって、複数のマイクロフォンのうち音響取入口を有した第1のマイクロフォンによって生成される第1音声信号を受信することと、処理回路によって、受信した第1音声信号における音響擾乱を検出することであって、受信した第1音声信号において検出された音響擾乱は、第1のマイクロフォンにおける音響取入口の直近での触覚的な相互作用に由来するものであることと、処理回路によって、検出された音響擾乱が所定の音響シグネチャーと相関関係にあるかどうかを判定することと、処理回路によって、検出された音響擾乱が所定の音響シグネチャーと相関関係にあることの判定に基づいて所定の音響シグネチャーに対応した制御信号を生成することであって、生成された制御信号は、車内通信システムにおける複数のスピーカーのうちの1つないし複数を制御するものであることとを備えた方法に関するものである。当該方法は、処理回路によって、少なくとも受信した第1音声信号と複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号とに基づいて、第2音響出力を生成することであって、第2音響出力は、車内通信システムにおける複数のスピーカーのうち第2のスピーカーへの出力であることを更に備え、複数のスピーカーのうち第1のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンとが、車両における車室の第1領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第2のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンとが、車両における車室の第2領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第3のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンとが、車両における車室の第3領域と関連付けられ、生成された制御信号は、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンが作動状態にあることを指示する。当該方法は、処理回路によって、少なくとも複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号に基づいて、第2音響出力を生成することであって、第2音響出力は、複数のスピーカーのうち第2のスピーカーへの出力であることと、処理回路によって、複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンに対応した第2音声信号と複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号とを除外した第1音響出力を生成することであって、生成された第1音響出力は、複数のスピーカーのうち第1のスピーカーへの出力であることとを更に備え、複数のスピーカーのうち第1のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンとが、車両における車室の第1領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第2のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンとが、車両における車室の第2領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第3のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンとが、車両における車室の第3領域と関連付けられ、生成された制御信号は、複数のスピーカーからの第1音声信号の除外を指示する。
【0006】
上記の各段落は、一般的な導入部として与えられたものであって、下記特許請求の範囲を制限することを企図するものではない。以下の詳細な説明を添付図面との関連において参照することによって、説明される諸実施形態が、更なる諸利点と共に、最もよく理解されることとなる。
【0007】
添付図面との関連において検討されるときの以下の詳細な説明を参照することによって、本開示と、それに付随する諸利点とがより深く理解されるようになるにつれて、それらのより完全な認識が容易に得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムの説明図。
【
図3A】本開示の例示的な実施形態による、車内通信システムの聴覚的装置を示す図。
【
図3B】本開示の例示的な実施形態による、車内通信システムの聴覚的装置の模式図。
【
図4】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムを制御するプロセスの流れ図。
【
図5A】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムを制御するプロセスにおける副プロセスの流れ図。
【
図5B】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムを制御するプロセスにおける副プロセスの説明図。
【
図6A】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムを制御するプロセスにおける副プロセスの流れ図。
【
図6B】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムを制御するプロセスにおける副プロセスの説明図。
【
図7A】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムを制御するプロセスにおける副プロセスの流れ図。
【
図7B】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムを制御するプロセスにおける副プロセスの流れ図。
【
図8A】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムを制御するプロセスにおける副プロセスの流れ図。
【
図8B】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムを制御するプロセスにおける副プロセスの説明図。
【
図9A】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムを制御するプロセスにおける副プロセスの流れ図。
【
図9B】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムを制御するプロセスにおける副プロセスの説明図。
【
図10】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムの作動状態にある聴覚的装置を示す図。
【
図11】本開示の例示的な実施形態による、車両の車内通信システムの視覚的表示器パネルを示す図。
【
図12】本開示の例示的な実施形態による、車内通信システムを用いている車両のハードウエア構成の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語「a」や「an」(訳出されない英語の不定冠詞)は、本明細書で用いられるとき、1つないし複数と定義されるものである。用語「複数(の)」は、本明細書で用いられるとき、2つ以上(の)と定義されるものである。用語「もう1つの/別の」は、本明細書で用いられるとき、少なくとも2番目以降のと定義されるものである。用語「含む/含んでいる」および/または「有する/有している」は、本明細書で用いられるとき、備える/備えている(即ち、オープンランゲージ(非限定的言語))と定義されるものである。この文書全体を通じての「一実施形態」、「一定/特定の(諸)実施形態」、「(ある)実施形態」、「(ある)実施」、「(ある)例」、ないしは類似の用語類への言及は、当該実施形態との関連において説明される特定の特徴、構造、ないしは特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味するものである。かくして、それらのようなフレーズが、或いはこの明細書全体に亘る種々の箇所で現れることは、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではない。その上、特定の諸特徴、諸構造、ないしは諸特性は、任意の適切なやり方で限定を伴うことなく1つないし複数の実施形態に組み合わされ得るものである。
【0010】
車内通信システムは、上述した乗客同士の間での通信に関連した諸問題に取り組み得るものである。従って、そのような取組みは、例えば車両後部で聞いている乗客らに車両前部の運転者の声を聞こえ易くして、乗客の会話を容易にすることを狙っているのである。
しかしながら特定の事例では、車両での(1つないし複数の)会話に入るのを望まない車両の乗客がいるかもしれない。例えば、家族が長距離ドライブを旅していて、車両後部の乗客が眠りたいと思うかもしれない。そのような場合には、そのような車内通信システムが車両の各乗客へと個人化されて、各乗客が自らの会話への参加を、そして、それにより自らの音響環境を操作するのを可能とすることができれば好ましいであろう、ということを認識されたい。
【0011】
