(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】ヒト多能性幹細胞から調製された3Dオルガノイドを分解することにより大量のオリゴデンドロサイトを確保するための分化方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/079 20100101AFI20240712BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20240712BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240712BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
C12N5/079
A61K35/30
A61P25/00
C12Q1/02
(21)【出願番号】P 2022535117
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 KR2020018575
(87)【国際公開番号】W WO2021125844
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0168517
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520493429
【氏名又は名称】コアステムケモン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【氏名又は名称】安藤 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】リー, サン フン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ミ ユン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, へ ジ
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-507568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0232779(US,A1)
【文献】国際公開第2019/204309(WO,A1)
【文献】PNAS,2017年,vol.114, no.11,E2243~E2252
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト多能性幹細胞を培養して、腹側パターン化三次元(3D)オルガノイドを調製するステップと、
前記調製されたオルガノイドを分解し、それらを塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子AA(PDGF-AA)及び上皮成長因子(EGF)を含有する培地で二次元継代培養して、大量のオリゴデンドロサイト前駆細胞を得るステップと、及び
それらを二次元培養してオリゴデンドロサイトへと分化させるステップと、
を含む
、オリゴデンドロサイト
集団の
製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により
製造されたオリゴデンドロサイト
集団を含む、細胞治療剤。
【請求項3】
オリゴデンドロサイトパチーにより引き起こされる神経系炎症性疾患を治療する、請求項2に記載の細胞治療剤。
【請求項4】
オリゴデンドロサイトパチーにより引き起こされる前記神経系炎症性疾患が、多系統萎縮症(MSA)、多発性硬化症、脳性まひ、脊髄損傷、脳卒中、レビー小体型認知症及びα-シヌクレイノパチーからなる群より選択されるいずれか1種である、請求項3に記載の細胞治療剤。
【請求項5】
請求項1に記載の方法により
製造されたオリゴデンドロサイト
集団を用いる、薬物スクリーニング方法。
【請求項6】
前記薬物が、オリゴデンドロサイトパチーにより引き起こされる神経系炎症性疾患を治療する、請求項5に記載の薬物スクリーニング方法。
【請求項7】
オリゴデンドロサイトパチーにより引き起こされる前記神経系炎症性疾患が、多系統萎縮症(MSA)、多発性硬化症、脳性まひ、脊髄損傷、脳卒中、レビー小体型認知症及びα-シヌクレイノパチーからなる群より選択される1種である、請求項6に記載の薬物スクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト多能性幹細胞から調製された3Dオルガノイドを分離するステップ、及びそれを分解して大量のオリゴデンドロサイト前駆細胞を得るステップによる、大量のオリゴデンドロサイトの分化方法に関する。
【0002】
[背景技術]
オリゴデンドロサイトパチーを有する神経系炎症性疾患としては、多発性硬化症、多系統萎縮症(MSA)などが挙げられる。代表的には、多系統萎縮症は、明らかな治療剤を有さず、且つ迅速な臨床経過も示す疾患である。加えて、多系統萎縮症は、病変部位がタイプによって異なり且つ明確であるので、幹細胞移植治療に対して好適な疾患である。そのようなオリゴデンドロサイトパチー疾患の細胞療法のために、幹細胞からヒトオリゴデンドロサイトへと分化させるための技術が必要であり、ヒト胚性幹細胞(hESC)又はヒト多能性幹細胞(hiPSC)からオリゴデンドロサイトへと分化させるためのプロトコールが開発されてきた。しかしながら、現在までに開発されている分化方法は、低い収率及び効率的な分化方法の不在に起因して、臨床的応用及び使用での困難を有する。
【0003】
加えて、オリゴデンドロサイトパチー疾患を研究するために、in vivo研究がラット、マウスなどを用いて行なわれているが、そのような動物モデルは実際のヒト脳環境とは異なり、且つ遺伝子発現に差異があるので、ヒト疾患を標的とする研究に対して好適であるとは考えられない。
【0004】
ヒト多能性幹細胞からオリゴデンドロサイトへの分化のための方法が開発されてきたが、以下の問題点が提示されている。
【0005】
1)ヒト多能性幹細胞からオリゴデンドロサイトへの分化により得られるオリゴデンドロサイトの収率が低い。すなわち、現在までに開発されている方法は、途中で増殖を可能にするステップを含まずに、直接的にオリゴデンドロサイトへの分化を誘導するので、1回の分化を通して取得できるオリゴデンドロサイトの量に対する限界がある。
【0006】
2)ヒト多能性幹細胞からオリゴデンドロサイトへと分化するのには長時間かかる。現在までに開発されている分化方法では、幹細胞からオリゴデンドロサイトへの最終分化に対して、少なくとも95日間から200日間超がかかる。加えて、増殖を可能にするステップを含まずにオリゴデンドロサイトへと直接的に分化するプロトコールであるので、オリゴデンドロサイト前駆細胞をストックとして凍結させ、且つ必要な場合にすぐに用いることができるステップがない。
【0007】
