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特許7520129大面積レーザ加工の正確度を、位置フィードフォワード補償を使用して改善するためのシステムと方法
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  • 特許-大面積レーザ加工の正確度を、位置フィードフォワード補償を使用して改善するためのシステムと方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】大面積レーザ加工の正確度を、位置フィードフォワード補償を使用して改善するためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/082 20140101AFI20240712BHJP
   B23K 26/042 20140101ALI20240712BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/042
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022545069
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 US2021014632
(87)【国際公開番号】W WO2021150904
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】62/965,491
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504250923
【氏名又は名称】ノヴァンタ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス マーク
(72)【発明者】
【氏名】シヴァム シータラム
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/140993(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0056443(US,A1)
【文献】特表平10-506211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/082
B23K 26/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースのオンザフライレーザ加工を提供するレーザ加工システムであって、
前記ワークピースを支えるように構成された位置決めシステムと、
前記位置決めシステム上の前記ワークピースの動きを制御するように構成された位置決めシステムコントローラと、
前記ワークピース上でレーザビームを走査するように構成されたガルバノミラーを含むスキャナシステムと、
前記スキャナシステム及び前記位置決めシステムコントローラを動作させるように構成されたスキャナコントローラと、を備え、
前記スキャナコントローラは、前記ガルバノミラーのガルバノトラッキング遅れの間隔中に前記位置決めシステムの測定位置から移動する前記位置決めシステムの予測経路を決定し、
前記予測経路は、前記位置決めシステムの観察位置の経時変化を積算することで計算された、前記位置決めシステムの速度及び加速度に基づいて決定され、
前記スキャナコントローラは、前記レーザビームが前記位置決めシステムの前記予測経路に追従するように前記ガルバノミラーを位置決めし、
前記スキャナコントローラは、前記位置決めシステムコントローラを、部分的に時間領域が拡張されて前記位置決めシステムコントローラに位置決めシステム更新データレートで提供されるベクトル入力データに応答して動作させ、且つ、前記スキャナシステムを、遅延されて前記スキャナシステムにガルバノ更新データレートで提供されるベクトル入力データに応答して動作させ、
前記ガルバノ更新データレートは前記位置決めシステム更新データレートよりも高いレートである、レーザ加工システム。
【請求項2】
前記位置決めシステム更新データレートと前記ガルバノ更新データレートは同期される、請求項に記載のレーザ加工システム。
【請求項3】
前記スキャナコントローラによって前記位置決めシステムコントローラに提供される前記ベクトル入力データは、更にローパスフィルタされる、請求項1又は2に記載のレーザ加工システム。
【請求項4】
前記位置決めシステム更新データレートよりも高い前記ガルバノ更新データレートにより、前記スキャナコントローラは、前記位置決めシステムの速度又は位置の変化に関係なく、前記位置決めシステム前記予測経路追従するように前記ガルバノミラーを位置決めできる、請求項に記載のレーザ加工システム。