従って本開示は、車内通信システムを次のように制御するための方法を提供するものである。即ち、ある乗客が、車両のある聴覚的領域と繋がったり繋がりを断ったりする、或いは、車両のある聴覚的領域の参加ステータスを適合させることによって、車内での会話への自らの参加を操作することができるようにである。
【0012】
ある実施形態によれば、本開示は次のような車内通信(ICC)システムを説明するものである。即ち、そのシステムによって、専用化された単一の処理システムを介して乗客の発話を増強すると共に他の乗客らの方へ差し向けることができ、当該増強および他の乗客らへの差し向けが、表面上自然な効果となっているような車内通信システムである。例えば、車両の運転者が話しているのを想定すると、運転者の声の(ICCシステムを介した)増強および差し向けは、車両の後部右側の位置に座った乗客と、車両の後部左側の位置に座った乗客とで異なって知覚的に認識されることとなる。
【0013】
ある実施形態において、ICCシステムは、集中型のプロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ)と、車両の車室内に配置された複数のスピーカーおよび複数のマイクロフォンとを含むことができる。複数のスピーカーおよび複数のマイクロフォンは、各乗客を、少なくとも1つのマイクロフォンおよび少なくとも1つのスピーカーを含んでいる聴覚的領域と関連付けることができるように定置されている。一例では、車両の部位(例えば、前席や後席など)によって聴覚的領域が(ある程度)画定されていてもよい。
【0014】
ある実施形態によれば、本開示は、乗客の意向に応じてICCシステムを制御するための方法を説明するものである。ある実施形態によれば、本開示は、乗客が車両での各自の聴覚的領域を含めたり除外したりを選択し得るICCシステムを説明するものである。例えば、特定の聴覚的領域内に座った乗客が、プライバシーを好んで車両での会話から外れたいと望むかもしれない。従って乗客は、ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)などのユーザーインターフェイスを介して、各自の聴覚的領域を車両での会話から除外する旨の意向を示し得るのである。
【0015】
ある実施形態によれば、本開示は、ICCシステムを制御するための方法であって、各聴覚的領域がマイクロフォンを含む各自の聴覚的装置を装備することができ、当該聴覚的装置が上記で紹介したユーザーインターフェイスないしヒューマンマシンインターフェイスである方法を説明するものである。一例では、乗客による各自の聴覚的装置のハウジングとの相互作用によって発生する音を計測するようにマイクロフォンを構成し、各自の聴覚的領域について計測された音が次なる処理や解析のために記録されるようにすることができる。
【0016】
ある実施形態においては、乗客による聴覚的装置のハウジングとの相互作用によって乗客の意向を示すことができる。乗客による聴覚的装置のハウジングとの相互作用は、計測されて記録された音において検出可能な音響擾乱に帰着し得るものである。例えば相互作用は、環境ノイズを越えて検出可能なタップ(叩き)動作やフリック(弾き)動作として、乗客の意向を示すのに乗客の手の指を用いることができる。一例では、検出される音響擾乱が識別可能な音響シグネチャー(音響的な特徴)を含んでいて、当該識別可能な音響シグネチャーを乗客の意向と相関付ける(相互に関連付ける)ことができる。
【0017】
ある実施形態においては、上記で紹介したように、計測されて記録された音を乗客の意向と相関付けることができる。例えば、その音は(非限定的な例として)各自の聴覚的領域の参加ステータスを変更する旨の乗客の意向と相関付ける(例えば、乗客らが車両での会話に入るか外れるかの何れを望むかを示す)ことのできる一連のタップ動作であってもよい。
【0018】
ある実施形態においては、(相関付けられた乗客の意向の一例としての)ある聴覚的領域の参加ステータスが、一例では、視覚的表示器によって、要請している乗客に確認されると共に車両の他の乗客らへと伝えられる。視覚的表示器は、聴覚的装置のハウジングの中や上に設置される発光ダイオードであってもよい。発光ダイオードは(一例では発光時に)ある聴覚的領域、およびその中にいる乗客が、目下のところ車両での会話に参加していることを示すことができる。視覚的表示器は、ある聴覚的領域の乗客の意向を表示する如何なる目的にも役立ち得る、ということを認識されたい。
【0019】
ある実施形態によれば、聴覚的領域の参加ステータスに基づいて音響出力を調節することができる。例えば、ある聴覚的領域が休止状態にある場合、当該聴覚的領域のスピーカーに与えられる音響出力を、その他の聴覚的領域の聴覚的装置の所で感じられる調節済みの発話の無いものとして、当該音響出力を、ラジオ、コンパクトディスク・プレーヤー、その他の車両のオーディオ出力からの音だけとすることができる。
【0020】
ある実施形態によれば、本開示は、ICCシステムを制御するための方法であって、集中型デジタル信号プロセッサなどの集中型のプロセッサを介して遂行および/または実施される方法を説明するものである。そのような方法を、ここで図面を参照して説明することとする。
【0021】
ある実施形態によれば、本開示は、例示的な諸実施形態の観点から説明されることとなる。
図1は、車両101のICCシステム102を示す図である。車両101は、ICCシステム102の方法を遂行するように構成された電子制御ユニット(ECU)160を含んでいてよい。ECU160は、車両101の複数のマイクロフォン106および車両101の複数のスピーカー105と連絡して、これらを制御している。
図1の例示的な実施形態に示すように、車両101の複数のマイクロフォン106のそれぞれを、車両101の車室全体(車両101の天井内張り内を含む)に亘って搭載することができる。ある実施形態においては、車両101の複数のマイクロフォン106のうちの一部が、車両101の複数のスピーカー105のうちの一部と関連付けられてよい。
図1に示すように、車両101内には、運転者103を含む複数の乗客104が存在し得る。
【0022】
車両101のICCシステム102の標準動作の下では、通信が妨げられず全乗客に車両での会話に参加する機会があることを保証するように、車両101の複数の乗客104それぞれからの発話を、車両101の複数の乗客104のうち他の乗客らへ増強して伝えることができる。実際には、車両101の運転者103からの発話が、複数のマイクロフォン106のうち運転者103の直近の1つによって受信され、複数のスピーカー105のうち車両101の残りの(即ち、聞いている)乗客らの直近にある各自のスピーカーを通じて、それらの乗客向けに増幅され得る。増幅は、複数の乗客104それぞれに対して均一な増幅とは限らず、代わりに、スピーカーの反響定位が影響を受けずに通常の会話が進められるよう、位置に応じて変化させられてもよい。発話の増強や調節は、上述したように車両の各乗客について然るべく容易に行うことができるのである、ということを認識されたい。
【0023】
複数のスピーカー105のうちの関連した一部による、複数のマイクロフォン106の一部との増強された通信をもたらす、
図1のICCシステム102の有効な成果は、
図2に見ることができるような各聴覚的領域の創出である。本開示の例示的な実施形態によれば、車両201の運転者203を含む複数の乗客204のそれぞれ、車両201の各着座位置、ないしは車両201の各部位を、車両201の各自の聴覚的領域210と関連付けることができる。例示的な聴覚的領域210が、
図2で円形の色調の段階的変化によって大まかに示されている。作動中には、聴覚的領域210のそれぞれを、ECU260によって監視することができる。その監視は、ICCシステム202の聴覚的な恩恵をもたらすために他の聴覚的領域220と関連付けられた複数のスピーカー205それぞれの音響出力がいつどのように調節されるべきかを決定するよう、複数のマイクロフォン206のうちの関連する一部を介して行われる。
【0024】
ある実施形態においては、車両201の聴覚的領域210のそれぞれを、車両201の座席位置によって定めることができる。例えば、聴覚的領域1番211が運転者203の座席位置を画定し、聴覚的領域2番212、聴覚的領域3番213、および聴覚的領域4番214がこれに続く。それぞれの聴覚的領域210の直近に、付随するマイクロフォン206およびスピーカー205を定置することができる。それは、その領域から発せられる発話やその領域へ放出される音声を、車両201のECU260によりICCシステム202に従って制御できるようにである。
図1を参照して例示的な実施形態で説明したように、複数のマイクロフォン206は、車両201の天井内張り内に搭載されていてもよい。従って、
図2の複数のマイクロフォン206は、相対的に、複数の乗客204それぞれの上方や前方で、それぞれの聴覚的領域210に対して、或いはその領域内に定置することができる、ということを認識されたい。
【0025】
但し、上記のように定められた聴覚的領域210は、車両201の聴覚的領域210における種々の定義の例示に過ぎない。車両201の聴覚的領域210の数は必ずしも、車両201の個々の座席位置の数や、如何なる他の制約によっても限定されるものではない。例えば、車両201の聴覚的領域210は、車両201の各部位によって定められていてもよい。一例では、車両前部の座席群が第1聴覚的領域を画定し、車両後部の座席群が第2聴覚的領域を画定していてもよい。一例では、ある実施形態で本明細書に説明されるように、第1聴覚的領域と第2聴覚的領域のそれぞれが、単一のICCシステム内で別個の「聴覚的部位」同士として機能し得る。別の例では、第1聴覚的領域と第2聴覚的領域のそれぞれが、別個の「聴覚的部位」同士として機能すると共に、別々のICCシステムによって有効に制御され得る。