3)ヒト細胞を用いる多系統萎縮症疾患モデルが実際にはない。現在までに、ヒト多能性幹細胞から分化させたオリゴデンドロサイトを用いるex vivo多系統萎縮症(MSA)病理モデルはない。したがって、動物細胞環境ではなくヒト細胞環境で多系統萎縮症の病理を研究することは困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Differentiation of human oligodendrocytes from pluripotent stem cells、Nature Protocols.2009;4(11):1614~22
【文献】Human iPSC-Derived Oligodendrocyte Progenitor Cells Can Myelinate and Rescue a Mouse Model of Congenital Hypomyelination、Cell Stem Cell、第12巻、第2号、139~264ページ(2013年2月7日)
【文献】Efficient Generation of Myelinating Oligodendrocytes from Primary Progressive Multiple Sclerosis Patients by Induced Pluripotent Stem Cells、Stem Cell Reports、第3巻、第2号、250~259ページ、2014年8月12日
【文献】Differentiation and maturation of oligodendrocytes in human three-dimensional neural cultures、Nature neuroscience、2019年3月;22(3):484~491
【0009】
[発明の詳細な説明]
[技術的課題]
したがって、上記の課題を解決するための研究努力の結果、本発明者らは、三次元培養から抽出された細胞が既存の二次元培養細胞よりも機能的に優れているであろうという仮定の下に、多数のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を含有し得る様式で特異的パターン化が生じる腹側(ventral)パターン化オルガノイドを調製し、且つ調製されたオルガノイドを分解し、培養物を増殖させ、且つ培養物からのオリゴデンドロサイトへの分化を誘導する、ヒト多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト(hPSC-オリゴデンドロサイト)の分化のための新規方法を開発した。上記に基づき、本発明者らは、本発明を完成させた。
【0010】
[課題の解決手段]
したがって、本発明の目的は、ヒト多能性幹細胞から調製された3Dオルガノイドをパターン化し、且つそれを分解することにより、オリゴデンドロサイト前駆細胞を培養し、且つその分化を誘導して、それにより大量の最終分化したオリゴデンドロサイトを得る、分化方法を提供することである。
【0011】
加えて、本発明の別の目的は、該方法により得られた分化したオリゴデンドロサイトを有効成分として含む細胞治療剤を提供することである。
【0012】
加えて、本発明の別の目的は、該方法により得られた分化したオリゴデンドロサイトを用いる薬物スクリーニング方法を提供することである。
【0013】
[発明の効果]
本発明では、最終分化したオリゴデンドロサイトは、上記で提示されたヒト多能性幹細胞から調製される3Dオルガノイドを分解し、且つ該オルガノイドからオリゴデンドロサイト前駆細胞を分離し、且つ該細胞を培養して増殖させることにより、大量に分化させることができ、したがって、大量の細胞を一度に得ることができる。例えば、本発明の分化方法は、細胞株に従って、又はバッチ間変動を伴わずに、容易に分化を誘導することができるので、容易に再現することができる。加えて、本発明の分化方法は、現在までに開発されている方法よりも迅速にオリゴデンドロサイトを生成することができ、且つ途中での増殖及び培養を可能にするステップでストックとしてオリゴデンドロサイト前駆細胞を凍結及び保存することができる。加えて、必要な場合、オリゴデンドロサイト前駆細胞を直ちに得ることができ、且つ約2~3週間でのオリゴデンドロサイトへの分化後に直ちに用いることができ、したがって、hPSC-オリゴデンドロサイトへの分化の合計時間は、6~8週間まで減少させることができる。他の既存の報告では、合計分化時間は約10~20週間であり、したがって、比較的迅速な分化が可能である(非特許文献1~4)。特に、ヒト多能性幹細胞から分化したオリゴデンドロサイトを用いるex vivo多系統萎縮症(MSA)病理モデルを初めて構築できるので、実際のヒト細胞環境で多系統萎縮症の病理を研究することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に従って、3Dオルガノイドを用いてオリゴデンドロサイトを分化させるためのプロトコールを模式的に説明する図である。
【
図2】光学顕微鏡下で2バッチの腹側パターン化オルガノイドの調製を確認する写真である。
【
図3】パターン化オルガノイドのqPCRを通じたオリゴデンドロサイト前駆細胞のmRNAマーカーとしてのNKX2.2、Olig2、NG2、O4、PDGFRa、SOX10などの発現を示すグラフである。
【
図4】免疫細胞化学法によりオルガノイドの凍結切片中のオリゴデンドロサイト前駆細胞のマーカーOLIG2の発現を確認することにより得られた結果を説明する図である。
【
図5】物理的分解プロセス(分解ステップ)を通じて2D培養環境へとオルガノイドを転換した後に増殖した細胞数を示すグラフである。
【
図6】凍結保存前(左)と比較して解凍後(右)にオリゴデンドロサイト前駆細胞の分化が誘導された場合に、それらの分化能力が維持され、且つそれらがマーカーMBPを発現するオリゴデンドロサイトへと分化したことを確認することにより得られた結果を説明する図である。
【
図7】5回の継代までオリゴデンドロサイトへと分化する能力を維持する、オリゴデンドロサイト前駆細胞が増殖できるという、マーカーOLIG2を確認することにより得られた結果を説明する図である。
【
図8】オリゴデンドロサイト前駆細胞維持マーカーOLIG2、A2B5、及びPDGFRaを確認することにより得られた結果を説明する図である。
【
図9】オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化後に、それらが正常にオリゴデンドロサイトへと分化し、それによりニューロンの髄鞘化の機能を果たすという、ニューロン束マーカーNF及び成熟オリゴデンドロサイトマーカーMBPを確認することにより得られた結果を説明する図である。
【
図10】成熟オリゴデンドロサイトマーカーMBPを確認することにより得られた結果を説明する図である。
【
図11】シヌクレイノパチーを引き起こすことができるα-シンクレイン(synclein)を過剰発現するレンチウイルス(pEF1α-α-syn-GFP)がオリゴデンドロサイト前駆細胞に首尾良く導入されるという、GFPマーカーを確認することにより得られた結果を説明する図である。
【
図12】α-シンクレインを過剰発現するレンチウイルス(pEF1α-α-syn-GFP)を用いるオリゴデンドロサイト前駆細胞の形質導入後に、細胞中で発現されるα-シンクレインが、α-シンクレインの単量体形態と比較してPK(プロテイナーゼK)により切断されない(100μgのMと比較したO8、O11、及びO12)、病理的タンパク質であることを確認することにより得られた結果を説明する図である。
