(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】光プローブ及びそれを含む光断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
A61B1/00 730
A61B1/00 526
(21)【出願番号】P 2022548289
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2020034080
(87)【国際公開番号】W WO2022054161
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】519301652
【氏名又は名称】ジェネシス・メドテック・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】渡部 洋己
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸治
(72)【発明者】
【氏名】佐野 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英徳
(72)【発明者】
【氏名】平 健二
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-524930(JP,A)
【文献】特開2019-164331(JP,A)
【文献】特開2019-164330(JP,A)
【文献】特表2016-512616(JP,A)
【文献】中国実用新案第204318703(CN,U)
【文献】特開2007-29653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈管用光断層撮影装置に用いられる光プローブであって、
中心軸を有する光ファイバと、
前記光ファイバの先端面に固定された透光性のレンズ部材を備えており、
前記レンズ部材は、前記光ファイバの前記中心軸を伸ばした延長軸を囲む外周面と、前記延長軸に交差する後端面と、前記延長軸に交差する先端面を有し、
前記レンズ部材の先端面は、前記延長軸に対して斜めに延びる
略平坦な面であり、
前記レンズ部材の後端面が前記光ファイバの先端に直接連結されて光学的に結合されており、
前記レンズ部材の前記外周面は、少なくとも一部に前記延長軸を中心とする円筒面部分又は前記延長軸に平行な軸を中心とする円筒面部分を有し、
前記光プローブは、前記光ファイバと前記レンズ部材を覆うように前記光ファイバの前記中心軸に沿って延びるシースの内部に配置されて、
前記シースの内部は気体で満たされており、
前記光ファイバの先端から出射した光が前記延長軸に沿って前記先端面に入射し、前記先端面で反射した光が前記円筒面部分を介して前記レンズ部材から出射するように構成されている、光プローブ。
【請求項2】
前記先端面は、前記延長軸と該延長軸と斜めに交差する傾斜軸とを含む対称面に関して面対称な形を有する、請求項1の光プローブ。
【請求項3】
前記傾斜軸は、前記延長軸に対して0°から45°までの角度で傾斜している、請求項2の光プローブ。
【請求項4】
前記光ファイバの先端面と前記レンズ部材の後端面はそれぞれ、前記中心軸及び前記延長軸に対して斜めに交差する面上に位置する傾斜面である、請求項1から
3のいずれかの光プローブ。
【請求項5】
前記先端面は、誘電体多層膜、アルミニウム、銀、又は金でコーティングされている、請求項1から
4のいずれかの光プローブ。
【請求項6】
前記レンズ部材は、ガラス又は樹脂から形成されている、請求項1から
5のいずれかの光プローブ。
【請求項7】
前記レンズ部材と前記光ファイバのコアが純石英ガラスから形成されている、請求項1から
5のいずれかの光プローブ。
【請求項8】
前記円筒面の直径が200μmから400μmまでの間である、請求項1から
7のいずれかの光プローブ。
【請求項9】
前記後端面から前記先端面までの前記延長軸の長さが0.4mmから0.6mmまでの間である、
請求項8の光プローブ。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれかの光プローブを含む、光断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光プローブ及びそれを含む光断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に脈管用光断層撮影装置が開示されている。これらの光断層撮影装置は、光学プローブと、該光学プローブをその長手方向中心軸を中心に回転させる回転駆動部を備えている。撮影時、光学プローブは例えば血管内に挿入され、光学プローブの後端に連結された回転駆動部を駆動して該光学プローブを高速回転(1秒間に約180回転)させながら引き戻すことにより、血管の断層画像を得ることができる。