【0026】
但し、それらのような聴覚的領域210は、例えば第2聴覚的領域212、第3聴覚的領域213、および第4聴覚的領域214で受けた音声入力に応じて第1聴覚的領域211の直近にあるスピーカー205の音声出力を増大させることによって、車両201の乗客204らの音の知覚認識を向上させる能力をICCシステム202へもたらすに過ぎない。しかしながら、この取組みでは、車両201の各聴覚的領域210がICCシステム202の唯一の制御の下で車両での会話に有効に「参加」していながら、車両201のある乗客204が車両での会話から外れるようにすることは不可能である。
【0027】
従って本開示は、聴覚的領域210それぞれの乗客204によって当該聴覚的領域210の参加ステータスをリアルタイムで変更できるように車両201のICCシステム202を制御するための方法を説明するものである。この目的のために、
図3Aおよび
図3Bは、車両の乗客が、車両での会話へ入ったり外れたりしたい自らの要望を示すことができるようにする機構を供している。
【0028】
まず
図3Aは、本開示の聴覚的装置320の例示的な実施形態を示している。ある実施形態においては、聴覚的装置320が、ヘッドレスト、シートバック(背もたれ)、天井内張りなどの内部に定置されるか、さもなければ次のように車両内に埋め込まれてもよい。即ち、当該聴覚的装置320が、美観的に差し障りのないままでありながら、それぞれの聴覚的領域内で機能を果たせるままであるようにである。構造的には、聴覚的装置320は、ハウジング328と、少なくとも1つの入力トランスデューサー(変換器)とを含んでいてよい。後者は例えば、振動センサ、光センサ、または(本開示におけるような)マイクロフォンなどの音響センサである。マイクロフォン(図示せず)は、乗客によるハウジング328との触覚的な相互作用が感知され得るよう、ハウジング328の上や中に取り付けられていてよい。更に、ハウジング328は、1つないし複数の開口329や(一例では)1つないし複数の格子を含んでいてよい。それは、触覚的な相互作用からの音がハウジング328を通して伝えられると共に、音声の清澄性が保たれ得るようにである。乗客に聴覚的領域の参加ステータスの注意を促すために、視覚的表示器321が聴覚的装置320のハウジング328の中に設置されるか、或いはハウジング328上に取り付けられてよい。視覚的表示器321は例えば、照明装置、機械的装置、その他の視覚的な目印となる手段であってよい。一例では、視覚的表示器321が発光ダイオード(LED)であって、当該LEDの照明が、車両での会話へのある聴覚的領域の参加を表示してもよい。
【0029】
ある実施形態においては、聴覚的装置320の少なくとも1つの入力トランスデューサー(即ち、一例ではマイクロフォン)によって感知された音声信号は、通信ハブ322を介して車両のECUへ伝えられて処理され得る。通信ハブ322は、車両のECUとの有線ないしは無線の通信をもたらし得る。一例では、車両のECUは、車両における複数の聴覚的装置320それぞれの所で感知された音声信号を無線通信を通じて受信する。感知された音声信号は、ICCシステムの機能性を満たすために(処理回路によって)処理され得る。或いは、感知された音声信号の少なくとも予備的な処理が、各聴覚的領域それぞれの聴覚的装置320内に設置された各自のプロセッサによって行われ、予備的な処理を受けた感知音声信号がその後、ICCシステム内での実行のために車両のECUへ伝えられてもよい。別の実施形態においては、車両における複数の聴覚的装置320それぞれの所で感知された音声信号を処理してICCシステムを実施するために、ECUがクラウド型の処理回路に置き換えられるか、さもなければクラウド型の処理回路によって補助されてもよい。
【0030】
図3Bは、本開示の例示的な実施形態による、車両の聴覚的装置320におけるハードウエアの模式図である。聴覚的装置320は、少なくとも1つの入力トランスデューサー323、視覚的表示器321、および電源325を含んでいてよい。当該少なくとも1つの入力トランスデューサー323、視覚的表示器321、および電源325は、聴覚的装置320のバス326を介して車両のECU360と電気的に連絡している。バス326は、車両のECU360との有線ないしは無線通信のための通信ハブ322への接続を含んでいてよい。ある実施形態においては、ECU360の処理回路における特定の諸能力が(上記で紹介したように)聴覚的装置320の処理回路によって成し遂げられ、当該処理回路が(バス326を介して)電源325、視覚的表示器321、および少なくとも1つの入力トランスデューサー323と連絡していてもよい。
【0031】
図3Aおよび
図3Bで説明される聴覚的装置は、ここでは
図4を参照しての本開示のプロセスの範囲内で実施されることとなる。簡潔に言えば、車両のECUによってプロセス415が遂行され得るのであるが、プロセス415は、ICCシステムにおける複数の聴覚的装置それぞれについての、音響擾乱の検出、検出された音響擾乱における音響シグネチャーの既知の音響シグネチャーとの相関付け、および相関付けられる音響シグネチャーの選択を含んでいる。それは、プロセス415が更に、その選択に応じての、ICCシステムのための少なくとも1つの制御信号の(ECUの処理回路による)生成を含み得るようなものである。ある実施形態において、当該制御信号は、車両の複数のスピーカーそれぞれに対しての調節された音響出力の生成を命令するすると共に、一例では聴覚的装置の視覚的表示器のための制御信号をもたらすことができる。
【0032】
特に、プロセス415は、段階430で始まり、聴覚的領域1番の第1聴覚的装置から車両のECUによって受信される第1音声信号の観点から説明されることとなる。
従って、プロセス415の段階430においては、第1聴覚的装置から第1音声信号が受信され得る。第1音声信号は、第1聴覚的装置において、ある時間に亘って受け取られる音の大きさおよび/または周波数であってよい。
【0033】
プロセス415の副プロセス435では、第1音声信号内の音響擾乱を検出することができる。音響擾乱の検出は、
図5Aおよび
図5Bを参照してもっと詳細に説明されることとなるが、概して、受信した音声信号のデータにおける大きさおよび/または周波数の、所定の閾値との比較を含むものである。音響擾乱は、一例では乗客の聴覚的装置のハウジングとの触覚的な相互作用によって発生し得るものである。受信した音声信号のデータの所定の閾値との比較によって、検出される音響擾乱がないものと判定された場合には、プロセス415の段階446で車両の複数のスピーカーに対する音響出力が(通常通りに)生成され、プロセス415が段階430へ戻る。しかしながら、プロセス415の副プロセス435で音響擾乱が検出された場合には、プロセス415が副プロセス440へ進み、(以下で説明されるように)検出された音響擾乱が複数の基準と相関付けられる。
【0034】
プロセス415の副プロセス440においては、音響シグネチャーを抽出するために、検出された音響擾乱を処理することができる。そして、同定されていない音響シグネチャーが、複数の基準音響シグネチャーと相関付けられる。音声信号としての同定されていない音響擾乱は、ICCシステムに関連するような乗客の意向を示すものである、スワイプ(滑らせ)、タップ、フリック、または、それらの繰返しや組合せとすることができる。ある実施形態において、副プロセス440の出力は、一例では、複数の基準音響シグネチャーのうちのある1つの基準音響シグネチャーと同定されていない音響シグネチャーとの間での相関のレベルを示す、相関値ないしは相関値同士の組とすることができる。副プロセス440は、
図6Aおよび
図6Bを参照して、もっと詳細に説明されることとなる。
【0035】
プロセス415の段階445では、検出された音響擾乱の同定されていない音響シグネチャーと最も強い相関を有するものとして選択された基準音響シグネチャーを、所定の相関閾値と比較することができる。所定の相関閾値は、同定されていない音響シグネチャーと選択された基準音響シグネチャーとの間での類似性を示すために必要な最小相関値であってよい。特に、同定されていない音響シグネチャーと基準音響シグネチャーとの間での相関が有意なものであるかどうか、従って乗客の意向が相応に認められるかどうかを判定するために、相関値を評価することができる。一例では、同定されていない音響シグネチャーと選択された基準音響シグネチャーとの相関値が所定の相関閾値を下回ると判定された場合には、プロセス415の段階446で車両の複数のスピーカーに対する音響出力が(通常通りに)生成され、プロセス415がその後、段階430へ戻る。同定されていない音響シグネチャーと選択された基準音響シグネチャーとの相関が所定の相関閾値を下回っているという結果は、プロセス415におけるエラー、即ち似てはいるが有意ではない音響擾乱を示し得るのである。それに代わって、同定されていない音響シグネチャーと選択された基準音響シグネチャーとの相関値が所定の相関閾値以上であると判定された場合には、プロセス415が段階450へ進んで、少なくとも1つの制御信号を然るべく生成することができる。
【0036】