【
図13】各ニューロン及びアストロサイトと比較したオリゴデンドロサイトでの各細胞タイプに関する日毎のα-シンクレインPFF(予備形成原線維)の取り込みのパターンを説明する図である。
【
図14】ウエスタンブロットにより、オリゴデンドロサイトのPFF取り込み及びオリゴデンドロサイト中でのa-syn凝集の程度を確認することにより得られた結果を説明する図である。
【0015】
[発明を実施するための最良の形態]
以下で、本発明がより詳細に説明される。
【0016】
本発明は、ヒト多能性幹細胞から調製される3Dオルガノイドをパターン化し、且つそれを分解することにより、オリゴデンドロサイト前駆細胞を培養し、且つその分化を誘導することにより、大量の最終分化したオリゴデンドロサイトを得る、分化方法に関する。
【0017】
本明細書中で用いる場合、用語「多能性幹細胞」(PSC)とは、身体を構成するいずれかの細胞タイプへの分化を誘導することが可能な幹細胞を意味し、多能性幹細胞は、胚性幹細胞(ESC)及び人工多能性幹細胞(Ipsc、脱分化幹細胞)を含む。
【0018】
本明細書中で用いる場合、用語「オルガノイド」とは、幹細胞を用いて最小限の機能を有するために作製された「ミニ器官様」を意味し、三次元構造で作製されていることを特徴とし、且つ実験室中でさえも実際の身体器官に類似する環境をつくり出すことができる。すなわち、「オルガノイド」とは、3D立体構造を有する細胞を意味し、且つ動物等から回収又は獲得されていない、人工培養プロセスを通じて調製される、神経及び腸などの器官に類似するモデルを意味する。オルガノイドを構成する細胞の起源は限定されない。オルガノイドは、細胞成長の過程で周囲環境と相互作用することが許容される環境を有することができる。2D培養とは異なり、3D細胞培養は、細胞がex vivoですべての方向に成長することを可能にする。したがって、本発明では、3Dオルガノイドは、in vivoで実際に相互作用する器官をほとんど完全に模倣することにより、疾患のための治療剤などの開発を観察するための優れたモデルであり得る。
【0019】
オルガノイドは、一般的に、ヒト多能性幹細胞を培養することにより調製できる。詳細には、パーキンソン病由来の人工多能性幹細胞から神経外胚葉スフェアへと分化させることができる。
【0020】
本明細書中で用いる場合、用語「分化」とは、細胞の構造又は機能が、細胞の分裂及び増殖並びに個体全体の成長の間に特殊化する現象を意味する。言い換えれば、この用語は、それぞれの所与の役割を果たすための、生物の細胞、組織などの好適な形態及び機能への変化のプロセスを意味する。例えば、分化は、多能性幹細胞が、外胚葉(大脳皮質、中脳、視床下部など)、中胚葉(卵黄嚢など)及び内胚葉細胞へと形質転換されるプロセス、並びに造血幹細胞が赤血球、白血球、血小板などに形質転換されるプロセス、つまり、前駆細胞が特異的な分化形質を発現するプロセスを含み得る。
【0021】
対応する細胞へと分化させるためにヒト多能性幹細胞から直接的に分化を誘導する既存の方法は、細胞株又は実験室(実験環境)に依存して再現性の問題を有し、且つ維持因子の安定的な発現を達成しない。例えば、オリゴデンドロサイトの場合、オリゴデンドロサイトの発達時間がin vivoでさえも他の神経系細胞の中で最も遅く、且つ適切な集団分化の方法が現在までに開発されていないので、1回の分化を通じて得られる最終的な細胞の量に対する限界がある。オリゴデンドロサイト前駆細胞を十分に含有する(標的細胞が豊富)ことが可能である腹側神経管オルガノイドをパターン化及び調製すること、すなわち、最大量の各標的細胞を含有するオルガノイドを得ること、及びオルガノイド組織を分解して対応する幹細胞又は前駆細胞を培養することによる、本発明の一実施形態での通り、二次元的分化誘導細胞集団と比較して、それらの細胞は、実際の脳から単離された細胞により類似する可能性があり、それらの特性は十分に維持されることができ、且つ生存能力が得られる細胞集団への分化を得ることが可能である。
【0022】
本明細書中で用いる場合、用語「パターン化」とは、それにより、オルガノイドを調製する際に、脳の詳細な組織の中から最終的に抽出されるべき細胞の起源組織の特性を有する運命を伴う細胞集団が、複数の細胞集団として含まれる(標的細胞が豊富)、オルガノイドの調製を意味する。加えて、パターン化マーカーとしては、発生の段階に応じて、NKX2.2、SOX10、OLIG2、A2B5、PDGFRa、O4、MBPなどが挙げられる。
【0023】
本明細書中で用いる場合、用語「分解すること」とは、継代培養前に、調製された3Dオルガノイドをいくつかの断片へと物理的に(例えば、針などを用いて)切断すること、及びそれらを分散させることを意味する。
【0024】
したがって、本発明の一実施形態に従えば、本発明は、ヒト多能性幹細胞から調製された3Dオルガノイドを分解して大量のオリゴデンドロサイト前駆細胞を取得し、且つそれらを最終的に分化させる方法を含み、該方法は、以下のステップ:
1)ヒト多能性幹細胞を増殖させ且つ培養して、3Dオルガノイドを調製するステップ;
2)調製された3Dオルガノイドをパターン化及び分解するステップ;及び
3)分解されたオルガノイドから抽出された細胞の中のオリゴデンドロサイト前駆細胞を培養し且つ増殖させて、大量での分化を誘導し、大量の最終分化したオリゴデンドロサイトを得るステップ
を含む。
【0025】
本明細書中で用いる場合、用語「大量」とは、最初に用いる多能性幹細胞の1枚の培養ディッシュの開始から誘導する場合に(25~30個の)3Dオルガノイドを調製し、及びオルガノイドを分解して生存細胞を取得し、及び5回の継代までそれらを培養することにより、約100~130倍まで増加した量を意味する。特に、それは、単純な定量的増殖のみではなく、特性の維持も含む。
【0026】
本明細書中で用いる場合、用語「オリゴデンドロサイト前駆細胞」は、胎児神経管の胚性脳室帯(ventricular germinal zone)中で形成され、別の領域へと移動し、到達した神経領域でオリゴデンドロサイトへと分化し、続いて、周囲の軸索に対してミエリン鞘を形成する。
【0027】
本明細書中で用いる場合、用語「オリゴデンドロサイト」とは、オリゴデンドロサイト前駆細胞から生成されるオリゴデンドロサイトを意味する。オリゴデンドロサイトから伸長する枝は、その周囲のニューロンの軸索を取り囲むミエリン鞘を形成し、且つ1個のオリゴデンドロサイトが、ときには、50本の異なる軸索を取り囲む。該用語は、神経細胞と密接に関連し、他の神経膠と同様に、ニューロンの支持において役割を果たす。
【0028】
本発明はまた、上記の方法により得られるオリゴデンドロサイトを含む細胞治療剤を含む。
【0029】
「細胞治療剤」は、対象から、単離、培養、及び特殊な修飾を介して調製される細胞及び組織を用いて、治療、診断、及び予防のために用いられる薬物である(米国FDA規則)。該用語は、ex vivoで生存中の自家、同種、若しくは異種細胞を増殖若しくは選別すること、又は他の手段で細胞の生物学的特性を変更して、細胞若しくは組織の機能を回復させることなどの一連の作用を介して、治療、診断、及び予防の目的のために用いられる薬物を意味する。細胞治療剤は、主に、細胞分化の程度に応じて、体細胞治療剤及び幹細胞治療剤へと分類される。