【請求項5】
前記スキャナコントローラは、前記ガルバノトラッキング遅れの間隔と、前記位置決めシステムの速度及び加速度とに比例する位置オフセットを計算して、前記ガルバノトラッキング遅れの間隔中の前記位置決めシステムの予測経路を決定する、請求項1に記載のレーザ加工システム。
【請求項6】
前記スキャナコントローラは、前記ガルバノミラーに前記位置決めシステムの前記予測経路に沿って前記レーザビームを案内させるための前記位置オフセットをガルバノコマンドデータに加算する、請求項5に記載のレーザ加工システム。
【請求項7】
前記位置決めシステムの前記予測経路は、ほぼ直線である、請求項1に記載のレーザ加工システム。
【請求項8】
前記位置決めシステムは、X軸サーボ、Y軸サーボ、X軸モータ、Y軸モータ、およびXYステージアセンブリを含み、
前記スキャナシステムは、X軸走査ヘッドサーボ、Y軸走査ヘッドサーボ、X軸パワー及び位置フィードバックシステム、およびY軸パワー及び位置フィードバックシステムを含む、請求項1に記載のレーザ加工システム。
【請求項9】
ワークピースのオンザフライレーザ加工を提供する方法であって、
前記ワークピースを支えるように構成された位置決めシステムを提供することと、
前記位置決めシステムの動きを制御するように構成された位置決めシステムコントローラを提供することと、
前記ワークピース上でレーザビームを走査するように構成されたガルバノミラーを含むスキャナシステムを提供することと、
前記スキャナシステム及び前記位置決めシステムコントローラを動作させるように構成されたスキャナコントローラを提供することと、
前記スキャナコントローラを用いて、前記位置決めシステムコントローラを、前記位置決めシステムを移動させるベクトル入力データに応答して動作させることと、
前記スキャナコントローラを用いて、前記ガルバノミラーのガルバノトラッキング遅れの間隔中に前記位置決めシステムの測定位置から移動する前記位置決めシステムの予測経路を決定することであって、前記予測経路が、前記位置決めシステムの観察位置の変化を積算することで計算された、前記位置決めシステムの速度及び加速度に基づいて決定されることと、
前記スキャナコントローラを用いて、前記レーザビームが前記位置決めシステムの予測経路に追従するように前記ガルバノミラーを位置決めすることと、を含み、
前記スキャナコントローラが、部分的に時間領域が拡張されて前記位置決めシステムコントローラに位置決めシステム更新データレートで提供されるベクトル入力データに応答して前記位置決めシステムコントローラを動作させ、且つ、前記スキャナシステムを、遅延されて前記スキャナシステムにガルバノ更新データレートで提供されるベクトル入力データに応答して動作させ、前記ガルバノ更新データレートは前記位置決めシステム更新データレートよりも高いレートである、方法。
【請求項10】
前記スキャナコントローラによって前記位置決めシステムコントローラに提供される前記ベクトル入力データは、ローパスフィルタされる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記スキャナコントローラは、前記ガルバノトラッキング遅れの間隔と前記位置決めシステムの前記速度及び前記加速度とに比例する位置オフセットを計算することによって、前記ガルバノトラッキング遅れの間隔中に前記位置決めシステムが前記測定位置から移動する、前記位置決めシステムの前記予測経路を決定する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記スキャナコントローラは、前記ガルバノミラーに前記位置決めシステムの前記予測経路に沿って前記レーザビームを案内させるための前記位置オフセットをガルバノコマンドデータに追加することで、前記レーザビームが前記位置決めシステムの予測経路に追従するように前記ガルバノミラーを位置決めする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記位置決めシステムの前記予測経路は、ほぼ直線である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2020年1月24日に出願された米国仮特許出願第62/965,491号に対する優先権を主張するものであり、その開示の全体を参照によって本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、一般に、レーザ走査システムに関し、特に、大面積のオンザフライレーザマーキング及びカッティングシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