少なくとも1つの制御信号は、車両の複数のスピーカーそれぞれに対する調節済みの音響出力の生成を知らせるために、プロセス415の段階450で生成することができる。車両の複数のスピーカーそれぞれに対する調節済みの音響出力の生成は、プロセス415の副プロセス455を参照して説明されることとなる。調節済みの音響出力は、車両の各聴覚的領域についての音響出力を含むことができ、各聴覚的領域が、増強される発話の起点に対しての当該聴覚的領域の相対的な位置に基づいて、異なる影響を受ける。例えば、聴覚的領域1番で生じた発話を想定すると、聴覚的領域2番、聴覚的領域3番、および聴覚的領域4番における調節済みの音響出力は、それらの領域同士の相対的な位置に基づいて異なり合っているかもしれない。
【0037】
ある実施形態において、生成された少なくとも1つの制御信号は、車両での会話に参加したいという聴覚的領域1番の乗客の要望を反映することができる。別の実施形態において、生成された少なくとも1つの制御信号は、自らの聴取りの知覚認識を向上させるために聴覚的領域1番の音響出力を調節したいという乗客の要望を示すことができる。例えば、聴覚的領域1番の乗客が、音響出力の音量を快適な水準に合わせたいと思うかもしれない。また、当該乗客が、車両の他の聴覚的領域内での自分の話し声を(例えば、車両の他の聴覚的領域へもたらされる、車両での会話内での自分の声を大きくすることによって)増強させたいと思うかもしれない。いずれにしても、生成された少なくとも1つの制御信号は、それぞれの聴覚的領域における乗客の意向に関してのICCシステムへの命令をもたらすのである。
【0038】
ある実施形態によれば、副プロセス455における調節済みの音響出力の生成(
図7Aから
図9Bを参照して、もっと詳細に説明される)は、検出された音響擾乱を音響出力から除去ないしは分離(フィルタリング)することを含むことができる。一例では、相関付けられた音響シグネチャーが、車両での会話から外れるとの乗客の意向と相関付けられて、その意向を示し得る。従って、検出された音響擾乱を音響出力から分離することに加えて、プロセス415の副プロセス455は、ICCシステムへ必要な変更を指示することができる。その変更は、ある乗客ないしは聴覚的領域を車両での会話から外すように、生成された音響出力を調節できるようなものである。
【0039】
生成された音響出力の調節に加えて、少なくとも1つの制御信号を、聴覚的装置における視覚的表示器のステータスを制御する信号とすることができる。従って、プロセス415の段階427では、少なくとも1つの制御信号を、聴覚的領域1番の第1聴覚的装置における視覚的表示器のステータスを適合させるのに用いることができる。例えば、
図10および
図11を参照して説明されることとなるように、少なくとも1つの制御信号が、聴覚的領域1番における乗客の車両での会話へ参加するとの意向を示し得る。従って、当該意向を示すために第1聴覚的装置における視覚的表示器のステータスを適合させることができるのである。
図4に破線で示されるように、聴覚的装置における視覚的表示器のステータスは、相関付けられた音響シグネチャーが要求するときの特定条件下でのみ適合させられるのである。
【0040】
上記で説明されたプロセス415は、プロセス415の副プロセス455における調節済みの音声出力の生成後、プロセスが段階430へ戻って、第1聴覚的装置の音声信号がICCシステム内での処理のために再び受信されるという、連続的なプロセスである。ここで、
図5Aから
図11を参照して、プロセス415のより詳細な説明を述べることとする。
【0041】
図5Aおよび
図5Bは、本開示の例示的な実施形態による、プロセス415の副プロセス435の流れ図および説明図を提供している。副プロセス435の段階536では、プロセス415の段階430で受信した第1音声信号を、あるベースライン(基準)に対して正規化することができる。それは、受信音声信号の時間依存的なノイズおよび/またはドリフト(値のずれ)を捕らえるためである。この目的のために、当該ベースラインは、所定時間の間について計算することのできる、音声信号の時間平均化されたベースラインとすることができる。一例では、当該所定時間を2秒間とすることができるが、時間平均化されたベースラインが音声信号の正確なベースラインを反映したものであるように任意の適切な時間を考えることができる、ということを認識されたい。時間依存的な平均値を、上記で示したように2秒毎に、或いは適切に決められた所定の時系列で更新することができる。受信音声信号の時間平均ベースライン値が計算されたならば、その後に受信された音声信号のデータを、計算された時間平均ベースライン値に対して正規化することができる。副プロセス435の段階537では、正規化された音声信号を所定の閾値と(リアルタイムで)比較することができる。ある実施形態において、当該所定の閾値は、その値を上回ると、受信音声信号が(通常の会話、ロードノイズ、その他の環境音とは別個の、ある聴覚的領域の乗客の意向を反映した)音響擾乱であると判定される値である。従って、
図4で紹介されたように、副プロセス435の段階538で、正規化された音声信号が所定の閾値以上であるかどうかが判定される。正規化された音声信号が所定の閾値を上回らないと判定された場合には、プロセス415の段階446で、各聴覚的装置の目下の参加ステータスに基づいて、車両の複数のスピーカーそれぞれ対しての音響出力を生成することができ、プロセス415は音声信号の再受信される段階430へ戻ることができる。或いは、正規化された音声信号が所定の閾値以上であると判定された場合(即ち、音響擾乱が生じた場合)には、副プロセス435が、音響擾乱の時系列の特定される段階539へと進む。特定された音響擾乱の時系列を「音響シグネチャー」と呼ぶことができる。換言すれば、音響擾乱の検出されていた間の時間を含むデータセットが、プロセス415内での更なる解析のために音響シグネチャーとして記録されるのである。
【0042】
ある実施形態によれば、ある聴覚的領域における乗客の意向をとらえるために、音響シグネチャーを(少なくとも)、音響擾乱の開始の時点と、その後の所定時間とを含むデータセットの時間によって定義することができる。例えば音響擾乱は、乗客の聴覚的装置との単一の相互作用、乗客による聴覚的装置の長時間の接触、乗客による聴覚的装置との一連の相互作用、ないしは、乗客の聴覚的装置との類似した別の相互作用(それらの中の「音響シグネチャー」それぞれが乗客の意向を反映しているもの)であってよい。一例では、上記の観点から所定時間は、2秒、3秒、4秒、ないしは5秒であってよいが、もちろん、これらの所定時間は、その間に乗客の意向が伝えられると期待され得る種々の時間の単なる例示である、ということを認識されたい。例えば、乗客の聴覚的装置との相互作用が、各自の聴覚的領域の参加ステータスを変更することに限定される場合には、その間に相互作用が無理なく期待され得る時間の上限が2秒であろう。この目的のため、再び図面を参照すると、
図5Bに聴覚的装置520のハウジング528上における2つの星形の形状として示された音響擾乱534の2つの別個のスパイク(大パルス)を認識するのには2秒で十分であろう。
【0043】
音響擾乱が検出され、副プロセス435で音響擾乱の音響シグネチャーを含んでいる特定済みの時系列が準備されたならば、プロセス415は副プロセス440へと進んでよい。プロセス415の副プロセス440では、検出された音響擾乱の音響シグネチャーが、基準音響シグネチャーと相関付けられ、それによって同定され得る。
【0044】
副プロセス440の段階681では、検出された音響擾乱において特定された時系列(即ち、音響シグネチャー)を、段階682で基準音響シグネチャー・データベースから受け取った複数の基準音響シグネチャーのそれぞれと相関付けることができる。1つのデータベースとして、或いは別々に選択可能な精選された多数のデータベースとして具体化される基準音響シグネチャー・データベースは、定められた乗客意向ないし乗客要望と関連付けられる音響シグネチャーの集まりを備えていてよい。例えば、基準音響シグネチャー・データベースは、聴覚的装置のハウジングを横切る乗客の手のスワイプを反映した時系列であって、そのスワイプがICCシステムのそれぞれの聴覚的領域の音量を変化させる要望と関連付けられているものを含んでいてもよい。基準音響シグネチャー・データベースはまた、聴覚的装置のハウジング上での指のトリプルタップ(3連の叩き動作)の時系列であって、そのトリプルタップがICCシステムのそれぞれの聴覚的領域の参加ステータスを変更する要望と関連付けられているものを含んでいてもよい。別の実施形態においては、聴覚的装置のハウジングとの触覚的な相互作用の生じる速度を評価して、乗客の意向を判定するのに用いることができる。
【0045】
検出された音響擾乱の同定されていない音響シグネチャーを、基準音響シグネチャー・データベースの複数の基準音響シグネチャーそれぞれと相関付けたならば、プロセス415の副プロセス440は、段階683で、それらのうち最も強い相関を選出する。副プロセス440の段階683で選出された最も強い相関は、音響擾乱の同定されていない音響シグネチャーに最も近似した基準音響シグネチャーを反映している。従って、副プロセス440の段階684では次に、選出される相関付けられた音響シグネチャー(選出相関音響シグネチャー)を出力としてもたらすことができる。選出相関音響シグネチャーは乗客の要望と関連付けられており、当該出力はICCシステムへもたらされるものである。
図6Bを参照すると、選出相関音響シグネチャーは、参加ステータス変更の要望と関連付けられる、聴覚的装置620のハウジング628上での指のダブルフリック(2連の弾き動作)641であってよい。