【0003】
特許文献1に開示された光学プローブは、光ファイバと、該光ファイバの先端に融着されたロッド型レンズと、該光ファイバと反対側の該ロッド型レンズの先端に融着されたプリズムとを有する。この形態の光学プローブにおいて、光ファイバは血管に沿って適度に曲げることができるが、先端に設けた剛性のロッド型レンズとプリズムはこれを容易に曲げることができない。そのため、血管の分岐部において親枝から目的の小枝に向けて光学プローブを挿入し難いことが考えられる。
【0004】
特許文献2及び3に開示された別の光学プローブは、光ファイバの先端に取り付けたレンズ部の先端に側方照射型ボールレンズを備えている。この光学プローブは、特許文献1の光学プローブに比べて、部品点数が少なく、先端に設けたレンズ部の長さも小さいため、血管の分岐部において親枝から目的の小枝に光学プローブを挿入し易い。
【0005】
しかし、ガラスロッドの先端に形成するボールレンズの大きさや形状を目的の大きさや形状に加工することは必ずしも容易ではなく、そのためにガラスロッドの歩留まりが悪く、結果として光プローブの生産性を低下させていた。また、非対称で質量の大きいボールレンズを高速回転すると振動が発生し易く、そのために撮影された画像に多くのノイズが含まれる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5384944号公報
【文献】特許第4997112号公報
【文献】特許第5254865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、部品点数が少なく、血管等の脈管の分岐部において親枝から小枝に容易に挿入可能で且つ回転時の振動を出来るだけ抑えることができる光プローブ及びそれを含む光断層撮影装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の実施形態に係る、脈管用光断層撮影装置に用いられる光プローブは、
中心軸を有する光ファイバと、
前記光ファイバの先端に固定された透光性のレンズ部材を備えており、
前記レンズ部材は、前記光ファイバの前記中心軸を伸ばした延長軸を囲む外周面と、前記延長軸に交差する後端面と、前記延長軸に交差する先端面を有し、
前記レンズ部材の先端面は、前記延長軸に対して斜めに延びる面であり、
前記レンズ部材の後端面が前記光ファイバの先端に直接連結されて光学的に結合されており、
前記レンズ部材の前記外周面は、少なくとも一部に前記延長軸を中心とする円筒面部分又は前記延長軸に平行な軸を中心とする円筒面部分を有し、
前記光ファイバの先端から出射した光が前記延長軸に沿って前記先端面に入射し、前記先端面で反射した光が前記円筒面部分を介して前記レンズ部材から出射するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態に係る光プローブによれば、光ファイバの先端から出射した光は、レンズ部材の先端面に入射し、該先端面で反射した光が円筒面部分を介して血管等の脈管に照射される。脈管で反射及び散乱した光は、レンズ部材の円筒面部分に入射され、レンズ部材の先端面に向けて収束される。また、レンズ部材の先端面で反射した光は、光ファイバに向けて収束される。このように、円筒面部分は凸レンズ面として機能し、円筒面部分から出射した光は脈管に向けて収束される。したがって、脈管で反射及び散乱した光は、脈管の正確な情報を含む。また、光プローブは、GRINレンズなどのロッド型レンズのような部品を含まないため、血管等の脈管の分岐部において親枝から小枝に容易に挿入できる。また、レンズ部材の質量が、ボールレンズの質量に比べて小さいため、回転時の振動を出来るだけ抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る光プローブを含む光断層撮影装置の構成を示す概略図である。
【
図2A】
図1に示す光プローブの概略構成を示す断面図である。
【
図2B】
図1に示す光プローブの概略構成を示す断面図である。
【
図3A】他の実施形態に係る光プローブの概略構成を示す断面図である。
【
図3B】他の実施形態に係る光プローブの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明に係る光プローブの実施形態を説明する。
【0012】
[光断層撮影装置]