レーザ走査システムを使用して、材料が動いている間に材料のマーキング又はカッティングを行う場合が多い。このような加工は、通常、業界ではオンザフライと呼ばれる。これらのシステムは、一般に、ロータリエンコーダ又はリニアエンコーダなどの位置測定システムを、ワークピース位置決めシステムの動きを制御するためのフィードバックとして使用している。2軸システムでは、ワークピース位置決めシステムはXYステージであることが多いが、一部のシステムでは、ワークピースは単軸で配置され、走査ヘッドは直交軸でワークピースの上に配置される。本明細書で使用される場合、位置決めシステムという用語は、一般に、これらのシステム構成及びそれらの同等物を指す。レーザガルバノコントローラは、位置決めシステムのエンコーダ情報を使用して、導光されたレーザビームがワークピースの動きに追従するようにガルバノの位置をオフセットし得る。
【0004】
大面積にわたる高い正確度のレーザ微細加工は、外部モーションシステムを使用して、ワークピースをレーザ加工走査ヘッドの固定された走査領域の下で移動させる、システム設計を生み出した。外部モーションシステムは、ウェブベースの変換ツールで使用されることの多い単軸、又は例えば有機発光ダイオード(OLED)カッティング、インジウムスズ酸化物(ITO)スクライビング、ビアホールドリルなどのディスプレイ加工で使用される2軸ガントリ(又はXY)ステージベースのシステムであり得る。このような2軸システムでは、レーザビーム位置決め正確度は、高精度の半導体加工技術を使用して製造されるワークピース上のアートワークにレーザ加工ステップを位置合わせする必要があるため、より一層厳しくなっている。このようなシステムでは、+/-500mmの加工エリアに対して+/-5μmまでのレーザビームの正確度と再現性(実質的には10PPMの精度)のある位置決めが必要になることが多い。
【0005】
特定のレーザ位置決めシステムは、レーザヘッド位置決めとワークピース位置決めの組み合わせを使用する。例えば、特許文献1は、コンパクトであると開示されている複合システムレイアウト用に、X及びY位置決めシステムを使用して、走査ヘッドを1つの次元で移動させ、材料を他の次元で移動させるシステムを開示する。位置決めシステムとガルバノとの間の動きは、経路プランニング分析を介して協調される。
【0006】
特許文献2は、レーザスキャナコントローラが別個のXYステージコントローラを従属化し、XYステージをレーザステアリングガルバノと同期して方向付けるシステムを開示する。システムは、クロスドメイン通信インターフェースを使用して、スキャナコントローラとステージコントローラとの間で情報を転送し、ステージコントローラが追従する必要のある位置コマンド、及びスキャナコントローラとステージコントローラの同期に使用されるクロック情報を含んでいる。
【0007】
特許文献3は、レーザスキャナとステージコントローラによって制御される可動ステージとを備えたレーザ加工装置を開示する。レーザスキャナは、スキャナコントローラによって制御され、スキャナコントローラはステージの動きをステージコントローラによって制御される際に同期させる。この開示はまた、ブリッジ装置を含み、それは2つのサブシステムのコントローラ間、例えばスキャナコントローラとステージコントローラとの間でリアルタイムデータを同期し転送する。しかし、この備考参照の開示では、複数のスキャナを使用するシステムの正確度は、スキャナの経路コマンドがフィードバック読取に基づいているという事実によって制限され、フィードバック読取は、コマンドに比べて必然的に遅延し、ノイズが多く、エラーを発生しやすい場合がある。
【0008】
レーザガルバノベースのステアリングシステムは、一般に、閉ループサーボモータを使用し、ガルバノモータ上の集積センサによって提供される位置フィードバックを備える。このようなサーボシステムでは、有限のトラッキング遅れが指令位置と実際のミラー位置との間にある。このトラッキング遅れにより、レーザビームの位置エラーが材料位置決めシステムを追従する間に引き起こされる。これは、ガルバノの位置コマンドの変更を誘発している位置決めエンコーダシステムが、位置決めシステムの瞬間的位置を測定しているためである。しかし、位置決めシステムの実際の位置は、ガルバノトラッキング遅れの間隔中に新しい相対位置に移動される。
【0009】
大面積微細加工システムでは、そのようなエラーの大きさは、エラーバジェットを1桁以上超過させる。例えば、典型的なガルバノサーボシステムのトラッキング遅れは250μsecであり、ワークピース位置決めシステムが500mm/secで移動すると、結果として生じる位置エラーは0.00025(sec)×500(mm/sec)=0.125(mm)となる。これは、そのようなシステムに対して完全に許可不可能なレーザ加工制御をもたらし得る。