【0046】
しばし
図4へ戻ると、選出相関音響シグネチャーと所定の相関閾値との(上述したような)比較に続いて、選出相関音響シグネチャーをプロセス415の段階450へもたらすことができ、それにより、適切な少なくとも1つの制御信号を生成させることができる。
図7Aから
図9Bを参照して説明されることとなるように、段階450で生成された適切な少なくとも1つの制御信号をプロセス415の副プロセス455へもたらすことができ、乗客の要望を実現することができる。
【0047】
ある実施形態によれば、本開示の副プロセス455は、
図7Aを参照して説明される諸段階を含むことができる。特に
図7Aは、乗客の要望に応じて、車両のある聴覚的領域が車両での会話に入るように当該聴覚的領域の参加ステータスが変更される、という筋書きを反映している。範囲については、
図7Aは、「ホスト」聴覚的装置の受信音声信号と、「ホスト」聴覚的装置の「ホスト」聴覚的領域と関連付けられる音響出力との観点から示されている。従って、簡単にするために、上述の「ホスト」聴覚的領域とは関連付けられない聴覚的装置およびそれぞれの聴覚的領域は、「ゲスト」聴覚的装置および「ゲスト」聴覚的領域と呼ばれ得る。同様の取組みが、車両の1つないし複数の「ゲスト」聴覚的領域に適用され得る、ということを認識されたい。
【0048】
最初に、プロセス415の段階430より受信された「ホスト」音声信号を、副プロセス455の段階756で、検出された音響擾乱を受信音声信号から除去ないしは分離するように処理することができる。このようにして、検出された音響擾乱の耳障りになり得る音が、「ゲスト」聴覚的領域の複数のスピーカーそれぞれに音響出力として送出されてしまうのを防止することができる。続いて段階757’および段階758’で、分離のなされた「ホスト」音声信号を、各受信「ゲスト」音声信号と統合することができ、そしてICCシステムの各プロセスに従って更に調節することができる。ある実施形態においては、段階757’で、「ホスト」聴覚的領域を車両での会話に入れるため、「ホスト」聴覚的領域へ供給される音響出力(即ち、「ホスト」音響出力)に、車両の「ゲスト」聴覚的領域それぞれの所で受信される「ゲスト」音声信号の諸特徴を含めることができる。ある実施形態においては、段階758’で、車両の「ゲスト」聴覚的領域のそれぞれに供給される音響出力に(必然的に)「ホスト」聴覚的領域の所で受信された「ホスト」音声信号の諸特徴を含めることができる。このようにして、「ホスト」聴覚的領域の乗客を車両での会話に入らせることができるのである。
【0049】
別の実施形態によれば、本開示の副プロセス455は、
図7Bを参照して説明される諸段階を含むことができる。特に
図7Bは、乗客の要望に応じて、車両のある聴覚的領域が車両での会話から外れるように当該聴覚的領域の参加ステータスが変更される、という筋書きを反映している。簡潔に言えば
図7Bは、
図7Aのものと同様に、「ホスト」聴覚的装置と、「ホスト」聴覚的装置の「ホスト」聴覚的領域との観点から示されている。
【0050】
最初に、プロセス415の段階430より受信された「ホスト」音声信号を、副プロセス455の段階756で、検出された音響擾乱を受信音声信号から除去ないしは分離するように処理することができる。このようにして、検出された音響擾乱の耳障りになり得る音が、「ゲスト」聴覚的領域の複数のスピーカーそれぞれに音響出力として送出されてしまうのを防止することができる。続いて段階757”および段階758”で、分離のなされた「ホスト」音声信号を、各受信「ゲスト」音声信号と統合することができ、そしてICCシステムの各プロセスに従って更に調節することができる。ある実施形態においては、段階757’で、「ホスト」聴覚的領域を車両での会話から外すため、「ホスト」聴覚的領域へ供給される音響出力(即ち、「ホスト」音響出力)から、車両の「ゲスト」聴覚的領域それぞれの所で受信される「ゲスト」音声信号の諸特徴を除外することができる。ある実施形態においては、段階758’で、車両の「ゲスト」聴覚的領域のそれぞれに供給される音響出力が(必然的に)「ホスト」聴覚的領域の所で受信された「ホスト」音声信号の諸特徴を除外していることができる。このようにして、「ホスト」聴覚的領域の乗客を車両での会話から外すことができるのである。
【0051】
ここで、
図7Aおよび
図7Bの「ホスト」および「ゲスト」に言及して説明した一般化された例を、当該車両が聴覚的領域1番、聴覚的領域2番、聴覚的領域3番、および聴覚的領域4番を有した車両である場合の
図8Aから
図9Bを参照して説明することとする。
最初に
図8Aおよび
図8Bを参照すると、聴覚的領域4番814内の乗客804からの車両での会話に入りたいとの要望を受けることができる。その要望(即ち、相関付けられる音響シグネチャー)は、車両のECU860によって受信される。ECU860は、ICCシステム802の方法を遂行する。この目的のために、聴覚的領域4番814内における聴覚的装置のマイクロフォン806から受信した音声信号を、副プロセス455の段階856で、検出された音響擾乱を受信音声信号から除去ないしは分離するように処理することができる。このようにして、聴覚的領域4番814において検出された音響擾乱の耳障りになり得る音が、聴覚的領域1番811、聴覚的領域2番812、および聴覚的領域3番813の各スピーカー805へ送出されてしまうのを防止することができる。続いて段階857および段階858で、分離のなされた聴覚的領域4番からの音声信号を、聴覚的領域1番、聴覚的領域2番、および聴覚的領域3番から受信した各音声信号と統合することができ、そしてICCシステム802の各プロセスに従って更に調節することができる。ある実施形態においては、段階857で、聴覚的領域4番814へ供給される音響出力に、聴覚的領域1番811、聴覚的領域2番812、および聴覚的領域3番813から受信される各音声信号の諸特徴を含めることができる。逆に段階858では、聴覚的領域1番811、聴覚的領域2番812、および聴覚的領域3番813に供給される音響出力に、聴覚的領域4番814から受信した音声信号の諸特徴を含めることができる。このようにして、聴覚的領域4番814の乗客を車両での会話に入らせることができるのである。
【0052】
同様に
図9Aおよび
図9Bを参照すると、聴覚的領域4番914内の乗客904からの車両での会話から外れたいとの要望を受けることができる。その要望(即ち、相関付けられる音響シグネチャー)は、車両のECU960によって受信される。ECU960は、ICCシステム902の方法を遂行する。この目的のために、聴覚的領域4番914内における聴覚的装置のマイクロフォン906から受信した音声信号を、副プロセス455の段階956で、検出された音響擾乱を受信音声信号から除去ないしは分離するように処理することができる。続いて段階957および段階958で、分離のなされた音声信号を、聴覚的領域1番、聴覚的領域2番、および聴覚的領域3番から受信した各音声信号と統合することができ、そしてICCシステム902の各プロセスに従って更に調節することができる。ある実施形態においては、段階957で、聴覚的領域4番914へ供給される音響出力から、聴覚的領域1番911、聴覚的領域2番912、および聴覚的領域3番913より受信される各音声信号の諸特徴を除外することができる。逆に段階958では、聴覚的領域1番911、聴覚的領域2番912、および聴覚的領域3番913に供給される音響出力から、聴覚的領域4番914より受信した音声信号の諸特徴を除外することができる。このようにして、聴覚的領域4番914を巡る円形の色調の段階的変化が存在しないことによって示されるように、聴覚的領域4番914の乗客を車両での会話から外すことができるのである。
【0053】
ここで
図10を参照すると、上述したように、ある聴覚的領域の乗客が、(一例にて)車両での会話に入りたかったり外れたかったりする要望を示すために、聴覚的装置1020のハウジングとの相互作用を行い得る。聴覚的装置1020のハウジングとの乗客の相互作用に続いて、聴覚的装置1020の視覚的表示器1021のステータスを、当該聴覚的領域の参加ステータスを反映するよう、
図4のプロセスに従って適合させることができる。例えば乗客は、聴覚的装置1020のハウジング上での2連続タップを通じて、車両での会話に入りたいとの要望を示し得る。視覚的表示器1021は、LEDなどの照明装置であってよい。従って、ICCシステムの各聴覚的領域の音響出力に対する調節に続いて、視覚的表示器1021(即ち、LED)を作動させて当該聴覚的領域が目下のところ車両での会話に参加している旨を表示することができる。
【0054】
ある実施形態によれば、各聴覚的装置および各視覚的表示器が、車両のそれぞれの聴覚的領域の直近にあるようにすることができる。ある実施形態においては、
図11に示すように、どの乗客が目下のところ車両での会話に参加しているかを車両の各乗客が知ることができるよう一緒に集められた視覚的表示器の組のうちの1つである視覚的表示器が追加されていてもよい。この目的のために、車両中央の見える位置に表示パネル1117を設置することができる。その表示パネル1117は、少なくとも1つの視覚的表示器1121を含んでいる。一例では、表示パネル1117は、車両のインスツルメントパネルの隣のダッシュボード上に位置して4つの視覚的表示器1121を含み、4つの視覚的表示器1121のそれぞれが、車両のある聴覚的領域の参加ステータスを表示するものであってよい。別の実施形態においては、少なくとも1つの視覚的表示器1121が車両のディスプレイ1118上に表示されていてもよい。ディスプレイ1118が車両のユーザーインターフェイスなどであって、そのディスプレイ1118が車両の各聴覚的領域の参加ステータスを示す情報を提示してもよい。