【0030】
本明細書中で用いる場合、用語「対象」は、治療、観察又は実験される脊椎動物、好ましくは哺乳動物、例えば、畜牛、ブタ、ウマ、ヤギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ヒトなどであり得る。
【0031】
本明細書中で用いる場合、用語「治療」とは、疾患に関連する臨床的状況を、阻害、軽減、又は有利に変更するいずれかの作用を意味する。加えて、治療は、治療を受けない場合に予測される生存率と比較して、増加した生存率を意味することができる。治療は、治療的手段に加えて、予防的手段を同時に含む。
【0032】
本発明の細胞治療剤は、オリゴデンドロサイトパチーにより引き起こされる神経系炎症性疾患に対する治療効果を示す。
【0033】
オリゴデンドロサイトパチーにより引き起こされる神経系炎症性疾患としては、例えば、多系統萎縮症(MSA)、多発性硬化症、脳性まひ、脊髄損傷、脳卒中、レビー小体型認知症及びα-シヌクレイノパチーからなる群より選択されるいずれか1種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の方法により得られるオリゴデンドロサイトは、細胞治療剤として適用することができ、且つ薬学的に許容できる担体をさらに含めることにより製剤化することができる。本明細書中で用いる場合、用語「薬学的に許容できる担体」とは、生物を著しく刺激せず、且つ投与される成分の生物学的活性及び特性を阻害しない、担体又は希釈剤を意味する。本発明では、細胞治療剤に含めることができる薬学的に許容できる担体は、緩衝剤、保存料、鎮痛剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤、基材、賦形剤、滑沢剤等など、当技術分野で公知である限り、限定なしに用いることができる。本発明の細胞治療剤は、通常用いられる技術に従って、様々な製剤の形態で調製することができる。本発明の細胞治療剤は、罹患部位への移動を誘導できる限り、いかなる経路を通じても投与することができる。一部の場合では、病変部へと向かわせるための手段を備えるビヒクルへと幹細胞をロードする方法もまた、考慮することができる。したがって、本発明の細胞治療剤は、局所(頬内、舌下、皮膚及び眼内投与を含む)、非経口(皮下、皮内、筋内、滴下、静脈内、動脈内、関節内及び脳脊髄液内を含む)又は経皮投与をはじめとする数種類の経路を通じて投与することができ、且つ好ましくは、疾患の部位へと直接的に投与される。一実施形態では、細胞は、好適な希釈剤中に薬物を懸濁することにより個体へと投与することができ、且つ希釈剤は、細胞を保護及び維持するために、且つ標的組織へと注入される場合に使用を促進するために用いられる。希釈剤としては、生理食塩液、リン酸緩衝溶液、HBSSなどの緩衝溶液、脳脊髄液などを挙げることができる。加えて、医薬組成物は、標的細胞へと活性物質が移動することを可能にするいずれかのデバイスにより投与することができる。投与及び調製の好ましい様式は、注入である。注入液は、水溶液(生理食塩液、リンゲル液、ハンクス液又は滅菌水溶液など)、植物油(オリーブ油など)、高級脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、及び非水性溶媒(エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はグリセリンなど)などを用いて調製することができる。粘膜浸透に関して、通過するための障壁に対して好適な当技術分野で公知の非浸透性薬剤を用いることができ、且つ劣化を防ぐための安定化剤としてのアスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、BHA、トロフェロール、EDTA等などの医薬担体、及び乳化剤、pH調整のための緩衝剤、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、及びベンジルアルコールなどの微生物の成長を阻害するための保存料をさらに含むことができる。
【0035】
本発明はまた、該方法により得られるオリゴデンドロサイトを用いる薬物スクリーニング方法も提供する。
【0036】
本発明により得られるオリゴデンドロサイトの重要な特徴としては、大量の細胞の生成を得る可能性、凍結保存の間でさえもそれらの特性を維持すること、長期間にわたって同じ細胞集団を維持する可能性、及び生体に由来する細胞のものとより類似する分化が挙げられる。この特性は、同じ状態の大量の細胞を必要とする複数薬物の同時スクリーニングに対して特に好適であり、且つその反復される解析のために長期間にわたって同じ細胞を得ることに対して重要である。主要マーカーが維持される同じ特徴を有する細胞集団を、スクリーニングの開始から終了まで継続的に用いることができるので、このことは細胞をスクリーニングするために非常に好適である。
【0037】
薬物は、オリゴデンドロサイトパチーにより引き起こされる神経系炎症性疾患を治療するための薬物であり、且つオリゴデンドロサイトパチー疾患に対する治療効果を示す。
【0038】
オリゴデンドロサイトパチーにより引き起こされる神経系炎症性疾患としては、例えば、多系統萎縮症(MSA)、多発性硬化症、脳性まひ、脊髄損傷、脳卒中、レビー小体型認知症及びα-シヌクレイノパチーを含む種々の変性性神経系疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明中で用いられるすべての技術用語は、別途定義されない限り、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。加えて、好ましい方法及びサンプルが本明細書中に記載されるが、それに類似又は等価のものもまた、本発明の範囲に含められる。参考文献として本明細書中に記載されるすべての刊行物の内容は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0040】
[発明を実施するための形態]
本明細書中、以下では、本出願が実施例を通じて詳細に説明される。以下の実施例は、本出願を例示するためのみのものであり、本出願の範囲は以下の実施例に限定されない。
【0041】
[実施例]
実施例1:中脳オルガノイドを用いるmDA(中脳ドーパミン)ニューロンへのヒト人工多能性幹細胞からの分化
[実験方法]
ヒト胚性幹細胞又はヒト人工多能性幹細胞の培養
hESC及びhiPSCは、漢陽大学校(Hanyang University;ソウル、大韓民国)の施設内審査委員会(institutional review board、IRB)により承認されたhESC研究ガイドラインに基づいて培養した。本実験で用いるhESC及びhiPSCを、以下の表1に示す。
【0042】
【0043】