【0010】
非特許文献1は、オンザフライ方法を開示し、広域製造用にレーザガルバノスキャナとリニアステージを同期させる。この文献は、大面積加工システムを開示し、XYステージ位置エンコーダデータを使用してレーザ走査システムに材料位置決めシステム(XYステージ)の動きを追跡させ、2Dレーザ加工オンザフライを実装する。この参照のシステムは、リニアステージとガルバノスキャナとの間のリアルタイムの信号転送を提供するために開示される。
【0011】
しかしながら、より高速及び正確度で改善されたレーザマーキング正確度を提供する、より効率的でより経済的なオンザフライレーザマーキングシステムに対する必要性が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第5,751,585号
【文献】米国特許出願公開第2018/0339364号
【文献】米国特許出願公開第2018/0056443号
【非特許文献】
【0013】
【文献】「The article Laser Scanner-Stage Synchronization Method for High-Speed and Wide-Area Fabrication」、Journal of Laser Micro/Nanoengineering(JLMN)、2012年7巻2号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様によると、本発明は、ワークピースのオンザフライレーザ加工を提供するレーザ加工システムを提供する。レーザ加工システムは、ワークピースを支えるように構成された位置決めシステム、位置決めシステム上のワークピースの動きを制御するように構成された位置決めシステムコントローラ、ワークピース上でレーザビームを走査するように構成されたスキャナシステム、及びスキャナシステムと位置決めシステムコントローラを動作させるように構成されたスキャナコントローラを含み、スキャナコントローラはフィードフォワード位置補償で使用するためのベクトル入力データを受信している。
【0015】
別の態様によると、本発明は、ワークピースのオンザフライレーザ加工を提供するレーザ加工システムを提供する。レーザ加工システムは、ワークピースを支えるように構成された位置決めシステム、位置決めシステム上のワークピースの動きを制御するように構成された位置決めシステムコントローラ、ワークピース上でレーザビームを走査するように構成されたスキャナシステム、及びスキャナシステムと位置決めシステムコントローラを動作させるように構成されたスキャナコントローラを含み、スキャナコントローラはフィードフォワード位置補償で使用するための位置決めシステムの予想されるベクトルを決定する。
【0016】
更なる態様によると、本発明は、ワークピースのオンザフライレーザ加工を提供する方法を提供し、方法は、ワークピースを支えるように構成された位置決めシステムを提供することと、位置決めシステム上のワークピースの動きを制御するように構成された位置決めシステムコントローラを提供することと、レーザビームをワークピース上で走査するように構成されたスキャナシステムを提供することと、スキャナシステム及び位置決めシステムコントローラを動作させるように構成されたスキャナコントローラを提供することと、位置決めシステムコントローラをベクトル入力データに応答して動作させることと、位置決めシステム遅れ補償された高データレートでスキャナシステムを動作させることと、を含む。
【0017】
本出願は、添付の図面を参照して更に理解され得る。
【0018】
図面は例示のみを目的として示される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一態様によるスキャナ及び制御システムの例示的な図式的機能図を示す。
図2図1のシステムの例示的な図式的構成要素図を示す。
図3図1のシステムにおける走査ヘッド及びワークピースの相対位置の例示的な図式的座標表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
出願人は、ガルバノトラッキング遅れによって誘発される位置決めエラーが、ガルバノの高帯域幅、高速及び加速能力を利用することによって、低帯域幅の低速移動及び高慣性のワークピース位置決めシステムと比較して実質的に低減又は排除され得ることを発見した。更に、位置トラッキングに使用される位置エンコーダデータからのワークピース位置決めシステムの速度及び加速度の計算が、有限期間にわたる位置変化を積算することにより可能であることが発見された。