【0055】
ある実施形態によれば、本開示は、乗客による聴覚的装置のハウジングとの触覚的な相互作用によって、(一例では)各自の聴覚的領域が車両での会話に入ったり外れたりするよう聴覚的装置の参加ステータスを変更できるようにするプロセスを説明するものである。但し、それに加えて、車両における複数の聴覚的領域の参加ステータスが、中央位置から、即ち(一例では)車両の運転者によって制御され得るといことである。そのような複数の聴覚的領域における各聴覚的領域の参加ステータスの集中型の制御によって、運転中の知覚認識を向上させるために運転者がICCシステムを適合させるような制御がもたらされるのである。例えば運転者は、混雑した交通の中にあって運転作業により集中する必要があるかもしれない。従って運転者は、ICCシステムを不作動にして、ICCシステムの機能を車両の後部へと切り離すことができる。車両の後部は、2つの別々の聴覚的領域(例えば、聴覚的領域3番と聴覚的領域4番)を包含するか、または聴覚的領域3番と聴覚的領域4番とが1つの聴覚的領域として取り扱われる結合型の聴覚的領域であることができる。とはいえ、このようにして車両の運転者は、自らを車両での会話から切り離して、手元の運転作業に集中することができるのである。
【0056】
ある実施形態によれば、本開示のICCシステムは、車両の車室全体内での実施を説明するものである。但し、別の実施形態においては、本明細書で説明する各聴覚的領域の観点から、当該ICCシステムが車両の各部位と関連付けられる1つないし複数のICCシステムとなっていてもよい、ということを認識されたい。例えば、車両前部の運転者ともう1人の乗客とが、車両後部の乗客とは切り離された会話をしたいと望む場合、車両前部(即ち、前方の音響部位)内に分離されたICCシステムを作り出して実行させてもよい。従って、当該音響部位の各聴覚的領域が、作動状態とはなるが、車両の後方の音響部位からは隔離されるようにすることができる。
【0057】
ある実施形態においては、上記のことに加えてICCシステムが更に、車両のある聴覚的領域と関連付けられる1つないし複数のスピーカーから(所望のときに)ノイズキャンセリング(雑音消去)波形を発生させるように構成されていてもよい。その効果によって、当該聴覚的領域にプライバシーがもたらされる。
【0058】
図12は、実施され得る電子制御ユニット(ECU)1260の例示的な実施形態におけるハードウエア構成要素類の模式図である。
図12は、任意の一部ないし全部が然るべく利用され得る種々の構成要素類の一般化された例示を与えることを意味するものに過ぎない。幾つかの場合、
図12によって示される構成要素類は、単一の物理的装置へと局所化され、および/または種々のネットワーク化された装置(これらは、様々な物理的位置に配置され得る)の中に分散されることができる、ということに留意されたい。その上、ある実施形態においてECU1260は、データ(即ち、1つないし複数の音声信号)を処理すると共に車内通信システムの動作を制御するように構成することができる、ということを認識されたい。別の実施形態においては、ECU1260と協調してデータを処理すると共に車内通信システムの動作を制御するように構成された遠隔処理回路と通信状態にあるように、ECU1260を構成することができる。遠隔処理回路は、集中型のサーバーであるか、または車両のECU1260から独立した別の処理回路であってもよい。ECU1260が、バス1267を介して電気的に結合可能な(或いは、別様に然るべく通信状態にあってもよい)ハードウエア要素類を備えてるのが示されている。ハードウエア要素類には処理回路1261が含まれ得るが、その処理回路1261は(限定を伴うことなく)1つないし複数のプロセッサ、1つないし複数の専用プロセッサ(例えば、デジタル信号処理(DSP)チップ、グラフィック高速化プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASICs)、および/若しくは、類似のもの)並びに/または、その他の処理用の構造や手段を含むことができる。上述したプロセッサ類は、中でもイメージ処理やデータ処理を含む操作を遂行するよう特別にプログラムされることができる。幾つかの実施形態は、所望の機能性に応じて、独立したDSP1263を有していてもよい。
【0059】
ある実施形態によれば、ECU1260は1つないし複数の入力装置制御器1270を含むことができる。入力装置制御器1270は、(限定を伴うことなく)車内タッチスクリーン、タッチパッド、マイクロフォン、(1つないし複数の)ボタン、(1つないし複数の)ダイヤル、(1つないし複数の)スイッチ、および/または類似のものを制御することのできるものである。ある実施形態においては、1つないし複数の入力装置制御器1270のうちの1つを、聴覚的装置のマイクロフォンを制御するように構成すると共に、本開示の1つないし複数の聴覚的装置からの音声信号入力1268を受信するように構成することができる。従って、ECU1260の処理回路1261は、1つないし複数の聴覚的装置それぞれにおける受信音声信号入力に応じて、ICCシステムの各プロセスを実行し得るのである。
【0060】
ある実施形態においては、ICCシステムの1つないし複数の聴覚的装置それぞれのマイクロフォンを、デジタルオーディオバスを介して集中型デジタル信号プロセッサによって制御することができる。一例では、各マイクロフォンは、エレクトレット、MEMS、その他の類似型式のマイクロフォンとすることができる。その場合、各マイクロフォンの出力は、アナログまたはデジタルとすることができる。一例では、集中型デジタル信号プロセッサを、聴覚的装置それぞれの所に分散配置される1つないし複数の局所デジタル信号プロセッサとすることができる。一例では、受信音声信号を伝達するためと、視覚的表示器(例えば、LED)を制御するために、デジタルオーディオバスが用いられてもよい。従って、当該デジタルオーディオバスは、マイクロフォン・デジタル音声信号やLEDダイオード制御信号の伝達を可能とするデジタルオーディオバス(例えば、アナログ・デバイセズ社のA2Bバス)とすることができる。
【0061】
ある実施形態によれば、ECU1260は、(限定を伴うことなく)ディスプレイ、LEDなどの視覚的表示器、スピーカーその他を制御することのできる1つないし複数の出力装置制御器1262をも含むことができる。例えば、1つないし複数の出力装置制御器1262は、車両のスピーカーの1つないし複数の音声出力1275のレベルが車室環境ノイズや乗客の会話などに対して制御されるよう、そ(れら)の音声出力1275を制御するように構成することができる。また、1つないし複数の出力装置制御器1262は、視覚的表示器(即ち、LED)のステータスを制御するように構成することができる(LEDの点灯が、車両の各乗客に対して、各自の聴覚的領域が車両での会話に参加していることを表示する)。
【0062】
ECU1260は、無線通信ハブ1264(即ち、接続ハブ)をも含んでいてよい。そのバブは(限定を伴うことなく)モデム、ネットワーク・カード、赤外線通信装置、無線通信装置、および/若しくはチップセット(例えば、ブルートゥース(商標)装置、IEEE(商標)802.11装置、IEEE802.16.4装置、WiFi(商標)装置、WiMax(商標)装置、4G、5Gその他を含むセルラー通信設備など)並びに/または、類似のものを含むことができる。無線通信ハブ1264は、(ある程度説明されるような)ネットワーク、無線アクセスポイント、その他のコンピューターシステム、および/または、本明細書で説明する如何なる他の電子装置類ともデータの交換を可能とし得るものである。通信は、無線信号1266を送信および/または受信する1つないし複数の無線通信アンテナ1265を通じて実行することができる。
【0063】
所望の機能性に応じて、無線通信ハブ1264は、ベース・トランシーバーステーション(携帯電話基地局)(例えば、セルラーネットワークの基地局)および/または(1つないし複数の)アクセスポイントと通信するための、別体のトランシーバー(無線通信機)を含んでいることができる。これらの様々なデータネットワークは、種々のネットワーク型式を含むことができる。また、無線広域ネットワーク(WWAN)は、符号分割多元接続(CDMA)ネットワーク、時間分割多元接続(TDMA)ネットワーク、周波数分割多元接続(FDMA)ネットワーク、直交周波数分割多元接続(OFDMA)ネットワーク、WiMax(IEEE802.16)その他であってよい。CDMAネットワークは、例えばcdma2000、広帯域CDMA(W-CDMA)その他の、1つないし複数の無線接続技術(RATs)を実施し得る。cdma2000は、IS-95、IS-2000、および/またはIS-856の各標準を含み得る。TDMAネットワークは、モバイル通信用グローバルシステム(GSM)、デジタル高度携帯電話システム(D-AMPS)、または一部の他のRATを実施し得る。OFDMAネットワークは、4Gや5Gの技術を含むLTE、LTEアドバンストその他を採用し得る。
【0064】