未分化hESC/iPSCの増殖及び維持のために、細胞を、マトリゲル(Matrigel)(商標)上又はビトロネクチン(ヒト;Gibco Fisher Scientific、Waltham、MA)(Gibco A31804;0.5μg/cm2)コーティング6cmディッシュ(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)上で、mTESR-1培地(Stemcell Technologies Inc.、Vancouver、BC、Canada)を用いて、37℃に設定されたCO2インキュベーター中で、フィーダー層を用いずに培養し、且つ培地交換を毎日行なった。未分化幹細胞は、毎日培地を交換することによりその分化能力を維持し、4~5日間毎にアキュターゼ(Accutase;Stemcell Technologies Inc.)を用いて継代培養された。
【0044】
3Dオルガノイド調製方法を用いるオリゴデンドロサイト前駆細胞の調製
簡潔には、腹側3Dオルガノイドが最初に調製され、小片へと切断され、且つオリゴデンドロサイト前駆細胞の状態で、培養ディッシュ中で大量に増殖されるシステムを用いた。
【0045】
正常に培養されたヒト胚性幹細胞(hESC)又はヒト多能性幹細胞(hiPSC)を、アキュターゼ(Accutase)(商標)を用いて剥がし、且つ計数し、続いて、細胞を、以下の表2の0日目の培養溶液中へと懸濁して、それにより150μL中に10,000個の細胞があるようにした。その後、細胞が放出されている0日目培養溶液150μL(10,000細胞/ウェル)を、各低結合性96ウェルプレートへと播種した。その後、培養溶液の組成が置き換えられる日に、培養溶液を日付に従って置き換え、培養溶液の組成が同じである場合、培養溶液を1日おきに置き換えた。培養溶液は、表2及び表3の組成に従って、150μLずつ置き換えた。7日目に、オルガノイドを、8個/ウェルずつ、低結合性6ウェルプレートへと移した。移動時に、1000μLピペットへとチップを差し込み、続いて、チップの端を滅菌したハサミで切断し、そしてオルガノイドをその部分を用いてつかみ、且つ低結合性6ウェルプレートへと移した。その後、オービタルシェーカー(orbitary shaker)(80~100rpm)中で低結合性6ウェルプレートを回転させながら、培養溶液の組成が変更される日に、又は1日おきに、培養溶液を、ウェル当たり3mLずつ置き換えた。36日目に、30G針を用いてオルガノイドを物理的に切断(分解)し、続いて、ポリ-l-オルニチン及びフィブロネクチンを用いてコーティングされた60mmディッシュの縁を吸引し、且つ細胞を、中央部で約4cmの直径を有する円形に、2Dプレーティングした。最初のプレーティング後、4×106個の細胞を、PLO/FN又はポリ-l-オルニチン及びフィブロネクチンを用いてコーティングされた60mm培養ディッシュ中で平面的に培養し、細胞が約80~90%満杯になったときに、継代培養のために週1回アキュターゼ(商標)を用いた。培養培地として表2のD36~培養溶液を用いて培養を行ない、マイトジェン(bFGF 20ng/mL、PDGF-AA 10ng/mL、EGF 20ng/mL)を添加した培地を増殖培地として用いた。このプロセスは、大量のオリゴデンドロサイト前駆細胞を、増殖及び培養ステップにより取得できるステップであり、且つ、細胞をストックとして凍結保存できるステップである。その後、分化プロセスを通じた誘導が望まれる時点で、表2の分化培養溶液を用いて置き換えた。
【0046】
【0047】
【0048】
免疫細胞化学分析
免疫細胞化学分析は、標的タンパク質へと一次抗体を結合させ、続いて、蛍光色素が結合されている二次抗体をその抗体に結合させることにより、標的タンパク質を可視化する分析方法である。可視化できるタンパク質の数は、二次抗体の蛍光の種類によって決定される。本研究では、2又は3種類の蛍光色素を用いた。
【0049】
固定剤溶液(4%パラホルムアルデヒド/PBS)を用いて20分間、サンプルを固定し、続いて、毎回5分間にわたってPBSを用いて3回すすいだ。ブロッキングバッファー(1%BSA/PBS、0.1%TritonX100)を用いて40分間、ブロッキングを行ない、続いて、一次抗体を同じバッファー中に溶解し、24時間にわたってサンプルへと結合させた。0.1%BSA/PBSを用いて3回、サンプルをすすぎ、続いて、二次抗体を同じバッファー中に溶解し、1時間結合させた。その後、0.1%BSA/PBSを用いて3回、サンプルをすすぎ、続いて、蒸留水を用いて1回すすぎ、マウント液(Vectashield、Vector Lab)を用いてカバースライド上にマウントした。
【0050】
オルガノイド切片の免疫細胞化学分析を、以下の通りに行なった。オルガノイドを、30分間超にわたって固定剤溶液中で固定し、続いて、毎回10分間、PBSを用いて3回すすぎ、続いて、30%スクロース溶液中で24時間培養し、そして脱水した。脱水サンプルを、OCT(光学的切断温度)コンパウンド中で凍結させ、続いて、ミクロトームを用いて10~12μmの厚さに切断し、且つ、上記のブロッキングプロセスを行なった。
【0051】
オルガノイドの凍結切片
その前面で若干切断された1000μLチップをピペットに差し込み、培養ディッシュに入ったオルガノイドを、その部分を用いてつかみ、1mLの4%PFAを含む15mLチューブへと移した。オルガノイドを室温で15分間固定し、続いて4%PFAを廃棄し、毎回15分間、3mLのPBSを用いて繰り返して3回洗浄した。その後、すべての洗浄溶液を廃棄し、3mLのスクロース溶液を加え、約3日間にわたって、冷蔵しながらオルガノイドを沈めた。3日間後、オルガノイドが沈んでいることを確認し、上部に穴を有する円筒形の枠を、ホイルを用いて作製した。その後、OTCコンパウンドをホイル製の枠へと注ぎ、スクロース溶液中に沈められたオルガノイドを、その前面で若干切断された1000μLチップ及びピペットを用いて、ホイル製の枠へと移した。3時間超にわたって、ディープフリーザー中で保持した後、低温を維持しながら、ホイルを剥がした。その後、OCTコンパウンドをチャックの上に振りかけて表面を十分に覆い、凍結したオルガノイドを、ホイルを剥がして円筒形の形状でチャックへと貼り付けた。2個のオルガノイドを貼り付けたら、OCTコンパウンドをもう一度全体に振りかけ、オルガノイドを再度3時間超にわたってディープフリーザー中で凍結させ、続いて、クライオスタットを実行した。クライオスタットの厚さは12~18mmであった。
【0052】
qPCR
分析対象であるサンプルのRNAを、Trizolを用いて抽出し、RNA抽出が完了した後、cDNAを合成し、そしてRT-PCRを行なった。これは、サンプル間で、存在するRNAの相対量を比較できる実験方法であり、本研究では、数種類のサンプル間での比較を通して、特異的サンプルでのマーカータンパク質の発現を確認するために用いた。
【0053】
RNA抽出方法は、以下の通りである。
【0054】
1mLのTrizol中で5分間、細胞を溶解させ、200μLのクロロホルムを添加し、振盪しながら混合し、続いて、2~3分間静置した。4℃で15分間、12000×gで遠心分離を行なった。遠心分離後、上清の透明部分を回収し(400~500μL)、新たなチューブに移し、そして500μLのイソプロパノールをそこに加え、続いて混合した。10分間のインキュベーション後、4℃で10分間、12000×gで遠心分離を行なった。
【0055】