図1は実施形態に係る光プローブを備える光断層撮影装置(一般的に、光コヒーレンストモグラフィ又はOCTと呼称される。)の概要を示す。
【0013】
光断層撮影装置100は、撮影に用いる光を出力する低干渉性光源110、低干渉性光源110から送られる光を分岐する光カプラ(光スプリッタ)120、光カプラ120から分岐される光を動脈やリンパなどの脈管に向けて照射する後述する光プローブ40、光プローブ40を回転且つ直動させるモータドライブユニット130、光カプラ120から分岐される光を基に参照光を得る光路調整部140、光プローブ40から伝送される反射光と該参照光とが光カプラ120で重ね合わされることにより得られる干渉光を受光する受光部150、及び受光された干渉光に含まれる信号から画像を復元する信号処理部160、復元された画像を表示するモニタ170を備える。低干渉性光源110、光カプラ120、光プローブ40、モータドライブユニット130、光路調整部140、及び受光部150は、互いに光を伝送できるように光ファイバで光学的に接続されている。また、受光部150と信号処理部160とモニタ170は、干渉光に含まれる信号について電気的に通信できるように接続されている。
【0014】
低干渉性光源110は、波長が700~1800nmの範囲内であり、またコヒーレンス長が1μm~100μm程度の光(すなわち一般的には近赤外線)を出射するように構成されている。
【0015】
実施形態では、光カプラ120は、平行に並ぶ2つの光ファイバを加熱融着させて、融着した部分が細径化した1つの光ファイバとなるように形成された光学部品である。この光カプラ120は、4つの出入口を有しており、低干渉性光源110、モータドライブユニット130、光路調整部140、及び受光部150にそれぞれ接続されている。また、光カプラ120は、例えば低干渉性光源110から入射された光をモータドライブユニット130と光路調整部140に向けて分岐し、モータドライブユニット130と送られてくる反射光を光路調整部140から送られてくる参照光に重ね合わせて干渉光を生成するとともに該干渉光を受光部150に伝送するように構成されている。
【0016】
モータドライブユニット130は、後述する光プローブ40が有する光ファイバ10に接続されている光ロータリジョイント131を有する。光ロータリジョイント131は、光カプラ120と光プローブ40との間において、双方向に光を伝送するように構成されている。また、光ロータリジョイント131は、光プローブ駆動部132に支持されている。光プローブ駆動部132は、光プローブ回転モータ134を有し、該光プローブ回転モータ134が光プローブ駆動部132に駆動連結されており、光プローブ回転モータ134の駆動に基づいて、光プローブ駆動部132、光プローブ駆動部132に支持されている光ロータリジョイント131、及び光ロータリジョイント131に接続されている光ファイバ10が、光ファイバ10の中心軸周りに回転するように構成されている。さらに、光プローブ駆動部132は、該光プローブ駆動部132を光ファイバ10の中心軸方向に移動させる光プローブ直線駆動部136に支持されている。光プローブ直線駆動部136は、光プローブ直動モータ138を有し、該光プローブ直動モータ138が光プローブ直線駆動部136に駆動連結されており、光プローブ直動モータ138の駆動に基づいて、光プローブ直線駆動部136、光プローブ直線駆動部136に支持されている光プローブ駆動部132、光プローブ駆動部132に支持されている光ロータリジョイント131、及び光ロータリジョイント131に接続されている光ファイバ10が、光ファイバ10の中心軸方向に沿って移動するように構成されている。
【0017】
光路調整部140は、コリメーションレンズ142とリファレンスミラー144を有しており、光カプラ120から伝送される光がコリメーションレンズ142を介してリファレンスミラー144に入射され、またリファレンスミラー144で反射された光(参照光)がコリメーションレンズ142を介して光カプラ120に伝送されるように構成されている。リファレンスミラー144は、該リファレンスミラー144をコリメーションレンズ142に向かう方向に移動させるミラー直線駆動部146に支持されている。ミラー直線駆動部146は、ミラー直動モータ148を有し、該ミラー直動モータ148がミラー直線駆動部146に駆動連結されており、ミラー直動モータ148の駆動に基づいて、ミラー直線駆動部146、及びミラー直線駆動部146に支持されているリファレンスミラー144が、コリメーションレンズ142に向かって移動するように構成されている。したがって、光路調整部140は、ミラー直線駆動部146を駆動してリファレンスミラー144を移動させることにより、リファレンスミラー144で反射されて光カプラ120に伝送される参照光の伝搬距離を適宜調整できるように構成されている。