ECU1260は、(1つないし複数の)センサー制御器1274を更に含むことができる。そ(れら)のような制御器は(限定を伴うことなく)車両の1つないし複数のセンサー、中でも1つないし複数の加速度計、ジャイロスコープ、カメラ、レーダー、LiDAR(ライダー)、走行距離センサー、および超音波センサー、並びに、磁力計、高度計、マイクロフォン、近接センサー、光センサーその他を含むセンサーを制御することができる。一例では、1つないし複数のセンサーは、車室環境ノイズを計測するように構成された(1つないし複数の)マイクロフォンを含んでいる。計測された車室環境ノイズは、ICCシステムの方法内への組み込みのために処理回路1261へともたらされる。
【0065】
ECU1260の諸実施形態は、衛星測位システム(SPS)受信器1271をも含み得る。SPS受信器1271は、1つないし複数のSPS衛星からの信号1273をSPSアンテナ1272を用いて受信することのできるものである。SPS受信器1271は、SPSシステムの各衛星から(種々の技術を用いて)装置の位置を導き出すことができる。SPSシステムは例えば、全地球航法衛星システム(GNSS)(例えば、全地球測位システム(GPS))、欧州連合に亘ってのガリレオ、ロシアに亘っての全地球航法衛星システム(GLONASS)、日本に亘っての準天頂衛星システム(QZSS)、インドに亘ってのインド地域航法衛星システム(IRNSS)、中国に亘ってのコンパス/ベイドゥ、および/または類似のものなどである。更に、SPS受信器1271は、種々の補強システム(例えば、1つないし複数の全地球および/または気域航法衛星システムと関連付けられるか、さもなければ、そ(れら)と共に使用可能にされ得る静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS))によって用いられることができる。例として(但し、限定ではなく)SBASは、インテグリティ(完全性)情報、微分補正その他をもたらす(1つないし複数の)補強システム、例えば広域補強システム(WAAS)、欧州静止衛星航法オーバーレイサービス(EGNOS)、運輸多目的衛星用補強システム(MSAS)、GPS補助静止衛星型航法補強システムないしはGPSおよび静止衛星型航法補強システム(GAGAN)、並びに/または類似のものを含み得る。かくして本明細書で用いられるとき、SPSは、1つないし複数の、全地球および/または地域の航法衛星システムおよび/または補強システムの如何なる組合せをも含み得ると共に、SPS信号は、SPSの、SPS類似の、および/または、当該1つないし複数のSPSと関連付けられる他の信号を含み得るのである。
【0066】
ECU1260は、メモリ1269を更に含んでいても、および/または、メモリ1269と通信状態にあってもよい。メモリ1269は(限定を伴うことなく)ローカルの、並びに/またはネットワーク接続可能な、記憶装置、ディスクドライブ、ドライブアレイ、光学記憶装置、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)および/またはリードオンリーメモリ(「ROM」)などのソリッドステート記憶装置(プログラマブル(プログラム可能)なもの、および/若しくはフラッシュアップデータブル(フラッシュアップデート可能)なものとすることができるもの)、並びに/または類似のものを含むことができる。それらのような記憶装置は、(限定を伴うことなく)種々のファイルシステム、データベース構造、および/または類似のものを含む任意の適切なデータストアを実施するように構成されてよい。
【0067】
ECU1260のメモリ1269は、コンピューター読取り可能な媒体に埋め込まれた、オペレーティングシステム、デバイスドライバ、実行可能ライブラリ、および/または、その他のコードを含むソフトウエア要素類(図示せず)をも備えることができる。例えば、本明細書で説明されるような、種々の実施形態によってもたらされるコンピュータープログラムを備え得る、並びに/または、その他の実施形態によってもたらされる方法を実施する、および/またはシステムを構成するように設計され得る、1つないし複数のアプリケーション・プログラムなどである。そして、ある態様においては、説明した諸方法に従って1つないし複数の作業を遂行するように汎用コンピュータ(或いは、別の装置)を構成する、および/または適合させるのに、そのようなコードおよび/または命令を用いることで、結果的に専用コンピュータとすることができる。
【0068】
当業者にとっては、特定の諸要求に応じて相当な変形例が作られ得るということが明らかであろう。例えば、カスタマイズされたハードウエアをも用いることができるかもしれず、および/または、ハードウエア、ソフトウエア(例えばアップレトなどの移植可能なソフトウエアを含む)、或いはその両方において、特定の諸要素が実施されるかもしれない。更には、ネットワーク入/出力装置などの別のコンピューティング・デバイス(計算機器)類への接続が採用されてもよい。
【0069】
添付図面を参照すると、メモリを含み得る構成要素類は、機械読取り可能な非一時的媒体を含むことができる。本明細書で用いられるときの用語「機械読取り可能な媒体」および「コンピューター読取り可能な媒体」は、ある機械を特定のやり方で動作させるデータもたらすことに関与する如何なる記録媒体をも表すものである。上文で与えられた諸実施形態において、種々の機械読取り可能な媒体が、処理ユニットおよび/または実行用の(1つないし複数の)別の装置へ命令/コードを与えることに関わらされるかもしれない。それに加えて、或いは、それに代えて、機械読取り可能な媒体は、それらのような命令/コードを記録および/または保持するのに用いられるかもしれない。多くの実施において、コンピューター読取り可能な媒体は、物理的および/または有形の記録媒体である。そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むが、それらには限定されない多くの形態をとり得る。コンピューター読取り可能な媒体の一般的な諸形態は、例えば、磁気および/または光学媒体、RAM、PROM、EPROM、フラッシュEPROM、任意の他のメモリのチップやカートリッジ、以下で説明するような搬送波、或いはコンピューターが命令および/またはコードを読み取ることのできる任意の他の媒体形態を含む。
【0070】
本明細書で考察された方法、システム、および装置は例示である。種々の実施形態が、種々の手順や構成要素を然るべく省略、置換、または付加し得るのである。例えば、特定の諸実施形態に関して説明された諸特徴が、種々の別の諸実施形態にて組み合わされてもよい。諸実施形態の様々な態様や要素が、同様のやり方で組み合わされてもよい。本願で与えられる図面の種々の構成要素は、ハードウエアおよび/またはソフトウエアに具体化することができる。また、技術は発展するが故に、諸要素のうちの多くは、例示であって、それらの特定の例示へと本開示の範囲を限定するものではない。
【0071】
明らかに、上記の諸教示に照らして数多くの修正や変形が可能である。従って、添付特許請求の範囲内において、本発明は、本明細書で具体的に説明されたのとは別様に実施され得るのである、ということを理解されたい。
【0072】
本開示の諸実施形態は、以下の括弧表現でも明記され得るものである。
【0073】
(1)車内通信システムにおける複数のスピーカーを制御するための方法であって、処理回路によって、複数のマイクロフォンのうち音響取入口を有した第1のマイクロフォンによって生成される第1音声信号を受信することと、処理回路によって、受信した第1音声信号における音響擾乱を検出することであって、受信した第1音声信号において検出された音響擾乱は、第1のマイクロフォンにおける音響取入口の直近での触覚的な相互作用に由来するものであることと、処理回路によって、検出された音響擾乱が所定の音響シグネチャーと相関関係にあるかどうかを判定することと、処理回路によって、検出された音響擾乱が所定の音響シグネチャーと相関関係にあることの判定に基づいて所定の音響シグネチャーに対応した制御信号を生成することであって、生成された制御信号は、車内通信システムにおける複数のスピーカーのうちの1つないし複数を制御するものであることと、を備えた方法。
【0074】
(2)処理回路によって、少なくとも受信した第1音声信号と複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号とに基づいて、第2音響出力を生成することであって、第2音響出力は、車内通信システムにおける複数のスピーカーのうち第2のスピーカーへの出力であること、を更に備え、複数のスピーカーのうち第1のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンとが、車両における車室の第1領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第2のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンとが、車両における車室の第2領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第3のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンとが、車両における車室の第3領域と関連付けられ、生成された制御信号は、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンが作動状態にあることを指示する、(1)記載の方法。
【0075】