チューブの底に残った少量のRNA塊以外は上清を除去し、続いて、1mLの75%エタノール溶液を加え、塊と混合した。4℃で5分間、7500×gで遠心分離を行なった。上清を除去し、続いてRNA塊のみを残し、続いて蓋を開けて、風乾させた。乾燥したRNAをRNアーゼ不含水に溶解させ、続いて、その濃度を測定した。
【0056】
cDNA合成方法は以下の通りである。
【0057】
2μgのRNAをcDNA合成のために用いた。ファーストストランドcDNA合成を、ランダムプライマー(Invitrogen)を用いて行ない、75℃で15分間、PCR機により反応を行なった。その後、氷上で2分間インキュベーションし、続いて、ファーストストランドバッファー(Invitrogen)、DTT(Invitrogen)、及びRNasin(Promega)を添加し、25℃で15分間、42℃で50分間及び70℃で15分間、反応を行なった。
【0058】
調製されたcDNAは、合計20μLであり、これを10倍に希釈し、RT-PCRのために用いた。SYBRグリーンマスターミックス(Bio-rad)を反応のために用い、2μLのcDNAを、各回で反応させた。
【0059】
3Dオルガノイド由来オリゴデンドロサイト前駆細胞の塊増殖
オリゴデンドロサイト前駆細胞の塊増殖のために、36日目に30G針を用いて物理的に切断(分解)されたオルガノイドを、中央部で約4cmの直径を有する円形に、ポリ-l-オルニチン及びフィブロネクチンを用いてコーティングされた60mmディッシュ上に2Dプレーティングした。最初のプレーティング後、4×106個の細胞を、PLO/FN又はポリ-l-オルニチン及びフィブロネクチンを用いてコーティングされた60mm培養ディッシュ中で平面的に培養し、細胞が満杯になったときに、継代培養のために週1回アキュターゼ(商標)を用いた。培養培地として表2のD36~培養溶液を用いて培養を行ない、マイトジェン(bFGF 20ng/mL、PDGF-AA 10ng/mL、EGF 20ng/mL)を添加した培地を増殖培地として用いた。このプロセスは、大量のオリゴデンドロサイト前駆細胞を、増殖及び培養ステップにより得られるステップである。
【0060】
3Dオルガノイド由来オリゴデンドロサイト前駆細胞の凍結保存
オリゴデンドロサイト前駆細胞の塊増殖を通じて60mm培養ディッシュ中で細胞が得られたら、これらの細胞を剥がし、且つ凍結保存することができた。凍結保存方法のために、細胞を継代培養し、少なくとも1週間にわたって、表2中の、マイトジェンを添加したD36~培養溶液中で培養した。その後、アキュターゼ(商標)を用いて細胞を剥がし、且つ計数を通じて細胞数を決定した。バイアル当たり6×106個の細胞を、10%DMSO及び90%D36~培養溶液から構成される組成を有する1mLの凍結保存溶液中に再懸濁し、続いて、クライオチューブに入れ、凍結保存した。
【0061】
レンチウイルス(pEF1α-α-syn-GFP)の形質導入
a-syn-GFPを発現するレンチウイルスを、100×でD36~培養溶液に加え、細胞を一晩処理した。次の日、培養溶液を、元のD36~培養溶液を用いて置き換えた。
【0062】
オリゴデンドロサイト前駆細胞のシヌクレイン単量体とa-シンクレイン凝集体との間の差異の比較
オリゴデンドロサイト前駆細胞を、レンチウイルス(pEF1α-α-syn-GFP)を用いて形質導入し、続いて、5日間、D36~培養溶液中で培養した。その後、分化0~14日目の培養溶液を用いて、7日間、分化を実行した。7日目に、PBSを用いて細胞を洗浄し、続いて、150μLのRipaバッファーを用いて細胞を処理した。細胞を処理した後、約5分間、氷上でインキュベートした。その後、約5秒間、超音波破砕し、タンパク質を定量し、続いて、タンパク質の量を10μgに調整し、単量体の量を300ngに調整した。それぞれ、0.12U、0.6U、及び3UでプロテイナーゼKを用いて処理した。その後、37℃で1時間振盪した。インキュベーション後、5×サンプルバッファーを添加し、95℃で10分間、ヒートブロック中でインキュベーションを行ない、続いて、15mm、15%SDSゲル上にサンプルをロードし、ウエスタンブロットを行なった。
【0063】
細胞内α-syn取り込みの分析
7日間の各細胞タイプの分化後、1μg/mLの濃度で一晩、PFFを用いて培養溶液を処理した。alexa fluor488マイクロスケールタンパク質標識キットを用いて、蛍光色素をPFFに結合させた。D0から1日間又は2日間の間隔で、蛍光顕微鏡を用いて強度を測定し、PFFを取り込んだ細胞数を計数した。
【0064】
病理的α-syn凝集体の検出
各細胞を、12ウェルプレート中で8日間分化させ、続いて2μg/mLの濃度で一晩、PFFを用いて処理した。D0(細胞がPFFで処理される前)、PFF処理後のD1、D3、及びD11に、25μLの培養溶液を回収し、ディープフリーザー中で保持した。実験時に、これを解凍し、5×サンプルバッファーを用いて処理し、且つSDSゲル上にロードした。同じ日に、PBS溶液中の50μLの1%tritonX-100、1%プロテアーゼ阻害剤カクテルを用いて、細胞サンプルを回収した。細胞サンプルを回収し、続いて氷上で15分間インキュベートし、続いてそれらをディープフリーザー中で保存し、且つ実験中に再度解凍し、そして4℃にて16,000×gで10分間遠心分離することができた。上清を可溶性形態で別個の1.5mLチューブへと移し、BCAアッセイにより定量化した。残余のペレットは不溶性形態であり、25μLの1×サンプルバッファーを添加することにより超音波破砕した。可溶性形態の定量化したタンパク質濃度に基づいて10μgの可溶性形態タンパク質を、5×サンプルバッファーと混合し、SDSゲル上にロードし、可溶性形態タンパク質の量に基づいて10μgの不溶性形態タンパク質を、ゲル上にロードし、且つウエスタンブロットを行なった。
【0065】
[実験結果]
ヒト多能性幹細胞からの腹側パターン化オルガノイドの調製の確認
多数のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を含有できる様式で特異的に生成された腹側パターン化オルガノイド(腹側神経管)の調製の確認を、光学顕微鏡を通じてサイズを測定することにより行なった。オルガノイドの正常な培養物は、サイズにより確認することができる。オルガノイドを、1.6mm~1.8mmの平均サイズで培養し、且つこの範囲外のオルガノイドは正常に培養されていないオルガノイドであると決定した。
【0066】
図2に示される通り、1.6mm~1.8mmのサイズを有する正常に成長した腹側パターン化オルガノイドが調製されたことを確認することができる。
【0067】
パターン化オルガノイドのqPCRによるオリゴデンドロサイト前駆細胞でのmRNA発現の確認
オルガノイド中のオリゴデンドロサイト前駆細胞のmRNA発現レベルを、qPCRにより確認した。オルガノイドが調製され、それにより、細胞の起源組織の特性を有する運命を伴う細胞集団が、複数の細胞集団として含まれる(標的細胞が豊富)ことが確認され、且つ、NKX2.2、SOX10、OLIG2、A2B5、PDGFRa、O4、MBPなどの発現が、パターン化マーカー生成段階に従って増加していることが確認された。
【0068】
図3に示される通り、オリゴデンドロサイト前駆細胞のマーカーであるNKX2.2が150倍高度に発現され、且つOLIG2はヒト胚性幹細胞であるH9よりも20倍高度に発現された。