【0018】
受光部150は、後述する光プローブ40から伝送される反射光と光路調整部140から伝送される参照光とが光カプラ120で重ね合わされることにより得られる干渉光を受光して光電変換する、例えばフォトダイオードなどの光学部品である。
【0019】
実施形態において、信号処理部160は、受光部150から送信される電気信号を増幅するアンプ(図示せず)と、アンプにより増幅された電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/D変換器(図示せず)と、A/D変換器により得られるデジタル信号から画像を復元する画像復調器(図示せず)とを含む。したがって、信号処理部160は、後述する光プローブ40により撮影された画像を復元してモニタ170に表示できる。
【0020】
モニタ170は、例えば液晶ディスプレイであり、信号処理部160より送信される画像信号を基に、後述する光プローブ40により撮影された画像をディスプレイに表示するように構成されている。
【0021】
低干渉性光源110、光プローブ回転モータ134、光プローブ直動モータ138、及びミラー直動モータ148は、コントローラ180に接続されており、光断層撮影装置100による撮影中、コントローラ180から送信される指示に基づいて出力が制御されるように構成されている。
【0022】
[光プローブ]
図2Aは、光断層撮影装置100に含まれる略円柱状の光プローブ40の軸方向に沿った断面を示す。
図2Bは、略円柱状の光プローブ40の径方向に沿った断面を示す。以下、光プローブ40の軸方向を「z方向」、z方向に直交する
図2Aの表裏方向(又は
図2Bの左右方向)を「y方向」、z方向とy方向に直交する
図2A,2Bの上下方向を「x方向」という。
【0023】
光プローブ40は、モータドライブユニット130の光ロータリジョイント131に接続されている略円柱状の光ファイバ10、破線で示す該光ファイバ10の中心軸14に対して垂直に延びる光ファイバ10の先端面12に接続されて該光ファイバ10と光結合された円筒レンズ20(レンズ部材)、及び該光ファイバ10と該円筒レンズ20を覆うように該光ファイバ10の中心軸14に沿って伸びる略円筒状のシース30を備える。
【0024】
光ファイバ10は、透過率の高いガラス又は樹脂から形成されており、光ファイバ10の中心軸14に沿って伸びる中心部として構成されているコア16と、コア16の周りに形成されているクラッド18とを備える。コア16の屈折率はクラッド18の屈折率よりも大きい。したがって、光ファイバ10は、その内部を通過する光がコア16に集中して伝送されるように構成されている。
【0025】
円筒レンズ20は、透光性のガラスから形成されており、破線で示す光ファイバ10の中心軸14を前方に延ばした延長軸22と平行に該延長軸22の方向に伸びる外周円筒面(円筒面部分)24と、延長軸22に対して垂直に延びる後端面26と、延長軸22と斜めに交差する先端面28を有する。円筒レンズ20の外周円筒面24は、例えば約200~400μmの直径を有している。そのため、円筒レンズ20は非常に軽量である。また、円筒レンズ20の先端面28は、
図2Aに示すzx平面上にあって延長軸22と斜めに交差する傾斜軸29に沿って延びる平坦な面である。
図2Bに示すように、先端面28は、延長軸22と傾斜軸29とを含むzx平面(対称面)に関して面対称な略円形状を有する。さらに、先端面28は、モータドライブユニット130を介して光ファイバ10の先端面12から出射した光が延長軸22に沿って該先端面28に入射し、該先端面28で反射した光が外周円筒面24を介して円筒レンズ20から出射するように構成されている。
【0026】
実施形態において、円筒レンズ20の先端面28と傾斜軸29は、延長軸22に対して45°の角度で傾斜している。これにより、円筒レンズ20が1.43~2.14の一般的な屈折率を有している場合、先端面28に入射した光は全反射される。また、円筒レンズ20の先端面28と傾斜軸29は、延長軸22に対して45°よりも小さな角度、例えば38°で傾斜してもよい。これにより、先端面28に入射した光は確実に全反射される。
【0027】
光ファイバ10と円筒レンズ20は、光ファイバ10の先端面12と円筒レンズ20の後端面26で互いに融着されている。光ファイバ10と円筒レンズ20が融着されていることにより、光プローブ40の機械的強度が向上する。したがって、光断層撮影装置100による撮影中、光ファイバ10と円筒レンズ20が剥離することにより画像を喪失する虞がない。