【0021】
この速度情報を使用する位置決めシステムの将来的位置の予測は、位置決めシステムの動きが、ガルバノトラッキング遅れの時間間隔にわたってほぼ直線であると仮定する。この仮定は、位置決めシステムの位置を変更するための一般的な位置更新レートが5KHz以下、つまりコマンド更新ごとに200μ秒であるために有効であると見なされる。したがって、ガルバノトラッキング遅れ間隔では、位置決めシステムは、システムの指令位置が間隔内で1回のみ更新されるため、ほぼ直線で移動する。加えて、位置決めシステムサーボコントローラには独自のトラッキング遅れがあり、新しいコマンドに対して遅延した反応を生じ、この仮定を更に増強させる。
【0022】
現在の測定位置に対する位置決めシステムの予測された位置は、ガルバノコマンド流に追加される。ガルバノサーボシステムのより高い帯域幅は、ガルバノミラーの位置決めが、位置決めシステムの速度及び位置の変化に関係なく、位置決めシステムの予測された経路上にあることを可能にする。プロセスは、位置フィードフォワードモーション制御を含み、定速動作モード中のサーボシステムのトラッキング遅れを低減する。トラッキング遅れは、指令位置とサーボシステムによって制御されるアクチュエータの実際の位置との間の遅延として定義され得る。しかしながら、本発明の実施形態のシステムでは、位置フィードフォワードを使用して、ガルバノの軌道を調整し、その結果、システムは測定された外部モーションシステムの予測された経路を辿る。
【0023】
レーザガルバノサーボトラッキング遅れは、走査位置エラーを、ワークピースモーショントラッキングアプリケーションでのワークピース追従中に引き起こす。これは、ワークピースが、ワークピースの位置の測定の時間から、ミラーが測定に基づいて偏向される時間までの間に移動する結果である。本発明の様々な態様によるレーザ走査システムの正確度の実質的な改善は、ワークピース位置決めシステムの推定速度及び加速度に基づく位置フィードフォワード補償を使用する。ガルバノのサーボトラッキング遅れに比例するレーザガルバノの予測位置調整を、ワークピース位置決めシステムの位置エンコーダデータを使用して計算し、システムの速度と加速度を導出することが可能である。コマンドデータの予測調整は、ビームを、移動するワークピースの実際の位置に導光させ、それによって全体的なレーザ位置決め正確度を改善する。
【0024】
一実施形態によると、本発明は、マークオンザフライレーザ走査システムにおいて位置フィードフォワードを使用することを含む。例えば、図1は、このような位置フィードフォワード制御システムの論理フローの機能図を10で示す。特に、図1は、制御システム10を示し、それは位置決めシステム、この場合はXYステージ14と走査ヘッド16との両方を駆動する走査コントローラ12を含む。全体的なレーザ加工データは、適切な座標変換を介して位置決め及びガルバノ座標系と位置合わせされる、グローバル座標系20内のベクトルデータとして表され、走査コントローラ12に提供される。グローバルジョブ座標系の原点とレーザガルバノの原点は互いに一致するが、位置決めシステムの原点と位置決めシステムの位置座標は、実行時に線形変換を使用して位置合わせされる。
【0025】
ジョブデータは2つの経路に提供される。1つの経路では、22でベクトルデータは時間領域拡張され、24でローパスフィルタされ、また26で、低減されたデータレートで位置決めシステムへ配信するためにキューイングされる。第2の経路では、本来のジョブデータ実行は、28で経験的に導き出された位置決めシステムトラッキング遅れの持続時間によって遅延され、位置決めシステムが動き始めることを可能にする。ジョブベクトルデータは、30でガルバノサーボに配信するために、高データレート、典型的には100KHzで提供される。ジョブの開始時に、ローパスフィルタされたジョブデータは、位置決めシステムに位置決めシステムコントローラ40を介して、低減された更新レートで配信され、低減された更新レートはガルバノ更新レートと同期しても、しなくてもよい。位置決めシステムトラッキング遅れの後、ガルバノデータはガルバノサーボ30に高データレートで配信される。
【0026】