【0069】
多数のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を含有できる様式で特異的に生成された腹側パターン化オルガノイドの染色の写真
21日間にわたってパターン培養されたオルガノイドを、凍結切片にし、続いて、代表的なオリゴデンドロサイト前駆細胞マーカー(オリゴデンドロサイト前駆体マーカー)を、免疫染色を通じて確認した。簡潔には、3日間にわたってディープフリーザー中で極低温冷凍されたチャックに、表面を覆うために十分にOCTコンパウンドを振りかけ、凍結オルガノイドをチャックに貼り付けた。2個のオルガノイドを貼り付けたら、OCTコンパウンドをもう一度全体に振りかけ、オルガノイドを再度3時間超にわたってディープフリーザー中で凍結させ、続いて、クライオスタットを実行した。クライオスタットの厚さは12~18mmであった。マーカーを、蛍光免疫アッセイにより分析した。
【0070】
図4の左側に示される通り、オリゴデンドロサイト前駆細胞マーカーであるOLIG2が、陰性対照群である皮質オルガノイド(右)中よりも本発明のオルガノイド中ではるかに多く発現したことが確認された。
【0071】
大量のオリゴデンドロサイトの取得
物理的分解プロセスを介して2D培養環境へとオルガノイドを転換した後、増殖した細胞の数並びにオリゴデンドロサイト前駆細胞及びオリゴデンドロサイトのマーカーを確認した。
【0072】
36日目に、オルガノイドを、30G針を用いて物理的に切断(分解)し、続いて、ポリ-l-オルニチン及びフィブロネクチンを用いてコーティングされた60mmディッシュの縁を吸引し、且つ細胞を、中央部で約4cmの直径を有する円形に、2Dプレーティングした。最初のプレーティング後、4×106個の細胞を、PLO/FN又はポリ-l-オルニチン及びフィブロネクチンを用いてコーティングされた60mm培養ディッシュ中で平面的に培養し、細胞が約80~90%満杯になったときに、継代培養のために週1回アキュターゼ(商標)を用いた。培養培地として表2のD36~培養溶液を用いて培養を行ない、マイトジェン(bFGF 20ng/mL、PDGF-AA 10ng/mL、及びEGF 20ng/mL)を添加した培地を増殖培地として用いた。継代中に各ステップで細胞を計数した。
【0073】
オルガノイドを、30G針を用いて物理的に分解し、6mmのPLO/FNコーティングディッシュ中で二次元2D培養環境へと転換し、続いて、増殖PDL(集団倍加数)及び累積PDLの数を、継代培養を通じて測定した。オリゴデンドロサイト前駆細胞段階で増殖できない他のプロトコールと比較して、本プロトコールは、最初のプレーティングから5回の継代に基づいて約120倍の細胞を増殖させることができることが確認された[
図5]。
【0074】
(25~30個のオルガノイドを分解する場合、約4×106個の細胞が、生存細胞のみに基づき、死滅細胞には基づかずに得られる。これらの細胞は、60mmディッシュ中で広がり、ここから出発して5回の継代分培養される場合に、細胞数は120倍まで増加し、約4.8×108個の細胞数に到達する。細胞の凍結バイアルを作製する場合、6×106個の細胞を1バイアルに入れ、したがって80バイアルの細胞ストックを、5回の継代までに得られる細胞を用いて作製できる。)
【0075】
オリゴデンドロサイト前駆細胞の凍結保存後のオリゴデンドロサイトへの分化の確認
図6に示される通り、オリゴデンドロサイト前駆細胞を、凍結保存前(左)と比較して解凍後に分化させるために誘導する場合、それらの分化能が維持され、マーカーMBPを発現するオリゴデンドロサイトへと分化することが確認された。細胞を、2Dプレーティングし、細胞が約80~90%満杯になったときに、継代培養のために週1回、培養培地として表2のD36~培養溶液を用いて培養を行ない、マイトジェン(bFGF 20ng/mL、PDGF-AA 10ng/mL、及びEGF 20ng/mL)を添加した培地を増殖培地として用いた。このプロセスは、大量のオリゴデンドロサイト前駆細胞を、増殖及び培養ステップにより得られるステップであり、且つ、細胞をストックとして凍結保存できるステップである。増殖培養ステップでは、オリゴデンドロサイト前駆細胞をストックとして凍結及び保存することができ、したがって、細胞を、必要な場合に本ステップから直ちに用いることができる。このプロトコールは、ヒト胚性幹細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞を生成するためにかかる時間である、少なくとも約36日間を節約できる。
【0076】
マーカーOLIG2によるオリゴデンドロサイトへの分化能力を維持するオリゴデンドロサイト前駆細胞への増殖可能性の確認
オリゴデンドロサイト前駆細胞から完全に分化した成熟オリゴデンドロサイトまで発現され続けるマーカーであるOLIG2は、オルガノイドが2D培養環境へと転換された後でさえ、発現され続けた。OLIG2の発現が、培養及び分化プロセスの5~6回の継代後でさえも、一定に維持されることが、免疫蛍光分析により確認された[
図7]。
【0077】
オリゴデンドロサイト前駆細胞維持マーカーの発現の確認
オリゴデンドロサイト前駆細胞の初期マーカーであるA2B5が、36日目からオリゴデンドロサイト前駆細胞を培養及び増殖させるプロセスで主に発現されることが、免疫蛍光分析により確認された。細胞を2Dプレーティングし、細胞が約80~90%満杯になったときに、継代培養のために週1回、培養培地として表2のD36~培養溶液を用いて培養を行ない、マイトジェンを添加した培地を増殖培地として用いた。このプロセスでは、大量のオリゴデンドロサイト前駆細胞が、増殖及び培養される。
【0078】
加えて、オリゴデンドロサイト前駆細胞のマーカーであるマーカーPDGFRaが、36日目~の培養及び増殖のプロセス中又は分化0~14培地を置き換えることによる分化プロセスの初期段階で、確認された[
図8]。
【0079】
オリゴデンドロサイト分化の確認
オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化後に、それらが正常にオリゴデンドロサイトへと分化し、それによりニューロンの髄鞘化の機能を発揮することが、ニューロン束マーカーNF及び成熟オリゴデンドロサイトマーカーMBPにより確認された。培養培地として上記の表2に示されるD36~増殖培養溶液を用いて培養を行ない、引き続く分化プロセスにより誘導される成熟オリゴデンドロサイトでの発現を確認した。分化のために、表2の分化培養溶液を用いて置き換えた。
【0080】
図9では、分化した成熟オリゴデンドロサイトが、ニューロンの樹状突起を取り囲むことが確認された。これにより、細胞が、髄鞘化の完全な機能を有する分化した成熟オリゴデンドロサイトへと分化したという事実が確認される。
【0081】
加えて、未熟オリゴデンドロサイトの重要なマーカーであるO4の発現が、オリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖段階での所望の時点で、分化0~14日目培養溶液を用いる約14日間の培養後に確認された[