【0028】
実施形態では、光ファイバ10のコア16の屈折率と円筒レンズ20の屈折率は同じ又は実質的に同じである。したがって、光ファイバ10のコア16と円筒レンズ20の境界面で反射される光が減少する。これにより、信号処理部160のモニタに、実際には存在しない物体の画像(アーチファクト)が現れることはない。
【0029】
また、光ファイバ10のコア16と円筒レンズ20は純石英ガラスから形成されてもよい。これにより、光ファイバ10と円筒レンズ20の間において、光が反射しなくなり、上述のアーチファクトが確実に現れない。
【0030】
シース30は、透光性樹脂から形成されており、円筒レンズ20の外周円筒面24を介して出射した光が透過するように構成されている。また、シース30の内部は気体、例えば空気で満たされている。シース30の内径は、光ファイバ10と円筒レンズ20の外径よりも、例えば50μmほど大きい。例えば、円筒レンズ20の外径が約200~400μmの場合、シース30の内径は約250~450μmである。したがって、光ファイバ10と円筒レンズ20は光ファイバ10の中心軸14に沿ってシース30の内部を自由に移動できる。
【0031】
[光断層撮影の方法]
以下、光断層撮影装置100と光プローブ40による光断層撮影の方法を説明する。
【0032】
図2A,2Bに示すように、シース30に覆われた光プローブ40が脈管、例えば血管400内の所定の位置に挿入される。
【0033】
図1に示すように、光断層撮影装置100は、低干渉性光源110をオンすることで所定波長の光を出射し、光カプラ120を経由してモータドライブユニット130と光路調整部140のそれぞれに光を伝送する。
【0034】
モータドライブユニット130に送られた光は、光ファイバ10の中心軸14に沿って、光プローブ40内部の光ファイバ10のコア16を通り、円筒レンズ20に向かう(
図2A参照)。光ファイバ10の先端面12と円筒レンズ20の後端面26との間の境界を通過した光は、拡散しながら先端面28に入射し、そこで反射される。
図2Aに示すように、先端面28で反射した光は、外周円筒面24に向かって径方向(z軸を中心とする放射方向)に進行しながら拡散する。その後、光は、
図2Bに示すように、円形断面の外周円筒面24に達する。外周円筒面24は、凸レンズ面として機能する。したがって、外周円筒面24に到達した光は、外周円筒面24において屈折して、シース30の外側にある焦点60に向かって収束しながらシース30を通過して血管400に照射される。血管400で反射した光(反射光)は、シース30を通過し、外周円筒面24を介して円筒レンズ20に入射される。このとき、円筒レンズ20に入射する反射光は外周円筒面24(凸レンズ面)で屈折して収束された後、先端面28で反射し、延長軸22に沿って、円筒レンズ20の後端面26と光ファイバ10の先端面12との結合面を通り、光ファイバ10に入射される。その後、反射光は、光ファイバ10を経由して、モータドライブユニット130、及び光カプラ120を介して受光部150に伝送される。
【0035】
光断層撮影装置100は血管400をその周方向全体に亘って断層撮影する。そのため、光断層撮影装置100は光プローブ駆動部132の光プローブ回転モータ134を駆動して、光ファイバ10をシース30内で高速回転(好ましくは1秒間に約180回転)する。同時に、光断層撮影装置100は、中心軸14方向に沿って連続して血管400を断層撮影する。そのため、光断層撮影装置100は、光プローブ直線駆動部132の光プローブ直動モータ138を駆動して、光ファイバ10をシース30内で後退させる。これにより、円筒レンズ20の外周円筒面24を介して出射される光は血管400の周方向全体を走査しながら後方に移動し、血管400の長さ方向に連続した血管断層画像が得られる。このとき、回転される円筒レンズ20の先端面28はzx平面(対称面)に関して面対称な形状を有するので、高速回転されるときに生じ得る円筒レンズ20の振動をできるだけ抑えることができる。
【0036】
光カプラ120で分岐して光路調整部140に送られた光は、リファレンスミラー144で反射されて参照光となる。この参照光は、光カプラ120において、光プローブ40から送られてくる反射光と重ね合わされる。参照光と反射光が重ね合わされた干渉光は受光部150に伝送される。
【0037】