位置決めシステムエンコーダデータは、ガルバノコマンドデータ配信レートと同じレートでサンプリングされ、いくつかのサンプル間隔にわたって積算されて、32で位置決めシステムの平均速度及び加速度を計算する。位置オフセットは、34でガルバノに対して計算され、ガルバノトラッキング遅れと現在算出された位置決めシステムの速度及び加速度に比例する。このオフセットは、ガルバノコマンドデータ36に追加される。オフセットは、予測位置バイアスであり、レーザを、ワークピースがトラッキング遅れの後に位置する場所に導光する。続くステップでは、38で調整されたガルバノコマンドデータは、位置決めシステムエンコーダによって測定された現在の位置決めシステム位置を差し引くことによって更に調整される。後者の計算は、位置決めシステムによって実行される低周波成分を効果的に除去し、ガルバノのアドレス可能フィールド内にあるコマンドを生じる。ステージ14は、ステージコントローラ40と、X軸サーボ42及びY軸サーボ44、X軸モータ46及びY軸モータ48と、XYステージアセンブリ50を含む。走査ヘッド16は、X軸走査ヘッドサーボ52とY軸走査ヘッドサーボ54、ならびにX軸パワー及び位置フィードバックシステム56とY軸パワー及び位置フィードバックシステム58を含む。
【0027】
システム構成要素の物理的実施形態は、図2に示される。図2のシステムでは、コントローラ60、例えば、マサチューセッツ州ベッドフォードのNovanta Corporation会社のCambridge Technologyによって販売されているScanMaster Controller(SMC)を使用して、システムのマーキング操作を調整する。これは、監視プログラマブルロジックコントローラ(PLC)62、ジョブ作成部PC64、及びモーションコントローラ66に接続され、モーションコントローラ66は例えば、ミネソタ州エディーナのACS Motion Control社により提供され得て、イーサネットとTCP/IP通信を(例えば、イーサネットハブ又はスイッチ68を介して)使用して、様々なより上位レベルのプロトコルを使って情報を渡している。
【0028】
コントローラ60は、並列において、モーションコントローラ66によって使用されるエンコーダデータを利用し、したがって、モーションシステムの制御下にある位置決めシステムの位置制御を直接観察する。特に、モーションコントローラ60はまた、例えば、標準的な入力/出力プロトコルを介して、PLC62と直接通信する。モーションコントローラ66は、モーションX軸ドライバ70に直接(例えば、EtherCAT(イーサCAT)を介して)結合され、次に、モーションY軸ドライバ72に結合され、これらは両方とも、コントローラ60と、それぞれのX軸ドライブ78及びY軸ドライブ80に結合される。コントローラ60はまた、レーザ74への制御(例えば、変調、ゲート及びパワー)と、スキャナ76への制御(例えば、GSBμs)を提供する。この直接観察は、XYステージコントローラの依存関係を排除し、依存関係は潜在的な異常、例えばエンコーダデータが最初にモーションコントローラに送られ、次にエコーバックされる場合の遅れ及びその他の未知の影響を含んでいる。
【0029】
ジョブデータ処理中、SMC(30)は、位置更新をモーションコントローラ66に、100Hz~1KHzの範囲でプログラムされ得る比較的低い更新レートで配信する。SMCは、以前の位置に到達したかどうかの判定に依存せず、モーションコントローラが位置コマンドを位置決めシステムの軸サーボへ、個別のポイントとして、又は独自の更新レートでプロファイルされた移動データポイントの一連として、順方向に転送するのみである。本明細書に開示される実施形態は、本発明の例としてのみ提供され、他のシステムは、例えば、他のモーションコントローラ及びサーボドライバを、特に、コントローラへの標準イーサネットベースのTCP/IP通信が利用可能である場合に使用することを含み得る。
【0030】
位置決めシステムコントローラの位置更新のリリースと同時に、SMCは、ガルバノの位置セットポイントをはるかに高いレート(100KHz)で計算する。これらの位置更新は、理想的なジョブデータの位置、ガルバノトラッキング遅れによって誘発される位置エラーを排除するための位置フィードフォワードバイアス、及び位置決めシステムの実際の位置に基づくグローバル座標系の調整を表す。SMCにより協調されたモーション制御は、マーキングジョブの終了まで続き、その時点でPLCによる通常の位置決めシステム制御が実行され得る。特別な制御モード許可は必要なく、このプロセスでは、標準の公開インターフェースが実行されることに留意する。
【0031】
図2のマーキング/レーザ加工システムの設計は、標準的なソフトウェアツール、例えばマサチューセッツ州ベッドフォードのNovanta Corporation会社のCambridge Technologyによって販売される、Cambridge TechnologyのScanMaster Designerを使用するが、位置決めシステムと走査システムの動きの全体的な同期は、追加の構成情報を必要とし得る。例えば、特定の経験的に導出された特性は、以下のように指定する必要がある。
【0032】