図10]。その後、分化15日目~培養を用いる約2週間のさらなる分化後に、未熟オリゴデンドロサイトは、成熟オリゴデンドロサイトへと完全に分化し、且つ、成熟オリゴデンドロサイトの重要なマーカーであるMBPが、蛍光染色により確認された。このとき、最終分化細胞である成熟オリゴデンドロサイトの平均比率は、総細胞と比較して23%以上であり、且つOLIG2+細胞と比較して42%以上であったことが確認された。この比率は、先行技術(非特許文献1~4)と比較して非常に高比率であることが確認された。
【0082】
生成されたオリゴデンドロサイトを用いる疾患モデル化可能性の確認
図11では、シヌクレイノパチーを引き起こすことができるα-シンクレイン(synclein)を過剰発現するレンチウイルス(pEF1α-α-syn-GFP)がオリゴデンドロサイト前駆細胞に首尾良く導入されたことが、GFPマーカーにより確認された。細胞を2Dプレーティングし、且つ細胞が約80~90%満杯になったときに、週1回継代培養した。マイトジェンを添加した培地を増殖培地として用い、実験方法と同様に、大量の増殖したオリゴデンドロサイト前駆細胞へとウイルスを導入し、シヌクレイン発現を蛍光分析により分析した。
【0083】
α-シンクレインを過剰発現するレンチウイルス(pEF1α-α-syn-GFP)を用いてオリゴデンドロサイト前駆細胞を形質導入し、続いて、それぞれの差異を比較した。
【0084】
最終分化したオリゴデンドロサイトで、a-synが首尾良く過剰発現することが確認された。したがって、オリゴデンドロサイトでのa-シヌクレイン凝集により引き起こされる疾患(MSA)を研究するために用いることができる細胞であることが確認され、且つこの疾患を研究するための可能性もまた確認された。
【0085】
レンチウイルス(pEF1α-α-syn-GFP)を用いてオリゴデンドロサイトを形質導入し、続いて、a-シンクレイン凝集体での差異を、シヌクレイン単量体との比較により確認した(
図12)。
【0086】
これを用いて、本発明者らは、シヌクレイノパチーがオリゴデンドロサイトで特異的に引き起こされるMSAなどの疾患を将来的にモデル化する可能性を確認した。シヌクレイン凝集モデルでは、各細胞を、8日間にわたって12ウェルプレート中で分化させ、続いて、2μg/mLの濃度で一晩、PFFを用いて処理した。分析のために、細胞のタンパク質を回収し、続いて、5×サンプルバッファーを用いて処理し、SDSゲル上にロードした。
【0087】
a-シヌクレインを過剰発現するレンチウイルス(pEF1α-α-syn)を用いてオリゴデンドロサイトを形質導入して、a-シヌクレインを過剰発現させ、続いて、a-シヌクレイン単量体(M)及びプロテイナーゼKをそれぞれ用いて処理した。PK消化での差異が観察された。
【0088】
PK濃度が0である群では、オリゴデンドロサイトの単量体及び凝集体(O8、O11、及びO12)が、酵素により切断されなかった。しかしながら、PK濃度が増加するにつれて、凝集体が切断されて、単量体になったことが観察された。最高濃度を用いる群では、単量体がより小さなサイズへと切断されたが、オリゴデンドロサイトはより小さなサイズへと切断されなかったことが観察された。
【0089】
N(ニューロン)及びA(アストロサイト)とそれぞれ比較して、OPC(O、オリゴデンドロサイト)での各細胞タイプに関する、日毎のa-シヌクレイン予備形成原線維(PFF)の取り込みのパターンを観察するために、実験を行なった。
【0090】
オリゴデンドロサイト前駆細胞を、約2週間にわたって、分化0~14日目培養溶液を用いて、オリゴデンドロサイトへと分化させ、オリゴデンドロサイトをMACSにより選別して、純度を増大させ、続いて、他のタイプの細胞(N-ニューロン、A-アストロサイト、及びO-オリゴデンドロサイト)をそれぞれ用いて、約7日間にわたって分化させた。その後、Alexa488結合PFFを、1μg/ウェルの濃度で培養溶液と混合し、それを用いて細胞を1日間処理した。次の日、培養溶液を通常の培養溶液を用いて置き換え、続いて、細胞及び細胞により発現される蛍光を、日毎に、写真を撮影することにより比較した。
【0091】
図13に示される通り、アストロサイトは、大部分のPFFを取り込むだけでなく、経時的にPFFを貪食する。しかしながら、オリゴデンドロサイトは、PFFを取り込むが、貪食する能力を有しないことが確認された。オリゴデンドロサイトがPFFを取り込む場合、a-シヌクレインはPFF処理のみによってオリゴデンドロサイト中で凝集する。したがって、このことが、a-シヌクレインがオリゴデンドロサイト中で凝集する病理の研究のための実験を行なうことを可能にする。培地の貪食能を確認するために、D0(細胞がPFFで処理される前)、PFF処理後のD1、D3、及びD11に、25μLの培養溶液を回収し、ディープフリーザー中で保持した。実験時に、解凍し、5×サンプルバッファーを用いて処理し、SDSゲル上にロードした。
【0092】
オリゴデンドロサイトのPFF取り込み及びオリゴデンドロサイト中でのa-syn凝集の程度を確認するために、細胞を、8日間にわたって各細胞タイプに関して分化させ、続いて、2μg/mLの濃度でPFFを用いて培養溶液を処理した。その後、PFFによるa-syn凝集を確認するために、細胞機能を維持させ、ウエスタンブロットサンプルを日毎に回収し、培養溶液もまた日毎に回収し、差異をウエスタンブロットにより確認した。
【0093】
結果として、オリゴデンドロサイトが、培地データ中の他の細胞タイプと比較して、多量のPFFを取り込まなかったことが確認された(
図14)。しかしながら、PFF取り込みの量とは異なり、細胞中のa-シヌクレインの量は、他の細胞のものと似通っていたことが確認された。したがって、このことは、貪食は活性ではないが、細胞中のa-synのオリゴマー化は良好であることを示す。したがって、オリゴデンドロサイトのシード活性は、ニューロン又はアストロサイトのものよりも良好であることが見て取れる。
【0094】
したがって、少量のPFFでさえ、オリゴデンドロサイトでのa-シンクレイノパチーを容易に誘導できることが確認された。加えて、これにより、オリゴデンドロサイトでのa-シンクレイノパチーを研究することが可能になることが確認された。
【0095】
[結論]
先行技術(非特許文献1~4)とは異なり、オリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖ステップを含むので、本発明の方法は増殖を可能にし、特に、増殖能は開始時には非常に強力であり、したがって、大量の細胞を得ることができる。加えて、このステップで、継代培養を行なうことができ、且つオリゴデンドロサイト前駆細胞をストックとして保存することができる。したがって、必要なときに、保存されたオリゴデンドロサイト前駆細胞を直ちに用いることができ、それにより、時間が節約される。
【0096】
加えて、オリゴデンドロサイト前駆細胞で発現されるPDGFRaは、先行技術よりも早く、15週間までに発現される。加えて、未熟オリゴデンドロサイトのマーカーであるO4は、約4~13週間で迅速に発現される。オリゴデンドロサイトは、通常は分化するために非常に長い時間がかかる細胞であるので、短縮される時間と同程度に、培養溶液を節約することができる。