光断層撮影装置100は、光ファイバ10の移動に応じてミラー直線駆動部146を駆動してリファレンスミラー144を移動し、好ましくは、光カプラ120からリファレンスミラー144までの光路長を、光カプラ120から先端面28までの光路長と等しく保つ。これにより、位置関係が直感的に理解しやすい血管400の断層画像が得られる。
【0038】
光断層撮影装置100は、干渉光を受光部150で受光して光電変換することにより、撮影された情報を含む電気信号を信号処理部160に送信し、撮影された血管の断層画像を復元してモニタに示す。
【0039】
上述のように、実施形態の光プローブ40によれば、円筒レンズ20の傾斜先端面28で反射した光は、円筒外周面24で屈折した後、血管400の壁面近傍の焦点60に向けて集められる。したがって、血管400で反射した光は、正確な血管情報を含む。また、血管400で反射した光は、円筒レンズ20を介して光カプラ120に伝送されて参照光と重ね合わされて、撮影位置における反射光だけを選択的に増幅した干渉光となる。したがって、血管400の鮮明な断層画像を信号処理部160のモニタに表示できる。また、光プローブ40において光ファイバ10の先端には円筒レンズ20しか存在しないため、光プローブ40はその先端を血管等の脈管の分岐部において親枝から小枝に容易に挿入できる。また、光学素子の接続面の数が最小限に抑えられることにより、光の損失が低く抑えられ、明るい画像が得られる。さらに、レンズ部材の質量が十分小さいため、回転時の振動を出来るだけ抑えることができる。
【0040】
[他の実施形態]
上述した実施形態において、円筒レンズ20の先端面28は、光ファイバ10の延長軸22と斜めに交差する傾斜軸29に沿って延びる平坦な面であるが、
図3Aに示すように、円筒レンズ220の先端面228は、延長軸222と交差せず且つy方向に平行な仮想軸252を中心とする円筒面であってもよい。この形態によれば、円筒レンズ220の外周円筒面224だけでなく、先端面228も集光レンズとしての役割を果たすため、先端面228に入射した光は該先端面228によって径方向に集光される。したがって、撮影時、円筒レンズ220から出射する光は血管の壁面又はその近傍で収束する。したがって、血管からの反射光は、より正確な血管情報を含むものとなり、結果、正確な診断が可能となる。
【0041】
また、後端面226から先端面228までの延長軸222の長さは、好ましくは0.4~0.6mmに設定される。これにより、円筒レンズ220から出射する光は血管の壁面又はその近傍で確実に収束する。
【0042】
以上の説明では、光ファイバ10と円筒レンズ20は、光ファイバ10の中心軸14及び延長軸22に対して垂直に延びる先端面12と後端面26で融着されているが、光ファイバの先端と円筒レンズの後端面がそれぞれ、中心軸及び延長軸に対して斜めに交差する面上に位置する傾斜面であってもよい。これにより、光ファイバのコアと円筒レンズの境界面で反射されて光カプラに入射する光が減少する。
【0043】
円筒レンズ20の先端面28は、誘電体多層膜、アルミニウム、銀、又は金でコーティングされてもよい。これにより、光ファイバ10の先端面12から出射した光は、先端面28で反射され易くなる。
【0044】
光プローブ40の円筒レンズ20を透光性のガラスで形成したが、円筒レンズ20は透光性のプラスチックで形成してもよい。これにより、光プローブ40の先端が軽量になり、回転時の振動をさらに抑えることができる。
【0045】
図3A、3Bに示すように、円筒レンズ20,220の先端面28,228は、中心軸14,214と延長軸22,222を含む平面上で且つ先端面28,228の後方(光ファイバ側)にある第1の仮想軸を中心とする円筒面又は該円筒面に似た疑似円筒面(例えば、楕円筒面)を該平面に直交する第2の仮想軸を中心に動かして描かれる三次元曲面、例えばトロイダル曲面であってもよい。
【0046】
上述した実施形態では、光ファイバ10の先端に設けるレンズ部材として外周円筒面を有する円筒レンズ20を用いたが、レンズ部材はその全周が円筒面である必要はなく、例えば、少なくともレンズ部材の先端傾斜面で反射した光が該レンズ部材から出射する部分だけが円筒面で、その他の部分は非円筒面であってもよい。この場合、外周の円筒面部分は、光ファイバ10の中心軸14を前方に延ばした延長軸22を中心とする円筒面、又は延長軸22に平行又はほぼ平行な軸を中心とする円筒面、若しくはトロイダル面であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10:光ファイバ
12:先端面
14:中心軸
20:円筒レンズ(レンズ部材)
22:延長軸
24:外周円筒面(円筒面部分)
26:後端面
28:先端面
40:光プローブ
100:脈管用光断層撮影装置