エンコーダによる位置決めシステムの位置の測定は、使用中の特定のエンコーダによって制限される正確度(位置決めシステムのエンコーダ分解能)に対して行われる。この分解能は、mm/エンコーダカウントの単位で定義する必要がある。+/-5μmのシステム正確度を達成するため、通常のアプローチは、要求の10倍である測定方法を使用し、したがって、最小エンコーダ分解能は、カウントあたり少なくとも0.5ミクロンである必要がある。分解能が高いほどより高い精度につながるが、エンコーダが、位置決めシステムの速度の関数である直交パルスを生成し得るレートを超えるという限界に達する。エンコーダ分解能を選択する際に考慮すべき第2の限界は、スキャナコントローラが特定の信号レート(通常は25MHz)以下で直交データをデコードするための能力である。
【0033】
別の特性は、位置決めシステムトラッキング遅れに関する。これは、経験的測定であり、一連の移動コマンドを送信し、位置決めシステムのエンコーダを同期的にサンプリングすることによって行い得る。位置決めシステムコントローラの製造元は、この特性を測定するソフトウェアを提供する場合があるが、SyncMasterサポートソフトウェアを使用すると、この測定は位置決めシステムの駆動とその位置の測定の両方を可能にするため、容易になる。
【0034】
図3は、例えば、座標リンケージシステムにおけるシステム座標を記述するための可能な方法を示す。ここでの重要な特性はX、Yで、これは位置決めシステムの原点からのオフセットであり、そこに移動するように命令された場合、システムは、位置決めシステムを、ワークピースの原点が走査ヘッドの原点の真下になるような位置へもたらす。図3は、コーナー参照系90を示し、それは基板が繰り返し可能な方法でシステム上に、例えばバンキングピン(banking pin)を使用して、機械的に配置され得ると仮定している。図3は、92でヘッド原点参照系を示す。又、これは、材料とジョブ座標系が、例えば、中心基準でもあり得るという、1つの実施形態にすぎない。
【0035】
LightningIIスキャナ(マサチューセッツ州ベッドフォードのNovanta Corporation会社のCambridge Technologyによって販売されている)を備えたシステムでは、ガルバノトラッキング遅れの測定は、LightningIIのサポートソフトウェアである、TuneMasterIIを使用して行われる。定速の刺激は、ScanMaster Designerなどのツールを使用してスキャナに送信され、トラッキング遅れは、TuneMasterIIのV-Scope機能を使用して直接決定され得て、同様に、これらはすべて、マサチューセッツ州ベッドフォードのNovanta Corporation会社のCambridge Technologyによって提供される。
【0036】
更なる特性は、位置決めシステムエンコーダ較正データに関連する。高度なモーションコントローラは、レーザ干渉計測定ツールを使用してエンコーダセンサを線形化し、位置決めシステムの動きを較正する能力を有することが多い。位置決めシステムコントローラは、較正データを使用して、軸の軌道を、変位エラーを最小限に抑えるように変更し、変位エラーはそうでなければエンコーダ非線形性のために存在し得る。スキャナコントローラは、同じ較正データを使用してエンコーダを、位置決めシステムコントローラと同様の方法で線形化する。これは、スキャナコントローラが位置決めシステムコントローラと並行して生のエンコーダデータにアクセスし、較正されたエンコーダ情報へアクセスできないために必要とされる。
【0037】
様々な実施形態によると、本発明は、移動エンティティの速度及び加速度の測定に基づくレーザステアリングシステムの予測位置決めの使用を提供し、走査システムトラッキング遅れに誘発されるマーキングエラーを克服する。このようなシステムの使用は、柔軟なシステムアーキテクチャを可能にし、位置決めシステムコントローラがインテグレータの必要性を満たすように選択され得る。ガルバノ走査コントローラは、位置決めシステムコントローラとは独立して位置決めシステムの動きを常に追跡し、予測アルゴリズムを適用して、スキャナトラッキング遅れに誘発される位置エラーを最小限に抑える。この非侵入性の観測技術のため、ガルバノ走査ヘッドと位置決めシステムコントローラのタイムベースを緊密に結合する必要がない。これは、積算プロセスを簡素化し、機能するシステムを実現するために必要な情報量を最小限に抑える。
【0038】
当業者は、多数の修正及び変形が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、上記の開示された実施形態に対して行い得ることを理解するであろう。
図1
図2
図3