(3)処理回路によって、少なくとも複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号に基づいて、第2音響出力を生成することであって、第2音響出力は、複数のスピーカーのうち第2のスピーカーへの出力であることと、処理回路によって、複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンに対応した第2音声信号と複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号とを除外した第1音響出力を生成することであって、生成された第1音響出力は、複数のスピーカーのうち第1のスピーカーへの出力であることと、を更に備え、複数のスピーカーのうち第1のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンとが、車両における車室の第1領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第2のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンとが、車両における車室の第2領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第3のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンとが、車両における車室の第3領域と関連付けられ、生成された制御信号は、複数のスピーカーからの第1音声信号の除外を指示する、(1)と(2)のいずれかに記載の方法。
【0076】
(4)処理回路によって、検出された音響擾乱を出力音声信号から分離することであって、出力音声信号は、車内通信システムにおける複数のスピーカーのうち1つないし複数のスピーカーへの出力であること、を更に備えた、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
【0077】
(5)処理回路によって、生成された制御信号に基づいて視覚的表示器のステータスを変更すること、を更に備えた、(1)から(4)のいずれかに記載の方法。
【0078】
(6)視覚的表示器は、車両における車室の第1領域内に設置された発光ダイオードであって、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンのステータスを表示する、(1)から(5)のいずれかに記載の方法。
【0079】
(7)処理回路によって受信した第1音声信号における音響擾乱を検出することは、受信した音声信号の変化率が、ある基準を満たしているかどうかを判定すること、を含んでいる、(1)から(6)のいずれかに記載の方法。
【0080】
(8)生成された制御信号が、車内通信システムにおける複数のスピーカーの音響出力を調節する、(1)から(7)のいずれかに記載の方法。
【0081】
(9)生成された制御信号が、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンから受信した第1音声信号を増幅することによって、車内通信システムにおける複数のスピーカーのうち少なくとも1つの音響出力を調節する、(1)から(8)のいずれかに記載の方法。
【0082】
(10)複数のスピーカーのうち第1のスピーカーの音響出力の調節が、複数のスピーカーのうち第2のスピーカーの音響出力の調節とは無関係に行われる、(1)から(9)のいずれかに記載の方法。
【0083】
(11)触覚的な相互作用は、タップ、フリック、ブラッシング(払い)、または、それらの連続である、(1)から(10)のいずれかに記載の方法。
【0084】
(12)複数のスピーカーと、複数のマイクロフォンと、処理回路と、を備えた、車内通信システムを制御するためのシステムであって、当該処理回路は、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンによって生成される第1音声信号を受信し、受信した第1音声信号における音響擾乱を検出し、検出された音響擾乱が所定の音響シグネチャーと相関関係にあるかどうかを判定し、検出された音響擾乱が所定の音響シグネチャーと相関関係にあるかどうかの判定に基づいて、所定の音響シグネチャーに対応した制御信号を生成する、ように構成されており、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンは、音響取入口を有し、受信した音声信号において検出された音響擾乱は、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンにおける音響取入口の直近での触覚的な相互作用に由来するものであり、生成された制御信号は、車内通信システムにおける複数のスピーカーのうちの1つないし複数を制御するものである、システム。
【0085】
(13)処理回路は更に、少なくとも受信した第1音声信号と複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号とに基づいて、第2音響出力を生成するように構成され、第2音響出力は、車内通信システムにおける複数のスピーカーのうち第2のスピーカーへの出力であり、複数のスピーカーのうち第1のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンとが、車両における車室の第1領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第2のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンとが、車両における車室の第2領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第3のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンとが、車両における車室の第3領域と関連付けられ、生成された制御信号は、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンが作動状態にあることを指示する、(12)記載のシステム。
【0086】
(14)処理回路は更に、少なくとも複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号に基づいて、第2音響出力を生成し、複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンに対応した第2音声信号と複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンに対応した第3音声信号とを除外した第1音響出力を生成する、ように構成されており、第2音響出力は、複数のスピーカーのうち第2のスピーカーへの出力であり、生成された第1音響出力は、複数のスピーカーのうち第1のスピーカーへの出力であり、複数のスピーカーのうち第1のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第1のマイクロフォンとが、車両における車室の第1領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第2のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第2のマイクロフォンとが、車両における車室の第2領域と関連付けられ、複数のスピーカーのうち第3のスピーカーと、複数のマイクロフォンのうち第3のマイクロフォンとが、車両における車室の第3領域と関連付けられており、生成された制御信号は、複数のスピーカーからの第1音声信号の除外を指示する、(12)と(13)のいずれかに記載のシステム。
【0087】
(15)コンピューター読取り可能な命令を記録しているコンピューター読取り可能な非一時的記録媒体であって、当該命令は、コンピューターによって実行されたとき、車内通信システムにおける複数のスピーカーを制御するための方法をコンピューターに遂行させるものであり、当該方法は、複数のマイクロフォンのうち音響取入口を有した第1のマイクロフォンによって生成される第1音声信号を受信することと、受信した第1音声信号における音響擾乱を検出することであって、受信した第1音声信号において検出された音響擾乱は、第1のマイクロフォンにおける音響取入口の直近での触覚的な相互作用に由来するものであることと、検出された音響擾乱が所定の音響シグネチャーと相関関係にあるかどうかを判定することと、検出された音響擾乱が所定の音響シグネチャーと相関関係にあることの判定に基づいて所定の音響シグネチャーに対応した制御信号を生成することであって、生成された制御信号は、車内通信システムにおける複数のスピーカーのうちの1つないし複数を制御するものであることと、を備えている、記録媒体。
【0088】
以上の考察は、かくして本発明の単なる例示的な諸実施形態を開示して説明している。当業者には理解されることとなるように、本発明は、その趣旨や本質的な諸特徴から逸脱することなく、別な特定の諸形態で具体化され得るのである。従って、本発明の開示は、例示的であるが本発明および他の各請求項の範囲を限定しないことを企図している。本開示(本明細書における諸教示の容易に認識可能な如何なる変形をも含む)は、公共の用に供される発明主題が無いように上記の特許請求用語の範囲を(ある程度)定めるものである。